具体的には免疫刺激剤/アジュバントとしての、一般式(I):GlXmGn、または一般式(II):ClXmCnで表される核酸
本発明は、脂質で修飾されてもよい、一般式(I):GlXmGnまたは一般式(II):ClXmCnで表される核酸に関する。本発明の核酸は、先天性免疫応答を誘導する免疫刺激剤として作用する。また本発明は、薬学的に活性な担体/媒体と組み合わせられている(また場合によっては、補助物質、添加物および/または他のアジュバントとさらに組み合わせられている)本発明の免疫刺激剤をそれぞれ含有している薬学的組成物に関する(第1実施形態)。別の実施形態では、本発明の核酸は、少なくとも1つの薬学的活性成分、薬学的に許容可能な担体/媒体と組み合わせられている(また場合によっては、補助物質、添加物および/または他のアジュバントとさらに組み合わせられている)。したがって、本発明は、本発明の薬学的組成物に対応するワクチンを対象とする(第2実施形態)。また薬学的活性成分(例えば抗原)は、特異的な免疫応答を誘導するものである。さらに本発明は、感染症、自己免疫疾患、アレルギーまたは癌を治療するための本発明の核酸、または本発明の薬学的組成物の使用にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場合によっては脂質で修飾されており、好ましくはそれ自体が免疫刺激剤として使用されるか、または他の生物活性剤と組み合わせて使用される一般式(I):GlXmGn、または一般式(II):ClXmCnで表される核酸に関する。他の生物活性剤と組み合わせて使用される場合、本発明の免疫刺激剤は、組成物中でアジュバントとして作用するものであり、場合によっては、さらに別のアジュバントと組み合わされてもよいものである。したがって、本発明は、免疫刺激剤としての一般式(I)および/または一般式(II)で表される核酸をそれぞれ含んでいる、薬学的組成物またはワクチンにも関する。薬学的組成物がアジュバントとしての本発明の免疫刺激剤を含んでいる場合、該薬学的組成物は、追加の薬学的活性成分(抗原剤(antigenic agent)など)を少なくとも1つ含んでいる。本発明の薬学的組成物は、通常、薬学的に許容可能な担体を含んでいてもよいし、場合によっては、補助物質、添加物および/または追加のアジュバントをさらに含んでいてもよい。また本発明は、感染症、癌、アレルギー、および自己免疫疾患を治療するための、本発明の薬学的組成物またはワクチンの使用にも関する。また本発明は、癌、感染症、アレルギーおよび自己免疫疾患を治療するための薬学的組成物を調製するための、本発明の免疫刺激アジュバントの使用を含んでいる。
【背景技術】
【0002】
従来のワクチンや遺伝子ワクチンでは、治療または接種される生物にもたらされる免疫反応が小さく、それ故、免疫反応が不十分である場合が多いという問題が頻繁に起きている。このため、いわゆるアジュバントが、ワクチンまたは薬学的活性成分によく加えられる。アジュバントは、すなわち狙いを定めるようにして、免疫反応に影響を及ぼすことができるおよび/または免疫反応を増加させることができる、物質もしくは組成物であり、例えば抗原である。例えば、注射可能な医学的活性成分のなかには、該医学的活性成分の宿主細胞系への放出や、場合によっては宿主細胞へのその取り込みに影響を与えることができるアジュバントと組み合わせられることによって、その有効性が顕著に向上されるものがあることも知られている。このようにすれば、少しの用量を何度も一定の間隔で定期的に投与することに匹敵する効果を得ることができる。用語「アジュバント」は、本明細書では従来どおり、免疫原および/または他の薬学的活性成分にとっての、結合剤、担体または補助物質として機能する、化合物もしくは組成物のことをいう。
【0003】
多くの化合物および組成物が、当該技術分野ではアジュバントとして提案されており、例えば、(i)フロイントアジュバント、金属酸化物(水酸化アルミニウムなど)、ミョウバン、無機キレート剤またはの塩、様々なパラフィン様オイル、合成樹脂、アルギン酸塩、ムコイド、ポリサッカライド化合物、およびカゼイン塩、ならびに(ii)血液および/または血栓から単離された化合物(例えばフィブリン誘導体)などが挙げられる。しかしながら、そのようなアジュバントによって、ほとんどの場合、例えば投与部位における皮膚のかぶれや炎症といった望まれない副作用がもたらされる。さらに、有毒な副作用(具体的には組織のネクローシス)も認められる。最後に、これらの公知のアジュバントは、ほとんどの場合、B細胞だけが活性化されるので、細胞性免疫応答の刺激を十分に引き起こさない。
【0004】
例えば、ミョウバン、金属酸化物、塩のキレート剤は、無菌性膿瘍の発生と関係している。さらに、科学専門家の間では、そのような化合物が十分に排出されることが疑問視されており、むしろ、それらは、望まれない無機物質として体に残留するのではないかと推測されている。そのような化合物は、毒性が低いが、不溶性の残骸の一部として網内系の細胞(肝臓ならびに脾臓の堤防細胞およびシヌソイド細胞)によって、ファゴサイトーシスされることができる。さらに、そのような残骸は、体の様々なろ過機構(腎臓、肝臓または脾臓など)に対する損傷効果を有していると示されている。したがって、そのような残留物は、一般的に免疫系にとって、体内に常に存在する潜在性の危険の源であるといえる。
【0005】
また、先行技術においてアジュバントとして使用される合成油および石油派生物も、有害な効果を引き起こす。しかし、これらの化合物は、体内で迅速に代謝され、それらの芳香族炭化水素化合物に分解されるので、特に望ましくない。だが、上記芳香族炭化水素化合物は、最大規模の発癌作用を有している可能性、および/または他の方法(DNAへのインターカレーションなど)により回復不可能なDNAダメージを引き起こす可能性があることが知られている。さらに、そのような化合物は、無菌性膿瘍と関係しており、また体から完全に排出されることがめったにないことも、実証されている。
【0006】
また動物から単離された化合物(ゼラチンなど)も、免疫を刺激するためのアジュバントとして不適切であることが多いといえる。該化合物は、普通は対象とする宿主生物または宿主細胞に対する破壊作用を有していないが、それらは、通常、注射部位から宿主生物または宿主細胞内へ極めて迅速に移動する。このため、場合によってはアジュバントと一緒に任意に注射された活性成分の遅延放出などのような、アジュバントに一般的に望まれる特性がほとんど満足されない。上記の迅速な分配は、ある場合では、タンニンまたは他の(無機)物質によって妨害されるが、そのような追加の化合物の代謝およびそれらの体内の行方は完全に説明されていない。それ故この場合も、これらの化合物は、残骸に蓄積し、これによりろ過機構(腎臓、肝臓および/または脾臓の細胞など)が相当に妨害されると推測するのが妥当である。また、非経口投与されたときに膨潤するというゼラチンの特性により、インビボの条件では、不快な副作用が引き起こされ得る(具体的には、例えば、ゼラチンが投与部位において膨潤し、病気の感覚が引き起こされる)。
【0007】
血液および/または血栓から単離された化合物(フィブリン誘導体など)の場合では、免疫刺激効果が、一般的に実証されている。しかしながら、該化合物のほとんどは、アジュバントとして存在するとき、(要求される免疫特性と並行して起こる)免疫系に対する副作用を示すために、不適切であるといえる。例えば、上記化合物の多くは、アレルギー誘発物質として分類されており、ある状況下では、望まれる程度を遥かに上回る免疫系の過剰反応をもたらす。それ故、上記化合物は、上記理由のために、免疫を刺激するためのアジュバントとして不適切である。
【0008】
一方、非特異的な免疫応答(先天性免疫応答)を招く核酸を直接的に使用することによって、(非特異的な)免疫刺激効果をもたらすこともできる。細菌のCpG−DNA配列は、遺伝情報を供給するだけではなく、例えば、DNAは、非特異的な免疫応答を産生する中心的な役割を担っていることが知られている。例えば、細菌DNAは、マクロファージや樹上細胞といった免疫細胞に警告を与え、防御的なTh1で極性化されたT細胞性免疫応答を促進する、「危険」信号として作用することが知られている。免疫刺激作用は、非メチル化CGモチーフが存在するためにもたらされると考えられ、それ故、上記CpG−DNAは、それ自体、免疫刺激剤として提案されている(特許文献1参照)。CpG−DNAは、共刺激分子および炎症誘発性サイトカインの上方調節をもたらす、先天性免疫系のメンバーの活性化を直接引き起こす。またDNAのこの免疫刺激特性は、ホスホロチオエート修飾によって安定化されたDNAオリゴヌクレオチドによって、達成されることができる(特許文献2)。最後に、特許文献3には、先天性免疫系に対する刺激効果を相乗的に発揮する、CpGオリゴデオキシリボヌクレオチドと非核酸化合物との組み合わせを含んでいる、免疫刺激組成物が開示されている。
【0009】
しかしながら、非特異的免疫応答を引き起こすためのDNAの使用の有利性は、ある観点から見れば低くなり得る。DNAは、インビボにおいて比較的ゆっくりと分解されるため、免疫刺激DNA(外来性DNA)が使用されるとき、抗DNA抗体が形成されることがあり、このことは、マウスの動物モデルにおいて確かめられている(非特許文献1)。したがって、脾腫を招くことがマウスでは知られている、免疫系の過剰活性化が、生物に(外来性)DNAが残留することにより引き起こされ得る(非特許文献2)。また、(外来性)DNAは、宿主ゲノムと相互作用し、突然変異を誘発することができる(具体的には、宿主ゲノムに組み込まれることによって突然変異を誘発することができる)。例えば、導入された(外来性)DNAが未変化遺伝子へ挿入されることが起こり得る。このことは、内在性遺伝子の機能を妨害するか、または完全に失わせることができる突然変異が生じることを示している。そのような組み込みが起こった結果、一方では細胞にとって不可欠な酵素システムが破壊され得るということがあり、他方ではそのような変化が起こった細胞は、上記(外来性)DNAの組み込みによって、細胞成長の調節に重要な遺伝子が変化する場合、変性状態へ形質転換されるという危険性もある。それ故、これまで知られている方法では、免疫刺激剤として(外来性)DNAを使用するとき、癌化が起こり得るという危険性を排除することができない。
【0010】
したがって、先天性免疫系による非特異的免疫応答を引き起こすための化合物として、特定のRNA分子を使用することが、一般的により有益である。RNAオリゴヌクレオチドは、TLR−7/TLR−8受容体に結合することによって免疫刺激効果をもたらすことが知られている。免疫刺激剤としてのRNAは、通常は、DNAよりも実質的に短い半減期を有している。それにもかかわらず、当該技術分野において免疫刺激剤として知られる特定のRNA分子を使用することは、いくつかの制限を有している。例えば、これまで当該技術分野に開示されている、特定のRNA配列のインビボにおいて示される細胞透過性は、限定されている。このことは、免疫刺激のためには、RNAの量の増加が必要になる可能性があることを示しており、投与されるRNAの量が増加するために、費用が増加するが、先に一般的に記載されている主に望ましくない副作用(投与部位におけるかぶれおよび炎症など)がもたらされるという危険性を孕んでいる。また、多量の免疫刺激剤が投与されたときは、有毒な副作用を排除することができない。
【0011】
以上のことから、これまでに実証されている成功があるにもかかわらず、それ自体によって、患者の先天性免疫系の免疫応答を引き起こし得る改良された免疫刺激剤が、未だ必要とされており、そのような免疫刺激剤に相当な関心が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,663,153号明細書
【特許文献2】米国特許第6,239,116号明細書
【特許文献3】米国特許第6,406,705号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Gilkesonら, J. Clin. Invest. 1995, 95: 1398-1402
【非特許文献2】Montheithら, Anticancer Drug Res. 1997, 12(5): 421-432
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の第1の課題は、他の生物学的に活性な化合物と組み合わせられて投与された場合に、具体的には、免疫調節化合物と一緒に投与された場合に、好ましくは、免疫系を特異的に刺激する化合物(抗原など)と組み合わせられて投与された場合に、アジュバントとして作用する免疫刺激剤を提供することである。
【0015】
また本発明の第2の課題は、患者の先天性免疫系を活性化することによって、非特異的な免疫応答を引き起こす免疫刺激剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の両方の課題は、以下の一般式(I)および一般式(II)で表される核酸分子を提供することによって解決される。これらの本発明の核酸分子は、先天性免疫系を活性化し、これによって、非特異的免疫応答を誘発する。また、上記核酸分子は、後天性免疫系を特異的に活性化する第2化合物の免疫刺激活性を支援するアジュバントとして(例えばワクチンの成分として)作用する。
【0017】
本発明は一般式(I):GlXmGnで表される核酸を提供する。
(Gは、グアノシン、ウラシル、またはグアノシンもしくはウラシルの類似体であり;
Xは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジン、シトシン、または上記ヌクレオチドの類似体であり;
lは、1から40までの整数であり、
l=1のとき、Gはグアノシンまたはその類似体であり、
l>1のとき、上記ヌクレオチドの少なくとも50%はグアノシンまたはその類似体であり;
mは、整数であり、少なくとも3であり;
m=3のとき、Xはウラシルまたはその類似体であり、
m>3のとき、少なくとも3つの連続するウラシルまたはウラシルの類似体が存在しており;
nは1から40までの整数であり、
n=1のとき、Gはグアノシンまたはその類似体であり、
n>1のとき、上記ヌクレオチドの少なくとも50%はグアノシンまたはその類似体である)。
【0018】
また、本発明は一般式(II):ClXmCnで表される核酸を提供する。
(Cは、シトシン、ウラシル、またはシトシンもしくはウラシルの類似体であり;
Xは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジン、シトシン、または上記ヌクレオチドの類似体であり;
lは、1から40までの整数であり、
l=1のとき、Cはシトシンまたはその類似体であり、
l>1のとき、上記ヌクレオチドの少なくとも50%はシトシンまたはその類似体であり;
mは、整数であり、少なくとも3であり;
m=3のとき、Xはウラシルまたはその類似体であり、
m>3のとき、少なくとも3つの連続するウラシルまたはウラシルの類似体が存在しており;
nは1から40までの整数であり、
n=1のとき、Cはシトシンまたはその類似体であり、
n>1のとき、上記ヌクレオチドの少なくとも50%はシトシンまたはその類似体である)。
【0019】
本発明の一般式(I)または一般式(II)で表される核酸は、通常、比較的短い核酸分子である。したがって、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の長さは、通常、約5から100ヌクレオチドまで、5から90ヌクレオチドまで、または5から80ヌクレオチドまでであり、好ましくは約5から70ヌクレオチドまで、より好ましくは約8から60ヌクレオチドまで、さらに好ましくは約15から60ヌクレオチドまで、さらに好ましくは20から60ヌクレオチドまで、最も好ましくは30から60ヌクレオチドまでである(ただし、特定の実施形態については100ヌクレオチドよりも長くてもよく、例えば200ヌクレオチド以下である)。本発明の核酸の最大の長さは、例えば100ヌクレオチドであり、mは通常は98以下である。
【0020】
本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、RNAであってもよいし、またはDNA(例えばcDNA)であってもよい。また、該核酸は、一本鎖であってもよいし、または二本鎖であってもよい。二本鎖である場合は、ホモ二本鎖の形態であってもよいし、またはヘテロ二本鎖の形態であってもよい。また、上記核酸のどちらかは、直鎖状であってもよいし、環状であってもよい。上記核酸は、一本鎖RNAの形態であることが特に好ましい。本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、一本鎖RNAの形態であることが特に好ましい。
【0021】
本発明の一般式(I)で表される核酸におけるGは、グアノシンもしくはウラシルまたはそれらの類似体である。これに関して、グアノシンまたはウラシルのヌクレオチド類似体は、天然に存在するヌクレオチドの天然に存在しないバリアントとして定義される。したがって、グアノシンまたはウラシルの類似体は、(i)天然に存在するグアノシンまたはウラシルのヌクレオチドに追加されることや、または該ヌクレオチドから削除されることが好ましい、天然に存在しない官能基で、あるいは(ii)グアノシンまたはウラシルのヌクレオチドの天然に存在する官能基を置換する天然に存在しない官能基で、化学的に誘導体化されたヌクレオチドである。したがって、天然に存在するグアノシンまたはウラシルのヌクレオチドの各成分、すなわちオリゴヌクレオチドの骨格を形成する、塩基成分、糖(リボース)成分および/またリン酸(phosphate)成分は、修飾されてもよい。リン酸部分は、ホスホロアミダイト(phosphoramidate)、ホスホロチオエート、ペプチド ヌクレオチド、メチルホスホネートなどで置換されてもよい。
【0022】
したがって、グアノシンまたはウラシルの類似体には、特に限定されないが、アセチル化、メチル化、またはヒドロキシル化などによって化学的に変更されている任意の天然に存在する、または天然に存在しないグアノシンもしくはウラシルが含まれる。例えば、該類似体には、1−メチル−グアノシン、2−メチル−グアノシン、2,2−ジメチル−グアノシン、7−メチル−グアノシン、ジヒドロ−ウラシル、4−チオ−ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオ−ウラシル、5−(カルボキシ−ヒドロキシルメチル)−ウラシル、5−フルオロ−ウラシル、5−ブロモ−ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−ウラシル、5−メチル−2−チオ−ウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、5−メチルアミノメチル−ウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオ−ウラシル、5’−メトキシカルボニルメチル−ウラシル、5−メトキシ−ウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)が含まれる。上記類似体の調製は、例えば、米国特許第4,373,071号明細書、米国特許第4,401,796号明細書、米国特許第4,415,732号明細書、米国特許第4,458,066号明細書、米国特許第4,500,707号明細書、米国特許第4,668,777号明細書、米国特許第4,973,679号明細書、米国特許第5,047,524号明細書、米国特許第5,132,418号明細書、米国特許第5,153,319号明細書、米国特許第5,262,530号明細書、および米国特許第5,700,642号明細書から、当業者に公知である(上記文献の開示は、参照によって本明細書に完全に組み込まれる)。上記のような類似体の場合、本発明にとって特に好ましいことは、該類似体が、本発明の一般式(I)で表される核酸の免疫原性を増加させる、および/または導入された別の修飾を妨害しない類似体であることである。少なくとも1つの類似体は、フランキング配列Glおよび/またはGnに存在することができる。フランキング配列が少なくとも1つの類似体を含んでいる場合、場合によっては、フランキング配列Glおよび/またはGnのヌクレオチドの少なくとも10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%が、本明細書において定義されたような類似体の特性を示す。フランキング配列の全ヌクレオチドが、類似体であることが最も好ましい。この場合、該類似体は、最も好ましくは、同じ種類のヌクレオチドについて同一の類似体であってもよいし(例えば、全てのグアノシンヌクレオチドが、1−メチル−グアノシンとして提供されている)、または異なっていてもよい(例えば、少なくとも2つの異なるグアノシン類似体が、天然に存在するグアノシンヌクレオチドと置換されている)。lおよびnは、1から20であることが好ましく、1から10であることがより好ましく、2から8であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明の一般式(I)で表される核酸におけるヌクレオチドGの数は、lまたはnによって決定される。lおよびnは互いに独立して、それぞれ1から40までの整数である。ここで、lまたはn=1のとき、Gはグアノシンまたはその類似体であり、lまたはn>1のとき、少なくとも50%のヌクレオチドはグアノシンまたはその類似体である。例えば、特に限定されないが、lまたはn=4のとき、GlまたはGnは、例えば、GUGU、GGUU、UGUG、UUGG、GUUG、GGGU、GGUG、GUGG、UGGGまたはGGGGなどであってもよく、lまたはn=5のとき、GlまたはGnは、GGGUU、GGUGU、GUGGU、UGGGU、UGGUG、UGUGG、UUGGG、GUGUG、GGGGU、GGGUG、GGUGG、GUGGG、UGGGGまたはGGGGGなどであってもよい。本発明の一般式(I)で表される核酸のXmに隣接するヌクレオチドは、ウラシルでないことが好ましい。
【0024】
本発明の一般式(II)で表される核酸におけるCは、シトシンもしくはウラシル、またはそれらの類似体である。これに関して、シトシンまたはウラシルのヌクレオチド類似体は、天然に存在するシトシンまたはウラシルのヌクレオチドの、天然に存在しないバリアントとして定義される。したがって、シトシンまたはウラシルの類似体は、(i)天然に存在するシトシンまたはウラシルのヌクレオチドに追加されることや、または該ヌクレオチドから削除されることが好ましい、天然に存在しない官能基で、あるいは(ii)シトシンまたはウラシルのヌクレオチドの天然に存在する官能基を置換する天然に存在しない官能基で、化学的に誘導体化されたヌクレオチドである。したがって、天然に存在するシトシンまたはウラシルのヌクレオチドの各成分、すなわちオリゴヌクレオチドの骨格を形成する、塩基成分、糖(リボース)成分および/またリン酸成分は、修飾されてもよい。リン酸部分は、ホスホロアミダイト、ホスホロチオエート、ペプチド ヌクレオチド、メチルホスホネートなどで置換されてもよい。
【0025】
したがって、シトシンまたはウラシルの類似体には、特に限定されないが、アセチル化、メチル化、ヒドロキシル化などによって化学的に変更されている、任意の天然に存在するまたは天然に存在しないシトシンもしくはウラシルが含まれる。例えば、該類似体には、2−チオ−シトシン、3−メチル−シトシン、4−アセチル−シトシン、ジヒドロ−ウラシル、4−チオ−ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオ−ウラシル、5−(カルボキシ−ヒドロキシルメチル)−ウラシル、5−フルオロ−ウラシル、5−ブロモ−ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−ウラシル、5−メチル−2−チオ−ウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、5−メチルアミノメチル−ウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオ−ウラシル、5’−メトキシカルボニルメチル−ウラシル、5−メトキシ−ウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)が含まれる。上記類似体の調製は、例えば、米国特許第4,373,071号明細書、米国特許第4,401,796号明細書、米国特許第4,415,732号明細書、米国特許第4,458,066号明細書、米国特許第4,500,707号明細書、米国特許第4,668,777号明細書、米国特許第4,973,679号明細書、米国特許第5,047,524号明細書、米国特許第5,132,418号明細書、米国特許第5,153,319号明細書、米国特許第5,262,530号明細書、および米国特許第5,700,642号明細書から、当業者に公知である(上記文献の開示は、参照によって本明細書に完全に組み込まれる)。上記のような類似体の場合、本発明にとって特に好ましいことは、該類似体が、本発明の一般式(II)で表される核酸の免疫原性を増加させる、および/または導入された別の修飾を妨害しない類似体であることである。少なくとも1つの類似体は、フランキング配列Clおよび/またはCnにおいて存在することができる。フランキング配列が少なくとも1つの類似体を含んでいる場合、場合によっては、フランキング配列Clおよび/またはCnのヌクレオチドの少なくとも10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%が、本明細書において定義されているような類似体の特性を示す。フランキング配列の全ヌクレオチドが類似体であることが最も好ましい。この場合、該類似体は、最も好ましくは、同じ種類のヌクレオチドについて同一の類似体であってもよいし(例えば、フランキング配列の全てのシトシンヌクレオチドが、2−チオ−シトシンとして提供されている)、または異なっていてもよい(例えば、少なくとも2つの異なるシトシン類似体が、天然に存在するフランキング配列のシトシンヌクレオチドと置換されている)。lおよびnは、1から20であることが好ましく、1から10であることがより好ましく、2から8であることがさらに好ましい。
【0026】
同様に、本発明の一般式(II)で表される核酸のヌクレオチドCの数は、lまたはnによって決定される。lおよびnは互いに独立して、それぞれ1から40までの整数である。ここで、lまたはn=1のとき、Cはシトシンまたはその類似体であり、lまたはn>1のとき、少なくとも50%のヌクレオチドはシトシンまたはその類似体である。例えば、特に限定されないが、lまたはn=4のとき、ClまたはCnは、例えば、CUCU、CCUU、UCUC、UUCC、CUUC、CCCU、CCUC、CUCC、UCCC、またはCCCCなどであってもよく、lまたはn=5のとき、ClまたはCnは、例えばCCCUU、CCUCU、CUCCU、UCCCU、UCCUC、UCUCC、UUCCC、CUCUC、CCCCU、CCCUC、CCUCC、CUCCC、UCCCCまたはCCCCCなどであってもよい。本発明の一般式(II)で表される核酸のXmに隣接するヌクレオチドは、ウラシルでないことが好ましい。
【0027】
本出願における用語「同一性」は、配列が、参照配列に対して比較され、同一性の割合がそれらを比較することによって決定されることを意味する。例えば、2つの核酸配列の同一性の割合を決定するために、まず各配列を、各配列のサブ配列の比較ができるように互いに相関させて配置する(アライメント)。これのためには、例えば、ギャップを第1核酸配列の配列に導入して、ヌクレオチドを第2核酸配列の対応する位置と比較してもよい。第1核酸配列のある位置が、第2配列の位置に存在するヌクレオチドと同じヌクレオチドで占有されているとき、2つの配列は、その位置において同一である。2つの配列間の同一性の割合は、同一の位置の数を配列で割った関数である。例えば、特定の核酸を長さが既定されている参照配列と比較したときの、具体的な配列同一性を考えた場合、この同一性の割合は、参照核酸に対して相対的に表される。それ故、例えば、100ヌクレオチドの長さの参照配列と50%の配列同一性を有する核酸をまず考えた場合、該核酸は、参照核酸の50ヌクレオチドの長さの部分と完全に同一な、50ヌクレオチドの長さの核酸であってもよい。しかし、上記核酸は、その全長に対して、参照配列と50%の同一性を有する100ヌクレオチドの長さの核酸であってもよい(すなわちこの場合、その全長に対して参照配列と50%同一な核酸であってもよい)。また、上記核酸は、200ヌクレオチドの長さの核酸であって、該核酸の100ヌクレオチドの長さの部分において、100ヌクレオチドの長さの参照核酸と完全に同一である核酸であってもよい。他の核酸も必然的に、これらの基準を同様に満たす。
【0028】
数学的アルゴリズムを用いることによって、2つの配列の同一性の割合を決定することができる。2つの配列を比較するために使用することができる数学的アルゴリズムとしては、「Karlinら(1993), PNAS USA, 90:5873-5877」のアルゴリズムが好ましいが、これに限定されない。そのようなアルゴリズムは、NBLASTプログラムに組み込まれており、このプログラムを用いれば、本発明の配列と所望の同一性を有する配列を同定することができる。上記のようなギャップが挿入されたアライメントを得るために、「Altschulら (1997), Nucleic Acids Res, 25:3389-3402」に記載されているような、「Gapped BLAST」プログラムを使用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを使用する場合は、特定のプログラム(NBLASTなど)の初期パラメーターを使用することができる。また、「ジェネティックコンピューティンググループ(Genetic Computing Group)」から提供された、GAP(グローバルアライメントプログラム)の第9版を使って配列を並べることができる。このGAPでは、(ギャップの一番目のゼロに対する)ギャップオープンペナルティーが−12であり、(ギャップにおける追加の連続する各ゼロに対する)ギャップエクステンションペナルティが−4である、初期設定の(BLOSUM62)マトリックス(値−4〜+11)が使用される。アライメントの後、同一性の割合は、要求された配列内の核酸の割合として、一致した数を表すことによって計算される。また、2つの核酸配列の同一性の割合を決定するための記載された方法は、適切なプログラムを使用することにより、アミノ酸配列にも同様に適用することができる。
【0029】
また一般式(I)については、lまたはn>1のとき、ヌクレオチドの少なくとも60%、70%、80%、90%、または100%(でさえも)が、上記で定義されているようなグアノシンまたはその類似体であることが好ましい。(フランキング配列Glおよび/またはGnにおけるグアノシンの割合が、100%未満であるとき)フランキング配列Glおよび/またはGnにおける、100%までの残りのヌクレオチドは、上記で定義されているようなウラシルまたはその類似体である。また、lおよびnは互いに独立して、それぞれ2から30までの整数であることが好ましく、2から20までの整数であることがより好ましく、2から15までの整数であることがさらに好ましい。lまたはnの下限は、必要に応じて変更可能であり、少なくとも1であるが、少なくとも2であることが好ましく、少なくとも3、4、5、6、7、8、9または10であることがより好ましい。この定義は、一般式(II)にも同様に適応される。
【0030】
本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸におけるXは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジンもしくはシトシン、またはそれらの類似体である。これに関して、ヌクレオチド類似体は、天然に存在するヌクレオチドの天然に存在しないバリアントとして定義される。したがって、類似体は、(i)天然に存在するヌクレオチドに追加されることや、または該ヌクレオチドから削除されることが好ましい、天然に存在しない官能基で、あるいは(ii)ヌクレオチドの天然に存在する官能基を置換する天然に存在しない官能基で、化学的に誘導体化されたヌクレオチドである。したがって、天然に存在するヌクレオチドの各成分、すなわちオリゴヌクレオチドの骨格を形成する、塩基成分、糖(リボース)成分および/またリン酸成分は、修飾されてもよい。リン酸部分は、ホスホロアミダイト、ホスホロチオエート、ペプチド ヌクレオチド、メチルホスホネートなどで置換されてもよい。本発明の核酸が少なくとも1つの類似体を含んでいる場合、「X」の全ヌクレオチドのうち好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも70%、一層好ましくは少なくとも90%が、本明細書において定義されたような特性を示す。「Xm」によって形成されるコア配列内の特定の核酸種を置換する類似体は、同一であってもよい。例えば、コア配列に存在する全シトシンヌクレオチドが、2−チオ−シトシンによって形成されてもよい。あるいは、「Xm」によって形成されるコア配列内の特定の核酸種を置換する類似体は、特定のヌクレオチドについて異なっていてもよい。例えば、少なくとも2つの異なるシトシン類似体が、コア配列内に含まれていてもよい。
【0031】
グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジン、シトシンの類似体は、特に限定されないが、アセチル化、メチル化、ヒドロキシル化などによって化学的に変更されている、任意の天然に存在するかまたは天然に存在しないグアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジンもしくはシトシンを含んでいる。該類似体は、1−メチル−アデノシン、2−メチル−アデノシン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニル−アデノシン、N6−メチル−アデノシン、N6−イソペンテニル−アデノシン、2−チオ−シトシン、3−メチル−シトシン、4−アセチル−シトシン、2,6−ジアミノプリン、1−メチル−グアノシン、2−メチル−グアノシン、2,2−ジメチル−グアノシン、7−メチル−グアノシン、イノシン、1−メチル−イノシン、ジヒドロ−ウラシル、4−チオ−ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオ−ウラシル、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)−ウラシル、5−フルオロ−ウラシル、5−ブロモ−ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−ウラシル、5−メチル−2−チオ−ウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、5−メチルアミノメチル−ウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオ−ウラシル、5’−メトキシカルボニルメチル−ウラシル、5−メトキシ−ウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、クエオシン(queosine)、β−D−マンノシル−クエオシン、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、およびイノシンが含まれる。上記類似体の調製は、例えば、米国特許第4,373,071号明細書、米国特許第4,401,796号明細書、米国特許第4,415,732号明細書、米国特許第4,458,066号明細書、米国特許第4,500,707号明細書、米国特許第4,668,777号明細書、米国特許第4,973,679号明細書、米国特許第5,047,524号明細書、米国特許第5,132,418号明細書、米国特許第5,153,319号明細書、米国特許第5,262,530号明細書、および米国特許第5,700,642号明細書から、当業者に公知である。上記のような類似体の場合、本発明とっては、該類似体が、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の免疫原性を増加させる、および/または導入された別の修飾を妨害しないものであることが特に好ましい。
【0032】
本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸におけるXの数は、mによって決定される。mは整数であり、一般的には少なくとも3、4、5、6、7、8、9または10である。m=3のとき、Xはウラシルまたはその類似体であり、m>3のとき、少なくとも3つの直接連続するウラシルまたはその類似体が存在する。本願においては、上記少なくとも3つの直接連続するウラシルの配列を「単調ウラシル配列」と称する。単調ウラシル配列は、一般的に、少なくとも3、4、5、6、7、8、9または10、あるいは10−15、15−20、20−25、25−30、30−50または50−90の、ウラシルもしくは場合によっては上記で定義されたようなウラシル類似体の長さを有している。そのような単調ウラシル配列は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に少なくとも1回存在している。それ故例えば、少なくとも3つのウラシルまたはその類似体を有する単調ウラシル配列が、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上(好ましくは2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上)存在することが可能である。また、上記単調ウラシル配列は、少なくとも1つのグアノシン、アデノシン、チミジン、シトシンまたはそれらの類似体によって中断されていてもよい。例えば、m=3のとき、XmはUUUを示す。またm=4のとき、Xmは、例えば特に限定されないが、UUUA、UUUG、UUUC、UUUU、AUUU、GUUUまたはCUUUなどであってもよい。n=10のとき、Xmは、例えば特に限定されないが、UUUAAUUUUC、UUUUGUUUUA、UUUGUUUGUU、UUGUUUUGUU、UUUUUUUUUUなどであってもよい。本発明の一般式(I)で表される核酸のGlまたはGnに隣接する核酸は、ウラシルまたはその類似体を含んでいることが好ましい。同様に、本発明の一般式(II)で表される核酸のClまたはCnに隣接する核酸は、ウラシルまたはその類似体を含んでいることが好ましい。
【0033】
m>3のとき、一般的には、ヌクレオチドの少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%または100%(でさえも)が、上記に定義されたようなウラシルまたはその類似体である。(配列Xmでのウラシルの割合が、100%未満であるとき)配列Xmにおける、100%までの残りのヌクレオチドは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジンまたはシトシン、あるいはそれらの上記で定義されているような類似体である。またmは整数であり、少なくとも4、5、6、7、8、9または10あるいは10−15、15−20、20−25、25−30、30−50または50−90である。
【0034】
本発明の一般式(I)で表される核酸は、以下の配列番号1−80に示される配列の少なくとも1つを含んでいることが特に好ましい:
GGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号1);
GGGGGUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号2);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号3);
GUGUGUGUGUGUUUUUUUUUUUUUUUUGUGUGUGUGUGU(配列番号4);
GGUUGGUUGGUUUUUUUUUUUUUUUUUGGUUGGUUGGUU(配列番号5);
GGGGGGGGGUUUGGGGGGGG(配列番号6);
GGGGGGGGUUUUGGGGGGGG(配列番号7);
GGGGGGGUUUUUUGGGGGGG(配列番号8);
GGGGGGGUUUUUUUGGGGGG(配列番号9);
GGGGGGUUUUUUUUGGGGGG(配列番号10);
GGGGGGUUUUUUUUUGGGGG(配列番号11);
GGGGGGUUUUUUUUUUGGGG(配列番号12);
GGGGGUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号13);
GGGGGUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号14);
GGGGUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号15);
GGGGUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号16);
GGUUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号17);
GUUUUUUUUUUUUUUUUUUG(配列番号18);
GGGGGGGGGGUUUGGGGGGGGG(配列番号19);
GGGGGGGGGUUUUGGGGGGGGG(配列番号20);
GGGGGGGGUUUUUUGGGGGGGG(配列番号21);
GGGGGGGGUUUUUUUGGGGGGG(配列番号22);
GGGGGGGUUUUUUUUGGGGGGG(配列番号23);
GGGGGGGUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号24);
GGGGGGGUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号25);
GGGGGGUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号26);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号27);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号28);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号29);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号30);
GGUUUUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号31);
GGGGGGGGGGGUUUGGGGGGGGGG(配列番号32);
GGGGGGGGGGUUUUGGGGGGGGGG(配列番号33);
GGGGGGGGGUUUUUUGGGGGGGGG(配列番号34);
GGGGGGGGGUUUUUUUGGGGGGGG(配列番号35);
GGGGGGGGUUUUUUUUGGGGGGGG(配列番号36);
GGGGGGGGUUUUUUUUUGGGGGGG(配列番号37);
GGGGGGGGUUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号38);
GGGGGGGUUUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号39);
GGGGGGGUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号40);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号41);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号42);
GGGGUUUUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号43);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号44);
GUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUG(配列番号45);
GGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号46);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号47);
GGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号48);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号49);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号50);
GGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号51);
GGGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGGG(配列番号52);
GGGGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGGGG(配列番号53);
GGUUUGG(配列番号54);
GGUUUUGG(配列番号55);
GGUUUUUGG(配列番号56);
GGUUUUUUGG(配列番号57);
GGUUUUUUUGG(配列番号58);
GGUUUUUUUUGG(配列番号59);
GGUUUUUUUUUGG(配列番号60);
GGUUUUUUUUUUGG(配列番号61);
GGUUUUUUUUUUUGG(配列番号62);
GGUUUUUUUUUUUUGG(配列番号63);
GGUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号64);
GGUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号65);
GGUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号66);
GGGUUUGGG(配列番号67);
GGGUUUUGGG(配列番号68);
GGGUUUUUGGG(配列番号69);
GGGUUUUUUGGG(配列番号70);
GGGUUUUUUUGGG(配列番号71);
GGGUUUUUUUUGGG(配列番号72);
GGGUUUUUUUUUGGG(配列番号73);
GGGUUUUUUUUUUGGG(配列番号74);
GGGUUUUUUUUUUUGGG(配列番号75);
GGGUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号76);
GGGUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号77);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号78);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号79);
GGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGG(配列番号80)。
【0035】
本発明の一般式(II)で表される核酸は、以下の配列番号81−83に示される配列の少なくとも1つを含んでいることが特に好ましい:
CCCUUUUUUUUUUUUUUUCCCUUUUUUUUUUUUUUUCCCUUUUUUUUUUUUUUUCCC(配列番号81);
CCCUUUCCCUUUCCCUUUCCCUUUCCCUUUCCCUUUCCCUUUCCCUUUCCC(配列番号82);
CCCUUUUUUUUUUUUUUUCCCCCCUUUUUUUUUUUUUUUCCC(配列番号83)。
【0036】
本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸配列は、ウイルスまたは細菌起源の、天然にもしくは合成によって調製された配列ではないことが好ましい。
【0037】
本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、通常、「安定化オリゴヌクレオチド」として提供される。この「安定化オリゴヌクレオチド」は、(例えばエキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼによる)インビボでの分解に対して耐性がある、オリゴリボヌクレオチドまたはオリゴデオキシリボヌクレオチドのことである。そのような安定化は、例えば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の修飾されたリン酸骨格によってもたらされる。これに関して好ましく使用されるヌクレオチドは、ホスホロチオエート修飾されたリン酸骨格を含んでいる。ホスホロチオエート修飾されたリン酸骨格では、該リン酸骨格に含まれているリン酸の酸素の少なくとも1つが、硫黄原子で置換されていることが好ましい。他の安定化オリゴヌクレオチドには、例えば、非イオン性類似体が含まれる。該非イオン性類似体としては、例えば、帯電したホスホネートの酸素が、アルキル基またはアリール基で置換されているアルキルホスホネートおよびアリールホスホネート、あるいはホスホジエステル、および帯電した酸素残基がアルキル化形態で存在しているアルキルホスホトリエステルなどが挙げられる。
【0038】
本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸も同様に、安定化されることができる。上述したように、任意の核酸(DNAまたはRNAなど)が、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に、原理上使用されることができる。しかしながら安全面を考えると、そのような核酸にはRNAが使用されることが好ましい。詳細には、RNAは、トランスフェクトされた細胞のゲノムに安定に組み込まれるという危険性を孕んでいない。さらにRNAは、インビボにおいて実質的により容易に分解する。また抗RNA抗体はこれまで検出されていない。これは、DNAの半減期と比べて、RNAのインビボでの半減期が比較的短いためであると考えられる。しかし、DNAと比べて、RNAは、主に、RNase(リボヌクレアーゼ)と呼ばれるRNA分解酵素のために、溶液中の安定性に著しく乏しい。リボヌクレアーゼが極少量混入するだけでも、溶液中のRNAは完全に分解される。そのようなRNaseの混入は、一般的には、特別な処置(具体的には、ジエチルピロカーボネート(DEPC)による処置)によってのみ除去されることができる。したがって、細胞の細胞質におけるmRNAの天然の分解は、非常に精巧に調節されている。このことに関して、先行技術では多くの機構が知られている。これによれば、インビボでは末端構造が、通常、mRNAにとって極めて重要である。天然に存在するmRNAの5’末端には、「キャップ構造」(修飾されたグアノシンヌクレオチド)と呼ばれる構造が大抵存在し、3’末端には、ポリAテールと呼ばれる、200アデノシンヌクレオチド以下の配列が存在する。
【0039】
このため、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を、特にRNAとして提供する場合は、いわゆる「5’キャップ」構造を加えることによって、該核酸を、RNaseよる分解に対して安定化することができる。これに関して、「5’キャップ」構造として特に好ましいものは、m7G(5’)ppp(5’(A,G(5’)ppp(5’)A、またはG(5’)ppp(5’)Gである。しかし、そのような修飾は、次の(i)または(ii)の場合にのみ導入される。すなわち(i)上記修飾が、(修飾されていないまたは化学的に修飾された)本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の免疫特性を妨害しない場合、または(ii)脂質修飾などの修飾が、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の5’末端にすでに導入されていない場合である。
【0040】
また、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を、特にRNAとして提供する場合は、該核酸の3’末端を、少なくとも50のアデノシンリボヌクレオチド、好ましくは少なくとも70のアデノシンリボヌクレオチド、より好ましくは少なくとも100のアデノシンリボヌクレオチド、特に好ましくは少なくとも200のアデノシンリボヌクレオチドの配列(いわゆる「ポリAテール」)によって修飾することができる。この場合も同様に、そのような修飾は、次の(i)または(ii)の場合にのみ導入される。すなわち、(i)上記修飾が、(修飾されていないまたは化学的に修飾された)本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の免疫特性を妨害しない場合、または(ii)脂質修飾などの修飾が、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端にすでに導入されていない場合である。上述した修飾の両方、つまり「5’キャップ」構造の挿入、または3’末端における「ポリAテール」の挿入によって、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の、インビボにおける成熟前の分解が阻害される。これにより、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、インビボにおいて安定化される。
【0041】
特定の実施形態によれば、本発明の一般式(I):GlXmGn、または一般式(II):ClXmCnで表される核酸は、脂質修飾を含んでいてもよい。本発明のそのような脂質修飾された核酸は、上記で定義されているような本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、該本発明の核酸に共有連結されている少なくとも1つのリンカー、およびそれぞれのリンカーに共有連結されている少なくとも1つの脂質を、典型的に含んでいる。第2の態様によれば、脂質修飾された本発明の核酸は、上記で定義されたような(少なくとも1つの)本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、および該本発明の核酸に(リンカーを介することなく)共有連結されている少なくとも1つの(二官能性)脂質を含んでいる。第3の態様によれば、脂質修飾された本発明の核酸は、上記で定義されたような本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、該本発明の核酸に共有連結されている少なくとも1つのリンカー、それぞれのリンカーに共有連結されている少なくとも1つの脂質、および上記本発明の核酸に(リンカーを介することなく)共有連結されている少なくとも1つの(二官能性)脂質を含んでいる。
【0042】
脂質修飾された本発明の核酸に含まれる脂質は、典型的には、それ自体生物学的に活性であることが好ましい脂質または親油性残基である。そのような脂質は、例えば以下のような天然物質または天然化合物を含んでいることが好ましい;ビタミン(例えばα−トコフェロール(ビタミンE)(RRR−α−トコフェロール(かつてのD−α−トコフェロール)、L−α−トコフェロール、ラセミ化合物であるD,L−α−トコフェロール、ビタミンEのコハク酸塩(VES)など)、またはビタミンAおよびその誘導体(例えばレチノイン酸、レチノール)、ビタミンDおよびその誘導体(例えばビタミンDおよびそのエルゴステロール前躯体)、ビタミンEおよびその誘導体、ビタミンKおよびその誘導体(例えばビタミンKおよび関連するキノンまたはフィトール化合物))、あるいはステロイド(胆汁酸(コール酸、デオキシコール酸、デヒドロコール酸など)、コーチゾン、ジゴキシゲニン、テストテロン、コレステロールまたはチオコレステロールなど)。また、本発明の範囲に含まれる脂質もしくは脂質残基には、特に限定されないが、ポリアルキレングリコール(「Oberhauserら, Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533」)、脂肪族基、リン脂質、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロール、スフィンゴ脂質、セレブロシド、ガングリオシド、トリエチルアンモニウム、1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(「Manoharanら, Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651」;「Sheaら, Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777」)、ポリアミン、またはポリアルキレングリコール(例えばポリエチレングリコール(PEG)(「Manoharanら, Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969」)、ヘキサエチレングリコール(HEG)など)、パルミチンまたはパルミチル残基(「Mishraら, Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229」)、オクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール残基(「Crookeら, J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923」)や、さらにはワックス、テルペン、脂環式炭化水素、飽和脂肪酸残基、および単不飽和または多不飽和脂肪酸残基などが含まれる。上記脂肪族基としては、例えば、C1−C20−アルカン、C1−C20−アルケン、またはC1−C20−アルカノール化合物(例えば、ドデカンジオール、ヘキサデカノール、またはウンデシル残基などが挙げられる(「Saison-Behmoarasら, EMBO J, 1991, 10, 111」;「Kabanovら, FEBS Lett., 1990, 259, 327」;「Svinarchukら, Biochimie, 1993, 75, 49」)。上記リン脂質としては、例えば、ホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジルグリセロール、ホスファチリジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンなどが挙げられる。
【0043】
上記脂質と上記本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸との連結は、原理上、任意のヌクレオチドにおいて、本発明の核酸の任意のヌクレオチドの塩基成分または糖成分において、3’および/または5’末端において、ならびに/あるいは、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸のリン酸骨格において、実施されることができる。本発明では、本発明の核酸が、その3’末端および/または5’末端において、脂質で末端修飾されることが特に好ましい。末端修飾には、配列内修飾を上回る多くの利点がある。配列内修飾は、ハイブリダイゼーションに影響を及ぼす可能性があり、立体構造に厳密な残基の場合には、ハイブリダイゼーションへ悪影響を与える可能性がある。他方では、末端のみが修飾されている脂質修飾された本発明の核酸を人工的に調製する場合、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の合成は、多量に入手可能な市販のモノマーを使用して実行されることができる。またその際には、先行技術において公知の合成プロトコールを使用することができる。
【0044】
第1の好ましい実施形態によれば、本発明の核酸と、使用される少なくとも1つの脂質とは、「リンカー」を介して連結される(該リンカーは、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に共有連結される)。本発明の範囲に含まれるリンカーは、典型的には、少なくとも2つの反応基、場合によっては3、4、5、6、7、8、9、10、10−20、20−30またはそれ以上の反応基を有している。該反応基は、例えば、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基などから選択されるものである。該反応基は、上記本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸(例えばRNAオリゴヌクレオチド)に結合する役目を担うことが好ましい。この反応基は、例えば、DMT基(ジメトキシトリチルクロライド)として、Fmoc基として、MMT(モノメトキシトリチル)基として、TFA(トリフルオロ酢酸)基として保護された形態で存在することができる。また、例えばアルキルチオール(3−チオプロパノールなど)の硫黄基が、ジスルフィドによって保護されることができる。あるいは、硫黄原子は、活性化成分(2−チオピリジン)などによって保護されることができる。本発明によれば、1つ以上の別の反応基は1つ以上の脂質の共有結合に役立つ。それ故、第1の実施形態によれば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、共有結合されたリンカーを介して、該核酸1つ当たり、少なくとも1つの脂質(例えば、1、2、3、4、5、5−10、10−20、20−30またはそれ以上の脂質)と結合できることが好ましく、少なくとも3−8またはそれ以上の脂質と結合できることが特に好ましい。これによれば、結合された各脂質は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の異なる位置において、互いに別々に結合されることができるし、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の1つ以上の位置において、複合体の形態で存在することができる。リンカーの追加の反応基は、担体物質(固相など)へ、直接的にまたは間接的に(開裂可能に)結合するために使用されることができる。本発明の好ましいリンカーとしては、例えば、グリコール、グリセロールおよびグリセロールの誘導体、2−アミノブチル−1,3−プロパンジオール、および2−アミノブチル−1,3−プロパンジオールの誘導体/骨格、ピロリジンリンカーまたはピロリジン含有有機分子(特に3’末端における修飾のため)が挙げられる。本発明では、グリセロールまたはグリセロール誘導体(C3アンカー)、または2−アミノブチル−1,3−プロパンジオール誘導体/骨格(C7アンカー)が、リンカーとして使用されることが特に好ましい。脂質修飾が、エーテル結合を介して導入されることができるとき、リンカーとしては、グリセロール誘導体(C3アンカー)が特に好ましい。脂質修飾が、アミド結合またはウレタン結合を介して導入されるとき、例えば2−アミノブチル−1,3−プロパンジオール骨格(C7アンカー)が、例えば好ましい。これに関して、リンカーと本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸との間に形成される結合の性質は、それが、アミダイト化学反応の化学物質および条件と適合するようなものであることが好ましい。つまり、上記結合の性質が、酸または塩基に対して不安定ではないことが好ましい。特に好ましい結合は、合成によって容易に得ることができ、核酸合成法のアンモニア開裂処置によって加水分解されない結合である。適切な結合は、原理上、それら全てに対応する適切な結合であり、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合およびエーテル結合が好ましい。出発物質が容易に入手できること(合成工程が僅かであること)に加えて、酵素による加水分解に対する生物学的安定性が比較的高いという理由から、エーテル結合が特に好ましい。
【0045】
第2の好ましい実施形態によれば、(少なくとも1つの)本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、少なくとも1つの上記のような(二官能性)脂質に直接的に(つまり、上記のようなリンカーを用いることなく)連結されている。この場合、本発明に使用される(二官能性)脂質は、少なくとも2つの反応基または、場合によっては3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の反応基を含んでいることが好ましい。第1反応基は、上記脂質を本明細書に記載の担体物質に、直接的にまたは間接的に結合させる役目を担うものであり、少なくとも1つの別の反応基は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に結合する役目を担うものである。それ故、第2の実施形態によれば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、該核酸1つ当たり、(リンカーを介することなく直接的に)少なくとも1つの脂質(例えば、1、2、3、4、5、5−10、10−20、20−30またはそれ以上の脂質)と結合できることが好ましく、少なくとも3−8またはそれ以上の脂質と結合できることが特に好ましい。結合された各脂質は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の異なる位置において、互いに別々に結合されることができるし、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の1つ以上の位置において、複合体の形態で存在することができる。また、第2の実施形態によれば、少なくとも1つの本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸(例えば、場合によっては、3、4、5、6、7、8、9、10、10−20、20−30またはそれ以上の本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸)は、上記のような脂質に、その反応基を介して結合されることができる。この第2の実施形態に使用され得る脂質は、(好ましくは末端または場合によっては分子内において)共役することができる(二官能性)脂質を含んでいることが特に好ましい。そのような脂質としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)およびその誘導体、ヘキサエチレングリコール(HEG)およびその誘導体、アルカンジオール、アミノアルカン、チオアルカノールなどが挙げられる。上記のような、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と(二官能性)脂質との結合の性質は、第1の好ましい実施形態において記載されているようなものであることが好ましい。
【0046】
第3の実施形態によれば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と少なくとも1つの上記のような脂質とは、上記実施形態の両方を同時に実現するように連結される。例えば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、該核酸のある位置では、(第1の実施形態と同様に)リンカーを介して少なくとも1つの脂質に連結することができ、該核酸の異なる位置では、(第2の実施形態と同様に)リンカーを使用することなく少なくとも1つの脂質に直接的に連結されることができる。例えば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端では、少なくとも1つの上記のような脂質は、リンカーを介して上記核酸に共有連結されることができ、当該本発明の核酸の5’末端では、上記ような脂質はリンカーを介することなく、該核酸に共有連結されることができる。また、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の5’末端では、少なくとも1つの上記のような脂質は、リンカーを介して上記核酸に共有連結されることができ、当該本発明の核酸の3’末端では、上記ような脂質はリンカーを介することなく、該核酸に共有連結されることができる。同様に、共有連結は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の末端において実施されるだけでなく、上記のように分子内において実施されることもできる。共有連結は、例えば、上記核酸の、3’末端および分子内において実施されてもよいし、5’末端および分子内において実施されてもよいし、3’末端および5’末端ならびに分子内において実施されてもよいし、分子内のみにおいて実施されてもよい。
【0047】
脂質修飾された本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、種々の方法によって得ることができる。脂質修飾は、原理上、上記のように本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の任意の位置に導入されることができる。例えば、脂質修飾は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端および/もしくは5’末端またはリン酸骨格、ならびに/あるいは本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の任意のヌクレオチドの任意の塩基または糖に導入されてもよい。本発明では、脂質修飾は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端および/または5’末端における末端脂質修飾であることが好ましい。本発明によれば、そのような末端化学修飾によって、多くの異なる誘導体化核酸を得ることができる。本発明に包含されるバリアントの例は図4に示されている。そのような脂質修飾された本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を調製する方法は、脂質修飾の位置に基いて選択されることが好ましい。
【0048】
例えば、脂質修飾が、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端において実施される場合、該脂質修飾は、典型的には、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を調製する前または後のどちらかにおいて、実施される。本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の調製は、核酸の直接的な合成によって、または場合によっては合成済の核酸を加えるか、他の供給源から単離されたサンプルに由来する核酸を加えることによって、実施され得る。
【0049】
第1の態様によれば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、脂質が導入される前に、先行技術において知られている核酸を合成するための方法を一般的に使用することによって直接的に合成される。そのためには、出発物質であるヌクレオシドが、例えば共役分子(スクシニル残基など)を介して、固相に結合されることが好ましく、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、例えばアミダイト化学反応の製法によって合成される。それから、上記のようなリンカーは、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端に、好ましくはリンカーの第1反応基を介して共有結合される。その後、上記のような脂質は、該リンカーに、リンカーの第2反応基を介して共有連結されることができる。また、リンカーが本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端に結合される前に、該リンカーは、脂質に共有連結されてもよい。この場合、リンカーの第1反応基と、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端との結合のみが必要になる。本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の合成後、または脂質の結合後に、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、上記固相から分離されて、脱保護されることができる。合成が溶液中で実施された場合、未反応の反応物質ならびに溶媒および望ましくない副産物を除去するための洗浄工程および精製工程が、脂質修飾された本発明の核酸の合成後に(場合によっては担体物質からの分離前に)実施されてもよい。
【0050】
さらに別の態様によれば、上記のような3’脂質修飾された本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、(i)リンカーの反応基に脂質が導入された後に合成されるか、あるいは(ii)一般式(I)もしくは一般式(II)で表される合成済の核酸として、またはサンプルから単離された一般式(I)もしくは一般式(II)で表される核酸として、リンカーの反応基に結合される(図5参照)。そのためには、例えば、上記のようなリンカーの第1反応基が、上記のような脂質と反応されてもよい。それから、第2工程では、上記リンカーの第2反応基は、酸に安定な保護基(DMT、Fmocなど)を提供される。これにより、その後に、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を、上記反応基に結合させることができる。次いで上記リンカーは、固相に直接的に結合されてもよいし、または該リンカーの第3反応基を介して間接的に結合されてもよい。また例えば、リンカーと固相との両方に共有結合することができる(共役)分子を介して、間接的に結合されてもよい。そのような(共役)分子としては、例えば上記のようなスクシニル残基が挙げられる。それから、通常は上記リンカーの第3反応基における保護基が除去され、これにより利用可能になった反応基において、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸が結合もしくは合成される。最終的に、脂質修飾された本発明の核酸は、典型的には、担体物質から開裂され、さらに場合によっては核酸における保護基は除去される。しかし、場合によってはさらに脂質が、本発明の共役された核酸の3’末端に共役されることも可能である。この共役は、上記工程のうちの1つに従って実施されることが好ましい。
【0051】
上述したこの態様のバリアントによれば、上記のようなリンカーは、第1反応基を介して、固相に直接的にまたは間接的に結合することができる。それから、まず、酸に安定な保護基は、該リンカーの第2反応基に結合される。該保護基が第2反応基に結合された後に、まず上記のような脂質は、リンカーの第3反応基に結合されることができる。次いで、同様にして以下の(1)〜(3)が実施されることが好ましい。(1)リンカーの第3反応基における酸に安定な保護基が除去され、(2)これによって利用可能になった第3反応基において、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸が結合または合成され、(3)脂質修飾された本発明の核酸が、担体物質から開裂される(さらに場合によっては、該核酸における保護基が除去される)。
【0052】
上記のような、3’脂質修飾された本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の特に好ましい実施形態によれば、そのような脂質修飾された本発明の核酸は、グリセロール基本物質(C3アンカー)を基礎とする3つの反応基(三官能性アンカー化合物)と単官能性脂質とを有する、リンカーを介して合成されることができる。該単官能性脂質としては、パルミチル残基、コレステロール、またはトコフェロールなどが挙げられる。上記リンカーを合成するための出発材料として使用され得るものとしては、例えば、アルファ,ベータ−イソプロピリデン−グリセロール(ケタール保護基を含むグリセロール)が挙げられる。好ましくは、アルファ,ベータ−イソプロピリデン−グリセロールを、まず水素化ナトリウムによりアルコラートへ変換し、さらにウィリアムソン合成によってヘキサデシルブロミドおよび脂質と反応させることにより、対応するエーテルを形成させる。また、エーテル結合を、異なる方法により第1工程において連結させることができる。例えば、α,β−イソプロピリデン−グリセロールのトシレートを形成し、該トシレートを脂質の反応基(例えば酸性プロトン)と反応させることにより、対応するエーテルを形成させる。第2段階では、ケタール保護基を酸(酢酸、希塩酸など)により除去することができ、それからジオールの1級ヒドロキシ基を、ジメトキシトリチルクロライド(DMT−Cl)によって選択的に保護することができる。最終段階では、上記工程において得られた産物を無水コハク酸と反応させて、DMAPを触媒として用いて、コハク酸を形成させることが好ましい。そのようなリンカーは、例えば脂質としてのパルミチル残基またはトコフェロールの結合にとって、特に適している(図5参照)。
【0053】
別の態様によれば、上記のような本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’脂質修飾は、上記のようなリンカーを使用することなく、(二官能性)脂質(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはヘキサエチレングリコール(HEG)など)を使用して実施される。上記二官能性脂質は、典型的には、上記のような官能基を2つ有している。二官能性脂質の一方の末端は、(共役)分子(例えば塩基に不安定なスクシニルアンカーなど)を介して担体物質に結合できることが好ましく、二官能性脂質のもう一方の末端では、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を合成することができる(「E. Bayer, M. Maier, K. Bleicher, H.-J. Gaus Z. Naturforsch. 50b (1995) 671」)。上記で使用されているような、第3の官能基の付与とリンカーとをそれぞれ省略することにより、そのような脂質修飾された本発明の核酸の合成は、単純化される(図6参照)。調製に関しては、典型的にはまず、本発明に使用される二官能性脂質(例えばポリエチレングリコール)を、保護基(例えばDMT)で一置換する。第2段階では、通常、反応基において保護された脂質を、DMAPの触媒作用を利用して、無水コハク酸でエステル化して、コハク酸を形成する。その後、第3段階では、二官能性脂質を担体物質に共役させて、脱保護することができる。それから、第4工程では、上記のような方法に従って、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を合成する。場合によっては、それから、合成された本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を脱保護して、脂質修飾された核酸を担体物質から開裂する。
【0054】
もう1つ別の好ましい実施形態によれば、上記のような、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の脂質修飾は、該核酸の5’末端において実施される。これに関しては、典型的には、該脂質修飾を、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の提供後、または該核酸の合成後のどちらかに実施する。上記のような、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の提供は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を直接的に合成することによって、あるいは一般式(I)もしくは一般式(II)のどちらかで表される合成済核酸、またはサンプルから単離されたは一般式(I)もしくは一般式(II)のどちらかで表される核酸を加えることによって、実施することができる。本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の合成は、先行技術において公知の核酸合成法に基く上記方法と同じように行われることが好ましく、ホスホロアミダイト法に基く上記方法と同じように行われることがより好ましい(例えば図7参照)。
【0055】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の脂質修飾は、核酸合成のためのホスホロアミダイト法が終わった後に、本発明の核酸の5’末端においてホスホロアミダイトを特別に修飾することによって行われる。合成によって比較的容易に得ることができる、そのようなアミダイトを、従来どおり最後のモノマーとして、市販の核酸または合成済核酸と共役させる。これらの反応は、反応速度が比較的速いこと、および共役収率が非常に高いことを特徴としている。修飾されたアミダイトの合成は、ホスホロアミダイト(例えば、ベータ−シアノエチル−モノクロロホスホロアミダイト(亜リン酸モノ−(2−シアノエチルエステル)−ジイソプロピル−アミドクロリド))を、例えば無水ジクロロメタンなどの適切な溶媒に溶解されている上記のような脂質のアルコールと反応させることによって行われることが好ましい。上記脂質のアルコールとしては、例えば、トコフェロール、コレステロール、ヘキサデカノール、DMT−PEGなどの脂質アルコールが挙げられる。さらに、反応溶液に、酸受容体としてDIPEAを加えることが好ましい。
【0056】
本発明の5’脂質修飾された核酸を合成するため使用される、これらのホスホロアミダイトは、比較的加水分解に対して耐性があり、(上記合成の前に)シリカゲルを用いたクロマトグラフィーにより精製されることができる。これのためには、典型的には、アミダイトの分解を防止するために、少量の弱塩基(トリエチルアミンなど)を溶出剤に加えられる。この塩基は、共役収率の低下を防止するために、産物から完全に除去されることが重要である。この除去は、例えば、減圧下において乾燥させるという単純な作業によって実施されることができるが、ペンタンを用いてtert−ブチルメチルエーテルからホスホロアミダイトを沈殿させることにより、該ホスホロアミダイトを精製することによって実施されることが好ましい。また、使用される脂質修飾されたアミダイトが、非常に高い粘度を有している場合、例えば、該脂質修飾されたアミダイトが、粘性のある油の状態である場合、(高速)カラムクロマトグラフィーを実施してもよい。該カラムクロマトグラフィーによって、塩基としてのトリエチルアミンを除くことができる。しかしながら、PEG修飾されたアミダイトの場合では、酸に不安定なDMT保護基を含んでいるので、そのような精製は、通常は実施されない。
【0057】
本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の5’末端へ、脂質修飾されたホスホロアミダイトを共役させる反応のためには、使用されるアミダイトが十分に溶解する溶媒を使用することが好ましい。例えば、本発明において使用されるアミダイトの親油性が高いために、該アミダイトのアセトニトリルへの溶解度は限定され得る。それ故、共役反応には、通常使用される溶媒としてのアセトニトリルの他に、塩素化炭化水素の溶液が使用されることが好ましい。塩素化炭化水素の溶液としては、例えば、0.1Mの塩素化炭化水素の(無水)ジクロロメタン溶液が挙げられる。しかしながら、ジクロロメタンを使用する場合は、合成サイクルの標準のプロトコールをある程度変更することが必要になる。例えば、アミダイトが自動合成デバイスの導管内や、担体物質上へ沈殿することを避けるために、実際の共役工程の前後において、アミダイトと接触するバルブおよび導管の全てに、(無水)ジクロロメタンを流してから、乾燥させる。
【0058】
脂質修飾されたアミダイトが使用された場合、通常は、先行技術において慣例的に使用されるアミダイトの共役収率に匹敵するほどの、高共役収率が得られる。脂質修飾されたアミダイトの反応速度は、一般的にはより遅くなる。このため、脂質修飾されたアミダイトが使用された場合、標準プロトコールと比べて、共役時間を、(極めて)長くすることが好ましい。そのような共役時間は、当業者によって容易に決定され得る。共役後のキャッピング工程を省略することができるので、必要に応じて、反応の全体的な収率を増加させるために、同じ脂質修飾されたアミダイトを用いて、合成サイクルをさらに実施することができる。この場合(例えば、DMT−PEGなどのDMT修飾された脂質の場合)、脱トリチル化工程は、普通は実施されない。
【0059】
5’脂質修飾された本発明の核酸では、脂質が本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に、亜リン酸トリエステルを介して結合している。そこで、本発明の5’脂質修飾された核酸を合成する際に、亜リン酸トリエステルを、硫化剤によって酸化することができる。これのためには、ホスホトリエステルを、可能な限り完全に酸化することができる硫化剤を使用することが好ましい。そうでなければ、硫化反応は、立体的な反応であることなどから、非常に不完全に進行する可能性があるので、アンモニア開裂およびMONの脱保護の後に得られる産物が、極少量であるか、まったくないということが起こり得る。この現象は、修飾の種類、使用される硫化剤、および硫化条件に依存している。それ故、ヨウ素を用いて、酸化を実施することが好ましい。その結果、ホスホジエステル結合が導入されるが、脂質残基の近くに位置するために、ヌクレアーゼがこの結合を基質として認識するとは考えられない。
【0060】
脂質修飾では、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に含まれるリンカーまたは(二官能性)脂質か、あるいは場合によっては本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸自体を、上記のように、担体物質に直接的にまたは間接的に共役させる事ができる。直接的な共役は、担体物質に直接的に実施されることが好ましく、担体物質への間接的な共役は、典型的には、別の(共役)分子を介して実施される。担体物質への共役によって形成される結合は、リンカーまたは二官能性脂質との(開裂可能な)共有結合、および/あるいは固相との(開裂可能な)共有結合であることが好ましい。(共役)分子として適切な化合物は、例えば、ジカルボン酸(例えば、スクシニル残基(=スクシニルアンカー)、オキサリル残基(=オキサリルアンカー))などである。アミノアルキル残基(アミノプロピル残基またはアミノヘキサニル残基など)などのような遊離のアミノ基を有している、リンカー、(二官能性)脂質あるいは場合によっては本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を、フタルイミドリンカーを介して担体物質に結合させることができる。チオールを含有するリンカーまたは(二官能性)脂質あるいは場合によっては本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を、ジスルフィドの形態で担体物質に結合させることができる。本発明と関連して、適切な担体物質は、特にCPG、テンタゲル(Tentagel(登録商標))、アミノ官能基化PS−PEG(テンタゲルS NH2)など、好ましくはテンタゲルまたはアミノ官能基化PS−PEG(テンタゲルS NH2)などの固相である。特別な実施形態によれば、担体物質に共役させるために、本発明にしたがって使用される上記リンカーまたは二官能性脂質のコハク酸塩などを、アミノ官能基化PS−PEG(テンタゲル S NH2)と共役させることができる。なお、この共役を行う際には、共役試薬として、TBTU/NMM (1H−ベンゾトリアゾール−1−イル−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(tetramethyluronium tetrafluoroborate)/N−メチルモルホリン)を用いることが好ましい。慣例的に使用される、1μmolの規模のPS−PEG物質の場合、典型的には、最良の結果は、添加量が50から100μmol/gまでのときに得られる(「E. Bayer, K. Bleicher, M. Maier Z. Naturforsch. 50b (1995) 1096」)。しかしながら、ヌクレオチドが、本発明にしたがって大規模で合成される場合、担体物質の添加量は、可能な限り大きいことが望ましい(≧100μmol)。本発明によれば、そのような製法からも、良好な共役収率が得られることになる(「M. Gerster, M. Maier, N. Clausen, J. Schewitz, E. Bayer Z. Naturforsch. 52b (1997) 110」)。添加量が、138μmol/g以下であるか、または場合によってはそれ以上である、樹脂などの担体物質などを使用した場合、良好な合成収率を実現することができる。上記リンカーまたは二官能性脂質との共役収率は、ほぼ100%であるので、担体物質の添加量を、これら化合物の化学量論に基いて比較的正確に調整することができる。添加量は、開裂したDMT保護基の分光学的定量化によって、測定されることが好ましい(実施例参照)。担体物質上に存在する残りのアミノ基は、無水酢酸でキャップすることができる。このキャッピングは、普通は、担体物質のローディングの後に実施されるが、直接的な核酸合成の最中に、例えばDNA合成機において行われてもよい。誘導体化されたPS−PEG担体物質上で脂質修飾された核酸を合成するためには、テンタゲル用に特別に開発された、物質の特性を考慮する合成サイクルが使用されることが好ましい(「E. Bayer, M. Maier, K. Bleicher, H.-J. Gaus Z. Naturforsch. 50b (1995) 671, E. Bayer, K. Bleicher, M. Maier Z. Naturforsch. 50b (1995) 1096.」)。標準プロトコールと比べて、以下の(1)〜(4)について、変更されることが好ましい:
(1)共役工程、キャッピング工程、および酸化工程における反応時間の延長;
(2)脱トリチル化工程の数の増加;
(3)各工程の後の洗浄工程の延長;
(4)微量のヨウ素を除去するための、アミダイト製法の間に(亜リン酸トリエステルを酸化するために)、たいてい必要とされる酸化工程の後の、0.1Mのアスコルビン酸含有洗浄溶液(ジオキサン/水=9:1)の使用。
【0061】
修飾の性質が、上記合成サイクルの各工程に影響を及ぼすことができる点を留意すべきである。例えば、PEG1500で誘導体化された担体物質の場合、非常にゆっくりとした反応速度(reaction kinetics)が観測される。このため、脱トリチル化工程の延長や、さらに共役時間の延長が必要になる。そのような変更および適合は、当業者の標準的な能力の範囲内で達成されるものであり、本開示の枠内のあらゆる時点において実施されることができる。そのように修飾されたこれらの反応サイクルにより、脂質修飾されたホスホロジエステル(phosphorodiester)およびホスホロチオエートの両方を、合成することができる。本発明に使用されるリンカーまたは二官能性脂質への、アミダイトの共役収率は、脂質残基によって低下されるものではなく、従来の値(97−99%)に相当している。上記3’修飾が使用されたときには、5’が誘導体化される可能性や、塩基、糖、またはリン酸骨格などへの別の修飾が導入される可能性は保たれる。
【0062】
同様に、化学的に修飾されていない核酸として、または(化学的に)修飾されている核酸(例えば、脂質修飾されている一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸)としての、一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と、以下の物質との複合体を形成することによって、安定化され得る:例えば特に限定されないが、カチオン性ポリマー、カチオン性ペプチドまたはカチオン性ポリペプチド、好ましくはポリカチオン性ポリマー(ポリリジン、またはポリアルギニンなど)や、またはカチオン性脂質もしくはリポフェクタントや、ヒストン、ヌクレオリン、プロタミン、オリゴフェクタミン、スペルミンまたはスペルミジン、およびカチオン性ポリサッカリド(具体的にはキトサン)、TDM、MDP、ムラミルジペプチド、プルロニック(pluronic)、ならびに/あるいはそれらの誘導体の1つなど。ヒストンおよびプロタミンは、天然にDNAを密集させるカチオン性タンパク質である。したがって、それらはインビボでは、転写されないDNAの凝集およびある種のウイルスのDNAの凝集に関与している。一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と複合体を形成させるために、本発明において使用されてもよいヒストンとしては、より具体的には、ヒストンH1、H2a、H3およびH4であってもよい。しかし、プロタミン(プロタミンP1またはP2)あるいはプロタミンのカチオン性の部分配列が、特に好ましい。本発明では上記化合物は、便宜上プロタミンP1またはP2に由来するペプチド配列で表されてもよいし、より正確には(カチオン性)配列(SRSRYYRQRQRSRRRRRR(配列番号85)またはRRRLHRIHRRQHRSCRRRKRR(配列番号86)に対応するペプチド配列で表されてもよい。本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と複合体を形成するのに適切な他の化合物は、特に限定されないが、本明細書で定義されているようなアジュバント化合物から選択されてもよい。
【0063】
本明細書では、「複合体の形成」は、一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と、上記で定義されたような安定化化合物との間に、非共有結合複合体を形成することによって、該核酸が該安定化化合物に結合されることを意味するものとする。該安定化化合物は、例えばカチオン性ポリマー、カチオン性ペプチドまたはカチオン性ポリペプチドなどである。本明細書では、「非共有結合」は、核酸と安定化剤との可逆的な会合が、これら分子の非共有結合性の相互作用によって形成されることであって、これら分子が、共有結合以外のある形式の電子の相互作用(例えば、ファンデルワールス結合、すなわち、両分子の非特異的な引力から生じる弱い静電気引力)によって、一緒に会合していることを意味する。一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と安定化化合物との会合は、それらの複合体の解離と平衡状態にある。あらゆる理論に縛られることなく、この平衡は、細胞内では、一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と安定化化合物とを解離させるように移行すると考えられる。
【0064】
ある実施形態によれば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、任意の他の薬学的活性成分なしに投与される場合は、免疫刺激剤であってもよいし、薬学的活性成分と一緒に投与される場合は、アジュバントとして使用されてもよい。後者の場合は、上記核酸は、例えば薬学的活性成分およびアジュバント成分の両方を含有している組成物(例えば、特定の抗原と、アジュバントとしての一般式(I)または一般式(II)で表される核酸とを含有するワクチン組成物)として投与される。
【0065】
「免疫刺激剤」としての本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、(先天性免疫系により提供されるような)抗原非特異的な免疫反応を誘発するできることが好ましい。また、この免疫反応は、免疫を刺激する様式で誘発されることが好ましい。免疫反応は、一般的には、様々な方法により引き起こされ得る。適切な免疫応答のための重要な要因は、異なるT細胞の亜集団が刺激されることである。Tリンパ球は、典型的には、2つの亜集団(ヘルパーT細胞1(Th1)およびヘルパーT細胞2(Th2))へと分化する。免疫系は、該亜集団を使って、(Th1により)細胞内の病原体(抗原など)や、(Th2により)細胞外の病原体(抗原など)を破壊することができる。2つのTh細胞の集団は、それらにより産生されるエフェクタータンパク質(サイトカイン)のパターンについて異なっている。このため、Th1細胞は、マクロファージおよび細胞傷害性T細胞を活性化することによって、細胞性免疫応答を支援する一方、Th2細胞は、B細胞を刺激して形質細胞へ転換させ、(抗原に対する抗体などの)抗体を形成させることによって、体液性免疫応答を促進する。したがって、Th1/Th2比は、免疫応答では非常に重要である。本発明と関連して、免疫応答のTh1/Th2比は、免疫刺激剤、すなわち細胞性免疫応答(つまりTh1の応答)を対象としているに本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸によって変更されることが好ましく、変更の結果、優位な細胞性免疫応答が誘導される。上記のように、本発明の核酸は、それ自体によって非特異的な免疫応答をもたらす。これによれば、別の薬学的活性成分を追加することなく、該核酸は、それ自体を免疫刺激剤として使用されることができる。別の薬学的活性成分、好ましくは特定の免疫刺激成分と一緒に投与される場合には、本発明の核酸は、他の薬学的活性成分によって引き起こされる特定の免疫応答を補助する、アジュバントとして機能する。
【0066】
また、本発明は、本発明の一般式(I)もしくは一般式(II)のどちらかで表される核酸、またはそれらの両方、ならびに場合によっては薬学的に許容可能な担体、および/またはさらに補助物質および添加物および/またはアジュバントを含有している薬学的組成物に関する(本発明の組成物の第1実施形態)。さらに本発明は、本発明の一般式(I)もしくは一般式(II)のどちらかで表される核酸、またはそれらの両方、薬学的活性成分、ならびに場合によっては薬学的に許容可能な担体、および/またはさらに補助物質、および添加物および/またはアジュバントを含有している薬学的組成物に関する(本発明の組成物の第2実施形態)。
【0067】
本発明の薬学的組成物は、典型的には、安全かつ有効な量の、上記のような本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、あるいはそれらの両方を含有している。本明細書において使用されているような「安全かつ有効な量」は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、あるいはそれらの両方の量であって、治療される病気(腫瘍、自己免疫疾患、アレルギーまたは感染症など)の前向きな変更を顕著に誘導するのに十分な量を意味する。しかしながら、同時に、「安全かつ有効な量」は、重篤な副作用が回避されるほど十分少ない量、つまり、利点と危険性との合理的な関係を可能にする量である。これらの限定の決定は、通常は実用的な医学的判断の範囲内にある。本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に関して、表現「安全かつ有効な量」は、免疫反応が過度にならないか、または免疫反応が損害を与えるほどにならないが、好ましくは該免疫反応が検出可能なレベルを下回らないように、免疫系を刺激することに適している量を意味することが好ましい。本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の「安全かつ有効な量」は、治療される特定の病気に関連して変化するし、また治療される患者の年齢および健康状態、病気の重症度、治療の持続期間、治療の際に行われる治療法の性質、使用される薬学的に許容可能な担体の性質、ならびに治療を行う医師の知識および経験の範囲内にあるこれらと同様の要因に関連して変化する。本発明の薬学的組成物は、本発明にしたがって、ヒトに対して使用されることができるし、獣医学的な目的に使用されることができる。
【0068】
第1実施形態によれば、上記本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、(任意の他の薬学的活性成分を加えなくとも)それ自体、免疫刺激剤であり得る。このことは、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸が脂質修飾を含んでいる場合に、特に適用できる。脂質は、本発明の核酸の免疫刺激特性を増強し得るか、または治療活性のある分子を良好に形成し得る。該治療活性のある分子としては、例えば上記のようなビタミンまたはステロイドが挙げられ、例えば、a−トコフェロール(ビタミンE)、D−アルファ−トコフェロール、L−アルファ−トコフェロール、D,L−アルファ−トコフェロール、ビタミンEのコハク酸塩(VES)、ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンDおよびその誘導体、ビタミンKおよびその誘導体などが挙げられる。
【0069】
本発明の第2実施形態の薬学的組成物は、(本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に加えて)少なくとも1つの追加の薬学的活性成分を含んでいる。これに関して、薬学的活性成分は、特定の兆候、好ましくは、癌、自己免疫疾患、アレルギーまたは感染症に対する治療効果を有している化合物である。そのような化合物には、特に限定されないが、ペプチド、タンパク質、核酸、(治療活性のある)低分子量有機化合物または低分子量無機化合物(分子量5000未満、好ましくは1000未満)、糖、抗原または抗体、先行技術において既に公知の治療剤、抗原性細胞、抗原性細胞の断片、細胞画分;(例えば化学的または放射線によって)修飾された、弱毒化された、または不活性化された病原体(ウイルス、細菌など)などが含まれる。
【0070】
(本発明の組成物の)第2実施形態の第1態様によれば、薬学的組成物に含有されている薬学的活性成分は、免疫調節成分であり、好ましくは免疫刺激成分である。最も好ましくは、薬学的活性成分は抗原または免疫原である。「抗原」および「免疫原」は、抗体の形成および/または細胞性免疫応答の活性化を引き起こすことができる任意の構造体であると理解される。上記細胞性免疫応答は、すなわち特異的な(アジュバントによるものでなはい)免疫応答であるといえる。よって、本発明によれば、用語「抗原」および「免疫原」は、同意語として使用される。抗原の例としては、ペプチド、ポリペプチド(すなわちタンパク質)、細胞、細胞抽出物、ポリサッカリド、ポリサッカリド接合体、脂質、糖脂質および炭水化物が挙げられる。また、抗原として考えられるものとしては、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、および原生動物抗原が挙げられる。さらに抗原として、好ましいものは、腫瘍細胞の表面抗原、ならびにウイルス、細菌、真菌、および原生動物病原体の表面抗原(特に分泌型の表面抗原)である。勿論、抗原は、適切な担体と共役されたパプテンとして本発明のワクチン中に存在することもできる。上記のような他の抗原成分(例えば、不活性化または弱毒化された病原体)も同様に、使用されてもよい。
【0071】
抗原性(ポリ)ペプチドには、腫瘍抗原などの公知の全ての抗原ペプチドが含まれる。腫瘍抗原の具体的な例としては、とりわけ、腫瘍特異的表面抗原(TSSA)が挙げられる。TSSAとしては、例えば、5T4、アルファ5β1−インテグリン、707−AP、AFP、ART−4、B7H4、BAGE、β−カテニン/m、Bcr−abl、MN/C IX抗原、CA125、CAMEL、CAP−1、CASP−8、ベータ−カテニン/m、CD4、CD19、CD20、CD22、CD25、CDC27/m、CD30、CD33、CD52、CD56、CD80、CDK4/m、CEA、CT、Cyp−B、DAM、EGFR、ErbB3、ELF2M、EMMPRIN、EpCam、ETV6−AML1、G250、GAGE、GnT−V、Gp100、HAGE、HER−2/new、HLA−A*0201−R170I、HPV−E7、HSP70−2M、HAST−2、hTERT(またはhTRT)、iCE、IGF−1R、IL−2R、IL−5、KIAA0205、LAGE、LDLR/FUT、MAGE、MART−1/melan−A、MART−2/Ski、MC1R、ミオシン/m、MUC1、MUM−1、MUM−2、MUM−3、NA88−A、PAP、プロテイナーゼ−3、p190マイナーbcr−abl、Pml/RARα、PRAME、PSA、PSM、PSMA、RAGE、RU1またはRU2、SAGE、SART−1またはSART−3、サバイビン、TEL/AML1、TGFβ、TPI/m、TRP−1、TRP−2、TRP−2/INT2、VEGFおよびWT1、あるいは例えばNY−Eso−1またはNY−Eso−Bなどの配列に由来する抗原が挙げられる。例えば、血管新生に関わることや、細胞外マトリックスの構造に影響を与えることが知られている腫瘍抗原などのあらゆる種類の抗原が、本発明の目的にとって適切である。腫瘍抗原は、タンパク質抗原として、または腫瘍抗原(好ましくは上記腫瘍抗原)をコードするmRNAもしくはDNAとして、薬学的組成物中に提供されてもよい。
【0072】
((アジュバントとしての)本発明の核酸と追加の薬学的活性成分とを含有している、本発明の組成物に関する)第2実施形態の第2態様によれば、薬学的活性成分は抗体である。これに関しては、任意の治療に適切な抗体を使用することができる。本発明にとって、特に好ましいものは、癌または感染症に対して重要な役割を果たす抗原、タンパク質または核酸を対象とする抗体である。そのような抗原、タンパク質または核酸としては、例えば、細胞表面タンパク質、腫瘍抑制遺伝子またはその阻害剤、成長因子および伸長因子、アポトーシスに関連するタンパク質、腫瘍抗原、または上記のような抗原などが挙げられる。
【0073】
第2実施形態の第3態様によれば、本発明の薬学的組成物に含有されている薬学的活性成分は核酸である。該核酸は、一本鎖であってもよいし、二本鎖であってもよいし、ホモ二本鎖の形態であってもよいし、またはヘテロ二本鎖の形態であってもよいし、直鎖状であってもよいし、環状であってもよい。薬学的組成物に、薬学的活性成分として含有されている核酸は、その長さの点において限定されない。該核酸は、任意の天然に存在する核酸配列、またはその相補体、あるいはそれらの断片を含んでいる。またこれに関して使用される核酸は、部分的にまたは完全に合成天然物(synthetic nature)であってもよい。例えば、核酸は、(治療に関係する)タンパク質(例えば抗原)をコードする核酸(例えば抗原をコードする核酸)、および/または免疫反応をもたらすことができる核酸を包含することができる。ここで言う抗原は、上記のような抗原であることが好ましい。
【0074】
好ましくは、本発明の薬学的組成物に、薬学的活性成分として含有されている核酸は、mRNAである。そのようなmRNAは、裸の(naked)形態で本発明の薬学的組成物に加えられてもよいし、あるいは例えばエキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼによる、インビボでの核酸の分解を減少させるか、もしくは防止さえもする安定化された形態で加えられてもよい。
【0075】
例えば、本発明の薬学的組成物に、薬学的活性成分として含有されているmRNAを、上で定義された5’キャップおよび/または3’末端におけるポリAテールによって安定化することができる。該ポリAテールの長さは、少なくとも50ヌクレオチドであり、好ましくは少なくとも70ヌクレオチドであり、より好ましくは少なくとも100ヌクレオチドであり、特に好ましくは少なくとも200ヌクレオチドである。既に述べたように、末端構造はインビボにおいて極めて重要である。RNAは、これらの構造によってmRNAとして認識され、分解が調節される。しかし、RNAを安定化または不安定化する別の方法も存在する。該方法の多くは、未だ知られていないが、RNAとタンパク質との相互作用が、そのことについて決定的であると考えられ得る。例えば、近年「mRNA監視システム(mRNA surveillance system)」が記載された(「Hellerin and Parker, Ann. Rev. Genet. 1999, 33: 229-260」)。このmRNA監視システムでは、不完全なまたは無意味なmRNAが、細胞質での特定のフィードバックタンパク質相互作用によって認識され、従順に分解される。これらの方法の大部分は、エキソヌクレアーゼによって実行される。
【0076】
また、本発明の薬学的組成物に、薬学的活性成分として含有されているmRNAの安定化は、mRNAを、カチオン性化合物、特にポリカチオン性化合物(例えば、(ポリ)カチオン性ペプチドまたはタンパク質)と会合させるか、複合体を形成させるか、または結合させることによって実施することができる。特に、ポリカチオン性の核酸結合タンパク質としては、プロタミン、ヌクレオリン、スペルミン、またはスペルミジンを使用することが、特に効果的である。また、ポリ−L−リジンまたはヒストンなどの他のカチオン性ペプチドまたはカチオン性タンパク質を、使用することも可能である。mRNAを安定化するためのこの手法は、欧州特許第1083232号明細書に記載されている(この文献の開示は、参照することによって本発明に完全に組み込まれる)。薬学的活性成分として存在するmRNAを安定化するために使用可能な、好ましいカチオン性物質には、カチオン性ポリサッカリド(例えばキトサン)、ポリブレン、ポリエチレンイミン(PEI)、またはポリ−L−リジン(PLL)などが含まれる。既に有利な点である細胞透過性が向上している、アジュバントの形態のときの脂質修飾された本発明の核酸の作用に加えて、mRNAとカチオン性化合物(例えばカチオン性タンパク質、またはカチオン性脂質(脂質を基本とする複合体形成試薬としてのオリゴフェクタミンなど))との会合または複合体の形成は、薬学的活性成分として存在するmRNAの、治療される細胞または治療される生物内への移送を向上させることが好ましい。また、そのことについては、複合体の形成による本発明の核酸の安定化効果に関する本明細書の開示も参照されたい。なお、このことは、mRNAの安定化にも同様に適用することができる。
【0077】
本発明の薬学的組成物中の薬学的活性成分としてのmRNAを安定化させるもう1つ別のアプローチは、mRNA配列を標的変更することである。この標的変更は、いわゆる不安定化配列要素(DSE)を、除去するか、または変更することにより実施される。シグナルタンパク質は、特に真核生物のmRNAに存在する該不安定化配列要素(DSE)に結合することができ、インビボにおけるmRNAの酵素分解を調節することができる。したがって、薬学的活性成分として存在するmRNAをさらに安定化させるためには、野生型mRNAの対応する領域と比べて、不安定化配列要素が存在し無いように、1つ以上の変更が行われることが好ましい。勿論、同じように、本発明によれば、非翻訳領域(3’UTRおよび/または5’UTR)に場合によっては存在するDSEを、mRNAから削除することが好ましい。上記DSEとしては、例えば多くの不安定なmRNAの3’UTRに存在する、AUリッチ配列(「AURES」)が挙げられる(「Caputら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1986, 83: 1670-1674」)。それ故、薬学的活性成分として使用されるmRNAは、野生型mRNAと比べて、上記のような任意の不安定化配列を含まないように、変更されることが好ましい。またこのことは、可能なエンドヌクレアーゼによって認識される配列モチーフ(例えばトランスフェリン受容体をコードする遺伝子の3’UTR区域に含まれている、配列GAACAAG)にも当てはまる(「Binderら, EMBO J. 1994, 13: 1969-1980」)。そのような配列モチーフも、脂質修飾された本発明の核酸から削除されることが好ましい。
【0078】
例えば望まれ得る効率的な翻訳を実現するために、リボソーム結合部位(コザック配列:GCCGCCACCAUGG(配列番号84)、なおAUGは開始コドンを形成している)への、リボソームの効果的な結合が起きるように、本発明の薬学的組成物中の薬学的活性成分としてのmRNAを、さらに修飾することができる。なお、これに関しては、この部位の周りのA/U含有量を増加させることにより、リボソームをmRNAにより効率的に結合させることができる。
【0079】
また、1つ以上の配列内リボソーム進入部位(いわゆるIRES)を、薬学的活性成分として使用されているmRNAに導入することが可能である。つまり、IRESは、リボソーム結合部位としてのみ機能する。また、IRESはそれ以外にも、リボソームによって互いに独立して翻訳される複数のペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAを提供することにも役立つ(マルチシストロニックmRNA(multicistronic mRNA))。本発明に基いて使用され得るIRES配列は、例えば、ピコルナウイルス(例えばFMDV)、ペストウイルス(CFFV)、ポリオウイルス(PV)、脳心筋炎ウイルス(ECMV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、従来のブタ熱ウイルス(CSFV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、またはコオロギ麻痺ウイルス(CrPV)に由来するIRES配列が挙げられる。
【0080】
同様に、本発明の薬学的組成物中の薬学的活性成分として、場合によっては使用されるmRNAは、該mRNAの細胞質における半減期を増加させることができる安定化配列を、5’および/または3’非翻訳領域に含んでいてもよい。該安定化配列は、ウイルス、細菌および真核生物に存在する天然に存在する配列と100%の配列相同性を示してもよい。しかし該安定化配列の全てまたは一部は、合成天然物であってもよい。本発明に使用され得る安定化配列としては、例えば、(ヒトまたはアフリカツメガエルなどの)β−グロビン遺伝子の非翻訳領域(UTR)であってもよい。別の安定化剤の例としては、一般式(C/U)CCANxCCC(U/A)PyxUC(C/U)CC(配列番号88)を有する配列が挙げられる。この配列番号88を有する配列は、α−グロビン、α−(I)−コラーゲン、15−リポキシゲナーゼ、またはチロシン−ヒドロキシラーゼをコードする非常に安定なmRNAの3’UTRに含まれているものである(「Holcikら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1997, 94: 2410-2414」を参照のこと)。勿論、そのような安定化配列は、別々に使用されることができるし、互いに組み合わせて使用されることができるし、当業者に公知の他の安定化配列と組み合わせて使用されることができる。
【0081】
最終的に望まれる翻訳をさらに増加させるために、薬学的活性成分として使用されるmRNAは、対応する野生型mRNAと比べて、以下の修飾を示すことができる。(該修飾は、別々に存在することができるし、互いに組み合わせて存在することができる)。ペプチドまたはポリペプチドをコードする変更されたmRNAの領域のG/C含有量は、該ペプチドまたはポリペプチドをコードする対応する野生型mRNAのG/C含有量よりも高くてもよい一方で、アミノ酸配列は、野生型と比べて修飾されていない。この変更は、mRNAの効率的な翻訳のためにはmRNA自体の安定化が肝要である、という事実に基いている。そのことに関しては、様々なヌクレオチドの配列および組成が、大きな役割を果たす。特に、G(グアノシン)/C(シトシン)含有量が増加している配列は、A(アデノシン)/U(ウラシル)含有量が増加している配列よりも安定である。それ故、本発明によれば、翻訳されるアミノ酸配列は保たれる一方で、コドンは、野生型mRNAと比べて、該コドンがより多くのG/Cヌクレオチドを含むように変えられる。数種のコドンは同じアミノ酸をコードしているので(遺伝コードの縮重)、安定化に有利であるコドンが決定され得る(代替コドンの使用)。mRNAにコードされるアミノ酸に依存するが、野生型の配列と比べて、mRNAの変更が異なる可能性があり得る。単にGまたはCのヌクレオチドを含んでいるコドンにより、アミノ酸がコードされている場合、該コドンの変更は必要ではない。したがって、Pro(CCCまたはCCG)、Arg(CGCまたはCGG)、Ala(GCCまたはGCG)およびGly(GGCまたはGGG)のコドンは、AまたはUが存在していないので、変えられる必要は全くない。次の場合では、Aおよび/またはUのヌクレオチドを含んでいるコドンは、同じアミノ酸をコードするが、Aおよび/またはUを含んでいない異なるコドンで置換されることにより、変えられる。例えば、Proのコドンは、CCUまたはCCAからCCCまたはCCGに変えられてもよく;Argのコドンは、CGU、CGA、AGAまたはAGGからCGCまたはCGGに変えられてもよく;Alaのコドンは、GCUまたはGCAからGCCまたはGCGに変えられてもよく;Glyのコドンは、GGUまたはGGAからGGCまたはGGGに変えられてもよい。他の場合、AおよびUのヌクレオチドをコドンから欠失させることができるが、コドンに含まれるAおよび/またはUのヌクレオチドの量を少なくすることによって、AおよびUの含有量を減少させることができる。例えば、Pheのコドンは、UUUからUUCに変えられてもよく;Leuのコドンは、UUA、CUUまたはCUAからCUCまたはCUGに変えられてもよく;Serのコドンは、UCU、UCAまたはAGUからUCC、UCGまたはAGCに変えられてもよく;Tyrのコドンは、UAUからUACに変えられてもよく;終止コドンUAAは、UAGまたはUGAに変えられてもよく;Cysのコドンは、UGUからUGCに変えられてもよく;Hisのコドンは、CAUからCACに変えられてもよく;Glnのコドンは、CAAからCAGに変えられてもよく;Ileのコドンは、AUUまたはAUAからAUCに変えられてもよく;Thrのコドンは、ACUまたはACAからACCまたはACGに変えられてもよく;Asnのコドンは、AAUからAACに変えられてもよく;Lysのコドンは、AAAからAAGに変えられてもよく;Valのコドンは、GUUまたはGUAからGUCまたはGUGに変えられてもよく;Aspのコドンは、GAUからGACに変えられてもよく;Gluのコドンは、GAAからGAGに変えられてもよい。一方では、Met(AUG)およびTrp(UGG)のコドンの場合、配列が変更される可能性はない。勿論、変更されたmRNAのG/C含有量を増加させるために、上に列挙した置換を、元の配列と比べて、可能な限りどのようにも組み合わせて使用することができるし、単独で使用することができる。したがって、例えば、元の(野生型)配列に存在するThrのコドンの全てが、ACC(またはACG)に変えられてもよい。しかし、上記置換を可能な限り組み合わせて使用することが好ましい。例えば、元の配列におけるThrをコードするコドンの全てがACC(またはACG)に置換され、Serを元々はコードするコドンの全てをUCC(またはUCGまたはAGC)に置換される;元の配列におけるIleをコードするコドンの全てがAUCに置換され、Lysを元々はコードするコドンの全てがAAGに置換され、Tyrを元々はコードするコドンの全てがUACに置換される;元の配列におけるValをコードするコドンの全てがGUC(またはGUG)に置換され、Gluを元々はコードするコドンの全てがGAGに置換され、Alaを元々はコードするコドンの全てがGCC(またはGCG)に置換され、Argを元々はコードするコドンの全てがCGC(またはCGG)に置換される;元の配列におけるValをコードするコドンの全てがGUC(またはGUG)に置換され、Gluを元々はコードするコドンの全てがGAGに置換され、Alaを元々はコードするコドンの全てがGCC(またはGCG)に置換され、Glyを元々はコードするコドンの全てがGGC(またはGGG)に置換され、Asnを元々はコードするコドンの全てがAACに置換される;元の配列におけるValをコードするコドンの全てがGUC(またはGUG)に置換され、Pheを元々はコードするコドンの全てがUUCに置換され、Cysを元々はコードするコドンの全てがUGCに置換され、Leuを元々はコードするコドンの全てがCUG(またはCUC)に置換され、Glnを元々はコードするコドンの全てがCAGに置換され、Proを元々はコードするコドンの全てがCCC(またはCCG)に置換されるなどが挙げられる。ペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAの領域のG/C含有量(または場合によって存在している追加の他の各部分のG/C含有量)は、(1)対応するペプチドまたはポリペプチドをコードする野生型mRNAのコード領域のG/C含有量と比べて、少なくとも7%増加していることが好ましく、少なくとも15%増加していることがより好ましく、少なくとも20%増加していることが特に好ましく、また(2)少なくとも50%であることが好ましく、少なくとも70%であることがより好ましく、少なくとも90%であることが最も好ましい。これに関しては、野生型配列と比べて、そのように変更されるmRNAのG/C含有量を、可能な限り最大まで増加させることが特に好ましい。
【0082】
薬学的組成物中に薬学的活性成分として使用されるmRNAの別の好ましい変更は、翻訳効率が、細胞内でのtRNAの存在頻度が異なっていることによっても決定されるという発見に基いている。それ故、RNA配列中に存在する「レア」コドンと呼ばれるコドンの数が多くなる場合、対応するmRNAの翻訳の効率は、比較的「頻繁に存在する」tRNAをコードするコドンが存在する場合よりも、著しく低下する。それゆえ、本発明によれば、薬学的活性成分として使用されるmRNAにおけるコード領域は、野生型mRNAの対応する領域と比べて、細胞内において比較的稀に存在するtRNAをコードする野生型配列の少なくとも1つのコドンが、細胞内において比較的頻繁に存在しかつ上記比較的稀に存在するtRNAが運搬するアミノ酸と同じアミノ酸を運搬する、tRNAをコードするコドンで置換されるように、変更される。この変更を用いれば、RNA配列は、頻繁に存在するtRNAを利用可能なコドンが導入されるように、変更される。どのtRNAが細胞内に頻繁に存在するか、および対照的にどれが比較的稀であるかは、当業者に知られている(例えば「Akashi, Curr. Opin. Genet. Dev. 2001, 11(6): 660-666」参照)。この変更を用いれば、本発明は、細胞内において比較的稀に存在するtRNAをコードする、野生型配列のコドンの全てを、細胞内に比較的頻繁に存在しかつ上記比較的稀に存在するtRNAが運搬するアミノ酸と同じアミノ酸を運搬する、tRNAで置換することができる。mRNAのコード領域によってコードされる(1つ以上の)抗原ペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を変えることなく、上記のようなmRNAにおける増加された(特に最大の)配列のG/C含有量と「頻繁に存在する」コドンとを組み合わせることが特に好ましい。G/Cが豊富な/最適化されたmRNAによってコードされ得る好ましい抗原は、上に挙げられている。
【0083】
(本発明の組成物に関する)第2実施形態の第4態様によれば、本発明の薬学的組成物に、薬学的活性成分として含有されている核酸は、dsRNAであり、好ましくはsiRNAである。dsRNAまたはsiRNAは、RNA干渉現象とからめると特に興味深いものである。免疫学が研究される過程で、RNA干渉現象に注意が引かれた。近年、RNAを基本とする防御機構が発見された。この防御機構は、真菌界、植物界、および動物界の何れにも存在しており、「ゲノムの免疫系」として作用するものである。処理の根本的な機構が同一であると特定される前は、つまり植物でのRNAに仲介されるウイルス耐性、植物でのPTGS(翻訳後遺伝子サイレンシング)、および真核生物でのRNA干渉が、共通の手順に基いていることが特定される前は、もともとその系は、互いに独立した様々な種において(初めは線虫において)説明されていた。RNA干渉(RNAi)のインビトロの技術は、配列特異的な遺伝子発現の抑制を引き起こす二本鎖RNA分子(dsRNA)に基いている(「Zamore (2001) Nat. Struct. Biol. 9: 746-750」;「Sharp (2001) Genes Dev. 5:485-490」:「Hannon (2002) Nature 41: 244-251」)。長いdsRNAを哺乳類細胞にトランスフェクションしたとき、プロテインキナーゼRおよびRnaseLの活性化によって、例えばインターフェロン応答などの非特異的な効果が引き起こされる(「Starkら (1998) Annu. Rev. Biochem. 67: 227-264; He and Katze (2002) Viral Immunol. 15: 95-119」)。該非特異的な効果は、siRNAと呼ばれるより短い(例えば21−23mer)RNAをトランスフェクションしたときに、回避される。なぜなら、30bpよりも短いsiRNAによっては、非特異的な効果は引き起こされないからである(「Elbashirら (2001) Nature 411: 494-498」)。また近年、dsRNA分子もインビボにおいて使用されている(「McCaffreyら (2002), Nature 418: 38-39」;「Xiaら (2002), Nature Biotech. 20: 1006-1010; Brummelkampら (2002), Cancer Cell 2: 243-247」)。
【0084】
それゆえ、本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として最終的に使用される二本鎖RNA(dsRNA)は、一般構造5’−(N17−29)−3’を有する配列を含んでいることが好ましい(Nは任意の塩基であり、ヌクレオチドを表す)。該一般構造は、リボヌクレオチドから構成される巨大分子を有している二本鎖RNAから構成される。リボヌクレオチドは、ペントース(リボース)、有機塩基およびリン酸を含んでいる。ここで、RNA中の有機塩基は、プリン塩基であるアデノシン(A)およびグアノシン(G)、ならびにピリミジン塩基であるシトシン(C)およびウラシル(U)を含んでいる。本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として最終的に使用される二本鎖RNA(dsRNA)は、上記ヌクレオチド、または配向構造を有するヌクレオチドの類似体を含んでいる。本発明の薬学的活性成分として使用されるdsRNAは、一般構造5’−(N19−25)−3’を有していることが好ましく、5’−(N19−24)−3’を有していることがより好ましく、5’−(N21−23)−3’を有していることがさらに好ましい(Nは任意の塩基である)。薬学的活性成分として使用されるdsRNAのヌクレオチドの好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%、特に好ましくは100%が、本明細書において以前に(薬学的活性成分として)記載された(治療に関連する)タンパク質または抗原の(m)RNA配列の区分と相補的である。「90%相補的である」は、本発明に従って使用されるdsRNAの長さが、例えば20ヌクレオチドであるとき、該dsRNAが、(m)RNAの対応する区分と対応する相補性を有さないヌクレオチドを、2つよりも多く含んでいないことを意味する。しかし、場合によっては本発明の薬学的組成物に使用される二本鎖RNAの配列は、その一般構造が、薬学的活性成分として上に記載されたタンパク質または抗原の(m)RNAの区分と完全に相補的であることが好ましい。
【0085】
原理的には、(m)RNAのコード領域に存在する、17から29塩基対まで、好ましくは19から25塩基対までの長さを有する区分の全てが、本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として、最終的に使用されるdsRNAの標的配列として機能することができる。同様に、薬学的活性成分として使用されるdsRNAは、上に(薬学的活性成分として)記載された(治療に関連する)タンパク質または抗原の、コード領域に位置しないヌクレオチド配列(特に(m)RNAの5’非コード領域)を対象とすることもできる。それ故、薬学的活性成分として使用されるdsRNAは、例えば、調節機能を有する(m)RNAの非コード領域を対象とすることもできる。したがって、上に記載されたタンパク質または抗原の薬学的活性成分として使用されるdsRNAの標的配列は、(m)RNAの翻訳領域および非翻訳領域に位置してもよいし、および/または制御要素に位置してもよい。本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として使用されるdsRNAの標的配列は、翻訳配列と非翻訳配列との重複領域(overlapping region)に位置してもよい;特に、該標的配列は、(m)RNAのコード領域の開始トリプレットの上流に、少なくとも1つのヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0086】
修飾されたヌクレオチドは、好ましくは、本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として、最終的に使用されるdsRNA中に存在してもよい。表現「修飾されたヌクレオチド」は、本発明によれば、問題のヌクレオチドが化学的に修飾されていることを意味する。当業者は、修飾されたヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチドと比べて、1つ以上の原子または原子団の置換、負荷もしくは除去によって変えられていることを、表現「化学的修飾」から理解する。本発明にしたがって使用される、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドは、一方では安定化に役立つが、他方では解離を防ぐことに役立つ。本発明にしたがって使用されるdsRNA中の好ましくは2から10まで、より好ましくは2から5までのヌクレオチドが修飾されている。二本鎖構造のdsRNAのヌクレオチドの少なくとも1つの2’−ヒドロキシ基が、化学基、好ましくは2’−アミノ基または2’−メチル基で置換されていることが有利である。また、二本鎖構造の少なくとも1つの鎖における少なくとも1つのヌクレオチドは、(好ましくは2’−O、4’−C−メチレン架橋によって)化学的に修飾されている糖環を有する「固定されたヌクレオチド(locked nucleotide)」と呼ばれるヌクレオチドであってもよい。本発明にしたがって使用されるdsRNAの数個のヌクレオチドは、固定されたヌクレオチドであることが有利である。さらに、本発明にしたがって使用されるdsRNAの骨格を修飾することによって、該dsRNAの成熟前の分解を防ぐことが出来る。これに関して特に好ましいdsRNAは、ホスホロチオエート、2’−O−メチル−RNA、LNA、およびLNA/DNAギャップマーなどの形態で修飾されており、このためインビボでの半減期がより長くなっているdsRNAである。
【0087】
本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として使用される二本鎖RNA(dsRNA)の末端は、細胞内での分解または各鎖の解離を阻止するため、特にヌクレアーゼによる成熟前の分解を避けるために、修飾され得ることが好ましい。dsRNAの各鎖の一般的に望ましくない解離は、特に該dsRNAの濃度が低いとき、または該dsRNAの鎖が短いときに起こる。解離を特に効果的に阻害するために、本発明にしたがって使用されるdsRNAの二本鎖構造の、ヌクレオチド対によってもたらされる結合力を、少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の化学的連結によって増加させてもよい。本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として使用される、解離性が減少したdsRNAの安定性は、細胞内、生物内(インビボ)、またはエキソビボでの酵素的分解または化学分解に対してより高くなり、それ故、上記dsRNAの半減期はより長くなる。本発明にしたがって使用されるdsRNAの細胞内の成熟前分解を防ぐためには、鎖の各末端においてヘアピンループを形成することをさらに実施することができる。それ故、特別な実施形態では、本発明の薬学的組成物に使用されるdsRNAは、解離反応速度を遅くするために、ヘアピン構造を有している。そのような構造では、ループ構造は、5’末端および/または3’末端に形成されることが好ましい。そのようなループ構造は、水素結合を有しておらず、それ故通常はヌクレオチド塩基の間に相補性を有していない。通常、そのようなループは、少なくとも5ヌクレオチドであり、好ましくは少なくとも7ヌクレオチドの長さであり、本発明にしたがって使用されるdsRNAの2つの相補的な各鎖を、そのような様式で連結する。同様に、鎖の解離を防ぐために、本発明にしたがって使用されるdsRNAの二本鎖のヌクレオチドは、水素架橋結合が強められるように修飾され得ることが好ましい。そのような水素架橋結合の強化は、例えば、場合によって修飾されたヌクレオチドにより、塩基間の水素架橋結合能が増加させられることによって実施される。その結果、鎖同士の相互作用の安定性が増加し、dsRNAはRNaseによる攻撃から保護される。
【0088】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として使用されるdsRNAは、前記のようなタンパク質または抗原の(m)RNAを対象としている。このため、使用されるdsRNAは、細胞内での上記タンパク質または抗原の翻訳を、少なくとも50%、より好ましくは60%、さらに好ましくは70%、最も好ましくは90%の程度まで抑制することが好ましい。すなわち、上記細胞に含まれる上記タンパク質または抗原の細胞内含有量は、天然に存在する(本発明にしたがって使用されるdsRNAを用いて処置されないときの)細胞内含有量の半分以下であることが好ましい。本発明にしたがって使用されるdsRNA分子を加えた後の、細胞内での上記タンパク質または抗原の翻訳の抑制は、上記分子によって引き起こされるRNA干渉の現象に基づいている。そのとき、本発明にしたがって使用されるdsRNAは、RNA干渉現象を誘発し、上記タンパク質または抗原の(m)RNAに結合することができる、いわゆるsiRNAであるといえる。本発明にしたがって使用されるdsRNAによって細胞内で誘発される翻訳抑制の測定または実証は、ノーザンブロット、定量的リアルタイムRCRによって実施することができるし、あるいはタンパク質レベルの観点からは、上記タンパク質または抗原に対する特異的抗体を用いて実施することができる。本発明の薬学的組成物中の薬学的活性成分として、最終的に使用されるdsRNA、および対応するsiRNAは、当業者に公知の方法で調製され得る。
【0089】
本発明の(第1または第2実施形態の)薬学的組成物は、典型的には薬学的に許容可能な担体を含んでいる。本明細書で使用される表現「薬学的に許容可能な担体」は、組成物の液体主成分または非液体主成分を包含することが好ましい。上記組成物が液体の形態で提供される場合、担体は典型的には発熱物質を含まない水;等張食塩水または緩衝(水)溶液(リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液など)である。特に本発明の薬学的組成物を注射するためには、緩衝液、好ましくは水性緩衝液を使用してもよい。上記緩衝液(好ましくは水性緩衝液)は、ナトリウム塩(好ましくは少なくとも50mMのナトリウム塩)、およびカルシウム塩(少なくとも0.01mMのカルシウム塩)を含んでおり、場合によってはカリウム塩(好ましくは少なくとも3mMのカリウム塩)を含んでいる。好ましい実施形態によれば、ナトリウム塩、カルシウム塩、および場合によってはカリウム塩は、ハロゲン化物(塩化物、ヨウ化物または臭化物など)の形態であってもよいし、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、または硫酸塩などの形態であってもよい。特に限定されないが、ナトリウム塩には例えば、NaCl、NaI、NaBr、Na2CO3、NaHCO3、Na2SO4などが包含され、場合によって含まれるカリウム塩には例えば、KCl、KI、KBr、K2CO3、KHCO3、K2SO4などが包含され、カルシウム塩には例えば、CaCl2、CaI2、CaBr2、CaCO3、CaSO4、Ca(OH)2が包含される。また、上記カチオンの有機アニオンが、上記緩衝液に含まれていてもよい。より好ましい実施形態によれば、上記で定義されたような注射の用途に適切な緩衝液は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)および場合によっては塩化カリウム(KCl)から選択される塩を含んでいてもよい。また、これら塩化物に加えて、アニオンがさらに存在していてもよい。典型的には、注射緩衝液中の塩の濃度は、少なくとも50mMの塩化ナトリム(NaCl)、少なくとも3mMの塩化カリウム(KCl)、少なくとも0.01mMの塩化カルシウム(CaCl2)である。
【0090】
注射緩衝液は、特定の参照溶媒に対して、高張性、等張性、または低張性であってもよい。すなわち、該緩衝液の塩含有量は、特定の参照溶媒に対して、より高い、同一、またはより低くてもよい。また、好ましくは、上記塩の濃度は、浸透作用または他の濃度効果によって、細胞の損傷が引き起こされないような濃度であってもよい。参照溶媒は、例えば「インビボ」の方法で使用される液体としては、血液、リンパ液、細胞質液体または他の体液などであり、例えば「インビトロ」の方法に使用され得る液体としては、一般的な緩衝液または液体などである。上記一般的な緩衝液または液体は、当業者に公知である。リンガー−乳酸溶液が、液体主成分として特に好ましい。
【0091】
しかし、ヒトへの投与に適切な、1つ以上の適合性のある固体もしくは液体賦形剤、または希釈剤、または封入化合物を使用してもよい。ここで使用されているような用語「適合性のある」は、通常の使用条件下において、薬学的組成物の薬学的有効性を実質的に減少させる相互作用が起きないように、薬学的組成物の構成物質が、(i)薬学的活性成分と混合され得ること、(ii)免疫刺激剤としてのまたはそれ自体がアジュバントとしての本発明の核酸と混合され得ること、および(iii)互いの成分と混合され得ることを意味する。勿論、薬学的に許容可能な担体は、該担体が治療されるヒトへの投与に適するほど、十分に高い純度と十分に低い毒性とを有していなければならない。薬学的に許容可能な担体またはその構成成分として使用することができる化合物としては、例えば、糖(例えばラクトース、グルコースおよびスクロースなど)、デンプン(例えばコーンスターチまたはジャガイモデンプンなど);セルロースとその誘導体(例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロースなど);粉末化されたトラガカント;麦芽;ゼラチン;獣脂;固体の流動促進剤(glidant)(例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムなど);硫酸カルシウム;植物油(例えば落花生油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、およびテオブロマカカオからのオイルなど);ポリオール(例えばポリプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなど);アルギン酸などが挙げられる。
【0092】
薬学的に許容可能な担体の選択は、原理上は、本発明の薬学的組成物が投与される様式によって決定される。本発明の薬学的組成物は、例えば全身投与されることができる。投与経路は、例えば経皮経路、経口経路、非経口経路(皮下注射または静脈注射を含む)、局所経路、および/または鼻腔内経路を含んでいる。使用される薬学的組成物の適切な量は、動物モデルを用いたルーチン的な実験から決定され得る。そのようなモデルは、特に限定されないが、ウサギ、ヒツジ、マウス、ラット、イヌ、およびヒトではない霊長類のモデルを含んでいる。注射のための好ましい単位用量形態は、水もしくは生理食塩水またはそれらの混合物の、滅菌溶液を含んでいる。そのような溶液のpHは、約7.4に調整されるべきである。注射に適した担体は、ヒドロゲル、制御放出または遅延放出のためのデバイス、ポリ乳酸、およびコラーゲンのマトリックスを含んでいる。局所適用されるのに適切な薬学的に許容可能な担体は、ローション、クリームおよびゲルなどでの使用に適しているものを含んでいる。化合物が経口投与される場合、錠剤およびカプセルなどが好ましい単位用量形態である。経口投与のために使用され得る単位用量形態を調製するための、薬学的に許容可能な担体は先行技術においてよく知られている。薬学的に許容可能な担体の選択は、本発明の目的にとっては重要な意味を持たない、味、費用および保存性などの副次的な検討事項に依存し、当業者によって容易に成し遂げられ得る。
【0093】
免疫原性をさらに増加させるために、本発明の薬学的組成物は、1つ以上の補助物質をさらに含んでいてもよい。これによって、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の相乗作用と、上記のような薬学的組成物(および最終的には薬学的活性成分)に場合によっては追加で含まれている補助物質の相乗作用とが実現されることが好ましい。様々な種類の補助物質に依存して、様々な機構をこれに関して考慮することができる。例えば、樹状細胞(DC)の成熟を可能にする化合物(リポ多糖類、TNF−αまたはCD40リガンド)は、適切な補助剤の第1クラスを形成する。一般的に、補助物質として使用できるものは、本発明の免疫刺激アジュバントからもたらされる免疫応答を、狙いを定めて増強するおよび/または影響を与えることができる「危険信号」(LPS、GP96など)またはサイトカイン(GM−CFSなど)の様式で、免疫系に影響を与える任意の作用物質である。特に好ましい補助物質は、免疫応答を促進するサイトカインである。該サイトカインとしては、モノカイン、リンフォカイン、インターロイキン、またはケモカインが含まれ、例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−27、IL−28、IL−29、IL−30、IL−31、IL−32、IL−33、INF−α、IFN−β、INF−γ、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、LT−β、またはTNF−α、あるいはhGHなどの成長因子が挙げられる。
【0094】
本発明の組成物中に含まれてもよい追加の添加物は、例えば、乳化剤(例えばトウィーン(Tween(登録商標))など);湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど);着色剤;着味剤;薬学的担体;錠剤形成剤;安定化剤:酸化防止剤;防腐剤などである。
【0095】
また、本発明の薬学的組成物((薬学的活性成分を含まない)第1実施形態、および(薬学的活性成分を含んでいる)第2実施形態)は、アジュバントをさらに含んでいてもよい。したがって、(本発明の薬学的組成物の第2実施形態に関して)アジュバントとしての、または免疫刺激剤としての本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、追加の免疫刺激剤/アジュバントと組み合わせられ得る。本発明の範囲内では、これらの目的に適した作用物質/アジュバントは、具体的には(1つ以上の機構によって)(修飾されたまたは修飾されていない)本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の、生物学的特性を向上させる化合物、換言すると、具体的には本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の免疫刺激作用を高める物質である。本発明にしたがって使用され得る作用物質/アジュバントには、例えば特に限定されないが、上記のような安定化カチオン性ペプチドまたはポリペプチド(プロタミン、ヌクレオリンなど)、スペルミンまたはスペルミジン、カチオン性ポリサッカリド(具体的にはキトサン)、TDM、MDP、ムラミルジペプチド、プルロニック、ミョウバン溶液、水酸化アルミニウム、アジュマー(ADJUMER(商標))(ポリホスファゼン);リン酸アルミニウムゲル;藻類由来のグルカン;アルガムリン(algammulin);水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン);タンパク質高吸収性水酸化アルミニウムゲル;低粘性水酸化アルミニウムゲル;AFまたはSPT(スクアランのエマルジョン(5%)、トウィーン80(Tween80)(0.2%)、プルロニックL121(1.25%)、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4);アブリジン(AVRIDINE(商標))(プロパンジアミン);BAY R1005(商標)((N−(2−デオキシ−2−L−ロイシルアミノ−b−D−グルコピラノシル)−N−オクタデシルドデカノイル−アミドヒドロアセテート);カルシトリオール(CALCITRIOL(商標))(1α,25−ジヒドロキシ−ビタミンD3);リン酸カルシウムゲル;CAPTM(リン酸カルシウムのナノ粒子);コレラ完全毒素、コレラ毒素−A1−タンパク質−A−D−断片の融合タンパク質、コレラ毒素のサブユニットB;CRL1005(ブロックコポリマーP1205);サイトカイン含有リポソーム;DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド);DHEA(デヒドロエピアンドロステロン);DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン);DMPG(ジミリストイルホスファチジルグリセロール);DOC/ミョウバンの複合体(デオキシコール酸ナトリウム塩);フロイント完全アジュバント;フロイント不完全アジュバント;ガンマイヌリン;ゲルブ(Gerbu)アジュバント(以下の(i)、(ii)および(iii)の混合物、(i)N−アセチルグルコサミニル−(P1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、(ii)ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、(iii)亜鉛−L−プロリン塩の複合体(ZnPro−8);GM−CSF);GMDP(N−アセチルグルコサミニル−(b1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン);イミキモド(imiquimod)(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン);イムセラー(ImmTher(商標))(N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−グリセロールジパルミテート);DRV(脱水−再水和から調製されたイムノリポソームの小胞);インターフェロン−γ;インターロイキン−1β;インターロイキン−2;インターロイキン−7;インターロイキン−12;イスコム(ISCOMS(商標))(「免疫刺激複合体」);イスコプレップ7.0.3.(ISCOPREP7.0.3.(商標));リポソーム;ロキソリビン(LOXORIBINE(商標))(7−アリル−8−オキソグアノシン);LT経口アジュバント(E.coliの易熱性エンテロトキシン(labile enterotoxin)−プロトキシン);任意の組成物のマイクロスフィアおよび微粒子;MF59(商標);(スクアレン−水のエマルジョン);モンタナイドISA51(MONTANIDE ISA51(商標))(精製されたフロイント不完全アジュバント);モンタナイドISA720(MONTANIDE ISA720(商標))(代謝可能な油アジュバント);MPL(商標)(3−Q−デスアシル−4’−モノホスホリル脂質A);MTP−PEおよびMTP−PEのリポソーム((N−アセチル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−(ヒドロキシホスホリルオキシ))エチルアミド、モノナトリウム塩);ムラメタイド(MURAMETIDE(商標))(Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3);ムラパルミチン(MURAPALMITINE(商標))およびD−ムラパルミチン(D−MURAPALMITINE(商標))(Nac−Mur−L−Thr−D−イソGln−sn−グリセロールジパルミトイル);NAGO(ノイラミニダーゼ−ガラクトースオキシダーゼ);任意の組成物のナノスフィアまたはナノ粒子;NISV(非イオン性界面活性剤の小胞);プルーラン(PLEURAN(商標))(β−グルカン);PLGA、PGAおよびPLA(乳酸ならびにグリコール酸の、ホモポリマーおよびコポリマー;マイクロスフィア/ナノスフィア);プルロニックL121(PLURONIC L121(商標));PMMA(ポリメチルメタクリレート);ポッドス(PODDS(商標))(プロテイノイドのマイクロスフィア);ポリエチレンカルバメートの誘導体;ポリ−rA:ポリ−rU(ポリアデニル酸−ポリウリジル酸の複合体);ポリソルベート80(トウィーン80);タンパク質のコクリエート(cochleate)(Avanti Polar Lipids, Inc., Alabaster, AL);スティムロン(STIMULON(商標))(QS−21);クイル−A(Quil−A)(クイル−A(Quil−A)サポニン);S−28463(4−アミノ−otec−ジメチル−2−エトキシメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール);SAF−1(商標)(「シンテックスのアジュバント製剤(Syntex adjuvant formulation)」);センダイプロテオリポソーム(Sendai proteoliposome)およびセンダイ含有脂質のマトリクス;スパン(Span)−85(トリオレイン酸ソルビタン);スペコール(Specol)(マルコール(Marcol)52、スパン(Span)85およびトウィーン(Tween)85のエマルジョン);スクアレンまたはロバン(Robane(登録商標))(2,6,10,15,19,23−ヘキサメチルテトラコサンおよび2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサン);ステアリルチロシン(オクタデシルチロシン塩酸塩);テラミド(Theramid(登録商標))(N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド);テロニル(Theronyl)−MDP(テルムルチド(Termurtide(商標))または[thr 1]−MDP;N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン);Ty粒子(Ty−VLPまたはウイルス様粒子);ワルターリード(Walter−Reed)リポソーム(水酸化アルミニウムに吸着した脂質Aを含有するリポソーム)などが含まれる。また、Pam3Cysなどのリポペプチドも、免疫刺激アジュバントの形態で存在する発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と組み合わせられるのに特に適切である(「Deresら, Nature 1989, 342: 561-564」参照)。
【0096】
上述のようなアジュバントは、徐放性製剤(depot)および送達に適したアジュバント、同時刺激に適したアジュバント、アンタゴニストとして適切なアジュバントなどのいくつかの種類に分類され得る。好ましい徐放性製剤および送達に適したアジュバントには、例えば、アルミニウム塩(アジュ−ホス(Adju−phos)、アルハイドロゲル(Alhydrogel)、リハイドラゲル(Rehydragel)など)、エマルジョン(CFA、SAF、IFA、MF59、プロバックス(Provax)、タイターマックス(TiterMax)、モンタナイド(Montanide)、バックスフェクチン(Vaxfectin)など)、コポリマー(オプチバックス(Optivax)(CRL1005)、L121、ポロアクスマー(Poloaxmer)4010など)、リポソーム(ステルス(Stealth)など)、コクリート(バイオラル(BIORAL)など)、植物由来のアジュバント(QS21、クイルA(Quil A)、イスコマトリックス(Iscomatrix)、イスコム(ISCOM)など)などが含まれてもよい。好ましい同時刺激に適したアジュバントには、例えば、トマチン、バイオポリマー(PLG、PMM、イヌリンなど)、微生物由来のアジュバント(ロムルチド、デトックス(DETOX)、MPL、CWS、マンノース、CpG7909、ISS−1018、IC31、イミダゾキノリン、アンプリゲン(Ampligen)、リビ529(Ribi529)、イモキシン(IMOxine)、IRIV、VLP、コレラ毒素、易熱性毒素、Pam3Cys、フラジェリン、GPIアンカー、LNFPIII/ルイス(Lewis)X、抗菌性ペプチド、UC−1V150、RSV融合タンパク質、cdiGMPなど)などが含まれてもよい。好ましいアンタゴニストとして適切なアジュバントには、例えば、CGRPニューロペプチドなどが含まれてもよい。
【0097】
Toll様受容体に対する(リガンドとしての)結合親和性のために、免疫刺激化合物であると知られている任意の化合物が、本発明の薬学的組成物中の本発明の核酸によって誘導される免疫応答をさらに刺激する、別の成分として好適に使用されてもよい。上記Toll様受容体は、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12またはTLR13である。
【0098】
本発明の薬学的組成物に加えられてもよい別の種類の化合物は、CpG核酸、具体的にはCpG−RNAまたはCpG−DNAである。CpG−RNAまたはCpG−DNAは、一本鎖CpG−DNA(ssCpG−DNA)、二本鎖CpG−DNA(dsDNA)、一本鎖CpG−RNA(ssCpG−RNA)、または二本鎖CpG−RNA(dsCpG−RNA)であってもよい。CpG核酸は、CpG−RNAの形態であることが好ましく、一本鎖CpG−RNA(ssCpG−RNA)の形態であることがより好ましい。CpG核酸は、少なくとも1つ以上の(分裂促進的な)シトシン/グアニンのジヌクレオチド配列(CpGモチーフ)を含んでいることが好ましい。第1の好ましい態様によれば、こららの配列に含まれている少なくとも1つのCpGモチーフ、換言すればCpGモチーフのC(シトシン)およびG(グアニン)は、メチル化されていない。場合によってはこれらの配列に含まれている別のシトシンまたはグアニンの全ては、メチル化されていてもよいし、メチル化されていなくてもよい。しかし、別の好ましい態様によれば、CpGモチーフのC(シトシン)およびG(グアニン)は、メチル化された形態で存在してもよい。
【0099】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の薬学的組成物はワクチンとして提供されてもよい。本発明のワクチンは、典型的には、本発明の薬学的組成物を含んでいる(本発明の薬学的組成物に相当する)。そのような本発明のワクチン組成物は、ワクチン組成物に組み込まれた特定の種類の薬学的活性成分によって特徴付けられる。通常、薬学的に活性な化合物は、ある抗原に対する特異的免疫応答を誘起する免疫刺激物質である。誘発された特異的免疫応答によって、被検体は、特定の病原体または特定の腫瘍などに対する(能動的なまたは受動的な形式で誘起された)免疫応答を発生させることができる。
【0100】
本発明の薬学的組成物、特にワクチンは、それらが投与される様式によって明確に特徴付けられる。典型的には、本発明の薬学的組成物、特にワクチンは、全身投与されることが好ましい。そのような組成物/ワクチンの投与経路は、典型的には、経皮経路、経口経路、非経口経路(皮下注射または静脈注射を含む)、局所経路、および/または鼻腔内経路を含んでいる。また、本発明の薬学的組成物またはワクチンは、皮内経路、皮下経路、筋肉内経路から投与されてもよい。それ故、組成物/ワクチンは、液体または固体の形態で製剤化されることが好ましい。(上で定義されたような)追加の補助物質は、特にワクチンの免疫原性をさらに増加させることができるので、好ましくは本発明のワクチンに組み込まれてもよい。上で定義されたような1つ以上の補助物質は、便宜上本発明のワクチン中の薬学的活性成分の免疫原性および他の特性に依存して、選択される。
【0101】
本発明の好ましい別の目的によれば、本発明の薬学的組成物、特に好ましくは本発明のワクチンは、以下に一例として挙げられた兆候を治療するために使用される。本発明の薬学的組成物、特に好ましくは本発明のワクチンを用いれば、様々な病理的な免疫応答の欠如と関係するか、免疫応答(好ましくは増強した免疫応答)を必要とする疾患または病気などを、治療という意味合いで処置することができる。ここで、そのような疾患または病気としては、例えば腫瘍特異的なまたは病原体特異的な疾患、感染症などや、あるいはアレルギーまたは自己免疫疾患などの場合と同様に、(過度の)免疫応答をTH1優勢の免疫応答へ移行することによって、および/または過度の免疫応答を被っている患者を脱感作することによって処置され得る疾患が挙げられる。本発明の薬学的組成物による、そのような免疫応答の産生、または既に存在しているが場合によっては不十分である免疫応答の増強は、抗原非特異的な免疫反応を誘発する、該組成物の能力に実質的に基いている。適切な免疫応答にとって重要な要因は、異なるT細胞亜集団の刺激である。Tリンパ球は、典型的には、2つの亜集団Tヘルパー1(Th1)細胞、Tヘルパー2(Th2)細胞に分化する。これらTh1細胞およびTH2細胞により、免疫系は、細胞内病原体(TH1)および細胞外病原体(抗原など)(Th2)を破壊することができる。2つのTh細胞の集団は、それらから産生されるエフェクタータンパク質(サイトカイン)のパターンについて異なっている。したがって、Th1細胞は、マクロファージおよび細胞傷害性T細胞を活性化することによって、細胞性免疫応答を支援する。これに対し、Th2細胞は、B細胞を刺激して、形質細胞へ転換させ、(例えば抗原に対する)抗体を形成させることによって体液性免疫応答を促進する。それ故、Th1/Th2比は免疫応答において非常に重要である。本発明に関しては、免疫応答のTh1/Th2比は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を含んでいる、本発明の薬学的組成物によって、細胞性免疫応答(すなわちTh1応答)の方向に変更されることが好ましい。これによれば、優勢的な細胞性免疫応答が誘導される。この変更が起こり、優先的なまたは排他的ですらあるTH1免疫応答が発生するだけで、上述した兆候は、効率的に治療され得る。それ故、本発明の薬学的組成物または本発明のワクチンは、腫瘍特異的な、または病原体特異的な免疫応答を誘発するために使用されることが好ましい。本発明のそのような薬学的組成物またはワクチンは、抗原提示細胞(APC)の免疫応答を増強させるために使用され得ることが特に好ましい。同様に、本発明の薬学的組成物またはワクチンは、癌または腫瘍疾患を治療するために使用され得ることも特に好ましい。当該癌または腫瘍疾患は、結腸癌、メラノーマ、腎癌(renal carcinoma、renal cancer)、リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球白血病(CLL)、胃腸腫瘍、肺癌(pulmonary carcinoma、lung cancer)、神経膠腫、甲状腺腫瘍、乳癌(mammary carcinoma、breast cancer)、前立腺腫瘍、肝癌(hepatoma、liver cancer)、様々ウイルスによって誘導される腫瘍(例えば、パピローマウイルスによって誘導される癌(例えば子宮頸癌)、腺癌、ヘルペスウイルスによって誘導される腫瘍(例えばバーキットリンパ腫、EBVによって誘導されるB細胞リンパ種)、B型肝炎によって誘導される腫瘍(肝細胞癌)、HTLV−1およびHTLV−2によって誘導されるリンパ種など)、聴覚神経腫/神経鞘腫、子宮頚癌(cerevical cancer、cervical carcinoma)、咽頭癌、肛門癌、神経膠芽腫、リンパ腫、直腸癌、星状膠細胞腫、脳腫瘍、胃癌、網膜芽腫、基底細胞腫、転移性脳腫瘍(brain metastases)、髄芽腫、膣癌、膵癌(pancreatic cancer、pancreatic carcinoma)、精巣癌、メラノーマ、甲状腺癌、膀胱癌、ホジキン症候群、髄膜腫、シュネーベルグ病、気管支癌、下垂体腫瘍、菌状息肉腫、食道癌(oesophageal cancer、oesophageal carcinoma)、カルチノイド、神経鞘腫、棘細胞腫、バーキットリンパ種、喉頭癌、胸腺腫、子宮体癌(corpus carcinoma)、骨癌、非ホジキンリンパ種、尿道癌、CUP症候群、頭部/頸部腫瘍、乏突起膠腫、外陰癌、腸癌、結腸癌、イボ類(wart involvement)、小腸腫瘍、頭蓋咽頭腫、卵巣癌(ovarian carcinoma、ovarian cancer)、軟部組織の腫瘍/肉腫、子宮内膜癌、転移性肝癌(liver metastases)、陰茎癌、舌癌、胆嚢癌、白血病、形質細胞腫、子宮癌、眼瞼腫瘍、前立腺癌などから選択されることが好ましい。脂質修飾された核酸に使用されているか、または上記組成物中に薬学的活性成分として使用されている脂質が、α−トコフェロール(ビタミンE)、D−α−トコフェロール、L−α−トコフェロール、D,L−α−トコフェロール、またはビタミンEのコハク酸塩(VES)である場合、そのことは特に好ましい。α−トコフェロール(ビタミンE)は、それほど有毒ではなく、強力な抗腫瘍活性を示す(「A. Bendich, L.J. Machlin Am. J. Clin. Nutr. 48 (1988) 612」)。このため、癌の治療に非常に有望であると考えられる。腫瘍細胞の増殖抑制、または腫瘍細胞に対する細胞障害活性に関する説明として、2つの機構が特に知られている。一方では、ビタミンEは強力な酸化防止剤であり、良好なラジカル受容体であるが(「C. Borek Ann. NY Acad. Sci. 570 (1990) 417」):他方では、免疫応答を刺激することにより、ビタミンEは腫瘍の成長を妨げることができる(「G. Shklar, J. Schwartz, D.P. Trickler, S. Reid J. Oral Pathol. Med. 19 (1990) 60」)。また最近の研究では、腫瘍細胞(口腔扁平上皮癌)中の腫瘍抑制遺伝子p53の発現と、ビタミンEコハク酸塩(VES)を用いた治療との間の関連性が発見された(「J. Schwartz, G. Shklar, D. Trickler Oral Oncol. Europ. J. Cancer 29B (1993) 313」)。その結果、腫瘍抑制因子として作用する野生型p53の産生の刺激と、発癌活性を発達させる変異型p53の減少とを観察することが可能になった。興味深いことに、上記腫瘍細胞に対するVESの生物学的活性は、2つの観点において用量依存的である。すなわち、生理学的用量(0.001から50μmol/l)では、より一層の細胞増殖が観察され、薬理学的用量(100から154μmol/l)では、細胞増殖が阻害される。このことは、細胞培養において示された(「T.M.A. Elattar, A.S. Virji Anticancer Res. 19 (1999) 365」)。また、VESを用いて処置することによって、種々の乳癌細胞株に対してアポトーシスを誘導することが可能になっている(「W. Yu, K. Israel, Q.Y. Liao, C. M. Aldaz, B.G. Sanders, K. Kline Cancer Res. 59 (1999) 953」)。誘導されたアポトーシスは、FasリガンドとFas受容体との相互作用によって開始される。今まで対応する細胞株ではそのような機構を観察することができなかったので、このことは、特に重要視されるべきである。ビタミンEには、芳香環上のメチル基の数よび位置が異なっている種々の異性体が存在する。記載された各研究では、天然に存在するビタミンE(α−トコフェロール)の生物学的に最も活性な形態が使用された。この分子は3つの光学活性中心を含んでいるので、このことは、種々の立体異性体においてもやはり起こるものである。ビタミンEの天然の形態は、RRR−α−トコフェロール(かつてのD−α−トコフェロール)であるが、ラセミ化合物(D,L−α−トコフェロール)が、近頃主に使用されている。上述したビタミンEの全形態も本発明の範囲内の脂質として包含される。
【0102】
また本発明の薬学的組成物は、感染症の治療のために使用されることが特に好ましい。そのような感染症は、特に限定されないが、インフルエンザ、マラリア、SARS、黄熱病、AIDS、ライムボレリア症、リーシュマニア症、炭疽病、髄膜炎、ウイルス感染症、細菌感染症、および寄生虫、原虫または真菌によって引き起こされる感染症、またはエキノコックス(魚の条虫、キツネの条虫、イヌの条虫、シラミ、ウシの条虫、ブタの条虫、小型条虫)によって引き起こされる感染症から選択されることが好ましい。上記ウイルス感染症は、AIDS、尖圭コンジローマ、中空のイボ(hollow wart)、デング熱、三日熱、エボラウイルス、感冒、初夏髄膜脳炎(early summer meningoencephalitis(FSME))、流感、帯状ヘルペス、肝炎、I型単純ヘルペス、II型単純ヘルペス、帯状疱疹、インフルエンザ、日本脳炎、ラッサ熱、マールブルグウイルス、麻疹、口蹄疫、単核球症、ムンプス、ノーウォークウイルス感染症、パイファー腺熱、天然痘、ポリオ(子供の跛行)、仮性クループ、第五病、狂犬病、イボ、西ナイル熱、水痘、サイトメガロウイルス(CMV)などである。上記細菌感染症は、流産(前立腺炎症)、炭疽病、虫垂炎、ボレリア症、ボツリヌス中毒、カンピロバクター、クラミジア・トラコマチス(尿道の炎症、結膜炎)、コレラ、ジフテリア、鼠径部肉芽腫(donavanosis)、喉頭蓋炎、発疹チフス、ガス壊疽、淋病、野兎病、ヘリコバクターピロリ、百日咳、鼠径リンパ肉芽腫、骨髄炎、在郷軍人病、ハンセン病、リステリア症、肺炎、髄膜炎、細菌性髄膜炎、炭疽病、中耳炎、マイコプラズマホミニス、新生児敗血症(絨毛羊膜炎)、壊疽性口内炎、パラチフス、ペスト、ライター症候群、ロッキー山紅斑熱、パラチフス菌(salmonella paratyphus)、チフス菌(Salmonella typhus)、猩紅熱、梅毒、破傷風、淋疾、ツツガムシ病、結核、チフス、膣炎(vaginitis、colpitis)、軟性下疳などである。上記寄生虫、原虫または真菌によって引き起こされる感染症は、アメーバ症、ビルハルチア病、シャーガス病、足白癬、酵母菌の斑点(yeast fungus spot)、疥癬、マラリア、オンコセルカ症(河川盲目症)、または真菌症、トキソプラズマ症、トリコモナス症、トリパノソーマ症(睡眠病)、内臓リューシュマニア症(visceral Leishmaniosis)、オムツ皮膚炎(nappy/diaper dermatitis)、住血吸虫症、魚中毒(シガテラ中毒)、カンジダ症、皮膚リューシュマニア症(cutaneous Leishmaniosis)、ランブリア症(ジアルジア症)、もしくは睡眠病などである。
【0103】
したがって、本発明の核酸、または本発明の薬学的に活性な組成物は、アレルギー性疾患またはアレルギー性の病気を治療するための、薬剤を調製するために使用されてもよい。アレルギーは、特定の外来抗原またはアレルゲンに対する、異常なまでの後天性の免疫学的な過敏症を、典型的に含む病気である。アレルギーは、普通、上記抗原またはアレルゲンに対する局所的なまたは全身性の炎症応答を招き、該アレルゲンに対する免疫を体内にもたらす。これに関連して、アレルゲンは、例えば草、花粉、カビ、薬物または多くの環境刺激などを包含している。理論に縛られることなく、数種の異なる病気の機構が、アレルギーの発達に関与していると考えられている。P.GellおよびR.Coombsによる分類体系によれば、語句「アレルギー」は、古典的なIgE機構により引き起こされるI型過敏症に限定されている。I型過敏症は、IgEによる肥満細胞および好塩基球の過度の活性化を特徴としている。この過度の活性化によって、鼻水のような穏やかな症状から、命を脅かすアナフィラキシーショックや死を招き得る全身性免疫反応をもたらされる。良く知られた種類のアレルギーは、特に限定されないが、(鼻粘膜の腫脹を引き起こす)アレルギー性喘息、(結膜の掻痒および充血を引き起こす)アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎(「花粉症」)、アナフィラキシー、血管浮腫(angiodema)、アトピー性皮膚炎(湿疹)、じんましん(urticaria、hives)、好酸球増加症、呼吸アレルギー(respiratory)、虫刺されに対するアレルギー、(様々な発疹(湿疹、じんましん(hives、urticaria))、および(接触)皮膚炎などを含み、それらを引き起こす)皮膚アレルギー、食物アレルギー、薬に対するアレルギーなどを包含している。本発明に関して、例えば、タンパク質としてのアレルゲン、または該タンパク質としてのアレルゲンをコードするmRNA(またはDNA)を、本発明の核酸と組み合わせて含んでいる薬学的組成物が提供される。上記タンパク質としてのアレルゲンとしては、例えばネコのアレルゲン、ホコリのアレルゲン、ダニの抗原、植物の抗原(例えばカバノキの抗原)などに由来するアレルゲンが挙げられる。本発明の薬学的組成物は、(過度の)免疫応答を、より強いTH1応答へ移行させてもよく、これにより望ましくないIgE応答を抑制するか、または弱める。
【0104】
また本発明は、自己免疫疾患を治療するための薬剤を提供する。自己免疫疾患は、各疾患の臨床病理学的特徴を基にして、全身性自己免疫疾患、臓器特異的自己免疫疾患、および局所性自己粘液疾患に、概して分けることができる。自己免疫疾患は、全身性症候群および局所性症候群のカテゴリーに分類されてもよい。全身性症候群は、SLE、シェーグレン症候群、強皮症、リウマチ性関節炎および多発性筋炎を含んでいるものである。また局所性症候群は、内分泌学的なもの(DM1型、橋本甲状腺炎、アジソン病など)、皮膚科学的なもの(尋常性天疱瘡)、血液学的なもの(自己免疫性溶血性貧血)、または神経的なもの(多発性硬化症)であってもよいし、あるいは体組織の任意の限局性腫瘤を実質的に含んでいてもよい。治療される自己免疫疾患は、I型自己免疫疾患、II型自己免疫疾患、III型自己免疫疾患、またはIV型自己免疫疾患、あるいはII型糖尿病から成る群から選択されてもよい。ここで、該I型自己免疫疾患、II型自己免疫疾患、III型自己免疫疾患、またはIV型自己免疫疾患は、例えば、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ、糖尿病、I型糖尿病(真性糖尿病)、全身性エリテマトーデス症(SLE)、慢性多発性関節炎、バセドー氏病、慢性肝炎の自己免疫形成、潰瘍性大腸炎、I型アレルギー疾患、II型アレルギー疾患、III型アレルギー疾患、IV型アレルギー疾患、線維筋痛、抜け毛、ベヒテレフ病、クローン病、重症筋無力症、神経皮膚炎、リウマチ性多発筋痛症、進行性全身性硬化症(PSS)、乾癬、ライター症候群、リウマチ性関節炎、乾癬、脈管炎などである。
【0105】
免疫系が自己抗原に対する免疫反応をなぜ誘導するのかに関する正確な様式は、今までのところ解明されていないが、因果関係の究明についていくつかの発見がなされている。つまり、自己反応は、T細胞のバイパスが原因である可能性がある。正常な免疫系は、B細胞が抗体を大量に産生できる前に、T細胞によるB細胞の活性化を必要とする。T細胞のこの要件は、超抗原を産生する生物による感染などといった稀なことが起こったときに、迂回され得る。該超抗原は、B細胞の多クローン性の活性化を開始することや、またはT細胞受容体のβサブユニットに非特異的に直接的に結合することによって、T細胞の多クローン性の活性化さえも開始することができる。もう1つ別の説明をすると、自己免疫疾患は、分子擬態によるものであると考えられる。外因性の抗原は、ある種の宿主抗原に類似の構造を共有していることがある。このため、(自己抗原を擬態している)この抗原に対して産生された抗体も、理論上は、宿主抗原に結合することができ、免疫応答を増強することができる。分子擬態の最も目だった形態は、グループAのベータ−溶血性連鎖球菌(haemolytic streptococci)において観察される。該溶血性連鎖球菌は、ヒトの心筋と抗原を共有しており、リウマチ熱という心臓の症状に関与する。よって、本発明は、(タンパク質としての、あるいは自己抗原タンパク質をコードするmRNAまたはDNAとしての)自己抗原と、通常は免疫系を脱感作することができる本発明の核酸とを含有している、薬学的組成物を提供することができる。
【0106】
また、本発明は、上記兆候を治療するための本発明の薬学的組成物もしくは本発明のワクチンの調製における、上記のような本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、またはそれらの両方の使用にも関する。上記兆候の治療としては、例えば、上記腫瘍、自己免疫疾患、アレルギーおよび感染症の治療が挙げられる。また、本発明は、上記のような腫瘍または感染症を治療するための、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、またはそれらの両方の(治療的)使用を包含している。
【0107】
また、本発明は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、またはそれらの両方、および/あるいは本発明の薬学的組成物、ならびに/あるいは本発明のワクチンを含んでいるキットを包含している。該キットは、場合によっては、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、および/または本発明の薬学的組成物、および/または本発明のワクチン、の投与および用量に関する情報を有する、使用のための技術説明書をさらに含んでいる。
【0108】
癌、感染症、自己免疫疾患およびアレルギーから成る群から選択される疾患または病気の治療が必要な患者に、薬学的に効果的な量の本発明の核酸を投与することによって、癌、感染症、自己免疫疾患およびアレルギーから成る群から選択される疾患または病気を治療する方法。
【0109】
本発明は、図面および実施例によって以下でさらに説明されるが、これら図面および実施例は、本発明の主題をこれらに限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0110】
本発明の一般式(I):G1XmGnで表される核酸、または一般式(II):C1XmCnの核酸の形態である核酸は、それ自体免疫刺激剤として使用され得る。本発明の核酸は、好ましくは、脂質修飾を含んでおり、それ自体使用され得る(例えば薬学的に活性な担体または媒体に溶解され得る)。これにより、本発明の核酸は、先天性免疫系を刺激し、非特異的な免疫応答を誘発する。この免疫刺激特性は、先天性免疫応答を積極的に刺激するような技術的に公知の他の化合物を、本発明の核酸に加えることにより、顕著に向上され得る。例えば、本発明の3’コレステロール修飾されたホスホジエステルオリゴヌクレオチドは、特定の腫瘍細胞に対する細胞毒性効果を誘導することができる、免疫刺激アジュバントとして開示されている。この驚くべき効果は、使用された本発明の一般式(I)または一般式(II)で表される、場合によっては脂質修飾された核酸の免疫刺激作用に、実質的に基づくものである。この免疫刺激作用には、3’または5’修飾(脂質修飾)の性質が、重要な役割を担っている。要約すると、一般式(I)または一般式(II)で表される核酸の免疫刺激特性により、これら分子は、非特異的免疫刺激応答を誘発するための治療剤として効果的に機能し、この非特異的免疫刺激応答は、上記分子自体(免疫刺激剤)によって誘発されるか、または他の薬学的活性成分(一般的には薬学的活性化合物に向けられる特異的な免疫応答を活性化する免疫刺激成分である)と併用されて(アジュバントとして)誘発される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】配列番号1および2に示される本発明の核酸による、マウスBMDC(骨髄樹状細胞)の刺激を示す図である。配列番号1の場合において、刺激を最も明白に観測することができる。免疫刺激の評価基準として、IL−6およびIL−12の放出(ng/ml)を測定した(実施例2参照)。陽性対照として、プロタミンと複合体を形成された、ベータ−ガラクトシダーゼ(lacZ)の、免疫を刺激するキャップされていない野生型mRNAを使用した。
【図2】配列番号1および2に示される本発明のオリゴヌクレオチドによる、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激を示す図である。配列番号1の場合において、刺激を最も明白に観測することができる。免疫刺激の評価基準として、インターロイキン−6(IL−6)およびTNFアルファの放出(ng/ml)を測定した(実施例2参照)。
【図3】配列番号1、2、3、4および5に示される本発明のオリゴヌクレオチドによる、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激を示す図である。配列番号1の場合において、刺激を最も明白に観測することができる。免疫刺激の評価基準として、インターロイキン−6(IL−6)の放出(ng/ml)を測定した(実施例2参照)。
【図4】本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に対する、脂質による本発明の種々の実現可能な末端修飾を示す図である。具体的には、脂質修飾されたリンカーおよび二官能性ペプチドのそれぞれが示されており、これらを、核酸配列(略してODN配列)との共役または合成に使用することができる。
【図5】例えばトコフェロール修飾が、核酸の3’末端に導入されることができる、(三官能性の)脂質修飾されたリンカーについての合成ルートの例を説明する図である。例示されたそのような化合物は、本発明の5’または3’−脂質修飾された核酸、あるいは本発明のアジュバントを調製する際の、中間体を表している。
【図6】二官能性脂質(例えばPEG)による核酸の3’修飾を可能にする、スクシニルアンカーを有する二官能性脂質の例を示す図である。
【図7】核酸の5’末端への脂質修飾されたアミダイトの共役を、図式的に示す図である。
【図8】配列番号78および79(一般式(I))に示される本発明のオリゴヌクレオチドによる、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激を示す図である。配列番号78の場合において、刺激を最も明白に観測することができ、配列番号79の場合においても刺激を観測することとができる。
【図9】プロタミンを用いたとき、または用いないときの、配列番号78(一般式(I))および81(一般式(II))に示される本発明のオリゴヌクレオチドによる、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激を示す図である。配列番号81の場合では、プロタミンを用いたときに、より良好な刺激を最も明白に観測することができる。驚いたことに、配列番号78の場合では、プロタミンを用いたときも、用いないときも、同様の刺激を観測することができる(図9参照)。
【図10】配列番号81、82および83(一般式(II))に示される本発明のオリゴヌクレオチドによる、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激を示す図である。それぞれの場合、つまり配列番号81、82および83の場合において、顕著な刺激を最も明白に観測することができる。
【図11】本発明の一般式(I)で表されるオリゴヌクレオチドにより、ヒトPBMC(hPBMC)を刺激した後の、TNFアルファの放出を示す図である。オリゴフェクタミンを用いて、および用いずに、トランスフェクションを実施した。オリゴフェクタミンを用いてトランスフェクションされた配列は、(a)配列番号1(Seq.1)、(b)対照としてのトコフェロールで3’5’修飾された配列番号1、(c)RNA40(配列番号87)であり、オリゴフェクタミンを用いずにトランスフェクションされた配列は、(d)培地(配列無し)、(e)配列番号1(Seq.1)、および(f)トコフェロールで3’5’修飾された配列番号1である。配列番号1(Seq.1)およびトコフェロールで3’5’修飾された配列番号1を、オリゴフェクタミンと一緒にトランスフェクションしたときに、最も良好な結果が得られた。結果的に、トコフェロールは、RNAのトランスフェクションを増加させ、これにより免疫刺激を向上させた。
【図12】本発明の一般式(I)で表されるオリゴヌクレオチドを、静脈内(i.v.)注射した後の、IL−12の全身性の放出を示す図である。グラフには、(a)対照としての緩衝液、(b)RNA40(配列番号87)、(c)オリゴフェクタミンと複合体を形成されたRNA40(配列番号87)、(d)配列番号1(Seq.1)、および(e)トコフェロールで3’5’修飾された配列番号1を用いて、トランスフェクションした結果が示されている。グラフから分かるように、トコフェロールで5’3’修飾された本発明の配列番号1から最良の結果が得られた。したがって、この本発明の配列番号1によって、顕著な免疫刺激が得られた。
【図13】比較実験を説明する図であり、ヒトPBMC(hPBMC)の免疫刺激およびTNFアルファの放出に対する、配列番号1に示される本発明の配列の種々の修飾の効果を示す図である。該実験では、コレステロールで修飾された配列番号1(一般式(I))、トコフェロールで修飾された配列番号1(一般式(I))、およびトコフェロールで3’5’修飾された配列番号1を使用した。最良の結果は、後者の修飾により得られた。しかし、コレステロールまたはトコフェロールのどちらかによる配列番号1の修飾も、hPBMCの顕著な刺激をもたらしている。
【図14】次の(a)〜(d)を用いた接種の腫瘍の大きさに対する効果を示す図である:(a)IFA、(b)IFAおよびニワトリの卵白アルブミン、(c)IFA、ニワトリの卵白アルブミン、およびRNA40(配列番号87)、ならびに(d)IFA、ニワトリの卵白アルブミン、およびプロタミンと複合体を形成されているときの本発明の配列番号1に示される配列。最良の結果、すなわち腫瘍の大きさの顕著な減少は、IFA、ニワトリの卵白アルブミン、および本発明の配列番号1に示される配列(a)を用いたときに得られた。このことは、本発明の配列が、優れたアジュバント特性を示すことを示している。
【図15】次の(a)〜(d)を用いた腫瘍内注射の腫瘍の大きさに対する効果を示す図である:(a)PBSのみ、(b)トコフェロールで3’5’修飾された本発明の配列番号1のPBS溶液、(c)本発明の配列番号1のPBS溶液、および(d)RNA40(配列番号87)のPBS溶液。最良の結果、すなわち腫瘍の大きさの顕著な減少は、トコフェロールで3’5’修飾された本発明の配列番号1を用いたときに得られた。また、その次の結果は、修飾されていない本発明の配列番号1に示される配列を用いたときに得られた。
【発明を実施するための形態】
【0112】
〔実施例〕
<1.典型的な本発明の一般式(I)で表される核酸の合成>
本発明の一般式(I):GlXmGn(配列番号1−80)で表される核酸、本発明の一般式(II):ClXmCn(配列番号81−83)で表される核酸を、例えば、RNAオリゴヌクレオチドを、ホスホロアミダイト化学反応を用いた自動固相合成によって調製した。それぞれの場合において、RNAに特異的なヌクレオチドの2’ヒドロキシル基を、TBDMS保護基で保護した。ホスホロチオエートの合成では、ビューケージ(Beaucage)試薬を酸化のために使用した。担体物質の開裂、および塩基に不安定な保護基の開裂は、メチルアミンを用いて実施し、TBDMS保護基の開裂は、トリエチルアミンハイドロフルオライドを用いて行った。
【0113】
未精製産物を、イオン対クロマトグラフィーもしくはイオン交換クロマトグラフィーまたはそれらの2つの方法の組み合わせの何れかを用いるHPLCにより精製し、脱塩してから乾燥した。産物の正確な塩基の組成および純度を、質量分析法によって検査した。
【0114】
<2.本発明の一般式(I)で表される典型的な核酸によるインビトロでの免疫刺激>
(a)マウスのBDMC(骨髄由来樹状細胞)を刺激するために、オリゴフェクタミン(3μl)を、FCSフリーIMDM培地(30μl)(バイホイタッカー(Biowhittaker)、カタログ番号BE12−722F)と混合し、室温で5分間インキュベートした。RNAの形態である、配列番号1−2の本発明の一般式(I)で表される核酸(6μg)を、FCSフリーIMDM培地(60μl)と混合し、さらにオリゴフェクタミン/IMDMと混合して、室温で20分間インキュベートした。それから、ウェル内の200μlのFCSフリーIMDM培地中に、200,000個のマウスBDMCを含んでいる、96ウェルのマイクロタイターカルチャープレートを用意し、この混合物(33μl)を、上記ウェル内に配置して、一晩培養した。4時間後、100μlの20%FCS含有IMDMを追加した。それから16時間共インキュベーションした後、上清を除去し、サイトカインELISAによって、インターロイキン−6(IL−6)、およびインターロイキン−12(IL−12)について試験した。プロタミンと複合体を形成されたベータガラクトシダーゼ(lacZ)の、免疫を刺激するキャップされていない野生型mRNAを使用した比較試験を、本発明の配列番号1および2と同様に行った。
【0115】
RNAの形態で存在している、本発明の一般式(I)で表される核酸(具体的には、配列番号1および2に示される本発明の配列の核酸)が、良好な免疫刺激特性を有していることを示すことができた。特に配列番号1は、比較のために使用された、βガラクトシダーゼ(lacZ)の免疫を刺激するキャップされていない野生型mRNAの刺激特性を、実質的に上回る免疫刺激を示した。
【0116】
(b)ヒトPBMCは、フィコール密度勾配を行い、X−VIVO−15培地(バイホイタッカー,カタログ番号BE04−418Q)中で一晩培養することによって、得られた。該X−VIVO−15培地は、RNAの形態である本発明の一般式(I)で表される核酸(10μg/ml)の存在下において、1%グルタミンおよび1%ペニシリンを含んでいた。また上記核酸の具体的な配列は、それぞれ本発明の配列番号1および2(図2参照)、ならびに配列番号1−5(図3参照)に示されている。
【0117】
刺激するために、オリゴフェクタミン(3μl)を、X−VIVO−15培地(30μl)(バイホイタッカー,カタログ番号BE04−418Q)と混合し、室温で5分間インキュベートした。RNAの形態である本発明の一般式(I)で表される核酸(6μg)を、X−VIVO−15培地(60μl)(バイホイタッカー,カタログ番号BE04−418Q)と混合し、さらにオリゴフェクタミン/X−VIVO培地と混合し、室温で20分間インキュベートした(なお、上記核酸の具体的な配列は、それぞれ本発明の配列番号1および2(図2参照)、ならびに配列番号1−5(図3参照)に示されている)。ウェル内の200μlのX−VIVO−15培地(バイホイタッカー,カタログ番号BE04−418Q)中に200,000個のPBMCが含まれている96ウェル−マイクロタイタープレートを用意し、該ウェルにこの混合物(33μl)を配置して一晩培養した。16時間、共インキュベートした後、上清を除去して、インターロイキン−6(IL−6)およびインターロイキン−12(IL−12)、ならびにTNFαを、サイトカインELISAによりテストした。また、免疫刺激性オリゴRNA40(5’−GCCCGUCUGUUGUGUGACUC−3’、配列番号87)と、配列番号1および2の本発明の配列との比較テストを同じように実施した。
【0118】
RNAの形態である、本発明の一般式(I)で表される核酸(具体的には、配列番号1および2(図2参照)、ならびに配列番号1−5(図3参照)に示される本発明の配列をそれぞれ有する核酸)が、良好な免疫刺激特性を有していることを示すことができた。特に配列番号1は、比較のために使用された、RNAオリゴヌクレオチドの刺激特性を、実質的に上回る免疫刺激を示した。
【0119】
<3.本発明の一般式(I)で表される典型的な核酸によるインビボでの免疫刺激−アジュバントとしての使用>
BALB/cマウス(1グループ当たり5匹)に、β−ガラクトシダーゼタンパク質および(本明細書で定義されたような)アジュバントを、0日目および10日目に注射し、20日目にマウスを犠牲にした。ELISAによるβ−ガラクトシダーゼタンパク質に対する抗体テストのために血清を使用し、また上記のインビトロの培養と同じようにして、IL−6、IL−12およびTNFαの値を測定した。
【0120】
<4.1−(4,4’−ジメトキシトリチル)−ポリエチレングリコール(DMT−PEG1500)の合成>
【0121】
【化1】
(手法)
21gのPEG1500(14mmol)を、乾燥させるために30mlの無水ピリジンにそれぞれ2回溶解する。各溶解の後、無水ピリジンを共沸により留去する。乾燥した出発物質を、35mlの無水ピリジンに溶解する。この溶液に対して、35mlの無水ピリジンに溶解した、4.7gの4,4’−ジメトキシトリチルクロライド(13.9mmol)を、30分間にわたって滴下して加える。その後さらに2時間、室温で攪拌し、その間の反応の進行を、TLCによって監視する。UVランプによるDMT基の検出に加えて、TLCプレートを2つの工程で展開する。工程1:TLCプレートを、DMTを検出するためにHCL飽和雰囲気下において展開する。工程2:TLCプレートを、PEGを検出するためにヨウ素チャンバーにおいて展開する。またPEGは、ドランジェンドルフ−バーガースプレー試薬を用いて、検出することができる。反応が完了すると、溶媒を除去し、産物を50mlのDCM中に溶かす。有機相を25mlの5%NaHCO3溶液で2度洗浄し、さらに25mlのH2Oで2度洗浄する。PEGは親水性および疎水性の両方の性質を兼ね備えているので、水相と有機相との分離は煩雑である。Na2SO4の上で、乾燥させた後、溶媒を除去し、未精製産物を、DCM/MeOH/TEA=18:2:0.5を用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。産物を含有する画分を、TLCによって同定し、それら画分を組み合わせて、乾燥するまで濃縮する。黄色がかった油が得られる。この油は、高真空下において徹底的に乾燥すると、ワックス様の固体になる。
収量:18.3g(理論値の72.5%)
TLC(DCM/MeOH/TEA=18:2:0.5):Rf値≒0.55(シグナルは、PEGのモル質量分布によって広がった)。
【0122】
<5.1−(4,4’−ジメトキシトリチル)−ヘキサエチレングリコール(DMT−HEG)の合成>
(手法)
10gのヘキサエチレングリコール(35mmol)を、30mlの無水ピリジンと2度、同時蒸発させることによって、乾燥させて、それから、20mlの無水ピリジンに溶解させる。実施例1の手法と同じようにして、HEGを、50mlの無水ピリジンに溶解した10gのDMT−Cl(29.5mmol)と反応させる。酢酸エチル/TEA=95:5を用いて、カラムクロマトグラフィーによって精製する。粘性の黄色油が、乾燥産物として得られる。
収量:12.5g(理論値の60.5%)
TLC(DCM/MeOH=95:5):Rf値t=0.59
MS(FD):m/z583.9(M+)
1H-NMR(CDCl3):δ3.21(t,DMT-O-CH2-)、3.47-3.68(m, -CH2-)、3.76 (s,-CH3)、6.77-7.46 (m、芳香族化合物)。
【0123】
<6.1−(4,4’−ジメトキシトリチル)−ポリエチレングリコールコハク酸(DMT−PEG−Suc)の合成>
【0124】
【化2】
以下の手法は、DMT−PEG1500、およびDMT−HEGのために使用することができる。
【0125】
(手法)
5gのDMT−PEG1500(2.8mmol)を、25mlのDCM/ピリジン=5:1に溶解する。得られた溶液に対して、7mlのピリジンに溶解した420mgの無水コハク酸(4.2mmol、すなわち1.5当量)、および3mlのピリジンに溶解した170mgのDMAP(1.4mmol、すなわち0.5当量)を加える。室温で12時間攪拌したあと、溶媒を減圧下で除去し、残渣をDCMに溶かす。有機相を、NaHCO3の水溶液(10%)で3度徹底的に洗浄し、NaCl飽和水溶液で2度徹底的に洗浄する。これにより過剰のコハク酸を分離除去する。Na2SO4上で乾燥した後、溶媒を除去する。高真空下で徹底的に乾燥した後、コハク酸塩を、これ以上仕上げることなく、アミノ修飾された担体物質との共役に使用することができる。
TLC:DMT-PEG1500-Suc(DCM/MeOH/TEA=18:2:0.5): Rf値=0.41
DMT-HEG-Suc(DCM/MeOH=9:2): Rf値=0.70。
【0126】
<7.1−トシル−2,3−イソプロピリデングリセロールの合成>
【0127】
【化3】
(手法)
200mmolのイソプロピリデングリセロール(26.4g)を、200mlのアセトニトリルに溶解し、22.2gのトリエチルアミン(220mmol)を、そこに加える。220mmolのp−トルエンスルホン酸クロライド(41.9g)を、250mlのアセトニトリルに溶解し、攪拌しながら2時間にわたって反応混合物に滴下して加える。攪拌を室温で、さらに20時間にわたって続け、白色沈殿を形成させる。反応が完了すると、この白色沈殿をろ過する。溶媒を除去し、未精製産物を、n−へキサン/酢酸エチル=2:1を用いて、カラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。産物を含有する画分を、TLCによって同定し、該画分を組み合わせて、乾燥するまで濃縮する。産物を高真空下において乾燥させる。黄色がかった油が得られる(「L.N. Markovskiiら J. Org. Chem. UdSSR 26 (1990) 2094.」)。
収量:31.3g(理論値の54.7%)
TLC(n−ヘキサン/酢酸エチル=2:1): Rf値=0.2
MS(FD):m/z272.0(M+-CH) (計算値286.3)
1H-NMR (CDCl3): δ1.31(s);1.34(s);2.45(s);3.74-3.79(m);3.90-4.08 (m);4.23-4.32(m);7.36(d);7.77 (d)
13C-NMR: δ21.7;25.2;26.7(メチル−C);66.2;69.5;72.9(グリセロール−C);110.1(メチレン−C);128.0;129.9;132.7;145.1(芳香族化合物-C)。
【0128】
<8.2,3−イソプロピリデン−1−D,L−α−トコフェロールグリセロール(Toc1)の合成>
【0129】
【化4】
(手法)
5.6gの粉末状の水酸化カリウム(100mmol)を、56mmolのD,L−α−トコフェロール(24.06g)のDMSO溶液(280ml)に加える。遮光して室温で、2時間攪拌した後、20mlのDMSOに溶解した56mmolの1−トシル−2,3−イソプロピリデングリセロール(16g)を、滴下して加え、60℃でさらに12時間攪拌を続ける。それから反応混合物を、1lの氷水で加水分解して、水相を1.5lのトルエンで抽出する。硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、溶媒を除去する。未精製産物を、n−ヘキサン/酢酸エチル=1:1を用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。産物を含有する画分をTLCにより同定し、該画分を組み合わせて、乾燥するまで濃縮する。産物を高真空下において乾燥し、遮光して保存する。黄色がかった油が得られる(「D.W. Will, T. Brown Tetrahedron Lett. 33 (1992) 2729.」)。
収量:24.2g(理論値の79.2%)
TLC(n−ヘキサン/酢酸エチル=1:1):Rf値=0.69
MS (FD):m/z544.6(M+)。
【0130】
<9.1−D,L−α−トコフェリルグリセロール(Toc2)の合成>
【0131】
【化5】
(手法)
16.9mmolのTocl(9.2g)を、100mlのHCl(2M)/THF(1:1)に溶解し、遮光して室温で2時間攪拌する。それから溶媒を除去し、50mlの無水エタノールを、残渣に2回加え、混合物を再び乾燥するまで濃縮する。未精製産物を、ジエチルエーテル/トルエン=1:1を用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。産物を含有する画分をTLCにより同定し、該画分を組み合わせて、乾燥するまで濃縮する。産物を高真空下において乾燥し、遮光して保存する。黄色の油が得られる。
収量:6.6g(理論値の77.5%)
TLC(ジエチルエーテル/トルエン=1:1): Rf値=0.22
MS(FD):m/z 504.4(M+)。
【0132】
<10.[1−(4,4’−ジメトキシトリチル)]−3−D,L−α−トコフェリルグリセロール(Toc3)の合成>
【0133】
【化6】
(手法)
6.6gのToc2(13mmol)を、乾燥させるために、15mlの無水ピリジンに2回溶解させる。該無水ピリジンを共沸により再び留去する。乾燥した出発物質を50mlの無水ピリジンに溶解し、5.34gのDMT−Cl(15.8mmol)をそこへ加える。遮光して室温で12時間攪拌した後、50mlのメタノールを加えて、反応を停止させる。それから反応混合物を乾燥するまで濃縮する。残渣を500mlのジクロロメタンに溶かし、150mlのNaCl飽和水溶液で2度洗浄し、それから150mlの水で1度洗浄する。Na2SO4の上で乾燥させた後、溶媒を除去し、残渣をn−ヘキサン/ジエチルエーテル/トリエチルアミン=40:60:1を用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。産物を含有する画分をTLCにより同定し、該画分を組み合わせて、乾燥するまで濃縮する。産物を高真空下において乾燥させる。黄色がかった油が得られ、これを遮光して保存する。
収量:8.5g(理論値の81%)
TLC(n−ヘキサン/ジエチルエーテル/TEA=40:60:1): Rf値=0.43
MS(FD):m/z 807.2。
【0134】
<11.[1−(4,4’−ジメトキシトリチル)]−2−スクシニル−3−D,L−α−トコフェリルグリセロール(Toc4)の合成>
【0135】
【化7】
(手法)
1.45gのToc3(1.8mmol)を、乾燥させるために5mlの無水ピリジンに2度溶解させる。各溶解の後、該無水ピリジンを共沸により再び留去する。出発物質を、8mlの無水ピリジンに溶解させた後、そこに140mgのDMAP(1.08mmol)と194.4mgの無水コハク酸(1.8mmol)とを、アルゴン向流の下で加える。それから、遮光して室温で18時間攪拌を行う。仕上げに、45mlのDCMを反応溶液に加え、50mlの水で4回洗浄する。硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、溶媒を除去し、未精製産物を酢酸エチル/メタノール/NH3水溶液(25%)=5:1:1を用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。産物を含有する画分を、TLCにより同定し、該画分を組み合わせて、乾燥するまで濃縮する。高真空下において乾燥させた後、茶色がかった粘性の油が得られ、これを遮光して保存する。
収量:1.35g(理論値の82.8%)
TLC(EtOAc/NH3/MeOH=5:1:1):Rf値=0.30
MS (FD):m/z906.2(M+)、604.2(M+-DMT)。
【0136】
<12.D,L−α−トコフェリル−β−シアノエチル−N,N−ジイソプロピル−ホスホロアミダイトの合成>
【0137】
【化8】
(手法)
25mlのピリジンを、5gのD,L−α−トコフェロール(11.6mmol)に2度加え、混合物を共沸同伴によって乾燥させる。出発物質を、40mlのDCMabsに溶解する。アルゴン向流の下で、7.9mlのDIPEAabs(46.4mmol)、および2.5mlの2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスフィンクロライド(11mmol)を、ゆっくりと滴下して加える。反応混合物を、遮光して室温で1時間攪拌したとき、100mlの酢酸エチル/TEA(20:1)で希釈して、25mlの10%NaHCO3で2度洗浄し、さらに飽和NaCl溶液で2度洗浄する。それから有機相を、Na2SO4上で乾燥させて、減圧下で溶媒を除去する。未精製産物を酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。
収量:5.62g(理論値の81%)
TLC(EtOAc):Rf値=0.75
MS(FD):m/z630.1(M+)
31P-NMR:δ152.24。
【0138】
<13.[1−(4,4’−ジメトキシトリチル)]−(3−D,L−α−トコフェリル)−グリセロール−2−ホスホロアミダイトの合成>
【0139】
【化9】
(手法)
1gのToc3(1.24mmol)を、乾燥させるために10mlの無水ピリジンに2度溶解する。各溶解の後、該無水ピリジンを、再び共沸により留去する。それから出発物質を、20mlのDCMabsに溶解し、0.84mlのDIPEAabs(4.96mmol)を、アルゴン向流の下で滴下して加える。それから、0.27mlの2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスフィンクロライド(1.19mmol)を、アルゴン向流の下でゆっくりと滴下して加える。反応混合物を1時間室温で攪拌し、その後、溶液を50mlの酢酸エチル/TEA(20:1)で希釈する。有機相を15mlの10%NaHCO3溶液で2度洗浄し、飽和NaCl溶液で2ど洗浄し、それからNa2SO4上で乾燥させる。溶媒を除去し、未精製産物を酢酸エチル/TEA(99:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。産物を含有する画分をTLCにより同定し、該画分を組み合わせて、乾燥するまで濃縮する。高真空下において乾燥させた後、黄褐色の非常に粘性のある油が得られ、これを冷却し、遮光して保存する。
収量:0.76g(理論値の63.4%)
TLC(EtOAc, 1% TEA):Rf値=0.68
MS(FD):m/z1006.4 (M+),953.6 (M+−シアノエチル),651.4(M+-DMT,−シアノエチル),603.1(M+-DMT,−ジイソプロピルアミン),303.1(DMT+)
31P-NMR:δ150.5。
【0140】
<14.1−ヘキサデシル−2,3−イソプロピリデングリセロール(Pam1)の合成>
【0141】
【化10】
(手法)
0.11molの水素化ナトリウム(2.42g)を、0.1molのD,L−α,β−イソプロピリデン−グリセロール(12.4ml)のTHFabs溶液(500ml)に、アルゴン向流の下で、小量ずつ加える。室温で12時間攪拌した後、生じたアルコラートに、0.11molの1−ブロモヘキサデカン(33.6ml)のTHFabs溶液(80ml)を滴下して加える。触媒として0.5mmolのテトラブチルアンモニウムヨウ化物を加えた後、混合物を加熱し、沸騰させたまま12時間維持する。反応混合物を冷却した後、生じた臭化ナトリウムをろ過し、ろ液を乾燥するまで濃縮する。残渣をジエチルエーテルに溶かし、エーテル相をH2Oで3回震蕩することによって抽出する。有機相をNa2SO4上で乾燥させた後、混合物を乾燥するまで濃縮し、残渣をEtOAc/n−ヘキサン=1:9を用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する(「S. Czernecki, C. Georgoulis, C. Provelenghiou Tetrahedron Lett. 39 (1976) 3535」)。
収量:18.5g(理論値の52%)
TLC(EtOAc/n−ヘキサン = 1:9):Rf値=0.47
MS(FD):m/z 357.6(M++1)
1H-NMR(CDCl3):δ0.80(t),1.18(s),1.35(s),1.37(s),3.30-3.48(m),3.63-3.69(dd),3.96-4.01(dd),4.19(q)
13C-NMR(CDCl3):δ14.1;22.7;25.4;26.1;26.8;29.4;29.6;29.7;31.9(アルキル鎖),67.0(アルキル−C-O-),71.8;71.9;74.7(グリセロール−C),109.3(ケチル−C)。
【0142】
<15.1−ヘキサデシルグリセロール(Pam2)の合成>
【0143】
【化11】
(手法)
18.5gのPam1(52mmol)を、300mlの酢酸(65%)中で、40度で24時間攪拌する。白色沈殿をろ過し、乾燥するまで、n−ヘキサンを用いて数回濃縮する。精製するために、産物をn−ヘキサンに3回懸濁し、ろ過する。脱保護されていない出発物質は、上記産物とは異なり、n−ヘキサンに溶けることができるため、脱保護されていない出発物質を分離することができる。残った残渣を、減圧下で乾燥させる。同じようにして、組み合わせたろ液を乾燥するまで濃縮し、再び分離手法に供する(「H. Paulsen, E. Meinjohanns, F. Reck, I. Brockhausen Liebigs Ann. Chem. (1993) 721」)。
収量:14.6g(理論値の88%)
TLC(EtOAc/n−ヘキサン=1:1):Rf値=0.2
MS(FD):m/z317.4(M++1)
1H-NMR (CDCl3):δ0.86(t),1.23(s),3.30-3.48(m),3.41-3.49(m),3.55-3.75(m),3.78-3.9(m)
13C-NMR(CDCl3):δ14.1;22.7;25.4;26.1;29.4;29.5;29.6;31.9(アルキル鎖),70.5(アルキル−C-O-),64.2;71.8;72.4(グリセロール−C)。
【0144】
<16.[1−(4,4’−ジメトキシトリチル)]−3−ヘキサデシルグリセロール(Pam3)の合成>
【0145】
【化12】
(手法)
乾燥させるために、10mmolのPam2(3.16g)を、15mlのピリジンabsに溶解し、溶媒を再び除去する。この手法を繰り返す。12mmol(4.06g)のジメトキシトリチルクロライド(50mlのピリジンに溶解)を、ジオールのピリジンabs溶液(100ml)にゆっくりと滴下して加え、室温で24時間攪拌する。それから反応を、5mlのメタノールを用いて停止させ、反応混合物を乾燥するまで濃縮する。最後まで残った微量のピリジンを、トルエンを用いた共沸同伴(azeotropic entrainment)によって除去する。残渣を300mlのDCMに溶かし、飽和KCl水溶液およびH2Oで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させる。溶媒を除去した後、残渣をn−ヘキサン/ジエチルエーテル/TEA=40:60:1を用いたクロマトグラフィーによってシリカゲル上で分離する((「R.A. Jones “Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach” ed. M.J. Gait, IRL Press (1984) 23」)。
収量:4.9g(理論値の79.3%)
TLC(n−ヘキサン/ジエチルエーテル/TEA=40:60:1):Rf値=0.42
MS(FD):m/z618.2(M+),303(DMT+)
1H-NMR(CDCl3):δ0.80(t),1.20(s),1.96(s),2.36(d),2.72(s),3.27(d),3.32-3.48(m),3.75(m),6.61-6.76(m),7.08-7.37(m)。
【0146】
<17.[1−(4,4’−ジメトキシトリチル)]−2−スクシニル−3−ヘキサデシルグリセロール(Pam4)の合成>
【0147】
【化13】
(手法)
1.26mmolのPam3(0.78g)を、ピリジンで2回乾燥させる。0.76mmolのDMAP(92mg)および1.26mmolの無水コハク酸(126mg)を、5mlのピリジンabsのアルコール溶液に加える。室温で12時間攪拌した後、反応溶液を30mlのDCMに溶かし、30mlの水で2回洗浄し、Na2SO4上で乾燥させる。溶媒を除去した後、残渣を酢酸エチル/メタノール/NH3の水溶液(25%)=5:1:1を用いたクロマトグラフィーによってシリカゲル上で分離する(「D.W. Will, T. Brown Tetrahedron Lett. 33 (1992) 2729.」)。
収量:0.6g(66.3%)
TLC(EtOAc/MeOH/NH3(H2O)=5:1:1):Rf値=0.32
MS(FD):m/z718(M+),303(DMT+),1020.7(M+DMT)+。
【0148】
<18.脂質修飾された核酸の形態である本発明のアジュバントによる、ヒト細胞の刺激>
(a)アジュバントの形態である本発明の核酸の免疫原活性を決定するために、配列番号1,2,3,4または5に示される配列を含有している脂質修飾された核酸を、ヒト細胞と一緒に共インキュベートした。これのために、例えばヒトPBMC細胞を、2mMのL−グルタミン(バイホイタッカー)、10U/mlのペニシリン(バイホイタッカー)および10μg/mlのストレプトマイシンで強化されたX−VIVO−15培地(バイホイタッカー,カタログ番号BE04−418Q)中で、10μg/mlのRNA(β−ガラクトシダーゼをコードするmRNA、または脂質修飾されている本発明の一般式(I)で表される核酸)と、さらに場合によっては10μg/mlのプロタミンと、16時間共インキュベートした。上清を除去し、IL−6およびTNFαの放出を、ELISAを用いて分析した。
【0149】
(b)別の実験では、本発明に基いて使用されるRNAオリゴヌクレオチド(上記参照)、および本発明に基いて使用されるアジュバントを用いて刺激した後に、ヒトPBMC細胞によるTNFαの放出を測定した。
【0150】
これのために、ヒトPBMC細胞を、2mMのL−グルタミン(バイホイタッカー)、10U/mlのペニシリン(バイホイタッカー)および10μg/mlのストレプトマイシンで強化されたX−VIVO15培地(バイホイタッカー)中で、10μg/mlのRNAオリゴヌクレオチドと一緒に16時間共インキュベートした。上清を除去してから、該上清をELISAを用いて分析した。
【0151】
<19.hPBMCにおけるTNFアルファの放出>
ヒトPBMCを、96ウェルマイクロタイタープレート上の無血清培地中に播種した(1ウェル当たり、200μl中に2x105個)。RNA水溶液(プロタミンと複合体を形成されているものか、プロタミンと複合体を形成されていないもの)を、上記細胞に加え(RNAの最終濃度:10μg/ml(33μl))、念入りに混合し、37℃で24時間インキュベートした。無細胞の細胞上清中のTNFアルファの分泌を、ELISAを用いて測定した。実験は、3通り行った。
【0152】
(a)第1実験では、配列番号78および79(一般式(I))に示される本発明のオリゴヌクレオチドを使用して、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激を測定した。配列番号78の場合において、また配列番号79の場合においても、刺激を最も明白に観測することができる(図8参照)。
【0153】
(b)第2(比較)実験では、プロタミンを用いる、または用いないときの配列番号78(一般式(II))および81(一般式(II))に示される本発明のオリゴヌクレオチドを使用して、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激をテストした。配列番号81の場合では、プロタミンを用いたときに、より良好な刺激を最も明白に観測することができる。驚いたことに、配列番号78の場合では、プロタミンを用いるときも、用いないときも、同様の刺激を観察することができる(図9参照)。
【0154】
(b)第3の実験では、配列番号81、82および83(一般式(II))に示される本発明のオリゴヌクレオチドを使って、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激をテストした。それぞれの場合において、すなわち配列番号81、82および83の場合において、顕著な刺激を最も明白に観測することができた(図10参照)。
【0155】
<20.hPBMCでのTNFアルファの放出−オリゴフェクタミンとの複合体の形成の有無に基くトランスフェクション>
ヒトPBMCを、96ウェルマイクロタイタープレート上の無血清培地中に播種した(1ウェル当たり、200μl中に2x105個)。RNA溶液、またはオリゴフェクタミンと複合体を形成したRNAの溶液を、上記細胞に加え(最終濃度:10μg/ml)、念入りに混合し、37℃で24時間インキュベートした。無細胞の細胞上清中のTNFの分泌を、ELISAを用いて測定した。オリゴフェクタミンとの複合体の形成に基づいてトランスフェクションされた配列は、(a)配列番号1(Seq.1)、(b)対照としてのトコフェロールで3’5’修飾された配列番号1、(b)RNA40(配列番号87)である。またオリゴフェクタミンと複合体を形成されることなくトランスフェクションされた配列は、(d)培地(配列無し)、(e)配列番号1(Seq.1)、および(f)トコフェロールで3’5’修飾された配列番号1である。配列番号1(Seq.1)およびトコフェロールで3’5’修飾された配列番号1を、オリゴフェクタミンと一緒にトランスフェクションしたときに、最も良好な結果が得られた。実験は、3通り行った。
【0156】
<21.静脈内注射後のhPBMCでのIL−12の全身性放出>
10μgのRNAのリンゲル−乳酸塩溶液(100μl)を、静脈内に投与した。投与から4時間後に、患者から血液を採取し、血清のサイトカインレベルを測定した。図12は、(a)対照としての緩衝液、(b)RNA40(配列番号87)、(c)オリゴフェクタミンと複合体を形成されたRNA40(配列番号87)、(d)配列番号1(Seq.1)、および(e)トコフェロールで3’5’修飾された配列番号1をトランスフェクションした結果を示す図である。グラフから分かるように、トコフェロールで5’3’修飾された本発明の配列番号1から、最良の結果が得られた。したがって、この本発明の配列番号1によって、顕著な免疫刺激が得られた。
【0157】
<22.異なる修飾をされた配列番号1を用いた、hPBMCでのTNFアルファの放出>
再び、ヒトPBMCを、96ウェルタイタープレート上の無血清倍地中に播種した(1ウェル当たり200μl中に2x105個)。10μlのRNA溶液(オリゴフェクタミンと複合体を形成されているRNA、またはオリゴフェクタミンが加えられていないRNA)を、上記細胞に加え(RNAの最終濃度:10μg/ml)、念入りに混合し、37℃で24時間インキュベートした。無細胞の細胞上清中のTNFの分泌を、ELISAを用いて測定した。比較実験では、ヒトPBMC(hPBMC)の免疫刺激およびTNFアルファの放出に対する、配列番号1に示される本発明の配列の種々の修飾の効果を測定した。該実験では、コレステロールで修飾された配列番号1(一般式(I))、トコフェロールで修飾された配列番号1(一般式(I))、およびトコフェロールで3’5’修飾された配列番号1を使用した。最良の結果は、後者の修飾により得られた。しかし、コレステロールまたはトコフェロールのどちらかによる配列番号1の修飾も、hPBMCの顕著な刺激をもたらしている(図13参照)。
【0158】
<23.卵白アルブミンおよび本発明のオリゴヌクレオチドを、予防接種した後の腫瘍の大きさの減少>
6−8週齢のC57/Bl6マウスの脇腹の皮下に、10μlのタンパク質(ニワトリの卵白アルブミン)を接種した。タンパク質(ニワトリの卵白アルブミン)を、該当するものについてはタンパク質(ニワトリの卵白アルブミン)とオリゴヌクレオチドとを、IFA(フロイント不完全アジュバント)に溶かした。注射一回ごとの総量は100μlであった。溶液は、以下の表に記載されているように、(a)IFA、(b)IFAおよびニワトリの卵白アルブミン、(c)IFA、ニワトリの卵白アルブミン、およびRNA40(配列番号87)、ならびに(d)IFA、ニワトリの卵白アルブミン、および、プロタミンと複合体を形成されている本発明の配列番号1に示される配列を含んでいた。
【0159】
【表1】
それから10日後に、マウスを同じワクチンカクテルで追加免疫した。追加免疫から12日後に、マウスを、1×106個の腫瘍細胞(EG7.Ova)に暴露し、腫瘍の大きさを2週間にわたって、毎日測定した。
【0160】
最良の結果、すなわち腫瘍の大きさの顕著な減少は、IFA、ニワトリの卵白アルブミン、および本発明の配列番号1に示される配列(a)によって得られた。このことは、本発明の配列が、優れたアジュバント特性を示すことを示している(図14参照)。
【0161】
<24.腫瘍内注射後の腫瘍の大きさの減少>
0日目に、1x106個のマウスの腫瘍細胞(EG7.Ova)を、6−8週齢のC57/Bl6マウスの、脇腹の皮下に移植した。3日目に、処置を開始した。50μgのRNAをPBSで希釈し、総量100μlを、腫瘍の近辺に注射した。処置、および腫瘍の大きさの測定を、毎日行った。腫瘍の大きさが、160mm3よりも大きい体積に達すると、マウスを犠牲にした。1グループ当たり4匹のマウスを処置したので、示された値は、4匹のマウスの中央値を表す。腫瘍内注射については、(a)PBSのみ、(b)トコフェロールで3’5’修飾された本発明の配列番号1(Seq.1)のPBS溶液、(c)本発明の配列番号1のPBS溶液、および(d)RNA40(配列番号87)のPBS溶液を、以下のプロトコールに従って用いた。
【0162】
【表2】
最良の結果、すなわち腫瘍の大きさの顕著な減少は、トコフェロールで3’5’修飾された本発明の配列番号1によって得られた。また、その次の結果は、修飾されていない本発明の配列番号1に示される配列によって得られた(図15参照)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、場合によっては脂質で修飾されており、好ましくはそれ自体が免疫刺激剤として使用されるか、または他の生物活性剤と組み合わせて使用される一般式(I):GlXmGn、または一般式(II):ClXmCnで表される核酸に関する。他の生物活性剤と組み合わせて使用される場合、本発明の免疫刺激剤は、組成物中でアジュバントとして作用するものであり、場合によっては、さらに別のアジュバントと組み合わされてもよいものである。したがって、本発明は、免疫刺激剤としての一般式(I)および/または一般式(II)で表される核酸をそれぞれ含んでいる、薬学的組成物またはワクチンにも関する。薬学的組成物がアジュバントとしての本発明の免疫刺激剤を含んでいる場合、該薬学的組成物は、追加の薬学的活性成分(抗原剤(antigenic agent)など)を少なくとも1つ含んでいる。本発明の薬学的組成物は、通常、薬学的に許容可能な担体を含んでいてもよいし、場合によっては、補助物質、添加物および/または追加のアジュバントをさらに含んでいてもよい。また本発明は、感染症、癌、アレルギー、および自己免疫疾患を治療するための、本発明の薬学的組成物またはワクチンの使用にも関する。また本発明は、癌、感染症、アレルギーおよび自己免疫疾患を治療するための薬学的組成物を調製するための、本発明の免疫刺激アジュバントの使用を含んでいる。
【背景技術】
【0002】
従来のワクチンや遺伝子ワクチンでは、治療または接種される生物にもたらされる免疫反応が小さく、それ故、免疫反応が不十分である場合が多いという問題が頻繁に起きている。このため、いわゆるアジュバントが、ワクチンまたは薬学的活性成分によく加えられる。アジュバントは、すなわち狙いを定めるようにして、免疫反応に影響を及ぼすことができるおよび/または免疫反応を増加させることができる、物質もしくは組成物であり、例えば抗原である。例えば、注射可能な医学的活性成分のなかには、該医学的活性成分の宿主細胞系への放出や、場合によっては宿主細胞へのその取り込みに影響を与えることができるアジュバントと組み合わせられることによって、その有効性が顕著に向上されるものがあることも知られている。このようにすれば、少しの用量を何度も一定の間隔で定期的に投与することに匹敵する効果を得ることができる。用語「アジュバント」は、本明細書では従来どおり、免疫原および/または他の薬学的活性成分にとっての、結合剤、担体または補助物質として機能する、化合物もしくは組成物のことをいう。
【0003】
多くの化合物および組成物が、当該技術分野ではアジュバントとして提案されており、例えば、(i)フロイントアジュバント、金属酸化物(水酸化アルミニウムなど)、ミョウバン、無機キレート剤またはの塩、様々なパラフィン様オイル、合成樹脂、アルギン酸塩、ムコイド、ポリサッカライド化合物、およびカゼイン塩、ならびに(ii)血液および/または血栓から単離された化合物(例えばフィブリン誘導体)などが挙げられる。しかしながら、そのようなアジュバントによって、ほとんどの場合、例えば投与部位における皮膚のかぶれや炎症といった望まれない副作用がもたらされる。さらに、有毒な副作用(具体的には組織のネクローシス)も認められる。最後に、これらの公知のアジュバントは、ほとんどの場合、B細胞だけが活性化されるので、細胞性免疫応答の刺激を十分に引き起こさない。
【0004】
例えば、ミョウバン、金属酸化物、塩のキレート剤は、無菌性膿瘍の発生と関係している。さらに、科学専門家の間では、そのような化合物が十分に排出されることが疑問視されており、むしろ、それらは、望まれない無機物質として体に残留するのではないかと推測されている。そのような化合物は、毒性が低いが、不溶性の残骸の一部として網内系の細胞(肝臓ならびに脾臓の堤防細胞およびシヌソイド細胞)によって、ファゴサイトーシスされることができる。さらに、そのような残骸は、体の様々なろ過機構(腎臓、肝臓または脾臓など)に対する損傷効果を有していると示されている。したがって、そのような残留物は、一般的に免疫系にとって、体内に常に存在する潜在性の危険の源であるといえる。
【0005】
また、先行技術においてアジュバントとして使用される合成油および石油派生物も、有害な効果を引き起こす。しかし、これらの化合物は、体内で迅速に代謝され、それらの芳香族炭化水素化合物に分解されるので、特に望ましくない。だが、上記芳香族炭化水素化合物は、最大規模の発癌作用を有している可能性、および/または他の方法(DNAへのインターカレーションなど)により回復不可能なDNAダメージを引き起こす可能性があることが知られている。さらに、そのような化合物は、無菌性膿瘍と関係しており、また体から完全に排出されることがめったにないことも、実証されている。
【0006】
また動物から単離された化合物(ゼラチンなど)も、免疫を刺激するためのアジュバントとして不適切であることが多いといえる。該化合物は、普通は対象とする宿主生物または宿主細胞に対する破壊作用を有していないが、それらは、通常、注射部位から宿主生物または宿主細胞内へ極めて迅速に移動する。このため、場合によってはアジュバントと一緒に任意に注射された活性成分の遅延放出などのような、アジュバントに一般的に望まれる特性がほとんど満足されない。上記の迅速な分配は、ある場合では、タンニンまたは他の(無機)物質によって妨害されるが、そのような追加の化合物の代謝およびそれらの体内の行方は完全に説明されていない。それ故この場合も、これらの化合物は、残骸に蓄積し、これによりろ過機構(腎臓、肝臓および/または脾臓の細胞など)が相当に妨害されると推測するのが妥当である。また、非経口投与されたときに膨潤するというゼラチンの特性により、インビボの条件では、不快な副作用が引き起こされ得る(具体的には、例えば、ゼラチンが投与部位において膨潤し、病気の感覚が引き起こされる)。
【0007】
血液および/または血栓から単離された化合物(フィブリン誘導体など)の場合では、免疫刺激効果が、一般的に実証されている。しかしながら、該化合物のほとんどは、アジュバントとして存在するとき、(要求される免疫特性と並行して起こる)免疫系に対する副作用を示すために、不適切であるといえる。例えば、上記化合物の多くは、アレルギー誘発物質として分類されており、ある状況下では、望まれる程度を遥かに上回る免疫系の過剰反応をもたらす。それ故、上記化合物は、上記理由のために、免疫を刺激するためのアジュバントとして不適切である。
【0008】
一方、非特異的な免疫応答(先天性免疫応答)を招く核酸を直接的に使用することによって、(非特異的な)免疫刺激効果をもたらすこともできる。細菌のCpG−DNA配列は、遺伝情報を供給するだけではなく、例えば、DNAは、非特異的な免疫応答を産生する中心的な役割を担っていることが知られている。例えば、細菌DNAは、マクロファージや樹上細胞といった免疫細胞に警告を与え、防御的なTh1で極性化されたT細胞性免疫応答を促進する、「危険」信号として作用することが知られている。免疫刺激作用は、非メチル化CGモチーフが存在するためにもたらされると考えられ、それ故、上記CpG−DNAは、それ自体、免疫刺激剤として提案されている(特許文献1参照)。CpG−DNAは、共刺激分子および炎症誘発性サイトカインの上方調節をもたらす、先天性免疫系のメンバーの活性化を直接引き起こす。またDNAのこの免疫刺激特性は、ホスホロチオエート修飾によって安定化されたDNAオリゴヌクレオチドによって、達成されることができる(特許文献2)。最後に、特許文献3には、先天性免疫系に対する刺激効果を相乗的に発揮する、CpGオリゴデオキシリボヌクレオチドと非核酸化合物との組み合わせを含んでいる、免疫刺激組成物が開示されている。
【0009】
しかしながら、非特異的免疫応答を引き起こすためのDNAの使用の有利性は、ある観点から見れば低くなり得る。DNAは、インビボにおいて比較的ゆっくりと分解されるため、免疫刺激DNA(外来性DNA)が使用されるとき、抗DNA抗体が形成されることがあり、このことは、マウスの動物モデルにおいて確かめられている(非特許文献1)。したがって、脾腫を招くことがマウスでは知られている、免疫系の過剰活性化が、生物に(外来性)DNAが残留することにより引き起こされ得る(非特許文献2)。また、(外来性)DNAは、宿主ゲノムと相互作用し、突然変異を誘発することができる(具体的には、宿主ゲノムに組み込まれることによって突然変異を誘発することができる)。例えば、導入された(外来性)DNAが未変化遺伝子へ挿入されることが起こり得る。このことは、内在性遺伝子の機能を妨害するか、または完全に失わせることができる突然変異が生じることを示している。そのような組み込みが起こった結果、一方では細胞にとって不可欠な酵素システムが破壊され得るということがあり、他方ではそのような変化が起こった細胞は、上記(外来性)DNAの組み込みによって、細胞成長の調節に重要な遺伝子が変化する場合、変性状態へ形質転換されるという危険性もある。それ故、これまで知られている方法では、免疫刺激剤として(外来性)DNAを使用するとき、癌化が起こり得るという危険性を排除することができない。
【0010】
したがって、先天性免疫系による非特異的免疫応答を引き起こすための化合物として、特定のRNA分子を使用することが、一般的により有益である。RNAオリゴヌクレオチドは、TLR−7/TLR−8受容体に結合することによって免疫刺激効果をもたらすことが知られている。免疫刺激剤としてのRNAは、通常は、DNAよりも実質的に短い半減期を有している。それにもかかわらず、当該技術分野において免疫刺激剤として知られる特定のRNA分子を使用することは、いくつかの制限を有している。例えば、これまで当該技術分野に開示されている、特定のRNA配列のインビボにおいて示される細胞透過性は、限定されている。このことは、免疫刺激のためには、RNAの量の増加が必要になる可能性があることを示しており、投与されるRNAの量が増加するために、費用が増加するが、先に一般的に記載されている主に望ましくない副作用(投与部位におけるかぶれおよび炎症など)がもたらされるという危険性を孕んでいる。また、多量の免疫刺激剤が投与されたときは、有毒な副作用を排除することができない。
【0011】
以上のことから、これまでに実証されている成功があるにもかかわらず、それ自体によって、患者の先天性免疫系の免疫応答を引き起こし得る改良された免疫刺激剤が、未だ必要とされており、そのような免疫刺激剤に相当な関心が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,663,153号明細書
【特許文献2】米国特許第6,239,116号明細書
【特許文献3】米国特許第6,406,705号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Gilkesonら, J. Clin. Invest. 1995, 95: 1398-1402
【非特許文献2】Montheithら, Anticancer Drug Res. 1997, 12(5): 421-432
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の第1の課題は、他の生物学的に活性な化合物と組み合わせられて投与された場合に、具体的には、免疫調節化合物と一緒に投与された場合に、好ましくは、免疫系を特異的に刺激する化合物(抗原など)と組み合わせられて投与された場合に、アジュバントとして作用する免疫刺激剤を提供することである。
【0015】
また本発明の第2の課題は、患者の先天性免疫系を活性化することによって、非特異的な免疫応答を引き起こす免疫刺激剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の両方の課題は、以下の一般式(I)および一般式(II)で表される核酸分子を提供することによって解決される。これらの本発明の核酸分子は、先天性免疫系を活性化し、これによって、非特異的免疫応答を誘発する。また、上記核酸分子は、後天性免疫系を特異的に活性化する第2化合物の免疫刺激活性を支援するアジュバントとして(例えばワクチンの成分として)作用する。
【0017】
本発明は一般式(I):GlXmGnで表される核酸を提供する。
(Gは、グアノシン、ウラシル、またはグアノシンもしくはウラシルの類似体であり;
Xは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジン、シトシン、または上記ヌクレオチドの類似体であり;
lは、1から40までの整数であり、
l=1のとき、Gはグアノシンまたはその類似体であり、
l>1のとき、上記ヌクレオチドの少なくとも50%はグアノシンまたはその類似体であり;
mは、整数であり、少なくとも3であり;
m=3のとき、Xはウラシルまたはその類似体であり、
m>3のとき、少なくとも3つの連続するウラシルまたはウラシルの類似体が存在しており;
nは1から40までの整数であり、
n=1のとき、Gはグアノシンまたはその類似体であり、
n>1のとき、上記ヌクレオチドの少なくとも50%はグアノシンまたはその類似体である)。
【0018】
また、本発明は一般式(II):ClXmCnで表される核酸を提供する。
(Cは、シトシン、ウラシル、またはシトシンもしくはウラシルの類似体であり;
Xは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジン、シトシン、または上記ヌクレオチドの類似体であり;
lは、1から40までの整数であり、
l=1のとき、Cはシトシンまたはその類似体であり、
l>1のとき、上記ヌクレオチドの少なくとも50%はシトシンまたはその類似体であり;
mは、整数であり、少なくとも3であり;
m=3のとき、Xはウラシルまたはその類似体であり、
m>3のとき、少なくとも3つの連続するウラシルまたはウラシルの類似体が存在しており;
nは1から40までの整数であり、
n=1のとき、Cはシトシンまたはその類似体であり、
n>1のとき、上記ヌクレオチドの少なくとも50%はシトシンまたはその類似体である)。
【0019】
本発明の一般式(I)または一般式(II)で表される核酸は、通常、比較的短い核酸分子である。したがって、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の長さは、通常、約5から100ヌクレオチドまで、5から90ヌクレオチドまで、または5から80ヌクレオチドまでであり、好ましくは約5から70ヌクレオチドまで、より好ましくは約8から60ヌクレオチドまで、さらに好ましくは約15から60ヌクレオチドまで、さらに好ましくは20から60ヌクレオチドまで、最も好ましくは30から60ヌクレオチドまでである(ただし、特定の実施形態については100ヌクレオチドよりも長くてもよく、例えば200ヌクレオチド以下である)。本発明の核酸の最大の長さは、例えば100ヌクレオチドであり、mは通常は98以下である。
【0020】
本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、RNAであってもよいし、またはDNA(例えばcDNA)であってもよい。また、該核酸は、一本鎖であってもよいし、または二本鎖であってもよい。二本鎖である場合は、ホモ二本鎖の形態であってもよいし、またはヘテロ二本鎖の形態であってもよい。また、上記核酸のどちらかは、直鎖状であってもよいし、環状であってもよい。上記核酸は、一本鎖RNAの形態であることが特に好ましい。本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、一本鎖RNAの形態であることが特に好ましい。
【0021】
本発明の一般式(I)で表される核酸におけるGは、グアノシンもしくはウラシルまたはそれらの類似体である。これに関して、グアノシンまたはウラシルのヌクレオチド類似体は、天然に存在するヌクレオチドの天然に存在しないバリアントとして定義される。したがって、グアノシンまたはウラシルの類似体は、(i)天然に存在するグアノシンまたはウラシルのヌクレオチドに追加されることや、または該ヌクレオチドから削除されることが好ましい、天然に存在しない官能基で、あるいは(ii)グアノシンまたはウラシルのヌクレオチドの天然に存在する官能基を置換する天然に存在しない官能基で、化学的に誘導体化されたヌクレオチドである。したがって、天然に存在するグアノシンまたはウラシルのヌクレオチドの各成分、すなわちオリゴヌクレオチドの骨格を形成する、塩基成分、糖(リボース)成分および/またリン酸(phosphate)成分は、修飾されてもよい。リン酸部分は、ホスホロアミダイト(phosphoramidate)、ホスホロチオエート、ペプチド ヌクレオチド、メチルホスホネートなどで置換されてもよい。
【0022】
したがって、グアノシンまたはウラシルの類似体には、特に限定されないが、アセチル化、メチル化、またはヒドロキシル化などによって化学的に変更されている任意の天然に存在する、または天然に存在しないグアノシンもしくはウラシルが含まれる。例えば、該類似体には、1−メチル−グアノシン、2−メチル−グアノシン、2,2−ジメチル−グアノシン、7−メチル−グアノシン、ジヒドロ−ウラシル、4−チオ−ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオ−ウラシル、5−(カルボキシ−ヒドロキシルメチル)−ウラシル、5−フルオロ−ウラシル、5−ブロモ−ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−ウラシル、5−メチル−2−チオ−ウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、5−メチルアミノメチル−ウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオ−ウラシル、5’−メトキシカルボニルメチル−ウラシル、5−メトキシ−ウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)が含まれる。上記類似体の調製は、例えば、米国特許第4,373,071号明細書、米国特許第4,401,796号明細書、米国特許第4,415,732号明細書、米国特許第4,458,066号明細書、米国特許第4,500,707号明細書、米国特許第4,668,777号明細書、米国特許第4,973,679号明細書、米国特許第5,047,524号明細書、米国特許第5,132,418号明細書、米国特許第5,153,319号明細書、米国特許第5,262,530号明細書、および米国特許第5,700,642号明細書から、当業者に公知である(上記文献の開示は、参照によって本明細書に完全に組み込まれる)。上記のような類似体の場合、本発明にとって特に好ましいことは、該類似体が、本発明の一般式(I)で表される核酸の免疫原性を増加させる、および/または導入された別の修飾を妨害しない類似体であることである。少なくとも1つの類似体は、フランキング配列Glおよび/またはGnに存在することができる。フランキング配列が少なくとも1つの類似体を含んでいる場合、場合によっては、フランキング配列Glおよび/またはGnのヌクレオチドの少なくとも10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%が、本明細書において定義されたような類似体の特性を示す。フランキング配列の全ヌクレオチドが、類似体であることが最も好ましい。この場合、該類似体は、最も好ましくは、同じ種類のヌクレオチドについて同一の類似体であってもよいし(例えば、全てのグアノシンヌクレオチドが、1−メチル−グアノシンとして提供されている)、または異なっていてもよい(例えば、少なくとも2つの異なるグアノシン類似体が、天然に存在するグアノシンヌクレオチドと置換されている)。lおよびnは、1から20であることが好ましく、1から10であることがより好ましく、2から8であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明の一般式(I)で表される核酸におけるヌクレオチドGの数は、lまたはnによって決定される。lおよびnは互いに独立して、それぞれ1から40までの整数である。ここで、lまたはn=1のとき、Gはグアノシンまたはその類似体であり、lまたはn>1のとき、少なくとも50%のヌクレオチドはグアノシンまたはその類似体である。例えば、特に限定されないが、lまたはn=4のとき、GlまたはGnは、例えば、GUGU、GGUU、UGUG、UUGG、GUUG、GGGU、GGUG、GUGG、UGGGまたはGGGGなどであってもよく、lまたはn=5のとき、GlまたはGnは、GGGUU、GGUGU、GUGGU、UGGGU、UGGUG、UGUGG、UUGGG、GUGUG、GGGGU、GGGUG、GGUGG、GUGGG、UGGGGまたはGGGGGなどであってもよい。本発明の一般式(I)で表される核酸のXmに隣接するヌクレオチドは、ウラシルでないことが好ましい。
【0024】
本発明の一般式(II)で表される核酸におけるCは、シトシンもしくはウラシル、またはそれらの類似体である。これに関して、シトシンまたはウラシルのヌクレオチド類似体は、天然に存在するシトシンまたはウラシルのヌクレオチドの、天然に存在しないバリアントとして定義される。したがって、シトシンまたはウラシルの類似体は、(i)天然に存在するシトシンまたはウラシルのヌクレオチドに追加されることや、または該ヌクレオチドから削除されることが好ましい、天然に存在しない官能基で、あるいは(ii)シトシンまたはウラシルのヌクレオチドの天然に存在する官能基を置換する天然に存在しない官能基で、化学的に誘導体化されたヌクレオチドである。したがって、天然に存在するシトシンまたはウラシルのヌクレオチドの各成分、すなわちオリゴヌクレオチドの骨格を形成する、塩基成分、糖(リボース)成分および/またリン酸成分は、修飾されてもよい。リン酸部分は、ホスホロアミダイト、ホスホロチオエート、ペプチド ヌクレオチド、メチルホスホネートなどで置換されてもよい。
【0025】
したがって、シトシンまたはウラシルの類似体には、特に限定されないが、アセチル化、メチル化、ヒドロキシル化などによって化学的に変更されている、任意の天然に存在するまたは天然に存在しないシトシンもしくはウラシルが含まれる。例えば、該類似体には、2−チオ−シトシン、3−メチル−シトシン、4−アセチル−シトシン、ジヒドロ−ウラシル、4−チオ−ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオ−ウラシル、5−(カルボキシ−ヒドロキシルメチル)−ウラシル、5−フルオロ−ウラシル、5−ブロモ−ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−ウラシル、5−メチル−2−チオ−ウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、5−メチルアミノメチル−ウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオ−ウラシル、5’−メトキシカルボニルメチル−ウラシル、5−メトキシ−ウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)が含まれる。上記類似体の調製は、例えば、米国特許第4,373,071号明細書、米国特許第4,401,796号明細書、米国特許第4,415,732号明細書、米国特許第4,458,066号明細書、米国特許第4,500,707号明細書、米国特許第4,668,777号明細書、米国特許第4,973,679号明細書、米国特許第5,047,524号明細書、米国特許第5,132,418号明細書、米国特許第5,153,319号明細書、米国特許第5,262,530号明細書、および米国特許第5,700,642号明細書から、当業者に公知である(上記文献の開示は、参照によって本明細書に完全に組み込まれる)。上記のような類似体の場合、本発明にとって特に好ましいことは、該類似体が、本発明の一般式(II)で表される核酸の免疫原性を増加させる、および/または導入された別の修飾を妨害しない類似体であることである。少なくとも1つの類似体は、フランキング配列Clおよび/またはCnにおいて存在することができる。フランキング配列が少なくとも1つの類似体を含んでいる場合、場合によっては、フランキング配列Clおよび/またはCnのヌクレオチドの少なくとも10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%が、本明細書において定義されているような類似体の特性を示す。フランキング配列の全ヌクレオチドが類似体であることが最も好ましい。この場合、該類似体は、最も好ましくは、同じ種類のヌクレオチドについて同一の類似体であってもよいし(例えば、フランキング配列の全てのシトシンヌクレオチドが、2−チオ−シトシンとして提供されている)、または異なっていてもよい(例えば、少なくとも2つの異なるシトシン類似体が、天然に存在するフランキング配列のシトシンヌクレオチドと置換されている)。lおよびnは、1から20であることが好ましく、1から10であることがより好ましく、2から8であることがさらに好ましい。
【0026】
同様に、本発明の一般式(II)で表される核酸のヌクレオチドCの数は、lまたはnによって決定される。lおよびnは互いに独立して、それぞれ1から40までの整数である。ここで、lまたはn=1のとき、Cはシトシンまたはその類似体であり、lまたはn>1のとき、少なくとも50%のヌクレオチドはシトシンまたはその類似体である。例えば、特に限定されないが、lまたはn=4のとき、ClまたはCnは、例えば、CUCU、CCUU、UCUC、UUCC、CUUC、CCCU、CCUC、CUCC、UCCC、またはCCCCなどであってもよく、lまたはn=5のとき、ClまたはCnは、例えばCCCUU、CCUCU、CUCCU、UCCCU、UCCUC、UCUCC、UUCCC、CUCUC、CCCCU、CCCUC、CCUCC、CUCCC、UCCCCまたはCCCCCなどであってもよい。本発明の一般式(II)で表される核酸のXmに隣接するヌクレオチドは、ウラシルでないことが好ましい。
【0027】
本出願における用語「同一性」は、配列が、参照配列に対して比較され、同一性の割合がそれらを比較することによって決定されることを意味する。例えば、2つの核酸配列の同一性の割合を決定するために、まず各配列を、各配列のサブ配列の比較ができるように互いに相関させて配置する(アライメント)。これのためには、例えば、ギャップを第1核酸配列の配列に導入して、ヌクレオチドを第2核酸配列の対応する位置と比較してもよい。第1核酸配列のある位置が、第2配列の位置に存在するヌクレオチドと同じヌクレオチドで占有されているとき、2つの配列は、その位置において同一である。2つの配列間の同一性の割合は、同一の位置の数を配列で割った関数である。例えば、特定の核酸を長さが既定されている参照配列と比較したときの、具体的な配列同一性を考えた場合、この同一性の割合は、参照核酸に対して相対的に表される。それ故、例えば、100ヌクレオチドの長さの参照配列と50%の配列同一性を有する核酸をまず考えた場合、該核酸は、参照核酸の50ヌクレオチドの長さの部分と完全に同一な、50ヌクレオチドの長さの核酸であってもよい。しかし、上記核酸は、その全長に対して、参照配列と50%の同一性を有する100ヌクレオチドの長さの核酸であってもよい(すなわちこの場合、その全長に対して参照配列と50%同一な核酸であってもよい)。また、上記核酸は、200ヌクレオチドの長さの核酸であって、該核酸の100ヌクレオチドの長さの部分において、100ヌクレオチドの長さの参照核酸と完全に同一である核酸であってもよい。他の核酸も必然的に、これらの基準を同様に満たす。
【0028】
数学的アルゴリズムを用いることによって、2つの配列の同一性の割合を決定することができる。2つの配列を比較するために使用することができる数学的アルゴリズムとしては、「Karlinら(1993), PNAS USA, 90:5873-5877」のアルゴリズムが好ましいが、これに限定されない。そのようなアルゴリズムは、NBLASTプログラムに組み込まれており、このプログラムを用いれば、本発明の配列と所望の同一性を有する配列を同定することができる。上記のようなギャップが挿入されたアライメントを得るために、「Altschulら (1997), Nucleic Acids Res, 25:3389-3402」に記載されているような、「Gapped BLAST」プログラムを使用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを使用する場合は、特定のプログラム(NBLASTなど)の初期パラメーターを使用することができる。また、「ジェネティックコンピューティンググループ(Genetic Computing Group)」から提供された、GAP(グローバルアライメントプログラム)の第9版を使って配列を並べることができる。このGAPでは、(ギャップの一番目のゼロに対する)ギャップオープンペナルティーが−12であり、(ギャップにおける追加の連続する各ゼロに対する)ギャップエクステンションペナルティが−4である、初期設定の(BLOSUM62)マトリックス(値−4〜+11)が使用される。アライメントの後、同一性の割合は、要求された配列内の核酸の割合として、一致した数を表すことによって計算される。また、2つの核酸配列の同一性の割合を決定するための記載された方法は、適切なプログラムを使用することにより、アミノ酸配列にも同様に適用することができる。
【0029】
また一般式(I)については、lまたはn>1のとき、ヌクレオチドの少なくとも60%、70%、80%、90%、または100%(でさえも)が、上記で定義されているようなグアノシンまたはその類似体であることが好ましい。(フランキング配列Glおよび/またはGnにおけるグアノシンの割合が、100%未満であるとき)フランキング配列Glおよび/またはGnにおける、100%までの残りのヌクレオチドは、上記で定義されているようなウラシルまたはその類似体である。また、lおよびnは互いに独立して、それぞれ2から30までの整数であることが好ましく、2から20までの整数であることがより好ましく、2から15までの整数であることがさらに好ましい。lまたはnの下限は、必要に応じて変更可能であり、少なくとも1であるが、少なくとも2であることが好ましく、少なくとも3、4、5、6、7、8、9または10であることがより好ましい。この定義は、一般式(II)にも同様に適応される。
【0030】
本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸におけるXは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジンもしくはシトシン、またはそれらの類似体である。これに関して、ヌクレオチド類似体は、天然に存在するヌクレオチドの天然に存在しないバリアントとして定義される。したがって、類似体は、(i)天然に存在するヌクレオチドに追加されることや、または該ヌクレオチドから削除されることが好ましい、天然に存在しない官能基で、あるいは(ii)ヌクレオチドの天然に存在する官能基を置換する天然に存在しない官能基で、化学的に誘導体化されたヌクレオチドである。したがって、天然に存在するヌクレオチドの各成分、すなわちオリゴヌクレオチドの骨格を形成する、塩基成分、糖(リボース)成分および/またリン酸成分は、修飾されてもよい。リン酸部分は、ホスホロアミダイト、ホスホロチオエート、ペプチド ヌクレオチド、メチルホスホネートなどで置換されてもよい。本発明の核酸が少なくとも1つの類似体を含んでいる場合、「X」の全ヌクレオチドのうち好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも70%、一層好ましくは少なくとも90%が、本明細書において定義されたような特性を示す。「Xm」によって形成されるコア配列内の特定の核酸種を置換する類似体は、同一であってもよい。例えば、コア配列に存在する全シトシンヌクレオチドが、2−チオ−シトシンによって形成されてもよい。あるいは、「Xm」によって形成されるコア配列内の特定の核酸種を置換する類似体は、特定のヌクレオチドについて異なっていてもよい。例えば、少なくとも2つの異なるシトシン類似体が、コア配列内に含まれていてもよい。
【0031】
グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジン、シトシンの類似体は、特に限定されないが、アセチル化、メチル化、ヒドロキシル化などによって化学的に変更されている、任意の天然に存在するかまたは天然に存在しないグアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジンもしくはシトシンを含んでいる。該類似体は、1−メチル−アデノシン、2−メチル−アデノシン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニル−アデノシン、N6−メチル−アデノシン、N6−イソペンテニル−アデノシン、2−チオ−シトシン、3−メチル−シトシン、4−アセチル−シトシン、2,6−ジアミノプリン、1−メチル−グアノシン、2−メチル−グアノシン、2,2−ジメチル−グアノシン、7−メチル−グアノシン、イノシン、1−メチル−イノシン、ジヒドロ−ウラシル、4−チオ−ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオ−ウラシル、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)−ウラシル、5−フルオロ−ウラシル、5−ブロモ−ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−ウラシル、5−メチル−2−チオ−ウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、5−メチルアミノメチル−ウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオ−ウラシル、5’−メトキシカルボニルメチル−ウラシル、5−メトキシ−ウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、クエオシン(queosine)、β−D−マンノシル−クエオシン、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、およびイノシンが含まれる。上記類似体の調製は、例えば、米国特許第4,373,071号明細書、米国特許第4,401,796号明細書、米国特許第4,415,732号明細書、米国特許第4,458,066号明細書、米国特許第4,500,707号明細書、米国特許第4,668,777号明細書、米国特許第4,973,679号明細書、米国特許第5,047,524号明細書、米国特許第5,132,418号明細書、米国特許第5,153,319号明細書、米国特許第5,262,530号明細書、および米国特許第5,700,642号明細書から、当業者に公知である。上記のような類似体の場合、本発明とっては、該類似体が、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の免疫原性を増加させる、および/または導入された別の修飾を妨害しないものであることが特に好ましい。
【0032】
本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸におけるXの数は、mによって決定される。mは整数であり、一般的には少なくとも3、4、5、6、7、8、9または10である。m=3のとき、Xはウラシルまたはその類似体であり、m>3のとき、少なくとも3つの直接連続するウラシルまたはその類似体が存在する。本願においては、上記少なくとも3つの直接連続するウラシルの配列を「単調ウラシル配列」と称する。単調ウラシル配列は、一般的に、少なくとも3、4、5、6、7、8、9または10、あるいは10−15、15−20、20−25、25−30、30−50または50−90の、ウラシルもしくは場合によっては上記で定義されたようなウラシル類似体の長さを有している。そのような単調ウラシル配列は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に少なくとも1回存在している。それ故例えば、少なくとも3つのウラシルまたはその類似体を有する単調ウラシル配列が、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上(好ましくは2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上)存在することが可能である。また、上記単調ウラシル配列は、少なくとも1つのグアノシン、アデノシン、チミジン、シトシンまたはそれらの類似体によって中断されていてもよい。例えば、m=3のとき、XmはUUUを示す。またm=4のとき、Xmは、例えば特に限定されないが、UUUA、UUUG、UUUC、UUUU、AUUU、GUUUまたはCUUUなどであってもよい。n=10のとき、Xmは、例えば特に限定されないが、UUUAAUUUUC、UUUUGUUUUA、UUUGUUUGUU、UUGUUUUGUU、UUUUUUUUUUなどであってもよい。本発明の一般式(I)で表される核酸のGlまたはGnに隣接する核酸は、ウラシルまたはその類似体を含んでいることが好ましい。同様に、本発明の一般式(II)で表される核酸のClまたはCnに隣接する核酸は、ウラシルまたはその類似体を含んでいることが好ましい。
【0033】
m>3のとき、一般的には、ヌクレオチドの少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%または100%(でさえも)が、上記に定義されたようなウラシルまたはその類似体である。(配列Xmでのウラシルの割合が、100%未満であるとき)配列Xmにおける、100%までの残りのヌクレオチドは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジンまたはシトシン、あるいはそれらの上記で定義されているような類似体である。またmは整数であり、少なくとも4、5、6、7、8、9または10あるいは10−15、15−20、20−25、25−30、30−50または50−90である。
【0034】
本発明の一般式(I)で表される核酸は、以下の配列番号1−80に示される配列の少なくとも1つを含んでいることが特に好ましい:
GGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号1);
GGGGGUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号2);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号3);
GUGUGUGUGUGUUUUUUUUUUUUUUUUGUGUGUGUGUGU(配列番号4);
GGUUGGUUGGUUUUUUUUUUUUUUUUUGGUUGGUUGGUU(配列番号5);
GGGGGGGGGUUUGGGGGGGG(配列番号6);
GGGGGGGGUUUUGGGGGGGG(配列番号7);
GGGGGGGUUUUUUGGGGGGG(配列番号8);
GGGGGGGUUUUUUUGGGGGG(配列番号9);
GGGGGGUUUUUUUUGGGGGG(配列番号10);
GGGGGGUUUUUUUUUGGGGG(配列番号11);
GGGGGGUUUUUUUUUUGGGG(配列番号12);
GGGGGUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号13);
GGGGGUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号14);
GGGGUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号15);
GGGGUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号16);
GGUUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号17);
GUUUUUUUUUUUUUUUUUUG(配列番号18);
GGGGGGGGGGUUUGGGGGGGGG(配列番号19);
GGGGGGGGGUUUUGGGGGGGGG(配列番号20);
GGGGGGGGUUUUUUGGGGGGGG(配列番号21);
GGGGGGGGUUUUUUUGGGGGGG(配列番号22);
GGGGGGGUUUUUUUUGGGGGGG(配列番号23);
GGGGGGGUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号24);
GGGGGGGUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号25);
GGGGGGUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号26);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号27);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号28);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号29);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号30);
GGUUUUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号31);
GGGGGGGGGGGUUUGGGGGGGGGG(配列番号32);
GGGGGGGGGGUUUUGGGGGGGGGG(配列番号33);
GGGGGGGGGUUUUUUGGGGGGGGG(配列番号34);
GGGGGGGGGUUUUUUUGGGGGGGG(配列番号35);
GGGGGGGGUUUUUUUUGGGGGGGG(配列番号36);
GGGGGGGGUUUUUUUUUGGGGGGG(配列番号37);
GGGGGGGGUUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号38);
GGGGGGGUUUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号39);
GGGGGGGUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号40);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号41);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号42);
GGGGUUUUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号43);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号44);
GUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUG(配列番号45);
GGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号46);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号47);
GGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号48);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号49);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号50);
GGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号51);
GGGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGGG(配列番号52);
GGGGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGGGG(配列番号53);
GGUUUGG(配列番号54);
GGUUUUGG(配列番号55);
GGUUUUUGG(配列番号56);
GGUUUUUUGG(配列番号57);
GGUUUUUUUGG(配列番号58);
GGUUUUUUUUGG(配列番号59);
GGUUUUUUUUUGG(配列番号60);
GGUUUUUUUUUUGG(配列番号61);
GGUUUUUUUUUUUGG(配列番号62);
GGUUUUUUUUUUUUGG(配列番号63);
GGUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号64);
GGUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号65);
GGUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号66);
GGGUUUGGG(配列番号67);
GGGUUUUGGG(配列番号68);
GGGUUUUUGGG(配列番号69);
GGGUUUUUUGGG(配列番号70);
GGGUUUUUUUGGG(配列番号71);
GGGUUUUUUUUGGG(配列番号72);
GGGUUUUUUUUUGGG(配列番号73);
GGGUUUUUUUUUUGGG(配列番号74);
GGGUUUUUUUUUUUGGG(配列番号75);
GGGUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号76);
GGGUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号77);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号78);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号79);
GGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGG(配列番号80)。
【0035】
本発明の一般式(II)で表される核酸は、以下の配列番号81−83に示される配列の少なくとも1つを含んでいることが特に好ましい:
CCCUUUUUUUUUUUUUUUCCCUUUUUUUUUUUUUUUCCCUUUUUUUUUUUUUUUCCC(配列番号81);
CCCUUUCCCUUUCCCUUUCCCUUUCCCUUUCCCUUUCCCUUUCCCUUUCCC(配列番号82);
CCCUUUUUUUUUUUUUUUCCCCCCUUUUUUUUUUUUUUUCCC(配列番号83)。
【0036】
本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸配列は、ウイルスまたは細菌起源の、天然にもしくは合成によって調製された配列ではないことが好ましい。
【0037】
本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、通常、「安定化オリゴヌクレオチド」として提供される。この「安定化オリゴヌクレオチド」は、(例えばエキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼによる)インビボでの分解に対して耐性がある、オリゴリボヌクレオチドまたはオリゴデオキシリボヌクレオチドのことである。そのような安定化は、例えば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の修飾されたリン酸骨格によってもたらされる。これに関して好ましく使用されるヌクレオチドは、ホスホロチオエート修飾されたリン酸骨格を含んでいる。ホスホロチオエート修飾されたリン酸骨格では、該リン酸骨格に含まれているリン酸の酸素の少なくとも1つが、硫黄原子で置換されていることが好ましい。他の安定化オリゴヌクレオチドには、例えば、非イオン性類似体が含まれる。該非イオン性類似体としては、例えば、帯電したホスホネートの酸素が、アルキル基またはアリール基で置換されているアルキルホスホネートおよびアリールホスホネート、あるいはホスホジエステル、および帯電した酸素残基がアルキル化形態で存在しているアルキルホスホトリエステルなどが挙げられる。
【0038】
本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸も同様に、安定化されることができる。上述したように、任意の核酸(DNAまたはRNAなど)が、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に、原理上使用されることができる。しかしながら安全面を考えると、そのような核酸にはRNAが使用されることが好ましい。詳細には、RNAは、トランスフェクトされた細胞のゲノムに安定に組み込まれるという危険性を孕んでいない。さらにRNAは、インビボにおいて実質的により容易に分解する。また抗RNA抗体はこれまで検出されていない。これは、DNAの半減期と比べて、RNAのインビボでの半減期が比較的短いためであると考えられる。しかし、DNAと比べて、RNAは、主に、RNase(リボヌクレアーゼ)と呼ばれるRNA分解酵素のために、溶液中の安定性に著しく乏しい。リボヌクレアーゼが極少量混入するだけでも、溶液中のRNAは完全に分解される。そのようなRNaseの混入は、一般的には、特別な処置(具体的には、ジエチルピロカーボネート(DEPC)による処置)によってのみ除去されることができる。したがって、細胞の細胞質におけるmRNAの天然の分解は、非常に精巧に調節されている。このことに関して、先行技術では多くの機構が知られている。これによれば、インビボでは末端構造が、通常、mRNAにとって極めて重要である。天然に存在するmRNAの5’末端には、「キャップ構造」(修飾されたグアノシンヌクレオチド)と呼ばれる構造が大抵存在し、3’末端には、ポリAテールと呼ばれる、200アデノシンヌクレオチド以下の配列が存在する。
【0039】
このため、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を、特にRNAとして提供する場合は、いわゆる「5’キャップ」構造を加えることによって、該核酸を、RNaseよる分解に対して安定化することができる。これに関して、「5’キャップ」構造として特に好ましいものは、m7G(5’)ppp(5’(A,G(5’)ppp(5’)A、またはG(5’)ppp(5’)Gである。しかし、そのような修飾は、次の(i)または(ii)の場合にのみ導入される。すなわち(i)上記修飾が、(修飾されていないまたは化学的に修飾された)本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の免疫特性を妨害しない場合、または(ii)脂質修飾などの修飾が、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の5’末端にすでに導入されていない場合である。
【0040】
また、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を、特にRNAとして提供する場合は、該核酸の3’末端を、少なくとも50のアデノシンリボヌクレオチド、好ましくは少なくとも70のアデノシンリボヌクレオチド、より好ましくは少なくとも100のアデノシンリボヌクレオチド、特に好ましくは少なくとも200のアデノシンリボヌクレオチドの配列(いわゆる「ポリAテール」)によって修飾することができる。この場合も同様に、そのような修飾は、次の(i)または(ii)の場合にのみ導入される。すなわち、(i)上記修飾が、(修飾されていないまたは化学的に修飾された)本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の免疫特性を妨害しない場合、または(ii)脂質修飾などの修飾が、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端にすでに導入されていない場合である。上述した修飾の両方、つまり「5’キャップ」構造の挿入、または3’末端における「ポリAテール」の挿入によって、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の、インビボにおける成熟前の分解が阻害される。これにより、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、インビボにおいて安定化される。
【0041】
特定の実施形態によれば、本発明の一般式(I):GlXmGn、または一般式(II):ClXmCnで表される核酸は、脂質修飾を含んでいてもよい。本発明のそのような脂質修飾された核酸は、上記で定義されているような本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、該本発明の核酸に共有連結されている少なくとも1つのリンカー、およびそれぞれのリンカーに共有連結されている少なくとも1つの脂質を、典型的に含んでいる。第2の態様によれば、脂質修飾された本発明の核酸は、上記で定義されたような(少なくとも1つの)本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、および該本発明の核酸に(リンカーを介することなく)共有連結されている少なくとも1つの(二官能性)脂質を含んでいる。第3の態様によれば、脂質修飾された本発明の核酸は、上記で定義されたような本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、該本発明の核酸に共有連結されている少なくとも1つのリンカー、それぞれのリンカーに共有連結されている少なくとも1つの脂質、および上記本発明の核酸に(リンカーを介することなく)共有連結されている少なくとも1つの(二官能性)脂質を含んでいる。
【0042】
脂質修飾された本発明の核酸に含まれる脂質は、典型的には、それ自体生物学的に活性であることが好ましい脂質または親油性残基である。そのような脂質は、例えば以下のような天然物質または天然化合物を含んでいることが好ましい;ビタミン(例えばα−トコフェロール(ビタミンE)(RRR−α−トコフェロール(かつてのD−α−トコフェロール)、L−α−トコフェロール、ラセミ化合物であるD,L−α−トコフェロール、ビタミンEのコハク酸塩(VES)など)、またはビタミンAおよびその誘導体(例えばレチノイン酸、レチノール)、ビタミンDおよびその誘導体(例えばビタミンDおよびそのエルゴステロール前躯体)、ビタミンEおよびその誘導体、ビタミンKおよびその誘導体(例えばビタミンKおよび関連するキノンまたはフィトール化合物))、あるいはステロイド(胆汁酸(コール酸、デオキシコール酸、デヒドロコール酸など)、コーチゾン、ジゴキシゲニン、テストテロン、コレステロールまたはチオコレステロールなど)。また、本発明の範囲に含まれる脂質もしくは脂質残基には、特に限定されないが、ポリアルキレングリコール(「Oberhauserら, Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533」)、脂肪族基、リン脂質、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロール、スフィンゴ脂質、セレブロシド、ガングリオシド、トリエチルアンモニウム、1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(「Manoharanら, Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651」;「Sheaら, Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777」)、ポリアミン、またはポリアルキレングリコール(例えばポリエチレングリコール(PEG)(「Manoharanら, Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969」)、ヘキサエチレングリコール(HEG)など)、パルミチンまたはパルミチル残基(「Mishraら, Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229」)、オクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール残基(「Crookeら, J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923」)や、さらにはワックス、テルペン、脂環式炭化水素、飽和脂肪酸残基、および単不飽和または多不飽和脂肪酸残基などが含まれる。上記脂肪族基としては、例えば、C1−C20−アルカン、C1−C20−アルケン、またはC1−C20−アルカノール化合物(例えば、ドデカンジオール、ヘキサデカノール、またはウンデシル残基などが挙げられる(「Saison-Behmoarasら, EMBO J, 1991, 10, 111」;「Kabanovら, FEBS Lett., 1990, 259, 327」;「Svinarchukら, Biochimie, 1993, 75, 49」)。上記リン脂質としては、例えば、ホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジルグリセロール、ホスファチリジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンなどが挙げられる。
【0043】
上記脂質と上記本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸との連結は、原理上、任意のヌクレオチドにおいて、本発明の核酸の任意のヌクレオチドの塩基成分または糖成分において、3’および/または5’末端において、ならびに/あるいは、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸のリン酸骨格において、実施されることができる。本発明では、本発明の核酸が、その3’末端および/または5’末端において、脂質で末端修飾されることが特に好ましい。末端修飾には、配列内修飾を上回る多くの利点がある。配列内修飾は、ハイブリダイゼーションに影響を及ぼす可能性があり、立体構造に厳密な残基の場合には、ハイブリダイゼーションへ悪影響を与える可能性がある。他方では、末端のみが修飾されている脂質修飾された本発明の核酸を人工的に調製する場合、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の合成は、多量に入手可能な市販のモノマーを使用して実行されることができる。またその際には、先行技術において公知の合成プロトコールを使用することができる。
【0044】
第1の好ましい実施形態によれば、本発明の核酸と、使用される少なくとも1つの脂質とは、「リンカー」を介して連結される(該リンカーは、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に共有連結される)。本発明の範囲に含まれるリンカーは、典型的には、少なくとも2つの反応基、場合によっては3、4、5、6、7、8、9、10、10−20、20−30またはそれ以上の反応基を有している。該反応基は、例えば、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基などから選択されるものである。該反応基は、上記本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸(例えばRNAオリゴヌクレオチド)に結合する役目を担うことが好ましい。この反応基は、例えば、DMT基(ジメトキシトリチルクロライド)として、Fmoc基として、MMT(モノメトキシトリチル)基として、TFA(トリフルオロ酢酸)基として保護された形態で存在することができる。また、例えばアルキルチオール(3−チオプロパノールなど)の硫黄基が、ジスルフィドによって保護されることができる。あるいは、硫黄原子は、活性化成分(2−チオピリジン)などによって保護されることができる。本発明によれば、1つ以上の別の反応基は1つ以上の脂質の共有結合に役立つ。それ故、第1の実施形態によれば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、共有結合されたリンカーを介して、該核酸1つ当たり、少なくとも1つの脂質(例えば、1、2、3、4、5、5−10、10−20、20−30またはそれ以上の脂質)と結合できることが好ましく、少なくとも3−8またはそれ以上の脂質と結合できることが特に好ましい。これによれば、結合された各脂質は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の異なる位置において、互いに別々に結合されることができるし、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の1つ以上の位置において、複合体の形態で存在することができる。リンカーの追加の反応基は、担体物質(固相など)へ、直接的にまたは間接的に(開裂可能に)結合するために使用されることができる。本発明の好ましいリンカーとしては、例えば、グリコール、グリセロールおよびグリセロールの誘導体、2−アミノブチル−1,3−プロパンジオール、および2−アミノブチル−1,3−プロパンジオールの誘導体/骨格、ピロリジンリンカーまたはピロリジン含有有機分子(特に3’末端における修飾のため)が挙げられる。本発明では、グリセロールまたはグリセロール誘導体(C3アンカー)、または2−アミノブチル−1,3−プロパンジオール誘導体/骨格(C7アンカー)が、リンカーとして使用されることが特に好ましい。脂質修飾が、エーテル結合を介して導入されることができるとき、リンカーとしては、グリセロール誘導体(C3アンカー)が特に好ましい。脂質修飾が、アミド結合またはウレタン結合を介して導入されるとき、例えば2−アミノブチル−1,3−プロパンジオール骨格(C7アンカー)が、例えば好ましい。これに関して、リンカーと本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸との間に形成される結合の性質は、それが、アミダイト化学反応の化学物質および条件と適合するようなものであることが好ましい。つまり、上記結合の性質が、酸または塩基に対して不安定ではないことが好ましい。特に好ましい結合は、合成によって容易に得ることができ、核酸合成法のアンモニア開裂処置によって加水分解されない結合である。適切な結合は、原理上、それら全てに対応する適切な結合であり、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合およびエーテル結合が好ましい。出発物質が容易に入手できること(合成工程が僅かであること)に加えて、酵素による加水分解に対する生物学的安定性が比較的高いという理由から、エーテル結合が特に好ましい。
【0045】
第2の好ましい実施形態によれば、(少なくとも1つの)本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、少なくとも1つの上記のような(二官能性)脂質に直接的に(つまり、上記のようなリンカーを用いることなく)連結されている。この場合、本発明に使用される(二官能性)脂質は、少なくとも2つの反応基または、場合によっては3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の反応基を含んでいることが好ましい。第1反応基は、上記脂質を本明細書に記載の担体物質に、直接的にまたは間接的に結合させる役目を担うものであり、少なくとも1つの別の反応基は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に結合する役目を担うものである。それ故、第2の実施形態によれば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、該核酸1つ当たり、(リンカーを介することなく直接的に)少なくとも1つの脂質(例えば、1、2、3、4、5、5−10、10−20、20−30またはそれ以上の脂質)と結合できることが好ましく、少なくとも3−8またはそれ以上の脂質と結合できることが特に好ましい。結合された各脂質は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の異なる位置において、互いに別々に結合されることができるし、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の1つ以上の位置において、複合体の形態で存在することができる。また、第2の実施形態によれば、少なくとも1つの本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸(例えば、場合によっては、3、4、5、6、7、8、9、10、10−20、20−30またはそれ以上の本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸)は、上記のような脂質に、その反応基を介して結合されることができる。この第2の実施形態に使用され得る脂質は、(好ましくは末端または場合によっては分子内において)共役することができる(二官能性)脂質を含んでいることが特に好ましい。そのような脂質としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)およびその誘導体、ヘキサエチレングリコール(HEG)およびその誘導体、アルカンジオール、アミノアルカン、チオアルカノールなどが挙げられる。上記のような、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と(二官能性)脂質との結合の性質は、第1の好ましい実施形態において記載されているようなものであることが好ましい。
【0046】
第3の実施形態によれば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と少なくとも1つの上記のような脂質とは、上記実施形態の両方を同時に実現するように連結される。例えば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、該核酸のある位置では、(第1の実施形態と同様に)リンカーを介して少なくとも1つの脂質に連結することができ、該核酸の異なる位置では、(第2の実施形態と同様に)リンカーを使用することなく少なくとも1つの脂質に直接的に連結されることができる。例えば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端では、少なくとも1つの上記のような脂質は、リンカーを介して上記核酸に共有連結されることができ、当該本発明の核酸の5’末端では、上記ような脂質はリンカーを介することなく、該核酸に共有連結されることができる。また、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の5’末端では、少なくとも1つの上記のような脂質は、リンカーを介して上記核酸に共有連結されることができ、当該本発明の核酸の3’末端では、上記ような脂質はリンカーを介することなく、該核酸に共有連結されることができる。同様に、共有連結は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の末端において実施されるだけでなく、上記のように分子内において実施されることもできる。共有連結は、例えば、上記核酸の、3’末端および分子内において実施されてもよいし、5’末端および分子内において実施されてもよいし、3’末端および5’末端ならびに分子内において実施されてもよいし、分子内のみにおいて実施されてもよい。
【0047】
脂質修飾された本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、種々の方法によって得ることができる。脂質修飾は、原理上、上記のように本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の任意の位置に導入されることができる。例えば、脂質修飾は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端および/もしくは5’末端またはリン酸骨格、ならびに/あるいは本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の任意のヌクレオチドの任意の塩基または糖に導入されてもよい。本発明では、脂質修飾は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端および/または5’末端における末端脂質修飾であることが好ましい。本発明によれば、そのような末端化学修飾によって、多くの異なる誘導体化核酸を得ることができる。本発明に包含されるバリアントの例は図4に示されている。そのような脂質修飾された本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を調製する方法は、脂質修飾の位置に基いて選択されることが好ましい。
【0048】
例えば、脂質修飾が、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端において実施される場合、該脂質修飾は、典型的には、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を調製する前または後のどちらかにおいて、実施される。本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の調製は、核酸の直接的な合成によって、または場合によっては合成済の核酸を加えるか、他の供給源から単離されたサンプルに由来する核酸を加えることによって、実施され得る。
【0049】
第1の態様によれば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、脂質が導入される前に、先行技術において知られている核酸を合成するための方法を一般的に使用することによって直接的に合成される。そのためには、出発物質であるヌクレオシドが、例えば共役分子(スクシニル残基など)を介して、固相に結合されることが好ましく、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、例えばアミダイト化学反応の製法によって合成される。それから、上記のようなリンカーは、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端に、好ましくはリンカーの第1反応基を介して共有結合される。その後、上記のような脂質は、該リンカーに、リンカーの第2反応基を介して共有連結されることができる。また、リンカーが本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端に結合される前に、該リンカーは、脂質に共有連結されてもよい。この場合、リンカーの第1反応基と、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’末端との結合のみが必要になる。本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の合成後、または脂質の結合後に、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、上記固相から分離されて、脱保護されることができる。合成が溶液中で実施された場合、未反応の反応物質ならびに溶媒および望ましくない副産物を除去するための洗浄工程および精製工程が、脂質修飾された本発明の核酸の合成後に(場合によっては担体物質からの分離前に)実施されてもよい。
【0050】
さらに別の態様によれば、上記のような3’脂質修飾された本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、(i)リンカーの反応基に脂質が導入された後に合成されるか、あるいは(ii)一般式(I)もしくは一般式(II)で表される合成済の核酸として、またはサンプルから単離された一般式(I)もしくは一般式(II)で表される核酸として、リンカーの反応基に結合される(図5参照)。そのためには、例えば、上記のようなリンカーの第1反応基が、上記のような脂質と反応されてもよい。それから、第2工程では、上記リンカーの第2反応基は、酸に安定な保護基(DMT、Fmocなど)を提供される。これにより、その後に、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を、上記反応基に結合させることができる。次いで上記リンカーは、固相に直接的に結合されてもよいし、または該リンカーの第3反応基を介して間接的に結合されてもよい。また例えば、リンカーと固相との両方に共有結合することができる(共役)分子を介して、間接的に結合されてもよい。そのような(共役)分子としては、例えば上記のようなスクシニル残基が挙げられる。それから、通常は上記リンカーの第3反応基における保護基が除去され、これにより利用可能になった反応基において、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸が結合もしくは合成される。最終的に、脂質修飾された本発明の核酸は、典型的には、担体物質から開裂され、さらに場合によっては核酸における保護基は除去される。しかし、場合によってはさらに脂質が、本発明の共役された核酸の3’末端に共役されることも可能である。この共役は、上記工程のうちの1つに従って実施されることが好ましい。
【0051】
上述したこの態様のバリアントによれば、上記のようなリンカーは、第1反応基を介して、固相に直接的にまたは間接的に結合することができる。それから、まず、酸に安定な保護基は、該リンカーの第2反応基に結合される。該保護基が第2反応基に結合された後に、まず上記のような脂質は、リンカーの第3反応基に結合されることができる。次いで、同様にして以下の(1)〜(3)が実施されることが好ましい。(1)リンカーの第3反応基における酸に安定な保護基が除去され、(2)これによって利用可能になった第3反応基において、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸が結合または合成され、(3)脂質修飾された本発明の核酸が、担体物質から開裂される(さらに場合によっては、該核酸における保護基が除去される)。
【0052】
上記のような、3’脂質修飾された本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の特に好ましい実施形態によれば、そのような脂質修飾された本発明の核酸は、グリセロール基本物質(C3アンカー)を基礎とする3つの反応基(三官能性アンカー化合物)と単官能性脂質とを有する、リンカーを介して合成されることができる。該単官能性脂質としては、パルミチル残基、コレステロール、またはトコフェロールなどが挙げられる。上記リンカーを合成するための出発材料として使用され得るものとしては、例えば、アルファ,ベータ−イソプロピリデン−グリセロール(ケタール保護基を含むグリセロール)が挙げられる。好ましくは、アルファ,ベータ−イソプロピリデン−グリセロールを、まず水素化ナトリウムによりアルコラートへ変換し、さらにウィリアムソン合成によってヘキサデシルブロミドおよび脂質と反応させることにより、対応するエーテルを形成させる。また、エーテル結合を、異なる方法により第1工程において連結させることができる。例えば、α,β−イソプロピリデン−グリセロールのトシレートを形成し、該トシレートを脂質の反応基(例えば酸性プロトン)と反応させることにより、対応するエーテルを形成させる。第2段階では、ケタール保護基を酸(酢酸、希塩酸など)により除去することができ、それからジオールの1級ヒドロキシ基を、ジメトキシトリチルクロライド(DMT−Cl)によって選択的に保護することができる。最終段階では、上記工程において得られた産物を無水コハク酸と反応させて、DMAPを触媒として用いて、コハク酸を形成させることが好ましい。そのようなリンカーは、例えば脂質としてのパルミチル残基またはトコフェロールの結合にとって、特に適している(図5参照)。
【0053】
別の態様によれば、上記のような本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の3’脂質修飾は、上記のようなリンカーを使用することなく、(二官能性)脂質(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはヘキサエチレングリコール(HEG)など)を使用して実施される。上記二官能性脂質は、典型的には、上記のような官能基を2つ有している。二官能性脂質の一方の末端は、(共役)分子(例えば塩基に不安定なスクシニルアンカーなど)を介して担体物質に結合できることが好ましく、二官能性脂質のもう一方の末端では、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を合成することができる(「E. Bayer, M. Maier, K. Bleicher, H.-J. Gaus Z. Naturforsch. 50b (1995) 671」)。上記で使用されているような、第3の官能基の付与とリンカーとをそれぞれ省略することにより、そのような脂質修飾された本発明の核酸の合成は、単純化される(図6参照)。調製に関しては、典型的にはまず、本発明に使用される二官能性脂質(例えばポリエチレングリコール)を、保護基(例えばDMT)で一置換する。第2段階では、通常、反応基において保護された脂質を、DMAPの触媒作用を利用して、無水コハク酸でエステル化して、コハク酸を形成する。その後、第3段階では、二官能性脂質を担体物質に共役させて、脱保護することができる。それから、第4工程では、上記のような方法に従って、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を合成する。場合によっては、それから、合成された本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を脱保護して、脂質修飾された核酸を担体物質から開裂する。
【0054】
もう1つ別の好ましい実施形態によれば、上記のような、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の脂質修飾は、該核酸の5’末端において実施される。これに関しては、典型的には、該脂質修飾を、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の提供後、または該核酸の合成後のどちらかに実施する。上記のような、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の提供は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を直接的に合成することによって、あるいは一般式(I)もしくは一般式(II)のどちらかで表される合成済核酸、またはサンプルから単離されたは一般式(I)もしくは一般式(II)のどちらかで表される核酸を加えることによって、実施することができる。本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の合成は、先行技術において公知の核酸合成法に基く上記方法と同じように行われることが好ましく、ホスホロアミダイト法に基く上記方法と同じように行われることがより好ましい(例えば図7参照)。
【0055】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の脂質修飾は、核酸合成のためのホスホロアミダイト法が終わった後に、本発明の核酸の5’末端においてホスホロアミダイトを特別に修飾することによって行われる。合成によって比較的容易に得ることができる、そのようなアミダイトを、従来どおり最後のモノマーとして、市販の核酸または合成済核酸と共役させる。これらの反応は、反応速度が比較的速いこと、および共役収率が非常に高いことを特徴としている。修飾されたアミダイトの合成は、ホスホロアミダイト(例えば、ベータ−シアノエチル−モノクロロホスホロアミダイト(亜リン酸モノ−(2−シアノエチルエステル)−ジイソプロピル−アミドクロリド))を、例えば無水ジクロロメタンなどの適切な溶媒に溶解されている上記のような脂質のアルコールと反応させることによって行われることが好ましい。上記脂質のアルコールとしては、例えば、トコフェロール、コレステロール、ヘキサデカノール、DMT−PEGなどの脂質アルコールが挙げられる。さらに、反応溶液に、酸受容体としてDIPEAを加えることが好ましい。
【0056】
本発明の5’脂質修飾された核酸を合成するため使用される、これらのホスホロアミダイトは、比較的加水分解に対して耐性があり、(上記合成の前に)シリカゲルを用いたクロマトグラフィーにより精製されることができる。これのためには、典型的には、アミダイトの分解を防止するために、少量の弱塩基(トリエチルアミンなど)を溶出剤に加えられる。この塩基は、共役収率の低下を防止するために、産物から完全に除去されることが重要である。この除去は、例えば、減圧下において乾燥させるという単純な作業によって実施されることができるが、ペンタンを用いてtert−ブチルメチルエーテルからホスホロアミダイトを沈殿させることにより、該ホスホロアミダイトを精製することによって実施されることが好ましい。また、使用される脂質修飾されたアミダイトが、非常に高い粘度を有している場合、例えば、該脂質修飾されたアミダイトが、粘性のある油の状態である場合、(高速)カラムクロマトグラフィーを実施してもよい。該カラムクロマトグラフィーによって、塩基としてのトリエチルアミンを除くことができる。しかしながら、PEG修飾されたアミダイトの場合では、酸に不安定なDMT保護基を含んでいるので、そのような精製は、通常は実施されない。
【0057】
本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の5’末端へ、脂質修飾されたホスホロアミダイトを共役させる反応のためには、使用されるアミダイトが十分に溶解する溶媒を使用することが好ましい。例えば、本発明において使用されるアミダイトの親油性が高いために、該アミダイトのアセトニトリルへの溶解度は限定され得る。それ故、共役反応には、通常使用される溶媒としてのアセトニトリルの他に、塩素化炭化水素の溶液が使用されることが好ましい。塩素化炭化水素の溶液としては、例えば、0.1Mの塩素化炭化水素の(無水)ジクロロメタン溶液が挙げられる。しかしながら、ジクロロメタンを使用する場合は、合成サイクルの標準のプロトコールをある程度変更することが必要になる。例えば、アミダイトが自動合成デバイスの導管内や、担体物質上へ沈殿することを避けるために、実際の共役工程の前後において、アミダイトと接触するバルブおよび導管の全てに、(無水)ジクロロメタンを流してから、乾燥させる。
【0058】
脂質修飾されたアミダイトが使用された場合、通常は、先行技術において慣例的に使用されるアミダイトの共役収率に匹敵するほどの、高共役収率が得られる。脂質修飾されたアミダイトの反応速度は、一般的にはより遅くなる。このため、脂質修飾されたアミダイトが使用された場合、標準プロトコールと比べて、共役時間を、(極めて)長くすることが好ましい。そのような共役時間は、当業者によって容易に決定され得る。共役後のキャッピング工程を省略することができるので、必要に応じて、反応の全体的な収率を増加させるために、同じ脂質修飾されたアミダイトを用いて、合成サイクルをさらに実施することができる。この場合(例えば、DMT−PEGなどのDMT修飾された脂質の場合)、脱トリチル化工程は、普通は実施されない。
【0059】
5’脂質修飾された本発明の核酸では、脂質が本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に、亜リン酸トリエステルを介して結合している。そこで、本発明の5’脂質修飾された核酸を合成する際に、亜リン酸トリエステルを、硫化剤によって酸化することができる。これのためには、ホスホトリエステルを、可能な限り完全に酸化することができる硫化剤を使用することが好ましい。そうでなければ、硫化反応は、立体的な反応であることなどから、非常に不完全に進行する可能性があるので、アンモニア開裂およびMONの脱保護の後に得られる産物が、極少量であるか、まったくないということが起こり得る。この現象は、修飾の種類、使用される硫化剤、および硫化条件に依存している。それ故、ヨウ素を用いて、酸化を実施することが好ましい。その結果、ホスホジエステル結合が導入されるが、脂質残基の近くに位置するために、ヌクレアーゼがこの結合を基質として認識するとは考えられない。
【0060】
脂質修飾では、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に含まれるリンカーまたは(二官能性)脂質か、あるいは場合によっては本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸自体を、上記のように、担体物質に直接的にまたは間接的に共役させる事ができる。直接的な共役は、担体物質に直接的に実施されることが好ましく、担体物質への間接的な共役は、典型的には、別の(共役)分子を介して実施される。担体物質への共役によって形成される結合は、リンカーまたは二官能性脂質との(開裂可能な)共有結合、および/あるいは固相との(開裂可能な)共有結合であることが好ましい。(共役)分子として適切な化合物は、例えば、ジカルボン酸(例えば、スクシニル残基(=スクシニルアンカー)、オキサリル残基(=オキサリルアンカー))などである。アミノアルキル残基(アミノプロピル残基またはアミノヘキサニル残基など)などのような遊離のアミノ基を有している、リンカー、(二官能性)脂質あるいは場合によっては本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を、フタルイミドリンカーを介して担体物質に結合させることができる。チオールを含有するリンカーまたは(二官能性)脂質あるいは場合によっては本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を、ジスルフィドの形態で担体物質に結合させることができる。本発明と関連して、適切な担体物質は、特にCPG、テンタゲル(Tentagel(登録商標))、アミノ官能基化PS−PEG(テンタゲルS NH2)など、好ましくはテンタゲルまたはアミノ官能基化PS−PEG(テンタゲルS NH2)などの固相である。特別な実施形態によれば、担体物質に共役させるために、本発明にしたがって使用される上記リンカーまたは二官能性脂質のコハク酸塩などを、アミノ官能基化PS−PEG(テンタゲル S NH2)と共役させることができる。なお、この共役を行う際には、共役試薬として、TBTU/NMM (1H−ベンゾトリアゾール−1−イル−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(tetramethyluronium tetrafluoroborate)/N−メチルモルホリン)を用いることが好ましい。慣例的に使用される、1μmolの規模のPS−PEG物質の場合、典型的には、最良の結果は、添加量が50から100μmol/gまでのときに得られる(「E. Bayer, K. Bleicher, M. Maier Z. Naturforsch. 50b (1995) 1096」)。しかしながら、ヌクレオチドが、本発明にしたがって大規模で合成される場合、担体物質の添加量は、可能な限り大きいことが望ましい(≧100μmol)。本発明によれば、そのような製法からも、良好な共役収率が得られることになる(「M. Gerster, M. Maier, N. Clausen, J. Schewitz, E. Bayer Z. Naturforsch. 52b (1997) 110」)。添加量が、138μmol/g以下であるか、または場合によってはそれ以上である、樹脂などの担体物質などを使用した場合、良好な合成収率を実現することができる。上記リンカーまたは二官能性脂質との共役収率は、ほぼ100%であるので、担体物質の添加量を、これら化合物の化学量論に基いて比較的正確に調整することができる。添加量は、開裂したDMT保護基の分光学的定量化によって、測定されることが好ましい(実施例参照)。担体物質上に存在する残りのアミノ基は、無水酢酸でキャップすることができる。このキャッピングは、普通は、担体物質のローディングの後に実施されるが、直接的な核酸合成の最中に、例えばDNA合成機において行われてもよい。誘導体化されたPS−PEG担体物質上で脂質修飾された核酸を合成するためには、テンタゲル用に特別に開発された、物質の特性を考慮する合成サイクルが使用されることが好ましい(「E. Bayer, M. Maier, K. Bleicher, H.-J. Gaus Z. Naturforsch. 50b (1995) 671, E. Bayer, K. Bleicher, M. Maier Z. Naturforsch. 50b (1995) 1096.」)。標準プロトコールと比べて、以下の(1)〜(4)について、変更されることが好ましい:
(1)共役工程、キャッピング工程、および酸化工程における反応時間の延長;
(2)脱トリチル化工程の数の増加;
(3)各工程の後の洗浄工程の延長;
(4)微量のヨウ素を除去するための、アミダイト製法の間に(亜リン酸トリエステルを酸化するために)、たいてい必要とされる酸化工程の後の、0.1Mのアスコルビン酸含有洗浄溶液(ジオキサン/水=9:1)の使用。
【0061】
修飾の性質が、上記合成サイクルの各工程に影響を及ぼすことができる点を留意すべきである。例えば、PEG1500で誘導体化された担体物質の場合、非常にゆっくりとした反応速度(reaction kinetics)が観測される。このため、脱トリチル化工程の延長や、さらに共役時間の延長が必要になる。そのような変更および適合は、当業者の標準的な能力の範囲内で達成されるものであり、本開示の枠内のあらゆる時点において実施されることができる。そのように修飾されたこれらの反応サイクルにより、脂質修飾されたホスホロジエステル(phosphorodiester)およびホスホロチオエートの両方を、合成することができる。本発明に使用されるリンカーまたは二官能性脂質への、アミダイトの共役収率は、脂質残基によって低下されるものではなく、従来の値(97−99%)に相当している。上記3’修飾が使用されたときには、5’が誘導体化される可能性や、塩基、糖、またはリン酸骨格などへの別の修飾が導入される可能性は保たれる。
【0062】
同様に、化学的に修飾されていない核酸として、または(化学的に)修飾されている核酸(例えば、脂質修飾されている一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸)としての、一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と、以下の物質との複合体を形成することによって、安定化され得る:例えば特に限定されないが、カチオン性ポリマー、カチオン性ペプチドまたはカチオン性ポリペプチド、好ましくはポリカチオン性ポリマー(ポリリジン、またはポリアルギニンなど)や、またはカチオン性脂質もしくはリポフェクタントや、ヒストン、ヌクレオリン、プロタミン、オリゴフェクタミン、スペルミンまたはスペルミジン、およびカチオン性ポリサッカリド(具体的にはキトサン)、TDM、MDP、ムラミルジペプチド、プルロニック(pluronic)、ならびに/あるいはそれらの誘導体の1つなど。ヒストンおよびプロタミンは、天然にDNAを密集させるカチオン性タンパク質である。したがって、それらはインビボでは、転写されないDNAの凝集およびある種のウイルスのDNAの凝集に関与している。一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と複合体を形成させるために、本発明において使用されてもよいヒストンとしては、より具体的には、ヒストンH1、H2a、H3およびH4であってもよい。しかし、プロタミン(プロタミンP1またはP2)あるいはプロタミンのカチオン性の部分配列が、特に好ましい。本発明では上記化合物は、便宜上プロタミンP1またはP2に由来するペプチド配列で表されてもよいし、より正確には(カチオン性)配列(SRSRYYRQRQRSRRRRRR(配列番号85)またはRRRLHRIHRRQHRSCRRRKRR(配列番号86)に対応するペプチド配列で表されてもよい。本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と複合体を形成するのに適切な他の化合物は、特に限定されないが、本明細書で定義されているようなアジュバント化合物から選択されてもよい。
【0063】
本明細書では、「複合体の形成」は、一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と、上記で定義されたような安定化化合物との間に、非共有結合複合体を形成することによって、該核酸が該安定化化合物に結合されることを意味するものとする。該安定化化合物は、例えばカチオン性ポリマー、カチオン性ペプチドまたはカチオン性ポリペプチドなどである。本明細書では、「非共有結合」は、核酸と安定化剤との可逆的な会合が、これら分子の非共有結合性の相互作用によって形成されることであって、これら分子が、共有結合以外のある形式の電子の相互作用(例えば、ファンデルワールス結合、すなわち、両分子の非特異的な引力から生じる弱い静電気引力)によって、一緒に会合していることを意味する。一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と安定化化合物との会合は、それらの複合体の解離と平衡状態にある。あらゆる理論に縛られることなく、この平衡は、細胞内では、一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と安定化化合物とを解離させるように移行すると考えられる。
【0064】
ある実施形態によれば、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、任意の他の薬学的活性成分なしに投与される場合は、免疫刺激剤であってもよいし、薬学的活性成分と一緒に投与される場合は、アジュバントとして使用されてもよい。後者の場合は、上記核酸は、例えば薬学的活性成分およびアジュバント成分の両方を含有している組成物(例えば、特定の抗原と、アジュバントとしての一般式(I)または一般式(II)で表される核酸とを含有するワクチン組成物)として投与される。
【0065】
「免疫刺激剤」としての本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、(先天性免疫系により提供されるような)抗原非特異的な免疫反応を誘発するできることが好ましい。また、この免疫反応は、免疫を刺激する様式で誘発されることが好ましい。免疫反応は、一般的には、様々な方法により引き起こされ得る。適切な免疫応答のための重要な要因は、異なるT細胞の亜集団が刺激されることである。Tリンパ球は、典型的には、2つの亜集団(ヘルパーT細胞1(Th1)およびヘルパーT細胞2(Th2))へと分化する。免疫系は、該亜集団を使って、(Th1により)細胞内の病原体(抗原など)や、(Th2により)細胞外の病原体(抗原など)を破壊することができる。2つのTh細胞の集団は、それらにより産生されるエフェクタータンパク質(サイトカイン)のパターンについて異なっている。このため、Th1細胞は、マクロファージおよび細胞傷害性T細胞を活性化することによって、細胞性免疫応答を支援する一方、Th2細胞は、B細胞を刺激して形質細胞へ転換させ、(抗原に対する抗体などの)抗体を形成させることによって、体液性免疫応答を促進する。したがって、Th1/Th2比は、免疫応答では非常に重要である。本発明と関連して、免疫応答のTh1/Th2比は、免疫刺激剤、すなわち細胞性免疫応答(つまりTh1の応答)を対象としているに本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸によって変更されることが好ましく、変更の結果、優位な細胞性免疫応答が誘導される。上記のように、本発明の核酸は、それ自体によって非特異的な免疫応答をもたらす。これによれば、別の薬学的活性成分を追加することなく、該核酸は、それ自体を免疫刺激剤として使用されることができる。別の薬学的活性成分、好ましくは特定の免疫刺激成分と一緒に投与される場合には、本発明の核酸は、他の薬学的活性成分によって引き起こされる特定の免疫応答を補助する、アジュバントとして機能する。
【0066】
また、本発明は、本発明の一般式(I)もしくは一般式(II)のどちらかで表される核酸、またはそれらの両方、ならびに場合によっては薬学的に許容可能な担体、および/またはさらに補助物質および添加物および/またはアジュバントを含有している薬学的組成物に関する(本発明の組成物の第1実施形態)。さらに本発明は、本発明の一般式(I)もしくは一般式(II)のどちらかで表される核酸、またはそれらの両方、薬学的活性成分、ならびに場合によっては薬学的に許容可能な担体、および/またはさらに補助物質、および添加物および/またはアジュバントを含有している薬学的組成物に関する(本発明の組成物の第2実施形態)。
【0067】
本発明の薬学的組成物は、典型的には、安全かつ有効な量の、上記のような本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、あるいはそれらの両方を含有している。本明細書において使用されているような「安全かつ有効な量」は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、あるいはそれらの両方の量であって、治療される病気(腫瘍、自己免疫疾患、アレルギーまたは感染症など)の前向きな変更を顕著に誘導するのに十分な量を意味する。しかしながら、同時に、「安全かつ有効な量」は、重篤な副作用が回避されるほど十分少ない量、つまり、利点と危険性との合理的な関係を可能にする量である。これらの限定の決定は、通常は実用的な医学的判断の範囲内にある。本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に関して、表現「安全かつ有効な量」は、免疫反応が過度にならないか、または免疫反応が損害を与えるほどにならないが、好ましくは該免疫反応が検出可能なレベルを下回らないように、免疫系を刺激することに適している量を意味することが好ましい。本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の「安全かつ有効な量」は、治療される特定の病気に関連して変化するし、また治療される患者の年齢および健康状態、病気の重症度、治療の持続期間、治療の際に行われる治療法の性質、使用される薬学的に許容可能な担体の性質、ならびに治療を行う医師の知識および経験の範囲内にあるこれらと同様の要因に関連して変化する。本発明の薬学的組成物は、本発明にしたがって、ヒトに対して使用されることができるし、獣医学的な目的に使用されることができる。
【0068】
第1実施形態によれば、上記本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、(任意の他の薬学的活性成分を加えなくとも)それ自体、免疫刺激剤であり得る。このことは、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸が脂質修飾を含んでいる場合に、特に適用できる。脂質は、本発明の核酸の免疫刺激特性を増強し得るか、または治療活性のある分子を良好に形成し得る。該治療活性のある分子としては、例えば上記のようなビタミンまたはステロイドが挙げられ、例えば、a−トコフェロール(ビタミンE)、D−アルファ−トコフェロール、L−アルファ−トコフェロール、D,L−アルファ−トコフェロール、ビタミンEのコハク酸塩(VES)、ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンDおよびその誘導体、ビタミンKおよびその誘導体などが挙げられる。
【0069】
本発明の第2実施形態の薬学的組成物は、(本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に加えて)少なくとも1つの追加の薬学的活性成分を含んでいる。これに関して、薬学的活性成分は、特定の兆候、好ましくは、癌、自己免疫疾患、アレルギーまたは感染症に対する治療効果を有している化合物である。そのような化合物には、特に限定されないが、ペプチド、タンパク質、核酸、(治療活性のある)低分子量有機化合物または低分子量無機化合物(分子量5000未満、好ましくは1000未満)、糖、抗原または抗体、先行技術において既に公知の治療剤、抗原性細胞、抗原性細胞の断片、細胞画分;(例えば化学的または放射線によって)修飾された、弱毒化された、または不活性化された病原体(ウイルス、細菌など)などが含まれる。
【0070】
(本発明の組成物の)第2実施形態の第1態様によれば、薬学的組成物に含有されている薬学的活性成分は、免疫調節成分であり、好ましくは免疫刺激成分である。最も好ましくは、薬学的活性成分は抗原または免疫原である。「抗原」および「免疫原」は、抗体の形成および/または細胞性免疫応答の活性化を引き起こすことができる任意の構造体であると理解される。上記細胞性免疫応答は、すなわち特異的な(アジュバントによるものでなはい)免疫応答であるといえる。よって、本発明によれば、用語「抗原」および「免疫原」は、同意語として使用される。抗原の例としては、ペプチド、ポリペプチド(すなわちタンパク質)、細胞、細胞抽出物、ポリサッカリド、ポリサッカリド接合体、脂質、糖脂質および炭水化物が挙げられる。また、抗原として考えられるものとしては、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、および原生動物抗原が挙げられる。さらに抗原として、好ましいものは、腫瘍細胞の表面抗原、ならびにウイルス、細菌、真菌、および原生動物病原体の表面抗原(特に分泌型の表面抗原)である。勿論、抗原は、適切な担体と共役されたパプテンとして本発明のワクチン中に存在することもできる。上記のような他の抗原成分(例えば、不活性化または弱毒化された病原体)も同様に、使用されてもよい。
【0071】
抗原性(ポリ)ペプチドには、腫瘍抗原などの公知の全ての抗原ペプチドが含まれる。腫瘍抗原の具体的な例としては、とりわけ、腫瘍特異的表面抗原(TSSA)が挙げられる。TSSAとしては、例えば、5T4、アルファ5β1−インテグリン、707−AP、AFP、ART−4、B7H4、BAGE、β−カテニン/m、Bcr−abl、MN/C IX抗原、CA125、CAMEL、CAP−1、CASP−8、ベータ−カテニン/m、CD4、CD19、CD20、CD22、CD25、CDC27/m、CD30、CD33、CD52、CD56、CD80、CDK4/m、CEA、CT、Cyp−B、DAM、EGFR、ErbB3、ELF2M、EMMPRIN、EpCam、ETV6−AML1、G250、GAGE、GnT−V、Gp100、HAGE、HER−2/new、HLA−A*0201−R170I、HPV−E7、HSP70−2M、HAST−2、hTERT(またはhTRT)、iCE、IGF−1R、IL−2R、IL−5、KIAA0205、LAGE、LDLR/FUT、MAGE、MART−1/melan−A、MART−2/Ski、MC1R、ミオシン/m、MUC1、MUM−1、MUM−2、MUM−3、NA88−A、PAP、プロテイナーゼ−3、p190マイナーbcr−abl、Pml/RARα、PRAME、PSA、PSM、PSMA、RAGE、RU1またはRU2、SAGE、SART−1またはSART−3、サバイビン、TEL/AML1、TGFβ、TPI/m、TRP−1、TRP−2、TRP−2/INT2、VEGFおよびWT1、あるいは例えばNY−Eso−1またはNY−Eso−Bなどの配列に由来する抗原が挙げられる。例えば、血管新生に関わることや、細胞外マトリックスの構造に影響を与えることが知られている腫瘍抗原などのあらゆる種類の抗原が、本発明の目的にとって適切である。腫瘍抗原は、タンパク質抗原として、または腫瘍抗原(好ましくは上記腫瘍抗原)をコードするmRNAもしくはDNAとして、薬学的組成物中に提供されてもよい。
【0072】
((アジュバントとしての)本発明の核酸と追加の薬学的活性成分とを含有している、本発明の組成物に関する)第2実施形態の第2態様によれば、薬学的活性成分は抗体である。これに関しては、任意の治療に適切な抗体を使用することができる。本発明にとって、特に好ましいものは、癌または感染症に対して重要な役割を果たす抗原、タンパク質または核酸を対象とする抗体である。そのような抗原、タンパク質または核酸としては、例えば、細胞表面タンパク質、腫瘍抑制遺伝子またはその阻害剤、成長因子および伸長因子、アポトーシスに関連するタンパク質、腫瘍抗原、または上記のような抗原などが挙げられる。
【0073】
第2実施形態の第3態様によれば、本発明の薬学的組成物に含有されている薬学的活性成分は核酸である。該核酸は、一本鎖であってもよいし、二本鎖であってもよいし、ホモ二本鎖の形態であってもよいし、またはヘテロ二本鎖の形態であってもよいし、直鎖状であってもよいし、環状であってもよい。薬学的組成物に、薬学的活性成分として含有されている核酸は、その長さの点において限定されない。該核酸は、任意の天然に存在する核酸配列、またはその相補体、あるいはそれらの断片を含んでいる。またこれに関して使用される核酸は、部分的にまたは完全に合成天然物(synthetic nature)であってもよい。例えば、核酸は、(治療に関係する)タンパク質(例えば抗原)をコードする核酸(例えば抗原をコードする核酸)、および/または免疫反応をもたらすことができる核酸を包含することができる。ここで言う抗原は、上記のような抗原であることが好ましい。
【0074】
好ましくは、本発明の薬学的組成物に、薬学的活性成分として含有されている核酸は、mRNAである。そのようなmRNAは、裸の(naked)形態で本発明の薬学的組成物に加えられてもよいし、あるいは例えばエキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼによる、インビボでの核酸の分解を減少させるか、もしくは防止さえもする安定化された形態で加えられてもよい。
【0075】
例えば、本発明の薬学的組成物に、薬学的活性成分として含有されているmRNAを、上で定義された5’キャップおよび/または3’末端におけるポリAテールによって安定化することができる。該ポリAテールの長さは、少なくとも50ヌクレオチドであり、好ましくは少なくとも70ヌクレオチドであり、より好ましくは少なくとも100ヌクレオチドであり、特に好ましくは少なくとも200ヌクレオチドである。既に述べたように、末端構造はインビボにおいて極めて重要である。RNAは、これらの構造によってmRNAとして認識され、分解が調節される。しかし、RNAを安定化または不安定化する別の方法も存在する。該方法の多くは、未だ知られていないが、RNAとタンパク質との相互作用が、そのことについて決定的であると考えられ得る。例えば、近年「mRNA監視システム(mRNA surveillance system)」が記載された(「Hellerin and Parker, Ann. Rev. Genet. 1999, 33: 229-260」)。このmRNA監視システムでは、不完全なまたは無意味なmRNAが、細胞質での特定のフィードバックタンパク質相互作用によって認識され、従順に分解される。これらの方法の大部分は、エキソヌクレアーゼによって実行される。
【0076】
また、本発明の薬学的組成物に、薬学的活性成分として含有されているmRNAの安定化は、mRNAを、カチオン性化合物、特にポリカチオン性化合物(例えば、(ポリ)カチオン性ペプチドまたはタンパク質)と会合させるか、複合体を形成させるか、または結合させることによって実施することができる。特に、ポリカチオン性の核酸結合タンパク質としては、プロタミン、ヌクレオリン、スペルミン、またはスペルミジンを使用することが、特に効果的である。また、ポリ−L−リジンまたはヒストンなどの他のカチオン性ペプチドまたはカチオン性タンパク質を、使用することも可能である。mRNAを安定化するためのこの手法は、欧州特許第1083232号明細書に記載されている(この文献の開示は、参照することによって本発明に完全に組み込まれる)。薬学的活性成分として存在するmRNAを安定化するために使用可能な、好ましいカチオン性物質には、カチオン性ポリサッカリド(例えばキトサン)、ポリブレン、ポリエチレンイミン(PEI)、またはポリ−L−リジン(PLL)などが含まれる。既に有利な点である細胞透過性が向上している、アジュバントの形態のときの脂質修飾された本発明の核酸の作用に加えて、mRNAとカチオン性化合物(例えばカチオン性タンパク質、またはカチオン性脂質(脂質を基本とする複合体形成試薬としてのオリゴフェクタミンなど))との会合または複合体の形成は、薬学的活性成分として存在するmRNAの、治療される細胞または治療される生物内への移送を向上させることが好ましい。また、そのことについては、複合体の形成による本発明の核酸の安定化効果に関する本明細書の開示も参照されたい。なお、このことは、mRNAの安定化にも同様に適用することができる。
【0077】
本発明の薬学的組成物中の薬学的活性成分としてのmRNAを安定化させるもう1つ別のアプローチは、mRNA配列を標的変更することである。この標的変更は、いわゆる不安定化配列要素(DSE)を、除去するか、または変更することにより実施される。シグナルタンパク質は、特に真核生物のmRNAに存在する該不安定化配列要素(DSE)に結合することができ、インビボにおけるmRNAの酵素分解を調節することができる。したがって、薬学的活性成分として存在するmRNAをさらに安定化させるためには、野生型mRNAの対応する領域と比べて、不安定化配列要素が存在し無いように、1つ以上の変更が行われることが好ましい。勿論、同じように、本発明によれば、非翻訳領域(3’UTRおよび/または5’UTR)に場合によっては存在するDSEを、mRNAから削除することが好ましい。上記DSEとしては、例えば多くの不安定なmRNAの3’UTRに存在する、AUリッチ配列(「AURES」)が挙げられる(「Caputら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1986, 83: 1670-1674」)。それ故、薬学的活性成分として使用されるmRNAは、野生型mRNAと比べて、上記のような任意の不安定化配列を含まないように、変更されることが好ましい。またこのことは、可能なエンドヌクレアーゼによって認識される配列モチーフ(例えばトランスフェリン受容体をコードする遺伝子の3’UTR区域に含まれている、配列GAACAAG)にも当てはまる(「Binderら, EMBO J. 1994, 13: 1969-1980」)。そのような配列モチーフも、脂質修飾された本発明の核酸から削除されることが好ましい。
【0078】
例えば望まれ得る効率的な翻訳を実現するために、リボソーム結合部位(コザック配列:GCCGCCACCAUGG(配列番号84)、なおAUGは開始コドンを形成している)への、リボソームの効果的な結合が起きるように、本発明の薬学的組成物中の薬学的活性成分としてのmRNAを、さらに修飾することができる。なお、これに関しては、この部位の周りのA/U含有量を増加させることにより、リボソームをmRNAにより効率的に結合させることができる。
【0079】
また、1つ以上の配列内リボソーム進入部位(いわゆるIRES)を、薬学的活性成分として使用されているmRNAに導入することが可能である。つまり、IRESは、リボソーム結合部位としてのみ機能する。また、IRESはそれ以外にも、リボソームによって互いに独立して翻訳される複数のペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAを提供することにも役立つ(マルチシストロニックmRNA(multicistronic mRNA))。本発明に基いて使用され得るIRES配列は、例えば、ピコルナウイルス(例えばFMDV)、ペストウイルス(CFFV)、ポリオウイルス(PV)、脳心筋炎ウイルス(ECMV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、従来のブタ熱ウイルス(CSFV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、またはコオロギ麻痺ウイルス(CrPV)に由来するIRES配列が挙げられる。
【0080】
同様に、本発明の薬学的組成物中の薬学的活性成分として、場合によっては使用されるmRNAは、該mRNAの細胞質における半減期を増加させることができる安定化配列を、5’および/または3’非翻訳領域に含んでいてもよい。該安定化配列は、ウイルス、細菌および真核生物に存在する天然に存在する配列と100%の配列相同性を示してもよい。しかし該安定化配列の全てまたは一部は、合成天然物であってもよい。本発明に使用され得る安定化配列としては、例えば、(ヒトまたはアフリカツメガエルなどの)β−グロビン遺伝子の非翻訳領域(UTR)であってもよい。別の安定化剤の例としては、一般式(C/U)CCANxCCC(U/A)PyxUC(C/U)CC(配列番号88)を有する配列が挙げられる。この配列番号88を有する配列は、α−グロビン、α−(I)−コラーゲン、15−リポキシゲナーゼ、またはチロシン−ヒドロキシラーゼをコードする非常に安定なmRNAの3’UTRに含まれているものである(「Holcikら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1997, 94: 2410-2414」を参照のこと)。勿論、そのような安定化配列は、別々に使用されることができるし、互いに組み合わせて使用されることができるし、当業者に公知の他の安定化配列と組み合わせて使用されることができる。
【0081】
最終的に望まれる翻訳をさらに増加させるために、薬学的活性成分として使用されるmRNAは、対応する野生型mRNAと比べて、以下の修飾を示すことができる。(該修飾は、別々に存在することができるし、互いに組み合わせて存在することができる)。ペプチドまたはポリペプチドをコードする変更されたmRNAの領域のG/C含有量は、該ペプチドまたはポリペプチドをコードする対応する野生型mRNAのG/C含有量よりも高くてもよい一方で、アミノ酸配列は、野生型と比べて修飾されていない。この変更は、mRNAの効率的な翻訳のためにはmRNA自体の安定化が肝要である、という事実に基いている。そのことに関しては、様々なヌクレオチドの配列および組成が、大きな役割を果たす。特に、G(グアノシン)/C(シトシン)含有量が増加している配列は、A(アデノシン)/U(ウラシル)含有量が増加している配列よりも安定である。それ故、本発明によれば、翻訳されるアミノ酸配列は保たれる一方で、コドンは、野生型mRNAと比べて、該コドンがより多くのG/Cヌクレオチドを含むように変えられる。数種のコドンは同じアミノ酸をコードしているので(遺伝コードの縮重)、安定化に有利であるコドンが決定され得る(代替コドンの使用)。mRNAにコードされるアミノ酸に依存するが、野生型の配列と比べて、mRNAの変更が異なる可能性があり得る。単にGまたはCのヌクレオチドを含んでいるコドンにより、アミノ酸がコードされている場合、該コドンの変更は必要ではない。したがって、Pro(CCCまたはCCG)、Arg(CGCまたはCGG)、Ala(GCCまたはGCG)およびGly(GGCまたはGGG)のコドンは、AまたはUが存在していないので、変えられる必要は全くない。次の場合では、Aおよび/またはUのヌクレオチドを含んでいるコドンは、同じアミノ酸をコードするが、Aおよび/またはUを含んでいない異なるコドンで置換されることにより、変えられる。例えば、Proのコドンは、CCUまたはCCAからCCCまたはCCGに変えられてもよく;Argのコドンは、CGU、CGA、AGAまたはAGGからCGCまたはCGGに変えられてもよく;Alaのコドンは、GCUまたはGCAからGCCまたはGCGに変えられてもよく;Glyのコドンは、GGUまたはGGAからGGCまたはGGGに変えられてもよい。他の場合、AおよびUのヌクレオチドをコドンから欠失させることができるが、コドンに含まれるAおよび/またはUのヌクレオチドの量を少なくすることによって、AおよびUの含有量を減少させることができる。例えば、Pheのコドンは、UUUからUUCに変えられてもよく;Leuのコドンは、UUA、CUUまたはCUAからCUCまたはCUGに変えられてもよく;Serのコドンは、UCU、UCAまたはAGUからUCC、UCGまたはAGCに変えられてもよく;Tyrのコドンは、UAUからUACに変えられてもよく;終止コドンUAAは、UAGまたはUGAに変えられてもよく;Cysのコドンは、UGUからUGCに変えられてもよく;Hisのコドンは、CAUからCACに変えられてもよく;Glnのコドンは、CAAからCAGに変えられてもよく;Ileのコドンは、AUUまたはAUAからAUCに変えられてもよく;Thrのコドンは、ACUまたはACAからACCまたはACGに変えられてもよく;Asnのコドンは、AAUからAACに変えられてもよく;Lysのコドンは、AAAからAAGに変えられてもよく;Valのコドンは、GUUまたはGUAからGUCまたはGUGに変えられてもよく;Aspのコドンは、GAUからGACに変えられてもよく;Gluのコドンは、GAAからGAGに変えられてもよい。一方では、Met(AUG)およびTrp(UGG)のコドンの場合、配列が変更される可能性はない。勿論、変更されたmRNAのG/C含有量を増加させるために、上に列挙した置換を、元の配列と比べて、可能な限りどのようにも組み合わせて使用することができるし、単独で使用することができる。したがって、例えば、元の(野生型)配列に存在するThrのコドンの全てが、ACC(またはACG)に変えられてもよい。しかし、上記置換を可能な限り組み合わせて使用することが好ましい。例えば、元の配列におけるThrをコードするコドンの全てがACC(またはACG)に置換され、Serを元々はコードするコドンの全てをUCC(またはUCGまたはAGC)に置換される;元の配列におけるIleをコードするコドンの全てがAUCに置換され、Lysを元々はコードするコドンの全てがAAGに置換され、Tyrを元々はコードするコドンの全てがUACに置換される;元の配列におけるValをコードするコドンの全てがGUC(またはGUG)に置換され、Gluを元々はコードするコドンの全てがGAGに置換され、Alaを元々はコードするコドンの全てがGCC(またはGCG)に置換され、Argを元々はコードするコドンの全てがCGC(またはCGG)に置換される;元の配列におけるValをコードするコドンの全てがGUC(またはGUG)に置換され、Gluを元々はコードするコドンの全てがGAGに置換され、Alaを元々はコードするコドンの全てがGCC(またはGCG)に置換され、Glyを元々はコードするコドンの全てがGGC(またはGGG)に置換され、Asnを元々はコードするコドンの全てがAACに置換される;元の配列におけるValをコードするコドンの全てがGUC(またはGUG)に置換され、Pheを元々はコードするコドンの全てがUUCに置換され、Cysを元々はコードするコドンの全てがUGCに置換され、Leuを元々はコードするコドンの全てがCUG(またはCUC)に置換され、Glnを元々はコードするコドンの全てがCAGに置換され、Proを元々はコードするコドンの全てがCCC(またはCCG)に置換されるなどが挙げられる。ペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAの領域のG/C含有量(または場合によって存在している追加の他の各部分のG/C含有量)は、(1)対応するペプチドまたはポリペプチドをコードする野生型mRNAのコード領域のG/C含有量と比べて、少なくとも7%増加していることが好ましく、少なくとも15%増加していることがより好ましく、少なくとも20%増加していることが特に好ましく、また(2)少なくとも50%であることが好ましく、少なくとも70%であることがより好ましく、少なくとも90%であることが最も好ましい。これに関しては、野生型配列と比べて、そのように変更されるmRNAのG/C含有量を、可能な限り最大まで増加させることが特に好ましい。
【0082】
薬学的組成物中に薬学的活性成分として使用されるmRNAの別の好ましい変更は、翻訳効率が、細胞内でのtRNAの存在頻度が異なっていることによっても決定されるという発見に基いている。それ故、RNA配列中に存在する「レア」コドンと呼ばれるコドンの数が多くなる場合、対応するmRNAの翻訳の効率は、比較的「頻繁に存在する」tRNAをコードするコドンが存在する場合よりも、著しく低下する。それゆえ、本発明によれば、薬学的活性成分として使用されるmRNAにおけるコード領域は、野生型mRNAの対応する領域と比べて、細胞内において比較的稀に存在するtRNAをコードする野生型配列の少なくとも1つのコドンが、細胞内において比較的頻繁に存在しかつ上記比較的稀に存在するtRNAが運搬するアミノ酸と同じアミノ酸を運搬する、tRNAをコードするコドンで置換されるように、変更される。この変更を用いれば、RNA配列は、頻繁に存在するtRNAを利用可能なコドンが導入されるように、変更される。どのtRNAが細胞内に頻繁に存在するか、および対照的にどれが比較的稀であるかは、当業者に知られている(例えば「Akashi, Curr. Opin. Genet. Dev. 2001, 11(6): 660-666」参照)。この変更を用いれば、本発明は、細胞内において比較的稀に存在するtRNAをコードする、野生型配列のコドンの全てを、細胞内に比較的頻繁に存在しかつ上記比較的稀に存在するtRNAが運搬するアミノ酸と同じアミノ酸を運搬する、tRNAで置換することができる。mRNAのコード領域によってコードされる(1つ以上の)抗原ペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を変えることなく、上記のようなmRNAにおける増加された(特に最大の)配列のG/C含有量と「頻繁に存在する」コドンとを組み合わせることが特に好ましい。G/Cが豊富な/最適化されたmRNAによってコードされ得る好ましい抗原は、上に挙げられている。
【0083】
(本発明の組成物に関する)第2実施形態の第4態様によれば、本発明の薬学的組成物に、薬学的活性成分として含有されている核酸は、dsRNAであり、好ましくはsiRNAである。dsRNAまたはsiRNAは、RNA干渉現象とからめると特に興味深いものである。免疫学が研究される過程で、RNA干渉現象に注意が引かれた。近年、RNAを基本とする防御機構が発見された。この防御機構は、真菌界、植物界、および動物界の何れにも存在しており、「ゲノムの免疫系」として作用するものである。処理の根本的な機構が同一であると特定される前は、つまり植物でのRNAに仲介されるウイルス耐性、植物でのPTGS(翻訳後遺伝子サイレンシング)、および真核生物でのRNA干渉が、共通の手順に基いていることが特定される前は、もともとその系は、互いに独立した様々な種において(初めは線虫において)説明されていた。RNA干渉(RNAi)のインビトロの技術は、配列特異的な遺伝子発現の抑制を引き起こす二本鎖RNA分子(dsRNA)に基いている(「Zamore (2001) Nat. Struct. Biol. 9: 746-750」;「Sharp (2001) Genes Dev. 5:485-490」:「Hannon (2002) Nature 41: 244-251」)。長いdsRNAを哺乳類細胞にトランスフェクションしたとき、プロテインキナーゼRおよびRnaseLの活性化によって、例えばインターフェロン応答などの非特異的な効果が引き起こされる(「Starkら (1998) Annu. Rev. Biochem. 67: 227-264; He and Katze (2002) Viral Immunol. 15: 95-119」)。該非特異的な効果は、siRNAと呼ばれるより短い(例えば21−23mer)RNAをトランスフェクションしたときに、回避される。なぜなら、30bpよりも短いsiRNAによっては、非特異的な効果は引き起こされないからである(「Elbashirら (2001) Nature 411: 494-498」)。また近年、dsRNA分子もインビボにおいて使用されている(「McCaffreyら (2002), Nature 418: 38-39」;「Xiaら (2002), Nature Biotech. 20: 1006-1010; Brummelkampら (2002), Cancer Cell 2: 243-247」)。
【0084】
それゆえ、本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として最終的に使用される二本鎖RNA(dsRNA)は、一般構造5’−(N17−29)−3’を有する配列を含んでいることが好ましい(Nは任意の塩基であり、ヌクレオチドを表す)。該一般構造は、リボヌクレオチドから構成される巨大分子を有している二本鎖RNAから構成される。リボヌクレオチドは、ペントース(リボース)、有機塩基およびリン酸を含んでいる。ここで、RNA中の有機塩基は、プリン塩基であるアデノシン(A)およびグアノシン(G)、ならびにピリミジン塩基であるシトシン(C)およびウラシル(U)を含んでいる。本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として最終的に使用される二本鎖RNA(dsRNA)は、上記ヌクレオチド、または配向構造を有するヌクレオチドの類似体を含んでいる。本発明の薬学的活性成分として使用されるdsRNAは、一般構造5’−(N19−25)−3’を有していることが好ましく、5’−(N19−24)−3’を有していることがより好ましく、5’−(N21−23)−3’を有していることがさらに好ましい(Nは任意の塩基である)。薬学的活性成分として使用されるdsRNAのヌクレオチドの好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%、特に好ましくは100%が、本明細書において以前に(薬学的活性成分として)記載された(治療に関連する)タンパク質または抗原の(m)RNA配列の区分と相補的である。「90%相補的である」は、本発明に従って使用されるdsRNAの長さが、例えば20ヌクレオチドであるとき、該dsRNAが、(m)RNAの対応する区分と対応する相補性を有さないヌクレオチドを、2つよりも多く含んでいないことを意味する。しかし、場合によっては本発明の薬学的組成物に使用される二本鎖RNAの配列は、その一般構造が、薬学的活性成分として上に記載されたタンパク質または抗原の(m)RNAの区分と完全に相補的であることが好ましい。
【0085】
原理的には、(m)RNAのコード領域に存在する、17から29塩基対まで、好ましくは19から25塩基対までの長さを有する区分の全てが、本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として、最終的に使用されるdsRNAの標的配列として機能することができる。同様に、薬学的活性成分として使用されるdsRNAは、上に(薬学的活性成分として)記載された(治療に関連する)タンパク質または抗原の、コード領域に位置しないヌクレオチド配列(特に(m)RNAの5’非コード領域)を対象とすることもできる。それ故、薬学的活性成分として使用されるdsRNAは、例えば、調節機能を有する(m)RNAの非コード領域を対象とすることもできる。したがって、上に記載されたタンパク質または抗原の薬学的活性成分として使用されるdsRNAの標的配列は、(m)RNAの翻訳領域および非翻訳領域に位置してもよいし、および/または制御要素に位置してもよい。本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として使用されるdsRNAの標的配列は、翻訳配列と非翻訳配列との重複領域(overlapping region)に位置してもよい;特に、該標的配列は、(m)RNAのコード領域の開始トリプレットの上流に、少なくとも1つのヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0086】
修飾されたヌクレオチドは、好ましくは、本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として、最終的に使用されるdsRNA中に存在してもよい。表現「修飾されたヌクレオチド」は、本発明によれば、問題のヌクレオチドが化学的に修飾されていることを意味する。当業者は、修飾されたヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチドと比べて、1つ以上の原子または原子団の置換、負荷もしくは除去によって変えられていることを、表現「化学的修飾」から理解する。本発明にしたがって使用される、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドは、一方では安定化に役立つが、他方では解離を防ぐことに役立つ。本発明にしたがって使用されるdsRNA中の好ましくは2から10まで、より好ましくは2から5までのヌクレオチドが修飾されている。二本鎖構造のdsRNAのヌクレオチドの少なくとも1つの2’−ヒドロキシ基が、化学基、好ましくは2’−アミノ基または2’−メチル基で置換されていることが有利である。また、二本鎖構造の少なくとも1つの鎖における少なくとも1つのヌクレオチドは、(好ましくは2’−O、4’−C−メチレン架橋によって)化学的に修飾されている糖環を有する「固定されたヌクレオチド(locked nucleotide)」と呼ばれるヌクレオチドであってもよい。本発明にしたがって使用されるdsRNAの数個のヌクレオチドは、固定されたヌクレオチドであることが有利である。さらに、本発明にしたがって使用されるdsRNAの骨格を修飾することによって、該dsRNAの成熟前の分解を防ぐことが出来る。これに関して特に好ましいdsRNAは、ホスホロチオエート、2’−O−メチル−RNA、LNA、およびLNA/DNAギャップマーなどの形態で修飾されており、このためインビボでの半減期がより長くなっているdsRNAである。
【0087】
本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として使用される二本鎖RNA(dsRNA)の末端は、細胞内での分解または各鎖の解離を阻止するため、特にヌクレアーゼによる成熟前の分解を避けるために、修飾され得ることが好ましい。dsRNAの各鎖の一般的に望ましくない解離は、特に該dsRNAの濃度が低いとき、または該dsRNAの鎖が短いときに起こる。解離を特に効果的に阻害するために、本発明にしたがって使用されるdsRNAの二本鎖構造の、ヌクレオチド対によってもたらされる結合力を、少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の化学的連結によって増加させてもよい。本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として使用される、解離性が減少したdsRNAの安定性は、細胞内、生物内(インビボ)、またはエキソビボでの酵素的分解または化学分解に対してより高くなり、それ故、上記dsRNAの半減期はより長くなる。本発明にしたがって使用されるdsRNAの細胞内の成熟前分解を防ぐためには、鎖の各末端においてヘアピンループを形成することをさらに実施することができる。それ故、特別な実施形態では、本発明の薬学的組成物に使用されるdsRNAは、解離反応速度を遅くするために、ヘアピン構造を有している。そのような構造では、ループ構造は、5’末端および/または3’末端に形成されることが好ましい。そのようなループ構造は、水素結合を有しておらず、それ故通常はヌクレオチド塩基の間に相補性を有していない。通常、そのようなループは、少なくとも5ヌクレオチドであり、好ましくは少なくとも7ヌクレオチドの長さであり、本発明にしたがって使用されるdsRNAの2つの相補的な各鎖を、そのような様式で連結する。同様に、鎖の解離を防ぐために、本発明にしたがって使用されるdsRNAの二本鎖のヌクレオチドは、水素架橋結合が強められるように修飾され得ることが好ましい。そのような水素架橋結合の強化は、例えば、場合によって修飾されたヌクレオチドにより、塩基間の水素架橋結合能が増加させられることによって実施される。その結果、鎖同士の相互作用の安定性が増加し、dsRNAはRNaseによる攻撃から保護される。
【0088】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の薬学的組成物中に薬学的活性成分として使用されるdsRNAは、前記のようなタンパク質または抗原の(m)RNAを対象としている。このため、使用されるdsRNAは、細胞内での上記タンパク質または抗原の翻訳を、少なくとも50%、より好ましくは60%、さらに好ましくは70%、最も好ましくは90%の程度まで抑制することが好ましい。すなわち、上記細胞に含まれる上記タンパク質または抗原の細胞内含有量は、天然に存在する(本発明にしたがって使用されるdsRNAを用いて処置されないときの)細胞内含有量の半分以下であることが好ましい。本発明にしたがって使用されるdsRNA分子を加えた後の、細胞内での上記タンパク質または抗原の翻訳の抑制は、上記分子によって引き起こされるRNA干渉の現象に基づいている。そのとき、本発明にしたがって使用されるdsRNAは、RNA干渉現象を誘発し、上記タンパク質または抗原の(m)RNAに結合することができる、いわゆるsiRNAであるといえる。本発明にしたがって使用されるdsRNAによって細胞内で誘発される翻訳抑制の測定または実証は、ノーザンブロット、定量的リアルタイムRCRによって実施することができるし、あるいはタンパク質レベルの観点からは、上記タンパク質または抗原に対する特異的抗体を用いて実施することができる。本発明の薬学的組成物中の薬学的活性成分として、最終的に使用されるdsRNA、および対応するsiRNAは、当業者に公知の方法で調製され得る。
【0089】
本発明の(第1または第2実施形態の)薬学的組成物は、典型的には薬学的に許容可能な担体を含んでいる。本明細書で使用される表現「薬学的に許容可能な担体」は、組成物の液体主成分または非液体主成分を包含することが好ましい。上記組成物が液体の形態で提供される場合、担体は典型的には発熱物質を含まない水;等張食塩水または緩衝(水)溶液(リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液など)である。特に本発明の薬学的組成物を注射するためには、緩衝液、好ましくは水性緩衝液を使用してもよい。上記緩衝液(好ましくは水性緩衝液)は、ナトリウム塩(好ましくは少なくとも50mMのナトリウム塩)、およびカルシウム塩(少なくとも0.01mMのカルシウム塩)を含んでおり、場合によってはカリウム塩(好ましくは少なくとも3mMのカリウム塩)を含んでいる。好ましい実施形態によれば、ナトリウム塩、カルシウム塩、および場合によってはカリウム塩は、ハロゲン化物(塩化物、ヨウ化物または臭化物など)の形態であってもよいし、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、または硫酸塩などの形態であってもよい。特に限定されないが、ナトリウム塩には例えば、NaCl、NaI、NaBr、Na2CO3、NaHCO3、Na2SO4などが包含され、場合によって含まれるカリウム塩には例えば、KCl、KI、KBr、K2CO3、KHCO3、K2SO4などが包含され、カルシウム塩には例えば、CaCl2、CaI2、CaBr2、CaCO3、CaSO4、Ca(OH)2が包含される。また、上記カチオンの有機アニオンが、上記緩衝液に含まれていてもよい。より好ましい実施形態によれば、上記で定義されたような注射の用途に適切な緩衝液は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)および場合によっては塩化カリウム(KCl)から選択される塩を含んでいてもよい。また、これら塩化物に加えて、アニオンがさらに存在していてもよい。典型的には、注射緩衝液中の塩の濃度は、少なくとも50mMの塩化ナトリム(NaCl)、少なくとも3mMの塩化カリウム(KCl)、少なくとも0.01mMの塩化カルシウム(CaCl2)である。
【0090】
注射緩衝液は、特定の参照溶媒に対して、高張性、等張性、または低張性であってもよい。すなわち、該緩衝液の塩含有量は、特定の参照溶媒に対して、より高い、同一、またはより低くてもよい。また、好ましくは、上記塩の濃度は、浸透作用または他の濃度効果によって、細胞の損傷が引き起こされないような濃度であってもよい。参照溶媒は、例えば「インビボ」の方法で使用される液体としては、血液、リンパ液、細胞質液体または他の体液などであり、例えば「インビトロ」の方法に使用され得る液体としては、一般的な緩衝液または液体などである。上記一般的な緩衝液または液体は、当業者に公知である。リンガー−乳酸溶液が、液体主成分として特に好ましい。
【0091】
しかし、ヒトへの投与に適切な、1つ以上の適合性のある固体もしくは液体賦形剤、または希釈剤、または封入化合物を使用してもよい。ここで使用されているような用語「適合性のある」は、通常の使用条件下において、薬学的組成物の薬学的有効性を実質的に減少させる相互作用が起きないように、薬学的組成物の構成物質が、(i)薬学的活性成分と混合され得ること、(ii)免疫刺激剤としてのまたはそれ自体がアジュバントとしての本発明の核酸と混合され得ること、および(iii)互いの成分と混合され得ることを意味する。勿論、薬学的に許容可能な担体は、該担体が治療されるヒトへの投与に適するほど、十分に高い純度と十分に低い毒性とを有していなければならない。薬学的に許容可能な担体またはその構成成分として使用することができる化合物としては、例えば、糖(例えばラクトース、グルコースおよびスクロースなど)、デンプン(例えばコーンスターチまたはジャガイモデンプンなど);セルロースとその誘導体(例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロースなど);粉末化されたトラガカント;麦芽;ゼラチン;獣脂;固体の流動促進剤(glidant)(例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムなど);硫酸カルシウム;植物油(例えば落花生油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、およびテオブロマカカオからのオイルなど);ポリオール(例えばポリプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなど);アルギン酸などが挙げられる。
【0092】
薬学的に許容可能な担体の選択は、原理上は、本発明の薬学的組成物が投与される様式によって決定される。本発明の薬学的組成物は、例えば全身投与されることができる。投与経路は、例えば経皮経路、経口経路、非経口経路(皮下注射または静脈注射を含む)、局所経路、および/または鼻腔内経路を含んでいる。使用される薬学的組成物の適切な量は、動物モデルを用いたルーチン的な実験から決定され得る。そのようなモデルは、特に限定されないが、ウサギ、ヒツジ、マウス、ラット、イヌ、およびヒトではない霊長類のモデルを含んでいる。注射のための好ましい単位用量形態は、水もしくは生理食塩水またはそれらの混合物の、滅菌溶液を含んでいる。そのような溶液のpHは、約7.4に調整されるべきである。注射に適した担体は、ヒドロゲル、制御放出または遅延放出のためのデバイス、ポリ乳酸、およびコラーゲンのマトリックスを含んでいる。局所適用されるのに適切な薬学的に許容可能な担体は、ローション、クリームおよびゲルなどでの使用に適しているものを含んでいる。化合物が経口投与される場合、錠剤およびカプセルなどが好ましい単位用量形態である。経口投与のために使用され得る単位用量形態を調製するための、薬学的に許容可能な担体は先行技術においてよく知られている。薬学的に許容可能な担体の選択は、本発明の目的にとっては重要な意味を持たない、味、費用および保存性などの副次的な検討事項に依存し、当業者によって容易に成し遂げられ得る。
【0093】
免疫原性をさらに増加させるために、本発明の薬学的組成物は、1つ以上の補助物質をさらに含んでいてもよい。これによって、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の相乗作用と、上記のような薬学的組成物(および最終的には薬学的活性成分)に場合によっては追加で含まれている補助物質の相乗作用とが実現されることが好ましい。様々な種類の補助物質に依存して、様々な機構をこれに関して考慮することができる。例えば、樹状細胞(DC)の成熟を可能にする化合物(リポ多糖類、TNF−αまたはCD40リガンド)は、適切な補助剤の第1クラスを形成する。一般的に、補助物質として使用できるものは、本発明の免疫刺激アジュバントからもたらされる免疫応答を、狙いを定めて増強するおよび/または影響を与えることができる「危険信号」(LPS、GP96など)またはサイトカイン(GM−CFSなど)の様式で、免疫系に影響を与える任意の作用物質である。特に好ましい補助物質は、免疫応答を促進するサイトカインである。該サイトカインとしては、モノカイン、リンフォカイン、インターロイキン、またはケモカインが含まれ、例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−27、IL−28、IL−29、IL−30、IL−31、IL−32、IL−33、INF−α、IFN−β、INF−γ、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、LT−β、またはTNF−α、あるいはhGHなどの成長因子が挙げられる。
【0094】
本発明の組成物中に含まれてもよい追加の添加物は、例えば、乳化剤(例えばトウィーン(Tween(登録商標))など);湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど);着色剤;着味剤;薬学的担体;錠剤形成剤;安定化剤:酸化防止剤;防腐剤などである。
【0095】
また、本発明の薬学的組成物((薬学的活性成分を含まない)第1実施形態、および(薬学的活性成分を含んでいる)第2実施形態)は、アジュバントをさらに含んでいてもよい。したがって、(本発明の薬学的組成物の第2実施形態に関して)アジュバントとしての、または免疫刺激剤としての本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸は、追加の免疫刺激剤/アジュバントと組み合わせられ得る。本発明の範囲内では、これらの目的に適した作用物質/アジュバントは、具体的には(1つ以上の機構によって)(修飾されたまたは修飾されていない)本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の、生物学的特性を向上させる化合物、換言すると、具体的には本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸の免疫刺激作用を高める物質である。本発明にしたがって使用され得る作用物質/アジュバントには、例えば特に限定されないが、上記のような安定化カチオン性ペプチドまたはポリペプチド(プロタミン、ヌクレオリンなど)、スペルミンまたはスペルミジン、カチオン性ポリサッカリド(具体的にはキトサン)、TDM、MDP、ムラミルジペプチド、プルロニック、ミョウバン溶液、水酸化アルミニウム、アジュマー(ADJUMER(商標))(ポリホスファゼン);リン酸アルミニウムゲル;藻類由来のグルカン;アルガムリン(algammulin);水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン);タンパク質高吸収性水酸化アルミニウムゲル;低粘性水酸化アルミニウムゲル;AFまたはSPT(スクアランのエマルジョン(5%)、トウィーン80(Tween80)(0.2%)、プルロニックL121(1.25%)、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4);アブリジン(AVRIDINE(商標))(プロパンジアミン);BAY R1005(商標)((N−(2−デオキシ−2−L−ロイシルアミノ−b−D−グルコピラノシル)−N−オクタデシルドデカノイル−アミドヒドロアセテート);カルシトリオール(CALCITRIOL(商標))(1α,25−ジヒドロキシ−ビタミンD3);リン酸カルシウムゲル;CAPTM(リン酸カルシウムのナノ粒子);コレラ完全毒素、コレラ毒素−A1−タンパク質−A−D−断片の融合タンパク質、コレラ毒素のサブユニットB;CRL1005(ブロックコポリマーP1205);サイトカイン含有リポソーム;DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド);DHEA(デヒドロエピアンドロステロン);DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン);DMPG(ジミリストイルホスファチジルグリセロール);DOC/ミョウバンの複合体(デオキシコール酸ナトリウム塩);フロイント完全アジュバント;フロイント不完全アジュバント;ガンマイヌリン;ゲルブ(Gerbu)アジュバント(以下の(i)、(ii)および(iii)の混合物、(i)N−アセチルグルコサミニル−(P1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、(ii)ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、(iii)亜鉛−L−プロリン塩の複合体(ZnPro−8);GM−CSF);GMDP(N−アセチルグルコサミニル−(b1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン);イミキモド(imiquimod)(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン);イムセラー(ImmTher(商標))(N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−グリセロールジパルミテート);DRV(脱水−再水和から調製されたイムノリポソームの小胞);インターフェロン−γ;インターロイキン−1β;インターロイキン−2;インターロイキン−7;インターロイキン−12;イスコム(ISCOMS(商標))(「免疫刺激複合体」);イスコプレップ7.0.3.(ISCOPREP7.0.3.(商標));リポソーム;ロキソリビン(LOXORIBINE(商標))(7−アリル−8−オキソグアノシン);LT経口アジュバント(E.coliの易熱性エンテロトキシン(labile enterotoxin)−プロトキシン);任意の組成物のマイクロスフィアおよび微粒子;MF59(商標);(スクアレン−水のエマルジョン);モンタナイドISA51(MONTANIDE ISA51(商標))(精製されたフロイント不完全アジュバント);モンタナイドISA720(MONTANIDE ISA720(商標))(代謝可能な油アジュバント);MPL(商標)(3−Q−デスアシル−4’−モノホスホリル脂質A);MTP−PEおよびMTP−PEのリポソーム((N−アセチル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−(ヒドロキシホスホリルオキシ))エチルアミド、モノナトリウム塩);ムラメタイド(MURAMETIDE(商標))(Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3);ムラパルミチン(MURAPALMITINE(商標))およびD−ムラパルミチン(D−MURAPALMITINE(商標))(Nac−Mur−L−Thr−D−イソGln−sn−グリセロールジパルミトイル);NAGO(ノイラミニダーゼ−ガラクトースオキシダーゼ);任意の組成物のナノスフィアまたはナノ粒子;NISV(非イオン性界面活性剤の小胞);プルーラン(PLEURAN(商標))(β−グルカン);PLGA、PGAおよびPLA(乳酸ならびにグリコール酸の、ホモポリマーおよびコポリマー;マイクロスフィア/ナノスフィア);プルロニックL121(PLURONIC L121(商標));PMMA(ポリメチルメタクリレート);ポッドス(PODDS(商標))(プロテイノイドのマイクロスフィア);ポリエチレンカルバメートの誘導体;ポリ−rA:ポリ−rU(ポリアデニル酸−ポリウリジル酸の複合体);ポリソルベート80(トウィーン80);タンパク質のコクリエート(cochleate)(Avanti Polar Lipids, Inc., Alabaster, AL);スティムロン(STIMULON(商標))(QS−21);クイル−A(Quil−A)(クイル−A(Quil−A)サポニン);S−28463(4−アミノ−otec−ジメチル−2−エトキシメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール);SAF−1(商標)(「シンテックスのアジュバント製剤(Syntex adjuvant formulation)」);センダイプロテオリポソーム(Sendai proteoliposome)およびセンダイ含有脂質のマトリクス;スパン(Span)−85(トリオレイン酸ソルビタン);スペコール(Specol)(マルコール(Marcol)52、スパン(Span)85およびトウィーン(Tween)85のエマルジョン);スクアレンまたはロバン(Robane(登録商標))(2,6,10,15,19,23−ヘキサメチルテトラコサンおよび2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサン);ステアリルチロシン(オクタデシルチロシン塩酸塩);テラミド(Theramid(登録商標))(N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド);テロニル(Theronyl)−MDP(テルムルチド(Termurtide(商標))または[thr 1]−MDP;N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン);Ty粒子(Ty−VLPまたはウイルス様粒子);ワルターリード(Walter−Reed)リポソーム(水酸化アルミニウムに吸着した脂質Aを含有するリポソーム)などが含まれる。また、Pam3Cysなどのリポペプチドも、免疫刺激アジュバントの形態で存在する発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸と組み合わせられるのに特に適切である(「Deresら, Nature 1989, 342: 561-564」参照)。
【0096】
上述のようなアジュバントは、徐放性製剤(depot)および送達に適したアジュバント、同時刺激に適したアジュバント、アンタゴニストとして適切なアジュバントなどのいくつかの種類に分類され得る。好ましい徐放性製剤および送達に適したアジュバントには、例えば、アルミニウム塩(アジュ−ホス(Adju−phos)、アルハイドロゲル(Alhydrogel)、リハイドラゲル(Rehydragel)など)、エマルジョン(CFA、SAF、IFA、MF59、プロバックス(Provax)、タイターマックス(TiterMax)、モンタナイド(Montanide)、バックスフェクチン(Vaxfectin)など)、コポリマー(オプチバックス(Optivax)(CRL1005)、L121、ポロアクスマー(Poloaxmer)4010など)、リポソーム(ステルス(Stealth)など)、コクリート(バイオラル(BIORAL)など)、植物由来のアジュバント(QS21、クイルA(Quil A)、イスコマトリックス(Iscomatrix)、イスコム(ISCOM)など)などが含まれてもよい。好ましい同時刺激に適したアジュバントには、例えば、トマチン、バイオポリマー(PLG、PMM、イヌリンなど)、微生物由来のアジュバント(ロムルチド、デトックス(DETOX)、MPL、CWS、マンノース、CpG7909、ISS−1018、IC31、イミダゾキノリン、アンプリゲン(Ampligen)、リビ529(Ribi529)、イモキシン(IMOxine)、IRIV、VLP、コレラ毒素、易熱性毒素、Pam3Cys、フラジェリン、GPIアンカー、LNFPIII/ルイス(Lewis)X、抗菌性ペプチド、UC−1V150、RSV融合タンパク質、cdiGMPなど)などが含まれてもよい。好ましいアンタゴニストとして適切なアジュバントには、例えば、CGRPニューロペプチドなどが含まれてもよい。
【0097】
Toll様受容体に対する(リガンドとしての)結合親和性のために、免疫刺激化合物であると知られている任意の化合物が、本発明の薬学的組成物中の本発明の核酸によって誘導される免疫応答をさらに刺激する、別の成分として好適に使用されてもよい。上記Toll様受容体は、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12またはTLR13である。
【0098】
本発明の薬学的組成物に加えられてもよい別の種類の化合物は、CpG核酸、具体的にはCpG−RNAまたはCpG−DNAである。CpG−RNAまたはCpG−DNAは、一本鎖CpG−DNA(ssCpG−DNA)、二本鎖CpG−DNA(dsDNA)、一本鎖CpG−RNA(ssCpG−RNA)、または二本鎖CpG−RNA(dsCpG−RNA)であってもよい。CpG核酸は、CpG−RNAの形態であることが好ましく、一本鎖CpG−RNA(ssCpG−RNA)の形態であることがより好ましい。CpG核酸は、少なくとも1つ以上の(分裂促進的な)シトシン/グアニンのジヌクレオチド配列(CpGモチーフ)を含んでいることが好ましい。第1の好ましい態様によれば、こららの配列に含まれている少なくとも1つのCpGモチーフ、換言すればCpGモチーフのC(シトシン)およびG(グアニン)は、メチル化されていない。場合によってはこれらの配列に含まれている別のシトシンまたはグアニンの全ては、メチル化されていてもよいし、メチル化されていなくてもよい。しかし、別の好ましい態様によれば、CpGモチーフのC(シトシン)およびG(グアニン)は、メチル化された形態で存在してもよい。
【0099】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の薬学的組成物はワクチンとして提供されてもよい。本発明のワクチンは、典型的には、本発明の薬学的組成物を含んでいる(本発明の薬学的組成物に相当する)。そのような本発明のワクチン組成物は、ワクチン組成物に組み込まれた特定の種類の薬学的活性成分によって特徴付けられる。通常、薬学的に活性な化合物は、ある抗原に対する特異的免疫応答を誘起する免疫刺激物質である。誘発された特異的免疫応答によって、被検体は、特定の病原体または特定の腫瘍などに対する(能動的なまたは受動的な形式で誘起された)免疫応答を発生させることができる。
【0100】
本発明の薬学的組成物、特にワクチンは、それらが投与される様式によって明確に特徴付けられる。典型的には、本発明の薬学的組成物、特にワクチンは、全身投与されることが好ましい。そのような組成物/ワクチンの投与経路は、典型的には、経皮経路、経口経路、非経口経路(皮下注射または静脈注射を含む)、局所経路、および/または鼻腔内経路を含んでいる。また、本発明の薬学的組成物またはワクチンは、皮内経路、皮下経路、筋肉内経路から投与されてもよい。それ故、組成物/ワクチンは、液体または固体の形態で製剤化されることが好ましい。(上で定義されたような)追加の補助物質は、特にワクチンの免疫原性をさらに増加させることができるので、好ましくは本発明のワクチンに組み込まれてもよい。上で定義されたような1つ以上の補助物質は、便宜上本発明のワクチン中の薬学的活性成分の免疫原性および他の特性に依存して、選択される。
【0101】
本発明の好ましい別の目的によれば、本発明の薬学的組成物、特に好ましくは本発明のワクチンは、以下に一例として挙げられた兆候を治療するために使用される。本発明の薬学的組成物、特に好ましくは本発明のワクチンを用いれば、様々な病理的な免疫応答の欠如と関係するか、免疫応答(好ましくは増強した免疫応答)を必要とする疾患または病気などを、治療という意味合いで処置することができる。ここで、そのような疾患または病気としては、例えば腫瘍特異的なまたは病原体特異的な疾患、感染症などや、あるいはアレルギーまたは自己免疫疾患などの場合と同様に、(過度の)免疫応答をTH1優勢の免疫応答へ移行することによって、および/または過度の免疫応答を被っている患者を脱感作することによって処置され得る疾患が挙げられる。本発明の薬学的組成物による、そのような免疫応答の産生、または既に存在しているが場合によっては不十分である免疫応答の増強は、抗原非特異的な免疫反応を誘発する、該組成物の能力に実質的に基いている。適切な免疫応答にとって重要な要因は、異なるT細胞亜集団の刺激である。Tリンパ球は、典型的には、2つの亜集団Tヘルパー1(Th1)細胞、Tヘルパー2(Th2)細胞に分化する。これらTh1細胞およびTH2細胞により、免疫系は、細胞内病原体(TH1)および細胞外病原体(抗原など)(Th2)を破壊することができる。2つのTh細胞の集団は、それらから産生されるエフェクタータンパク質(サイトカイン)のパターンについて異なっている。したがって、Th1細胞は、マクロファージおよび細胞傷害性T細胞を活性化することによって、細胞性免疫応答を支援する。これに対し、Th2細胞は、B細胞を刺激して、形質細胞へ転換させ、(例えば抗原に対する)抗体を形成させることによって体液性免疫応答を促進する。それ故、Th1/Th2比は免疫応答において非常に重要である。本発明に関しては、免疫応答のTh1/Th2比は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸を含んでいる、本発明の薬学的組成物によって、細胞性免疫応答(すなわちTh1応答)の方向に変更されることが好ましい。これによれば、優勢的な細胞性免疫応答が誘導される。この変更が起こり、優先的なまたは排他的ですらあるTH1免疫応答が発生するだけで、上述した兆候は、効率的に治療され得る。それ故、本発明の薬学的組成物または本発明のワクチンは、腫瘍特異的な、または病原体特異的な免疫応答を誘発するために使用されることが好ましい。本発明のそのような薬学的組成物またはワクチンは、抗原提示細胞(APC)の免疫応答を増強させるために使用され得ることが特に好ましい。同様に、本発明の薬学的組成物またはワクチンは、癌または腫瘍疾患を治療するために使用され得ることも特に好ましい。当該癌または腫瘍疾患は、結腸癌、メラノーマ、腎癌(renal carcinoma、renal cancer)、リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球白血病(CLL)、胃腸腫瘍、肺癌(pulmonary carcinoma、lung cancer)、神経膠腫、甲状腺腫瘍、乳癌(mammary carcinoma、breast cancer)、前立腺腫瘍、肝癌(hepatoma、liver cancer)、様々ウイルスによって誘導される腫瘍(例えば、パピローマウイルスによって誘導される癌(例えば子宮頸癌)、腺癌、ヘルペスウイルスによって誘導される腫瘍(例えばバーキットリンパ腫、EBVによって誘導されるB細胞リンパ種)、B型肝炎によって誘導される腫瘍(肝細胞癌)、HTLV−1およびHTLV−2によって誘導されるリンパ種など)、聴覚神経腫/神経鞘腫、子宮頚癌(cerevical cancer、cervical carcinoma)、咽頭癌、肛門癌、神経膠芽腫、リンパ腫、直腸癌、星状膠細胞腫、脳腫瘍、胃癌、網膜芽腫、基底細胞腫、転移性脳腫瘍(brain metastases)、髄芽腫、膣癌、膵癌(pancreatic cancer、pancreatic carcinoma)、精巣癌、メラノーマ、甲状腺癌、膀胱癌、ホジキン症候群、髄膜腫、シュネーベルグ病、気管支癌、下垂体腫瘍、菌状息肉腫、食道癌(oesophageal cancer、oesophageal carcinoma)、カルチノイド、神経鞘腫、棘細胞腫、バーキットリンパ種、喉頭癌、胸腺腫、子宮体癌(corpus carcinoma)、骨癌、非ホジキンリンパ種、尿道癌、CUP症候群、頭部/頸部腫瘍、乏突起膠腫、外陰癌、腸癌、結腸癌、イボ類(wart involvement)、小腸腫瘍、頭蓋咽頭腫、卵巣癌(ovarian carcinoma、ovarian cancer)、軟部組織の腫瘍/肉腫、子宮内膜癌、転移性肝癌(liver metastases)、陰茎癌、舌癌、胆嚢癌、白血病、形質細胞腫、子宮癌、眼瞼腫瘍、前立腺癌などから選択されることが好ましい。脂質修飾された核酸に使用されているか、または上記組成物中に薬学的活性成分として使用されている脂質が、α−トコフェロール(ビタミンE)、D−α−トコフェロール、L−α−トコフェロール、D,L−α−トコフェロール、またはビタミンEのコハク酸塩(VES)である場合、そのことは特に好ましい。α−トコフェロール(ビタミンE)は、それほど有毒ではなく、強力な抗腫瘍活性を示す(「A. Bendich, L.J. Machlin Am. J. Clin. Nutr. 48 (1988) 612」)。このため、癌の治療に非常に有望であると考えられる。腫瘍細胞の増殖抑制、または腫瘍細胞に対する細胞障害活性に関する説明として、2つの機構が特に知られている。一方では、ビタミンEは強力な酸化防止剤であり、良好なラジカル受容体であるが(「C. Borek Ann. NY Acad. Sci. 570 (1990) 417」):他方では、免疫応答を刺激することにより、ビタミンEは腫瘍の成長を妨げることができる(「G. Shklar, J. Schwartz, D.P. Trickler, S. Reid J. Oral Pathol. Med. 19 (1990) 60」)。また最近の研究では、腫瘍細胞(口腔扁平上皮癌)中の腫瘍抑制遺伝子p53の発現と、ビタミンEコハク酸塩(VES)を用いた治療との間の関連性が発見された(「J. Schwartz, G. Shklar, D. Trickler Oral Oncol. Europ. J. Cancer 29B (1993) 313」)。その結果、腫瘍抑制因子として作用する野生型p53の産生の刺激と、発癌活性を発達させる変異型p53の減少とを観察することが可能になった。興味深いことに、上記腫瘍細胞に対するVESの生物学的活性は、2つの観点において用量依存的である。すなわち、生理学的用量(0.001から50μmol/l)では、より一層の細胞増殖が観察され、薬理学的用量(100から154μmol/l)では、細胞増殖が阻害される。このことは、細胞培養において示された(「T.M.A. Elattar, A.S. Virji Anticancer Res. 19 (1999) 365」)。また、VESを用いて処置することによって、種々の乳癌細胞株に対してアポトーシスを誘導することが可能になっている(「W. Yu, K. Israel, Q.Y. Liao, C. M. Aldaz, B.G. Sanders, K. Kline Cancer Res. 59 (1999) 953」)。誘導されたアポトーシスは、FasリガンドとFas受容体との相互作用によって開始される。今まで対応する細胞株ではそのような機構を観察することができなかったので、このことは、特に重要視されるべきである。ビタミンEには、芳香環上のメチル基の数よび位置が異なっている種々の異性体が存在する。記載された各研究では、天然に存在するビタミンE(α−トコフェロール)の生物学的に最も活性な形態が使用された。この分子は3つの光学活性中心を含んでいるので、このことは、種々の立体異性体においてもやはり起こるものである。ビタミンEの天然の形態は、RRR−α−トコフェロール(かつてのD−α−トコフェロール)であるが、ラセミ化合物(D,L−α−トコフェロール)が、近頃主に使用されている。上述したビタミンEの全形態も本発明の範囲内の脂質として包含される。
【0102】
また本発明の薬学的組成物は、感染症の治療のために使用されることが特に好ましい。そのような感染症は、特に限定されないが、インフルエンザ、マラリア、SARS、黄熱病、AIDS、ライムボレリア症、リーシュマニア症、炭疽病、髄膜炎、ウイルス感染症、細菌感染症、および寄生虫、原虫または真菌によって引き起こされる感染症、またはエキノコックス(魚の条虫、キツネの条虫、イヌの条虫、シラミ、ウシの条虫、ブタの条虫、小型条虫)によって引き起こされる感染症から選択されることが好ましい。上記ウイルス感染症は、AIDS、尖圭コンジローマ、中空のイボ(hollow wart)、デング熱、三日熱、エボラウイルス、感冒、初夏髄膜脳炎(early summer meningoencephalitis(FSME))、流感、帯状ヘルペス、肝炎、I型単純ヘルペス、II型単純ヘルペス、帯状疱疹、インフルエンザ、日本脳炎、ラッサ熱、マールブルグウイルス、麻疹、口蹄疫、単核球症、ムンプス、ノーウォークウイルス感染症、パイファー腺熱、天然痘、ポリオ(子供の跛行)、仮性クループ、第五病、狂犬病、イボ、西ナイル熱、水痘、サイトメガロウイルス(CMV)などである。上記細菌感染症は、流産(前立腺炎症)、炭疽病、虫垂炎、ボレリア症、ボツリヌス中毒、カンピロバクター、クラミジア・トラコマチス(尿道の炎症、結膜炎)、コレラ、ジフテリア、鼠径部肉芽腫(donavanosis)、喉頭蓋炎、発疹チフス、ガス壊疽、淋病、野兎病、ヘリコバクターピロリ、百日咳、鼠径リンパ肉芽腫、骨髄炎、在郷軍人病、ハンセン病、リステリア症、肺炎、髄膜炎、細菌性髄膜炎、炭疽病、中耳炎、マイコプラズマホミニス、新生児敗血症(絨毛羊膜炎)、壊疽性口内炎、パラチフス、ペスト、ライター症候群、ロッキー山紅斑熱、パラチフス菌(salmonella paratyphus)、チフス菌(Salmonella typhus)、猩紅熱、梅毒、破傷風、淋疾、ツツガムシ病、結核、チフス、膣炎(vaginitis、colpitis)、軟性下疳などである。上記寄生虫、原虫または真菌によって引き起こされる感染症は、アメーバ症、ビルハルチア病、シャーガス病、足白癬、酵母菌の斑点(yeast fungus spot)、疥癬、マラリア、オンコセルカ症(河川盲目症)、または真菌症、トキソプラズマ症、トリコモナス症、トリパノソーマ症(睡眠病)、内臓リューシュマニア症(visceral Leishmaniosis)、オムツ皮膚炎(nappy/diaper dermatitis)、住血吸虫症、魚中毒(シガテラ中毒)、カンジダ症、皮膚リューシュマニア症(cutaneous Leishmaniosis)、ランブリア症(ジアルジア症)、もしくは睡眠病などである。
【0103】
したがって、本発明の核酸、または本発明の薬学的に活性な組成物は、アレルギー性疾患またはアレルギー性の病気を治療するための、薬剤を調製するために使用されてもよい。アレルギーは、特定の外来抗原またはアレルゲンに対する、異常なまでの後天性の免疫学的な過敏症を、典型的に含む病気である。アレルギーは、普通、上記抗原またはアレルゲンに対する局所的なまたは全身性の炎症応答を招き、該アレルゲンに対する免疫を体内にもたらす。これに関連して、アレルゲンは、例えば草、花粉、カビ、薬物または多くの環境刺激などを包含している。理論に縛られることなく、数種の異なる病気の機構が、アレルギーの発達に関与していると考えられている。P.GellおよびR.Coombsによる分類体系によれば、語句「アレルギー」は、古典的なIgE機構により引き起こされるI型過敏症に限定されている。I型過敏症は、IgEによる肥満細胞および好塩基球の過度の活性化を特徴としている。この過度の活性化によって、鼻水のような穏やかな症状から、命を脅かすアナフィラキシーショックや死を招き得る全身性免疫反応をもたらされる。良く知られた種類のアレルギーは、特に限定されないが、(鼻粘膜の腫脹を引き起こす)アレルギー性喘息、(結膜の掻痒および充血を引き起こす)アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎(「花粉症」)、アナフィラキシー、血管浮腫(angiodema)、アトピー性皮膚炎(湿疹)、じんましん(urticaria、hives)、好酸球増加症、呼吸アレルギー(respiratory)、虫刺されに対するアレルギー、(様々な発疹(湿疹、じんましん(hives、urticaria))、および(接触)皮膚炎などを含み、それらを引き起こす)皮膚アレルギー、食物アレルギー、薬に対するアレルギーなどを包含している。本発明に関して、例えば、タンパク質としてのアレルゲン、または該タンパク質としてのアレルゲンをコードするmRNA(またはDNA)を、本発明の核酸と組み合わせて含んでいる薬学的組成物が提供される。上記タンパク質としてのアレルゲンとしては、例えばネコのアレルゲン、ホコリのアレルゲン、ダニの抗原、植物の抗原(例えばカバノキの抗原)などに由来するアレルゲンが挙げられる。本発明の薬学的組成物は、(過度の)免疫応答を、より強いTH1応答へ移行させてもよく、これにより望ましくないIgE応答を抑制するか、または弱める。
【0104】
また本発明は、自己免疫疾患を治療するための薬剤を提供する。自己免疫疾患は、各疾患の臨床病理学的特徴を基にして、全身性自己免疫疾患、臓器特異的自己免疫疾患、および局所性自己粘液疾患に、概して分けることができる。自己免疫疾患は、全身性症候群および局所性症候群のカテゴリーに分類されてもよい。全身性症候群は、SLE、シェーグレン症候群、強皮症、リウマチ性関節炎および多発性筋炎を含んでいるものである。また局所性症候群は、内分泌学的なもの(DM1型、橋本甲状腺炎、アジソン病など)、皮膚科学的なもの(尋常性天疱瘡)、血液学的なもの(自己免疫性溶血性貧血)、または神経的なもの(多発性硬化症)であってもよいし、あるいは体組織の任意の限局性腫瘤を実質的に含んでいてもよい。治療される自己免疫疾患は、I型自己免疫疾患、II型自己免疫疾患、III型自己免疫疾患、またはIV型自己免疫疾患、あるいはII型糖尿病から成る群から選択されてもよい。ここで、該I型自己免疫疾患、II型自己免疫疾患、III型自己免疫疾患、またはIV型自己免疫疾患は、例えば、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ、糖尿病、I型糖尿病(真性糖尿病)、全身性エリテマトーデス症(SLE)、慢性多発性関節炎、バセドー氏病、慢性肝炎の自己免疫形成、潰瘍性大腸炎、I型アレルギー疾患、II型アレルギー疾患、III型アレルギー疾患、IV型アレルギー疾患、線維筋痛、抜け毛、ベヒテレフ病、クローン病、重症筋無力症、神経皮膚炎、リウマチ性多発筋痛症、進行性全身性硬化症(PSS)、乾癬、ライター症候群、リウマチ性関節炎、乾癬、脈管炎などである。
【0105】
免疫系が自己抗原に対する免疫反応をなぜ誘導するのかに関する正確な様式は、今までのところ解明されていないが、因果関係の究明についていくつかの発見がなされている。つまり、自己反応は、T細胞のバイパスが原因である可能性がある。正常な免疫系は、B細胞が抗体を大量に産生できる前に、T細胞によるB細胞の活性化を必要とする。T細胞のこの要件は、超抗原を産生する生物による感染などといった稀なことが起こったときに、迂回され得る。該超抗原は、B細胞の多クローン性の活性化を開始することや、またはT細胞受容体のβサブユニットに非特異的に直接的に結合することによって、T細胞の多クローン性の活性化さえも開始することができる。もう1つ別の説明をすると、自己免疫疾患は、分子擬態によるものであると考えられる。外因性の抗原は、ある種の宿主抗原に類似の構造を共有していることがある。このため、(自己抗原を擬態している)この抗原に対して産生された抗体も、理論上は、宿主抗原に結合することができ、免疫応答を増強することができる。分子擬態の最も目だった形態は、グループAのベータ−溶血性連鎖球菌(haemolytic streptococci)において観察される。該溶血性連鎖球菌は、ヒトの心筋と抗原を共有しており、リウマチ熱という心臓の症状に関与する。よって、本発明は、(タンパク質としての、あるいは自己抗原タンパク質をコードするmRNAまたはDNAとしての)自己抗原と、通常は免疫系を脱感作することができる本発明の核酸とを含有している、薬学的組成物を提供することができる。
【0106】
また、本発明は、上記兆候を治療するための本発明の薬学的組成物もしくは本発明のワクチンの調製における、上記のような本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、またはそれらの両方の使用にも関する。上記兆候の治療としては、例えば、上記腫瘍、自己免疫疾患、アレルギーおよび感染症の治療が挙げられる。また、本発明は、上記のような腫瘍または感染症を治療するための、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、またはそれらの両方の(治療的)使用を包含している。
【0107】
また、本発明は、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、またはそれらの両方、および/あるいは本発明の薬学的組成物、ならびに/あるいは本発明のワクチンを含んでいるキットを包含している。該キットは、場合によっては、本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸、および/または本発明の薬学的組成物、および/または本発明のワクチン、の投与および用量に関する情報を有する、使用のための技術説明書をさらに含んでいる。
【0108】
癌、感染症、自己免疫疾患およびアレルギーから成る群から選択される疾患または病気の治療が必要な患者に、薬学的に効果的な量の本発明の核酸を投与することによって、癌、感染症、自己免疫疾患およびアレルギーから成る群から選択される疾患または病気を治療する方法。
【0109】
本発明は、図面および実施例によって以下でさらに説明されるが、これら図面および実施例は、本発明の主題をこれらに限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0110】
本発明の一般式(I):G1XmGnで表される核酸、または一般式(II):C1XmCnの核酸の形態である核酸は、それ自体免疫刺激剤として使用され得る。本発明の核酸は、好ましくは、脂質修飾を含んでおり、それ自体使用され得る(例えば薬学的に活性な担体または媒体に溶解され得る)。これにより、本発明の核酸は、先天性免疫系を刺激し、非特異的な免疫応答を誘発する。この免疫刺激特性は、先天性免疫応答を積極的に刺激するような技術的に公知の他の化合物を、本発明の核酸に加えることにより、顕著に向上され得る。例えば、本発明の3’コレステロール修飾されたホスホジエステルオリゴヌクレオチドは、特定の腫瘍細胞に対する細胞毒性効果を誘導することができる、免疫刺激アジュバントとして開示されている。この驚くべき効果は、使用された本発明の一般式(I)または一般式(II)で表される、場合によっては脂質修飾された核酸の免疫刺激作用に、実質的に基づくものである。この免疫刺激作用には、3’または5’修飾(脂質修飾)の性質が、重要な役割を担っている。要約すると、一般式(I)または一般式(II)で表される核酸の免疫刺激特性により、これら分子は、非特異的免疫刺激応答を誘発するための治療剤として効果的に機能し、この非特異的免疫刺激応答は、上記分子自体(免疫刺激剤)によって誘発されるか、または他の薬学的活性成分(一般的には薬学的活性化合物に向けられる特異的な免疫応答を活性化する免疫刺激成分である)と併用されて(アジュバントとして)誘発される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】配列番号1および2に示される本発明の核酸による、マウスBMDC(骨髄樹状細胞)の刺激を示す図である。配列番号1の場合において、刺激を最も明白に観測することができる。免疫刺激の評価基準として、IL−6およびIL−12の放出(ng/ml)を測定した(実施例2参照)。陽性対照として、プロタミンと複合体を形成された、ベータ−ガラクトシダーゼ(lacZ)の、免疫を刺激するキャップされていない野生型mRNAを使用した。
【図2】配列番号1および2に示される本発明のオリゴヌクレオチドによる、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激を示す図である。配列番号1の場合において、刺激を最も明白に観測することができる。免疫刺激の評価基準として、インターロイキン−6(IL−6)およびTNFアルファの放出(ng/ml)を測定した(実施例2参照)。
【図3】配列番号1、2、3、4および5に示される本発明のオリゴヌクレオチドによる、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激を示す図である。配列番号1の場合において、刺激を最も明白に観測することができる。免疫刺激の評価基準として、インターロイキン−6(IL−6)の放出(ng/ml)を測定した(実施例2参照)。
【図4】本発明の一般式(I)または一般式(II)のどちらかで表される核酸に対する、脂質による本発明の種々の実現可能な末端修飾を示す図である。具体的には、脂質修飾されたリンカーおよび二官能性ペプチドのそれぞれが示されており、これらを、核酸配列(略してODN配列)との共役または合成に使用することができる。
【図5】例えばトコフェロール修飾が、核酸の3’末端に導入されることができる、(三官能性の)脂質修飾されたリンカーについての合成ルートの例を説明する図である。例示されたそのような化合物は、本発明の5’または3’−脂質修飾された核酸、あるいは本発明のアジュバントを調製する際の、中間体を表している。
【図6】二官能性脂質(例えばPEG)による核酸の3’修飾を可能にする、スクシニルアンカーを有する二官能性脂質の例を示す図である。
【図7】核酸の5’末端への脂質修飾されたアミダイトの共役を、図式的に示す図である。
【図8】配列番号78および79(一般式(I))に示される本発明のオリゴヌクレオチドによる、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激を示す図である。配列番号78の場合において、刺激を最も明白に観測することができ、配列番号79の場合においても刺激を観測することとができる。
【図9】プロタミンを用いたとき、または用いないときの、配列番号78(一般式(I))および81(一般式(II))に示される本発明のオリゴヌクレオチドによる、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激を示す図である。配列番号81の場合では、プロタミンを用いたときに、より良好な刺激を最も明白に観測することができる。驚いたことに、配列番号78の場合では、プロタミンを用いたときも、用いないときも、同様の刺激を観測することができる(図9参照)。
【図10】配列番号81、82および83(一般式(II))に示される本発明のオリゴヌクレオチドによる、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激を示す図である。それぞれの場合、つまり配列番号81、82および83の場合において、顕著な刺激を最も明白に観測することができる。
【図11】本発明の一般式(I)で表されるオリゴヌクレオチドにより、ヒトPBMC(hPBMC)を刺激した後の、TNFアルファの放出を示す図である。オリゴフェクタミンを用いて、および用いずに、トランスフェクションを実施した。オリゴフェクタミンを用いてトランスフェクションされた配列は、(a)配列番号1(Seq.1)、(b)対照としてのトコフェロールで3’5’修飾された配列番号1、(c)RNA40(配列番号87)であり、オリゴフェクタミンを用いずにトランスフェクションされた配列は、(d)培地(配列無し)、(e)配列番号1(Seq.1)、および(f)トコフェロールで3’5’修飾された配列番号1である。配列番号1(Seq.1)およびトコフェロールで3’5’修飾された配列番号1を、オリゴフェクタミンと一緒にトランスフェクションしたときに、最も良好な結果が得られた。結果的に、トコフェロールは、RNAのトランスフェクションを増加させ、これにより免疫刺激を向上させた。
【図12】本発明の一般式(I)で表されるオリゴヌクレオチドを、静脈内(i.v.)注射した後の、IL−12の全身性の放出を示す図である。グラフには、(a)対照としての緩衝液、(b)RNA40(配列番号87)、(c)オリゴフェクタミンと複合体を形成されたRNA40(配列番号87)、(d)配列番号1(Seq.1)、および(e)トコフェロールで3’5’修飾された配列番号1を用いて、トランスフェクションした結果が示されている。グラフから分かるように、トコフェロールで5’3’修飾された本発明の配列番号1から最良の結果が得られた。したがって、この本発明の配列番号1によって、顕著な免疫刺激が得られた。
【図13】比較実験を説明する図であり、ヒトPBMC(hPBMC)の免疫刺激およびTNFアルファの放出に対する、配列番号1に示される本発明の配列の種々の修飾の効果を示す図である。該実験では、コレステロールで修飾された配列番号1(一般式(I))、トコフェロールで修飾された配列番号1(一般式(I))、およびトコフェロールで3’5’修飾された配列番号1を使用した。最良の結果は、後者の修飾により得られた。しかし、コレステロールまたはトコフェロールのどちらかによる配列番号1の修飾も、hPBMCの顕著な刺激をもたらしている。
【図14】次の(a)〜(d)を用いた接種の腫瘍の大きさに対する効果を示す図である:(a)IFA、(b)IFAおよびニワトリの卵白アルブミン、(c)IFA、ニワトリの卵白アルブミン、およびRNA40(配列番号87)、ならびに(d)IFA、ニワトリの卵白アルブミン、およびプロタミンと複合体を形成されているときの本発明の配列番号1に示される配列。最良の結果、すなわち腫瘍の大きさの顕著な減少は、IFA、ニワトリの卵白アルブミン、および本発明の配列番号1に示される配列(a)を用いたときに得られた。このことは、本発明の配列が、優れたアジュバント特性を示すことを示している。
【図15】次の(a)〜(d)を用いた腫瘍内注射の腫瘍の大きさに対する効果を示す図である:(a)PBSのみ、(b)トコフェロールで3’5’修飾された本発明の配列番号1のPBS溶液、(c)本発明の配列番号1のPBS溶液、および(d)RNA40(配列番号87)のPBS溶液。最良の結果、すなわち腫瘍の大きさの顕著な減少は、トコフェロールで3’5’修飾された本発明の配列番号1を用いたときに得られた。また、その次の結果は、修飾されていない本発明の配列番号1に示される配列を用いたときに得られた。
【発明を実施するための形態】
【0112】
〔実施例〕
<1.典型的な本発明の一般式(I)で表される核酸の合成>
本発明の一般式(I):GlXmGn(配列番号1−80)で表される核酸、本発明の一般式(II):ClXmCn(配列番号81−83)で表される核酸を、例えば、RNAオリゴヌクレオチドを、ホスホロアミダイト化学反応を用いた自動固相合成によって調製した。それぞれの場合において、RNAに特異的なヌクレオチドの2’ヒドロキシル基を、TBDMS保護基で保護した。ホスホロチオエートの合成では、ビューケージ(Beaucage)試薬を酸化のために使用した。担体物質の開裂、および塩基に不安定な保護基の開裂は、メチルアミンを用いて実施し、TBDMS保護基の開裂は、トリエチルアミンハイドロフルオライドを用いて行った。
【0113】
未精製産物を、イオン対クロマトグラフィーもしくはイオン交換クロマトグラフィーまたはそれらの2つの方法の組み合わせの何れかを用いるHPLCにより精製し、脱塩してから乾燥した。産物の正確な塩基の組成および純度を、質量分析法によって検査した。
【0114】
<2.本発明の一般式(I)で表される典型的な核酸によるインビトロでの免疫刺激>
(a)マウスのBDMC(骨髄由来樹状細胞)を刺激するために、オリゴフェクタミン(3μl)を、FCSフリーIMDM培地(30μl)(バイホイタッカー(Biowhittaker)、カタログ番号BE12−722F)と混合し、室温で5分間インキュベートした。RNAの形態である、配列番号1−2の本発明の一般式(I)で表される核酸(6μg)を、FCSフリーIMDM培地(60μl)と混合し、さらにオリゴフェクタミン/IMDMと混合して、室温で20分間インキュベートした。それから、ウェル内の200μlのFCSフリーIMDM培地中に、200,000個のマウスBDMCを含んでいる、96ウェルのマイクロタイターカルチャープレートを用意し、この混合物(33μl)を、上記ウェル内に配置して、一晩培養した。4時間後、100μlの20%FCS含有IMDMを追加した。それから16時間共インキュベーションした後、上清を除去し、サイトカインELISAによって、インターロイキン−6(IL−6)、およびインターロイキン−12(IL−12)について試験した。プロタミンと複合体を形成されたベータガラクトシダーゼ(lacZ)の、免疫を刺激するキャップされていない野生型mRNAを使用した比較試験を、本発明の配列番号1および2と同様に行った。
【0115】
RNAの形態で存在している、本発明の一般式(I)で表される核酸(具体的には、配列番号1および2に示される本発明の配列の核酸)が、良好な免疫刺激特性を有していることを示すことができた。特に配列番号1は、比較のために使用された、βガラクトシダーゼ(lacZ)の免疫を刺激するキャップされていない野生型mRNAの刺激特性を、実質的に上回る免疫刺激を示した。
【0116】
(b)ヒトPBMCは、フィコール密度勾配を行い、X−VIVO−15培地(バイホイタッカー,カタログ番号BE04−418Q)中で一晩培養することによって、得られた。該X−VIVO−15培地は、RNAの形態である本発明の一般式(I)で表される核酸(10μg/ml)の存在下において、1%グルタミンおよび1%ペニシリンを含んでいた。また上記核酸の具体的な配列は、それぞれ本発明の配列番号1および2(図2参照)、ならびに配列番号1−5(図3参照)に示されている。
【0117】
刺激するために、オリゴフェクタミン(3μl)を、X−VIVO−15培地(30μl)(バイホイタッカー,カタログ番号BE04−418Q)と混合し、室温で5分間インキュベートした。RNAの形態である本発明の一般式(I)で表される核酸(6μg)を、X−VIVO−15培地(60μl)(バイホイタッカー,カタログ番号BE04−418Q)と混合し、さらにオリゴフェクタミン/X−VIVO培地と混合し、室温で20分間インキュベートした(なお、上記核酸の具体的な配列は、それぞれ本発明の配列番号1および2(図2参照)、ならびに配列番号1−5(図3参照)に示されている)。ウェル内の200μlのX−VIVO−15培地(バイホイタッカー,カタログ番号BE04−418Q)中に200,000個のPBMCが含まれている96ウェル−マイクロタイタープレートを用意し、該ウェルにこの混合物(33μl)を配置して一晩培養した。16時間、共インキュベートした後、上清を除去して、インターロイキン−6(IL−6)およびインターロイキン−12(IL−12)、ならびにTNFαを、サイトカインELISAによりテストした。また、免疫刺激性オリゴRNA40(5’−GCCCGUCUGUUGUGUGACUC−3’、配列番号87)と、配列番号1および2の本発明の配列との比較テストを同じように実施した。
【0118】
RNAの形態である、本発明の一般式(I)で表される核酸(具体的には、配列番号1および2(図2参照)、ならびに配列番号1−5(図3参照)に示される本発明の配列をそれぞれ有する核酸)が、良好な免疫刺激特性を有していることを示すことができた。特に配列番号1は、比較のために使用された、RNAオリゴヌクレオチドの刺激特性を、実質的に上回る免疫刺激を示した。
【0119】
<3.本発明の一般式(I)で表される典型的な核酸によるインビボでの免疫刺激−アジュバントとしての使用>
BALB/cマウス(1グループ当たり5匹)に、β−ガラクトシダーゼタンパク質および(本明細書で定義されたような)アジュバントを、0日目および10日目に注射し、20日目にマウスを犠牲にした。ELISAによるβ−ガラクトシダーゼタンパク質に対する抗体テストのために血清を使用し、また上記のインビトロの培養と同じようにして、IL−6、IL−12およびTNFαの値を測定した。
【0120】
<4.1−(4,4’−ジメトキシトリチル)−ポリエチレングリコール(DMT−PEG1500)の合成>
【0121】
【化1】
(手法)
21gのPEG1500(14mmol)を、乾燥させるために30mlの無水ピリジンにそれぞれ2回溶解する。各溶解の後、無水ピリジンを共沸により留去する。乾燥した出発物質を、35mlの無水ピリジンに溶解する。この溶液に対して、35mlの無水ピリジンに溶解した、4.7gの4,4’−ジメトキシトリチルクロライド(13.9mmol)を、30分間にわたって滴下して加える。その後さらに2時間、室温で攪拌し、その間の反応の進行を、TLCによって監視する。UVランプによるDMT基の検出に加えて、TLCプレートを2つの工程で展開する。工程1:TLCプレートを、DMTを検出するためにHCL飽和雰囲気下において展開する。工程2:TLCプレートを、PEGを検出するためにヨウ素チャンバーにおいて展開する。またPEGは、ドランジェンドルフ−バーガースプレー試薬を用いて、検出することができる。反応が完了すると、溶媒を除去し、産物を50mlのDCM中に溶かす。有機相を25mlの5%NaHCO3溶液で2度洗浄し、さらに25mlのH2Oで2度洗浄する。PEGは親水性および疎水性の両方の性質を兼ね備えているので、水相と有機相との分離は煩雑である。Na2SO4の上で、乾燥させた後、溶媒を除去し、未精製産物を、DCM/MeOH/TEA=18:2:0.5を用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。産物を含有する画分を、TLCによって同定し、それら画分を組み合わせて、乾燥するまで濃縮する。黄色がかった油が得られる。この油は、高真空下において徹底的に乾燥すると、ワックス様の固体になる。
収量:18.3g(理論値の72.5%)
TLC(DCM/MeOH/TEA=18:2:0.5):Rf値≒0.55(シグナルは、PEGのモル質量分布によって広がった)。
【0122】
<5.1−(4,4’−ジメトキシトリチル)−ヘキサエチレングリコール(DMT−HEG)の合成>
(手法)
10gのヘキサエチレングリコール(35mmol)を、30mlの無水ピリジンと2度、同時蒸発させることによって、乾燥させて、それから、20mlの無水ピリジンに溶解させる。実施例1の手法と同じようにして、HEGを、50mlの無水ピリジンに溶解した10gのDMT−Cl(29.5mmol)と反応させる。酢酸エチル/TEA=95:5を用いて、カラムクロマトグラフィーによって精製する。粘性の黄色油が、乾燥産物として得られる。
収量:12.5g(理論値の60.5%)
TLC(DCM/MeOH=95:5):Rf値t=0.59
MS(FD):m/z583.9(M+)
1H-NMR(CDCl3):δ3.21(t,DMT-O-CH2-)、3.47-3.68(m, -CH2-)、3.76 (s,-CH3)、6.77-7.46 (m、芳香族化合物)。
【0123】
<6.1−(4,4’−ジメトキシトリチル)−ポリエチレングリコールコハク酸(DMT−PEG−Suc)の合成>
【0124】
【化2】
以下の手法は、DMT−PEG1500、およびDMT−HEGのために使用することができる。
【0125】
(手法)
5gのDMT−PEG1500(2.8mmol)を、25mlのDCM/ピリジン=5:1に溶解する。得られた溶液に対して、7mlのピリジンに溶解した420mgの無水コハク酸(4.2mmol、すなわち1.5当量)、および3mlのピリジンに溶解した170mgのDMAP(1.4mmol、すなわち0.5当量)を加える。室温で12時間攪拌したあと、溶媒を減圧下で除去し、残渣をDCMに溶かす。有機相を、NaHCO3の水溶液(10%)で3度徹底的に洗浄し、NaCl飽和水溶液で2度徹底的に洗浄する。これにより過剰のコハク酸を分離除去する。Na2SO4上で乾燥した後、溶媒を除去する。高真空下で徹底的に乾燥した後、コハク酸塩を、これ以上仕上げることなく、アミノ修飾された担体物質との共役に使用することができる。
TLC:DMT-PEG1500-Suc(DCM/MeOH/TEA=18:2:0.5): Rf値=0.41
DMT-HEG-Suc(DCM/MeOH=9:2): Rf値=0.70。
【0126】
<7.1−トシル−2,3−イソプロピリデングリセロールの合成>
【0127】
【化3】
(手法)
200mmolのイソプロピリデングリセロール(26.4g)を、200mlのアセトニトリルに溶解し、22.2gのトリエチルアミン(220mmol)を、そこに加える。220mmolのp−トルエンスルホン酸クロライド(41.9g)を、250mlのアセトニトリルに溶解し、攪拌しながら2時間にわたって反応混合物に滴下して加える。攪拌を室温で、さらに20時間にわたって続け、白色沈殿を形成させる。反応が完了すると、この白色沈殿をろ過する。溶媒を除去し、未精製産物を、n−へキサン/酢酸エチル=2:1を用いて、カラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。産物を含有する画分を、TLCによって同定し、該画分を組み合わせて、乾燥するまで濃縮する。産物を高真空下において乾燥させる。黄色がかった油が得られる(「L.N. Markovskiiら J. Org. Chem. UdSSR 26 (1990) 2094.」)。
収量:31.3g(理論値の54.7%)
TLC(n−ヘキサン/酢酸エチル=2:1): Rf値=0.2
MS(FD):m/z272.0(M+-CH) (計算値286.3)
1H-NMR (CDCl3): δ1.31(s);1.34(s);2.45(s);3.74-3.79(m);3.90-4.08 (m);4.23-4.32(m);7.36(d);7.77 (d)
13C-NMR: δ21.7;25.2;26.7(メチル−C);66.2;69.5;72.9(グリセロール−C);110.1(メチレン−C);128.0;129.9;132.7;145.1(芳香族化合物-C)。
【0128】
<8.2,3−イソプロピリデン−1−D,L−α−トコフェロールグリセロール(Toc1)の合成>
【0129】
【化4】
(手法)
5.6gの粉末状の水酸化カリウム(100mmol)を、56mmolのD,L−α−トコフェロール(24.06g)のDMSO溶液(280ml)に加える。遮光して室温で、2時間攪拌した後、20mlのDMSOに溶解した56mmolの1−トシル−2,3−イソプロピリデングリセロール(16g)を、滴下して加え、60℃でさらに12時間攪拌を続ける。それから反応混合物を、1lの氷水で加水分解して、水相を1.5lのトルエンで抽出する。硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、溶媒を除去する。未精製産物を、n−ヘキサン/酢酸エチル=1:1を用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。産物を含有する画分をTLCにより同定し、該画分を組み合わせて、乾燥するまで濃縮する。産物を高真空下において乾燥し、遮光して保存する。黄色がかった油が得られる(「D.W. Will, T. Brown Tetrahedron Lett. 33 (1992) 2729.」)。
収量:24.2g(理論値の79.2%)
TLC(n−ヘキサン/酢酸エチル=1:1):Rf値=0.69
MS (FD):m/z544.6(M+)。
【0130】
<9.1−D,L−α−トコフェリルグリセロール(Toc2)の合成>
【0131】
【化5】
(手法)
16.9mmolのTocl(9.2g)を、100mlのHCl(2M)/THF(1:1)に溶解し、遮光して室温で2時間攪拌する。それから溶媒を除去し、50mlの無水エタノールを、残渣に2回加え、混合物を再び乾燥するまで濃縮する。未精製産物を、ジエチルエーテル/トルエン=1:1を用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。産物を含有する画分をTLCにより同定し、該画分を組み合わせて、乾燥するまで濃縮する。産物を高真空下において乾燥し、遮光して保存する。黄色の油が得られる。
収量:6.6g(理論値の77.5%)
TLC(ジエチルエーテル/トルエン=1:1): Rf値=0.22
MS(FD):m/z 504.4(M+)。
【0132】
<10.[1−(4,4’−ジメトキシトリチル)]−3−D,L−α−トコフェリルグリセロール(Toc3)の合成>
【0133】
【化6】
(手法)
6.6gのToc2(13mmol)を、乾燥させるために、15mlの無水ピリジンに2回溶解させる。該無水ピリジンを共沸により再び留去する。乾燥した出発物質を50mlの無水ピリジンに溶解し、5.34gのDMT−Cl(15.8mmol)をそこへ加える。遮光して室温で12時間攪拌した後、50mlのメタノールを加えて、反応を停止させる。それから反応混合物を乾燥するまで濃縮する。残渣を500mlのジクロロメタンに溶かし、150mlのNaCl飽和水溶液で2度洗浄し、それから150mlの水で1度洗浄する。Na2SO4の上で乾燥させた後、溶媒を除去し、残渣をn−ヘキサン/ジエチルエーテル/トリエチルアミン=40:60:1を用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。産物を含有する画分をTLCにより同定し、該画分を組み合わせて、乾燥するまで濃縮する。産物を高真空下において乾燥させる。黄色がかった油が得られ、これを遮光して保存する。
収量:8.5g(理論値の81%)
TLC(n−ヘキサン/ジエチルエーテル/TEA=40:60:1): Rf値=0.43
MS(FD):m/z 807.2。
【0134】
<11.[1−(4,4’−ジメトキシトリチル)]−2−スクシニル−3−D,L−α−トコフェリルグリセロール(Toc4)の合成>
【0135】
【化7】
(手法)
1.45gのToc3(1.8mmol)を、乾燥させるために5mlの無水ピリジンに2度溶解させる。各溶解の後、該無水ピリジンを共沸により再び留去する。出発物質を、8mlの無水ピリジンに溶解させた後、そこに140mgのDMAP(1.08mmol)と194.4mgの無水コハク酸(1.8mmol)とを、アルゴン向流の下で加える。それから、遮光して室温で18時間攪拌を行う。仕上げに、45mlのDCMを反応溶液に加え、50mlの水で4回洗浄する。硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、溶媒を除去し、未精製産物を酢酸エチル/メタノール/NH3水溶液(25%)=5:1:1を用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。産物を含有する画分を、TLCにより同定し、該画分を組み合わせて、乾燥するまで濃縮する。高真空下において乾燥させた後、茶色がかった粘性の油が得られ、これを遮光して保存する。
収量:1.35g(理論値の82.8%)
TLC(EtOAc/NH3/MeOH=5:1:1):Rf値=0.30
MS (FD):m/z906.2(M+)、604.2(M+-DMT)。
【0136】
<12.D,L−α−トコフェリル−β−シアノエチル−N,N−ジイソプロピル−ホスホロアミダイトの合成>
【0137】
【化8】
(手法)
25mlのピリジンを、5gのD,L−α−トコフェロール(11.6mmol)に2度加え、混合物を共沸同伴によって乾燥させる。出発物質を、40mlのDCMabsに溶解する。アルゴン向流の下で、7.9mlのDIPEAabs(46.4mmol)、および2.5mlの2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスフィンクロライド(11mmol)を、ゆっくりと滴下して加える。反応混合物を、遮光して室温で1時間攪拌したとき、100mlの酢酸エチル/TEA(20:1)で希釈して、25mlの10%NaHCO3で2度洗浄し、さらに飽和NaCl溶液で2度洗浄する。それから有機相を、Na2SO4上で乾燥させて、減圧下で溶媒を除去する。未精製産物を酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。
収量:5.62g(理論値の81%)
TLC(EtOAc):Rf値=0.75
MS(FD):m/z630.1(M+)
31P-NMR:δ152.24。
【0138】
<13.[1−(4,4’−ジメトキシトリチル)]−(3−D,L−α−トコフェリル)−グリセロール−2−ホスホロアミダイトの合成>
【0139】
【化9】
(手法)
1gのToc3(1.24mmol)を、乾燥させるために10mlの無水ピリジンに2度溶解する。各溶解の後、該無水ピリジンを、再び共沸により留去する。それから出発物質を、20mlのDCMabsに溶解し、0.84mlのDIPEAabs(4.96mmol)を、アルゴン向流の下で滴下して加える。それから、0.27mlの2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスフィンクロライド(1.19mmol)を、アルゴン向流の下でゆっくりと滴下して加える。反応混合物を1時間室温で攪拌し、その後、溶液を50mlの酢酸エチル/TEA(20:1)で希釈する。有機相を15mlの10%NaHCO3溶液で2度洗浄し、飽和NaCl溶液で2ど洗浄し、それからNa2SO4上で乾燥させる。溶媒を除去し、未精製産物を酢酸エチル/TEA(99:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する。産物を含有する画分をTLCにより同定し、該画分を組み合わせて、乾燥するまで濃縮する。高真空下において乾燥させた後、黄褐色の非常に粘性のある油が得られ、これを冷却し、遮光して保存する。
収量:0.76g(理論値の63.4%)
TLC(EtOAc, 1% TEA):Rf値=0.68
MS(FD):m/z1006.4 (M+),953.6 (M+−シアノエチル),651.4(M+-DMT,−シアノエチル),603.1(M+-DMT,−ジイソプロピルアミン),303.1(DMT+)
31P-NMR:δ150.5。
【0140】
<14.1−ヘキサデシル−2,3−イソプロピリデングリセロール(Pam1)の合成>
【0141】
【化10】
(手法)
0.11molの水素化ナトリウム(2.42g)を、0.1molのD,L−α,β−イソプロピリデン−グリセロール(12.4ml)のTHFabs溶液(500ml)に、アルゴン向流の下で、小量ずつ加える。室温で12時間攪拌した後、生じたアルコラートに、0.11molの1−ブロモヘキサデカン(33.6ml)のTHFabs溶液(80ml)を滴下して加える。触媒として0.5mmolのテトラブチルアンモニウムヨウ化物を加えた後、混合物を加熱し、沸騰させたまま12時間維持する。反応混合物を冷却した後、生じた臭化ナトリウムをろ過し、ろ液を乾燥するまで濃縮する。残渣をジエチルエーテルに溶かし、エーテル相をH2Oで3回震蕩することによって抽出する。有機相をNa2SO4上で乾燥させた後、混合物を乾燥するまで濃縮し、残渣をEtOAc/n−ヘキサン=1:9を用いたカラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル上で精製する(「S. Czernecki, C. Georgoulis, C. Provelenghiou Tetrahedron Lett. 39 (1976) 3535」)。
収量:18.5g(理論値の52%)
TLC(EtOAc/n−ヘキサン = 1:9):Rf値=0.47
MS(FD):m/z 357.6(M++1)
1H-NMR(CDCl3):δ0.80(t),1.18(s),1.35(s),1.37(s),3.30-3.48(m),3.63-3.69(dd),3.96-4.01(dd),4.19(q)
13C-NMR(CDCl3):δ14.1;22.7;25.4;26.1;26.8;29.4;29.6;29.7;31.9(アルキル鎖),67.0(アルキル−C-O-),71.8;71.9;74.7(グリセロール−C),109.3(ケチル−C)。
【0142】
<15.1−ヘキサデシルグリセロール(Pam2)の合成>
【0143】
【化11】
(手法)
18.5gのPam1(52mmol)を、300mlの酢酸(65%)中で、40度で24時間攪拌する。白色沈殿をろ過し、乾燥するまで、n−ヘキサンを用いて数回濃縮する。精製するために、産物をn−ヘキサンに3回懸濁し、ろ過する。脱保護されていない出発物質は、上記産物とは異なり、n−ヘキサンに溶けることができるため、脱保護されていない出発物質を分離することができる。残った残渣を、減圧下で乾燥させる。同じようにして、組み合わせたろ液を乾燥するまで濃縮し、再び分離手法に供する(「H. Paulsen, E. Meinjohanns, F. Reck, I. Brockhausen Liebigs Ann. Chem. (1993) 721」)。
収量:14.6g(理論値の88%)
TLC(EtOAc/n−ヘキサン=1:1):Rf値=0.2
MS(FD):m/z317.4(M++1)
1H-NMR (CDCl3):δ0.86(t),1.23(s),3.30-3.48(m),3.41-3.49(m),3.55-3.75(m),3.78-3.9(m)
13C-NMR(CDCl3):δ14.1;22.7;25.4;26.1;29.4;29.5;29.6;31.9(アルキル鎖),70.5(アルキル−C-O-),64.2;71.8;72.4(グリセロール−C)。
【0144】
<16.[1−(4,4’−ジメトキシトリチル)]−3−ヘキサデシルグリセロール(Pam3)の合成>
【0145】
【化12】
(手法)
乾燥させるために、10mmolのPam2(3.16g)を、15mlのピリジンabsに溶解し、溶媒を再び除去する。この手法を繰り返す。12mmol(4.06g)のジメトキシトリチルクロライド(50mlのピリジンに溶解)を、ジオールのピリジンabs溶液(100ml)にゆっくりと滴下して加え、室温で24時間攪拌する。それから反応を、5mlのメタノールを用いて停止させ、反応混合物を乾燥するまで濃縮する。最後まで残った微量のピリジンを、トルエンを用いた共沸同伴(azeotropic entrainment)によって除去する。残渣を300mlのDCMに溶かし、飽和KCl水溶液およびH2Oで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させる。溶媒を除去した後、残渣をn−ヘキサン/ジエチルエーテル/TEA=40:60:1を用いたクロマトグラフィーによってシリカゲル上で分離する((「R.A. Jones “Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach” ed. M.J. Gait, IRL Press (1984) 23」)。
収量:4.9g(理論値の79.3%)
TLC(n−ヘキサン/ジエチルエーテル/TEA=40:60:1):Rf値=0.42
MS(FD):m/z618.2(M+),303(DMT+)
1H-NMR(CDCl3):δ0.80(t),1.20(s),1.96(s),2.36(d),2.72(s),3.27(d),3.32-3.48(m),3.75(m),6.61-6.76(m),7.08-7.37(m)。
【0146】
<17.[1−(4,4’−ジメトキシトリチル)]−2−スクシニル−3−ヘキサデシルグリセロール(Pam4)の合成>
【0147】
【化13】
(手法)
1.26mmolのPam3(0.78g)を、ピリジンで2回乾燥させる。0.76mmolのDMAP(92mg)および1.26mmolの無水コハク酸(126mg)を、5mlのピリジンabsのアルコール溶液に加える。室温で12時間攪拌した後、反応溶液を30mlのDCMに溶かし、30mlの水で2回洗浄し、Na2SO4上で乾燥させる。溶媒を除去した後、残渣を酢酸エチル/メタノール/NH3の水溶液(25%)=5:1:1を用いたクロマトグラフィーによってシリカゲル上で分離する(「D.W. Will, T. Brown Tetrahedron Lett. 33 (1992) 2729.」)。
収量:0.6g(66.3%)
TLC(EtOAc/MeOH/NH3(H2O)=5:1:1):Rf値=0.32
MS(FD):m/z718(M+),303(DMT+),1020.7(M+DMT)+。
【0148】
<18.脂質修飾された核酸の形態である本発明のアジュバントによる、ヒト細胞の刺激>
(a)アジュバントの形態である本発明の核酸の免疫原活性を決定するために、配列番号1,2,3,4または5に示される配列を含有している脂質修飾された核酸を、ヒト細胞と一緒に共インキュベートした。これのために、例えばヒトPBMC細胞を、2mMのL−グルタミン(バイホイタッカー)、10U/mlのペニシリン(バイホイタッカー)および10μg/mlのストレプトマイシンで強化されたX−VIVO−15培地(バイホイタッカー,カタログ番号BE04−418Q)中で、10μg/mlのRNA(β−ガラクトシダーゼをコードするmRNA、または脂質修飾されている本発明の一般式(I)で表される核酸)と、さらに場合によっては10μg/mlのプロタミンと、16時間共インキュベートした。上清を除去し、IL−6およびTNFαの放出を、ELISAを用いて分析した。
【0149】
(b)別の実験では、本発明に基いて使用されるRNAオリゴヌクレオチド(上記参照)、および本発明に基いて使用されるアジュバントを用いて刺激した後に、ヒトPBMC細胞によるTNFαの放出を測定した。
【0150】
これのために、ヒトPBMC細胞を、2mMのL−グルタミン(バイホイタッカー)、10U/mlのペニシリン(バイホイタッカー)および10μg/mlのストレプトマイシンで強化されたX−VIVO15培地(バイホイタッカー)中で、10μg/mlのRNAオリゴヌクレオチドと一緒に16時間共インキュベートした。上清を除去してから、該上清をELISAを用いて分析した。
【0151】
<19.hPBMCにおけるTNFアルファの放出>
ヒトPBMCを、96ウェルマイクロタイタープレート上の無血清培地中に播種した(1ウェル当たり、200μl中に2x105個)。RNA水溶液(プロタミンと複合体を形成されているものか、プロタミンと複合体を形成されていないもの)を、上記細胞に加え(RNAの最終濃度:10μg/ml(33μl))、念入りに混合し、37℃で24時間インキュベートした。無細胞の細胞上清中のTNFアルファの分泌を、ELISAを用いて測定した。実験は、3通り行った。
【0152】
(a)第1実験では、配列番号78および79(一般式(I))に示される本発明のオリゴヌクレオチドを使用して、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激を測定した。配列番号78の場合において、また配列番号79の場合においても、刺激を最も明白に観測することができる(図8参照)。
【0153】
(b)第2(比較)実験では、プロタミンを用いる、または用いないときの配列番号78(一般式(II))および81(一般式(II))に示される本発明のオリゴヌクレオチドを使用して、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激をテストした。配列番号81の場合では、プロタミンを用いたときに、より良好な刺激を最も明白に観測することができる。驚いたことに、配列番号78の場合では、プロタミンを用いるときも、用いないときも、同様の刺激を観察することができる(図9参照)。
【0154】
(b)第3の実験では、配列番号81、82および83(一般式(II))に示される本発明のオリゴヌクレオチドを使って、ヒトPBMC(hPBMC)の刺激をテストした。それぞれの場合において、すなわち配列番号81、82および83の場合において、顕著な刺激を最も明白に観測することができた(図10参照)。
【0155】
<20.hPBMCでのTNFアルファの放出−オリゴフェクタミンとの複合体の形成の有無に基くトランスフェクション>
ヒトPBMCを、96ウェルマイクロタイタープレート上の無血清培地中に播種した(1ウェル当たり、200μl中に2x105個)。RNA溶液、またはオリゴフェクタミンと複合体を形成したRNAの溶液を、上記細胞に加え(最終濃度:10μg/ml)、念入りに混合し、37℃で24時間インキュベートした。無細胞の細胞上清中のTNFの分泌を、ELISAを用いて測定した。オリゴフェクタミンとの複合体の形成に基づいてトランスフェクションされた配列は、(a)配列番号1(Seq.1)、(b)対照としてのトコフェロールで3’5’修飾された配列番号1、(b)RNA40(配列番号87)である。またオリゴフェクタミンと複合体を形成されることなくトランスフェクションされた配列は、(d)培地(配列無し)、(e)配列番号1(Seq.1)、および(f)トコフェロールで3’5’修飾された配列番号1である。配列番号1(Seq.1)およびトコフェロールで3’5’修飾された配列番号1を、オリゴフェクタミンと一緒にトランスフェクションしたときに、最も良好な結果が得られた。実験は、3通り行った。
【0156】
<21.静脈内注射後のhPBMCでのIL−12の全身性放出>
10μgのRNAのリンゲル−乳酸塩溶液(100μl)を、静脈内に投与した。投与から4時間後に、患者から血液を採取し、血清のサイトカインレベルを測定した。図12は、(a)対照としての緩衝液、(b)RNA40(配列番号87)、(c)オリゴフェクタミンと複合体を形成されたRNA40(配列番号87)、(d)配列番号1(Seq.1)、および(e)トコフェロールで3’5’修飾された配列番号1をトランスフェクションした結果を示す図である。グラフから分かるように、トコフェロールで5’3’修飾された本発明の配列番号1から、最良の結果が得られた。したがって、この本発明の配列番号1によって、顕著な免疫刺激が得られた。
【0157】
<22.異なる修飾をされた配列番号1を用いた、hPBMCでのTNFアルファの放出>
再び、ヒトPBMCを、96ウェルタイタープレート上の無血清倍地中に播種した(1ウェル当たり200μl中に2x105個)。10μlのRNA溶液(オリゴフェクタミンと複合体を形成されているRNA、またはオリゴフェクタミンが加えられていないRNA)を、上記細胞に加え(RNAの最終濃度:10μg/ml)、念入りに混合し、37℃で24時間インキュベートした。無細胞の細胞上清中のTNFの分泌を、ELISAを用いて測定した。比較実験では、ヒトPBMC(hPBMC)の免疫刺激およびTNFアルファの放出に対する、配列番号1に示される本発明の配列の種々の修飾の効果を測定した。該実験では、コレステロールで修飾された配列番号1(一般式(I))、トコフェロールで修飾された配列番号1(一般式(I))、およびトコフェロールで3’5’修飾された配列番号1を使用した。最良の結果は、後者の修飾により得られた。しかし、コレステロールまたはトコフェロールのどちらかによる配列番号1の修飾も、hPBMCの顕著な刺激をもたらしている(図13参照)。
【0158】
<23.卵白アルブミンおよび本発明のオリゴヌクレオチドを、予防接種した後の腫瘍の大きさの減少>
6−8週齢のC57/Bl6マウスの脇腹の皮下に、10μlのタンパク質(ニワトリの卵白アルブミン)を接種した。タンパク質(ニワトリの卵白アルブミン)を、該当するものについてはタンパク質(ニワトリの卵白アルブミン)とオリゴヌクレオチドとを、IFA(フロイント不完全アジュバント)に溶かした。注射一回ごとの総量は100μlであった。溶液は、以下の表に記載されているように、(a)IFA、(b)IFAおよびニワトリの卵白アルブミン、(c)IFA、ニワトリの卵白アルブミン、およびRNA40(配列番号87)、ならびに(d)IFA、ニワトリの卵白アルブミン、および、プロタミンと複合体を形成されている本発明の配列番号1に示される配列を含んでいた。
【0159】
【表1】
それから10日後に、マウスを同じワクチンカクテルで追加免疫した。追加免疫から12日後に、マウスを、1×106個の腫瘍細胞(EG7.Ova)に暴露し、腫瘍の大きさを2週間にわたって、毎日測定した。
【0160】
最良の結果、すなわち腫瘍の大きさの顕著な減少は、IFA、ニワトリの卵白アルブミン、および本発明の配列番号1に示される配列(a)によって得られた。このことは、本発明の配列が、優れたアジュバント特性を示すことを示している(図14参照)。
【0161】
<24.腫瘍内注射後の腫瘍の大きさの減少>
0日目に、1x106個のマウスの腫瘍細胞(EG7.Ova)を、6−8週齢のC57/Bl6マウスの、脇腹の皮下に移植した。3日目に、処置を開始した。50μgのRNAをPBSで希釈し、総量100μlを、腫瘍の近辺に注射した。処置、および腫瘍の大きさの測定を、毎日行った。腫瘍の大きさが、160mm3よりも大きい体積に達すると、マウスを犠牲にした。1グループ当たり4匹のマウスを処置したので、示された値は、4匹のマウスの中央値を表す。腫瘍内注射については、(a)PBSのみ、(b)トコフェロールで3’5’修飾された本発明の配列番号1(Seq.1)のPBS溶液、(c)本発明の配列番号1のPBS溶液、および(d)RNA40(配列番号87)のPBS溶液を、以下のプロトコールに従って用いた。
【0162】
【表2】
最良の結果、すなわち腫瘍の大きさの顕著な減少は、トコフェロールで3’5’修飾された本発明の配列番号1によって得られた。また、その次の結果は、修飾されていない本発明の配列番号1に示される配列によって得られた(図15参照)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):GlXmGnで表される核酸
(Gは、グアノシン、ウラシル、またはグアノシンもしくはウラシルの類似体であり;
Xは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジン、シトシン、またはそれらの類似体であり;
lは、1から40までの整数であり、
l=1のとき、Gはグアノシンまたはその類似体であり、
l>1のとき、上記ヌクレオチドの少なくとも50%は、グアノシンまたはその類似体であり;
mは、整数であり、少なくとも3であり;
m=3のとき、Xはウラシルまたはその類似体であり、
m>3のとき、少なくとも3つの連続するウラシルまたその類似体が存在しており、
nは1から40までの整数であり、
n=1のとき、Gはグアノシンまたはその類似体であり、
n>1のとき、上記ヌクレオチドの少なくとも50%は、グアノシンまたはその類似体である)。
【請求項2】
上記核酸の長さが、約5から100ヌクレオチドまでである、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
上記一般式(I)で表される核酸は、
RNA、またはcDNAを含むDNAの形態であり、
一本鎖または二本鎖であり、
ホモ二本鎖の形態、またはヘテロ二本鎖の形態であり、
直鎖状または環状であることを特徴とする、請求項1または2に記載の核酸。
【請求項4】
上記一般式(I)で表される核酸が、一本鎖RNAの形態であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の核酸。
【請求項5】
上記一般式(I)で表される核酸が、以下の配列番号1〜80に示される配列から選択される少なくとも1つの配列を含んでいることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の核酸:
GGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号1);
GGGGGUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号2);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号3);
GUGUGUGUGUGUUUUUUUUUUUUUUUUGUGUGUGUGUGU(配列番号4);
GGUUGGUUGGUUUUUUUUUUUUUUUUUGGUUGGUUGGUU(配列番号5);
GGGGGGGGGUUUGGGGGGGG(配列番号6);
GGGGGGGGUUUUGGGGGGGG(配列番号7);
GGGGGGGUUUUUUGGGGGGG(配列番号8);
GGGGGGGUUUUUUUGGGGGG(配列番号9);
GGGGGGUUUUUUUUGGGGGG(配列番号10);
GGGGGGUUUUUUUUUGGGGG(配列番号11);
GGGGGGUUUUUUUUUUGGGG(配列番号12);
GGGGGUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号13);
GGGGGUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号14);
GGGGUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号15);
GGGGUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号16);
GGUUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号17);
GUUUUUUUUUUUUUUUUUUG(配列番号18);
GGGGGGGGGGUUUGGGGGGGGG(配列番号19);
GGGGGGGGGUUUUGGGGGGGGG(配列番号20);
GGGGGGGGUUUUUUGGGGGGGG(配列番号21);
GGGGGGGGUUUUUUUGGGGGGG(配列番号22);
GGGGGGGUUUUUUUUGGGGGGG(配列番号23);
GGGGGGGUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号24);
GGGGGGGUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号25);
GGGGGGUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号26);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号27);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号28);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号29);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号30);
GGUUUUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号31);
GGGGGGGGGGGUUUGGGGGGGGGG(配列番号32);
GGGGGGGGGGUUUUGGGGGGGGGG(配列番号33);
GGGGGGGGGUUUUUUGGGGGGGGG(配列番号34);
GGGGGGGGGUUUUUUUGGGGGGGG(配列番号35);
GGGGGGGGUUUUUUUUGGGGGGGG(配列番号36);
GGGGGGGGUUUUUUUUUGGGGGGG(配列番号37);
GGGGGGGGUUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号38);
GGGGGGGUUUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号39);
GGGGGGGUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号40);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号41);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号42);
GGGGUUUUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号43);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号44);
GUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUG(配列番号45);
GGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号46);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号47);
GGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号48);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号49);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号50);
GGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号51);
GGGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGGG(配列番号52);
GGGGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGGGG(配列番号53);
GGUUUGG(配列番号54);
GGUUUUGG(配列番号55);
GGUUUUUGG(配列番号56);
GGUUUUUUGG(配列番号57);
GGUUUUUUUGG(配列番号58);
GGUUUUUUUUGG(配列番号59);
GGUUUUUUUUUGG(配列番号60);
GGUUUUUUUUUUGG(配列番号61);
GGUUUUUUUUUUUGG(配列番号62);
GGUUUUUUUUUUUUGG(配列番号63);
GGUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号64);
GGUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号65);
GGUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号66);
GGGUUUGGG(配列番号67);
GGGUUUUGGG(配列番号68);
GGGUUUUUGGG(配列番号69);
GGGUUUUUUGGG(配列番号70);
GGGUUUUUUUGGG(配列番号71);
GGGUUUUUUUUGGG(配列番号72);
GGGUUUUUUUUUGGG(配列番号73);
GGGUUUUUUUUUUGGG(配列番号74);
GGGUUUUUUUUUUUGGG(配列番号75);
GGGUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号76);
GGGUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号77);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号78);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号79);
GGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGG(配列番号80)。
【請求項6】
上記一般式(I)で表される核酸の少なくとも1つのヌクレオチドが、天然に存在するヌクレオチドの天然に存在しない類似体であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の核酸。
【請求項7】
上記一般式(I)で表される核酸は、RNAの形態で存在しており、5’末端に「キャップ構造」、および/または3’末端にポリ−Aテールをさらに有していることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の核酸。
【請求項8】
上記一般式(I)で表される核酸が、脂質修飾を含んでいることを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の核酸。
【請求項9】
上記脂質修飾された核酸が、請求項1〜8の何れか1項に記載の一般式(I)で表される核酸、該核酸に共有連結されている少なくとも1つのリンカー、およびそれぞれのリンカーに共有連結されている脂質を含んでいることを特徴とする、請求項8に記載の核酸。
【請求項10】
上記脂質修飾された核酸が、請求項1〜8の何れか1項に記載の少なくとも1つの一般式(I)で表される核酸、および該核酸に共有連結されている少なくとも1つの(二官能性)脂質を含んでいることを特徴とする、請求項8に記載の核酸。
【請求項11】
上記脂質修飾された核酸が、請求項1〜8の何れか1項に記載の少なくとも1つの一般式(I)で表される核酸、該核酸に共有連結されている少なくとも1つのリンカー、およびそれぞれのリンカーに共有連結されている少なくとも1つの脂質、ならびに上記核酸に共有連結されている少なくとも1つの(二官能性)脂質を含んでいることを特徴とする、請求項8に記載の核酸。
【請求項12】
上記脂質修飾された核酸が、核酸1つ当たり、少なくとも3つから8つまでの脂質を含んでおり、
(a)上記脂質の全ては、リンカーを介して上記核酸に共有連結されているか、
(b)上記脂質の全ては、上記核酸に直接的に共有連結されているか、または
(c)上記脂質のいくつかは、リンカーを介して上記核酸に共有連結されており、上記脂質のいくつかは、上記核酸に直接的に共有連結されている、
ことを特徴とする、請求項8〜11の何れか1項に記載の核酸。
【請求項13】
上記脂質が、以下の物質を含んでいる脂質または親油性残基から選択されることを特徴とする、請求項8〜12の何れか1項に記載の核酸:
ビタミン(α−トコフェロール(ビタミンE)、RRR−α−トコフェロール(D−α−トコフェロール)、L−α−トコフェロール、ラセミ化合物であるD,L−α−トコフェロール、ビタミンA、およびレチノイン酸、レチノールを含むその誘導体、ビタミンD、およびビタミンDのエルゴステロール前躯体を含むその誘導体、ビタミンE、およびビタミンEのコハク酸塩(VES)を含むその誘導体、ビタミンKおよびその誘導体、キノンまたはフィトール化合物を含む)、ステロイド(コール酸、デオキシコール酸、デヒドロコール酸から選択される胆汁酸、コーチゾン、ジゴキシゲニン、テストテロン、コレステロール、またはチオコレステロールを含む)、あるいはポリアルキレングリコール、脂肪族基(C1−C20−アルカン、C1−C20−アルケン、またはC1−C20−アルカノール化合物(ドデカンジオール、ヘキサデカノールまたはウンデシル残基)を含む)、あるいはリン脂質(ホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジルグリセロール、ホスファチリジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンを含む)、あるいはジ−ヘキサデシル−rac−グリセロール、スフィンゴ脂質、セレブロシド、ガングリオシド、トリエチルアンモニウム、1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート、ポリアミン、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール(PEG)を含む)、ヘキサエチレングリコール(HEG)、あるいはパルミチンおよびパルミチル残基、オクタデシルアミン、あるいはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール残基、ワックス、テルペン、脂環式炭化水素、ならびに、飽和脂肪酸残基、および単不飽和または多不飽和脂肪酸残基。
【請求項14】
上記リンカーが、ヒドロキシ基、アミノ基およびアルコキシ基から選択される少なくとも2つ、3つまたは4つの反応基を含んでいる化合物から選択されることを特徴とする、請求項9および11〜13の何れか1項に記載の核酸。
【請求項15】
上記リンカーが、グリコール、グリセロール、グリセロール誘導体、2−アミノブチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノブチル−1,3−プロパンジオール誘導体または2−アミノブチル−1,3−プロパンジオール骨格、ピロリジンリンカー、あるいはピロリジン含有有機分子から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の核酸。
【請求項16】
上記一般式(I)で表される核酸および上記脂質、または上記一般式(I)で表される核酸および上記脂質に連結されているリンカーが、該一般式(I)で表される核酸の3’末端および/または5’末端において連結されていることを特徴とする、請求項8〜15の何れか1項に記載の核酸。
【請求項17】
薬剤としての、具体的には免疫刺激剤としての請求項1〜16の何れか1項に記載の核酸。
【請求項18】
請求項1〜17の何れか1項に記載の核酸、および薬学的に許容可能な担体を含んでおり、場合によっては補助物質、添加物および/またはアジュバントをさらに含んでいる薬学的組成物。
【請求項19】
請求項1〜17の何れか1項に記載の核酸、少なくとも1つの追加の薬学的活性成分、および薬学的に許容可能な担体を含んでおり、場合によっては補助物質、添加物および/またはアジュバントをさらに含んでいる薬学的組成物。
【請求項20】
上記少なくとも1つの薬学的活性成分が、以下の物質から成る群から選択されることを特徴とする、請求項19に記載の薬学的組成物:
ペプチド、タンパク質、核酸、(治療活性のある)分子量が5000未満の低分子量有機化合物または低分子量無機化合物、糖、抗原、抗体、病原体、弱毒化病原体、不活性化病原体、(ヒト)細胞、細胞断片または画分、ならびに、例えば、ポリカチオン性化合物(例えばポリカチオン性ペプチド)および/または脂質と複合体を形成されることによって、増強されたトランスフェクション特性を示すように適合されることが好ましい他の治療剤。
【請求項21】
請求項18〜20の何れかに記載の薬学的組成物であって、上記組成物が、免疫刺激剤である少なくとも1つの別のアジュバントを含んでおり、
該アジュバントが、カチオン性ペプチド(ポリペプチド(プロタミン、ヌクレオリンを含む)を含む)、スペルミンまたはスペルミジン、カチオン性ポリサッカリド(キトサンを含む)、TDM、MDP、ムラミルジペプチド、プルロニック、ミョウバン溶液、水酸化アルミニウム、アジュマー(ADJUMER(商標))(ポリホスファゼン);リン酸アルミニウムゲル;藻類由来のグルカン;アルガムリン(algammulin);水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン);タンパク質高吸収性水酸化アルミニウムゲル;低粘性水酸化アルミニウムゲル;AFまたはSPT(スクアランのエマルジョン(5%)、トウィーン80(Tween80)(0.2%)、プルロニックL121(1.25%)、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4);アブリジン(AVRIDINE(商標))(プロパンジアミン);BAY R1005(商標)((N−(2−デオキシ−2−L−ロイシルアミノ−b−D−グルコピラノシル)−N−オクタデシルドデカノイル−アミドヒドロアセテート);カルシトリオール(CALCITRIOL(商標))(1−アルファ,25−ジヒドロキシ−ビタミン D3);リン酸カルシウムゲル;CAPTM(リン酸カルシウムのナノ粒子);コレラ完全毒素、コレラ毒素−A1−タンパク質−A−D−断片の融合タンパク質、コレラ毒素のサブユニットB;CRL1005(ブロックコポリマー P1205);サイトカイン含有リポソーム;DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド);DHEA(デヒドロエピアンドロステロン);DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン);DMPG(ジミリストイルホスファチジルグリセロール);DOC/ミョウバンの複合体(デオキシコール酸ナトリウム塩);フロイント完全アジュバント;フロイント不完全アジュバント;ガンマイヌリン;ゲルブ(Gerbu)アジュバント(以下の(i)、(ii)および(iii)の混合物、(i)N−アセチルグルコサミニル−(P1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、(ii)ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、(iii)亜鉛−L−プロリン塩の複合体(ZnPro−8);GM−CSF);GMDP(N−アセチルグルコサミニル−(b1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン);イミキモド(imiquimod)(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン);イムセラー(ImmTher(商標))(N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−グリセロールジパルミテート);DRV(脱水−再水和から調製されたイムノリポソームの小胞);インターフェロン−γ;インターロイキン−1β;インターロイキン−2;インターロイキン−7;インターロイキン−12;イスコム(ISCOMS(商標))(「免疫刺激複合体」);イスコプレップ7.0.3.(ISCOPREP7.0.3.(商標));リポソーム;ロキソリビン(LOXORIBINE(商標))(7−アリル−8−オキソグアノシン);LT経口アジュバント(E.coliの易熱性エンテロトキシン−プロトキシン);任意の組成物のマイクロスフィアおよび微粒子;MF59(商標);(スクアレン−水のエマルジョン);モンタナイドISA51(MONTANIDE ISA51(商標))(精製されたフロイント不完全アジュバント);モンタナイドISA720(MONTANIDE ISA720(商標))(代謝可能な油アジュバント);MPL(商標)(3−Q−デスアシル−4’−モノホスホリル脂質A);MTP−PEおよびMTP−PEのリポソーム((N−アセチル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−(ヒドロキシホスホリルオキシ))エチルアミド、モノナトリウム塩);ムラメタイド(MURAMETIDE(商標))(Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3);ムラパルミチン(MURAPALMITINE(商標))およびD−ムラパルミチン(D−MURAPALMITINE(商標))(Nac−Mur−L−Thr−D−イソGln−sn−グリセロールジパルミトイル);NAGO(ノイラミニダーゼ−ガラクトースオキシダーゼ);任意の組成物のナノスフィアまたはナノ粒子;NISV(非イオン性界面活性剤の小胞);プルーラン(PLEURAN(商標))(β−グルカン);PLGA、PGAおよびPLA(乳酸ならびにグリコール酸の、ホモポリマーおよびコポリマー;マイクロスフィア/ナノスフィア);プルロニックL121(PLURONIC L121(商標));PMMA(ポリメチルメタクリレート);ポッドス(PODDS(商標))(プロテイノイドのマイクロスフィア);ポリエチレンカルバメートの誘導体;ポリ−rA:ポリ−rU(ポリアデニル酸−ポリウリジル酸の複合体);ポリソルベート80(トウィーン80);タンパク質のコクリエート(Avanti Polar Lipids, Inc., Alabaster, AL);スティムロン(STIMULON(商標))(QS−21);クイル−A(Quil−A)(クイル−A(Quil−A)サポニン);S−28463(4−アミノ−otec−ジメチル−2−エトキシメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール);SAF−1(商標)(「シンテックスのアジュバント製剤」);センダイプロテオリポソームおよびセンダイ含有脂質のマトリクス;スパン(Span)−85(トリオレイン酸ソルビタン);スペコール(Specol)(マルコール(Marcol)52、スパン(Span)85およびトウィーン(Tween)85のエマルジョン);スクアレンまたはロバン(Robane(登録商標))(2,6,10,15,19,23−ヘキサメチルテトラコサンおよび2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサン);ステアリルチロシン(オクタデシルチロシン塩酸塩);テラミド(Theramid(登録商標))(N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド);テロニル(Theronyl)−MDP(テルムルチド(Termurtide(商標))または[thr 1]−MDP;N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン);Ty粒子(Ty−VLPまたはウイルス様粒子);ワルター−リード(Walter−Reed)リポソーム(水酸化アルミニウムに吸着した脂質Aを含有するリポソーム)、ならびにリポペプチド(Pam3Cysを含む)から成る群から選択され、
特に、アルミニウム塩(アジュ−ホス(Adju−phos)、アルハイドロゲル(Alhydrogel)、リハイドラゲル(Rehydragel)など);エマルジョン(CFA、SAF、IFA、MF59、プロバックス(Provax)、タイターマックス(TiterMax)、モンタナイド(Montanide)、バックスフェクチン(Vaxfectin)など);コポリマー(オプチバックス)(Optivax(CRL1005)、L121、ポロアクスマー(Poloaxmer)4010など);リポソーム(ステルス(Stealth)など)、コクリート(バイオラル(BIORAL)など);植物由来のアジュバント(QS21、クイルA(Quil A)、イスコマトリックス(Iscomatrix)、イスコム(ISCOM)など)であり;
同時刺激に適した好ましいアジュバントは、例えば、トマチン、バイオポリマー(PLG、PMM、イヌリンなど)、微生物由来のアジュバント(ロムルチド、デトックス(DETOX)、MPL、CWS、マンノース、CpG7909、ISS−1018、IC31、イミダゾキノリン、アンプリゲン(Ampligen)、リビ529(Ribi529)、イモキシン(IMOxine)、IRIV、VLP、コレラ毒素、易熱性毒素、Pam3Cys、フラジェリン、GPIアンカー、LNFPIII/ルイス(Lewis)X、抗菌性ペプチド、UC−1V150、RSV融合タンパク質、cdiGMPなど)などを含んでもよく;
アンタゴニストとして適切なアジュバントは、例えばCGRPニューロペプチドを含んでもよいことを特徴とする薬学的組成物。
【請求項22】
上記薬学的組成物がワクチンであることを特徴とする、請求項18〜21の何れか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
癌、自己免疫疾患、アレルギーまたは感染症を治療するための、薬剤の調製のための、請求項1〜17の何れか1項に記載の記載の核酸、または請求項18〜22の何れかに記載の組成物の使用。
【請求項24】
上記癌が、結腸癌、メラノーマ、腎癌、リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球白血病(CLL)、胃腸腫瘍、肺癌、神経膠腫、甲状腺腫瘍、乳癌、前立腺腫瘍、肝癌、様々ウイルスによって誘導される腫瘍(例えば、パピローマウイルスによって誘導される癌(例えば子宮頸癌)、腺癌、ヘルペスウイルスによって誘導される腫瘍(例えばバーキットリンパ腫、EBVによって誘導されるB細胞リンパ種)、B型肝炎によって誘導される腫瘍(肝細胞癌)、HTLV−1およびHTLV−2によって誘導されるリンパ種など)、聴覚神経腫/神経鞘腫、子宮頚癌、咽頭癌、肛門癌、神経膠芽腫、リンパ腫、直腸癌、星状膠細胞腫、脳腫瘍、胃癌、網膜芽腫、基底細胞腫、転移性脳腫瘍、髄芽腫、膣癌、膵癌、精巣癌、メラノーマ、甲状腺癌、膀胱癌、ホジキン症候群、髄膜腫、シュネーベルグ病、気管支癌、下垂体腫瘍、菌状息肉腫、食道癌、カルチノイド、神経鞘腫、棘細胞腫、バーキットリンパ種、喉頭癌、胸腺腫、子宮体癌、骨癌、非ホジキンリンパ種、尿道癌、CUP症候群、頭部/頸部腫瘍、乏突起膠腫、外陰癌、腸癌、結腸癌、イボ類、小腸腫瘍、頭蓋咽頭腫、卵巣癌、軟部組織の腫瘍/肉腫、子宮内膜癌、転移性肝癌、陰茎癌、舌癌、胆嚢癌、白血病、形質細胞腫、子宮癌、眼瞼腫瘍、および前立腺癌から選択されることを特徴とする、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
上記感染症が、インフルエンザ、マラリア、SARS、黄熱病、AIDS、ライムボレリア症、リーシュマニア症、炭疽病、髄膜炎、ウイルス感染症、細菌感染症、および寄生虫、原虫または真菌によって引き起こされる感染症、またはエキノコックス(魚の条虫、キツネの条虫、イヌの条虫、シラミ、ウシの条虫、ブタの条虫、小型条虫)によって引き起こされる感染症から選択され、
上記ウイルス感染症は、AIDS、尖圭コンジローマ、中空のイボ、デング熱、三日熱、エボラウイルス、感冒、初夏髄膜脳炎(FSME)、流感、帯状ヘルペス、肝炎、I型単純ヘルペス、II型単純ヘルペス、帯状疱疹、インフルエンザ、日本脳炎、ラッサ熱、マールブルグウイルス、麻疹、口蹄疫、単核球症、ムンプス、ノーウォークウイルス感染症、パイファー腺熱、天然痘、ポリオ(子供の跛行)、仮性クループ、第五病、狂犬病、イボ、西ナイル熱、水痘、サイトメガロウイルス(CMV)などであり、
上記細菌感染症は、流産(前立腺炎症)、炭疽病、虫垂炎、ボレリア症、ボツリヌス中毒、カンピロバクター、クラミジア・トラコマチス(尿道の炎症、結膜炎)、コレラ、ジフテリア、鼠径部肉芽腫、喉頭蓋炎、発疹チフス、ガス壊疽、淋病、野兎病、ヘリコバクターピロリ、百日咳、鼠径リンパ肉芽腫、骨髄炎、在郷軍人病、ハンセン病、リステリア症、肺炎、髄膜炎、細菌性髄膜炎、炭疽病、中耳炎、マイコプラズマホミニス、新生児敗血症(絨毛羊膜炎)、壊疽性口内炎、パラチフス、ペスト、ライター症候群、ロッキー山紅斑熱、パラチフス菌、チフス菌、猩紅熱、梅毒、破傷風、淋疾、ツツガムシ病、結核、チフス、膣炎、軟性下疳などであり、
上記寄生虫、原虫または真菌によって引き起こされる感染症は、アメーバ症、ビルハルチア病、シャーガス病、足白癬、酵母菌の斑点、疥癬、マラリア、オンコセルカ症(河川盲目症)、または真菌症、トキソプラズマ症、トリコモナス症、トリパノソーマ症(睡眠病)、内臓リューシュマニア症、オムツ皮膚炎、住血吸虫症、魚中毒(シガテラ中毒)、カンジダ症、皮膚リューシュマニア症、ランブリア症(ジアルジア症)または睡眠病などであることを特徴とする、請求項23に記載の使用。
【請求項26】
上記自己免疫疾患が、I型自己免疫疾患、II型自己免疫疾患、III型自己免疫疾患、またはIV型自己免疫疾患、あるいはII型糖尿病から成る群から選択され、
上記I型自己免疫疾患、II型自己免疫疾患、III型自己免疫疾患、またはIV型自己免疫疾患は、例えば、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ、糖尿病、I型糖尿病(真性糖尿病)、全身性エリテマトーデス症(SLE)、慢性多発性関節炎、バセドー氏病、慢性肝炎の自己免疫形成、潰瘍性大腸炎、I型アレルギー疾患、II型アレルギー疾患、III型アレルギー疾患、IV型アレルギー疾患、線維筋痛、抜け毛、ベヒテレフ病、クローン病、重症筋無力症、神経皮膚炎、リウマチ性多発筋痛症、進行性全身性硬化症(PSS)、乾癬、ライター症候群、リウマチ性関節炎、乾癬、脈管炎などであることを特徴とする、請求項23に記載の使用。
【請求項27】
上記アレルギーが、(鼻粘膜の腫脹を引き起こす)アレルギー性喘息、(結膜の掻痒および充血を引き起こす)アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎(「花粉症」)、アナフィラキシー、血管浮腫、アトピー性皮膚炎(湿疹)、じんましん、好酸球増加症、呼吸アレルギー、虫刺されに対するアレルギー、(様々な発疹(湿疹、じんましん)、および(接触)皮膚炎などを含み、それらを引き起こす)皮膚アレルギー、食物アレルギー、薬に対するアレルギーなどから成る群から選択される、請求項23に記載の使用。
【請求項28】
請求項1〜17の何れか1項に記載の核酸、または請求項18〜22の何れか1項に記載の薬学的組成物を含んでおり、場合によっては該核酸または該薬学的組成物の投与および用量に関する情報を有する、使用のための技術説明書も含んでいる、キット。
【請求項29】
癌、感染症、自己免疫疾患およびアレルギーから成る群から選択される疾患または病気の治療が必要な患者に、薬学的に効果的な量の、請求項1〜17の何れかに記載の核酸、または請求項18〜22の何れかに記載の薬学的組成物を投与することによって、癌、感染症、自己免疫疾患およびアレルギーから成る群から選択される疾患または病気を治療する方法。
【請求項1】
一般式(I):GlXmGnで表される核酸
(Gは、グアノシン、ウラシル、またはグアノシンもしくはウラシルの類似体であり;
Xは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジン、シトシン、またはそれらの類似体であり;
lは、1から40までの整数であり、
l=1のとき、Gはグアノシンまたはその類似体であり、
l>1のとき、上記ヌクレオチドの少なくとも50%は、グアノシンまたはその類似体であり;
mは、整数であり、少なくとも3であり;
m=3のとき、Xはウラシルまたはその類似体であり、
m>3のとき、少なくとも3つの連続するウラシルまたその類似体が存在しており、
nは1から40までの整数であり、
n=1のとき、Gはグアノシンまたはその類似体であり、
n>1のとき、上記ヌクレオチドの少なくとも50%は、グアノシンまたはその類似体である)。
【請求項2】
上記核酸の長さが、約5から100ヌクレオチドまでである、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
上記一般式(I)で表される核酸は、
RNA、またはcDNAを含むDNAの形態であり、
一本鎖または二本鎖であり、
ホモ二本鎖の形態、またはヘテロ二本鎖の形態であり、
直鎖状または環状であることを特徴とする、請求項1または2に記載の核酸。
【請求項4】
上記一般式(I)で表される核酸が、一本鎖RNAの形態であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の核酸。
【請求項5】
上記一般式(I)で表される核酸が、以下の配列番号1〜80に示される配列から選択される少なくとも1つの配列を含んでいることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の核酸:
GGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号1);
GGGGGUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号2);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号3);
GUGUGUGUGUGUUUUUUUUUUUUUUUUGUGUGUGUGUGU(配列番号4);
GGUUGGUUGGUUUUUUUUUUUUUUUUUGGUUGGUUGGUU(配列番号5);
GGGGGGGGGUUUGGGGGGGG(配列番号6);
GGGGGGGGUUUUGGGGGGGG(配列番号7);
GGGGGGGUUUUUUGGGGGGG(配列番号8);
GGGGGGGUUUUUUUGGGGGG(配列番号9);
GGGGGGUUUUUUUUGGGGGG(配列番号10);
GGGGGGUUUUUUUUUGGGGG(配列番号11);
GGGGGGUUUUUUUUUUGGGG(配列番号12);
GGGGGUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号13);
GGGGGUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号14);
GGGGUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号15);
GGGGUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号16);
GGUUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号17);
GUUUUUUUUUUUUUUUUUUG(配列番号18);
GGGGGGGGGGUUUGGGGGGGGG(配列番号19);
GGGGGGGGGUUUUGGGGGGGGG(配列番号20);
GGGGGGGGUUUUUUGGGGGGGG(配列番号21);
GGGGGGGGUUUUUUUGGGGGGG(配列番号22);
GGGGGGGUUUUUUUUGGGGGGG(配列番号23);
GGGGGGGUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号24);
GGGGGGGUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号25);
GGGGGGUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号26);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号27);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号28);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号29);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号30);
GGUUUUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号31);
GGGGGGGGGGGUUUGGGGGGGGGG(配列番号32);
GGGGGGGGGGUUUUGGGGGGGGGG(配列番号33);
GGGGGGGGGUUUUUUGGGGGGGGG(配列番号34);
GGGGGGGGGUUUUUUUGGGGGGGG(配列番号35);
GGGGGGGGUUUUUUUUGGGGGGGG(配列番号36);
GGGGGGGGUUUUUUUUUGGGGGGG(配列番号37);
GGGGGGGGUUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号38);
GGGGGGGUUUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号39);
GGGGGGGUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号40);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号41);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号42);
GGGGUUUUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号43);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号44);
GUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUG(配列番号45);
GGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号46);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号47);
GGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号48);
GGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号49);
GGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号50);
GGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号51);
GGGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGGG(配列番号52);
GGGGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGGGG(配列番号53);
GGUUUGG(配列番号54);
GGUUUUGG(配列番号55);
GGUUUUUGG(配列番号56);
GGUUUUUUGG(配列番号57);
GGUUUUUUUGG(配列番号58);
GGUUUUUUUUGG(配列番号59);
GGUUUUUUUUUGG(配列番号60);
GGUUUUUUUUUUGG(配列番号61);
GGUUUUUUUUUUUGG(配列番号62);
GGUUUUUUUUUUUUGG(配列番号63);
GGUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号64);
GGUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号65);
GGUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号66);
GGGUUUGGG(配列番号67);
GGGUUUUGGG(配列番号68);
GGGUUUUUGGG(配列番号69);
GGGUUUUUUGGG(配列番号70);
GGGUUUUUUUGGG(配列番号71);
GGGUUUUUUUUGGG(配列番号72);
GGGUUUUUUUUUGGG(配列番号73);
GGGUUUUUUUUUUGGG(配列番号74);
GGGUUUUUUUUUUUGGG(配列番号75);
GGGUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号76);
GGGUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号77);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号78);
GGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号79);
GGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGG(配列番号80)。
【請求項6】
上記一般式(I)で表される核酸の少なくとも1つのヌクレオチドが、天然に存在するヌクレオチドの天然に存在しない類似体であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の核酸。
【請求項7】
上記一般式(I)で表される核酸は、RNAの形態で存在しており、5’末端に「キャップ構造」、および/または3’末端にポリ−Aテールをさらに有していることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の核酸。
【請求項8】
上記一般式(I)で表される核酸が、脂質修飾を含んでいることを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の核酸。
【請求項9】
上記脂質修飾された核酸が、請求項1〜8の何れか1項に記載の一般式(I)で表される核酸、該核酸に共有連結されている少なくとも1つのリンカー、およびそれぞれのリンカーに共有連結されている脂質を含んでいることを特徴とする、請求項8に記載の核酸。
【請求項10】
上記脂質修飾された核酸が、請求項1〜8の何れか1項に記載の少なくとも1つの一般式(I)で表される核酸、および該核酸に共有連結されている少なくとも1つの(二官能性)脂質を含んでいることを特徴とする、請求項8に記載の核酸。
【請求項11】
上記脂質修飾された核酸が、請求項1〜8の何れか1項に記載の少なくとも1つの一般式(I)で表される核酸、該核酸に共有連結されている少なくとも1つのリンカー、およびそれぞれのリンカーに共有連結されている少なくとも1つの脂質、ならびに上記核酸に共有連結されている少なくとも1つの(二官能性)脂質を含んでいることを特徴とする、請求項8に記載の核酸。
【請求項12】
上記脂質修飾された核酸が、核酸1つ当たり、少なくとも3つから8つまでの脂質を含んでおり、
(a)上記脂質の全ては、リンカーを介して上記核酸に共有連結されているか、
(b)上記脂質の全ては、上記核酸に直接的に共有連結されているか、または
(c)上記脂質のいくつかは、リンカーを介して上記核酸に共有連結されており、上記脂質のいくつかは、上記核酸に直接的に共有連結されている、
ことを特徴とする、請求項8〜11の何れか1項に記載の核酸。
【請求項13】
上記脂質が、以下の物質を含んでいる脂質または親油性残基から選択されることを特徴とする、請求項8〜12の何れか1項に記載の核酸:
ビタミン(α−トコフェロール(ビタミンE)、RRR−α−トコフェロール(D−α−トコフェロール)、L−α−トコフェロール、ラセミ化合物であるD,L−α−トコフェロール、ビタミンA、およびレチノイン酸、レチノールを含むその誘導体、ビタミンD、およびビタミンDのエルゴステロール前躯体を含むその誘導体、ビタミンE、およびビタミンEのコハク酸塩(VES)を含むその誘導体、ビタミンKおよびその誘導体、キノンまたはフィトール化合物を含む)、ステロイド(コール酸、デオキシコール酸、デヒドロコール酸から選択される胆汁酸、コーチゾン、ジゴキシゲニン、テストテロン、コレステロール、またはチオコレステロールを含む)、あるいはポリアルキレングリコール、脂肪族基(C1−C20−アルカン、C1−C20−アルケン、またはC1−C20−アルカノール化合物(ドデカンジオール、ヘキサデカノールまたはウンデシル残基)を含む)、あるいはリン脂質(ホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジルグリセロール、ホスファチリジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンを含む)、あるいはジ−ヘキサデシル−rac−グリセロール、スフィンゴ脂質、セレブロシド、ガングリオシド、トリエチルアンモニウム、1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート、ポリアミン、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール(PEG)を含む)、ヘキサエチレングリコール(HEG)、あるいはパルミチンおよびパルミチル残基、オクタデシルアミン、あるいはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール残基、ワックス、テルペン、脂環式炭化水素、ならびに、飽和脂肪酸残基、および単不飽和または多不飽和脂肪酸残基。
【請求項14】
上記リンカーが、ヒドロキシ基、アミノ基およびアルコキシ基から選択される少なくとも2つ、3つまたは4つの反応基を含んでいる化合物から選択されることを特徴とする、請求項9および11〜13の何れか1項に記載の核酸。
【請求項15】
上記リンカーが、グリコール、グリセロール、グリセロール誘導体、2−アミノブチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノブチル−1,3−プロパンジオール誘導体または2−アミノブチル−1,3−プロパンジオール骨格、ピロリジンリンカー、あるいはピロリジン含有有機分子から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の核酸。
【請求項16】
上記一般式(I)で表される核酸および上記脂質、または上記一般式(I)で表される核酸および上記脂質に連結されているリンカーが、該一般式(I)で表される核酸の3’末端および/または5’末端において連結されていることを特徴とする、請求項8〜15の何れか1項に記載の核酸。
【請求項17】
薬剤としての、具体的には免疫刺激剤としての請求項1〜16の何れか1項に記載の核酸。
【請求項18】
請求項1〜17の何れか1項に記載の核酸、および薬学的に許容可能な担体を含んでおり、場合によっては補助物質、添加物および/またはアジュバントをさらに含んでいる薬学的組成物。
【請求項19】
請求項1〜17の何れか1項に記載の核酸、少なくとも1つの追加の薬学的活性成分、および薬学的に許容可能な担体を含んでおり、場合によっては補助物質、添加物および/またはアジュバントをさらに含んでいる薬学的組成物。
【請求項20】
上記少なくとも1つの薬学的活性成分が、以下の物質から成る群から選択されることを特徴とする、請求項19に記載の薬学的組成物:
ペプチド、タンパク質、核酸、(治療活性のある)分子量が5000未満の低分子量有機化合物または低分子量無機化合物、糖、抗原、抗体、病原体、弱毒化病原体、不活性化病原体、(ヒト)細胞、細胞断片または画分、ならびに、例えば、ポリカチオン性化合物(例えばポリカチオン性ペプチド)および/または脂質と複合体を形成されることによって、増強されたトランスフェクション特性を示すように適合されることが好ましい他の治療剤。
【請求項21】
請求項18〜20の何れかに記載の薬学的組成物であって、上記組成物が、免疫刺激剤である少なくとも1つの別のアジュバントを含んでおり、
該アジュバントが、カチオン性ペプチド(ポリペプチド(プロタミン、ヌクレオリンを含む)を含む)、スペルミンまたはスペルミジン、カチオン性ポリサッカリド(キトサンを含む)、TDM、MDP、ムラミルジペプチド、プルロニック、ミョウバン溶液、水酸化アルミニウム、アジュマー(ADJUMER(商標))(ポリホスファゼン);リン酸アルミニウムゲル;藻類由来のグルカン;アルガムリン(algammulin);水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン);タンパク質高吸収性水酸化アルミニウムゲル;低粘性水酸化アルミニウムゲル;AFまたはSPT(スクアランのエマルジョン(5%)、トウィーン80(Tween80)(0.2%)、プルロニックL121(1.25%)、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4);アブリジン(AVRIDINE(商標))(プロパンジアミン);BAY R1005(商標)((N−(2−デオキシ−2−L−ロイシルアミノ−b−D−グルコピラノシル)−N−オクタデシルドデカノイル−アミドヒドロアセテート);カルシトリオール(CALCITRIOL(商標))(1−アルファ,25−ジヒドロキシ−ビタミン D3);リン酸カルシウムゲル;CAPTM(リン酸カルシウムのナノ粒子);コレラ完全毒素、コレラ毒素−A1−タンパク質−A−D−断片の融合タンパク質、コレラ毒素のサブユニットB;CRL1005(ブロックコポリマー P1205);サイトカイン含有リポソーム;DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド);DHEA(デヒドロエピアンドロステロン);DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン);DMPG(ジミリストイルホスファチジルグリセロール);DOC/ミョウバンの複合体(デオキシコール酸ナトリウム塩);フロイント完全アジュバント;フロイント不完全アジュバント;ガンマイヌリン;ゲルブ(Gerbu)アジュバント(以下の(i)、(ii)および(iii)の混合物、(i)N−アセチルグルコサミニル−(P1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、(ii)ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、(iii)亜鉛−L−プロリン塩の複合体(ZnPro−8);GM−CSF);GMDP(N−アセチルグルコサミニル−(b1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン);イミキモド(imiquimod)(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン);イムセラー(ImmTher(商標))(N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−グリセロールジパルミテート);DRV(脱水−再水和から調製されたイムノリポソームの小胞);インターフェロン−γ;インターロイキン−1β;インターロイキン−2;インターロイキン−7;インターロイキン−12;イスコム(ISCOMS(商標))(「免疫刺激複合体」);イスコプレップ7.0.3.(ISCOPREP7.0.3.(商標));リポソーム;ロキソリビン(LOXORIBINE(商標))(7−アリル−8−オキソグアノシン);LT経口アジュバント(E.coliの易熱性エンテロトキシン−プロトキシン);任意の組成物のマイクロスフィアおよび微粒子;MF59(商標);(スクアレン−水のエマルジョン);モンタナイドISA51(MONTANIDE ISA51(商標))(精製されたフロイント不完全アジュバント);モンタナイドISA720(MONTANIDE ISA720(商標))(代謝可能な油アジュバント);MPL(商標)(3−Q−デスアシル−4’−モノホスホリル脂質A);MTP−PEおよびMTP−PEのリポソーム((N−アセチル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−(ヒドロキシホスホリルオキシ))エチルアミド、モノナトリウム塩);ムラメタイド(MURAMETIDE(商標))(Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3);ムラパルミチン(MURAPALMITINE(商標))およびD−ムラパルミチン(D−MURAPALMITINE(商標))(Nac−Mur−L−Thr−D−イソGln−sn−グリセロールジパルミトイル);NAGO(ノイラミニダーゼ−ガラクトースオキシダーゼ);任意の組成物のナノスフィアまたはナノ粒子;NISV(非イオン性界面活性剤の小胞);プルーラン(PLEURAN(商標))(β−グルカン);PLGA、PGAおよびPLA(乳酸ならびにグリコール酸の、ホモポリマーおよびコポリマー;マイクロスフィア/ナノスフィア);プルロニックL121(PLURONIC L121(商標));PMMA(ポリメチルメタクリレート);ポッドス(PODDS(商標))(プロテイノイドのマイクロスフィア);ポリエチレンカルバメートの誘導体;ポリ−rA:ポリ−rU(ポリアデニル酸−ポリウリジル酸の複合体);ポリソルベート80(トウィーン80);タンパク質のコクリエート(Avanti Polar Lipids, Inc., Alabaster, AL);スティムロン(STIMULON(商標))(QS−21);クイル−A(Quil−A)(クイル−A(Quil−A)サポニン);S−28463(4−アミノ−otec−ジメチル−2−エトキシメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール);SAF−1(商標)(「シンテックスのアジュバント製剤」);センダイプロテオリポソームおよびセンダイ含有脂質のマトリクス;スパン(Span)−85(トリオレイン酸ソルビタン);スペコール(Specol)(マルコール(Marcol)52、スパン(Span)85およびトウィーン(Tween)85のエマルジョン);スクアレンまたはロバン(Robane(登録商標))(2,6,10,15,19,23−ヘキサメチルテトラコサンおよび2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサン);ステアリルチロシン(オクタデシルチロシン塩酸塩);テラミド(Theramid(登録商標))(N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド);テロニル(Theronyl)−MDP(テルムルチド(Termurtide(商標))または[thr 1]−MDP;N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン);Ty粒子(Ty−VLPまたはウイルス様粒子);ワルター−リード(Walter−Reed)リポソーム(水酸化アルミニウムに吸着した脂質Aを含有するリポソーム)、ならびにリポペプチド(Pam3Cysを含む)から成る群から選択され、
特に、アルミニウム塩(アジュ−ホス(Adju−phos)、アルハイドロゲル(Alhydrogel)、リハイドラゲル(Rehydragel)など);エマルジョン(CFA、SAF、IFA、MF59、プロバックス(Provax)、タイターマックス(TiterMax)、モンタナイド(Montanide)、バックスフェクチン(Vaxfectin)など);コポリマー(オプチバックス)(Optivax(CRL1005)、L121、ポロアクスマー(Poloaxmer)4010など);リポソーム(ステルス(Stealth)など)、コクリート(バイオラル(BIORAL)など);植物由来のアジュバント(QS21、クイルA(Quil A)、イスコマトリックス(Iscomatrix)、イスコム(ISCOM)など)であり;
同時刺激に適した好ましいアジュバントは、例えば、トマチン、バイオポリマー(PLG、PMM、イヌリンなど)、微生物由来のアジュバント(ロムルチド、デトックス(DETOX)、MPL、CWS、マンノース、CpG7909、ISS−1018、IC31、イミダゾキノリン、アンプリゲン(Ampligen)、リビ529(Ribi529)、イモキシン(IMOxine)、IRIV、VLP、コレラ毒素、易熱性毒素、Pam3Cys、フラジェリン、GPIアンカー、LNFPIII/ルイス(Lewis)X、抗菌性ペプチド、UC−1V150、RSV融合タンパク質、cdiGMPなど)などを含んでもよく;
アンタゴニストとして適切なアジュバントは、例えばCGRPニューロペプチドを含んでもよいことを特徴とする薬学的組成物。
【請求項22】
上記薬学的組成物がワクチンであることを特徴とする、請求項18〜21の何れか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
癌、自己免疫疾患、アレルギーまたは感染症を治療するための、薬剤の調製のための、請求項1〜17の何れか1項に記載の記載の核酸、または請求項18〜22の何れかに記載の組成物の使用。
【請求項24】
上記癌が、結腸癌、メラノーマ、腎癌、リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球白血病(CLL)、胃腸腫瘍、肺癌、神経膠腫、甲状腺腫瘍、乳癌、前立腺腫瘍、肝癌、様々ウイルスによって誘導される腫瘍(例えば、パピローマウイルスによって誘導される癌(例えば子宮頸癌)、腺癌、ヘルペスウイルスによって誘導される腫瘍(例えばバーキットリンパ腫、EBVによって誘導されるB細胞リンパ種)、B型肝炎によって誘導される腫瘍(肝細胞癌)、HTLV−1およびHTLV−2によって誘導されるリンパ種など)、聴覚神経腫/神経鞘腫、子宮頚癌、咽頭癌、肛門癌、神経膠芽腫、リンパ腫、直腸癌、星状膠細胞腫、脳腫瘍、胃癌、網膜芽腫、基底細胞腫、転移性脳腫瘍、髄芽腫、膣癌、膵癌、精巣癌、メラノーマ、甲状腺癌、膀胱癌、ホジキン症候群、髄膜腫、シュネーベルグ病、気管支癌、下垂体腫瘍、菌状息肉腫、食道癌、カルチノイド、神経鞘腫、棘細胞腫、バーキットリンパ種、喉頭癌、胸腺腫、子宮体癌、骨癌、非ホジキンリンパ種、尿道癌、CUP症候群、頭部/頸部腫瘍、乏突起膠腫、外陰癌、腸癌、結腸癌、イボ類、小腸腫瘍、頭蓋咽頭腫、卵巣癌、軟部組織の腫瘍/肉腫、子宮内膜癌、転移性肝癌、陰茎癌、舌癌、胆嚢癌、白血病、形質細胞腫、子宮癌、眼瞼腫瘍、および前立腺癌から選択されることを特徴とする、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
上記感染症が、インフルエンザ、マラリア、SARS、黄熱病、AIDS、ライムボレリア症、リーシュマニア症、炭疽病、髄膜炎、ウイルス感染症、細菌感染症、および寄生虫、原虫または真菌によって引き起こされる感染症、またはエキノコックス(魚の条虫、キツネの条虫、イヌの条虫、シラミ、ウシの条虫、ブタの条虫、小型条虫)によって引き起こされる感染症から選択され、
上記ウイルス感染症は、AIDS、尖圭コンジローマ、中空のイボ、デング熱、三日熱、エボラウイルス、感冒、初夏髄膜脳炎(FSME)、流感、帯状ヘルペス、肝炎、I型単純ヘルペス、II型単純ヘルペス、帯状疱疹、インフルエンザ、日本脳炎、ラッサ熱、マールブルグウイルス、麻疹、口蹄疫、単核球症、ムンプス、ノーウォークウイルス感染症、パイファー腺熱、天然痘、ポリオ(子供の跛行)、仮性クループ、第五病、狂犬病、イボ、西ナイル熱、水痘、サイトメガロウイルス(CMV)などであり、
上記細菌感染症は、流産(前立腺炎症)、炭疽病、虫垂炎、ボレリア症、ボツリヌス中毒、カンピロバクター、クラミジア・トラコマチス(尿道の炎症、結膜炎)、コレラ、ジフテリア、鼠径部肉芽腫、喉頭蓋炎、発疹チフス、ガス壊疽、淋病、野兎病、ヘリコバクターピロリ、百日咳、鼠径リンパ肉芽腫、骨髄炎、在郷軍人病、ハンセン病、リステリア症、肺炎、髄膜炎、細菌性髄膜炎、炭疽病、中耳炎、マイコプラズマホミニス、新生児敗血症(絨毛羊膜炎)、壊疽性口内炎、パラチフス、ペスト、ライター症候群、ロッキー山紅斑熱、パラチフス菌、チフス菌、猩紅熱、梅毒、破傷風、淋疾、ツツガムシ病、結核、チフス、膣炎、軟性下疳などであり、
上記寄生虫、原虫または真菌によって引き起こされる感染症は、アメーバ症、ビルハルチア病、シャーガス病、足白癬、酵母菌の斑点、疥癬、マラリア、オンコセルカ症(河川盲目症)、または真菌症、トキソプラズマ症、トリコモナス症、トリパノソーマ症(睡眠病)、内臓リューシュマニア症、オムツ皮膚炎、住血吸虫症、魚中毒(シガテラ中毒)、カンジダ症、皮膚リューシュマニア症、ランブリア症(ジアルジア症)または睡眠病などであることを特徴とする、請求項23に記載の使用。
【請求項26】
上記自己免疫疾患が、I型自己免疫疾患、II型自己免疫疾患、III型自己免疫疾患、またはIV型自己免疫疾患、あるいはII型糖尿病から成る群から選択され、
上記I型自己免疫疾患、II型自己免疫疾患、III型自己免疫疾患、またはIV型自己免疫疾患は、例えば、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ、糖尿病、I型糖尿病(真性糖尿病)、全身性エリテマトーデス症(SLE)、慢性多発性関節炎、バセドー氏病、慢性肝炎の自己免疫形成、潰瘍性大腸炎、I型アレルギー疾患、II型アレルギー疾患、III型アレルギー疾患、IV型アレルギー疾患、線維筋痛、抜け毛、ベヒテレフ病、クローン病、重症筋無力症、神経皮膚炎、リウマチ性多発筋痛症、進行性全身性硬化症(PSS)、乾癬、ライター症候群、リウマチ性関節炎、乾癬、脈管炎などであることを特徴とする、請求項23に記載の使用。
【請求項27】
上記アレルギーが、(鼻粘膜の腫脹を引き起こす)アレルギー性喘息、(結膜の掻痒および充血を引き起こす)アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎(「花粉症」)、アナフィラキシー、血管浮腫、アトピー性皮膚炎(湿疹)、じんましん、好酸球増加症、呼吸アレルギー、虫刺されに対するアレルギー、(様々な発疹(湿疹、じんましん)、および(接触)皮膚炎などを含み、それらを引き起こす)皮膚アレルギー、食物アレルギー、薬に対するアレルギーなどから成る群から選択される、請求項23に記載の使用。
【請求項28】
請求項1〜17の何れか1項に記載の核酸、または請求項18〜22の何れか1項に記載の薬学的組成物を含んでおり、場合によっては該核酸または該薬学的組成物の投与および用量に関する情報を有する、使用のための技術説明書も含んでいる、キット。
【請求項29】
癌、感染症、自己免疫疾患およびアレルギーから成る群から選択される疾患または病気の治療が必要な患者に、薬学的に効果的な量の、請求項1〜17の何れかに記載の核酸、または請求項18〜22の何れかに記載の薬学的組成物を投与することによって、癌、感染症、自己免疫疾患およびアレルギーから成る群から選択される疾患または病気を治療する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2010−507361(P2010−507361A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522164(P2009−522164)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006772
【国際公開番号】WO2008/014979
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(509014386)キュアバック ゲーエムベーハー (11)
【氏名又は名称原語表記】CUREVAC GMBH
【住所又は居所原語表記】Paul−Ehrlich−Str.15,72076 Tuebingen,Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006772
【国際公開番号】WO2008/014979
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(509014386)キュアバック ゲーエムベーハー (11)
【氏名又は名称原語表記】CUREVAC GMBH
【住所又は居所原語表記】Paul−Ehrlich−Str.15,72076 Tuebingen,Germany
【Fターム(参考)】
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