説明

共振器

【課題】アンテナ方式の入出力機構を備えた共振器において、アンテナの位置決めが容易であるとともに、結合度を調整するためのネジを必要としない共振器を提供しようとするものである。
【解決手段】 高周波信号を伝播し、共振棒のみが配設された共振器と組み合わせてフィルタ装置を構成するアンテナ方式の入出力機構を備えた共振器において、高周波信号を入力または出力する端子と接続され、筐体内において絶縁体を介して共振棒と平行に配設された結合棒と、一方の端部が上記端子と接続され、他方の端部が上記結合棒と絶縁体よりなるネジによって固定的に接続された金属導体よりなる結合線路とを有し、上記結合棒は、上記ネジにより上記絶縁体を介して上記筐体内に配設されてアンテナとして機能し、上記共振棒と電磁界結合するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振器に関し、さらに詳細には、高周波信号を伝播し、共振棒のみを備えた複数の共振器と組み合わされてフィルタ装置を構成する共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、共振棒のみを備えた共振器を複数用いてフィルタ装置を構成する場合には、高周波信号を入力する側と高周波信号を出力する側において、高周波信号を伝播する構成の共振器が利用される。
【0003】
こうした共振器においては、フィルタ装置において、結合棒を利用し、結合棒と共振棒とを電磁界結合させる結合棒方式の入出力機構を構成したり、あるいは、共振棒に直接結合線路を接続して高周波信号を給電するタップ結合方式の入出力機構を構成する。
【0004】

ここで、フィルタ装置として帯域通過フィルタを例とし、当該帯域通過フィルタにおいて用いられる結合棒方式およびタップ結合方式による入出力機構について説明することとする。
【0005】
図1(a)には、結合棒方式による入出力機構を備えた帯域通過フィルタの筐体側面の一部を破断した概略構成説明図が示されており、また、図1(b)には、図1(a)のI−I線による断面図が示されており、また、図2(a)には、図1(a)に示す帯域通過フィルタの入力部または出力部を拡大した拡大説明図が示されており、また、図2(b)には、図2(a)のA−A線による断面図が示されており、また、図3(a)には、タップ結合方式による入出力機構を備えた帯域通過フィルタの筐体側面の一部を破断した概略構成説明図が示されており、また、図3(b)には、図3(a)のII−II線による断面図が示されており、また、図4(a)には、図3(a)に示す帯域通過フィルタの入力部または出力部を拡大した拡大説明図が示されており、また、図4(b)は、図4(a)のB−B線による断面図が示されている。
【0006】

この図1に示す帯域通過フィルタ500においては、両端面が閉塞した四角筒形状の筐体502内において、4つの共振棒506a、506b、506c、506dが、互いに隣り合う共振棒とそれぞれ所定の間隔L2を開けて軸方向に並び、筐体502と短絡した状態で配設されている。
【0007】
筐体502の一方の端面502aには、入力部520が設けられている。こうした入力部520は、高周波信号を筐体502内に入力するための入力端子504と、共振棒506aと所定の間隔L1を開けて筐体502に短絡状態で配設された結合棒508と、入力端子504と結合棒508とを接続する導体よりなる結合線路510とを有して構成されている。
【0008】
結合線路510は、筐体502の壁面を貫通するようにして、一方の端部510bが入力端子504と接続し、他方の端部510aがハンダ付け処理により結合棒508に接続されている。これにより、結合線路510によって入力端子504と結合棒508とが電気的に接続されることとなる。
【0009】
さらに、筐体502の他方の端面502bには、出力部530が設けられている。こうした出力部530は、帯域通過フィルタ500により処理された高周波信号を筐体502の外部に出力するための出力端子522と、共振棒506dと所定の間隔L1を開けて筐体502に短絡状態で配設された結合棒524と、出力端子522と結合棒とを接続する導体よりなる結合線路526とを有して構成されている。
【0010】
結合線路526は、筐体502の壁面を貫通するように、一方の端部526bが出力端子522に接続し、他方の端部526aがハンダ付け処理により結合棒524に接続されている。これにより、結合線路526によって出力端子522と結合棒524とが電気的に接続されることとなる。
【0011】
なお、所定の間隔L1は、結合棒508、524から共振棒506a、506dに電磁界結合する最適な間隔となっており、所定の間隔L2は、隣り合う共振棒が電磁界結合する最適な間隔となっている。
【0012】
このように、帯域通過フィルタ500は、4つの共振器により構成されており、詳細には、入力部520が設けられた共振器、共振棒のみを備えた共振器2つ、出力部530が設けられた共振器とにより構成されていることとなる。
【0013】

こうした構成において、帯域通過フィルタ500に高周波信号を入力すると、入力端子504から入力された高周波信号は、結合線路510を介して結合棒508へ伝播する。
【0014】
結合棒508へ伝播した高周波信号は、共振棒506aに電磁界結合し、所望の共振周波数で励振する。
【0015】
共振棒506aに励振された高周波信号は、隣り合う共振棒に電磁界結合して共振棒506dまで伝播し、共振棒506dに励振された高周波信号は、結合棒524と電磁界結合する。
【0016】
その後、結合棒524に到達した高周波信号は、結合線路526を介して出力端子522から出力されることとなる。
【0017】

次に、図3に示す帯域通過フィルタ550においては、両端面が閉塞した四角筒形状の筐体552内において、4つの共振棒556a、556b、556c、556dが、互いに隣り合う共振棒とそれぞれ所定の間隔L2を開けて軸方向に並び、筐体552と短絡した状態で配設されている。
【0018】
筐体552の一方の端面552aには、入力部560が設けられている。こうした入力部560は、高周波信号を筐体552内に入力するための入力端子554と、入力端子554と共振棒556aとを接続する導体よりなる結合線路558とを有して構成されている。
【0019】
結合線路558は、筐体552の壁面を貫通するようにして、一方の端部558bが入力端子554と接続し、他方の端部558aがハンダ付け処理により共振棒556aと接続されている。これにより、結合線路558によって入力端子554と共振棒556aとが電気的に接続されることとなる。
【0020】
さらに、筐体552の他方の端面552bには、出力部570が設けられている。こうした出力部570は、帯域通過フィルタ550により処理された高周波信号を筐体552の外部に出力するための出力端子562と、出力端子562と共振棒556dとを接続する導体よりなる結合線路564とを有して構成されている。
【0021】
結合線路564は、筐体552の壁面を貫通するようにして、一方の端部564bが入力端子562と接続し、他方の端部564aがハンダ付け処理により共振棒556dと接続されている。これにより、結合線路564によって出力端子562と共振棒556dとが電気的に接続されることとなる。
【0022】
なお、所定間隔L2は、隣り合う共振棒が電磁界結合する最適な間隔となっている。
【0023】
このように、帯域通過フィルタ550は、4つの共振器により構成されており、詳細には、入力部560が設けられた共振器、共振棒のみを備えた共振器2つ、出力部570が設けられた共振器とにより構成されていることとなる。
【0024】

こうした構成において、帯域通過フィルタ550に高周波信号を入力すると、入力端子554から入力された高周波信号は、結合線路558を介して共振棒556aに給電される。
【0025】
共振棒556aに給電された高周波信号は、共振棒556aにおいて所望の共振周波数で励振する。
【0026】
共振棒556aに励振された高周波信号は、隣り合う共振棒に電磁界結合して共振棒556dまで伝播し、共振棒556dに励振された高周波信号は、結合線路564を介して出力端子から出力されることとなる。
【0027】

こうした結合棒方式の入出力機構やタップ結合方式の入出力機構を備えた共振器においては、結合線路が結合棒や共振棒に直接接続されいるので、当該共振器を用いてフィルタ装置を構成する場合には、入力端子に直流電圧を印加する際に、別途DCカットを行う手段を設ける必要があった。
【0028】

こうした結合棒方式およびタップ結合方式に対して、DCカットを行う手段を設ける必要がない方式として、アンテナ方式が知られている。
【0029】
ここで、フィルタ装置として帯域通過フィルタを例とし、当該帯域通過フィルタにおいて用いられるアンテナ方式の入出力機構について説明することとする。
【0030】
図5(a)には、アンテナ方式による入出力機構を備えた帯域通過フィルタの筐体側面の一部を破断した概略構成説明図が示されており、また、図5(b)には、図5(a)のIII−III線による断面図が示されており、また、図6(a)には、図5(a)に示す帯域通過フィルタの入力部または出力部を拡大した拡大説明図が示されており、また、図6(b)には、図6(a)のC−C線により断面図が示されており、また、図7(a)には、共振棒近傍に配置された円板形状のアンテナを示す説明図が示されており、また、図7(b)には、共振棒近傍に配置された棒形状のアンテナを示す説明図が示されており、また、図7(c)には、共振棒近傍に配置された矩形板形状のアンテナを示す説明図が示されている。
【0031】

この図5に示す帯域通過フィルタ600においては、両端面が閉塞した四角筒形状の筐体602内において、4つの共振棒606a、606b、606c、606dが、互いに隣り合う共振棒とそれぞれ所定の間隔L2を開けて軸方向に並び、筐体602と短絡した状態で配設されている。
【0032】
筐体602の一方の端面602aには、入力部620が設けられている。こうした入力部620は、高周波信号を筐体602内に入力するための入力端子604と、一方の端部608bが入力端子604と接続される結合線路608と、結合線路608の他方の端部608aに配設されたアンテナ610とを有して構成されている。
【0033】
結合線路608は、筐体602の壁面を貫通するようにして、一方の端部608bが入力端子604に接続され、他方の端部608aに円板形状(図7(a)を参照する。)、棒形状(図7(b)を参照する。)または矩形板形状(図7(c)を参照する。)に形成された導体よりなるアンテナ610が接続されている。これにより、結合線路608によって、入力端子604と共振棒606aとが電気的に接続されることとなる。
【0034】
さらに、筐体602の他方の端面602bには、出力部630が設けられている。こうした出力部630は、帯域通過フィルタ600により処理された高周波信号を筐体602の外部に出力するための出力端子622と、一方の端部626bが出力端子622と接続される結合線路626と、結合線路626の他方の端部626aに配設されたアンテナ624とを有して構成されている。
【0035】
結合線路626は、筐体602の壁面を貫通するようにして、一方の端部626bが出力端子622に接続され、他方の端部626aに円板形状(図7(a)を参照する。)、棒形状(図7(b)を参照する。)または矩形板形状(図7(c)を参照する。)に形成された導体よりなるアンテナ624が接続されている。これにより、結合線路626によって、出力端子622とアンテナ624とが電気的に接続されることとなる。
【0036】
なお、所定間隔L2は、隣り合う共振棒が電磁界結合する最適な間隔となっている。
【0037】
このように、帯域通過フィルタ600は、4つの共振器により構成されており、詳細には、入力部620が設けられた共振器、共振棒のみを備えた共振器2つ、出力部630が設けられた共振器とにより構成されていることとなる。
【0038】

こうした構成において、帯域通過フィルタ600に高周波信号を入力すると、入力端子604から入力された高周波信号は、結合線路608を介してアンテナ610に伝播する。
【0039】
アンテナ610へ伝播した高周波信号は、共振棒606aに電磁界結合し、所望の共振周波数で励振する。
【0040】
共振棒606aに励振された高周波信号は、隣り合う共振棒に電磁界結合して共振棒606dまで伝播し、共振棒606dに励振された高周波信号は、アンテナ624と電磁界結合する。
【0041】
その後、アンテナ624に到達した高周波信号は、結合線路626を介して出力端子622から出力されることとなる。
【0042】

このように、アンテナ方式の入出力機構を備えた共振器においては、結合線路608、626にそれぞれ接続されるアンテナ610、624は接地されていないので、当該共振器を用いた帯域通過フィルタ600において、入力端子604に直流電圧を印加する際に、DCカットの手段を設ける必要がなくなる。
【0043】
しかしながら、アンテナ方式の入出力機構を備えた共振器においては、アンテナ610、624をそれぞれ共振器内に接触しないように配設する必要があり、当該共振器を作製する際には、アンテナ610、624を位置決めするために専用の治具を使用したり、図8に示すような、結合度を調整するためのネジを別途設ける必要があり、当該共振器を簡単に作製することができないという問題点が指摘されていた。
【0044】

なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、本願明細書に記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アンテナ方式の入出力機構を備えた共振器において、アンテナの位置決めが容易であるとともに、結合度を調整するためのネジを必要としない共振器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0046】
上記目的を達成するために、本発明は、高周波信号を伝播し、共振棒のみが配設された共振器と組み合わせてフィルタ装置を構成するアンテナ方式の入出力機構を備えた共振器において、高周波信号を入力または出力する端子と接続され、筐体内において絶縁体を介して共振棒と平行に配設された結合棒と、一方の端部が上記端子と接続され、他方の端部が上記結合棒と絶縁体よりなるネジによって固定的に接続された金属導体よりなる結合線路とを有し、上記結合棒は、上記ネジにより上記絶縁体を介して上記筐体内に配設されてアンテナとして機能し、上記共振棒と電磁界結合するようにしたものである。
【0047】
また、本発明は、上記した発明において、上記結合線路は、板状の金属導体で構成されるようにしたものである。
【0048】
また、本発明は、上記した発明において、上記結合線路は、絶縁基板上に形成された導体パターンで構成されるようにしたものである。
【0049】
また、本発明は、上記した発明において、上記結合線路は、金属線で構成されるようにしたものである。
【発明の効果】
【0050】
本発明は、以上説明したように構成されているので、アンテナ方式の入出力機構を備えた共振器において、アンテナの位置決めが容易であるとともに、結合度を調整するネジを設ける必要がなくなるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1(a)は、従来の技術による結合棒方式の入出力機構を備えた帯域通過フィルタの筐体側面の一部を破断した概略構成説明図であり、また、図1(b)は、図1(a)のI−I線断面図である。
【図2】図2(a)は、図1(a)に示す帯域通過フィルタの入力部または出力部を拡大した拡大説明図であり、また、図2(b)は、図2(a)のA−A線断面図である。
【図3】図3(a)は、従来の技術によるタップ結合方式に入出力機構を備えた帯域通過フィルタの筐体側面の一部を破断した概略構成説明図であり、また、図3(b)は、図3(a)のII−II線断面図である。
【図4】図4(a)は、図3(a)に示す帯域通過フィルタの入力部または出力部を拡大した拡大説明図であり、また、図4(b)は、図4(a)のB−B線断面図である。
【図5】図5(a)は、従来の技術によるアンテナ方式の入出力機構を備えた帯域通過フィルタの筐体側面の一部を破断した概略構成説明図であり、また、図5(b)は、図5(a)のIII−III線断面図である。
【図6】図6(a)は、図5(a)に示す帯域通過フィルタの入力部または出力部を拡大した拡大説明図であり、また、図5(b)は、図5(a)のC−C線断面図である。
【図7】図7(a)は、共振棒近傍に配設された円板形状のアンテナを示す説明図であり、また、図7(b)は、共振棒近傍に配設された棒形状のアンテナを示す説明図であり、また、図7(c)は、共振棒近傍に配設された矩形板形状のアンテナを示す説明図である。
【図8】図8は、図5(a)に示す帯域通過フィルタの入力部または出力部において、結合度を調整するためのネジを設けた場合の説明図である。
【図9】図9(a)は、本発明による共振器を備えた帯域通過フィルタの筐体側面の一部を破断した概略構成説明図であり、また、図9(b)は、図9(a)のIV−IV線断面図である。
【図10】図10(a)は、図9(a)に示す帯域通過フィルタの入力部または出力部を拡大した拡大説明図が示されており、また、図10(b)は、図10(a)のD−D線断面図であり、また、図10(c)は、入力部または出力部において結合線路、結合棒、スペーサおよび筐体の接続前の状態を示す説明図である。
【図11】図11(a)は、本発明による共振器の変形例を備えた帯域通過フィルタにおける入力部を拡大した拡大説明図が示されており、また、図11(b)は、図11(a)のE−E線断面図であり、また、図11(c)は、入力部または出力部において金属線、結合棒、スペーサおよび筐体の接続前の状態を示す説明図である。
【図12】図12(a)は、本発明による共振器の変形例を備えた帯域通過フィルタにおける出力部を拡大した拡大説明図が示されており、また、図12(b)は、図12(a)のF−F線断面図であり、また、図12(c)は、入力部または出力部において絶縁基板、結合棒、スペーサおよび筐体の接続前に状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による共振器の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0053】
なお、以下の説明においては、図1乃至図8を参照しながら説明した従来の共振器と同一または相当する構成については、上記において用いた符号と同一の符号を用いて示すことにより、その詳細な構成ならびに作用効果能説明は適宜に省略することとする。
【0054】

図9(a)には、本発明による共振器を備えた帯域通過フィルタの筐体側面の一部を破断した概略構成説明図が示されており、また、図9(b)には、図9(a)のIV−IV線による断面図が示されており、また、図10(a)には、図9(a)に示す帯域通過フィルタの入力部または出力部を拡大した拡大説明図が示されており、また、図10(b)には、図10(a)のD−D線による断面図が示されており、また、図10(c)には、入力部または出力部において、結合線路、結合棒、スペーサおよび筐体の接続前の状態を示す説明図が示されている。
【0055】

この図9に示す帯域通過フィルタ10においては、両端面が閉塞した四角筒形状の筐体12内において、4つの共振棒16a、16b、16c、16dが、互いに隣り合う共振棒とそれぞれ所定の間隔L2を設けて軸方向に並び、筐体12と一体的に形成されている。
【0056】
なお、共振棒16a、16b、16c、16dおよび筐体12は、所定の通過帯域と減衰帯域を備えるように寸法設定されている。
【0057】
筐体12の一方の端部12aには、入力部26が設けられている。こうした入力部26は、高周波信号を筐体12内に入力するための入力端子14と、共振棒16aと平行であり、かつ、共振棒16aと所定の間隔L1を開けて絶縁体よりなるスペーサ34を介して筐体12内に配設された結合棒20と、入力端子14と結合棒20とを接続する金属導体の結合線路18とを有して構成されている。
【0058】
結合線路18は、板状の金属よりなり、一方の端部18bにおいて筐体12の壁面を貫通するようにして入力端子14と接続されている。
【0059】
また、結合線路18は、他方の端部18aにおいて結合棒20とネジ22により接続されている。なお、このネジ22は、絶縁体より作製されており、例えば、スペーサ34と同じ素材により作製されている。
【0060】
結合棒20は、導体により作製され、上端面20aから下端面20cまで貫通するように、ネジ22とネジ結合可能なネジ穴20bが設けられており、また、結合線路18には、他方の端部18aにおいてネジ22が挿入可能な孔18aaが設けられている。
【0061】
また、筐体12には、共振棒16aが配設された面12cに、ネジ22とネジ結合可能なネジ穴12caが設けられている。
【0062】
なお、ネジ穴12caは、結合棒20をネジ22により筐体12に固定した際(後述する。)に、結合棒20が共振棒16aと所定の間隔L1を開けて配設される位置に設けられている。こうした所定の間隔L1は、結合棒20に伝播した高周波信号を共振棒16aに電磁界結合するのに最適な間隔となっている。
【0063】
さらに、スペーサ34は、結合棒20と略同径の円板形状であり、上端面34aから下端面34cまで貫通するように、ネジ22とネジ結合可能なネジ穴34bが設けられている。
【0064】
そして、結合線路18、結合棒20およびスペーサ34を筐体12に固定するには、まず、筐体12のネジ穴12ca上にネジ穴34bが位置するようにスペーサ34を配置する。
【0065】
次に、スペーサ34の上端面34aにおいて、ネジ穴34b上にネジ穴20bが位置するように結合棒20を配置し、さらに結合棒20の上端面20aにおいて、ネジ穴20b上に孔18aaが位置するように結合線路18を配置する。
【0066】
その後、ネジ22の軸22aを孔18aaに通してネジ穴20bにはめ込み、ネジ22を所定の方向に回転させてネジ22を結合棒20にネジ結合させ、さらに所定の方向にネジ22を回転させてネジ22とスペーサ34とをネジ結合させるとともに、軸22aとネジ穴12caとをネジ結合させる。
【0067】
これにより、入力部26においては、導体よりなる結合線路18と導体よりなる結合棒20とが接した状態で絶縁体よりなるネジ22により固定的に接続されるため、結合線路18と結合棒20とは電気的に接続された状態となり、また、絶縁体よりなるスペーサ34を介して結合棒20と筐体12とが絶縁体よりなるネジ22により固定的に接続されているため、結合線路18および結合棒20は筐体12と電気的に接続されていない状態となる。
【0068】
即ち、この入力部26においては、従来の技術による帯域通過フィルタ600のアンテナ610に相当する構成として、筐体12にスペーサ34を介して結合棒20が配設されるものである。
【0069】
さらに、筐体12の他方の端部12bには、出力部36が設けられている。こうした出力部36は、帯域通過フィルタ10により処理された高周波信号を筐体12の外部に出力するための出力端子24と、共振棒16dと平行であり、かつ、共振棒16dと所定の間隔L1を開けて絶縁体よりなるスペーサ38を介して筐体12内に配設された結合棒30と、出力端子24と結合棒30とを接続する金属導体の結合線路28つを有して構成されている。
【0070】
結合線路28は、板状の金属よりなり、一方の端部28bにおいて筐体12の壁面を貫通するようにして出力端子24と接続されている。
【0071】
また、結合線路28は、他方の端部28aにおいて結合棒30とネジ32により接続されている。なお、このネジ32は、絶縁体により作製されており、例えば、スペーサ38と同じ素材により作製されている。
【0072】
結合棒30は、導体により作製され、上端面30aから下端面30cまで貫通するように、ネジ32とネジ結合可能なネジ穴30bが設けられており、また、結合線路28には、他方の端部28aにおいてネジ32が挿入可能な孔28aa設けられている。
【0073】
また、筐体12には、共振棒16dが配設された面12cにネジ32とネジ結合可能なネジ穴12cbが設けられている。
【0074】
なお、ネジ穴12cbは、結合棒30をネジ32により筐体12に固定した際(後述する。)に、結合棒30が共振棒16dと所定の間隔L1を開けて配設される位置に設けられている。こうした所定の間隔L1は、共振棒16dにおいて励振された高周波信号を結合棒30に電磁界結合するのに最適な間隔となっている。
【0075】
さらに、スペーサ38は、結合棒30と略同径の円板形状であり、上端面38aから下端面38cまで貫通するように、ネジ32とネジ結合可能なネジ穴38bが設けられている。
【0076】
そして、結合線路28、結合棒30およびスペーサ38を筐体12に固定するには、まず、筐体12のネジ穴12cb上にネジ穴38bが位置するようにスペーサ38を配置する。
【0077】
次に、スペーサ38の上端面38aにおいて、ネジ穴38b上にネジ穴30bが位置するように結合棒30を配置し、さらに結合棒30の上端面30aにおいて、ネジ穴30b上に孔28aaが位置するように結合線路28を配置する。
【0078】
その後、ネジ32の軸32aを孔28aaに通してネジ穴30bにはめ込み、ネジ32を所定の方向に回転させてネジ32を結合棒30にネジ結合させ、さらに所定の方向にネジ22を回転させてネジ22とスペーサ38をネジ結合させるとともに、軸32aとネジ穴12cbとをネジ結合させる。
【0079】
これにより、出力部36においては、導体よりなる結合線路28と導体よりなる結合棒30とが接した状態で絶縁体よりなるネジ22により固定的に接続されるため、結合線路28と結合棒30とは電気的に接続された状態となり、また、絶縁体よりなるスペーサ38を介して結合棒30と筐体とが絶縁体よりなるネジ22により固定的に配設されるため、結合線路28および結合棒30は筐体12と電気的に接続されていない状態となる。
【0080】
即ち、この出力部36においては、従来の技術による帯域通過フィルタ600のアンテナ624に相当する構成として、筐体12にスペーサ38を介して結合棒30が配設されるものである。
【0081】
このように、帯域通過フィルタ10は、4つの共振器により構成されており、詳細には、入力部26が設けられた共振器、筐体12と一体的に形成された共振棒のみを備えた共振器2つ、出力部36が設けられた共振器により構成されていることとなる。
【0082】

こうした構成において、帯域通過フィルタ10に高周波信号を入力すると、入力端子14から入力された高周波信号は、結合線路18と結合棒20とが電気的に接続された状態であるため、結合線路18を介して結合棒20へ伝播する。
【0083】
結合棒20へ伝播した高周波信号は、共振棒16aへ電磁界結合し、所望の共振周波数で励振する。
【0084】
このとき、入力端子14から入力された直流信号は、結合線路18と結合棒20とが電気的に接続された状態のため、結合線路18を介して結合棒20へ伝播するが、結合棒20と筐体12とは電気的に接続されていない状態のため結合棒20から筐体12へは伝播することがない。
【0085】
共振棒16aに励振された高周波信号は、隣り合う共振棒へ電磁界結合して共振棒16dまで伝播し、共振棒16dに励振された高周波信号は、結合棒30と電磁界結合する。
【0086】
その後、結合棒30に到達した高周波信号は、結合線路28を介して出力端子24から帯域通過フィルタ10の外部に出力されることとなる。
【0087】

以上において説明したように、帯域通過フィルタ10においては、入力部26において、結合線路18と結合棒20とが互いに接するように絶縁体よりなるネジ22により固定的に接続されることによって、結合線路18と結合棒20とを電気的に接続した状態とし、結合棒20を絶縁体よりなるスペーサ34を介して絶縁体よりなるネジ22により筐体12に配設することによって、結合棒20と筐体12とが電気的に接続していない状態とした。
【0088】
また、結合棒20は、筐体12に形成されたネジ穴12ca上にネジ22によってスペーサ34を介して固定されるようにした。
【0089】
このため、入力部26においては、結合棒20が従来の技術による帯域通過フィルタ600のアンテナ610に相当するものとなり、アンテナ方式の入力機構となる。
【0090】
そして、この入力部26においては、筐体12における共振棒16a〜16dが形成された面12cに設けられたネジ穴12caの位置により結合棒20の配設位置が決まるものである。
【0091】
このため、筐体12の面12cに機械加工などの簡単な処理によりネジ穴12caを形成することで、容易に結合棒20の配設位置を決定することができるようになる。
【0092】

さらに、帯域通過フィルタ10においては、出力部36において、結合線路28と結合棒30とが互いに接するように絶縁体よりなるネジ32により固定的に接続されることによって、結合線路28と結合棒30とを電気的に接続した状態とし、結合棒30を絶縁体よりなるスペーサ38を介して絶縁体よりなるネジ32により筐体12と配設することによって、結合棒30と筐体12とが電気的に接続していない状態とした。
【0093】
また、結合棒30は、筐体12に形成されたネジ穴12cb上にネジ32によってスペーサ38を介して固定されるようにした。
【0094】
このため、出力部36においては、結合棒30が従来技術による帯域通過フィルタ600のアンテナ624に相当するものとなり、アンテナ方式に出力機構となる。
【0095】
そして、この出力部36においては、筐体12における共振棒16a〜16dが形成された面12cに設けられたネジ穴12cbの位置により結合棒30の配置位置が決まるものである。
【0096】
このため、筐体12の面12cに機械加工などの簡単な処理によりネジ穴12cbを形成することで、容易に結合棒30の配置位置を決定することができるようになる。
【0097】

また、帯域通過フィルタ10においては、機械加工により、筐体12の面12cにネジ穴12ca、12cbを高い精度で所望の位置に形成することができるので、調整ネジといった結合度の微調整を行う構成を必要とせずに所望の結合度を実現することができる。
【0098】

なお、上記した実施の形態においては、入力部26および出力部36において、それぞれ金属導体よりなる結合線路18、28として、板状の金属を用いるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、こうした板状の金属よりなる結合線路18、28に代えて、金属線や導体パターンが形成された絶縁基板を用いるようにしてもよい。
【0099】
以下、金属線を用いた例として、入力部26において結合線路18に代えて金属線48を用いた場合について説明し、導体パターンが形成された絶縁基板を用いた例として、出力部36において結合線路18に代えて導体パターン58−1が形成された絶縁基板58を用いた場合について説明する。
【0100】

まず、入力部26において結合線路18に代えて金属線48を用いる場合には、高周波信号を筐体12内に入力するための入力端子14と、共振棒16aと平行であり、かつ、共振棒16aと所定の間隔L1を開けて絶縁体よりなるスペーサ34を介して筐体12内に配設された結合棒20と、入力端子14と結合棒20とを接続する金属線48とを有して構成されている(図11参照する。)。
【0101】
金属線48は、一方の端部18bにおいて筐体12の壁面を貫通するようにして入力端子14と接続されている。
【0102】
また、金属線48は、他方の端部48aにおいてネジ22が挿入可能なリング48aaが設けられており、このリング48aaを利用して結合棒20とネジ22により接続されている。
【0103】
そして、金属線48、結合棒20、スペーサ34を筐体12に配設するには、まず、筐体12のネジ穴12ca上にネジ穴34bが位置するようにスペーサ34を配置する。
【0104】
次に、スペーサ34の上端面34aにおいて、ネジ穴34b上にネジ穴20bが位置するように結合棒20を配置し、さらに結合棒20の上端面20aにおいて、ネジ穴20b上にリング48aaが位置するように金属線48を配置する。
【0105】
その後、ネジ22の軸22aをリング48aaに通してネジ穴20bにはめ込み、ネジ22を所定の方向に回転させてネジ22を結合棒20にネジ結合させ、さらに所定の方向にネジ22を回転させてネジ22とスペーサ34とをネジ結合させるとともに、軸22aとネジ穴12caとをネジ結合させる。
【0106】
これにより、入力部26においては、金属線48と導体よりなる結合棒20とが接した状態で、金属線48と結合棒20とが絶縁体よりなるネジ22により固定的に接続されるため、金属線48と結合棒20とは電気的に接続された状態となり、また、絶縁体よりなるスペーサ34を介して結合棒20と筐体12とが絶縁体よりなるネジ22により固定的に接続されているため、金属線48および結合棒20は筐体12と電気的に接続されていない状態となる。
【0107】

次に、出力部36において結合線路18に代えて導体パターン58−1が形成された絶縁基板を用いる場合には、帯域通過フィルタ10により処理された高周波信号を筐体12の外部に出力するための出力端子24と、共振棒16dと平行であり、かつ、共振棒16dと所定の間隔L1を開けて絶縁体よりなるスペーサ38を介して筐体12内に配設された結合棒30と、出力端子24と結合棒30とを接続する導体パターン58−1が形成された絶縁基板58とを有して構成されている(図12を参照する。)。
【0108】
また、筐体12の一方の端面12aの筐体内部においては、絶縁基板58が入力端子14および結合棒20と接続する際に、絶縁基板58を安定して配設するための凸部54が設けられている。
【0109】
絶縁基板58の表面58bに形成された導体パターン58−1は、一方の端部58−1aにおいて絶縁基板とともに筐体12の壁面を貫通するようにして出力端子24と接続されている。
【0110】
また、絶縁基板58には、絶縁基板58を貫通するように孔58aが設けられており、導体パターン58−1は、他方の端部58−1bにおいて孔58aを通って裏面58cの孔58aの周辺まで導体によるパターンが形成されている。そして、この孔58aを利用して結合棒30と絶縁基板58とがネジ32により接続されている。
【0111】
そして、絶縁基板58、結合棒30、スペーサ38を筐体12に配設するには、まず、筐体12のネジ穴12cb上にネジ穴38bが位置するようにスペーサ38を配置する。
【0112】
次に、スペーサ38の上端面38aにおいて、ネジ穴38b上にネジ穴30bが位置するように結合棒30を配置し、さらに結合棒30の上端面30aにおいて、ネジ穴20b上に孔58aが位置するように絶縁基板58を配置する。
【0113】
その後、ネジ32の軸32aを孔58aに通してネジ穴30bにはめ込み、ネジ22を所定の方向に回転させてネジ32を結合棒30にネジ結合させ、さらに所定の方向にネジ32を回転させてネジ32とスペーサ38とをネジ結合させるとともに、軸32aとネジ穴12cbとをネジ結合させる。
【0114】
これにより、出力部36においては、裏面58cの孔58a周辺に形成された導体パターン58−1と導体よりなる結合棒30とが接した状態で、絶縁基板58と結合棒30とがネジ22により固定的に接続されるため、導体パターン58−1と結合棒30とは電気的に接続された状態となり、また、絶縁体よりなるスペーサ38を介して結合棒30と筐体12とが絶縁体よりなるネジ32により固定的に接続されているため、絶縁基板58に形成された導体パターン58−1および結合棒30は筐体12と電気的に接続されていない状態となる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、マイクロ波通信装置などに用いられるフィルタ装置を構成する共振器として利用することができる。
【符号の説明】
【0116】
10、500、550、600 帯域通過フィルタ
12、502、552、602 筐体
14、504、554、604 入力端子
16a、16b、16c、16d、506a、506b、506c、506d、556a、556b、556c、556d、606a、606b606c、606d 共振棒
18、28、510、526、558、564、608、626 結合線路
20、30、508、524 結合棒
22、32 ネジ
24、522、562、622 出力端子
26、520、560、620 入力部
36、530、570、630 出力部
48 金属線
58 絶縁基板
58−1 導体パターン
610、624 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を伝播し、共振棒のみが配設された共振器と組み合わせてフィルタ装置を構成するアンテナ方式の入出力機構を備えた共振器において、
高周波信号を入力または出力する端子と接続され、筐体内において絶縁体を介して共振棒と平行に配設された結合棒と、
一方の端部が前記端子と接続され、他方の端部が前記結合棒と絶縁体よりなるネジによって固定的に接続された金属導体よりなる結合線路と
を有し、
前記結合棒は、前記ネジにより前記絶縁体を介して前記筐体内に配設されてアンテナとして機能し、前記共振棒と電磁界結合する
ことを特徴とする共振器。
【請求項2】
請求項1に記載の共振器において、
前記結合線路は、板状の金属導体で構成される
ことを特徴とする共振器。
【請求項3】
請求項に記載の共振器において、
前記結合線路は、絶縁基板上に形成された導体パターンで構成される
ことを特徴とする共振器。
【請求項4】
請求項1に記載の共振器において、
前記結合線路は、金属線で構成される
ことを特徴とする共振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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