説明

共重合ポリエステル樹脂ペレットの製造方法

【課題】 ガラス転移点の高低を問わず、分子量2000以上の共重合ポリエステル樹脂を同じ払い出し装置で容易に安定してペレット化することができる共重合ポリエステル樹脂ペレットの製造方法を提供する。
【解決手段】 分子量2000以上の共重合ポリエステル樹脂を、水性分散体を含有した冷却水で冷却し、空冷サイドカットペレタイザを用いてペレット化を行い、乾燥する。共重合ポリエステル樹脂が、ガラス転移点40℃以下の貧結晶性共重合ポリエステル樹脂であり、水性分散体が、ガラス転移点40℃以上の貧結晶性有機化合物又は結晶性の有機化合物の水性分散体、もしくは無機化合物の水性分散体であることが好ましい。また、分子量2000以上の共重合ポリエステル樹脂を、冷却水で冷却し、空冷サイドカットペレタイザを用いてペレット化を行い、次いでペレットにタルクを付与した後、乾燥する方法も好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス転移点(以下、Tgと略称することがある。)の高低を問わず、分子量2000以上の共重合ポリエステル樹脂のペレットを安定して生産することができる共重合ポリエステル樹脂ペレットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Tgが低い共重合ポリエステル樹脂は粘着性が高く、この樹脂を使用時に使い勝手がよいようにチップ状にペレット化しようとすると、切断刀に粘着し、生産を著しく損ねてしまう。また、切断できた場合でも、ペレット同士の融着(以下、ブロッキングと略称する。)を防止するためには、別の工夫が必要で、例えば、液体窒素などを用いて、低温で保管することが不可避となる。このように、工業的な規模でTgの低い共重合ポリエステル樹脂をペレット化し、それを長期間保存することは極めて困難とされていた。このため、例えば特許文献1に記載されているように、Tgが低い共重合ポリエステル樹脂はペレット化することを避け、シート状に払い出し、ポリエチレンフィルムなどの離型紙を捲いて、ブロッキングを抑えることが常套手段とされている。一方、Tgが高い共重合ポリエステル樹脂は、チップ状にペレット化するのは非常に容易である。
【0003】
【特許文献1】特開2004−300285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、Tgが高い共重合ポリエステル樹脂にはチップ状にペレットを作製する装置を使用し、Tgが低い共重合ポリエステル樹脂にはシート状に払い出す装置を使用するため、共重合ポリエステル樹脂のTgによって、払い出し装置を使い分けなければならず、生産の効率が非常に悪かった。
本発明は、上記の問題を解決し、ガラス転移点の高低を問わず、分子量2000以上の共重合ポリエステル樹脂を同じ払い出し装置で容易に安定してペレット化することができる共重合ポリエステル樹脂ペレットの製造方法を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、空冷サイドカットペレタイザを用いてペレット化することで、共重合ポリエステル樹脂を、そのガラス転移点を問わずチップ状に安定してペレット化することが可能となり、また、冷却液に離型効果のある水性分散体を用いるか、ペレットを作製した後、タルクを付与することでペレット化時と長期保存時のブロッキングを効果的に防止できることを見出して本発明に到達した。 すなわち、本発明は、次の構成を要旨とするものである。
(1)分子量2000以上の共重合ポリエステル樹脂を、水性分散体を含有した冷却水で冷却し、空冷サイドカットペレタイザを用いてペレット化を行い、乾燥することを特徴とする共重合ポリエステル樹脂ペレットの製造方法。
(2)共重合ポリエステル樹脂が、ガラス転移点40℃以下の貧結晶性共重合ポリエステル樹脂であり、水性分散体が、ガラス転移点40℃以上の貧結晶性有機化合物又は結晶性の有機化合物の水性分散体、もしくは無機化合物の水性分散体であることを特徴とする上記(1)記載の共重合ポリエステル樹脂ペレットの製造方法。
(3)分子量2000以上の共重合ポリエステル樹脂を、冷却水で冷却し、空冷サイドカットペレタイザを用いてペレット化を行い、次いでペレットにタルクを付与した後、乾燥することを特徴とする共重合ポリエステル樹脂ペレットの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ガラス転移点の高低を問わず、1種の払い出し装置で、共重合ポリエステル樹脂を容易に安定してペレット化することが可能となり、また、冷却液に離型効果のある水性分散体を含有する液体を用いるか、ペレットを作製した後、ペレットにタルクを付与することで、ガラス転移点が低い共重合ポリエステル樹脂であっても、ペレット状態で長期間保存することができるようになり、産業上の利用価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明がペレット化の対象とする共重合ポリエステル樹脂とは、主としてジカルボン酸成分とグリコール成分の等モル量から構成され、必要に応じてヒドロキシカルボン酸成分などが共重合されたものである。
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ジカルボキシビフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、アイコサン二酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸の脂環族ジカルボン酸などを例示できる。これらは無水物であってもよい。
【0008】
また、グリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどの脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、ビスフェノールAP、4,4′−ビフェノールのエチレンオキサイド付加体又はプロピレンオキサイド付加体、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0009】
本発明において、ポリエステルには、適度な柔軟性、接着性の向上、ガラス転移温度の調整などの目的に応じて、ヒドロキシカルボン酸を共重合させることができる。ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、乳酸、オキシラン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、10−ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。
また、少量であれば、3官能以上のカルボン酸成分やアルコール成分を共重合成分として添加してもよい。3官能以上のカルボン酸成分としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水べンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸等の芳香族カルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などの脂肪族カルボン酸が挙げられる。
3官能以上のアルコール成分としては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコース、マニトール、ソルビトールが挙げられる。
これらは必ずしも1種類で用いる必要はなく、樹脂に付与したい特性に応じて複数種以上を混合して用いることができる。このとき、3官能以上のモノマーの割合としては、全カルボン酸成分又は全アルコール成分に対して0.2〜5モル%程度が適当である。0.2モル%未満では添加した効果が発現せず、5モル%を超える量を含有させた場合には、重合の際、ゲル化点を超えゲル化が問題になる場合がある。
【0010】
また、共重合ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸、モノアルコールが共重合されていてもよい。モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等、モノアルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノールなどが挙げられる。
共重合ポリエステル樹脂は、前記のモノマーを組み合わせて、公知の方法により重縮合させることにより製造することができ、例えば、全モノマー成分及び/又はその低重合体を不活性雰囲気下で180〜250℃、2.5〜10時間程度反応させてエステル化反応を行い、引き続いて、130Pa以下の減圧下に220〜280℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めて共重合ポリエステル樹脂を得る方法などを挙げることができる。
【0011】
エステル化反応及び重縮合反応の際には、テトラブチルチタネ−トなどのチタン化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウムなどの金属の酢酸塩、三酸化アンチモン、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズなどの有機錫化合物を用いて重合を行う。その際の触媒使用量は、生成する樹脂質量に対し、0.01〜1.0質量%で用いるのが好ましい。
【0012】
また、共重合ポリエステル樹脂に所望の酸価や水酸基価を付与する場合には、前記の重縮合反応に引き続き、多塩基酸成分や多価グリコール成分をさらに添加し、不活性雰囲気下、解重合を行えばよい。

共重合ポリエステル樹脂の分子量は、通常2000以上、好ましくは6000以上、最適には10000〜40000である。分子量が2000よりも小さいと、払い出したポリマーのストランドが冷却液の中で切断することが多くなり、生産性が悪くなるので経済的ではない。なお、本発明における分子量とは、数平均分子量をいう。
本発明は、実質的に、(1)共重合ポリエステル樹脂のストランドを冷却する工程、(2)共重合ポリエステル樹脂をペレット化する工程、(3)ペレットを乾燥させる工程、に分けられるが、それぞれの工程について説明する。
【0013】
まず、(1)の共重合ポリエステル樹脂のストランドを冷却する工程について説明する。本発明では、重合釜から冷却相にストランドを引き出し、冷却液でポリマーを冷却する。
樹脂の吐出速度や吐出量は、冷却速度と吐出量のバランスがとれれば特に限定されるものではない。
冷却液の温度は、ポリマーを冷却することができれば特に限定されるものではないが、150℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましく、20〜40℃がさらに好ましい。冷却液の温度が150℃よりも高いと、冷却効果が低くなるので好ましくない。冷却時間も、ポリマーを冷却することができれば特に限定れされるものではないが、10秒〜20分が好ましい。冷却時間が20分よりも長いと、経済的に不利である。
Tgが40℃以下であるTgが低い貧共重合ポリエステルについては、第1発明のように、冷却槽に離型効果のある水性分散体を添加するのが好ましい。貧結晶性共重合ポリエステルとは、240℃で溶融した後、急冷し、1日室温で放置して、昇温速度10℃/分で示差走査熱量測定を行い、1stスキャンにおいて融点ピークがないものをいう。
【0014】
水性分散体としては、有機化合物水性分散体、無機化合物水性分散体が挙げられる。
水性分散体としては、平均粒子径が15μm以下、好ましくは0.1〜10μmで、水に分散し粘着性を有さないものであれば特に限定されるものではない。平均粒子径が15μmよりも大きいと、切断されたペレットに斑なく付着することが難しくなるばかりか、切断されたペレットを長期間保存することができ難くなる場合があるので好ましくない。
水性分散体の保存安定性は良好であるのが好ましいが、有機化合物や無機化合物が水に斑なく分散されていればよい。
有機化合物水性分散体としては、共重合ポリエステル水性分散体、ポリオレフィン水性分散体、ポリ酢酸ビニル水性分散体など、ポリウレタン水性分散体、アイオノマー水性分散体など、各種有機化合物の水性分散体が挙げられるが、中でも共重合ポリエステル水性分散体が、本発明の対象としている最終製品の共重合ポリエステル樹脂ペレットの品質に対する影響が少ないので好ましい。
【0015】
有機化合物水性分散体の水分散させる有機化合物としては、Tgが40℃以上、好ましくはTgが60〜120℃である貧結晶性の樹脂、又は結晶性の樹脂が用いられる。有機化合物水性分散体としては、ユニチカ社製KA−3556、KA−5034、三井化学社製ケミパールV100、V200、V300、W200、W400、W700、W950、日本油脂社製アルフローH−50ESなどが挙げられる。
【0016】
また、無機化合物水性分散体としては、シリコーン系水性分散体などが挙げられる。
【0017】
本発明において、有機化合物水性分散体や無機化合物水性分散体は必ずしも1種類で用いる必要はなく、複数種の有機化合物水性分散体の混用や複数種の無機化合物水性分散体の混用、さらには有機化合物水性分散体と無機化合物水性分散体を混用することができる。
【0018】
次に、(2)の共重合ポリエステル樹脂をペレット化する工程について説明する。
【0019】
本発明では、溶融した粘着性の共重合ポリエステル樹脂を、空冷サイドカットペレタイザ装置を用いてペレット化する方法が挙げられる。
空冷サイドカットペレタイザとは、カッティング部位が空気中で、ストランドが切断歯に対して垂直であるペレタイザをいう。
空冷サイドカットペレタイザとしては、星プラスチック株式会社社製ファンカッタがあり、例えば、FSW−10016が挙げられる。
【0020】
次に、(3)のペレットを乾燥させる工程について説明する。
本発明においては、ペレットを乾燥することができれば、方法は特に限定されるものではない。例えば、真空乾燥、熱風乾燥、自然乾燥又は冷風による乾燥などが挙げられる。ただし、Tgが40℃よりも低い共重合ポリエステル樹脂は、乾燥時に融着する可能性が高いので、熱風による乾燥は避けることが好ましい。
また、粘着が激しい場合は、第2発明のようにペレット化した後、乾燥前にタルクを付与する方法が好適に用いられる。
タルクを使用する場合、ペレットへの付着量は、樹脂に対して、通常、0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%、最適には0.5〜2質量%が好ましい。タルクの付着量が0.1質量%よりも少ない場合は、耐ブロッキング性が十分に発現せず、5質量%よりも多く付着すると、本発明の対象としている最終製品の共重合ポリエステル樹脂ペレットの品質に影響を与える場合があるので好ましくない。

なお、タルクのペレットへの付着量は、るつぼに10gのサンプルを入れ、500℃で2時間加熱した後、残った灰分の質量を測定し、残った灰分量のはじめの10gに対する割合を粉末の付着量とする。
上記で使用するタルクとしては、前記した有機化合物水性分散体や無機化合物水性分散体と同様に、平均粒子径が15μm以下、好ましくは1〜10μmのものが用いられる。平均粒子径が15μmよりも大きいと、切断されたペレットに斑なく付着することが難しくなるばかりか、切断されたペレットを長期間保存することができなくなる場合があるので好ましくない。
【0021】
水性分散体とタルクとは必ずしも片方だけで用いる必要はなく、両者を混合して用いることもできる。
【実施例】
【0022】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた原料と物性の評価方法は、次の通りである。
(1)共重合ポリエステル樹脂の分子量(数平均分子量)
数平均分子量は、GPC分析(島津製作所製の送液ユニットLC−10ADvp型及び紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めた。
(2)共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度
共重合ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7型)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値をガラス転移温度とした。
(3)共重合ポリエステル樹脂のストランド曳糸性
冷却槽に共重合ポリエステル樹脂のストランドを通じた際、切断した本数が1000本中9本以下の場合を○、10本以上切断した場合を×と評価し、○を合格とした。
(4)共重合ポリエステル樹脂の切断性
ファンカッターでペレットを作製した際、1000回切断して、融着しているペレットが50個以下の場合を○、51個以上の場合を×と評価し、○を合格とした。
(5)耐ブロッキング性評価
ペレット100gを、25kgfの荷重をかけ、40℃の恒温槽に3日間放置した後、全くペレット同士が融着していなければ○、ペレット同士が融着しているものが10g以下であれば△、ペレット同士が融着しているものが10gよりも多ければ×と評価し、○を合格と判定した。
(ポリエステル1の製造)
テレフタル酸1661g(100モル部)、トリエチレングリコール1352g(90モル部)、エチレングリコール341g(55モル部)、ビスフェノールAエチレングリコール付加物316g(10モル部)からなる混合物を、攪拌しながら、オートクレーブ中で240℃で3時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、260℃に昇温し、触媒として酢酸亜鉛1.3gを投入し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、重縮合反応を行い、4時間後、得られたものをポリエステル1とし、その組成と特性を表1に示した。
(ポリエステル2〜5の製造)
使用するモノマーとそのモル比、重合触媒、重合温度を表1のように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、表1に示す共重合ポリエステル樹脂を得た。
【0023】
【表1】

(実施例1) ポリエステル1を重合した後、冷却槽にストランドを引き出し、ストランドを冷却後、ファンカッタでペレットを作製した。冷却槽には、平均粒子径7μmの酢酸ビニル水性分散体(三井化学製ケミパールV200)を樹脂分濃度が5質量%になるように添加し、冷却水の温度は10℃、ペレットの冷却時間は3分になるようにした。ファンカッタでペレットを作製した後、ペレットを10℃の冷風によって乾燥した。

(実施例2〜7、比較例1)
用いたポリエステル、冷却水に添加した水性分散体の樹脂の種類、平均粒子径、冷却水への添加量(水性分散体樹脂の固形分換算での質量%)、冷却水の温度、ペレットの冷却時間などを表2のように変更した以外は、実施例1と同様にしてペレットを製造した。
【0024】
実施例1〜7及び比較例1における共重合ポリエステル樹脂のストランド曳糸性、共重合ポリエステル樹脂の切断性、ペレットの耐ブロッキング性評価結果を併せて表2に示す。
【0025】
(実施例8)
ポリエステル3を重合した後、冷却槽にストランドを引き出し、ストランドを冷却後、ファンカッタでペレットを作製した。冷却水の温度は5℃、ペレットの冷却時間は5分になるようにした。冷却水からペレットを取り出した後、日本タルク社製、平均粒子径10μmのタルクを、ペレットへの付着量が2質量%になるように添加し、その後、ペレットを10℃の冷風によって乾燥した。

(実施例9、比較例2)
用いたポリエステル、タルクの平均粒子径とその付着量を表3のように変更した以外は、実施例8と同様にしてペレットを製造した。
実施例8、9及び比較例2おける共重合ポリエステル樹脂のストランド曳糸性、共重合ポリエステル樹脂の切断性、ペレットの耐ブロッキング性評価結果を併せて表3に示す。
【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

実施例1〜9では、共重合ポリエステル樹脂のストランドをファンカッタで容易にペレットに切断することができ、また、得られたペレットは耐ブロッキング性があり、長期間保存できるものであった。これに対して、比較例1、2は共重合ポリエステル樹脂の分子量が低いため、ストランド曳糸性がないばかりか、切断性が悪く、得られたペレットも耐ブロッキング性が悪いものであった。
このように、本発明を用いれば、ガラス転移点の高低を問わず、分子量2000以上の共重合ポリエステル樹脂をペレット状に容易に安定して切断することができ、しかも冷却液に離型効果のある水性分散体を含有する液体を用いるか、ペレットを作製した後、ペレットにタルクを付与すれば、そのペレットを長期間保存することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

分子量2000以上の共重合ポリエステル樹脂を、水性分散体を含有した冷却水で冷却し、空冷サイドカットペレタイザを用いてペレット化を行い、乾燥することを特徴とする共重合ポリエステル樹脂ペレットの製造方法。
【請求項2】
共重合ポリエステル樹脂が、ガラス転移点40℃以下の貧結晶性共重合ポリエステル樹脂であり、水性分散体が、ガラス転移点40℃以上の貧結晶性有機化合物又は結晶性の有機化合物の水性分散体、もしくは無機化合物の水性分散体であることを特徴とする請求項1記載の共重合ポリエステル樹脂ペレットの製造方法。
【請求項3】
分子量2000以上の共重合ポリエステル樹脂を、冷却水で冷却し、空冷サイドカットペレタイザを用いてペレット化を行い、次いでペレットにタルクを付与した後、乾燥することを特徴とする共重合ポリエステル樹脂ペレットの製造方法。

【公開番号】特開2007−70539(P2007−70539A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260914(P2005−260914)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】