説明

内副管付合成樹脂製排水ます

【課題】宅内用内副管付合成樹脂製排水ますの排水をます上流側に逆流させない。
【解決手段】開蓋時に着脱できる内副管22の下端側に略90°エルボ25を設け、この略90°エルボ25を、上向き接続部と外曲面28はあるが、横向き接続部と内面曲がなく、その代り、横向き開口部26のある形状にし、この開口部26の下端を内副管22の内径側に位置させて、平面視で楕円状の排水落下穴を構成し、この穴の短径を内副管22の径に対し、約3割以下とし、かつ、開口部26の下端の傾きを10°〜30°にすると内副管22を流下する排水は、該排水ます1のインバ−ト7の上流側へ逆流しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宅内の内副管付合成樹脂製排水ますに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、流入管と流出管との段差が60cm以上あるマンホ−ルには副管を設けている。この副管は、一般的にはマンホ−ルの外側に設置するが、段差(落差)が特に大きい場合や外側に設置困難な場合、例えば狭小地の場合には内側に設置する。
【0003】
かかる人の出入可能な内副管付コンクリ−ト製マンホ−ルに代り、人の出入不可の小口径の内副管付合成樹脂製マンホ−ルが知られている(特許文献1)。
【0004】
そして、本出願人は、集合一括排水設備と、宅内の屋外排水主管とを段差接合するために内副管付合成樹脂製排水ますを提案している(特許文献2)。
【0005】
一方周知のように、エルボとは、曲り部分に用いられる部品であるが、排水設備用の90°エルボとは、曲率半径が比較的小さいものを指し、その管軸を通る断面で弯曲した内曲面のない90°エルボ(DL)と管軸断面で弯曲した内曲面及び弯曲した外曲面のある90°大曲りエルボ(LL)とが規定されており(JISK6739)、固形物の多い汚水設備では大曲り形状を採用している。
【0006】
したがって、特許文献1に示す内副管の下端の案内管は、90°大曲りエルボを切管したような形状のもの(以下、略90°大曲りエルボという)に属し、特許文献2に示す内副管の下端のUタ−ン助勢案内部材は、90°エルボを切管したような形状のもの(以下、略90°エルボという)に属する、ということができる。
【特許文献1】特開平8−109647号公報
【特許文献2】特開2004−278095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献2に示す内副管の下端のUタ−ン助勢案内部材、すなわち、略90°エルボでは、満管流は勿論、半管流の場合でも、その排水の一部が宅内屋外排水主管の上流側に逆流する、という問題が意外にもその後、発見された。
【0008】
なお、特許文献1に示す内副管の下端の略90°大曲りエルボでは、小口径化した宅内排水ますには、大曲り形状故(大形化故)、開蓋時に取出し自在に構成したものには適用しにくく採用できない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明は、逆流防止の目標を本出願人提案の略90°エルボにおいて、解決するため創作されたもので、その要旨とするところは、宅内用内副管付合成樹脂製排水ますにあって、該内副管の下端に、宅内排水管の下流側に向けた略90°エルボを設け、該エルボを、上向き接続部と外曲面とがあり、かつ、横向き接続部と内曲面とがなく、その代り、横向き開口部を形成した形状とし、該開口部の下端を該内副管の内径側に位置させて平面視で略新月状ないし楕円状の排水落下穴を形成し、該穴の短径d1 を該内副管の径d0 に対し、約0.3×d0 以下にすること、および/または、前記開口部の下端を、その内面の接線Qの傾きθを約10°ないし約30°にすること、を特徴とする内副管付合成樹脂製排水ますにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、開蓋時に取出し自在にコンパクト化しながら、しかも、生産コストや部品点数を増やさず簡素化したままで新発見の課題たる逆流をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を別紙図面に示す実施例により詳細に述べる。
【0012】
図1は本発明の適用例の概要図であって、前掲の特許文献2にも示しており、図2は図1の本実施例の要部断面詳細図、図3は図2の要部詳細図で、(A)は正面図、(B)は(A)の管軸を通る断面図である。
(本発明の適用例の概要)
本発明を適用した実施例の屋外の合流式排水ます(公共ますを含む)1は、特に、建屋の基礎コンクリ−ト近傍に設置する小口径排水ますであって、全体が合成樹脂製、特に塩ビ射出成形製であり、その主要寸法は、屋内排水管、すなわち排水枝管2の口径が75mmφから100mmφ、屋外排水主管(3)、すなわち排水管3の口径が100mmφから150mmφ、ます口径が150mmφから200mmφのものに好都合に適用される。
【0013】
この排水ます1は、上方の点検筒部材4と下方のインバ−ト部材5と、から主として構成されており、点検筒部材4に直接、流入口たる受口6が横向きに一体成形され、これに前記排水枝管2を挿入するようになっている。
【0014】
インバ−ト部材5のインバ−ト7は、段差8付の合流式インバ−トになっていて、屋外の排水主管(3)の上、下流側9、10がストレ−ト状に接続される。
【0015】
したがって、このインバ−ト7は段差付ストレ−ト型合流式インバ−トということができる。勿論、このインバ−ト7は45°インバ−ト等でもよい。
【0016】
また、この種の排水ますの埋設深さは、公共ます(不図示)の深さが条例等で略決められ、かつ、前記屋外排水主管(3)の勾配が決められていること、更に、屋外排水主管(3)の最小土被りも20cmと決められており、しかも、建屋の防湿コンクリ−ト11は地表GLより約20cm高く打設することが決められいることから、総じて、防湿コンクリ−ト11上に設けられた屋内排水主管12と前記屋外排水主管(3)とは段差接合(落差接合)で接続することになる。
【0017】
すなわち、防湿コンクリ−ト11上に設けた屋内排水主管12は屋内にて、下向きの第1の45°エルボ13、45°傾斜管14、上向きの第2の45°エルボ15、フ−チング基礎16に立設した布基礎17を貫通した第1の横管18および90°曲管19、更には第2の横管、すなわち排水枝管2等からなる緩やかな段差接合構造を介して排水ます1に接続して、この落差の一部を担持している。
【0018】
そして、この落差の残部は、この排水ます1を内副管付排水ますに構成して担持している。
(本実施例の排水ますの概要)
この排水ます1は、前記のように点検筒部材4とインバ−ト部材5とからなり、その中間にます用高さ調節部材20を介在しており、この点検筒部材4の上端部には高さ調節自在の密閉式開閉蓋21を設けている。
【0019】
この排水ます1では、ゴム輪受口たる受口6から流入する排水を屋外排水主管(3)へ落差をもって流下させ、その流れを円滑にするため、受口6に接続する内副管22を内蔵している。
【0020】
この内副管22は、掃除・点検等のため、開閉蓋21の開蓋時に取出し・取付ができるように着脱自在に構成し、そのため全体をコンパクトに構成している。
【0021】
したがって、この内副管22に用いるエルボは、前記のように弯曲した外曲面28はあるが、弯曲した内曲面のない、いわゆる小曲りエルボに構成しているので、コンパクトになっている。
【0022】
すなわち、この内副管22はバッフル用90°エルボ体23と、内副管用高さ調節部材24と、本実施例の主要部である略90°エルボ25とから構成している。
【0023】
この略90°エルボ25は、常に排水管3の下流側10に向け開口しているが、バッフル用90°エルボ体23、ひいては受口6は、図示のように排水管3の下流側10に向け開口し、したがって、排水管3と排水枝管2とが平行になっており(これをUタ−ン配管という)、この場合の流れaはUタ−ンさせている。
【0024】
また、図示しないが、この受口6を排水管3に直交して設けてもよい(これを90°配管という)。この場合の流れaは平面視で約90°変換させている。
【0025】
なお、1つの内副管22に2つの受口6を各接続させて、これらの受口から合流して流下させるようにしてもよい。
(本発明の主要部)
ここにおいて、本発明の課題を解決するため、すなわち、特に、集合一括排水設備と宅内の排水管3とを段差接合により接続するのに用いる内副管22付排水ます1において、該内副管22から出る排水をインバ−ト7から排水管3の上流側9へ逆流させないため、試行錯誤したところ、内副管22を出た排水が排水ます1のインバ−ト7やます立上り部位29に衝突して跳ね返ることにより、この逆流現象が生じる、ということを発見し、本発明が創作された。
【0026】
例えば、前掲の特許文献2に示すUタ−ン助勢案内部材と称する略90°エルボでは、後記詳細の平面視の排水直接落下穴の短径d1 が内副管(22)の内径の約半分を占め、内副管(22)を流下する大量の排水が直接インバ−ト(7)に当り、これが跳ね返って、排水管3の上流側9へ逆流している、という問題を発見した。
【0027】
そこで、内副管22の下端に設けている略90°エルボ25の形状のみを各種変化させ(したがって、部品点数や生産コストをそのままにして)試行錯誤したところ、次のような逆流防止に到達した。但し、この試行錯誤に際しては、次の(A)(B)(C)を前提としている。
【0028】
(A)内副管22は点検筒部材4(ます本体)と略同心状に位置させること。したがって、開閉蓋21を開いて点検掃除等をする際、ます本体の全内壁が視認できるし、内副管22の着脱も容易になり、受口6を2つます本体でも1つの内副管で構成できる、という特長をもっている。
【0029】
(B)略90°エルボ25の開口部26の下端高さh1 は、排水管3の管軸Pより上方に位置させること。したがって、開口部26の上端高さh2 は排水管3の管頂より上方に位置することになり、排水管3の上流側9の排水が、たとえ最大設計流量(半管流)の流れでも支障なく流れ、また、上流側からの掃除棒等も当接しにくいという特長をもっている。
【0030】
これに反して、開口部26の上端側の流れは、インバ−ト部材5の上向き開口部位、すなわち、ます立上り部位29に当り、これが跳ね返って逆流しようとするので、この逆流をも可及的に抑制する必要がある。
【0031】
(C)次の大きさの排水ます1を代表的な試験例にした。排水管3の口径を100mmφ、排水枝管2の口径を75mmφ、段差8の高さを30mm、開口部26の下端高さh1 をインバ−ト7より上方に70mm、開口部26の上端高さh2 をこれより更に74mm上方にした。
【0032】
さて、かかる前提のもとに、本実施例の略90°エルボ25の形状を次のようにしている。
【0033】
すなわち、一般の標準的なDLと略称されている90°エルボの流入側受口(上向きの接着接合用TS受口たる開口部をいう)27はそのままにして、流出側受口(不図示であるが、流入側受口に直交した横向きの接着接合用TS受口たる開口部をいう)をこの受口側のみ切管して除き、その代り、横向き開口部26を形成している。
【0034】
勿論、本明細書記載の切管とは、完成したDLエルボをカッタ−により切断するのではなく(含めても可)、切管したような形状に射出成形することをいう。
【0035】
この切管形状にするに際し、開口部26の下端を側面視で内副管22の内側になるように、したがって平面視の排水直接落下穴の短径d1 を構成するように切管し、内副管22を流下する排水が直接インバ−ト7へ衝突する量を抑制している。
【0036】
そのため、流入口側受口27に接着接合する管体、つまり、内副管口径d0 より内径側にd1 だけづらして切管し、平面視の該穴の短径d1 をもつ略楕円状ないし新月状の平面視での排水直接落下空間、つまり穴を形成している。
【0037】
したがって、一般のDLと略称される90°エルボの外曲面28は殆ど残し、勿論、内曲面はなく、内副管22を流下する殆どの排水はインバ−ト7へ直接衝突せず、排水管3の下流側10へ略90°変換誘導して流れるようにしている。
【0038】
また、この開口部26の下端における外曲面28の内面の接線Qの傾きθを約20°にしている(したがって、この場合の切管は垂直線に対し5°傾けて切管し、ひいては外曲面28の曲率半径を約140mmとなっている)。
【0039】
すなわち、接線Qの傾きθを零、すなわち外曲面28の内面の向きを水平にすると、内副管22を流下する排水がます立上り部位29に大量に衝突し、これにより上流側9へ逆流する原因となるから下方に傾けている。
【0040】
つまり、ます立上り部位29への跳ね返りを少なくしている。特に、ます立上り部位29へ衝突しようとする流れを、可及的に平面視の該穴によって下方に誘導して衝突を抑制している。
【0041】
そして、この開口部26を形成するために平面視の該穴の短径d1 を内副管口径d0 に応じて各種選定した。
【0042】
すなわち、本試験では、特に、平面視の該穴の短径d1 を0×d0 、0.3×d0 、0.5×d0 の3つを選び、これらの排水直接落下穴の状態をもとに、外曲面28の下端の内面の接線Qの傾きθを種々変更させて逆流状態をみたところ、次の代表的な表1、2の結果を得た。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

△…少々逆流あり(跳ね返りによる)
○…殆ど逆流しない(スム−ズに流下)
▽…逆流大
したがって、例えば集合一括排水設備において、かかる○印のついた、排水直接落下穴の短径d1 を内副管22の径の3割以下とする略90°エルボ25を用いると、例えば風呂水を満管流で排水枝管2へ流し、排水管3の上流側9からトイレ排水をこの排水ます1に合流させても、全体としてスム−ズな流れにすることができた。もし、この風呂水が逆流すれば、トイレ汚水の固形物がフラッシュアウトせず滞留し、異臭の原因となる。
【0045】
なお、かかる略90°エルボ25の形状をそのままにして、段差8のない排水ます(1)や内副管22の開口部26の下端を排水管3の管軸Pより下方に位置させて適用しても、逆流や跳ね返り現象は抑制された。
【0046】
なおまた、開口部26の下端の内面の接線Qの傾きθを35°にすると、急傾斜となり、インバ−ト7へ直接衝突し逆流防止としては好ましくないし、この35°では曲率半径が大となりエルボとしても好ましくない。
【0047】
更になお、この接線Qの傾きθは、外曲面28全体を円弧の一部で構成すると、その曲率半径によって決まるので、この略90°エルボ25では、外曲面28の下端内面の接線Qの傾きθと、平面視の楕円状の排水直接落下穴の短径d1 のd0 に対する割り合とは、夫々単独で構成しても、逆流防止には資することが判明した。
【0048】
例えば、内副管22の口径を75mmφにした場合で、外曲面28の内面の接線Qの傾きθを20°にした場合、平面視の楕円状の排水直接落下穴は形成せず、外曲面28の先端は、約10mm舌片状に出張るが、この場合でも接線Qの傾きθの選定のみで逆流防止の効果はあった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の適用例である。
【図2】本発明の実施例の断面図である。
【図3】図2の要部図で、(A)は正面図、(B)は(A)の管軸断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 排水ます
22 内副管
25 略90°エルボ
26 開口部
Q 接線
θ 傾き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宅内用内副管付合成樹脂製排水ますにあって、
該内副管の下端に、宅内排水管の下流側に向けた略90°エルボを設け、
該エルボを、上向き接続部と外曲面とがあり、かつ、横向き接続部と内曲面とがなく、その代り、横向き開口部を形成した形状とし、
該開口部の下端を該内副管の内径側に位置させて平面視で略新月状ないし楕円状の排水落下穴を形成し、該穴の短径d1 を該内副管の径d0 に対し、約0.3×d0 以下にすること、
および/または、
前記開口部の下端を、その内面の接線Qの傾きθを約10°ないし約30°にすること、を特徴とする内副管付合成樹脂製排水ます。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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