説明

共役芳香族化合物の製造方法

【課題】共役芳香族化合物を高収率で製造し得る製造方法を提供する。
【解決手段】以下の(a)、(b)、(c)、(d)及び式(1)で示される芳香族化合物を混合する工程を含み、前記芳香族化合物を縮合して、共役芳香族化合物を製造する製造方法の提供。
式(1):


(式中、Arは芳香族基を表わし、Xは脱離基を表す。)
で示される芳香族化合物を縮合して共役芳香族化合物を製造する際に、以下の(a)、(b)及び(c)(d)を用いる製造方法。
(a)ゼロ価ニッケル化合物等のニッケル化合物;
(b)下記式(2):


で示される2,2’−ビピリジン誘導体;
(c)トリシクロヘキシルホスフィン;
(d)金属還元剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役芳香族化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
共役芳香族化合物は、医薬、農薬又は液晶材料に代表される有機デバイス材料等、あるいはそれらの合成中間体として、有用な化合物であることが知られている。該共役芳香族化合物は、ハロゲノ基を有する芳香族化合物を縮合することにより製造される。たとえば非特許文献1には、塩化ニッケル、トリフェニルホスフィン、2,2’−ビピリジン及び亜鉛を用い、クロロアニソールを縮合して、ジメトキシビフェニル(共役芳香族化合物)を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J.Org.Chem.1986,51,2627〜2637頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1が開示する製造方法は、目的とする共役芳香族化合物の収率が十分とはいえず、かかる収率の点で改良が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の共役芳香族化合物の製造方法を提供するものである。
以下の(a)、(b)、(c)、(d)及び式(1)で示される芳香族化合物を混合する工程を含み、前記芳香族化合物を縮合することにより、式(3)で示される共役芳香族化合物を製造する製造方法;

(式中、Arは、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピロール環及びピリジン環からなる群より選ばれる芳香環を有する芳香族基を表わす。Xは、ヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子である脱離基であり、該脱離基は前記芳香環に直接結合している。)

(式中、Arは前記と同じ意味であり、2つのArは同じでも異なっていてもよい。)

(a)ゼロ価ニッケル化合物、ハロゲン化ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、(ジメトキシエタン)塩化ニッケル及び(ジメトキシエタン)臭化ニッケルからなる群より選ばれるニッケル化合物;
(b)下記式(2)

(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、又は炭素数1〜20のジアルキルアミノ基を表わし、2つのRは同じでも異なっていてもよく、2つのRは同じでも異なっていてもよい。)
で示される2,2’−ビピリジン誘導体;
(c)トリシクロヘキシルホスフィン
(d)金属還元剤
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、共役芳香族化合物を高収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の製造方法は、上述の(a)、(b)、(c)、(d)及び前記芳香族化合物を混合する工程を有することを特徴とする。かかる混合方法としては、たとえば
・反応容器に、(a)、(b)、(c)、(d)及び前記芳香族化合物を略同時に混合する方法;
・反応容器に、(a)、(b)及び(c)を投入して混合し、得られた混合物に、(d)及び前記芳香族化合物を混合する方法;
・第1の反応容器に前記芳香族化合物及び(d)を投入しておき、第2の反応容器に、(a)、(b)及び(c)を投入して混合物を調製しておき、当該混合物を、前記第1の反応容器に投入することにより、(a)、(b)、(c)及び(d)と、前記芳香族化合物と、を混合する方法;
を挙げることができる。これらのうち、好ましい混合方法は後述する。
【0008】
<芳香族化合物>
まず、前記式(1)で示される芳香族化合物(以下、「芳香族化合物(1)」という。)について説明する。芳香族化合物(1)は、少なくとも1つの芳香環を有し、ヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子の脱離基が少なくとも1個芳香環に結合している化合物である。
この芳香環は、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、フルオレン環及びアントラセン環といった芳香族炭化水素環、チオフェン環、ピロール環及びピリジン環といった芳香族複素環である。
【0009】
かかる芳香環は、X以外に置換基を有していてもよく、置換基を有する場合、この置換基は本発明の製造方法に係る反応の進行に影響しないものである。このような置換基の具体例としては、以下の(a1)、(b1)、(c1)、(d1)、(e1)、(f1)、(g1)、(h1)及び(j1)[以下、「(a1)〜(j1)」のように表記することがある。]が挙げられる。
(a1):フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;
(b1):フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;
(c1):フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数6〜20のアリール基;
(d1):フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;
(e1):フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数2〜20のアシル基;
(f1):フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数2〜20のアシルオキシ基;
(g1):フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基;
(h1):下記式:

(式中、Aは、炭素数1〜20の炭化水素基を置換基として有するアミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表わす。ここで、前記炭化水素基及びアルコキシ基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。)
で示される基;
(i1)シアノ基;
(j1)フッ素原子
【0010】
前記(a1)における「炭素数1〜20のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、2−メチルペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基及びn−イコシル基等が例示される。(a1)としては、ここに例示するアルキル基にある水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、シアノ基、アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基からなる群より選ばれる基で置換されたものであってもよい。置換基を有する場合は、当該置換基の炭素数を含めて、炭素数の合計が1〜20であるアルキル基が(a1)としてさらに好ましい。なお、該アルコキシ基、該アリール基及び該アリールオキシ基の具体例は後述する。
【0011】
前記(b1)における「炭素数1〜20のアルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基及びn−イコシルオキシ基等が例示される。(b1)としては、ここに例示するアルコキシ基にある水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、シアノ基、アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基からなる群より選ばれる基で置換されたものであってもよい。置換基を有する場合は、当該置換基の炭素数を含めて、炭素数の合計が1〜20であるアルコキシ基が(b1)としてさらに好ましい。なお、該アルコキシ基の具体例は前記と同じであり、該アリール基及び該アリールオキシ基の具体例は後述する。
【0012】
前記(c1)における「炭素数6〜20のアリール基」としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、3−フェナントリル基及び2−アントリル基等が例示される。(c1)としては、ここに例示するアリール基にある水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、シアノ基、アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基からなる群より選ばれる基で置換されたものであってもよい。置換基を有する場合は、当該置換基の炭素数を含めて、炭素数の合計が6〜20であるアリール基が(c1)としてさらに好ましい。なお、該アルコキシ基及び該アリール基の具体例は前記と同じであり、該アリールオキシ基の具体例は後述する。
【0013】
前記(d1)における「炭素数6〜20のアリールオキシ基」としては、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、3−フェナントリルオキシ基、2−アントリルオキシ基等の前記炭素数6〜20のアリール基と酸素原子とから構成されるものが例示される。(d1)としては、ここに例示するアリールオキシ基にある水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、シアノ基、アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基からなる群より選ばれる基で置換されたものであってもよい。置換基を有する場合は、当該置換基の炭素数を含めて、炭素数の合計が6〜20であるアリールオキシ基が(d1)としてさらに好ましい。なお、該アルコキシ基、該アリール基及び該アリールオキシ基の具体例は前記と同じである。
【0014】
前記(e1)における「炭素数2〜20のアシル基」としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基及び2−ナフトイル基等が例示される。(e1)としては、ここに例示するアシル基にある水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、シアノ基、アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基からなる群より選ばれる基で置換されたものであってもよい。置換基を有する場合は、当該置換基の炭素数を含めて、炭素数の合計が2〜20であるアシル基が(e1)としてさらに好ましい。なお、該アルコキシ基、該アリール基及び該アリールオキシ基の具体例は前記と同じである。
【0015】
前記(f1)における「炭素数2〜20のアシルオキシ基」としては、前記に例示した炭素数2〜20のアシル基のいずれか1つと酸素原子とから構成される基が例示され、具体的には、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、1−ナフトイルオキシ基及び2−ナフトイルオキシ基等を挙げることができる。(f1)としては、ここに例示するアシルオキシ基にある水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、シアノ基、アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基からなる群より選ばれる基で置換されたものであってもよい。置換基を有する場合は、当該置換基の炭素数を含めて、炭素数の合計が2〜20であるアシルオキシ基が(f1)としてさらに好ましい。なお、該アルコキシ基、該アリール基及び該アリールオキシ基の具体例は前記と同じである。
【0016】
前記(g1)における「炭素数6〜20のアリールスルホニル基」としては、フェニルスルホニル基及びp−トルエンスルホニル基等が例示される。(g1)としては、ここに例示するアリールスルホニル基にある水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、シアノ基、アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基からなる群より選ばれる基で置換されたものであってもよい。置換基を有する場合は、当該置換基の炭素数を含めて、炭素数の合計が6〜20であるアリールスルホニル基が(g1)としてさらに好ましい。なお、該アルコキシ基、該アリール基及び該アリールオキシ基の具体例は前記と同じである。
【0017】
前記(h1)における、炭素数1〜20の炭化水素基を有するアミノ基とは、
−N(R)
〔式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。2つのRのうち少なくとも1つは炭化水素基であり、2つのRの炭素数の合計が1〜20である。また、2つのRが結合して、これらが結合する窒素原子と一緒になって環を形成していてもよい。〕
で示される基を意味する。
【0018】
かかる炭化水素基で置換されたアミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、2,2−ジメチルプロピルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニルアミノ基、n−デシルアミノ基、n−ウンデシルアミノ基、n−ドデシルアミノ基、n−トリデシルアミノ基、n−テトラデシルアミノ基、n−ペンタデシルアミノ基、n−ヘキサデシルアミノ基、n−ヘプタデシルアミノ基、n−オクタデシルアミノ基、n−ノナデシルアミノ基、n−イコシルアミノ基、ピロリル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、カルバゾリル基、ジヒドロインドリル基及びジヒドロイソインドリル基等が挙げられる。
【0019】
以下に(a1)〜(h1)において、それぞれの好適な基について説明する。
前記(a1)のうち好ましい基としては、置換基を有さない炭素数1〜20のアルキル基;トリフルオロメチル基等のフッ素原子を置換基として有する炭素数1〜20のフッ化アルキル基;メトキシメチル基等のアルコキシ基を置換基として有する炭素数1〜20のアルキル基;シアノメチル基等のシアノ基を置換基として有する炭素数1〜20のアルキル基;が挙げられる。特に、置換基を有さない炭素数1〜6のアルキル基;フッ素原子、アルコキシ基又はシアノ基を置換基として有し、その炭素数が1〜6のアルキル基;が好ましい。
前記(b1)のうち好ましい基としては、置換基を有さない炭素数1〜20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基等の、アルコキシ基を置換基として有する炭素数1〜20のアルコキシ基;が挙げられる。特に、置換基を有さない炭素数1〜6のアルコキシ基;アルコキシ基を置換基として有し、その炭素数1〜6のアルコキシ基;が好ましい。
前記(c1)のうち好ましい基としては、置換基を有さない炭素数6〜20のアリール基が挙げられ、置換基を有さない炭素数6〜10のアリール基が特に好ましい。
前記(d1)のうち好ましい基としては、置換基を有さない炭素数6〜20のアリールオキシ基が挙げられ、置換基を有さない炭素数6〜10のアリールオキシ基が特に好ましい。
前記(e1)のうち好ましい基としては、置換基を有さない炭素数2〜20のアシル基;フェノキシベンゾイル基等のアリールオキシ基を置換基として有する炭素数2〜20のアシル基;が挙げられ、特に、置換基を有さない炭素数2〜10のアシル基;アリールオキシ基を置換基として有し、その炭素数が2〜10のアシル基;が好ましい。
前記(f1)のうち好ましい基としては、置換基を有さない炭素数2〜20のアシルオキシ基;フェノキシベンゾイルオキシ基等のアリールオキシ基を置換基として有する炭素数2〜20のアシルオキシ基;が挙げられ、特に、置換基を有さない炭素数2〜10のアシル基;アリールオキシ基を置換基として有し、その炭素数が2〜10のアシル基;が好ましい。
前記(g1)のうち好ましい基としては、置換基を有さない炭素数6〜20のアリールスルホニル基が挙げられ、炭素数6〜10のアリールスルホニル基が特に好ましい。
前記(h1)のうち好ましい基としては、Aが、イソプロポキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ジエチルアミノ基又はn−ドデシルアミノ基である基が挙げられる。具体的には、イソプロポキシスルホ基、2,2−ジメチルプロポキシスルホ基、シクロヘキシルオキシスルホ基、ジエチルアミノスルホ基又はn−ドデシルアミノスルホ基を挙げることができる。これらの中でも、Aが、イソプロポキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基又はシクロヘキシルオキシ基である基がより好ましい。
【0020】
本発明の製造方法に係る反応に、より影響を及ぼさない点では、前記(a1)〜(j1)のうち、(a1)、(b1)、(e1)及び(h1)からなる群より選ばれる基が好ましい。したがって、これらの基を置換基として有する芳香族化合物(1)は、本発明の製造方法に好ましく用いることができる。
【0021】
芳香族化合物(1)のXは、本発明の製造方法に係わる反応において脱離し得る脱離基であり、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0022】
芳香族化合物(1)としては、市販のものを用いてもよいし、公知の方法に準じて製造したものを用いてもよい。
かかる芳香族化合物(1)を具体的に例示すると、
クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、4−クロロフルオロベンゼン、3−クロロフルオロベンゼン、2−クロロフルオロベンゼン、2−クロロトルエン、2,5−ジメチルクロロベンゼン、2−エチルクロロベンゼン、3−n−プロピルクロロベンゼン、4−イソプロピルクロロベンゼン、5−n−ブチルクロロベンゼン、2−イソブチルクロロベンゼン、3−sec−ブチルクロロベンゼン、4−tert−ブチルクロロベンゼン、5−(2,2−ジメチルプロピル)クロロベンゼン、2−n−ヘキシルクロロベンゼン、4−シクロヘキシルクロロベンゼン、4−ベンジルクロロベンゼン、4−クロロベンゾニトリル、4−クロロビフェニル、2−クロロビフェニル、4−クロロベンゾトリフルオリド、2−クロロベンゾトリフルオリド、(4−クロロフェニル)アセトニトリル、
3−クロロアニソール、4−クロロアニソール、2,3−ジメトキシクロロベンゼン、2,4−ジメトキシクロロベンゼン、2,5−ジメトキシクロロベンゼン、2−エトキシクロロベンゼン、3−n−プロポキシクロロベンゼン、4−イソプロポキシクロロベンゼン、5−n−ブトキシクロロベンゼン、4−tert−ブトキシクロロベンゼン、4−フェノキシクロロベンゼン、4−ベンジルオキシクロロベンゼン、4−(メトキシメチル)クロロベンゼン、4−(n−ブトキシメチル)クロロベンゼン、4−(メトキシメトキシ)クロロベンゼン、4−(ベンジルオキシメトキシ)クロロベンゼン、4−{2−(n−ブトキシ)エトキシ}クロロベンゼン、
4−クロロアセトフェノン、2−クロロアセトフェノン、4−クロロプロピオフェノン、1−(4−クロロフェニル)−2,2−ジメチルプロパノン、(4−クロロベンゾイル)シクロヘキサン、4−クロロベンゾフェノン、p−クロロベンザルアセトン、1−クロロ−4−(フェニルスルホニル)ベンゼン、4−クロロフェニル p−トリル スルホン、4−クロロベンゼンスルホン酸メチル、3−クロロベンゼンスルホン酸メチル、2−クロロベンゼンスルホン酸メチル、4−クロロベンゼンスルホン酸エチル、4−クロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、3−クロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2−クロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、
N,N−ジメチル−4−クロロベンゼンスルホンアミド、N,N−ジメチル−3−クロロベンゼンスルホンアミド、N,N−ジメチル−2−クロロベンゼンスルホンアミド、N,N−ジエチル−4−クロロベンゼンスルホンアミド、
1−クロロナフタレン、2−ブロモチオフェン、5−ブロモ−3−ヘキシルチオフェン、2−ブロモ−3−ドデシルチオフェン、5−ブロモ−2,2’−ビチオフェン、5−ブロモ−3−シクロヘキシルチオフェン、2−クロロ−3−オクチルチオフェン、5−クロロ−3−フェニルチオフェン、1−メチル−5−クロロピロール、1−ヘキシル−2−ブロモピロール、1−オクチル−5−クロロピロール、2−クロロピリジン、3−クロロピリジン、5−ブロモピリジン、3−メチル−2−クロロピリジン、3−ヘキシル−5−クロロピリジン、5−クロロ−2,2’−ビピリジン、3,3’−ジメチル−5−クロロ−2,2’−ビピリジン及び3,3’−ジオクチル−5−ブロモ−2,2’−ビピリジン等が挙げられる。ここに例示した芳香族化合物(1)は、脱離基X以外に置換基を有さないか、本発明の製造方法に係る反応にほとんど影響を及ぼさない基を置換基として有するものであるので、本発明の製造方法に用いるうえで特に好適なものといえる。
【0023】
次に、本発明で用いる前記の(a)〜(d)について、具体例を示しつつ説明する。
<ニッケル化合物>
前記(a)のニッケル化合物(以下、場合により「ニッケル化合物(a)」という)としては、ゼロ価ニッケル化合物、ハロゲン化ニッケル(例えば、フッ化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル等)、2−エチルヘキサン酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、(ジメトキシエタン)塩化ニッケル及び(ジメトキシエタン)臭化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である。該ゼロ価ニッケル化合物としては、中心金属ニッケルの原子価状態がゼロであるニッケル錯体(ゼロ価ニッケル錯体)が好ましく、該ゼロ価ニッケル錯体の中でもビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)がさらに好ましい。ハロゲン化ニッケルとしては、フッ化ニッケル、塩化ニッケル及び臭化ニッケルが市場から容易に入手し易い好ましく、塩化ニッケル及び臭化ニッケルがさらに好ましい。
ニッケル化合物(a)の使用量は、芳香族化合物(1)1モルに対して、0.001〜0.8モルの範囲が好ましく、0.01〜0.4モルの範囲がより好ましい。該使用量が多すぎると、反応後の後処理が煩雑になる傾向がある。なお、このニッケル化合物(a)として複数種を用いる場合は、その合計モル量が前記の範囲であればよい。
【0024】
<配位子化合物>
次に、前記(b)のビピリジン誘導体(以下、「ビピリジン誘導体(b)」という)及び(c)トリシクロヘキシルホスフィンに関して説明する。ビピリジン誘導体(b)及びトリシクロヘキシルホスフィンは、前記ニッケル化合物(a)から解離したゼロ価ニッケル又はニッケルイオンに対して配位し得る特性を備えた化合物(以下、ビピリジン誘導体(b)及びトリシクロヘキシルホスフィンを「配位子化合物」と総称することがある)である。
はじめに、ビピリジン誘導体(b)について説明する。前記式(2)において、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、又は炭素数2〜20のジアルキルアミノ基を表わす。
【0025】
ここで、炭素数1〜20のアルキル基の例示は、前記(a1)のアルキル基として例示したものと同じであり、メチル基及びtert−ブチル基が好ましい。
かかるアルキル基にフッ素原子を置換基として有しているものの具体例は、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロ−n−プロピル基及びパーフルオロイソプロピル基等が挙げられ、好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0026】
アリール基の例示は、前記(c1)の説明で例示したもののうち、置換基を有さないものと同じであり、好ましくはフェニル基である。
【0027】
アルコキシ基の例示は、前記(b1)の説明で例示したもののうち、置換基を有さないものと同じであり、好ましくはメトキシ基である。
【0028】
アシル基の例示は、前記(e1)の説明で例示したもののうち、置換基を有さないものと同じであり、好ましくはアシル基及びベンゾイル基である。
【0029】
炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基等が挙げられ、好ましくはメトキシカルボニル基である。
【0030】
炭素数2〜20のジアルキルアミノ基は、
−N(R’)
〔式中、R’は炭化水素基を表し、2つのR’の炭素数の合計が2〜20である。また、2つのR’が結合して、これらが結合する窒素原子と一緒になって環を形成していてもよい。〕
で示される基を意味する。
例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n−プロピル)アミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ(n−ブチル)アミノ基及びジ(2,2−ジメチルプロピル)アミノ基等が挙げられ、好ましくはジメチルアミノ基である。
【0031】
該ビピリジン誘導体(b)を具体的に例示すると、4,4’‐ジフルオロ‐2,2’‐ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジフェニル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメトキシ−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジアセチル−2,2’−ビピリジン、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸メチル、4,4’−ジトリフルオロメチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2−ビピリジン及び4,4’−ジメチルアミノ−2,2’−ビピリジン等を挙げることができる。
【0032】
ビピリジン誘導体(b)の使用量は、ニッケル化合物(a)1モルに対して0.1〜2モルの範囲が好ましく、0.3〜0.8モルの範囲がより好ましい。なお、このビピリジン誘導体(b)として複数種を用いる場合は、その合計モル量が前記の範囲であればよい。
【0033】
前記(c)のトリシクロヘキシルホスフィンは市場から容易に入手できるものを用いることができる。
トリシクロヘキシルホスフィンの使用量は、ニッケル化合物(a)1モルに対して、0.2〜4モルの範囲が好ましく、0.5〜1.5モルの範囲がさらに好ましい。
【0034】
ビピリジン誘導体(b)及びトリシクロヘキシルホスフィンの各々の使用量は、前記の範囲が好適であるが、前記配位子化合物の総使用量に対するトリシクロヘキシルホスフィンの使用量の割合をモル比で表わすと、0.01〜0.99の範囲が好ましく、0.1〜0.9の範囲であるとより好ましい。
【0035】
<金属還元剤>
本発明の製造方法において、ゼロ価ニッケル化合物をニッケル化合物(a)として用いた場合であっても、前記芳香族化合物(1)が縮合されて共役芳香族化合物を生成する反応の系中でゼロ価ニッケル自身が酸化され、1価、2価又は3価のニッケルイオン(1〜3価のニッケルイオン)になることがある。反応系中で当該1〜3価のニッケルイオンを還元することができると、共役芳香族化合物の生成がより効率的に進行する。このような還元には、(d)金属還元剤(以下、「金属還元剤(d)」という)を用いることが好ましく、したがって、前記芳香族化合物(1)を縮合する過程は、金属還元剤(b)の存在下であることが好ましい。この金属還元剤(d)は、反応系中で1〜3価のニッケルイオンを還元できる還元能力を有するものであり、例えば、亜鉛、マグネシウム、マンガン、アルミニウム及びナトリウム等の金属が好ましく用いられる。取扱いが容易である点で金属還元剤(d)は、亜鉛、マグネシウム及びマンガンが好ましく、亜鉛がより好ましい。また、取扱いが容易である点では、金属還元剤(d)の形状は粉末状又は削り状のものが好ましい。
金属還元剤(d)の使用量は、芳香族化合物(1)1モルに対して、1モル以上であればよいが、多すぎると、反応後の後処理が煩雑になり、経済的にも不利になるため、芳香族化合物(1)1モルに対して、10モル以下の範囲が好ましく、5モル以下の範囲がさらに好ましい。なお、この金属還元剤(b)として複数種を用いる場合は、その合計モル量が前記の範囲であればよい。
【0036】
<ニッケル錯体の調製>
本発明の製造方法では、ニッケル化合物(a)、配位子化合物(ビピリジル誘導体(b)及びトリシクロヘキシルホスフィン)、金属還元剤(d)及び芳香族化合物(1)を混合する工程を含むものであればよいが、予め、ニッケル化合物(a)と、配位子化合物と、を混合することにより、ニッケル錯体を調製しておいてもよい。
このニッケル錯体の調製方法については例えば、以下に示す(イ)、(ロ)、(ハ)又は(ニ)〔(イ)〜(ニ)〕を挙げることができる。
(イ)ニッケル化合物(a)とビピリジン誘導体(b)とから調製した錯体と、ニッケル化合物(a)とトリシクロヘキシルホスフィンとから調製した錯体と、を各々準備し、これらを溶剤中で混合する調製方法;
(ロ)溶剤中で、ニッケル化合物(a)と、ビピリジン誘導体(b)又はトリシクロヘキシルホスフィンと、を用いて錯体を含む溶液を調製しておき、他方の配位子化合物を該溶液に加える調製方法;
(ハ)溶液にニッケル化合物と2つの配位子化合物を加えてニッケル錯体を調製する調製方法;
(ニ)配位子化合物ならびにニッケル化合物は、固体のまま混合し、ニッケル錯体を調製する調製方法
なお、(イ)〜(ニ)に示す調製方法のいずれであっても、調製されるニッケル錯体は1種のみならず、複数種のニッケル錯体が調製されていることがある。
【0037】
例示した中でも、ニッケル錯体の調製は溶液中で行うことが好ましく、溶液中でのニッケル錯体の調製は、該溶液の色相の変化により、ニッケル錯体が調製されたことを判別することが容易である。また、ニッケル錯体の調製を溶液中で行うと、当該ニッケル錯体は、より短時間で調製できるという利点もある。なお、ニッケル錯体の調製を溶液中で行うためには、当該調製の際に溶剤を用いればよい。
【0038】
本発明の製造方法は好ましくは、芳香族化合物(1)、ニッケル化合物(a)、金属還元剤(b)及び配位子化合物を混合することにより行われる。これらの混合順は、
(i)予めニッケル錯体を調製する場合には、ニッケル化合物(a)、配位子化合物及び溶剤を混合してニッケル錯体を調製した後、この反応液に芳香族化合物(1)及び金属還元剤(b)と、必要に応じて溶剤と、を混合する形式;
(ii)ニッケル化合物(a)と、配位子化合物及び金属還元剤(d)と、溶剤と、を混合した後、得られた混合物に芳香族化合物(1)を加える形式;
(iii)ニッケル化合物(a)、配位子化合物、金属還元剤(d)、芳香族化合物(1)及び溶剤を略同時に反応容器に仕込み、混合する形式;
等、特に限定されない。予め、ニッケル錯体を調製しておく場合には、(i)又は(ii)の混合順を選択すればよく、より操作を簡便にする場合には、(iii)の混合順を選択すればよい。
このようにして、芳香族化合物(1)と、前記の(a)〜(d)と、を混合した後、所定の反応温度で保温することにより、本発明の製造方法を行うことができる。当該反応温度は、使用する芳香族化合物(1)、ニッケル化合物(a)及び金属還元剤(d)の種類等により、0〜250℃の範囲から調節できるが、好ましくは30〜100℃の範囲である。反応時間は、0.5〜48時間の範囲であり、クロマトグラフィ−分析等を行うことにより、所定時間おきに、芳香族化合物(1)の消費の度合いや共役芳香族化合物の生成の度合いを求めて、反応終点を決定することもできる。また、本発明の製造方法は、窒素等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましく、予めニッケル錯体を調製する場合は、当該調製も不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。本発明の製造方法においては、反応途中の反応溶液中に金属還元剤(d)が十分分散する程度に攪拌することが好ましい。この攪拌を行うと、反応時間をより短縮化することもできる。
【0039】
ここで、本発明の製造方法に用いる溶剤について説明しておく。当該溶剤としては、用いる芳香族化合物(1)及び生成する共役芳香族化合物が溶解し得るものが好ましく、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサン等のエ−テル溶剤;ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド及びヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶剤;ジクロロメタン及びジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶剤が挙げられる。かかる溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なかでも、エ−テル溶剤及び非プロトン性極性溶剤が好ましく、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン及びN,N−ジメチルアセトアミドがより好ましい。溶剤の使用量は、芳香族化合物(1)の1重量部に対して、1〜200重量部が好ましく、5〜100重量部がより好ましい。
【0040】
反応後の反応混合物からは、たとえば、抽出、再結晶、再沈殿又はクロマトグラフィ−といった精製操作、あるいはこれらを組み合わせた精製操作を行うことにより、目的物である共役芳香族化合物を精製又は単離することができる。また、このような精製操作を行う前に、該反応後の反応混合物は、室温(約23℃)程度の温度になるように、冷却又は加温しておくことが好ましい。
【0041】
かくして、以下の式(4)で示される共役芳香族化合物が得られる。

(Arは前記と同じ意味である。)
上述のとおり、式(4)において2つのArは異なっていてもよいが、2つのArが同じである共役芳香族化合物、いわゆる対称型の共役芳香族化合物が好ましい。その理由は、このような対称型の共役芳香族化合物が、医薬、農薬又は液晶材料等の用途に特に有用であるからである。また、この対称型の共役芳香族化合物は、本発明の製造方法において、1種の芳香族化合物(1)のみを用いることで製造できるため、製造がより簡便であり、また精製し易くなるという利点もある。
式(4)で示される共役芳香族化合物の中で、好適な対称型の共役芳香族化合物としては、例えば、
ビフェニル、4,4’−ジフルオロビフェニル、3,3’−ジフルオロビフェニル、2,2’−ジフルオロビフェニル、2,2’−ジメチルビフェニル、2,2’,5,5’−テトラメチルビフェニル、2,2’−ジエチルビフェニル、3,3’−ジ−n−プロピルビフェニル、4,4’−ジイソプロピルビフェニル、5,5’−ジ−n−ブチルビフェニル、2,2’−ジイソブチルビフェニル、3,3’−ジ−sec−ブチルビフェニル、4,4’−ジ−tert−ブチルビフェニル、5,5’−ビス(2,2−ジメチルプロピル)ビフェニル、2,2’−ジ−n−ヘキシルビフェニル、4,4’−ジシクロヘキシルビフェニル、4,4’−ジベンジルビフェニル、4,4’−ジシアノビフェニル、4,4’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(シアノメチル)ビフェニル、
3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジメトキシビフェニル、2,2’,3,3’−テトラメトキシビフェニル、2,2’,4,4’−テトラメトキシビフェニル、2,2’,5,5’−テトラメトキシビフェニル、2,2’−ジエトキシビフェニル、3,3’−ジ−n−プロポキシビフェニル、4,4’−ジイソプロポキシビフェニル、5,5’−ジ−n−ブトキシビフェニル、4,4’−ジ−tert−ブトキシビフェニル、4,4’−ジフェノキシビフェニル、4,4’−ジベンジルオキシビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(n−ブトキシメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメトキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(ベンジルオキシメトキシ)ビフェニル、4,4’−ビス{2−(n−ブトキシ)エトキシ}ビフェニル、
4,4’−ジアセチルビフェニル、4,4’−ジベンゾイルビフェニル、4,4’−ビス(フェニルスルホニル)ビフェニル、ビフェニル−4,4’−ジスルホン酸ジメチル、ビフェニル−4,4’−ジスルホン酸ジエチル、ビフェニル−4,4’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、ビフェニル−3,3’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、1,1’−ビナフタレン、2,2’−ビチオフェン、3,3’−ジヘキシル−5,5’−ビチオフェン、1,1’−ジメチル−5,5’−ビピロ−ル、2,2’−ビピリジン、3,3’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、3,3’−ジヘキシル−5,5’−ビピリジン、2,2’−ビピリミジン、5,5’−ビキノリン、1,1’−ビイソキノリン、4,4’−ビス(2,1,3−ベンゾチアジアゾ−ル)及び7,7’−ビス(ベンゾイミダゾ−ル)等が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。得られた共役芳香族化合物は、反応混合物中の該共役芳香族化合物の濃度をガスクロマトグラフィ−(GC)内部標準法分析により求め、その結果から収量を算出した。GC内部標準法分析の測定条件を下記に示す。

GC測定装置 SHIMADZU社製 GC−2010
カラム J&W社製 DB−1
(膜厚0.25μm、長さ30m、内径0.2mm)を接続
注入モ−ド スプリット(スプリット比63)
気化室温度 250℃
検出器(FID) 温度 250℃
測定カラム温度 100℃で10分保持後、10℃/分の昇温速度で260℃まで昇温
した。
【0043】
実施例1
攪拌装置及び冷却装置を備えたガラス製反応容器内の雰囲気を、窒素で充分置換した後、該反応容器に、室温(約23℃)下で、臭化ニッケル7.6mg、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸メチル4.8mg、トリシクロヘキシルホスフィン9.8mg、亜鉛粉末96.2mg、4−クロロアセトフェノン118.8mg(0.70mmol)及びN,N’−ジメチルアセトアミド5mLを仕込んだ。内温を70℃まで昇温し、同温度を保持して4時間反応させることにより、生成物である4,4’−ジアセチルビフェニルを含む反応混合物を得た。GC内部標準法分析の結果、ほぼ定量的に4,4’−ジアセチルビフェニルが得られていることが判明した(収率 約100%)。
【0044】
比較例1
実施例1において、トリシクロヘキシルホスフィン9.8mgの代わりに、トリフェニルホスフィン9.2mgを用い、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸メチル4.8mgの代わりに、2,2’−ビピリジン2.7mgを用いた以外は、実施例1と同じ反応を行い、4,4’−ジアセチルビフェニルを含む反応混合物を得た。4,4’−ジアセチルビフェニルの収量は24.4mg(0.10mmol)であり、収率は29%であった。
【0045】
実施例2
攪拌装置及び冷却装置を備えたガラス製反応容器内の雰囲気を、窒素で充分置換した後、該反応容器に、室温下で、臭化ニッケル7.6mg、2,2’−ビピリジン2.7mg、トリシクロヘキシルホスフィン9.8mg、亜鉛粉末96.2mg、2−クロロアニソ−ル109.5mg(0.77mmol)及びN,N’−ジメチルアセトアミド5mLを仕込んだ。内温を70℃まで昇温し、同温度を保持して4時間反応させることにより、生成物である2,2’−ジメトキシビフェニルを含む反応混合物を得た。2,2’−ジメトキシビフェニルの収量は47.6mg(0.22mmol)であり、収率は57%であった。
【0046】
比較例2
実施例2において、トリシクロヘキシルホスフィン9.8mgの代わりに、トリフェニルホスフィン9.2mgを用いた以外は、実施例2と同じ反応を行った。GC内部標準法分析を行ったところ、目的物である2,2’−ジメトキシビフェニルの生成は確認できなかった(収率 約0%)。
【0047】
実施例3
攪拌装置及び冷却装置を備えたガラス製反応容器内の雰囲気を、窒素で充分置換した後、該反応容器に、室温下で、臭化ニッケル7.6mg、2,2’−ビピリジン2.7mg、トリシクロヘキシルホスフィン9.8mg、亜鉛粉末96.2mg、4−クロロアニソ−ル109.5mg(0.77mmol)及びN,N’−ジメチルアセトアミド5mLを仕込んだ。内温を70℃まで昇温し、同温度を保持して4時間反応させることにより、生成物である4,4’−ジメトキシビフェニルを含む反応混合物を得た。4,4’−ジメトキシビフェニルの収量は56.3mg(0.26mmol)であり、収率は74%であった。
【0048】
比較例5
実施例3において、トリシクロヘキシルホスフィン9.8mgの代わりに、トリフェニルホスフィン9.2mgを用いた以外は、実施例3と同じ反応を行い、4,4’−ジメトキシビフェニルを含む反応混合物を得た。4,4’−ジメトキシビフェニルの収量は11.2mg(0.047mmol)であり、収率は13%であった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、共役芳香族化合物を良好な収率で製造することができる。本発明により得られる共役芳香族化合物は、医薬、農薬又は有機デバイス材料等、あるいはそれらの合成中間体に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)、(b)、(c)、(d)及び式(1)で示される芳香族化合物を混合する工程を含み、前記芳香族化合物を縮合することにより、式(3)で示される共役芳香族化合物を製造することを特徴とする製造方法。

(式中、Arは、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピロール環及びピリジン環からなる群より選ばれる芳香環を有する芳香族基を表わす。Xは、ヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子である脱離基であり、該脱離基は前記芳香環に直接結合している。)

(式中、Arは前記と同じ意味であり、2つのArは同じでも異なっていてもよい。)

(a)ゼロ価ニッケル化合物、ハロゲン化ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、(ジメトキシエタン)塩化ニッケル及び(ジメトキシエタン)臭化ニッケルからなる群より選ばれるニッケル化合物;
(b)下記式(2)

(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、又は炭素数2〜20のジアルキルアミノ基を表わし、2つのRは同じでも異なっていてもよく、2つのRは同じでも異なっていてもよい。)
で示される2,2’−ビピリジン誘導体;
(c)トリシクロヘキシルホスフィン
(d)金属還元剤
【請求項2】
前記(a)が、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)を含むことを特徴とする請求項1に記載される製造方法。
【請求項3】
前記(a)が、フッ化ニッケル、塩化ニッケル及び臭化ニッケルからなる群より選ばれるハロゲン化ニッケルを含むことを特徴とする請求項1に記載される製造方法。
【請求項4】
前記共役芳香族化合物が、前記式(3)の2つのArが同じである対称型の共役芳香族化合物である請求項1〜3のいずれかに記載される製造方法。

【公開番号】特開2011−6325(P2011−6325A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148553(P2009−148553)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】