説明

共役ジエン系重合体の製造方法

【課題】有機金属化合物を重合開始剤に用いた共役ジエン系重合体の製造方法であって、重合開始剤の失活が抑制された共役ジエン系重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】下記一般式[I]又は[II]で表される有機金属化合物を重合開始剤に用いて、共役ジエンを重合する共役ジエン系重合体の製造方法。
ter-BuR1ZnM12 [I]
ter-BuR2ZnM2 [II]
(上記一般式[I]及び[II]において、ter-Buはtert−ブチル基を表し、R1及びR2は、置換されていてもよいアルキル基及び置換されていてもよいアリール基からなる置換基群から選ばれる置換基を表し、3つのR1及び3つのR2は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。Znは亜鉛原子を表す。M1は、アルカリ金属を表し、2つのM1は同じであってもよく、異なっていてもよい。M2は、アルカリ土類金属を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエン系重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
共役ジエン系重合体の製造方法としては、界面活性剤を用いて1,3−ブタジエンあるいは1,3−ブタジエンとスチレンとを水中に分散させて、有機過酸化物を重合開始剤として、1,3−ブタジエンの単独重合、1,3−ブタジエンとスチレンとを共重合する乳化重合法、炭化水素溶媒中、有機リチウム化合物等の有機金属化合物を重合開始剤に用いて、1,3−ブタジエンの単独重合、1,3−ブタジエンとスチレンとを共重合する溶液重合法が知られている。該有機金属化合物を用いた溶液重合法は、重合反応がリビング的に進行するため、有機過酸化物を重合開始剤とした乳化重合法に比べて、生成する重合体の分子量を重合開始剤の使用量によって調整しやすいという特徴を有する。
【0003】
上記溶液重合法においては、重合溶媒やモノマーに含まれる水などの不純物、重合反応槽内面の汚れ由来の不純物などにより、重合開始剤として用いる有機金属化合物が失活することがある。重合反応に寄与する有機金属化合物の量を精度よく調整するために、重合溶媒やモノマーを十分に精製して、不純物を十分に低減する方法、あるいは、重合溶媒やモノマーに含まれる不純物が無害化されるまで、重合反応槽内に有機金属化合物を添加し、次いで、重合反応に寄与する有機金属化合物を添加する方法(例えば、特許文献1参照。)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−268010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記不純物低減・無害化方法を工業的規模で行うことは、経済的に十分満足のいくものではなかった。
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、有機金属化合物を重合開始剤に用いた共役ジエン系重合体の製造方法であって、重合開始剤の失活が抑制された共役ジエン系重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記一般式[I]又は[II]で表される有機金属化合物を重合開始剤に用いて、共役ジエンを重合する共役ジエン系重合体の製造方法にかかるものである。
ter-BuR1ZnM12 [I]
ter-BuR2ZnM2 [II]
(上記一般式[I]及び[II]において、ter-Buはtert−ブチル基を表し、R1及びR2は、置換されていてもよいアルキル基及び置換されていてもよいアリール基からなる置換基群から選ばれる置換基を表し、3つのR1及び3つのR2は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。Znは亜鉛原子を表す。M1は、アルカリ金属を表し、2つのM1は同じであってもよく、異なっていてもよい。M2は、アルカリ土類金属を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明により、重合開始剤の失活が抑制された共役ジエン系重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において「重合」という語は、単独重合のみならず、共重合を包含したものであり、また「重合体」という語は単独重合体のみならず共重合体を包含したものである。
【0009】
本発明の製造方法では、下記一般式[I]又は[II]で表される有機金属化合物を重合開始剤に用いる。
ter-BuR1ZnM12 [I]
ter-BuR2ZnM2 [II]
(上記一般式[I]及び[II]において、ter-Buはtert−ブチル基を表し、R1及びR2は、置換されていてもよいアルキル基及び置換されていてもよいアリール基からなる置換基群から選ばれる置換基を表し、3つのR1及び3つのR2は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。Znは亜鉛原子を表す。M1は、アルカリ金属を表し、2つのM1は同じであってもよく、異なっていてもよい。M2は、アルカリ土類金属を表す。)
【0010】
一般式[I]及び[II]において、ter-Buはtert−ブチル基を表す。
【0011】
一般式[I]及び[II]において、R1及びR2は、置換されていてもよいアルキル基及び置換されていてもよいアリール基からなる置換基群から選ばれる置換基を表す。一般式[I]の3つのR1は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよく、一般式[II]の3つのR2は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0012】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基をあげることができる。
【0013】
アルキル基の炭素原子数としては、好ましくは、1〜4である。該アルキル基として、好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基である。
【0014】
アリール基としては、例えば、フェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,3,4,6−テトラメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、n−ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、n−オクチルフェニル基、n−デシルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、n−テトラデシルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基をあげることができる。
【0015】
アリール基の炭素原子数としては、好ましくは、6〜12である。アリール基として、好ましくは、フェニル基である。
【0016】
一般式[I]の3つのR1のうち、少なくとも1つのR1が、tert−ブチル基であることが好ましい。また、一般式[II]の3つのR2のうち、少なくとも1つのR2が、tert−ブチル基であることが好ましい。
【0017】
一般式[I]において、Znは亜鉛原子を表す。
【0018】
一般式[I]において、M1は、アルカリ金属を表し、2つのM1は同じであってもよく、異なっていてもよい。M1としては、例えば、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子、セシウム原子をあげることができる。M1としては、好ましくは、リチウム原子、ナトリウム原子である。
【0019】
一般式[II]において、M2は、アルカリ土類金属を表す。M2としては、例えば、ベリリウム原子、マグネシウム原子、カルシウム原子、ストロンチウム原子、バリウム原子をあげることができる。M2としては、好ましくは、マグネシウム原子である。
【0020】
一般式[I]で表される有機金属化合物としては、例えば、ジリチウムテトラ−tert−ブチルジンケート、ジリチウムジ−tert−ブチルジメチルジンケート、ジリチウムジ−tert−ブチルジエチルジンケート、ジリチウムジ−tert−ブチルジイソプロピルジンケート、ジリチウムジ−tert−ブチルジフェニルジンケート、ジリチウム−tert−ブチルトリメチルジンケート、ジリチウムトリ−tert−ブチルメチルジンケート、および、これらの化合物のリチウムをナトリウムとした化合物をあげることができる。一般式[I]で表される有機金属化合物として、好ましくは、ジリチウムテトラ−tert−ブチルジンケート、ジリチウムジ−tert−ブチルジメチルジンケート、ジリチウムジ−tert−ブチルジエチルジンケート、ジリチウムジ−tert−ブチルジイソプロピルジンケートである。
【0021】
一般式[II]で表される有機金属化合物としては、例えば、マグネシウムテトラ−tert−ブチルジンケート、マグネシウムジ−tert−ブチルジメチルジンケート、マグネシウムジ−tert−ブチルジエチルジンケート、マグネシウムジ−tert−ブチルジイソプロピルジンケート、マグネシウムジ−tert−ブチルジフェニルジンケートをあげることができる。
【0022】
一般式[I]、[II]で表される有機金属化合物の製造方法としては、特開2004−292328号公報に記載の方法をあげることができる。また、一般式[I]で表される有機金属化合物の製造方法としては、炭化水素溶媒またはエーテル化合物溶媒中、有機亜鉛化合物と有機アルカリ金属化合物とを1:2のモル比で反応させる方法をあげることができ、一般式[II]で表される有機金属化合物の製造方法としては、炭化水素溶媒またはエーテル化合物溶媒中、有機亜鉛化合物と有機アルカリ土類金属化合物とを1:1のモル比で反応させる方法をあげることができる。
【0023】
有機亜鉛化合物としては、例えば、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ジ−sec−ブチル亜鉛、ジ−tert−ブチル亜鉛、ジ−n−ペンチル亜鉛、ジネオペンチル亜鉛、ジイソペンチル亜鉛、ジ−n−ヘキシル亜鉛、ジ−2−エチルヘキシル亜鉛、ジフェニル亜鉛、エチルメチル亜鉛、メチルイソプロピル亜鉛、メチルフェニル亜鉛、エチルイソプロピル亜鉛をあげることができる。有機亜鉛化合物として、好ましくは、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ−tert−ブチル亜鉛である。
【0024】
有機亜鉛化合物は、公知の製造方法により得られる。例えば、n−ブチルリチウムなどの有機アルカリ金属化合物と塩化亜鉛とを2:1のモル比で反応させることにより、あるいは、有機アルカリ土類金属化合物と塩化亜鉛とを1:1のモル比で反応させることにより得られる。
【0025】
有機アルカリ金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、ネオペンチルリチウム、イソペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、2−エチルヘキシルリチウム、フェニルリチウム、およびこれらの対応のナトリウム化合物をあげることができる。該有機アルカリ金属化合物として、好ましくは、tert−ブチルリチウムである。
【0026】
有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジ−n−プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジイソブチルマグネシウム、ジ−sec−ブチルマグネシウム、ジ−tert−ブチルマグネシウム、ジ−n−ペンチルマグネシウム、ジネオペンチルマグネシウム、ジイソペンチルマグネシウム、ジ−n−ヘキシルマグネシウム、ジ−2−エチルヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、エチルメチルマグネシウム、メチルイソプロピルマグネシウム、メチルフェニルマグネシウム、エチルイソプロピルマグネシウムをあげることができる。該有機アルカリ土類金属化合物として、好ましくは、ジ−n−ブチルマグネシウムである。
【0027】
有機亜鉛化合物と有機アルカリ金属化合物との反応および有機亜鉛化合物と有機アルカリ土類金属化合物との反応において、反応温度は、通常、0℃以下である。
【0028】
重合においては、一般式[I]又は[II]で表される有機金属化合物を予め調製した後に、一般式[I]又は[II]で表される有機金属化合物を重合反応槽に供給してもよい。有機亜鉛化合物と有機アルカリ金属化合物とを重合反応槽に供給し、重合反応槽内で有機亜鉛化合物と有機アルカリ金属化合物との反応を行って、一般式[I]で表される有機金属化合物を調製してもよい。有機亜鉛化合物と有機アルカリ土類金属化合物とを重合反応槽に供給し、重合反応槽内で有機亜鉛化合物と有機アルカリ土類金属化合物との反応を行って、一般式[II]で表される有機金属化合物を調製してもよい。また、塩化亜鉛と有機アルカリ金属化合物とを重合反応槽に供給し、重合反応槽内で塩化亜鉛と有機アルカリ金属化合物との反応および該反応により生成する有機亜鉛化合物と有機アルカリ金属化合物との反応を行って、一般式[I]で表される有機金属化合物を調製してもよい。塩化亜鉛と有機アルカリ土類金属化合物とを重合反応槽に供給し、重合反応槽器内で塩化亜鉛と有機アルカリ土類金属化合物との反応および該反応により生成する有機亜鉛化合物と有機アルカリ土類金属化合物との反応を行って、一般式[II]で表される有機金属化合物を調製してもよい。
【0029】
本発明の製造方法では、共役ジエンの重合を行う。該共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンをあげることができ、これらは1種用いてもよく、2種以上用いてもよい。入手容易性の観点から、好ましくは、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンである。
【0030】
本発明の製造方法では、共役ジエンと他の単量体との共重合を行ってもよい。他の単量体としては、芳香族ビニル化合物、ビニルニトリル、不飽和カルボン酸エステルなどをあげることができる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンをあげることができる。また、ビニルニトリルとしては、例えば、アクリロニトリルをあげることでき、不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチルをあげることができる。これらの中では、芳香族ビニル化合物が好ましく、入手容易性の観点から、スチレンが好ましい。
【0031】
本発明の製造方法で共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合を行なう場合、得られる共役ジエン系共重合体中の芳香族ビニル化合物単位の含有量は、共役ジエン系共重合体を100重量%として、好ましくは1〜99重量%であり、より好ましくは3〜80重量%であり、さらに好ましくは5〜80重量%である。
【0032】
本発明の製造方法で用いられる溶媒としては、好ましくは炭化水素である。該炭化水素としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素などをあげることができる。脂肪族炭化水素としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサンなどをあげることができる。また、芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどをあげることができ、脂環族炭化水素としては、シクロペンタン、シクロヘキサンなどをあげることができる。これらは単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。これらの中では、炭素原子数が3〜12の炭化水素が好ましい。
【0033】
本発明の製造方法で用いられる溶媒としては、好ましくはテトラヒドロフランのような環状エーテル類を含まないことが好ましい。
【0034】
本発明の製造方法での重合温度は、通常−80〜150℃であり、好ましくは0〜100℃である。
【0035】
本発明の製造方法での重合時間は、通常5分〜48時間であり、好ましく30分〜24時間である。
【0036】
重合終了後、公知の回収方法、例えば、(1)重合反応液に凝固剤を添加する方法、(2)重合反応液にスチームを添加する方法、(3)オーブンドライヤーを用いて重合反応液から溶媒を除去する方法によって、重合反応液から共役ジエン系重合体を回収することができる。回収した共役ジエン系重合体は、バンドドライヤーや押出型ドライヤーなどの公知の乾燥機で乾燥してもよい。
【0037】
共役ジエン系重合体は、他の重合体や添加剤などを配合して、重合体組成物としてもよい。
【0038】
他の重合体としては、本発明の製造方法以外の方法で製造した共役ジエン系重合体、天然ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体などをあげることができる。これらの重合体は、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
添加剤としては、公知のものを用いることができ、硫黄などの加硫剤;チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤などの加硫促進剤;ステアリン酸、酸化亜鉛などの加硫活性化剤;有機過酸化物;カーボンブラック、シリカなどの補強剤;炭酸カルシウム、タルクなどの充填剤;シランカップリング剤;伸展油;加工助剤;老化防止剤;滑剤を例示することができる。
【0040】
本発明の共役ジエン系重合体は、タイヤ、ベルト、ホース、履物などに、好適に使用される。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明する。
【0042】
重合反応および重合体の評価は、次の方法で行った。
1.収率
重合反応槽内に加えたモノマー総量に対する得られた重合体の重量割合を求めた。
2.スチレン単位の含量
JIS K−6383(屈折率法)に従って測定した。
3.ブタジエン単位の含量
赤外分光分析法(モレロ法)によりビニル基の含量を測定し、該ビニル基の含量から1,2結合のブタジエン単位の含量を算出した。1,4結合のブタジエン単位の含量は、スチレン単位の含量と1,2結合のブタジエン単位の含量から求めた。
4.重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフ法により測定した。測定においては、溶出溶媒をテトラヒドロフラン、カラム温度を40℃、分子量標準物質を単分散ポリスチレンとした。
5.重合開始剤有効度
仕込んだ重合開始剤に含まれるLi量に対する有効重合開始剤量のモル割合を求めた。この値が大きいほど、仕込んだ重合開始剤の失活率が低い。なお、有効重合開始剤量は、得られた重合体の重量を得られた重合体の理論分子量で除して算出した。理論分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量から伸張鎖長を求め、該伸張鎖長と重合体の単量体組成から計算した。
【0043】
実施例1
(Et2tert−Bu2ZnLi2の合成)
100ミリリットルのナスフラスコ内を乾燥窒素で置換した。ナスフラスコ内にジエチルエーテル20ミリリットル、ジエチル亜鉛2.5ミリモルを加え、次に−78℃でtert−ブチルリチウム5.0ミリモルを加えた。ナスフラスコ内の溶液を、0℃で30分間攪拌し、Et2tert−Bu2ZnLi2のジエチルエーテル溶液を得た。
(1,3−ブタジエン/スチレンの共重合)
内容積5リットルのステンレス製重合反応槽内を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換した。次にヘキサン2.55kg、1,3−ブタジエン375g、スチレン125g、及び、上記の方法で得たEt2tert−Bu2ZnLi22.5ミリモルを含むジエチルエーテル溶液を重合反応槽内に加え、攪拌下、65℃で3時間重合を行った。この際、ヘキサンおよびスチレンは、それぞれモレキュラーシーブスおよびシリカゲルで脱水したものを用いた。3時間の重合後、10mlのメタノールを重合反応槽内に加え、更に5分間攪拌した。その後、重合反応槽内の重合反応溶液を取り出し、ヘキサンの大部分を蒸発させ、55℃で12時間減圧乾燥し、重合体を得た。重合体の評価結果を表1に示す。
【0044】
比較例1
(1,3−ブタジエン/スチレンの共重合)
Et2tert−Bu2ZnLi22.5ミリモルを含むジエチルエーテル溶液にかえて、tert−BuLiを2.0ミリモル含むヘキサン溶液を添加したこと以外、実施例1と同様に1,3−ブタジエンとスチレンの共重合を行った。共重合結果を表1に示す。
【0045】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[I]又は[II]で表される有機金属化合物を重合開始剤に用いて、共役ジエンを重合する共役ジエン系重合体の製造方法。
ter-BuR1ZnM12 [I]
ter-BuR2ZnM2 [II]
(上記一般式[I]及び[II]において、ter-Buはtert−ブチル基を表し、R1及びR2は、置換されていてもよいアルキル基及び置換されていてもよいアリール基からなる置換基群から選ばれる置換基を表し、3つのR1及び3つのR2は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。Znは亜鉛原子を表す。M1は、アルカリ金属を表し、2つのM1は同じであってもよく、異なっていてもよい。M2は、アルカリ土類金属を表す。)
【請求項2】
下記一般式[I]又は[II]で表される有機金属化合物を重合開始剤に用いて、共役ジエンとビニル芳香族化合物とを共重合する共役ジエン系重合体の製造方法。
ter-BuR1ZnM12 [I]
ter-BuR2ZnM2 [II]
(上記一般式[I]及び[II]において、ter-Buはtert−ブチル基を表し、R1及びR2は、置換されていてもよいアルキル基及び置換されていてもよいアリール基からなる置換基群から選ばれる置換基を表し、3つのR1及び3つのR2は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。Znは亜鉛原子を表す。M1は、アルカリ金属を表し、2つのM1は同じであってもよく、異なっていてもよい。M2は、アルカリ土類金属を表す。)
【請求項3】
3つのR1のうち、少なくとも1つのR1が、tert−ブチル基であり、3つのR2のうち、少なくとも1つのR2が、tert−ブチル基である請求項1または2に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項4】
1が、リチウム原子又はナトリウム原子であり、M2がマグネシウム原子である請求項1〜3のいずれかに記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項5】
炭化水素溶媒中で重合する請求項1〜4のいずれかに記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項6】
共役ジエンが、1,3−ブタジエン及び2−メチル−1,3−ブタジエンからなる共役ジエン群から選ばれる少なくとも1種の共役ジエンである請求項1〜5のいずれかに記載の共役ジエン系重合体の製造方法。

【公開番号】特開2010−209271(P2010−209271A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59212(P2009−59212)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】