説明

共通波ネットワークの送信機の同期性監視方法

【課題】共通波ネットワークの全n個のエミッタの時間同期の監視方法を提供する。
【解決手段】同期性監視方法は、共通波ネットワーク1のn個の送信機2、3、4、5、6、7、8と関連した送信チャンネルの基準総和インパルス応答30を共通波ネットワークの前記n個の送信機2、3、4、5、6、7、8と関連した送信チャンネルの測定された総和インパルス応答52と比較し、パイロット・インパルス応答29に対する基準インパルス応答20を基準総和インパルス応答30内に確立し、残りの基準インパルス応答21、22、23、24、25、26、27、28をパイロット・インパルス応答29に関連させることにより、前記共通波ネットワーク内に生じたすべての同期エラーの複数の同期エラー分類への分類を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通波ネットワークの送信機の同期性監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地上波ラジオおよびテレビジョンの送信技術は同じ送信機周波数で同期して送信する地域分布送信機のネットワーク(共通波ネットワーク)に基づいている。共通波ネットワークの技術は、送信標準に従って保護区間(警戒区間)を設け、距離が異なるため個々の送信機からの送信信号の通過時間が異なることに対する特定の許容範囲を設けたデジタル送信方法を導入することでのみ達成できるであろう。従って、デジタル・ラジオ(DAB=digital audio broadcasting、デジタル音声放送)およびデジタル地上波テレビジョン(DVB−T=digital video broadcasting terrestrial、地上波デジタル・ビデオ放送)の最近のデジタル多搬送波方法(例えば、OFDM=orthogonal frequency division multplexing、直交周波数分割多重)は現在では共通波ネットワークに基づいている。
【0003】
共通波ネットワークが機能するには、共通波ネットワークの各受信機が共通波ネットワークの送信範囲内の任意の不特定の位置において十分な信号レベルの送信信号を受信することが必要である、かつ個々の送信機から受信された送信信号が特定の許容範囲内で同期していることが必要である(DVB−Tを用いた保護または警戒区間)。
【0004】
いろいろな干渉、例えば送信機の小さ過ぎる送信能力、送信機の共通波ネットワークへの同期の欠陥、共通波ネットワークの送信領域における異なる天候等の内もっとも変動したもののために、同期および十分な信号レベルの要件は共通波ネットワークにおける無干渉受信に対しては満たされないことがある。さらに、共通波ネットワークに侵入する干渉送信機からの干渉信号およびエコー信号が、有効な信号が障害上で反射する結果、有効な信号に重なってしまうことがある。従って、受信した有効信号の同期と信号レベルについて、また全通信範囲にわたって干渉信号から自由であることについての常時監視を実行することが必要である。これらの必須のネットワークの要件の違背が起きると、干渉源、例えば送信機、供給ルート、障害を突き止め、そして相当する回復手段により正確なかつ機能するネットワーク動作を再び生成することが必要である。
【0005】
特許文献1(ドイツ特許出願公開第19642633A1号明細書)には、共通波ネットワークの2つの送信機の受信信号同士の間の通過時間差測定を実行して共通波ネットワーク内の受信機の正確な位置を決定するようにした方法が記載されている。受信信号は有効信号だけでなく、エコー信号も含むことがあるので、このエコー信号を特定し、排除することが必要である。エコー信号を明確に同定し、排除するためには、両方の送信機の送信チャンネルの送信特性をチャンネル・インパルス応答の測定により決定する。
【0006】
特許文献2(ドイツ特許出願公開第19937457A1号明細書)には、共通波ネットワークの2つの送信機の送信チャンネルのチャンネル・インパルス応答を決定することにより、この通過時間差測定方法に基づいて、共通波ネットワークにおいて送信機をモニターする方法を記載している。共通波ネットワークの送信機の同期を決定するために、2つの送信機の通過時間差をそれぞれ無線受信機により測定し、同じ2つの送信機の基準通過時間差と一対比較する。通過時間差の偏差が非常に大きく、2つの試験された送信機の同期がないことが示された場合は、これら干渉を受けた送信機は無線受信機により中央局を介して更新された同期について通知される。
【0007】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第19642633A1号明細書
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第19937457A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この方法の欠点は2つの送信機の通過時間を2つの送信機の相互の同期に関して一対比較するだけである点である。複数の送信機、特に中央局に共通の供給ルートを介して接続されている送信機グループの同期はこの方法では決定することができない。単一の送信機のみに影響を与えるエラー源(例えば、単一の送信機の位相デチューニング)および送信機グループに影響するエラー源(例えば、送信機グループへの供給ルートにおける送信エラー)に関する信頼性のある明確なエラー源の特定はこの方法では達成することができない。
【0009】
2つの受信信号の通過時間差を一対比較するだけなので、上述の方法は、監視すべき2つの送信機の間の相対的な非同時性のみを突き止めることが可能であるに過ぎないが、それぞれの送信機の基準送信機に対する、従って共通波ネットワーク全体に対する絶対的な非同時性を突き止めることは不可能である。監視すべき送信機が、例えば基準送信機に対して等しい非同時性を有しているならば、それらの送信機は相互に関して同期しており、従って、この方法により共通波ネットワークに対して同期していると誤って判断される。
【0010】
2つの送信機の受信した有効信号の通過時間差の単なる一対比較の場合は、1つの送信機に対してそれぞれ1つの時間決定変数を用いる、すなわち、受信機により測定された受信された有効信号の受信時間である。複数の時間決定変数、例えば、受信機により測定された、1つの送信機に関連したエコー信号の受信時間を考慮に入れることはしていないので、この方法では、原因となるエラー源、例えば共通波ネットワークの特定の送信領域における悪天候状況による受信信号の遅延、のより明確な、正確な決定は不可能である。
【0011】
従って、本発明の目的は、請求項1の前提部分に記載の特徴を有する、共通波ネットワークにおける送信機の同期性を監視する方法であって、一方では、共通波ネットワークに統合された全ての送信機の絶対同期性を明確に監視することを可能にし、他方では、エラー源または少なくとも、発生している非同期性のエラー源のタイプに関してできるだけ明確にかつ容易に発生している非同期性の測定結論を引き出せるようにした方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、請求項1に記載の特徴を有する、共通波ネットワークにおける送信機の同期性の監視方法により達成される。
【0013】
2つの送信機の同期性の単なる一対比較とは対称的に、本発明によれば、パイロット・インパルス応答に対するもっとも強い送信機の基準インパルス応答が基準測定に基づいて定義され、共通波ネットワークに対する残りの送信機の残りの全ての基準インパルス応答が共通波ネットワークに対するそれらの送信機の同期性に関して通過時間測定の枠組み内でパイロット・インパルス応答に適用される。このようにして、個々の送信機と関連した全てのインパルス応答、すなわち、総和インパルス応答のさらなる測定の枠組み内で全ての対応する基準インパルス応答、すなわち基準総和インパルス応答と比較することにより非同期送信機の数を決定することが可能であり、そして、それに基づいて、生じる同期エラーの同期エラー分類(クラス)を決定することが可能である。同期エラー分類は同期エラー源または同期エラー・タイプの同定に関する重要な工程を表す。
【0014】
本発明の好適な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0015】
測定されたインパルス応答と関連した基準インパルス応答との間に一時的な偏差が生じ、そのため共通波ネットワークに対する唯一の送信機の非同期性が生じさえすれば、このタイプの第1の同期エラー分類の同期エラーの場合、それぞれの送信機におけるエラー源を請求項6に従って特異的に突き止めることが可能である。
【0016】
これに対して、共通波ネットワークの複数の、しかしn−1個の残りの送信機の全てではない送信機の場合に、偏差が測定されたインパルス応答と関連したインパルス応答との間に生じたならば、この種の第2の同期エラー分類の場合、送信機グループに関する同期エラー源(例えば、1つの送信機グループへの供給ルートにおける送信エラー、特定の送信機領域における悪天候等)を請求項7に従ってさらに詳しく追跡することができる。
【0017】
n−1個の残りの測定されたインパルス応答のすべてと関連した基準インパルス応答との間に時間偏差があると請求項8に従って第3の同期エラー分類の同期エラーとなる。このタイプの同期エラーの場合、パイロット・インパルス応答に関連した共通波ネットワークのおそらく唯一のもっとも強い送信機がレベルと位相に関してデチューンされていることが考えられる。この特定の場合は基準総和インパルス応答と総和インパルス応答の間の相関分析により決定することが可能である。
【0018】
同期性の監視に加えて、上述の方法は共通波ネットワークの個々の送信機の正確な信号レベルを監視するのに使用することが可能である。基準インパルス応答に対する測定されたインパルス応答の信号レベルの偏差の場合、それぞれの送信機の送信機出力は相応に適合されていることが必要である。
【0019】
請求項4に従えば、基準総和インパルス応答の個々の基準インパルス応答は、時間および信号レベルのディメンジョンのそれぞれに許容誤差範囲を有し、測定されたインパルス応答がこの許容誤差範囲内にあれば、同期送信機を適合された信号レベルで分類するようにすることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態を図面に示し、以下にさらに詳細に説明する。
【0021】
以下に、本発明の共通波ネットワークにおける送信機の同期の監視方法を図1〜図6−bを参照した実施形態により説明する。
【0022】
図1によると、共通波ネットワーク1は、送信機領域に分布する例えば送信機2、3、4、5、6および7と、中央局8を備えている。この例示的共通波ネットワーク1では、送信機2、3および4は組み合わされて第1の送信機グループ9を構成し、送信機5、6および7は組み合わされて第2の送信機グループ10を構成している。第1の送信機グループ9は中央局8に第1の共通供給ルート11を介して接続され、第2の送信機グループは同様に中央局8に第2の共通供給ルート12を介して接続されている。送信機2、3および4の第1の供給ルートへの結合は第1の分布装置13を介して行われ、送信機5、6および7の第2の供給ルートへの結合は第2の分布装置14を介して行われる。中央局8は結合装置15において第1の供給ルート11および第2の供給ルート12に結合している。受信装置16を用いて共通波ネットワーク1を測定および監視する。受信装置16は固定式または携帯式で用いることが可能であるが、携帯受信装置の場合はレベルと位相に関してそれぞれ新しい位置について個々の送信機の基準インパルス測定を実行することが必要である。送信機2、3、4、5、6および7と、中央局8と、受信装置16にはそれぞれ受信アンテナ17と送信アンテナ18が取り付けられている。提示された例では、中央局8における受信装置16からのフィードバックが無線で行われる。このフィードバックが有線で行われるならば、送信アンテナ18を省くことが可能である。
【0023】
受信装置16は一方では共通波ネットワーク1の送信範囲内の領域であって、例えば送信機と受信機の間の送信チャンネルにおける障害物19のせいでまったく受信しないかまたはごく弱い受信しかしない領域を同定する作用をする。大領域物体20(例えば、山々)での送信信号の反射によるエコーもこのタイプの受信装置16で検知することが可能である。このタイプの干渉の場合、回復手段は、例えば個々の送信機の送信出力の再配置または調整であり得る。
【0024】
送信信号の信号レベルおよびエコー信号の発生を監視するこれらのタスクに加えて、受信装置16は共通波ネットワーク1に組み込まれた送信機2、3、4、5、6および7の同期の測定および監視も実行する。
【0025】
本発明の方法によれば、受信装置16は共通波ネットワーク1の送信範囲内の選定された位置に配置される。これらの位置のそれぞれについて、送信機から受信装置16への相当する送信チャンネルに対するインパルス応答を共通波ネットワーク1の送信機2、3、4、5、6および7それぞれについて受信装置16により決定する。この決定は、DVB−T信号の場合は、ドイツ特許出願公開第10005287A1号明細書から基本的に公知であるように、例えばパイロット搬送波(分散パイロット)により行うことが可能である。インパルス応答の第1の測定は以後の測定のための基準測定の役割を果たす。第1の測定において決定されたインパルス応答は、従って、基準インパルス応答を表す。送信機2、3、4、5、6および7に関連したすべての送信チャンネルの基準インパルス応答は、受信装置16または受信装置16に接続された装置、例えばインターネットを介して受信装置16に接続されたパーソナル・コンピュータに組み込まれたグラフィック・システム55の時間依存性グラフィック64における図2ではエコー・パターンの形の基準総和インパルス応答として表される。
【0026】
もっとも強い送信機、例えば送信機4の基準インパルス応答20をパイロット・インパルス29として定義して、残りの基準インパルス応答21(送信機2)、22(送信機7)、23および24(送信機3)、25(送信機6)、25(送信機6)、26、27および28(送信機5)の任意の基準点における相対的一時的変位を決定する。残りの基準インパルス応答21、22、23、24、25、26、27および28に対する基準点として、パイロット・インパルス29を、横座標31と縦座標32を含むグラフィック64の座標系の原点53に設定する。横座標31はマイクロ秒のディメンジョンの基準インパルス応答の受信時間またはそれに対応するキロメータのディメンジョンの距離を表す。縦座標32はデシベルのディメンジョンでパイロット・インパルス29の信号レベルに対する基準インパルス応答の信号レベルを表す。
【0027】
残りの基準インパルス応答21、22、23、24、25、26、27および28のパイロット・インパルス29への一時的参照のせいで、パイロット・インパルス29の前に受信装置16により一時的に受信される基準インパルス応答(基準インパルス応答21および22)を表すプリエコー(preechoes)が生成される。同様に、パイロット・インパルス29の後に一時的に受信装置16により受信される基準インパルス応答(基準インパルス応答23、24、25、26、27および28)としてポストエコー(post−echoes)が生成される。
【0028】
受信装置16による以後の測定に対して基準総和インパルス応答は基準エコー・パターンの役割を果たし、インパルス応答の以後の測定は関与している送信機2、3、4、5、6および7の正確な同期の場合も、基準インパルス応答と測定されたインパルス応答の間の特定の偏差と関連しているので、それぞれの基準インパルス応答21、22、23、24、25、26、27および28のそれぞれの理想的な値の対、基準受信時間および基準信号レベルについて特異的許容誤差範囲31、32、33、34、35、36、37および38を導入することが推奨される。従って、受信装置16のオペレータにより個々の許容誤差範囲31、32、33、34、35、36、37および38が基準インパルス応答21、22、23、24、25、26、27および28のそれぞれについて定義される。この許容誤差範囲は時間のディメンジョンの許容誤差バンド39と信号レベルのディメンジョンの許容誤差バンド40を含んでいるのが好ましい。しかしながら、時間のディメンジョンの許容誤差バンド39だけでも十分であり得る。
【0029】
基準測定の後の測定において、今度は共通波ネットワーク1の送信機2、3、4、5、6、7および8のインパルス応答41、42、43、44、45、46、47および48が受信装置16により受信され、グラフィック・システム55の新しい時間依存性グラフィック65の座標系53において総和インパルス応答52として位置付けられ、この位置付けは、最も強い送信機4の測定されたインパルス応答53が新しいグラフィック65の座標系53の原点に正確に置かれるようになされる。
【0030】
共通波ネットワーク1の送信機2、3、4、5、6、7および8の測定されたインパルス応答41、42、43、44、45、46、47および48に加えて、干渉インパルス49、50および51も受信装置16により測定され、これら干渉インパルスは例えば、隣のセルからの送信機55、56および57により生成され、共通波ネットワーク1の送信範囲内に侵入する。これらは同様にそれらの受信時間と信号レベルに相当してグラフィック・システム55の新しいグラフィック65の座標系53に位置づけされる。基準測定の基準インパルス応答21、22、23、24、25、26、27および28の許容誤差範囲31、32、33、34、35、36、37および38は同様に図3に従ってグラフィック・システム55の新しいグラフィック65の座標系53に位置づけされるので、受信装置16のオペレータは相当する基準インパルス応答の定義された許容誤差範囲の外にあるインパルス応答を比較的容易に同定することができる。
【0031】
図3に示す例示的測定では、基準インパルス応答と測定されたインパルス応答の間のそれ以上許容できない時間変位がインパルス応答45に生じており、このことからもっとも強い送信機4と送信機6の間に同期エラーがあると結論することができる。
【0032】
加えて、図3に示す例示的測定において、測定されたインパルス応答46の信号レベルは許容可能な許容誤差範囲36の外であり、詳しくは許容誤差範囲36の信号レベルのディメンジョンにおける許容誤差バンド40の下方である。関連した基準インパルス応答26の信号レベルに対して低過ぎるインパルス応答の信号レベルは、例えば送信機5の送信出力が低過ぎるか、または例えば送信機5から受信装置16への送信チャンネルにおける悪天候期間の理由で送信機5から受信機装置16への送信信号の減衰が大き過ぎることに起因すると考えることができる。
【0033】
グラフィック・システム55のグラフィック65に総和インパルス応答をグラフィック表示することに加えて、すべての受信されたインパルス応答41、42、43、44、45、46、47および48および全ての干渉インパルス49、50および51を図4の表図56に表示することも可能であり、この表図は受信装置16の処理システム87により生成され、常時更新される。表図56は下記のコラムを含む。
・コラム57 受信されたインパルスの送信機名を記載、
・コラム58 受信されたインパルスのタイプ(有効信号、エコー信号、干渉信号)を記載、
・コラム59 受信されたインパルスの測定された受信時間を記載、
・コラム60 受信されたインパルスの受信時間の、オペレータにより定義された許容誤差限界を記載、
・コラム61 パイロット・インパルスの信号レベルに対する受信されたインパルスの測定された信号レベルを記載、
・コラム62 受信されたインパルスの、オペレータにより定義された許容誤差限界を記載、および
・コラム63 相当する基準インパルスの測定されたインパルスと許容誤差範囲の間の一致に関する記載。
【0034】
図4の表図56において、例示的測定の相当する値を図3のグラフィック表示においてプロットした。
【0035】
それぞれ相当する基準インパルス応答の許容誤差範囲内に一時的に入らないインパルス応答は各測定工程について受信装置16の処理ユニット57により同定される。
【0036】
測定の1つのインパルス応答だけがそれぞれの許容誤差範囲の外であると検知されるならば、相当する送信機は共通波ネットワーク1と同期していない蓋然性が高い。このタイプの同期エラーは第1の同期エラー分類に関するものである。従って、それぞれの許容誤差範囲に対する偏差が測定されたインパルス応答の場合だけにあることが処理ユニット57により確証されると、この同期エラーは第1の同期エラー分類に割り当てられ、相当する第1のアラームA1が始動される。
【0037】
n個の送信機を有する共通波ネットワークの場合、パイロット・インパルス応答に加えて測定されたn−1個のインパルス応答が相当する許容誤差範囲と一致するか否かに関して処理ユニット57により監視され、かつ少なくとも2個、かつn−1個より少ないこれらのインパルス応答の場合、一致の欠如が発出され、第2の同期エラー分類の同期エラーが存在することになる。これは処理ユニット57により確証され、相当する第2のアラームA2が始動される。第2の同期エラー分類の同期エラーは送信機グループ、例えば図1の第1の送信機グループ9または第2の送信機グループ10におけるエラーに関するものであり得る。総和インパルス応答52の測定されたインパルス応答の送信機を同定することにより、1つの送信機グループのこのタイプの同期エラーを同定することが可能である。
【0038】
n個の送信機を有する共通波ネットワークの場合に、n−1個のインパルス応答がすべて相当する許容誤差範囲に入らないならば、n−1個のインパルス応答はすべて相互に同期していることがあり得るが、一方、インパルス応答が共通波ネットワークのパイロット・インパルスとして働く共通波ネットワークのもっとも強い送信機は共通波ネットワークに対して非同期的に送信する。この特殊な場合は測定されたn−1個のインパルス応答と相当するn−1個の基準インパルス応答の間の相関分析により同定される。この相関分析による結果が測定されたn−1個のインパルス応答と相当するn−1個の基準インパルス応答の間の相関であるならば、この特殊な場合の同期エラーが存在し、第3の同期エラー分類に分類され、第3のアラームA3の始動が処理ユニット57により行われる。
【0039】
アラームA1〜A3は図3による相当する測定されたエコー・パターンと一緒に受信装置16により中央局8に供給されて、中央局8で具体的なエラー位置について相当する評価と分析を実行し、それに基づいて相当する回復対策を実行して共通波ネットワーク1の全ての送信機2、3、4、5、6および7を供給ルート11および12等の送信機2、3、4、5、6および7の範囲内で同期させる。
【0040】
総和インパルス応答65の決定は、共通波ネットワーク1に関与するすべての送信機2、3、4、5、6および7の信号の和により生成される送信チャンネルの伝達関数から、一般に逆フーリエ変換により行われる。送信チャンネルが総和インパルス応答を決定する誘因はいわゆるパイロット搬送波(分散パイロット)によりもたらされ、これらパイロット搬送波は、各第3の搬送波において例えばDVB−Tで平均して、OFDM−変調送信信号の送信フレーム内に配置され、個々に、QAM−変調された有効データ搬送波とは対称的に、2−PSK変調により変調される。総和インパルス応答65は総和インパルス応答65の周波数スペクトルが周波数範囲内のパイロット搬送波においてだけ周期的に走査されるので、総和インパルス応答65は周期的な時間的進行を有する。パイロット搬送波はそれぞれの第3の搬送波において生じるので、パイロット搬送波同士の間の搬送波間隔はそれぞれの個々の搬送波の間の搬送波間隔ΔfT よりも3倍高い。従って、OFDM−変調送信信号の有効間隔ΔTNutz に対する総和インパルス応答ΔTImpの許容可能時間範囲は3分の1の大きさである(ΔTImp=ΔTNutz /3=1/(3*ΔfT ))。総和インパルス応答ΔTImp許容時間範囲は、総和インパルス応答65の別の決定方法の場合、他の値をとることも可能である(総和インパルス応答65を、受信装置16に組み込まれたイコライザーのFIRおよびIIRフィルター係数から逆フーリエ変換により決定するときは、許容可能時間範囲ΔTImpがFIRおよびIIRフィルターのフィルター長から生成される)。通過時間差によるシンボル間干渉をなくすために保護間隔ΔtG が定義される。このΔtG は図5による有効間隔ΔTNutz から出現し、この中では受信装置16により重畳信号の評価が行われることはない。
【0041】
別個の総和インパルス応答65を決定するためのフーリエ変換の時間窓ΔFFTはOFDM変調された送信信号の有効間隔ΔTNutz の周期に相当する。別個のフーリエ変換の時間窓ΔFFTがOFDM変調された送信信号の全信号長ΔtS (ΔtS =ΔtG +ΔTNutz )内で位置が変動するので、結果は総和インパルス応答の許容可能時間範囲ΔTImpと保護間隔ΔtG の間の種々の相対的位置であり得る。
【0042】
極端なケースI(ΔFFT=ΔFFTI )において、時間窓ΔFFTは全シンボル長ΔtS の始めをカバーし、一方、保護間隔ΔtG は全シンボル長ΔtS の終点をカバーする。この場合、図5における、プリエコー、例えばインパルス応答66はシンボル間干渉にならないが、これはインパルス応答66がプリエコーとして検知されており保護間隔ΔtG 内に位置しているためである。結果として、もっとも強い出力のインパルス応答(0dBにおいて、0μ秒)に関するプリエコーを表すインパルス応答が総和インパルス応答65に期待されるならば、時間窓ΔFFTの位置は極端なケースIとして選択される。
【0043】
通常のケース(ケースII:ΔFFT=ΔFFTII)において、時間窓ΔFFTはシンボル長ΔtS の末尾をカバーし、一方、保護間隔ΔtGはシンボル長ΔtSの始めをカバーする。図5のポストエコー、例えばインパルス応答67はシンボル間干渉の原因となることはないが、その理由は、インパルス応答67は保護間隔ΔtG 内に位置しているからである。従って、出力がもっとも強いインパルス応答(0dB、0μ秒)に関するポストエコーを表すインパルス応答が総和インパルス応答65内にあると期待されるならば、時間窓ΔFFTはケースIIのように選択される。
【0044】
その結果、許容誤差範囲がプリエコー範囲内に、例えば図3の許容誤差範囲31および32のように設定されると、相当するインパルス応答、例えば図3のインパルス応答41および42は相当する信号レベルが弱過ぎるか、またはまったく存在しないので、受信装置16により記録されないならば、本発明の共通波ネットワークにおける送信機の同期監視方法の結果、許容誤差範囲31または32に加えて相当する許容誤差範囲がプリエコー時点に対して正確に総和インパルス応答65の周期長(=ΔtImp)だけ前方に一時的に変位された時点に設定され、かつ総和インパルス応答の許容し得る時間範囲ΔtImp内で許容誤差範囲として機能する。このようにして、極端な位置ΔFFTIIに相当する時間窓ΔFFTを選択したときに総和インパルス応答の許容可能時間範囲ΔtImpの内に来るエコーであって、総和インパルス応答65の周期性のために総和インパルス応答65の許容可能時間範囲外にあるプリエコーに相当するエコーを、を受信装置16により信頼性をもって明確に同定することが可能である。
【0045】
構築された共通波ネットワーク1が未だバランスがとれていないならば、結果は総和インパルス応答65の周期性のせいで許容可能時間範囲ΔtImp外にあるインパルス応答69の一時的位置のエラー解釈であり得る。許容可能時間範囲外にあるインパルス応答69は、総和インパルス応答の周期性のせいで許容可能時間範囲ΔtImp内においてインパルス応答69’および69’’として繰り返される。これらの繰り返されたインパルス応答69’および69’’は、元のインパルス応答69はシンボル間干渉をもたらすけれども、無シンボル間干渉時間範囲ΔtG 内にあるのでこのインパルス応答の遅延は有意ではないと誤った解釈がされる。
【0046】
この望ましくないシンボル間干渉は、送信機の送信信号の、インパルス応答69をもたらす一時的変位により除去または検知可能である。その際、一時的変位を大きく選択し、インパルス応答が保護間隔ΔtG の範囲内に入るようにする。送信信号が遅延して総和インパルス応答65の許容可能時間範囲ΔtImp外の範囲に入ると、図6−bに示すように、インパルス応答の測定において許容可能時間範囲内に折り畳まれたインパルス応答69’’の信号レベルが低減する。インパルス応答69の時間変位が2周期で起きた場合は、総和インパルス応答65の許容可能時間範囲ΔtImp内に一時的に変位されたインパルス応答69’’の信号レベルがさらに低下する。
【0047】
インパルス応答の一時的遅延の誤った解釈は変調エラー・レートMER(modulation error rate=20*log(シンボル振幅の平均値/エラー振幅の平均値))によっても検知することが可能である。インパルス応答の遅延が保護間隔ΔtG 内にあるならば、この遅延はチャンネル推定により補償することが可能であり、変調エラー・レートは他の信号品質に相当する高い値を有する。しかしながら、インパルス応答の遅延が保護間隔外にあるならば、変調エラー・レートは低下する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は図示の実施形態に限定されない。本発明はOFDM変調多重搬送波方法、例えばDABおよびDVB−Tだけでなく、単一搬送波方法、例えば、北米でデジタル・テレビジョン放送に使用されているATSC標準のVSB(Vestigal Side Band)方法にも適している。さらに、上述の特長はすべて任意の方法で相互に組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】共通波ネットワークの全体を示す図である。
【図2】許容誤差範囲を有する基準総和インパルス応答を示す図である。
【図3】基準インパルス応答の許容誤差範囲、測定されたインパルス応答および基準インパルスを示す図である。
【図4】基準インパルス応答の許容誤差範囲、測定されたインパルス応答および基準インパルスを示す表図である。
【図5】インパルスの同定のついてのフーリエ変形の時間窓の影響を示す図である。
【図6−a】送信機の同期がない場合のシンボル間干渉を示す図である。
【図6−b】同期化工程後の総和インパルス応答を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 共通波ネットワーク
2、3、4、5、6、7 送信機
8 中央局
9 第1の送信機グループ
10 第2の送信機グループ
11 第1の共通供給ルート
12 第2の共通供給ルート
13 第1の分布装置
14 第2の分布装置
15 結合装置
16 受信装置
17 受信アンテナ
18 送信アンテナ
19 障害物
20、21、22、23、24、25、26、27、28 基準インパルス応答
29 パイロット・インパルス
30 基準総和インパルス応答
31 横座標
32 縦座標
53 原点
31、32、33、34、35、36、37、38 許容誤差範囲
39、40 許容誤差バンド
41、42、43、44、45、46、47、48 インパルス応答
49、50、51 干渉インパルス
52 総和インパルス応答
53 座標系
55 グラフィック・システム
56 表図
57、58、59、60、61、62、63 コラム
64、65 時間依存性グラフィック
66、69、69’、69’’ インパルス応答
87 処理システム
A1、A2、A3 第1のアラーム
ΔFFT 時間窓
ΔfT 搬送波間隔
ΔTNutz OFDM−変調送信信号の有効間隔
ΔTImp 許容可能時間範囲
ΔtG 保護間隔
ΔtS シンボル長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通波ネットワーク(1)における全n個の送信機(2、3、4、5、6、7、8)の同期監視方法であって、前記共通波ネットワーク(1)の前記n個の送信機(2、3、4、5、6、7、8)と関連した送信チャンネルの基準総和インパルス応答(30)を前記共通波ネットワーク(1)の前記n個の送信機(2、3、4、5、6、7、8)と関連した送信チャンネルの測定された総和インパルス応答(52)と比較する方法において、
パイロット・インパルス応答(29)に対する基準インパルス応答(20)を前記基準総和インパルス応答(30)内に確立し、残りの基準インパルス応答(21、22、23、24、25、26、27、28)を前記パイロット・インパルス応答(29)に関連させることにより、前記共通波ネットワーク(1)内に生じたすべての同期エラーの複数の同期エラー分類への分類を実行することを特徴とする同期性監視方法。
【請求項2】
前記パイロット・インパルス応答(29)は前記基準総和インパルス応答(30)内の、もっとも高い信号レベルを有する基準インパルス応答(20)であることを特徴とする請求項1に記載の同期性監視方法。
【請求項3】
前記基準レベル0DBは前記パイロット・インパルス応答(29)に割り当てられることを特徴とする請求項2に記載の同期性監視方法。
【請求項4】
前記共通波ネットワーク(1)の前記送信機(2、3、4、5、6、7、8)の間のあり得る同期性エラーを決定するために、前記測定された総和インパルス応答(52)を、前記測定されたインパルス応答(52)のもっとも高い信号レベルを有するインパルス応答(54)が前記基準総和インパルス応答(30)の前記パイロット・インパルス応答(29)と同期するまで、一時的に変位することを特徴とする請求項3に記載の同期性監視方法。
【請求項5】
前記基準インパルス応答(30)内のそれぞれの基準応答(21、22、23、24、25、26、27、28)について、前記パイロット・インパルス応答(29)とは別に、前記時間のディメンジョンの誤差許容バンド(33)および/または前記信号レベルのディメンジョンの誤差許容バンド(40)を含む誤差許容範囲(31、32、33、34、35、36、37、38)を定義することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の同期性監視方法。
【請求項6】
前記測定された総和インパルス応答(52)の少なくとも1つのインパルス応答(41、42、43、44、45、46、47、48)が、前記基準総和インパルス応答(30)の相当する基準インパルス応答(21、22、23、24、25、26、27、28)の誤差許容範囲(31、32、33、34、35、36、37、38)外に出るや否や、前記送信機(2、3、4、5、6、7、8)の少なくとも1つの同期性エラーが前記共通波ネットワーク(1)内に存在することが決定されることを特徴とする請求項5に記載の同期性監視方法。
【請求項7】
正確に前記測定されたインパルス応答(52)の1つのインパルス応答(41、42、43、44、45、46、47および48)が前記基準総和インパルス応答(30)の前記相当する基準インパルス応答(21、22、23、24、25、26、27、28)の前記許容誤差範囲(31、32、33、34、35、36、37、38)外にあるならば、第1の同期エラー分類の同期エラーが存在すると決定されることを特徴とする請求項6に記載の同期性監視方法。
【請求項8】
前記測定されたインパルス応答(52)の、全n個の内少なくとも2個であって同時にn−1個のインパルス応答(41、42、43、44、45、46、47、48)が前記基準総和インパルス応答(30)の前記相当する基準インパルス応答(21、22、23、24、25、26、27、28)の前記許容誤差範囲(31、32、33、34、35、36、37、38)外にあるならば、第2の同期エラー分類の同期エラーが存在すると決定されることを特徴とする請求項7に記載の同期性監視方法。
【請求項9】
前記測定されたインパルス応答(52)の、全n個の内の正確にn−1個のインパルス応答(41、42、43、44、45、46、47、48)が前記基準総和インパルス応答(30)の前記相当する基準インパルス応答(21、22、23、24、25、26、27、28)の前記許容誤差範囲(31、32、33、34、35、36、37および38)外にあり、かつ前記n−1個の基準インパルス応答(21、22、23、24、25、26、27、28)と前記n−1個の測定されたインパルス応答(41、42、43、44、45、46、47、48)の間の正の相関が検知されるならば、第3の同期エラー分類の同期エラーが存在すると決定されることを特徴とする請求項8に記載の同期性監視方法。
【請求項10】
同期エラーが生じた際に、前記それぞれの同期エラー分類に相当するアラーム(A1、A2、A3)が始動されることを特徴とする請求項9に記載の同期性監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−a】
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【図6−b】
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【公表番号】特表2007−505532(P2007−505532A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525692(P2006−525692)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009646
【国際公開番号】WO2005/029736
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(501172372)ローデ ウント シュワルツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディット ゲゼルシャフト (39)
【氏名又は名称原語表記】Rohde & Schwarz GmbH & Co.KG
【Fターム(参考)】