説明

共重合体及びそれを用いた高分子発光素子

【課題】緑色の蛍光の発光波長を広い波長範囲で変えられる共重合体を提供する。
【解決手段】それだけで重合させた時に固体状態で最も強い蛍光の波長が470nm以下となる特定構造の繰り返し単位Aに対し、フルオレノンジイル基に属する特定の繰り返し単位Bを少量(共重合体の全繰り返し単位の合計に対して0.01〜30モル%)含ませ、固体状態で最も強い蛍光の波長が490〜550nmであるような緑色の蛍光を発し、かつポリスチレン換算の重量平均分子量が10〜10とした共重合体。繰り返し単位A及びBとして、例えば以下のような構造のものが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体及びそれを用いた高分子発光素子(以下高分子LEDということがある)に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子量の発光材料及び電荷輸送材料は、低分子量のそれらとは異なり、溶媒に可溶で塗布法により発光素子における層を形成できることから種々検討されている。その例として、フルオレノンジイル基を繰り返し単位として有する共重合体が検討されている(非特許文献1〜2参照)。
【0003】
【非特許文献1】Macromolecules,2003,36,p.7045-7054
【非特許文献2】J.Appl.Phys.,2002,92(5),p.2795-2802
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
共重合体を緑色の発光材料として用いる長所の1つは、共重合比を変えることによって発光波長を変えることができ、様々な種類の緑色発光が得られることである。しかし、非特許文献2記載のフルオレンとフルオレノンの共重合体では発光の波長範囲が限定されるため、より広い波長範囲の緑色を発光する共重合体が望まれていた。
本発明の目的は、最も強い蛍光の波長が490〜550nmであるような緑色の発光を発する共重合体であって、共重合比を変えることでより広い波長範囲の緑色を発光させることができる共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、フルオレノンジイル基と特定の構造を持つ繰り返し単位を有する共重合体により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
即ち本発明は、以下の通りである。
[1] 下記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類以上と、下記式(2)で示される構造及び下記式(3)で示される構造及びアリーレン基からなる群から選ばれる1種類以上の繰り返し単位を有し、下記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位が該共重合体の全繰り返し単位の合計に対して0.01〜30モル%であり、固体状態で最も強い蛍光の波長が490〜550nmであるような緑色の蛍光を発する共重合体であって、かつポリスチレン換算の重量平均分子量が10〜10である上記共重合体:

【化1】


(式中、Xは−O−、−S−、−N(R)−、−Si(R)−、又は−Se−を表す;Y及びYは−O−、−S−、−C(R’)−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−Si(R’)−、−N(R’)−、−B(R’)−、−P(R’)−又はP(=O)(R’)−を表す;ただし、YとYは同一になることはない;YとYは二重結合で結ばれていてもよい;この場合、例示中の置換基R’の数が1つ少なくなる;Rは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、シアノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基を表す;R’は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、シアノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基を表す;式(1)〜(3)において一つの繰り返し単位構造中に複数のR又はR’が存在する場合は、これらは同一であっても相異なってもよい;m及びnは各々0〜3の整数を表す;A環、B環、C環、及びD環はそれぞれ独立に芳香環を表す。)。
[2] 前記式(2)で示される構造を含む繰り返し単位が、下記式(2−1)で示される上記[1]記載の共重合体。
【化2】


(式中、Xは−O−、−S−、−N(R)−、−Si(R)−、又は−Se−を表す;Rは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、シアノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、又はアリールアルキル基を表す;式(2−1)において一つの繰り返し単位構造中に複数のRが存在する場合、これらは同一であっても相異なってもよい;a及びbは各々0〜3の整数を表し、a+bは1以上である。)。
[3] 前記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を除き、前記式(2)で示される構造及び前記式(3)で示される構造及びアリーレン基からなる群から選ばれる1種類以上の繰り返し単位のみからなる重合体が、固体状態で、最も強い蛍光の波長が470nm以下であるような蛍光を発するという条件を満たすものである上記[1]記載の共重合体。
[4] 前記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を除き、前記式(2)で示される構造及び前記式(3)で示される構造及びアリーレン基からなる群から選ばれる1種類以上の繰り返し単位のみからなる重合体が、固体状態で、最も強い蛍光の波長が470nm以下であるような蛍光を発するという条件を満たすものである上記[2]記載の共重合体。
[5] 陽極及び陰極からなる電極間に、発光層を有し、該発光層が、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の共重合体を含むことを特徴とする高分子発光素子。
[6] 上記[5]に記載の高分子発光素子を含むことを特徴とする面状光源。
[7] 上記[5]に記載の高分子発光素子を含むことを特徴とするセグメント表示装置。
[8] 上記[5]に記載の高分子発光素子を含むことを特徴とするドットマトリックス表示装置。
[9] 上記[5]に記載の高分子発光素子をバックライトとすることを特徴とする液晶表示装置。
[10] 上記[1]〜[4]のいずれか一項記載の共重合体を含むことを特徴とするインク組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の共重合体は、共重合比を変えることで広い波長範囲の緑色を発光させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の共重合体は、上記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類以上と、上記式(2)で示される構造及び上記式(3)で示される構造及びアリーレン基からなる群から選ばれる1種類以上の繰り返し単位を有し、上記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位が該共重合体の全繰り返し単位の合計に対して0.01〜30モル%であり、固体状態で最も強い蛍光の波長が490〜550nmであるような緑色の蛍光を発する共重合体であって、かつポリスチレン換算の重量平均分子量が10〜10である上記共重合体である。好ましくは、共重合体を製造する際に、上記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を除き、上記式(2)で示される構造及び上記式(3)で示される構造及びアリーレン基からなる群から選ばれる1種類以上の繰り返し単位のみからなる重合体を製造した場合、同重合体は、固体状態で最も強い蛍光の波長が470nm以下であるような蛍光を発するという条件を満たす。
【0009】
本発明の共重合体は、重合の行ないやすさ、溶解性等の観点から、上記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類と上記式(2)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類含む共重合体;上記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類と上記式(2)で示される構造からなる繰り返し単位を2種類含む共重合体;上記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類と上記式(3)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類含む共重合体;上記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類と上記式(3)で示される構造からなる繰り返し単位を2種類含む共重合体;上記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類とアリーレン基からなる繰り返し単位を1種類含む共重合体;上記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類とアリーレン基からなる繰り返し単位を2種類含む共重合体;上記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類と上記式(2)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類とアリーレン基からなる繰り返し単位を1種類含む共重合体が好ましい。上記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類と上記式(2)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類含む共重合体;上記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類と上記式(2)で示される構造からなる繰り返し単位を2種類含む共重合体がより好ましい。上記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類と上記式(2)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類含む共重合体が更に好ましい。
【0010】
上記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位が該共重合体の全繰り返し単位の合計に対して0.01〜30モル%である。30モル%より大きくなると共重合体の溶解性が悪くなるという問題が生じ、0.01モル%より小さい場合は、重合時に制御することが難しいという問題が生じる。上記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位が該共重合体の全繰り返し単位の合計に対して0.05〜20モル%であることがより好ましい。
【0011】
上記式(1)のmは0〜3の整数を表し、0〜1の整数であることが好ましく、0であることが更に好ましい。また、nは0〜3の整数を表し、0〜1の整数であることが好ましく、0であることが更に好ましい。
【0012】
上記式(1)の構造はモノマー合成の行いやすさ、重合の行いやすさ等から下記式(1−1)又は(1−2)の構造であることが好ましく、下記式(1−3)又は(1−4)の構造であることがより好ましく、下記式(1−4)の構造であることが更に好ましい。
【化3】


式(1−1)〜(1−4)中、Rは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、シアノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基を表す。式(1−1)〜(1−4)において一つの繰り返し単位構造中に複数のRが存在する場合があるが、これらは同一であっても相異なってもよい。p、q、r、及びsは各々0〜3の整数を表す。
【0013】
上記式(1)、(1−1)、(1−2)、及び(1−3)におけるRとしては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、シアノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基等が挙げられる。上記式において一つの繰り返し単位構造中に複数のRが存在するが、これらは同一であっても相異なってもよい。
【0014】
ここで、アルキル基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、その炭素数は通常1〜20程度であり、その例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、 i-プロピル基、ブチル基、 i-ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基などが挙げられる。
【0015】
アルコキシ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、その炭素数は通常1〜20程度であり、その例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、 i-プロピルオキシ基、ブトキシ基、 i-ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソアミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基などが挙げられる。
【0016】
アルキルチオ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、その炭素数は通常1〜20程度であり、その例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、ブチルチオ基、i−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基などが挙げられる。
【0017】
アルキルシリル基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、その炭素数は通常1〜60程度であり、その例としては、メチルシリル基、エチルシリル基、プロピルシリル基、i−プロピルシリル基、ブチルシリル基、i−ブチルシリル基、t−ブチルシリル基、ペンチルシリル基、ヘキシルシリル基、シクロヘキシルシリル基、ヘプチルシリル基、オクチルシリル基、2−エチルヘキシルシリル基、ノニルシリル基、デシルシリル基、3,7−ジメチルオクチルシリル基、ラウリルシリル基、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、i−プロピルジメチルシリル基、ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基などが挙げられる。
【0018】
アルキルアミノ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、モノアルキルアミノ基でもジアルキルアミノ基でもよく、その炭素数は通常1〜40程度であり、その例として、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、 i−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基などが挙げられる。
【0019】
アリール基は、炭素数は通常6〜60程度であり、好ましくは7〜48である。具体的には、フェニル基、C〜C12アルコキシフェニル基(C〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニル基、C〜C12アルキルフェニル基が好ましい。
〜C12アルコキシとして具体的には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、i−プロピルオキシ、ブトキシ、i−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、ラウリルオキシなどが例示される。
〜C12アルキルフェニル基として具体的にはメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、i−プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、i−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ドデシルフェニル基などが例示される。
【0020】
アリールオキシ基としては、炭素数は通常6〜60程度であり、好ましくは7〜48である。具体的には、フェノキシ基、C〜C12アルコキシフェノキシ基、C〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが例示され、C〜C12アルコキシフェノキシ基、C〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。
〜C12アルコキシとして具体的には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、i−プロピルオキシ、ブトキシ、i−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、ラウリルオキシなどが例示される。
〜C12アルキルフェノキシ基として具体的にはメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、i−プロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、i−ブチルフェノキシ基、t−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基、ドデシルフェノキシ基などが例示される。
【0021】
アリールチオ基としては、炭素数は通常6〜60程度であり、好ましくは炭素数7〜48である。具体的には、フェニルチオ基、C〜C12アルコキシフェニルチオ基、C〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニルチオ基、C〜C12アルキルフェニルチオ基が好ましい。
【0022】
アリールアルキル基は、炭素数は通常7〜60程度であり、好ましくは7〜48である。具体的には、フェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル基、1−ナフチル−C〜C12アルキル基、2−ナフチル−C〜C12アルキル基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル基が好ましい。
【0023】
上記式(2)のA環及びB環はそれぞれ独立に芳香環であるが、芳香族炭化水素環であることが好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環であることがより好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環であることが更に好ましく、ベンゼン環であることが更により好ましい。
【0024】
上記式(2)で示される構造を含む繰り返し単位は、下記式(2−1)〜式(2−3)であることが好ましく、式(2−1)であることがより好ましい。

【化4】


式中、Xは−O−、−S−、−N(R)−、−Si(R)−、又は−Se−を表す。Rは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、シアノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、又はアリールアルキル基を表す。式(2−1)〜(2−3)において一つの繰り返し単位構造中に複数のRを有している場合があるが、これらは同一であっても相異なってもよい。a、b、c、d、及びeは各々0〜3の整数を表す。fは0〜5の整数を表す。
【0025】
溶解性の点から、a+bは1以上であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。c+dは1以上であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。e+fは1以上であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
【0026】
上記式(2)、(2−1)、(2−2)、及び(2−3)のRの種類としては、溶解性、蛍光特性等の観点から、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、及びアリールアルキル基が好ましく、アルキル基、及びアルコキシ基がより好ましい。
【0027】
上記式(2)、(2−1)、(2−2)、及び(2−3)のXとしては、溶解性、蛍光特性等の観点から、−O−、及び−S−が好ましい。
【0028】
上記式(2)の具体的構造としては、下記構造が挙げられる。

【化5】

【0029】
上記式(3)のC環及びD環はそれぞれ独立に芳香環であるが、芳香族炭化水素環であることが好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環であることがより好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環であることが更に好ましく、ベンゼン環であることが更により好ましい。
【0030】
式(3)中のY及びYは、電荷注入特性、蛍光特性等の観点から、−O−、−S−、−C(R’)−、−C(=O)−、又は−N(R’)−であることが好ましく、−O−、−N(R’)−、又は−C(R’)−であることがより好ましく、−O−、又は−C(R’)−であることが更に好ましい。
【0031】
上記式(3)で示される構造を含む繰り返し単位は、下記式(3−1)〜式(3−3)であることが好ましく、式(3−1)であることがより好ましい。
【化6】


上記式中、及び以下においてR’は前述のR’と同様に定義される。Yは−O−、−S、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−Si(R’)−、−N(R’)−、−B(R’)−、−P(R’)−又はP(=O)(R’)−を表す。Yは、−O−、−S、−S(=O)−、−SO−、−Si(R’)−、−N(R’)−、−B(R’)−、−P(R’)−又は−P(=O)(R’)−を表す。Yは−Si(R’)−、又は−N−を表す。
【0032】
は、−O−、−S−、−C(=O)−、又は−N(R’)−であることが好ましく、−O−、又は−N(R’)−であることがより好ましく、−O−であることが更に好ましい。Yは、−O−、−S、−N(R’)−が好ましい。Yは、−N−が好ましい。
【0033】
上記式(3)の具体的構造としては、下記構造が挙げられる。

【化7】

【0034】
アリーレン基としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基、及びアントラセンジイル基が挙げられる。
【0035】
フェニレン基は、下記式(4)の構造で示される。
【化8】


Rは式(1)と同様に定義される。上記式(4)において一つの構造中に複数のRが存在する場合は、これらは同一であっても相異なってもよい。gは0〜4の整数を表す。
【0036】
gはモノマー合成の行ないやすさ、溶解性の観点から、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
【0037】
上記式(4)の構造の中では下記式(4−1)の構造がより好ましい。

【化9】

【0038】
上記式(4)及び(4−1)中のRの種類としては、溶解性、蛍光特性等の観点から、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基が更に好ましい。
【0039】
ナフタレンジイル基は、下記式(5)の構造で示される。
【化10】


Rは式(1)と同様に定義される。上記式(5)において一つの構造中に複数のRが存在する場合は、これらは同一であっても相異なってもよい。hは0〜6の整数を表す。
【0040】
hはモノマー合成の行ないやすさ、溶解性の観点から、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
【0041】
上記式(5)の構造の中では下記式(5−1)〜式(5−3)の構造がより好ましく、下記式(5−1)の構造が更に好ましい。
【化11】

【0042】
上記式(5)、(5−1)、(5−2)、及び(5−3)中のRの種類としては、溶解性、蛍光特性等の観点から、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基がより好ましい。
【0043】
アントラセンジイル基は、下記式(6)の構造で示される。

【化12】


Rは式(1)と同様に定義される。上記式(6)において一つの構造中に複数のRが存在する場合は、これらは同一であっても相異なってもよい。iは0〜8の整数を表す。
【0044】
iはモノマー合成の行ないやすさ、溶解性の観点から、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
【0045】
上記式(6)の構造の中では下記式(6−1)又は(6−2)の構造がより好ましく、下記式(6−2)の構造が更に好ましい。
【化13】

【0046】
上記式(6)、(6−1)、及び(6−2)中のRの種類としては、溶解性、蛍光特性等の観点から、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基がより好ましい。
【0047】
なお、本発明の共重合体は、蛍光特性や電荷注入特性を損なわない範囲で、上記式(1)で示される構造、上記式(2)で示される構造及び上記式(3)で示される構造及びアリーレン基以外の繰り返し単位の合計は、全繰り返し単位の合計に対して30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることが更に好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。
【0048】
上記式(1)で示される構造、上記式(2)で示される構造及び上記式(3)で示される構造及びアリーレン基以外の繰り返し単位としては、例えば下記構造が例示される。

【化14】


式中、R’は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、シアノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、又はアリールアルキルチオ基を表す。上記式において一つの構造中に複数のRが存在するが、これらは同一であっても相異なってもよい。
【0049】
本発明の共重合体は、広い波長範囲の緑色の蛍光を発することを特徴とする。波長と色との対応は、例えば、理科年表(国立天文台編、昭和64年)によれば490から550nmの範囲が緑色と記されている。しかし、高分子LED用発光材料の蛍光スペクトルは分布を持つ場合が多いうえ、色は個人の感覚に依存するものであるため、最も強い蛍光の波長が490nm以下あるいは550nm以上であっても一概に緑色でないとは言えない。しかし、大多数の人が緑色と認識するのは、最も強い蛍光の波長が490〜550nmにある場合が多い。本発明の共重合体は、大多数の人が緑色と認識する上記490〜550nmの範囲で、広い範囲の波長で発光するよう制御できる点で優れている。
【0050】
本発明の共重合体は、上記式(1)のフルオレノンジイル基を加えないで製造した場合に、最も強い蛍光の波長が470nm以下の蛍光を発するものが好ましい。このような共重合体としては、下記2種類の繰り返し単位A及びBを持つ共重合体が挙げられる。
【化15】


上記繰り返し単位Bのみを含む重合体は、最も強い蛍光の波長が470nm以下となる蛍光を発する。この重合体に上記式(1)のフルオレノンジイル基に属する上記繰り返し単位Aをごく少量含ませるだけで、最も強い蛍光の波長が490〜550nmにある緑色の蛍光を発する重合体とすることができる。
【0051】
フルオレノンジイル基を含まない重合体は、フルオレノンを含む共重合体を重合する場合と同じ種類のモノマー、溶媒、触媒を用いて製造する。溶媒量、温度、反応時間、触媒量も同一にすることが好ましいが、必ずしも同じにする必要はない。
【0052】
共重合体の繰り返し単位として上記式(1)のフルオレノンジイル基を含む場合、該フルオレノンジイル基は共重合体の発光色に強い影響を与える。特に、フルオレンジイル基のようなホモポリマーにした時に最も強い蛍光の波長が470nm以下の蛍光を発するような繰り返し単位と、上記式(1)のフルオレノンジイル基との共重合体は、該フルオレノンジイル基がポリマー鎖中に1分子含まれるだけで緑色の発光をする場合が多く、該フルオレノンジイル基の組成比が大きくなればなる程、長波長の蛍光を発する。そのため、該フルオレノンジイル基をごく少量しか含まない共重合体において、発光する蛍光波長が短波長であればあるほど、この波長から550nmまでの波長範囲が広くなり、共重合体中の上記式(1)の組成比を制御することにより、発光することができる緑色の波長範囲が広くなる。
【0053】
蛍光スペクトルの測定はいくつかの手法で行うことができるが、例えば下記の手法がある。まず、重合体の0.4wt%クロロホルム溶液を石英上にスピンコートして重合体の薄膜を作製した。この薄膜を375nmの波長で励起し、蛍光分光光度計(日立製作所850)を用いて蛍光スペクトルを測定した。
【0054】
本発明の共重合体は、重量平均分子量がポリスチレン換算で通常は10〜10であり、成膜性の点から好ましくは5×10〜2×10であり、より好ましくは1×10〜5×10、更に好ましくは1×10〜2×10であり、特に好ましくは1×10〜5×10である。
【0055】
本発明の共重合体に対する良溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、デカリン、n−ブチルベンゼンなどが例示される。重合体の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に本発明の共重合体を0.1重量%以上溶解させることができる。
【0056】
本発明の共重合体は、例えば、一般式(7)、(8)、(9)及び/又は(10)で示される単量体を反応させることにより製造することができる。
−Ar11−Y (7)
−Ar12−Y (8)
−E (9)
−E (10)
式中、Ar11及びAr12はそれぞれ独立にフルオレノンジイル基、2価の複素環基、アリーレン基又は2価の芳香族アミン基を表す。E及びEはそれぞれ末端基を表す。Y、Y、Y、Y、Y及びYはそれぞれ独立に、脱離基を表す。但し、E及びEは互いに相異なる。
【0057】
脱離基としては、ハロゲン原子、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、又はB(OR11(ここで、R11は水素原子又はアルキル基である)で示される基が挙げられる。
【0058】
ここに、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、塩素原子、臭素原子が好ましく、臭素原子が最も好ましい。アルキルスルホニルオキシ基は、フッ素原子で置換されていてもよく、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等が挙げられる。アリールスルホニルオキシ基は、アルキル基で置換されていてもよく、フェニルスルホニルオキシ基、トリスルホニルオキシ基等が挙げられる。
【0059】
−B(OR11で示される基において、R11は、水素原子又はアルキル基である。アルキル基としては、炭素数は通常1〜20程度であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などが挙げられる。また、アルキル基どうしは、つながって環を形成していてもよい。
【0060】
−B(OR11で示される基として、具体的には、

【化16】


が挙げられ、
【化17】


が好ましい。
【0061】
一般式(9)及び(10)単量体の仕込み量の合計は、一般式(7)及び(8)の単量体の仕込み量の合計に対して、一般的には0.1〜10モル%であり、0.2〜5モル%が好ましく、0.5〜3モル%がより好ましい。
【0062】
本発明の共重合体の製造方法としては、例えば上述した該当する単量体をSuzuki反応により重合する方法(Chem.Rev.,第95巻,2457頁(1995年))、Grignard反応により重合する方法(共立出版、高分子機能材料シリーズ第2巻、高分子の合成と反応(2)、432−3頁)、山本重合法により重合する方法(Prog.Polym.Sci.,第17巻,1153−1205頁,1992年)、FeCl等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法(丸善、実験化学講座第4版、28巻、339−340頁)などが例示される。
【0063】
Suzuki反応を用いる場合について説明する。この場合、例えば、Y及びYがそれぞれ独立に−B(OR11(ここで、R11は水素原子又はアルキル基である)で示される基であり、Y及びYがそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基であり、Yが−B(OR11(ここで、R11は水素原子又はアルキル基である)で示される基であり、Yがハロゲン原子、アルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基である単量体を用い、これらの単量体をPd(0)触媒の存在下で反応させる。
【0064】
なおこの場合、反応に供する、2個の脱離基を有する2種以上の単量体のうち、少なくとも1種が−B(OR11(ここで、R11は水素原子又はアルキル基である)を2個有する単量体であり、少なくとも1種が、ハロゲン原子、アルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基を2個有する単量体であることを要する。このような単量体を用いる反応においては、通常、式(7)及び/又は(8)で表される単量体を1〜100時間程度反応させた後、その後系内に単量体(9)を添加して0.5〜50時間程度反応させ、その後、単量体(10)を系内に添加して0.5〜50時間程度反応させる。
【0065】
Pd(0)触媒として、例えばパラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類などを用い、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム等の無機塩基、トリエチルアミン等の有機塩基、フッ化セシウムなどの無機塩をモノマーに対して当量以上、好ましくは1〜10当量加えて反応させる。無機塩を水溶液として、2相系で反応させてもよい。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどが例示される。溶媒にもよるが50〜160℃程度の温度が好適に用いられる。溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は1時間から200時間程度である。
【0066】
山本重合法を用いる場合について説明する。この場合、例えば、Y、Y、Y、Y、Y及びYがそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキルスルホニルオキシ基又はアリールスルホニルオキシ基である単量体を用い、これらの単量体をNi(0)錯体の存在下で反応させる。反応は、通常は、単量体(7)〜(10)全てを混合して実施する。
【0067】
Ni(0)錯体(ゼロ価ニッケル錯体)を用いる。ニッケル錯体としては、ゼロ価ニッケルをそのまま使う方法と、ニッケル塩を還元剤の存在下で反応させ、系内でゼロ価ニッケルを生成させて使用する方法がある。ゼロ価ニッケル錯体としては、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルなどが例示され、中でも、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)が、汎用性で安価という観点で好ましい。また、中性配位子を添加することが、収率向上の観点から好ましい。ここに、中性配位子とは、アニオンやカチオンを有していない配位子であり、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、メチレンビスオキサゾリン、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の含窒素配位子;トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェノキシホスフィン等の第三ホスフィン配位子などが例示される。汎用性、安価の点で含窒素配位子が好ましく、2,2’−ビピリジルが高反応性、高収率の点で特に好ましい。特に、重合体の収率向上の点から、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)を含む系に中性配位子として2,2’−ビピリジルを加えた系が好ましい。
【0068】
系内でゼロ価ニッケルを反応させる方法においては、ニッケル塩として塩化ニッケル、酢酸ニッケル等が挙げられる。還元剤としては、亜鉛,水素化ナトリウム,ヒドラジン及びその誘導体、リチウムアルミニウムヒドリドなどが挙げられ、必要に応じて添加物として、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム等が用いられる。重合溶媒としては、重合を阻害しないものであれば特に限定されないが、1種類以上の芳香族炭化水素系溶媒及び/又はエーテル系溶媒を含むものが好ましい。ここに芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、ブチルベンゼン、ナフタリン、テトラリン等が挙げられ、トルエン、キシレン、テトラリン、テトラメチルベンゼンが好ましい。また、エーテル系溶媒としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等が挙げられ、高分子化合物に対する良溶媒である、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが好ましい。溶媒の中では、テトラヒドロフランが最も好ましい。また、重合性、溶解性を改良する観点から、溶媒としては、重合反応を阻害しないものであれば、芳香族炭化水素系溶媒及び/又はエーテル系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒及びエーテル系溶媒以外の溶媒との混合溶媒を用いてもよい。
【0069】
反応操作等は、例えば、特開2000−44544号公報に記載の方法に準じて行うことができる。山本重合法においては、例えば、重合反応は、通常アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下、テトラヒドロフラン溶媒中、60℃の温度で、ゼロ価のニッケル錯体、中性配位子の存在下で行われる。重合時間は、通常0.5〜100時間程度であるが、製造コストの点から、10時間以内が好ましい。重合温度は、通常0〜200℃程度であるが、高収率、低加熱費の点から、20〜100℃が好ましい。
【0070】
また、中性配位子を使用する場合には、その使用量としては、反応収率とコストの点からゼロ価のニッケル錯体1モルに対して、0.5〜10モル程度が好ましく、0.8〜1.5モルがより好ましく、0.9〜1.1モルが更に好ましい。
【0071】
ゼロ価のニッケル錯体の使用量は、重合反応を阻害しない程度ならば、特には限定されないが、使用量が過少だと分子量が低くなる傾向にあり、使用量が過大であると後処理が繁雑になる傾向がある。そのため、モノマー1モルに対して、0.1〜10モルが好ましく、1〜5モルがより好ましく、2〜3.5モルが更に好ましい。
【0072】
本発明の共重合体を高分子LEDの発光材料として用いる場合、その純度が発光特性に影響を与えるため、重合前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製したのちに重合することが好ましく、また合成後、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0073】
本発明の高分子LEDは、陽極及び陰極からなる電極間に発光層を有し、該発光層が本発明の共重合体を含むことを特徴とする。本発明の高分子LEDには、少なくとも一方の電極と発光層との間に該電極に隣接して導電性高分子を含む層を設けた高分子発光素子、少なくとも一方の電極と発光層との間に該電極に隣接して平均膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子発光素子も含まれる。
【0074】
また、本発明の高分子LEDとしては、陰極と発光層との間に電子輸送層を設けた高分子LED、陽極と発光層との間に正孔輸送層を設けた高分子LED、陰極と発光層との間に電子輸送層を設け、かつ陽極と発光層との間に正孔輸送層を設けた高分子LED等が挙げられる。
【0075】
本発明の高分子LEDの構造としては、具体的には、以下のa)〜d)の構造が例示される。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0076】
ここで、発光層とは、発光する機能を有する層であり、正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層である。なお、電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶ。発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。
【0077】
また、電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、特に電荷注入層(正孔注入層又は電子注入層)と一般に呼ばれることがある。
【0078】
さらに電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して前記の電荷注入層又は膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄い絶縁層を挿入してもよい。積層する層の順番や数、及び各層の厚さは、発光効率や素子寿命を勘案して適宜選択することができる。
【0079】
本発明において、電荷注入層(電子注入層及び/又は正孔注入層)を設けた高分子LEDとしては、陰極に隣接して電荷注入層を設けた高分子LED、陽極に隣接して電荷注入層を設けた高分子LEDが挙げられる。例えば、具体的には、以下のe)〜p)の構造が挙げられる。
e)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
f)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
g)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/陰極
l)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
m)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
o)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
p)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
【0080】
電荷注入層の具体的な例としては、導電性高分子を含む層、陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層などが例示される。
【0081】
上記電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、該導電性高分子の電気伝導度は、10−5S/cm以上10S/cm以下であることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10−5S/cm以上10S/cm以下がより好ましく、10−5S/cm以上10S/cm以下が更に好ましい。通常は該導電性高分子の電気伝導度を10−5S/cm以上10以下とするために、該導電性高分子に適量のイオンをドープする。
【0082】
ドープするイオンの種類は、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。アニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオンなどが例示され、カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンなどが例示される。電荷注入層の膜厚は、例えば1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
【0083】
電荷注入層に用いる材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体などの導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニンなど)、カーボンなどが例示される。
【0084】
膜厚2nm以下の絶縁層は電荷注入を容易にする機能を有する。上記絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子LEDとしては、陰極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子LED、陽極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子LEDが挙げられる。
【0085】
具体的には、例えば、以下のq)〜ab)の構造が挙げられる。
q)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/陰極
r)陽極/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
s)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
t)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/陰極
u)陽極/正孔輸送層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
v)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
w)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/電子輸送層/陰極
x)陽極/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
y)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
z)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
aa)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
ab)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
【0086】
発光層は、本発明の共重合体を含むが、前記重合体以外の発光材料を含んでもよい。また、本発明の高分子LEDにおいては、上記高分子蛍光体以外の発光材料を含む発光層が、前記重合体を含む発光層と積層されていてもよい。該発光材料としては、公知のものが使用できる。低分子化合物としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン又はその誘導体、ペリレン又はその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン又はその誘導体、又はテトラフェニルブタジエン又はその誘導体などを用いることができる。具体的には、例えば特開昭57−51781号、同59−194393号公報に記載されているもの等、公知のものが使用可能である。
【0087】
発光層の成膜の方法に制限はないが、例えば、溶液からの成膜による方法が例示される。
【0088】
溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0089】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロホルム、テトラヒドロフランが例示される。
【0090】
発光層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、更に好ましくは5nm〜200nmである。
【0091】
本発明の高分子LEDが正孔輸送層を有する場合、使用される正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール又はその誘導体、ポリシラン又はその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体、ポリピロール又はその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)又はその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)又はその誘導体などが例示される。
【0092】
具体的には、該正孔輸送材料として、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0093】
これらの中で、正孔輸送層に用いる正孔輸送材料として、ポリビニルカルバゾール又はその誘導体、ポリシラン又はその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)又はその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)又はその誘導体等の高分子正孔輸送材料が好ましく、更に好ましくはポリビニルカルバゾール又はその誘導体、ポリシラン又はその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0094】
ポリビニルカルバゾール又はその誘導体は、例えばビニルモノマーからカチオン重合又はラジカル重合によって得られる。
【0095】
ポリシラン又はその誘導体としては、Chem.Rev.第89巻、1359頁(1989年)、英国特許GB2300196号公開明細書に記載の化合物等が例示される。合成方法もこれらに記載の方法を用いることができるが、特にキッピング法が好適に用いられる。
【0096】
ポリシロキサン又はその誘導体は、シロキサン骨格構造には正孔輸送性がほとんどないので、側鎖又は主鎖に上記低分子正孔輸送材料の構造を有するものが好適に用いられる。特に正孔輸送性の芳香族アミンを側鎖又は主鎖に有するものが例示される。
【0097】
正孔輸送層の成膜の方法に制限はないが、低分子正孔輸送材料では、高分子バインダーとの混合溶液からの成膜による方法が例示される。また、高分子正孔輸送材料では、溶液からの成膜による方法が例示される。
【0098】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0099】
溶液からの成膜方法としては、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0100】
本発明の共重合体はインクジェット法により成膜できることを特徴としている。インクジェット法とは、重合体を溶媒に溶解させてなる組成物をインクジェット装置等で吐出する方法である。溶液を作製する際に、添加剤やドーパントを含んでいてもよい。色の塗り分けが可能な点や材料のロスが少なく有効に活用できる点が長所である。
【0101】
インクジェット法で成膜するためには、本発明の共重合体を溶媒に溶解させてインク組成物にする必要がある。溶媒は1種類でも2種類以上でもよいが、2種類以上が好ましい。また、2種類以上の場合は、共重合体の溶解度が低い溶媒や全く溶解しない溶媒を含んでいてもよい。
【0102】
インク組成物を作成するための溶媒としては、例えば、トルエン、p−キシレン、o−キシレン、m−キシレン、1、3、5−トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、n−ブチルベンゼン、p−ジエチルベンゼン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、i−ブタノール、オクタノール、エチルヘキサノール、ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロメタン、塩化メチレン、フェノール、アニソール、エトキシベンゼン、メチルイソブチルケトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ベンジルアセテート、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジ−n−ブチル、アセトフェノン。メチルアセトフェノン、(シクロヘキセニル)シクロヘキサノン、ジメチルイミダゾリジノン、ドデシルベンゼン、ドデカン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸−n−プロピル、安息香酸−n−ブチル、ベンジルアセテート、エチレングリコールジアセテート、n−メチルピロリドン、メシチレン、デカリン、アニリン、アセトアニリド、アセトアルデヒド、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0103】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0104】
正孔輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚としては、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0105】
本発明の高分子LEDが電子輸送層を有する場合、使用される電子輸送材料としては公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン又はその誘導体、ベンゾキノン又はその誘導体、ナフトキノン又はその誘導体、アントラキノン又はその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン又はその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン又はその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体、ポリキノリン又はその誘導体、ポリキノキサリン又はその誘導体、ポリフルオレン又はその誘導体等が例示される。
【0106】
具体的には、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0107】
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン又はその誘導体、アントラキノン又はその誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体、ポリキノリン又はその誘導体、ポリキノキサリン又はその誘導体、ポリフルオレン又はその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンが更に好ましい。
【0108】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、あるいは溶液又は溶融状態からの成膜による方法が、高分子電子輸送材料では溶液又は溶融状態からの成膜による方法がそれぞれ例示される。溶液又は溶融状態からの成膜時には、高分子バインダーを併用してもよい。
【0109】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、電子輸送材料及び/又は高分子バインダーを溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0110】
溶液又は溶融状態からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0111】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)又はその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)又はその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリシロキサンなどが例示される。
【0112】
電子輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子輸送層の膜厚は、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、更に好ましくは5nm〜200nmである。
【0113】
本発明の高分子LEDを形成する基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、例えばガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン基板などが例示される。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明又は半透明であることが好ましい。
【0114】
通常は、陽極及び陰極からなる電極の少なくとも一方が透明又は半透明であり、陽極側が透明又は半透明であることが好ましい。該陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキシド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作成された膜(NESAなど)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキシド、酸化スズが好ましい。作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、該陽極として、ポリアニリン又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nmから10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、更に好ましくは50nm〜500nmである。また、陽極上に、電荷注入を容易にするために、フタロシアニン誘導体、導電性高分子、カーボンなどからなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよい。
【0115】
本発明の高分子LEDで用いる陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、あるいはそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などが挙げられる。陰極を2層以上の積層構造としてもよい。陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nmから10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、更に好ましくは50nm〜500nmである。
【0116】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。また、陰極と有機物層との間に、導電性高分子からなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよく、陰極作製後、該高分子LEDを保護する保護層を装着していてもよい。該高分子LEDを長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層及び/又は保護カバーを装着することが好ましい。
【0117】
該保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物などを用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板などを用いることができ、該カバーを熱効果樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子が傷付くのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にダメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
【0118】
本発明の高分子発光素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置のバックライト等として用いることができる。
【0119】
本発明の高分子LEDを用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極又は陰極のいずれか一方、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号などを表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子蛍光体を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFTなどと組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダーなどの表示装置として用いることができる。
【0120】
更に、前記面状の発光素子は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、又は面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【0121】
また、本発明の共重合体は、レーザー用色素、有機太陽電池用材料、有機トランジスタ用の有機半導体、導電性薄膜用材料として用いることができる。
【実施例】
【0122】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ここで、数平均分子量及び重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(島津製作所製:LC−10Avp)により、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量として求めた。
また、蛍光強度の測定は前述の方法で行った。
【0123】
実施例1
<共重合体1の合成>
下記化合物A 2.7gと2,7−ジブロモフルオレノン0.015gと2,2’−ビピリジル1.42gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)150gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)を2.5gを加え、室温で10分間攪拌した後、60℃で3時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気中で行った。
反応後、この反応溶液を冷却した後、25%アンモニア水30ml/メタノール150ml/イオン交換水150ml混合溶液をそそぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿を濾過し、回収した。この沈殿を乾燥した後、トルエンに溶解した。この溶液を濾過し、不溶物を除去した後、このトルエン溶液を、アルミナを充填したカラムに通すことにより精製した。次に、このトルエン溶液を1規定塩酸で洗浄した後、静置、分液し、トルエン溶液を回収し、このトルエン溶液を、約3%アンモニア水で洗浄した後、静置、分液し、トルエン溶液を回収し、次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄し、静置、分液し、トルエン溶液を回収した。このトルエン溶液に、攪拌下、メタノールを加えることにより、再沈精製した。
次に、生成した沈殿を回収し、この沈殿を減圧乾燥して、共重合体1を1.2g得た。得られた共重合体1のポリスチレン換算重量平均分子量は、6.0x10であり、数平均分子量は、1.1x10であった。
化合物Aに由来する繰り返し単位と、2,7−ジブロモフルオレノンに由来する繰り返し単位とのモル比は99:1であった。
【0124】
【化18】

【0125】
<蛍光波長の測定>
共重合体1を前記の手法で蛍光波長を測定したところ519nmであった。
【0126】
実施例2
<共重合体2の合成>
化合物A 2.15gと2,7−ジブロモフルオレノン0.3gと2,2’−ビピリジル1.56gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)150gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)を2.7gを加え、室温で10分間攪拌した後、60℃で3時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気中で行った。
反応後、この反応溶液を冷却した後、25%アンモニア水30ml/メタノール150ml/イオン交換水150ml混合溶液をそそぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿を濾過し、回収した。この沈殿を乾燥した後、トルエンに溶解した。この溶液を濾過し、不溶物を除去した後、このトルエン溶液を、アルミナを充填したカラムに通すことにより精製した。次に、このトルエン溶液を1規定塩酸で洗浄した後、静置、分液し、トルエン溶液を回収し、このトルエン溶液を、約3%アンモニア水で洗浄した後、静置、分液し、トルエン溶液を回収し、次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄し、静置、分液し、トルエン溶液を回収した。このトルエン溶液に、攪拌下、メタノールを加えることにより、再沈精製した。
次に、生成した沈殿を回収し、この沈殿を減圧乾燥して、共重合体2を0.06g得た。得られた共重合体2のポリスチレン換算重量平均分子量は、4.5x10であり、数平均分子量は、1.5x10であった。
化合物Aに由来する繰り返し単位と、2,7−ジブロモフルオレノンに由来する繰り返し単位とのモル比は80:20であった。
【0127】
<蛍光波長の測定>
共重合体2を前記の手法で蛍光波長を測定したところ539nmであった。
【0128】
合成例1
<重合体1の合成>
化合物Aのみを共重合体1と同様の手法で重合を行い、重合体1を0.12g得た。重合体1のポリスチレン換算重量平均分子量は、2.8x10であり、数平均分子量は、1.3x10であった。
【0129】
測定例1
<蛍光波長の測定>
重合体1を前記の手法で蛍光波長を測定したところ411nmであり、青色の蛍光を発した。
【0130】
実施例3
<共重合体3の合成>
化合物B 2.6gと2,7−ジブロモフルオレノン0.015gと2,2’−ビピリジル2.0gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)150gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)を3.5gを加え、室温で10分間攪拌した後、60℃で3時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気中で行った。
反応後、この反応溶液を冷却した後、25%アンモニア水30ml/メタノール150ml/イオン交換水150ml混合溶液をそそぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿を濾過し、回収した。この沈殿を乾燥した後、トルエンに溶解した。この溶液を濾過し、不溶物を除去した後、このトルエン溶液を、アルミナを充填したカラムに通すことにより精製した。次に、このトルエン溶液を1規定塩酸で洗浄した後、静置、分液し、トルエン溶液を回収し、このトルエン溶液を、約3%アンモニア水で洗浄した後、静置、分液し、トルエン溶液を回収し、次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄し、静置、分液し、トルエン溶液を回収した。このトルエン溶液に、攪拌下、メタノールを加えることにより、再沈精製した。
次に、生成した沈殿を回収し、この沈殿を減圧乾燥して、共重合体3を1.1g得た。得られた共重合体3のポリスチレン換算重量平均分子量は、4.0x10であり、数平均分子量は、3.9x10であった。
化合物Bに由来する構造単位と、2,7−ジブロモフルオレノンに由来する繰り返し単位とのモル比は99:1であった。
【0131】
【化19】

【0132】
<蛍光波長の測定>
共重合体3を前記の手法で蛍光波長を測定したところ520nmであった。
【0133】
実施例4
<共重合体4の合成>
化合物B 2.1gと2,7−ジブロモフルオレノン0.3gと2,2’−ビピリジル2.0gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)150gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)を3.5gを加え、室温で10分間攪拌した後、60℃で3時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気中で行った。
反応後、この反応溶液を冷却した後、25%アンモニア水30ml/メタノール150ml/イオン交換水150ml混合溶液をそそぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿を濾過し、回収した。この沈殿を乾燥した後、トルエンに溶解した。この溶液を濾過し、不溶物を除去した後、このトルエン溶液を、アルミナを充填したカラムに通すことにより精製した。次に、このトルエン溶液を1規定塩酸で洗浄した後、静置、分液し、トルエン溶液を回収し、このトルエン溶液を、約3%アンモニア水で洗浄した後、静置、分液し、トルエン溶液を回収し、次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄し、静置、分液し、トルエン溶液を回収した。このトルエン溶液に、攪拌下、メタノールを加えることにより、再沈精製した。
次に、生成した沈殿を回収し、この沈殿を減圧乾燥して、共重合体4を0.16g得た。得られた共重合体4のポリスチレン換算重量平均分子量は、6.9x10であり、数平均分子量は、1.6x10であった。
化合物Bに由来する構造単位と、2,7−ジブロモフルオレノンに由来する繰り返し単位とのモル比は80:20であった。
【0134】
<蛍光波長の測定>
共重合体4を前記の手法で蛍光波長を測定したところ542nmであった。
【0135】
合成例2
<重合体2の合成>
化合物Bのみを共重合体3と同様の手法で重合を行い、重合体2を0.20g得た。重合体1のポリスチレン換算重量平均分子量は、2.2x10であり、数平均分子量は、6.9x10であった。
【0136】
測定例2
<蛍光波長の測定>
重合体2を前記の手法で蛍光波長を測定したところ413nmであり、青色の蛍光を発した。
【0137】
合成例3
<共重合体5の合成>
2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン3.3gと2,7−ジブロモ−9,9−ジイソブチルフルオレン0.7gと2,7−ジブロモフルオレノン0.025gと2,2’−ビピリジル2.75gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)200gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)を5.0gを加え、室温で10分間攪拌した後、60℃で3時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気中で行った。
反応後、この反応溶液を冷却した後、25%アンモニア水30ml/メタノール150ml/イオン交換水150ml混合溶液をそそぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿を濾過し、回収した。この沈殿を乾燥した後、トルエンに溶解した。この溶液を濾過し、不溶物を除去した後、このトルエン溶液を1規定塩酸で洗浄した後、静置、分液し、トルエン溶液を回収し、このトルエン溶液を、約3%アンモニア水で洗浄した後、静置、分液し、トルエン溶液を回収し、次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄し、静置、分液し、トルエン溶液を回収した。このトルエン溶液に、攪拌下、メタノールを加えることにより、再沈精製した。
次に、生成した沈殿を回収し、この沈殿を減圧乾燥して、共重合体5を2.0g得た。得られた共重合体5のポリスチレン換算重量平均分子量は、7.1x10であり、数平均分子量は、1.8x10であった。
反応の仕込み比より、共重合体5中のフルオレンとフルオレノンのモル比は99:1であった。
【0138】
比較例1
<蛍光波長の測定>
共重合体5を前記の手法で蛍光波長を測定したところ532nmであった。
【0139】
合成例4
<共重合体6の合成>
2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン3.3gと2,7−ジブロモ−9,9−ジイソブチルフルオレン0.7gと2,7−ジブロモフルオレノン0.0025gと2,2’−ビピリジル2.75gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)200gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)を5.0gを加え、室温で10分間攪拌した後、60℃で3時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気中で行った。
反応後、この反応溶液を冷却した後、25%アンモニア水30ml/メタノール150ml/イオン交換水150ml混合溶液をそそぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿を濾過し、回収した。この沈殿を乾燥した後、トルエンに溶解した。この溶液を濾過し、不溶物を除去した後、このトルエン溶液を1規定塩酸で洗浄した後、静置、分液し、トルエン溶液を回収し、このトルエン溶液を、約3%アンモニア水で洗浄した後、静置、分液し、トルエン溶液を回収し、次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄し、静置、分液し、トルエン溶液を回収した。このトルエン溶液に、攪拌下、メタノールを加えることにより、再沈精製した。
次に、生成した沈殿を回収し、この沈殿を減圧乾燥して、共重合体6を2.0g得た。得られた共重合体6のポリスチレン換算重量平均分子量は、7.3x10であり、数平均分子量は、1.8x10であった。
反応の仕込み比より、共重合体6中のフルオレンとフルオレノンのモル比は999:1であった。
【0140】
比較例2
<蛍光波長の測定>
共重合体6を前記の手法で蛍光波長を測定したところ522nmであった。
【0141】
フルオレノンを含有する共重合体の蛍光波長の測定結果を表1にまとめる。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を1種類以上と、下記式(2)で示される構造及び下記式(3)で示される構造及びアリーレン基からなる群から選ばれる1種類以上の繰り返し単位を有し、下記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位が該共重合体の全繰り返し単位の合計に対して0.01〜30モル%であり、固体状態で最も強い蛍光の波長が490〜550nmであるような緑色の蛍光を発する共重合体であって、かつポリスチレン換算の重量平均分子量が10〜10である上記共重合体:
【化1】


(式中、Xは−O−、−S−、−N(R)−、−Si(R)−、又は−Se−を表す;Y及びYは−O−、−S−、−C(R’)−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−Si(R’)−、−N(R’)−、−B(R’)−、−P(R’)−又はP(=O)(R’)−を表す;ただし、YとYは同一になることはない;YとYは二重結合で結ばれていてもよい;この場合、例示中の置換基R’の数が1つ少なくなる;Rは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、シアノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基を表す;R’は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、シアノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基を表す;式(1)〜(3)において一つの繰り返し単位構造中に複数のR又はR’が存在する場合は、これらは同一であっても相異なってもよい;m及びnは各々0〜3の整数を表す;A環、B環、C環、及びD環はそれぞれ独立に芳香環を表す。)。
【請求項2】
前記式(2)で示される構造を含む繰り返し単位が、下記式(2−1)で示される請求項1記載の共重合体。

【化2】


(式中、Xは−O−、−S−、−N(R)−、−Si(R)−、又は−Se−を表す;Rは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、シアノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、又はアリールアルキル基を表す;式(2−1)において一つの繰り返し単位構造中に複数のRが存在する場合、これらは同一であっても相異なってもよい;a及びbは各々0〜3の整数を表し、a+bは1以上である。)。
【請求項3】
前記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を除き、前記式(2)で示される構造及び前記式(3)で示される構造及びアリーレン基からなる群から選ばれる1種類以上の繰り返し単位のみからなる重合体が、固体状態で、最も強い蛍光の波長が470nm以下であるような蛍光を発するという条件を満たすものである請求項1記載の共重合体。
【請求項4】
前記式(1)で示される構造からなる繰り返し単位を除き、前記式(2)で示される構造及び前記式(3)で示される構造及びアリーレン基からなる群から選ばれる1種類以上の繰り返し単位のみからなる重合体が、固体状態で、最も強い蛍光の波長が470nm以下であるような蛍光を発するという条件を満たすものである請求項2記載の共重合体。
【請求項5】
陽極及び陰極からなる電極間に、発光層を有し、該発光層が、請求項1〜4のいずれか一項記載の共重合体を含むことを特徴とする高分子発光素子。
【請求項6】
請求項5に記載の高分子発光素子を含むことを特徴とする面状光源。
【請求項7】
請求項5に記載の高分子発光素子を含むことを特徴とするセグメント表示装置。
【請求項8】
請求項5に記載の高分子発光素子を含むことを特徴とするドットマトリックス表示装置。
【請求項9】
請求項5に記載の高分子発光素子をバックライトとすることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか一項記載の共重合体を含むことを特徴とするインク組成物。

【公開番号】特開2006−77164(P2006−77164A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264060(P2004−264060)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】