説明

共鳴導波路回折格子のスペクトル多重化のための光読取りシステム及び方法

回折格子ベース導波路型センサ(100)の表面(104)上の生物学的物質(102)(例えば、細胞、薬物、化合物)の存在を検出するために用いることができる、光読取りシステム(120)が説明される。一実施形態において、読取りシステムは、回折格子ベース導波路型センサ内に光ビーム(126)を導くための光源(122)(例えば、レーザ、ダイオード)及び、回折格子ベース導波路型センサから反射光ビーム(128)を受け取り、回折格子ベース導波路型センサの表面上に生物学的物質があるか否かを示すあらかじめ定められた屈折率に対応する共鳴波長/共鳴角を検出するために反射光ビームを解析するための検出器(124)(例えば、分光計、CCD撮像装置)を備える。回折格子導波路型センサは、回折格子導波路型センサ内に導かれる光ビームの入射の平面と回折格子導波路型センサ内の回折格子の格子線に垂直な格子ベクトルの間の角度として定義されるスキュー角を調節することによって、あらかじめ定められた波長/角度において共鳴を有するように同調される。別の実施形態において、読取りシステムは回折格子ベース導波路型センサのアレイの多重化呼掛けを行うように構成される。


【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は2003年10月20日に出願された米国特許出願第10/689453号の優先権の恩典を主張する。この特許出願明細書の内容は本明細書に参照として含まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一実施形態においてマイクロプレート内に組み込むことができる、1つまたはそれより多くの回折格子ベース導波路型センサ(例えば共鳴導波路回折格子)を用いて生物学的物質を検出するための、光呼掛け/読取りシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
今日、共鳴導波路回折格子(RWG)を用いる生物学的物質(例えば、細胞、薬物、化合物)の検出に関わる検査は、学術及び商業分野において選択される技術に急速になりつつある。その様な検査においては、読取りシステムが光をRWGに結合させるために用いられ、RWGの表面上に生物学的物質が存在するか否かを判定するためにRGWから反射された光を解析するためにも用いられる。生物学的物質を検出するため、読取りシステムは反射光を解析して、回折格子ベース導波路型センサの表面上に生物学的物質があるか否かを示す一定の屈折率に対応する共鳴波長/共鳴角を見いだす。残念ながら、今日商業分野で用いられる読取りシステムには、読取りシステムがRGWと適切にインターフェースし得るようにユーザがRWG及び読取りシステムを同調させることが困難であるという大きな欠点がある。特に、共鳴角/共鳴波長が所望のスペクトル位置にあり、よって読取りシステムが共鳴波長/共鳴角を容易に検出できるように、ユーザがRWGを同調させることが困難である。この欠点は、RWGのアレイと多重化態様でインターフェースするために多重チャネル読取りシステムが用いられる場合に特に問題となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、従来技術の上述した欠点及びその他の欠点に対処するために、読取りシステム及びRWGの同調をより容易にする手段が要求されている。上記の要求及びその他の要求は、本発明の読取りシステム、RWG及び方法によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、相互に作用して生物学的物質(例えば、細胞、薬物、化合物)の検出を可能にする読取りシステム及び少なくとも1つの回折格子ベース導波路型センサを含む。一実施形態において、読取りシステムは、光ビームを回折格子ベース導波路型センサ内に導くための光源(例えば、レーザ、ダイオード)及び、回折格子ベース導波路型センサから反射光ビームを受け取り、回折格子ベース導波路型センサの表面上に生物学的物質があるか否かを示すあらかじめ定められた屈折率に対応する共鳴波長/共鳴角を検出するために反射光ビームを解析するための検出器(例えば、分光計、CCD撮像装置)を備える。回折格子ベース導波路型センサは、回折格子ベース導波路型センサ内に導かれる光ビームの入射の平面と回折格子ベース導波路型センサ内の回折格子の格子線に垂直な格子ベクトルの間の角度として定義されるスキュー角を調節することによって、あらかじめ定められたスペクトル位置に共鳴波長/共鳴角を有するように同調される。別の実施形態において、読取りシステムは回折格子ベース導波路型センサのアレイの多重化呼掛けを行うことができる。
【0006】
添付図面とともになされる以下の詳細な説明を参照することによって本発明のさらに完璧な理解を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1を参照すれば、本発明にしたがうRWG100及び読取りシステム120の基本コンポーネントの概念図が示されている。基本的に、RWG100は、RWG100の表面104上の生物学的物質102(例えば、細胞、分子、タンパク質、薬物、化合物、核酸、ペプチド、炭水化物)の無ラベル検出を可能にするために用いられる、読取りシステム120から放射され、次いで反射されて読取りシステム120に戻る光の屈折及び結合特性を利用する、回折格子ベース導波路型センサである。読取りシステム120は、1つまたはそれより多くの光源122(例えば、レーザ、ダイオード)及び1つまたはそれより多くの検出器124(例えば、分光計、CCDカメラまたはその他の撮像装置)を備える。
【0008】
RWG100は、併せて導波路110を形成する回折格子108の表面上に被着された薄い(〜100nm)材料層106を有する。導波路膜106は、Ta,TiO,TiO-SiO,HfO,ZrO,Al,Si,HfON,SiON,酸化スカンジウム及びこれらの混合物のような金属酸化物ベースの材料でつくられることが好ましい。回折格子108は、型押し、ホログラフィまたはその他の方法で基板112内に形成され、次いで、より高い屈折率を有する薄い導波路膜106が回折格子108の上面に被覆される。基板112はガラスまたはシクロオレフィンのようなプラスチックでつくられることが好ましい。
【0009】
液塊内に入れることができる生物学的物質102は表面104の上に被着され、この生物学的物質102の存在こそがRWG100の表面104における屈折率を変える。すなわち、生物学的物質102を検出するために、RWG100が光源122から放射される光ビーム126で探査され、次いでRWG100の表面104における生物学的物質102の付加によって生じる屈折率の何らかの変化(〜1ppm)があるか否かを判定するために、検出器124で受け取られる反射光ビーム128が解析される。一実施形態において、表面104は、特定の相補性生物学的物質102の表面付着だけを可能にする生物学的化合物(図示せず)で被覆して、感度が高くかつ特異性も高いRWG100の作成を可能にすることができる。このようにすれば、広汎な生物学的物質102を検出するために読取りシステム120及びRWG100を用いることができ、RWG100がアレイ配列されていれば、スループットの高い薬物または化学物質の選別検査を可能にするために読取りシステム120及びRWG100を用いることができる。RWGの基礎に関するさらに詳細な議論は米国特許第4815843号の明細書に与えられている。この特許明細書の内容は本明細書に参照として含まれる。
【0010】
RWG100の感度は回折格子108及び導波路110の構造を解析することによって最も良く理解することができる。基本導波路モードに対して、回折格子108上に照射される光ビーム126は、光の波動ベクトルが式1:
【数1】

【0011】
に示される共鳴条件を満たすときに限り、導波路110に結合できる。ここで、k'は入射波動ベクトルのx成分、kは導波モード波動ベクトル、κは格子ベクトルである。格子ベクトルκは回折格子108の格子線に垂直な方向及び2π/Λで与えられる大きさを持つベクトルと定義され、Λは格子周期(ピッチ)である(図5を見よ)。この式は式2:
【数2】

【0012】
に示されるように、波長λ及び入射角θに関して書くこともできる。ここで、θは入射角、n入射は入射媒質の屈折率、λは光126の波長、n実効は導波路110の実効屈折率である。導波路110の実効屈折率は、光導波路モードフィールドが導波路110を通って伝搬しながら「見る」屈折率の加重平均である。導波モードは導波路110自体よりかなり広い空間的広がりを有することができ、この広がりは導波路110の屈折率差及び特定の幾何学的形状寸法に依存する。特に、基本モードは、生物学的物質102がRWG100の表面104に近づくかまたは接触したときに生じる何らかの表面変化を「見る」、カバー媒質(検知領域)に延び込むエバネッセント波/テールを有する。上に示される式2は、sinθがy軸であり、λがx軸であって、Λn実効がx切片、−1/Λが勾配である、直線の方程式である式3:
【数3】

【0013】
で示される、より便利な形に書き換えることができる。式3を得るため、n入射をこの式から消して、この式及び以降の式を簡略化できるように、n入射を1とおいた。この近似は、空気(n〜1.0003)が最も普通の入射媒質であることから、用いられる。この近似が本解析の結果の一般性を減じないことは当然である。この関係が図2に示されるグラフに描かれている。生物学的物質102が表面104に結合すると、導波路110の実効屈折率が変わり、RWG100の共鳴波長または共鳴角のシフトがおこる。このシフトは図2に示される直線におけるx切片のシフトとして見ることができる。RWGに関わる共鳴条件の基礎に関するさらに詳細な議論は、(1)ケイ・ティーフェンタラー(K. Tiefenthaler)等,「集積光スイッチ及びガスセンサ(Integrated Optical Switches and Gas Sensors)」,Opt. Lett.,1984年4月,第10巻,第4号,pp.137-139,(2)ケイ・ティーフェンタラー等,「集積光化学センサとしての回折格子結合器の感度(Sensitivity of Grating Couplers as Integrated-Optical Chemical Sensors)」,J. Opt. Soc. Am. B,1989年2月,第6巻,第2号,pp.209-220,及び(3)ダブリュー・ルコス(W. Lukosz),「集積光化学センサ及び直接生化学センサ(Integrated Optical Chemical and Direct Biochemical Sensors)」,Sensors and Actuators B,1995年,第29巻,pp.37-50,に与えられている。これらの3つの論文の内容は本明細書に参照として含まれる。
【0014】
そのようなRWG100の共鳴条件(例えば、共鳴波長または共鳴角)はRWG100からの反射光128を観察することによって屈折率変化を判定するために呼び掛けることができる(図1を見よ)。屈折率変化をモニタするための2つの異なる動作モード−スペクトル呼掛け及び角度呼掛け−がある。スペクトル呼掛けでは、公称上コリメートされた、広帯域光ビーム126がRWG100に送り込まれ、反射光128が(例えば)分光計124に集められて、モニタされる。共鳴波長(ピーク)のスペクトル位置を観察することによって、結合すなわちRWG100の表面104またはその近くにおける屈折率変化をモニタすることができる。スペクトル呼掛けの概念が図3に示されるグラフに図式的に表されている。逆に、角度呼掛けでは、公称上単一波長の光126がある範囲の照射角を生じさせるために集束されて、RWG100内に導かれる。反射光128がCCDカメラまたはその他の撮像検出器124でモニタされる。RWG100による共鳴反射角の位置をモニタすることによって、結合すなわちRWG100の表面104またはその近くにおける屈折率変化をモニタすることができる。角度呼掛けの概念が図4に示されるグラフに図式的に表されている。
【0015】
本発明にしたがえば、光ビーム126の入射の平面が格子ベクトルκに対してスキューされた場合、式3は式4:
【数4】

【0016】
に書き換えることができ、ここでδは図5に示されるスキュー角である。スキュー角δはRWG100内に導かれる光ビーム126の入射の平面とRWG100内の回折格子108の格子線に垂直な格子ベクトルκの間の角度と定義される。式4には、正の角度に対する解及び負の角度に対する解の、2つの解があることに注意すべきである。これらの解は、物理的には±x方向に伝搬する導波路モードに対応する(図1を見よ)。±θを用いてこれらの解のそれぞれについての式を書けば、式5:
【数5】

【0017】
及び
【数6】

【0018】
が得られる。RWG100がスペクトル呼掛けを受ける場合は、式6:
【数7】

【0019】
で示されるように、式5を共鳴波長λ及びλに関して書き換えることが役に立つ。垂直入射(θ=0)で照射される光126に対しては双対共鳴λ及びλが同じ波長で生じ、スキュー角δを調節しても全く効果はないであろう。しかし、θ≠0に対しては2つの共鳴λ及びλが存在し、その間隔Δλは式7:
【数8】

【0020】
で表される。スキュー角δを回転させると、双対共鳴λ及びλは互いに近づくか、または互いにさらに離れ、最大間隔Δλ最大は式8:
【数9】

【0021】
で表される。この状況が図6に示される。スキュー角δの調節により、個々の共鳴λ及びλのスペクトル位置を制御することが可能になる。同等のRWG100が同じ入射角θを有する光126で照射されたとしても、RWG100のそれぞれに異なる角度のスキュー角δで光126を当てることによって、共鳴信号λ及びλをスペクトル上で互いに離すことができる。スキュー角δの調節により、システム設計に少なくとも2つの利点が得られる。第1に、読取りシステム120に対してより好都合な位置に個々の共鳴λまたはλを同調させることが可能になる。これにより、パワーがより大きなスペクトル位置に、あるいは特定の読取りシステム120のダイナミックレンジを最大化できる位置に、共鳴λまたはλをおくことが可能になり得よう。第2に、複数のRWG100でのスキュー角δの使用及び制御により、それぞれのRWG100に対する共鳴信号λ及びλのスペクトル位置を調節し、よって複数の反射光ビーム128のスペクトル多重化を可能にする手段が得られる。複数の反射光ビーム128は自由空間で、または光ファイバによって、結合させることができ、分光計124またはその他の分散型装置124の1つのチャネルに送り込むことができる(図9及び10を見よ)。
【0022】
本発明にしたがえば、スキュー角δは入射光ビーム126と反射光ビーム128で定められる平面に対してRWG100の物理的回折格子108を回転させることによって制御することができる(図5を見よ)。光126の入射の平面が一定に保たれていれば、この回転は、それぞれのRWG100が精確に定められたスキュー角δをもって配向された回折格子108を有する、RWG100のアレイを作成することによって行うことができよう。そのような配置は、レンズ系、微小光学系または回折光学系によって形成されるような、一組の自由空間光ビーム126がRWG100を照射するために用いられる場合に適し得る。そのような構成の光学系を用いてスキュー角δを調節することは容易ではないであろうから、スキュー角δが定められた回折格子108を有するようにRWG100をあらかじめ作成することによって、共鳴信号λ及びλの位置の操作に対する最も効率的な手段を得ることができる。
【0023】
RWG100内に光126を放射し、RWG100からの反射光128を集めるために光ファイバが用いられるならば、同じ方向に配向された一様な一組の回折格子108をもつRWGを作成し、次いで、所望のスキュー角δを得るためにRWG100のそれぞれに対して照明光ファイバを回転させることが容易になり得る。例えば、図7に示されるように、デュアルファイバ分布屈折率(GRIN)レンズ700が用いられるならば、パッケージ/キャニスター704内の2本のファイバ702a及び702bを含む平面が入射の平面を定める。入射の平面の回転はGRINレンズを保持しているキャニスター104をRWG100の回折格子108に垂直な軸706の周りで回転させることによって容易に達成することができる。入射角θが1.94°の光126を放射するようなGRINレンズシステム700の回転の結果を示すグラフが図8A及び8Bに示される。双対共鳴λ及びλの間隔が、図8Aに示される例におけるδ≒36°のときのΔλ=29.4nmから、レンズ700が図8Bに示されるδ=80°に相当するスキュー角を有するように回転させられたときの6.6nmまで変化したことがわかる。2つの共鳴λ及びλの平均位置がλ=Λn実効で与えられ、どの入射角θ及びスキュー角δが選ばれようとも平均位置は同じままであることに注意すべきである。式6に見られるように、スキュー角δは共鳴λ及びλのいずれにも影響するから、双対共鳴現象が利用されるか否かにかかわらず共鳴λ及びλの位置を制御するためにスキュー角δが使用され得ることにも注意すべきである。
【0024】
複数のRGW100からの反射信号128をスペクトル多重化するためには集められた反射光ビーム128を結合することが必要であり、これは一実施例においてファイバ結合器を用いて達成することができる。例えば、図9A及び9Bに示されるように、マイクロプレート1004のフレーム1002内に形成されたウエル1000の底内にRGW100のアレイを組み込むことができる。一実施形態において、図7に示されるレンズ700と同様のデュアルファイバコリメータレンズ1006がそれぞれのウエル1000の下におかれる。また、光源122が、ファイバコリメータレンズ1006に接続されている一括された入力ファイバ1010にソース光126を分割する、(1つまたは複数の)ファイバスプリッタ1008に結合される(図9Bを見よ)。それぞれのコリメータファイバレンズ1006は、それぞれのコリメータファイバレンズ1006が呼び掛ける、RGW100内の回折格子108に対して特定かつ一意的なスキュー角δを有するように配向される(図7を見よ)。すなわち、RGW100のそれぞれの共鳴λ及び/またはλは光源122の光帯域内の特定のスペクトル領域にあらかじめ同調される。やはり、本例におけるRGW100は全て配向が同じ回折格子1008を有することができる。反射光ビーム128は、対応するファイバコリメータレンズ106の出力ファイバ1012内に導かれる。一括された出力ファイバ1012は次いで結合器1014によって互いに接続され、分光計124の1つのチャネルに送り込まれる。したがって、1つのチャネルで複数のRWG100からの反射信号128を同時に集めることができ、回折格子108が相異なる角度をなすRWG100を作成する必要、あるいは複数のRGW100を読み取るために光スイッチ、複数の光源または光走査(平行移動)が用いられる時分割多重化技術の必要を避けることができる。そのような多重化システムに対して1つのチャネルのスペクトルをどのようにして求めるかの説明が図10に示される。
【0025】
図10を参照すれば、本発明によって、RWG100及び読取りシステム120に対して必要なチャネル数及び必要なダイナミックレンジに適切な間隔で互いに隔てられた共鳴λ及び/またはλのスペクトルを生じさせるようにRWG100と読取りシステム120の間のスキュー角δを調節することが可能になることがわかる。RWG100の代表的なスペクトル感度は100nm/RIU(屈折率単位)である。これは、生物学的物質102の結合過程中に(非常に大きいと見なされる)0.01RIUの変化を感じたRGW100が共鳴λ及び/またはλのスペクトル位置に1nmのシフトを生じることを意味する。一実施形態において、20〜50nm(3dBパワー点)の帯域を有する高強度光ビーム126をつくるために超発光ダイオード122(光源122)を用いることができる。また、50nmのダイナミックレンジをサポートできる、一般的な分光計/CCDシステム124を用いることができる。すなわち、そのような大きなダイナミックレンジを有する読取りシステム120をもってすれば、検査過程中にスペクトルピークλ及び/またはλが互いに干渉する恐れなしに、スキュー角δを調整して、1つのチャネルに20〜50のスペクトルピークλ及び/またはλをつめ込むことができよう。したがって、図9A及び9Bを再び参照すれば、いかなる光学系の平行移動または光スイッチングも必要とせずに、全部で96のRWG100のアレイに同時に呼び掛けるためにスペクトル内にわずか12の共鳴ピークλ及び/またはλ並びに分光計124の8つのチャネルを用いることができよう。384(16×24)またはそれより多くのRWG100のアレイの呼掛けを可能にするためにより多くのチャネル及びより高い密度の多重化を用いることができ、あるいはRGW100のそのようなアレイに呼び掛けるためにWDM及びTDM手法を併用することができる。
【0026】
それぞれのRWG100からの双対共鳴λ及びλに呼び掛けるかあるいはそれぞれのRWG100からの1つの共鳴λまたはλだけに呼び掛けるように読取りシステム120を設計できることに注意すべきである。当然の帰結として、それぞれのRGW100からの双対共鳴λ及びλが用いられるならば、信号の全てを収容するためにはより広いスペクトル帯域が必要となるであろう。また、1つの共鳴λまたはλが用いられるならば、より狭いスペクトル帯域を用いることができよう。
【0027】
スキュー角δの調節は多重化を可能にするためのスペクトル制御のために用いられるだけでなく、RWG100の製造欠陥を補正するためにもスキュー角δの調節を用い得ることにも注意すべきである。例えば、特定のRWG100の格子ピッチまたは導波路厚が設計仕様から外れていれば、共鳴λ及びλはそれぞれの意図された位置からシフトするであろう。スキュー角δの調節により、共鳴λ及びλを所望のスペクトル位置に戻すために読取りシステム120を用いることが可能になる。この自由度は、そのような構造欠陥が多くのアレイにわたって反復された場合に読取りシステム120の一回の調節でRWG100の反復欠陥が補正されるので、特に有用であろう。
【0028】
図11を参照すれば、本発明にしたがう生物学的物質102を検出するために読取りシステム120及びRGW100を用いるための好ましい方法1100の基本工程をフローチャートが示している。RGW100及び読取りシステム120はRGW100の表面104上の細胞,分子、タンパク質、薬物、化合物、核酸、ペプチドまたは炭水化物のような生物学的物質102の存在を検出するために用いられるとして本明細書に説明されるが、RGW100及び読取りシステム120が広汎な検査を実施するために用いられ得ることは当然である。例えば、RGW100及び読取りシステム120は、細胞移動検定、薬物浸透性検定、薬物溶解度検査、ビールス検出検査及びタンパク質分泌検査を実施するために用いることができる。
【0029】
工程1102で開始され、光源124が(1つまたは複数の)RGW100内に(1本または複数本の)光ビーム126を導くために用いられる。工程1104において、検出器124が(1つまたは複数の)RGW100からの(1本または複数本の)反射光ビーム128を受け取る。一実施形態においては、反射光ビーム128を図9及び10に関して上述したように多重化することができる。次いで工程1106において、検出器124が、それぞれのRGW100の表面104上に生物学的物質102があるか否かを示すあらかじめ定められた屈折率に対応する共鳴波長または共鳴角を検出するために、受け取った反射光ビーム128のそれぞれを解析する。やはり、それぞれのRGW100は、RWG100に導き入れられる入射光ビームの平面とRWG100内の回折格子108の格子線に垂直な格子ベクトルκの間の角度として定義されるスキュー角δを調節することによって(図5を見よ)、あらかじめ定められたスペクトル共鳴条件を有するように同調される。
【0030】
以下は、本発明のRWG100及び読取りシステム120のいくつかの利点及び用法である:
・ソース光126の入射の平面がRWG100の格子ベクトルκとなす角度を調節することによってRWG100のスペクトル共鳴の位置が同調される読取りシステム120を作成することができる;
・複数の信号128を分光計またはその他のスペクトル分解計器124によって読み取られる1つのチャネルにスペクトル多重化するために本方法を用いることができる;
・RGW100のアレイ及び読取りシステムの多重化システムにより、センサ信号128を時分割多重化する必要が軽減または排除され、よってシステムのコストが低減され、複雑さが軽減される;
・スペクトル共鳴λ及び/またはλが最適ではない位置におかれる、RWG100の構造欠陥を補正するためにも、スキュー角δの調節を用いることができる。
【0031】
上記説明から、当業者であれば、共鳴回折格子導波路型センサから受け取られる光信号をスペクトル多重化するために本発明を用い得ることが容易に理解できる。光信号を多重化できる能力は、センサアレイを用いて実用的な高スループットシステムを作成することが可能になるから、重要である。光照明システムだけを調節することによって信号をスペクトル制御及び多重化し、よってセンサの精確な工業生産に対するいかなる要件も排除するために用いることができる手法が本明細書に説明されていることも理解されるべきである。また、WDM技術の使用によって、多くのセンサ信号に同時に呼び掛け、システムの最適パワーをより良く利用し、総アレイ読取り時間を短縮し、読取りシステム全体の機械的複雑性を軽減することが可能になる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態を添付図面に示し、上記の詳細な説明に記述したが、本発明が開示された実施形態に限定されず、添付される特許請求の範囲に述べられ、定められる本発明の精神を逸脱することのない、数多くの再構成、改変及び置換が可能であることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明にしたがう読取りシステム及びRWGの基本コンポーネントの概念図である
【図2】図1に示されるRWGの共鳴角と共鳴波長の間の関係を示すグラフである
【図3】図1に示されるRWGの共鳴波長を決定するためにスペクトル呼掛け手法が読取りシステムによってどのように用いられ得るかの説明を補助するために用いられるグラフである
【図4】図1に示されるRWGの共鳴角を決定するために角度呼掛け手法が読取りシステムによってどのように用いられ得るかの説明を補助するために用いられるグラフである
【図5】本発明にしたがい、読取りシステムから放射される入射光ビームをどのようにして図1に示されるRWGの回折格子の格子ベクトルκに対してスキューさせ得るかを示すグラフである
【図6】図1及び5に示されるRWGの共鳴波長λ及びλのスペクトル位置を示すグラフである
【図7】入射光ビームとRWGの格子ベクトルκの間のスキュー角δを制御するために回転させることができるデュアルファイバ分布屈折率(GRIN)レンズパッケージを有する、図1に示される読取りシステムの一実施形態を示す概念図である
【図8A】図1及び7に示される読取りシステム及びGRINレンズパッケージがRWGとスキュー角36°でインターフェースしているときに観測された双対共鳴波長λ及びλを示すグラフである
【図8B】図1及び7に示される読取りシステム及びGRINレンズパッケージがRWGとスキュー角80°でインターフェースしているときに観測された双対共鳴波長λ及びλを示すグラフである
【図9A】図1に示される読取りシステムの一実施形態とインターフェースするRWGをその底に備えるウエルを有するマイクロプレートの上面図を示す
【図9B】図1に示される読取りシステムの一実施形態とインターフェースするRWGをその底に備えるウエルを有するマイクロプレートの側断面図を示す
【図10】図9A及び9Bに示される多重化システムの分光計の1つのチャネルからの例示的な光スペクトルを示すグラフである
【図11】本発明にしたがう読取りシステム及びRWGを用いるための好ましい方法の基本工程を示すフローチャートである
【符号の説明】
【0034】
100 RWG
102 生物学的物質
104 RWG表面
106 導波路膜
108 回折格子
110 導波路
112 基板
120 読取りシステム
122 光源
124 検出器
126 入射光ビーム
128 反射光ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取りシステムにおいて、
回折格子ベース導波路型センサ内に光ビームを導くための光源、及び
前記回折格子ベース導波路型センサ内に導かれる前記光ビームの入射の平面と前記回折格子ベース導波路型センサ内の回折格子の格子線に垂直な格子ベクトルの間の角度として定義されるスキュー角を調節することによってあらかじめ定められたスペクトル位置に共鳴を有するように同調された前記回折格子導波路型センサからの反射光ビームを受け取るための検出器、
を備え、
前記検出器が、前記回折格子ベース導波路型センサの表面上に生物学的物質があるか否かを示すあらかじめ定められた屈折率に対応する共鳴条件を検出するために前記反射光ビームを解析するために用いられる、
ことを特徴とする読取りシステム。
【請求項2】
前記生物学的物質が、細胞、分子、タンパク質、薬物、化合物、核酸、ペプチドまたは炭水化物であることを特徴とする請求項1に記載の読取りシステム。
【請求項3】
前記検出器が、前記反射光ビームを解析し、前記回折格子ベース導波路型センサの表面上に前記生物学的物質があるか否かを示す共鳴角の検出を可能にするために、角度呼掛け手法を利用することを特徴とする請求項1に記載の読取りシステム。
【請求項4】
前記検出器が、前記反射光ビームを解析し、前記回折格子ベース導波路型センサの表面上に前記生物学的物質があるか否かを示す共鳴波長の検出を可能にするために、スペクトル呼掛け手法を利用することを特徴とする請求項1に記載の読取りシステム。
【請求項5】
複数の回折格子ベース導波路型センサをさらに備え、前記複数の回折格子ベース導波路型センサのそれぞれが複数の前記反射光ビームのスペクトル多重化を可能にするそれぞれのスキュー角を調節することによってあらかじめ定められたスペクトル位置に共鳴を有するように同調されることを特徴とする請求項1に記載の読取りシステム。
【請求項6】
前記スキュー角が前記光源から放射される前記光ビームの入射の前記平面の前記角度を維持しながら前記回折格子ベース導波路型センサを回転させることによって調節されることを特徴とする請求項1に記載の読取りシステム。
【請求項7】
前記スキュー角が前記回折格子ベース導波路型センサの位置を維持しながら前記光源から放射される前記光ビームの入射の前記平面の前記角度を変えることによって調節されることを特徴とする請求項1に記載の読取りシステム。
【請求項8】
前記スキュー角が前記回折格子ベース導波路型センサの製造欠陥を補正するために調節されることを特徴とする請求項1に記載の読取りシステム。
【請求項9】
1つまたはそれより多くの回折格子ベース導波路型センサに呼び掛ける方法において、前記方法が、
それぞれの前記回折格子ベース導波路型センサ内に光ビームを導く工程、
それぞれの前記回折格子ベース導波路型センサからの反射光ビームを受け取る工程、及び
前記それぞれの回折格子ベース導波路型センサの表面上に生物学的物質があるか否かを示すあらかじめ定められた屈折率に対応する共鳴条件を検出するために前記受け取った反射光ビームのそれぞれを解析する工程、
を含み、
それぞれの前記回折格子ベース導波路型センサが前記回折格子ベース導波路型センサ内に導かれる前記光ビームの入射の平面と前記回折格子ベース導波路型センサ内の回折格子の格子線に垂直な格子ベクトルとの間の角度として定義されるスキュー角を調節することによってあらかじめ定められたスペクトル位置に共鳴を有するように同調される、
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−509351(P2007−509351A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536769(P2006−536769)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/034790
【国際公開番号】WO2005/043139
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】