説明

共振型双方向コンバータ回路

【課題】共振型双方向コンバータ回路において、一次側駆動回路及び二次側駆動回路のいずれを駆動する場合であっても、共振周期(共振周波数)を一致させる。
【解決手段】トランス5の一次側巻き線N1側に接続され、スイッチング回路及び整流回路として機能する一次側駆動回路3と、一次側駆動回路3がスイッチング回路として機能しているとき整流回路として機能し、一次側駆動回路3が整流回路として機能しているときスイッチング回路として機能する二次側駆動回路4と、一次側駆動回路3又は二次側駆動回路4がスイッチング回路として機能しているか又は整流回路として機能しているかに応じて、インダクタ11及び12のインダクタンス値を可変とする共振周期整合回路10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば二次電池の充放電用双方向コンバータ回路、特に共振型双方向コンバータ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、太陽光発電や家庭用燃料電池などを利用する場合、バックアップ用に二次電池が用いられる。二次電池には充放電を行うための双方向コンバータ回路(DC/DCコンバータ)が接続されている。一般的に、太陽電池などの電源電圧の方が二次電池に電圧よりも高くなるように設定されており、双方向コンバータ回路は、二次電池を充電するときは、電源電圧を二次電池の電圧よりも若干高い程度の電圧に降圧する。また、二次電池から放電するときは、二次電池の電圧を電源電圧に昇圧する。
【0003】
図9は、非共振型の双方向コンバータ回路(特許文献1参照)の基本的な構成を示す。双方向コンバータ回路50は、トランス52を挟んでほぼ対称な構成を有しており、一次巻き線N51及び二次巻き線N52には、それぞれ一次側駆動回路53及び二次側駆動回路54が接続されている。一次側駆動回路53及び二次側駆動回路54は、それぞれ4つのMOSFETなどのスイッチ素子Q51〜Q54及びQ55〜Q58で構成されたフルブリッジ回路である。二次電池51から負荷57に電力を放電する場合、一次側駆動回路53はスイッチング回路として機能し、二次側駆動回路54は整流回路として機能する。一方、他の電源57から二次電池51に電力を充電する場合は、一次側駆動回路53は整流回路として機能し、二次側駆動回路54はスイッチング回路として機能する。ところで、MOSFETは寄生ダイオードを有しているので、二次電池51から放電させる場合は、一次側駆動回路53のスイッチ素子Q51とQ54の組及びQ52とQ53の組を交互にオン及びオフさせる。その際、二次側駆動回路54のスイッチ素子Q55〜Q58はオフされ、スイッチ素子Q55〜Q58の寄生ダイオードが整流用ダイオードブリッジを構成する。二次電池51を充電する場合は、二次側駆動回路54のスイッチ素子Q55とQ58の組及びQ56とQ57の組を交互にオン及びオフさせ、一次側駆動回路53のスイッチ素子Q51〜Q54をオフさせる。
【0004】
MOSFETは、上記寄生ダイオードの他に寄生容量も有している。そのため、MOSFETなどのスイッチ素子がオフされているときに寄生容量に電荷が蓄積される。そして、スイッチ素子がオンされると、この電荷がスイッチ素子に流れ、ノイズの原因となったり、スイッチ素子による損失となったりする。そこで、図10に示すように、スイッチ素子によるブリッジ回路53(又は54)とトランス52の一次巻き線N51(又は二次巻き線N52)の間にインダクタL51を接続した共振型双方向コンバータ回路も提案されている(特許文献2参照)。共振型双方向コンバータ回路では、スイッチ素子の寄生容量とインダクタによって共振回路が形成され、スイッチ素子がオフされているときに寄生容量に蓄積された電荷によって振動電流が発生される。この振動電流がゼロクロスするタイミングでスイッチ素子をオンすれば、スイッチ素子のオン時の瞬時電流を低減することができる。
【0005】
ところが、インダクタL51を、例えば図10に示すようにトランス52の一次側に接続すると、コンバータ回路50の回路構成における対称性が崩れ、一次側から見たインダクタンス値と二次側から見たインダクタンス値が異なる。一次側から見たインダクタンス値をL1、トランス52の一次側巻き線N51と二次側巻き線N52の比をNとすると、二次側から見たインダクタンス値L2=L1/Nとなる。一次側駆動回路53のMOSFETQ51〜Q54をオン/オフ駆動する際の共振周期T1=2π(L1×2C)1/2、二次側駆動回路54のスイッチ素子Q55〜Q58をオン/オフ駆動する際の共振周期T2=2π(L1×2C)1/2/Nとなる。
【0006】
すなわち、一次側駆動回路53のスイッチ素子Q51〜Q54をオン/オフ駆動する場合と二次側駆動回路54のスイッチ素子Q55〜Q58をオン/オフ駆動する場合とで共振周期が異なる。そのため、一次側駆動回路53と二次側駆動回路54のいずれか一方を駆動する際、スイッチ素子の寄生容量による瞬時電流が発生し、ノイズが発生したり、スイッチ素子による損失が発生したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−156448号公報
【特許文献2】特開2004−282828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、一次側駆動回路及び二次側駆動回路のいずれを駆動する場合であっても、共振周期(共振周波数)を一致させることが可能な共振型双方向コンバータ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、発明の一態様に係る共振型双方向コンバータ回路は、トランスと、前記トランスの一次巻き線及び二次巻き線にそれぞれ接続された一次側駆動回路及び二次側駆動回路を備え、前記一次側駆動回路を駆動させたときの共振周期と前記二次側駆動回路を駆動させたときの共振周期がほぼ一致するように、インダクタンス値又は静電容量値を可変としたことを特徴とする。
【0010】
また、発明の他の一態様に係る共振型双方向コンバータ回路は、トランスと、前記トランスの一次側巻き線との間に接続され、スイッチング回路及び整流回路として機能する一次側駆動回路と、前記トランスの二次側巻き線側に接続され、前記一次側駆動回路が発振回路として機能しているとき整流回路として機能し、前記一次側駆動回路が整流回路として機能しているときスイッチング回路として機能する二次側駆動回路と、前記一次側駆動回路又は前記二次側駆動回路のいずれかに設けられ、その一次側駆動回路又は二次側駆動回路がスイッチング回路として機能しているか又は整流回路として機能しているかに応じて、インダクタンス値及び静電容量値の少なくとも一方を可変とする共振周期整合回路を備えたことを特徴とする。
【0011】
上記構成において、前記一次側駆動回路及び前記二次側駆動回路は、寄生ダイオード及び寄生容量を有する複数の第1スイッチ素子で構成されたブリッジ回路であり、前記共振周期整合回路は、前記ブリッジ回路の一端と前記トランスの一次巻き線又は二次巻き線の一端との間に接続され、直列接続された第1インダクタ及び第2インダクタと、前記第2インダクタに並列接続された第2スイッチ素子を有することが好ましい。
【0012】
または、前記一次側駆動回路及び前記二次側駆動回路は、寄生ダイオード及び寄生容量を有する複数の第1スイッチ素子で構成されたブリッジ回路であり、前記共振周期整合回路は、前記ブリッジ回路の一端と前記トランスの一次巻き線又は二次巻き線の一端との間に接続され、直列接続された第1インダクタ、第2インダクタ及びコンデンサと、前記第2インダクタ及び前記コンデンサの直列回路に並列接続された第2スイッチ素子を有することが好ましい。
【0013】
さらに、前記第2スイッチ素子は、寄生ダイオード及び寄生容量を有しないスイッチ素子であることが好ましい。
【0014】
さらに、前記寄生ダイオード及び寄生容量を有しないスイッチ素子は、GaN/AlGaNを用いた横型トランジスタ構造を有するスイッチ素子であることが好ましい。
【0015】
さらに、前記第2スイッチ素子は双方向スイッチであることが好ましい。
【0016】
または、前記一次側駆動回路及び前記二次側駆動回路は、寄生ダイオード及び寄生容量を有する複数のスイッチ素子で構成されたブリッジ回路であり、前記共振周期整合回路は、前記複数の第1スイッチ素子にそれぞれ並列接続されたコンデンサ及び第3スイッチ素子の直列回路を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、インダクタンス値及び又は静電容量値を可変としたので、トランスの一次側から見たインダクタンス値又は静電容量値と二次側から見たインダクタンス値又は静電容量値を一致させることができる。その結果、一次側駆動回路及び二次側駆動回路のいずれを駆動する場合であっても、共振周期(共振周波数)を一致させることができ、駆動回路の寄生容量による瞬時電流の発生やノイズの発生を低減し、駆動回路による損失を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る共振型双方向コンバータ回路(DC/DCコンバータ)の構成を示す図。
【図2】双方向スイッチ素子(シングルゲート)の構成を示す平面図。
【図3】図2における範囲Aの拡大図。
【図4】図2におけるB−B断面図。
【図5】双方向スイッチ素子(デュアルゲート)の構成を示す平面図。
【図6】図5におけるC−C断面図。
【図7】上記一実施形態に係る振型双方向コンバータ回路の変形例を示す図。
【図8】上記一実施形態に係る振型双方向コンバータ回路の他の変形例を示す図。
【図9】従来の非共振型双方向コンバータ回路の構成を示す図。
【図10】従来の共振型双方向コンバータ回路の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る共振型双方向コンバータ回路(DC/DCコンバータ)について説明する。図1は、本実施形態に係る共振型双方向コンバータ回路1の構成を示す図である。共振型双方向コンバータ回路1は、トランス5を挟んで非対称な構成であり、一次巻き線N1及び二次巻き線N2には、それぞれ一次側駆動回路3及び二次側駆動回路4が接続されている。また、一次側駆動回路3及び二次側駆動回路4は、上記従来例と同様に、それぞれ4つのMOSFETなどの第1スイッチ素子Q1〜Q4及びQ5〜Q8で構成されたフルブリッジ回路である。
【0020】
一次側駆動回路3の入出力端子である第1端子31,32は、例えば二次電池2に接続されている。一方、二次側駆動回路4の入出力端子である第2端子41,42は、負荷8又は例えば太陽電池などの他の電源9に接続される。あるいは、第2端子41,42は、配電盤などに接続されていてもよい。ここでは、第2端子41,42は、負荷8と他の電源9の両方に接続され、負荷8と他の電源9のいずれかを選択して接続する切換装置7に接続されているものとして説明する。
【0021】
一次側駆動回路3は、第1端子31,32とトランス5の一次側巻き線N1との間に接続されたスイッチング回路及び整流回路として機能する。同様に、二次側駆動回路4は、第2端子41,42とトランス5の二次側巻き線N2との間に接続され、一次側駆動回路3がスイッチング回路として機能しているとき整流回路として機能し、一次側駆動回路3が整流回路として機能しているときスイッチング回路として機能する。さらに、図1に示す構成例では、一次側駆動回路3の第1スイッチ素子Q1〜Q4で構成されたブリッジ回路の一端と、トランス5の一次巻き線N1の一端との間に、共振周期整合回路10が接続されている。共振周期整合回路10は、直列接続された第1インダクタ(コイル)11及び第2インダクタ12と、第2インダクタ12に並列接続された第2スイッチ素子13を有している。
【0022】
さらに、共振周期整合回路10は、一次側駆動回路3に流れる電流の向きから第1駆動回路3が発振回路として機能しているかあるいは整流回路として機能しているかを検出する電流検出回路20を有している。電流検出回路20は、一次巻き線が一次側駆動回路3に直列に接続された第2トランス21と、特定の方向にだけ第2トランス21の二次巻き線に電流を流すためのダイオード22を備えている。ダイオード22の向きは、第1駆動回路3が発振回路として機能しているときだけ、第2スイッチ素子13のゲートに駆動信号が入力されるように設定されている。
【0023】
制御回路30は、例えばCPU、ROM及びRAMなどで構成され、第1スイッチ素子Q1〜Q8及び第2スイッチ素子13のゲート信号を制御し、これらのスイッチ素子のオンの及びオフを制御する。なお、制御回路30と各スイッチ素子のゲートの結線は省略している。
【0024】
一次側駆動回路3をスイッチング回路として機能させる場合、すなわち、二次電池2から負荷8に電力を供給する場合、制御回路30は第1スイッチ素子Q1〜Q4をオン及びオフさせる。トランス5の一次巻き線N1には交流電流が流れるので、トランス5の二次巻き線N2にも交流電流が流れる。そのとき、制御回路30は、二次側駆動回路4の第1スイッチ素子Q5〜Q8をオフしており、第1スイッチ素子Q5〜Q8の寄生ダイオードが整流回路を構成する。その結果、負荷8に直流電力が供給される。
【0025】
第2トランス21の一次巻き線には交流電流が流れ、それによって第2トランス21の二次巻き線にもダイオード22の順方向に交流電流が流れ、この交流電流による電圧が第2スイッチ素子13のゲートに入力される。第2スイッチ素子13がオンすると、第2インダクタ12には電流が流れない。すなわち、一次側駆動回路3がスイッチング回路として機能しているときは、トランス5の一次巻き線の一端と一次側駆動回路3のブリッジ回路の一端との間には、第1インダクタ11のみが接続されている場合と等価になる。
【0026】
一方、一次側駆動回路3を整流回路として機能させる場合、すなわち、他の電源9から二次電池2に電力を充電する場合、制御回路30は二次側駆動回路4の第1スイッチ素子Q5〜Q8をオン及びオフさせる。トランス5の二次巻き線N2には交流電流が流れるので、トランス5の一次巻き線N1にも交流電流が流れる。そのとき、制御回路30は、一次側駆動回路3の第1スイッチ素子Q1〜Q4をオフしており、第1スイッチ素子Q1〜Q4の寄生ダイオードが整流回路を構成する。その結果、二次電池2に直流電力が充電される。
【0027】
第2トランス21の一次巻き線には交流電流が流れるが、第2トランス21の二次巻き線に流れようとする電流の向きがダイオード22の順方向とは逆向きであるので、第2スイッチ素子13のゲートには電圧が入力されない。すなわち、一次側駆動回路3を整流回路として機能させる場合、第2スイッチ素子13はオンしない。そのため、トランス5の一次巻き線の一端と一次側駆動回路3のブリッジ回路の一端との間に、第1インダクタ11と第2インダクタ12の直列回路が接続されている場合と等価になる。
【0028】
一次側駆動回路3をスイッチング回路として機能させる場合の共振周期をT、一次側駆動回路3を整流回路として機能させる場合(又は二次側駆動回路4を発振回路として機能させる場合)の共振周期をTとする。また、第1インダクタ11と第2インダクタ12のインダクタンス値をそれぞれL1及びL2とする。又、各第1スイッチ素子Q1〜Q8の寄生容量をCとする。共振周期T及び共振周期Tはそれぞれ以下の式で表される。
=2π(L1×2C)1/2
=2π((L1+L2)×2C)1/2/N
【0029】
ここで、T=Tとするには、L2=(N−1)・L1となるように、第1インダクタ11及び第2インダクタ12のインダクタンス値L1及びL2を設定すればよい。
【0030】
第2インダクタ12に並列接続されている第2スイッチ素子13は、第1スイッチ素子Q1〜Q8と異なり、寄生ダイオードや寄生容量を有しないことが好ましい。図2〜4は、寄生ダイオード及び寄生容量を有しないスイッチスイッチ素子の一例として、GaN/AlGaNを用いた横型トランジスタ構造を有する双方向スイッチ素子100を示す。図2は双方向スイッチ素子100の構成を示す平面図であり、図3は範囲Aの拡大図、図4はB−B断面図である。なお、この双方向スイッチ素子100は、2つの電極D1及びD2間にゲートGが1つだけ設けられているので、シングルゲート型と呼ばれている。FETは、ダイオード構造を有しているため、ゲート電圧にかかわらず、ダイオードの順方向に電圧がかかると電流が流れる性質を有している。それに比べて、この双方向スイッチ素子はダイオード構造を有していないため、ゲートに駆動信号が入力されていないときは、電流は流れず、ダイオード構造による損失もない。また、この双方向スイッチ素子は寄生容量も有していないため、電荷も蓄積されない。
【0031】
図4に示すように、双方向スイッチ素子100の基板101は、導体層101aと、導体層101aの上に積層されたGaN層2b及びAlGaN層101cで構成されている。この実施形態では、チャネル層としてAlGaN/GaNヘテロ界面に生じる2次元電子ガス層を利用している。図2に示すように、基板101の表面101dには、直流電源及び負荷に対してそれぞれ直列に接続された第1電極D1及び第2電極D2と、第1電極D1の電位及び第2電極D2の電位に対して中間電位となる中間電位部Sが形成されている。さらに、中間電位部Sの上には、制御電極(ゲート)Gが積層形成されている。制御電極Gとして、例えばショットキ電極を用いる。第1電極D1及び第2電極D2は、それぞれ互いに平行に配列された複数の電極部111,112,113・・・及び121,122,123・・・を有する櫛歯状であり、櫛歯状に配列された電極部同士が互いに対向するように配置されている。中間電位部S及び制御電極Gは、櫛歯状に配列された電極部111,112,113・・・及び121,122,123・・・の間にそれぞれ配置されており、電極部の間に形成される空間の平面形状に相似した形状(略魚背骨状)を有している。
【0032】
次に、双方向スイッチ素子100を構成する横型のトランジスタ構造について説明する。図2に示すように、第1電極D1の電極部111と第2電極D2の電極部121は、それらの幅方向における中心線が同一線上に位置するように配列されている。また、中間電位部S及び制御電極Gは、それぞれ第1電極D1の電極部111及び第2電極D2の電極部121の配列に対して平行に設けられている。上記幅方向における第1電極D1の電極部111と第2電極D2の電極部121と中間電位部S及び制御電極Gの距離は、所定の耐電圧を維持しうる距離に設定されている。上記幅方向に直交する方向、すなわち第1電極D1の電極部111と第2電極D2の電極部121の長手方向においても同様である。また、これらの関係は、その他の電極部112及び122,113及び123・・・についても同様である。すなわち、中間電位部S及び制御電極Gは、第1電極D1及び第2電極D2に対して所定の耐電圧を維持しうる位置に配置されている。
【0033】
そのため、第1電極D1が高電位側、第2電極D2が低電位側である場合、双方向スイッチ素子100がオフのとき、少なくとも第1電極D1と、制御電極G及び中間電位部Sの間で、電流は確実に遮断される(制御電極(ゲート)Gの直下で電流が阻止される)。一方、双方向スイッチ素子100がオンのとき、すなわち制御電極Gに所定の閾値以上の電圧の信号が印加されたときは、図中矢印で示すように、第1電極D1(電極部111・・・)、中間電位部S、第2電極D2(電極部121・・・)の経路で電流が流れる。逆の場合も同様である。その結果、制御電極Gに印加する信号の閾値電圧を必要最低限のレベルまで低下させても、双方向スイッチ素子100を確実にオン/オフさせることができ、低オン抵抗を実現することができる。また、第1電極D1の電極部111,112,113・・・及び第2電極D2の電極部121,122,123・・・を櫛歯状に配列することができ、双方向スイッチ素子100のチップサイズを大きくすることなく、大電流を取り出すことができる。
【0034】
図5及び6は、GaN/AlGaNを用いた横型トランジスタ構造を有する他の双方向スイッチ素子300の構成を示す。図5は双方向スイッチ素子300の構成を示す平面図であり、図6はC−C断面図である。なお、この双方向スイッチ素子300は、2つの電極D1及びD2間に2つのゲートG1及びG2が設けられているので、デュアルゲート型と呼ばれている。
【0035】
図5及び6に示すように、横型のデュアルゲートトランジスタ構造の主スイッチ素子300は、耐圧を維持する箇所を1箇所とした損失の少ない双方向素子を実現する構造である。すなわち、ドレイン電極D1及びD2はそれぞれGaN層に達するように形成され、ゲート電極G1及びG2はそれぞれAlGaN層の上に形成されている。ゲート電極G1,G2に電圧が印加されていない状態では、ゲート電極G1,G2の直下のAlGaN/GaNヘテロ界面に生じる2次元電子ガス層に電子の空白地帯が生じ、電流は流れない。一方、ゲート電極G1,G2に電圧が印加されると、ドレイン電極D1からD2に向かって(又はその逆に)AlGaN/GaNヘテロ界面に電流が流れる。ゲート電極G1とG2の間は、耐電圧を必要とし、一定の距離を設ける必要があるが、ドレイン電極D1とゲート電極G1の間及びドレイン電極D2とゲート電極G2の間は耐電圧を必要としない。そのため、ドレイン電極D1とゲート電極G1及びドレイン電極D2とゲート電極G2とが、絶縁層Inを介して重複していてもよい。なお、この構成の素子はドレイン電極D1,D2の電圧を基準として制御する必要があり、2つのゲート電極G1,G2にそれぞれ駆動信号を入力する必要がある(そのため、デュアルゲートトランジスタ構造と呼ぶ)。
【0036】
図7は、本実施形態に係る共振型双方向コンバータ回路1の変形例を示す。図1に示す構成例では、第2インダクタ12と第2スイッチ素子13が並列に接続され、一次側駆動回路3が発振回路として機能しているか又は整流回路として機能しているかに応じてインダクタンス値のみが可変となるように構成されていた。それに対して、この変形例では、第1インダクタ11、第2インダクタ12及びコンデンサ14が直列接続され、第2インダクタ12及びコンデンサ14の直列回路に第2スイッチ素子13が並列接続されている。このような構成によれば、一次側駆動回路3が発振回路として機能しているか又は整流回路として機能しているかに応じてインダクタンス値と静電容量値の両方を可変とすることができる。
【0037】
図8は、本実施形態に係る共振型双方向コンバータ回路1の他の変形例を示す。この変形例では、一次側駆動回路3の第1スイッチ素子Q1〜Q4によるブリッジ回路の一端とトランス5の一次巻き線N1の一端との間に接続されたインダクタ15のインダクタンス値は一定である。一方、一次側駆動回路3の各第1スイッチ素子Q1〜Q4には、それぞれ第3スイッチ素子16とコンデンサ17の直列回路が並列に接続されている。なお、図8の回路図を見やすくするため、第1スイッチ素子Q2に接続された第3スイッチ素子16のみを具体的に描いており、その他の第1スイッチ素子Q1、Q3及びQ4に接続された第3スイッチ素子16は、略して描いている。
【0038】
一次側駆動回路3をスイッチング回路として機能させる場合、第2トランス21の一次巻き線に交流電流が流れ、それによって第3スイッチ素子16がオンする。それによって、コンデンサ17が第1スイッチ素子Q1〜Q4にそれぞれ並列接続され、第1スイッチ素子Q1〜Q4の静電容量値が変化(増加)する。一方、一次側駆動回路3を整流回路として機能させる場合、第1スイッチ素子Q1〜Q4の静電容量値は寄生容量値のまま変化しない。その結果、一次側駆動回路3が発振回路として機能しているか又は整流回路として機能しているかに応じて、静電容量値を可変とすることができる。なお、第3スイッチ素子は特に限定させず、上記図2〜6に示したような寄生ダイオード及び寄生容量を有しないスイッチ素子であってもよいし、MOSFETのような寄生ダイオード及び寄生容量を有するものであってもよい。
【0039】
なお、上記説明において、便宜上二次電池(電源)2に接続されている側を一次側、負荷8又は他の電源9に接続されている側を二次側としたが、DC/DCコンバータにおいては、一次側及び二次側が逆転していてもよい。すなわち、共振周期整合回路10は、一次側駆動回路3又は二次側駆動回路4のいずれかに設けられていればよい。さらに、共振周期整合回路10は、その一次側駆動回路3又は二次側駆動回路4が発振回路として機能しているか又は整流回路として機能しているかに応じて、インダクタンス値及び静電容量値の少なくとも一方を可変とするように構成されていればよい。
【0040】
また、本発明は上記実施形態の記載に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、共振周期整合回路は、図1に示す直列接続された第1インダクタ及び第2インダクタと、第2インダクタに並列接続された第2スイッチ素子と、図8に示す第1スイッチ素子に並列接続された第3スイッチ素子とコンデンサの直列回路の両方を備えていてもよい。
【0041】
さらに、上記実施形態では、一次側駆動回路及び二次側駆動回路として、それぞれ4つの第1スイッチ素子からなるフルブリッジ回路を例示したが、2つの第1スイッチ素子からなるハーフブリッジ回路であってもよい。さらに、第1スイッチ素子は、MPOSFETなどの寄生ダイオード及び寄生容量を有するスイッチ素子に限定されず、寄生ダイオード及び寄生容量を有しないスイッチ素子とダイオードを組み合わせたものであってもよい。さらに、第2スイッチ素子は、図2〜6に示すような双方向スイッチに限定されず、例えば2つの一方向スイッチ素子を組み合わせて使用してもよい。LLC型の共振回路であっても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 共振型双方向コンバータ回路(DC/DCコンバータ)
2 二次電池
3 一次側駆動回路
4 二次側駆動回路
5 トランス
7 切換装置
8 負荷
9 他の電源
10 共振周期整合回路
11 第1インダクタ
12 第2インダクタ
13 第2スイッチ素子
14 コンデンサ
15 インダクタ
16 第3スイッチ素子
17 コンデンサ
20 電流検出回路
21 第2トランス
22 ダイオード
30 制御回路
31,32 第1端子
41,42 第2端子
100,300 双方向スイッチ素子
Q1〜Q8 第1スイッチ素子
N1 一次巻き線
N2 二次巻き線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスと、前記トランスの一次巻き線及び二次巻き線にそれぞれ接続された一次側駆動回路及び二次側駆動回路を備え、前記一次側駆動回路を駆動させたときの共振周期と前記二次側駆動回路を駆動させたときの共振周期がほぼ一致するように、インダクタンス値又は静電容量値を可変としたことを特徴とする共振型双方向コンバータ回路。
【請求項2】
トランスと、
前記トランスの一次側巻き線との間に接続され、スイッチング回路及び整流回路として機能する一次側駆動回路と、
前記トランスの二次側巻き線側に接続され、前記一次側駆動回路がスイッチング回路として機能しているとき整流回路として機能し、前記一次側駆動回路が整流回路として機能しているときスイッチング回路として機能する二次側駆動回路と、
前記一次側駆動回路又は前記二次側駆動回路のいずれかに設けられ、その一次側駆動回路又は二次側駆動回路がスイッチング回路として機能しているか又は整流回路として機能しているかに応じて、インダクタンス値及び静電容量値の少なくとも一方を可変とする共振周期整合回路を備えたことを特徴とする共振型双方向コンバータ回路。
【請求項3】
前記一次側駆動回路及び前記二次側駆動回路は、寄生ダイオード及び寄生容量を有する複数の第1スイッチ素子で構成されたブリッジ回路であり、
前記共振周期整合回路は、前記ブリッジ回路の一端と前記トランスの一次巻き線又は二次巻き線の一端との間に接続され、直列接続された第1インダクタ及び第2インダクタと、前記第2インダクタに並列接続された第2スイッチ素子を有することを特徴とする請求項2に記載の共振型双方向コンバータ回路。
【請求項4】
前記一次側駆動回路及び前記二次側駆動回路は、寄生ダイオード及び寄生容量を有する複数の第1スイッチ素子で構成されたブリッジ回路であり、
前記共振周期整合回路は、前記ブリッジ回路の一端と前記トランスの一次巻き線又は二次巻き線の一端との間に接続され、直列接続された第1インダクタ、第2インダクタ及びコンデンサと、前記第2インダクタ及び前記コンデンサの直列回路に並列接続された第2スイッチ素子を有することを特徴とする請求項2に記載の共振型双方向コンバータ回路。
【請求項5】
前記第2スイッチ素子は、寄生ダイオード及び寄生容量を有しないスイッチ素子であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の共振型双方向コンバータ回路。
【請求項6】
前記寄生ダイオード及び寄生容量を有しないスイッチ素子は、GaN/AlGaNを用いた横型トランジスタ構造を有するスイッチ素子であることを特徴とする請求項5に記載の共振型双方向コンバータ回路。
【請求項7】
前記第2スイッチ素子は双方向スイッチであることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の共振型双方向コンバータ回路。
【請求項8】
前記一次側駆動回路及び前記二次側駆動回路は、寄生ダイオード及び寄生容量を有する複数のスイッチ素子で構成されたブリッジ回路であり、
前記共振周期整合回路は、前記複数の第1スイッチ素子にそれぞれ並列接続されたコンデンサ及び第3スイッチ素子の直列回路を有することを特徴とする請求項2に記載の共振型双方向コンバータ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−70491(P2012−70491A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211225(P2010−211225)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】