説明

共役リノール酸含有乳化組成物および飲料

【課題】 共役リノール酸を高濃度で含有し、水への分散安定性が高く、且つ長期にわたり安定性に優れた乳化組成物を提供すること。
【解決手段】 共役リノール酸、食用油脂、SAIB、乳化剤、アルコール類および水を含有することを特徴とする共役リノール酸含有乳化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役リノール酸を含有してなる長期間安定な乳化組成物およびこれを配合してなる飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
共役リノール酸(CLA)は、共役2重結合をもつリノール酸の総称であり、天然物にも広く存在し、牛肉や乳脂肪や羊肉などの食品中に含まれているがその量は微量である。また、牧草で飼育される牛の腸のなかで、腸内細菌の働きで生成することが判明している。共役リノール酸は、加熱した牛肉エキス中の抗がん作用のある物質として発見された。共役リノール酸は、その後、哺乳動物、特にヒトの脂肪蓄積を減少させる作用を示すことが確認され、現在、脂肪を減らして筋肉を増やすための健康補助食品として最も注目されている物質のひとつである。しかしながら、共役リノール酸は、人体では合成されず、食品からも微量しか摂取できない。したがって、その有効量を摂取しようとする場合には、飲食品等に添加して補給する必要がある。
【0003】
共役リノール酸の生理作用には、抗変異原性、抗ガン作用、抗アレルギー作用、抗肥満作用、動脈硬化巣退縮作用などがあり、その中で、特に、ヒトで確認できている作用は、抗肥満作用の中の体脂肪低減作用と除脂肪量増加作用である。
【0004】
このような背景に基づき、この効果を利用した飲食品に関するいくつかの提案がなされており、例えば、共役リノール酸の育児用乳、離乳食、高齢者用食品、病態用食品等の飲食物用への添加(特許文献1参照)、共役リノール酸トリグセリドのヨーグルト、生クリームへの添加(特許文献2参照)等が提案されている。
【0005】
また、共役リノール酸の粉末に関して、共役リノール酸または共役リノール酸トリグリセリドを高含量で含む粉末(特許文献3参照)、共役リノール酸を含むグリセリドの粉末(特許文献4参照)、アラビアガムを15%以上含む共役リノール酸の乳化粉末(特許文献5参照)などが提案されている。
【0006】
共役リノール酸は油溶性物質であるため、そのままでは水溶液に添加することができず、乳化剤組成物とする必要がある。しかしながら、共役リノール酸の比重は0.93であり、水より軽いため、乳化剤(例えば、特許文献5に記載のアラビアガム)を用いて乳化しても、飲料に添加し長期にわたり保存を行うと、乳化状態が破壊され、油浮きやリングの発生が起こるという欠点がみられる。
【0007】
したがって、共役リノール酸の機能性に注目して、長期間安定な共役リノール酸高含有乳化組成物の開発、特に、酸性飲料をはじめとする各種の飲料に添加しても油浮きやリングの発生しない共役リノール酸含有乳化組成物の開発が強く要求されている。
【特許文献1】特開2001−29010
【特許文献2】特表2002−527045
【特許文献3】特表2004−513980
【特許文献4】特表2005−509672
【特許文献5】特許第3230082号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、長期間保存しても安定で、飲料、特に酸性飲料に添加してもリングや
油浮きなどを生じない安定な共役リノール酸含有乳化製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、共役リノール酸の飲料中での安定な乳化製剤について鋭意研究を行った結果、今回、共役リノール酸を食用油脂に溶解し、さらにこの油性部をシュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート(SAIB)にて比重調整し、HLB8以上の乳化剤、アルコール類及び水と共に乳化すると、得られる組成物は異味異臭が無く長期間安定であり、さらに酸性飲料を包含する広範な飲料中で非常に安定であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明は、共役リノール酸、食用油脂、シュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート(SAIB)、乳化剤、アルコール類及び水を含有することを特徴とする共役リノール酸含有乳化組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は前記の共役リノール酸含有乳化組成物が配合されてなる飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、共役リノール酸の水溶性乳化組成物を調製する簡便な方法が提供され、その組成物は、飲料に添加し、長期にわたり保存した場合でも、油浮きやリングなどを発生せず、安定な状態を保つことができる。また、共役リノール酸含有油脂部に、さらに、ビタミン類、油溶性色素、香料等を加えることにより、さらなる機能性を付与することも可能であり、広い分野での用途が期待される。
【0013】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0014】
本発明の組成物における共役リノール酸は、分子中に存在する2個の二重結合が互いに共役関係にあるリノール酸であり、cis−9,trans−11−オクタデカジエン酸、trans−10,cis−12−オクタデカジエン酸等の異性体が包含される。なお、本発明で使用する共役リノール酸は、風味の面でトリグリセリドの形態であることが望ましいが、その形態に限定されず、例えば遊離の脂肪酸の形態であってもかまわない。これらの共役リノール酸としては、天然物由来のものでも、または合成により得られるものでも使用することができ、さらに、市販品を使用することもでき、市販品としては、例えばシーエルエースG−80(日清オイリオグループ)等を挙げることができる。
【0015】
本発明で使用することのできる食用油脂としては、上記共役リノール酸と容易に混和するものが好ましく、例えば、大豆油、ごま油、コーン油、菜種油、米糠油、綿実油、ひまし油、落花生油、オリーブ油、パーム油、サフラワー油、小麦胚芽油、椰子油、ヒマワリ油、つばき油、ココア脂、イワシ油、サケ油、サバ油、サメ油、マグロ油、鯨油、イルカ油、イカ油、サンマ油、にしん油、たら油、牛脂、鶏油、豚脂、バターなどの動植物油脂類及びそれらの硬化油類、中鎖飽和脂肪酸トリグリセリド(以下、MCTと称する)などを挙げることができる。殊にMCTが好適である。かかるMCTとしては、例えば、カプロン酸トリグリセリド、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、ラウリン酸トリグリセリド、及びこれらの任意の混合物の如き炭素原子数6〜12の中鎖飽和脂肪酸のトリグリセリドを挙げることができ、これらの中、特にカプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド及びこれらの任意の混合物が好ましい。これらのMCT混合物は市場で安価に且つ容易に入手することができる。本発明の乳化組成物における、動植物油脂の含有量は、特に限定されるものではないが、共役リノール酸1重量部に対し、通常0.4〜4重量部、好ましくは0.8〜2重量部の範囲内であることができる。
【0016】
SAIB(シュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート)は本発明の乳化組成物中の油相部を構成する共役リノール酸、食用油脂及びSAIBの3成分の混合物の比重調整のために配合されるものであり、使用し得るSAIBとしては、例えば、その比重が約1.13〜約1.19、好ましくは約1.14〜約1.15の範囲内にあるSAIBを挙げることができる。本発明の乳化組成物におけるSAIBの含有量は、使用するSAIBの比重、乳化組成物が配合される飲料の比重等に応じて変えることができるが、一般的には、本発明の乳化組成物中の油相部を構成する共役リノール酸、食用油脂及びSAIBの3成分の混合物の比重と、本発明の乳化組成物が配合される飲料の比重との差が0.05以下、特に0.03以下となるような量であることが望ましい。この比重差が0.05を越えると、本発明の乳化組成物が配合された飲料を長期にわたり保存した場合に、リングや油浮きが発生しやすくなる。共役リノール酸及び食用油脂に対するSAIBの混合割合は、共役リノール酸と食用油脂の合計1重量部に対し、通常約0.4重量部〜約1.6重量部、好ましくは約0.8重量部〜約1.2重量部の範囲内を例示することができる。しかしながら、最終的には、本発明の乳化組成物が配合される飲料の比重及び該乳化組成物中の油相部の比重を測定しながら比重差が0.05以下となるSAIBの含有量を経験的に見出すことが望ましい。
【0017】
本発明の組成物に含ませることのできる乳化剤としては、HLBが8以上の親水性界面活性剤が好ましく、具体的にはポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、平均重合度3以上のポリグリセリンと炭素数8以上の脂肪酸とのエステル、例えば、デカグリセリンモノオレエート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノパルミテート、デカグリセリンモノミリステートなどで且つ、HLBが約8以上、好ましくは約8〜約14の範囲内のものを挙げることができる。HLBが8を下回るポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合には、一般に、均一で粒子径の小さな乳化粒子を調製することが困難であり、また、乳化物が不安定で飲料に添加すると、沈殿、油分離などの分離現象を起こす傾向が強い。
【0018】
ポリグリセリン脂肪酸エステル類の含有量は、共役リノール酸と食用油脂の合計1重量部に対し、通常約0.05重量部〜約0.5重量部、好ましくは約0.15重量部〜約0.3重量部の範囲内であることができる。
【0019】
また、天然由来の乳化剤、例えば、キラヤ抽出物、酵素処理レシチン、アラビアガム、化工澱粉、大豆多糖類などやサイクロデキストリンなどを使用することもできる。これらの天然由来の乳化剤やサイクロデキストリンは通常水溶液の状態で使用され、乳化剤の水溶液中における濃度および配合量は、乳化剤の種類などによって適宜選択することができるが、例えば、水溶液の濃度としては、通常0.1〜50質量%の濃度範囲内、乳化剤の配合量としては共役リノール酸と食用油脂の合計1重量部に対し、通常0.5〜5重量部の範囲内を例示することができる。
【0020】
以上に述べた乳化剤はそれぞれ単独で又は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0021】
本発明において使用することのできるアルコール類には、エタノール及び分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有する化合物が包含され、具体的には、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、澱粉分解還元物、グルコース、ショ糖、果糖ぶどう糖液糖、マルトースなどの糖類及びこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。これらのアルコール類は通常含水率が50%以下、特に約0〜25%の範囲内の含水状態で使用することが好ましく、含水率が50%を越えると防腐性が失われる可能性がある。本発明の乳化組成物におけるこれらのアルコール類の含有量は、共
役リノール酸と食用油脂の合計1重量部に対し、通常約1重量部〜約10重量部、特に約1.5重量部〜約5重量部の範囲内が好適である。上記のアルコール類溶液には、所望により、保存性を向上させる目的で、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの有機酸を添加することもできる。
【0022】
また、本発明の乳化組成物にはさらに、必要に応じて、ビタミン類、油溶性色素、香料等の機能性素材を加えることができる。それによって、本発明の乳化組成物にさらなる機能性を付与することができる。
【0023】
添加し得るビタミン類としては、例えば、肝油、ビタミンA、ビタミンA油、ビタミンD3、ビタミンB2酪酸エステル、天然ビタミンE混合物などが挙げられ、油溶性色素としては、例えば、β−カロチン、パプリカ色素、アナトー色素、クロロフィルなどの油溶性天然色素が挙げられる。また、香料の具体例としては、例えば、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、タンジェリン油、マンダリン油、ベルガモット油などの柑橘精油類;ペパ−ミント油、スペアミント油、シンナモン油などの精油類;オールスパイス、アニスシード、バジル、ローレル、カルダモン、セロリ、クローブ、クミン、デイル、ガーリック、ジンジャー、メース、マスタード、オニオン、パプリカ、パセリ、ブラックペパー、ナッツメグ、サフラン、ローズマリー等のスパイス類の精油またはオレオレジン類;リモネン、リナロール、ネロール、シトロネロール、ゲラニオール、シトラール、l−メントール、オイゲノール、シンナミックアルデヒド、アネトール、ペリラアルデヒド、バニリン、γ−ウンデカラクトン、l−カルボン、マルトール、フルフリルメルカプタン、プロピオン酸エチル、カプロン酸アリル、メチル−n−アミルケトン、ジアセチル、酢酸、酪酸等のフレーバー物質;着香油(反応フレ−バ−);及びこれらの天然精油、オレオレジン、香料化合物等の少なくとも2種を任意に組み合わせて混合した調合香料などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
これらの機能性素材の配合量としては、共役リノール酸と食用油脂の合計重量を基準として、0.001〜5%の範囲内を例示することができる。
【0025】
本発明の乳化組成物は、以上述べた共役リノール酸、食用油脂、SAIB、乳化剤及びエタノール及び/または多価アルコールを、常法に従い、水中に分散・乳化させることにより調製することができるが、その調製法の好ましい一実施態様を例示すれば以下のとおりである。まず、前記の如き共役リノール酸に食用油脂0.5〜5重量部を加え、通常抽出トコフェロール等の酸化防止剤を加え、さらにSAIBを混合して比重調整を行った後、例えば室温〜約150℃の温度範囲で溶解して均一な混合油とする。その際の共役リノール酸及び食用油脂の混合物に対するSAIBの混合割合は、共役リノール酸と食用油脂とSAIBの3者の混合物の比重が、乳化後の本発明の組成物を添加しようとする飲料の比重±0.05の範囲内となるように選択する。かくして得られる油相混合油1重量部を、例えば、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを混合溶解した含水アルコール類溶液約2〜約50重量部(水分含有量約0.5〜約10重量%)と混合し、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー等を用いて乳化処理することにより、粒子径約0.2〜約2μmの極めて微細で安定性に優れた乳化液を得ることができる。
【0026】
本発明によれば、上記の如くして得られる乳化組成物を、飲料、例えば、果汁飲料、醗酵乳飲料、発泡性清涼飲料などに、飲料の重量を基準にして、例えば、約0.02〜約2重量%の割合で配合することによって、長期間安定で、且つ共役リノール酸に由来する抗肥満作用、抗がん作用、抗異化作用、脂肪燃焼作用などの生理機能を持つ健康飲料が得られる。
【0027】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0028】
実施例1
シーエルエース G−80(日清オイリオグループ製の共役リノール酸のトリグリセリド含有油脂:共役リノール酸のトリグリセリド含有量80%)75gにODO(日清オイリオグループ製のMCT)95g、SAIB129g及び抽出トコフェロール1gを加え、90℃にて加熱溶解後冷却して乳化用オイル部を調製した(比重1.0155)。別にグリセリン550gにデカグリグリセリンモノオレエート(HLB12)50g及び精製水100gを加え、90〜95℃で15分間加熱殺菌後40℃に冷却して水相部を調製し、上記オイル部と水相部を混合し、TK−ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて乳化し、平均粒径2μm以下の乳化物(発明品1:共役リノール酸含量6.0%)1000gを得た。
【0029】
比較例1
シーエルエース G−80(日清オイリオグループ製の共役リノール酸のトリグリセリド含有油脂:共役リノール酸のトリグリセリド含有量80%)75gにODO(日清オイリオグループ製のMCT)224gおよび抽出トコフェロール1gを加え、90℃にて加熱溶解後冷却して乳化用オイル部を調製した(比重0.9458)。別にグリセリン550gにデカグリグリセリンモノオレエート(HLB12)50g及び精製水100gを加え、90〜95℃で15分間加熱殺菌後40℃に冷却して水相部を調製した。上記オイル部と水相部を混合し、TK−ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて乳化し、平均粒径2μm以下の乳化物(比較品1:共役リノール酸含量6.0%)1000gを得た。
【0030】
実施例2
ブリックス4゜及びpH3.5の飲料基材(グラニュー糖:40g/L、クエン酸:1.5g/L、クエン酸ナトリウム:0.5g/L、ビタミンC:0.2g/L、混合液の比重1.0169)1Lに、発明品1または比較品1をそれぞれ1g添加し、98℃で30秒間加熱殺菌した後、88℃まで冷却し、500mlのペットボトルにホットパックし飲料試料とした。飲料試料は5℃、20℃、35℃、50℃にて静置保存し、飲料の外観を目視観察した。その結果を下記表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1に示す結果から明らかなとおり、SAIBを添加して比重調整を行った発明品1は6ヶ月経過しても良好な状態を維持していたが、SAIBを添加しなかった比較品1は1
ヶ月経過時点でネックリンが発生し状態不良であった。
【0033】
実施例3
シーエルエース G−80(日清オイリオグループ製の共役リノール酸のトリグリセリド含有油脂:共役リノール酸のトリグリセリド含有量80%)75gにODO(日清オイリオグループ製のMCT)91g、SAIB133g及び抽出トコフェロール1gを加え、90℃にて加熱溶解後冷却して乳化用オイル部を調製した(比重1.0239)。別にグリセリン550gにデカグリグリセリンモノオレエート(HLB12)50g及び精製水1000gを加え、90〜95℃で15分間加熱殺菌後40℃に冷却して水相部を調製した。上記オイル部と水相部を混合し、TK−ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて乳化し、平均粒径2μm以下の乳化物(発明品2:共役リノール酸含量6.0%)1000gを得た。
【0034】
実施例4
シーエルエース G−80(日清オイリオグループ製の共役リノール酸のトリグリセリド含有油脂:共役リノール酸のトリグリセリド含有量80%)75gにODO(日清オイリオグループ製のMCT)46g、SAIB178g及び抽出トコフェロール1gを加え、90℃にて加熱溶解後冷却して乳化用オイル部を調製した(比重1.0488)。別にグリセリン550gにデカグリグリセリンモノオレエート(HLB12)50g及び精製水1000gを加え、90〜95℃で15分間加熱殺菌後40℃に冷却して水相部を調製した。上記オイル部と水相部を混合し、TK−ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて乳化し、平均粒径2μm以下の乳化物(発明品3:共役リノール酸含量6.0%)1000gを得た。
【0035】
実施例5
下記表2に示す配合処方にて、ブリックス(Bx)0.3゜、3゜、6゜、9゜、12゜、15゜、18゜または21゜及びpH3.5の飲料基材を調製した。
【0036】
【表2】

【0037】
それぞれの飲料基材1Lに、発明品2、発明品3または比較品1のいずれか1品をそれぞれ1g添加し、98℃で30秒間加熱殺菌した後、88℃まで冷却し、500mlのペットボトルにホットパックし飲料試料とした。それぞれの飲料試料を35℃にて1ヶ月静置保存し、飲料の外観を目視観察した。その結果を表3に示す。なお、評価基準は表1と同じである。
【0038】
【表3】

【0039】
表3に示したとおり、乳化製剤のオイル部と飲料基材との比重差が大きくなる程、乳化安定性が低下することが認められた。
【0040】
実施例6
シーエルエース G−80(日清オイリオグループ製の共役リノール酸のトリグリセリド含有油脂:共役リノール酸のトリグリセリド含有量80%)75gにODO(日清オイリオグループ製のMCT)95g、SAIB129g及び抽出トコフェロール1gを加え、90℃にて加熱溶解後冷却して乳化用オイル部を調製した(比重1.0155)。別にグリセリン550gにショ糖脂肪酸エステル(HLB12)50gおよび精製水100gを加え、90〜95℃で15分間加熱殺菌後40℃に冷却して水相部を調製し、上記オイル部と水相部を混合し、TK−ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて乳化し、平均粒径2μm以下の乳化物(発明品4:共役リノール酸含量6.0%)1000gを得た。
【0041】
実施例7
シーエルエース G−80(日清オイリオグループ製の共役リノール酸のトリグリセリド含有油脂:共役リノール酸のトリグリセリド含有量80%)75gにODO(日清オイリオグループ製のMCT)95g、SAIB129g及び抽出トコフェロール1gを加え、90℃にて加熱溶解後冷却し乳化用オイル部を調製した(比重1.0155)。別に35%アラビアガム水溶液450gを95〜98℃で15分加熱殺菌後、40℃以下に冷却して水相部を調製し、これにオイル部を加えて混合した。次いで、乳化安定剤としてグリセリン150g及びD−ソルビトール100gを加え、TK−ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて予備乳化した後、高圧ホモジナイザーを用いて乳化を行い、平均粒径2μm以下の乳化物(発明品5:共役リノール酸含量6.0%)1000gを得た。
【0042】
実施例8
シーエルエース G−80(日清オイリオグループ製の共役リノール酸のトリグリセリド含有油脂:共役リノール酸のトリグリセリド含有量80%)75gにODO(日清オイリオグループ製のMCT)95g、SAIB129g及び抽出トコフェロール1gを加え、90℃にて加熱溶解後冷却して乳化用オイル部を調製した(比重1.0155)。別にプロピレングリコール560gに化工デンプン(日本エヌエスシー社製ピュリティーガムBE)96gおよび精製水44gを加え、90〜95℃にて15分間加熱溶解後40℃以下まで冷却して水相部を調製した。上記オイル部と水相部を混合し、TK−ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて乳化し、平均粒径2μm以下の乳化物(発明品6:共役リノール酸含量6.0%)1000gを得た。
【0043】
実施例9
シーエルエース G−80(日清オイリオグループ製の共役リノール酸のトリグリセリド含有油脂:共役リノール酸のトリグリセリド含有量80%)75gにODO(日清オイリオグループ製のMCT)95g、SAIB129g及び抽出トコフェロール1gを加え、90℃にて加熱溶解後冷却して乳化用オイル部を調製した(比重1.0155)。別にプロピレングリコール560gに大豆多糖類(不二製油社製のソヤファイブ)96g及び
精製水44gを加え、90〜95℃にて15分間加熱溶解後40℃以下まで冷却して水相部を調製した。上記オイル部と水相部を混合し、TK−ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて乳化し、平均粒径2μm以下の乳化物(発明品7:共役リノール酸含量6.0%)1000gを得た。
【0044】
実施例10
シーエルエース G−80(日清オイリオグループ製の共役リノール酸のトリグリセリド含有油脂:共役リノール酸のトリグリセリド含有量80%)75gにODO(日清オイリオグループ製のMCT)95g、SAIB129g及び抽出トコフェロール1gを加え、90℃にて加熱溶解後冷却して乳化用オイル部を調製した(比重1.0155)。別にD−ソルビトール460gに精製水90g、エタノール100g及びショ糖脂肪酸エステル(HLB12)50gを加え、90〜95℃にて15分間加熱溶解後40℃以下まで冷却して水相部を調製した。上記オイル部と水相部を混合し、TK−ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて乳化し、平均粒径2μm以下の乳化物(発明品8:共役リノール酸含量6.0%)1000gを得た。
【0045】
実施例11
ブリックス4゜及びpH3.5の飲料基材(グラニュー糖:45g/L、クエン酸:1.5g/L、クエン酸ナトリウム:0.5g/L、ビタミンC:0.2g/L、混合液の比重1.0169)1Lに、発明品4〜8のいずれか1品をそれぞれ2g添加し、98℃で30秒間加熱殺菌した後、88℃まで冷却し、500mlのペットボトルにホットパックし飲料試料とした。飲料試料は5℃および50℃にて静置保存し、飲料の外観を目視観察した。その結果を表4に示す。なお、評価基準は表1と同じである。
【0046】
【表4】

【0047】
表4に示したとおり、発明品4〜8のいずれの乳化物を添加した飲料も、50℃にて3ヶ月経過した後も良好な状態を維持していた。
【0048】
実施例12
シーエルエース G−80(日清オイリオグループ製の共役リノール酸のトリグリセリド含有油脂:共役リノール酸のトリグリセリド含有量80%)75gにODO(日清オイリオグループ製のMCT)60g、SAIB144g、オレンジ精油20g及び抽出トコフェロール1gを加え、90℃にて加熱溶解後冷却して乳化用オイル部を調製した(比重1.0155)。別にグリセリン550gにデカグリグリセリンモノオレエート(HLB12)50g及び精製水100gを加え、90〜95℃で15分間加熱殺菌後40℃に冷却して水相部を調製した。上記オイル部と水相部を混合し、TK−ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて乳化し、平均粒径2μm以下の乳化物(発明品9:共役リノール酸
含量6.0%)1000gを得た。
【0049】
次いで、得られた乳化物(発明品9)2gをブリックス4゜及びpH3.5の飲料基材(グラニュー糖:45g/L、クエン酸:1.5g/L、クエン酸ナトリウム:0.5g/L、ビタミンC:0.2g/L、混合液の比重1.0169)1Lに添加し、98℃で30秒間加熱殺菌した後、88℃まで冷却し、500mlのペットボトルにホットパックし飲料試料とした。得られた飲料は良好なオレンジの風味を有していた。また、飲料試料を5℃及び50℃にて静置保存し、飲料の外観を目視観察した。その結果、5℃、50℃のいずれにおいても、3ヶ月経過した後も良好な乳化状態を維持しており、油浮きやネックリングはみられなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役リノール酸、食用油脂、シュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート(SAIB)、乳化剤、アルコール類及び水を含有することを特徴とする共役リノール酸含有乳化組成物。
【請求項2】
共役リノール酸含有乳化組成物中の油相部を構成する共役リノール酸、食用油脂及びSAIBの3成分の混合物が、該乳化組成物を配合すべき飲料の比重差±0.05の範囲内の比重を有する請求項1に記載の共役リノール酸含有乳化組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の共役リノール酸含有乳化組成物が配合されてなる飲料。

【公開番号】特開2007−282574(P2007−282574A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113641(P2006−113641)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】