説明

内在性アンチセンスRNAの発現解析システム

【課題】非翻訳性アンチセンスRNAを含む内在性アンチセンスRNAを網羅的かつ高精度に検出できる、新規な内在性アンチセンスRNA発現解析システムの提供。
【解決手段】既知cDNAのアンチセンス鎖を人工的に設定し、そのアンチセンス鎖配列(Artificial Antisense Sequence:AFAS)に対して、ハイブリダイゼーションに最適な条件で、設計された1種以上のプローブからなるプローブセット;AFASプローブセットを搭載したマイクロアレイ;そのマイクロアレイと、ランダムプライミングによるRNAのラベリングとを組み合わせた、内在性アンチセンスRNAの検出方法など。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未知の内在性アンチセンスRNAを検出し得る新規プローブ、特に非翻訳性アンチセンスRNAを含む内在性アンチセンスRNAを網羅的かつ高精度に検出し得るプローブセット、それを固定化したマイクロアレイ及びその用途などに関する。
【背景技術】
【0002】
アンチセンスRNAとは、mRNAに対して、相補的な塩基配列を持ったRNAであり、具体的には、センス遺伝子をコードするDNA鎖の逆鎖から読まれるRNAである。センス−アンチセンスRNA間には、2本鎖形成能があり、例えば、2本鎖RNAはRNA干渉が働く際に必要であること、及びマイクロRNAと呼ばれる小さなRNAによるタンパク質の翻訳制御に2本鎖RNAが関与することなどが知られている。
【0003】
マウスでは、約2,500対のセンス−アンチセンス遺伝子が同定されており、それらにはタンパク質をコードしない非翻訳性の遺伝子が多く含まれている(非特許文献1)。センス−アンチセンス遺伝子対の約半数が翻訳性−非翻訳性の遺伝子対であると考えられている。またヒトでも、約2,600対のセンス−アンチセンスRNAペアが存在することが示唆されているが(非特許文献2)、それらの構造や発現に関する実験的検証は限られていた。
【0004】
本発明者及びその共同研究者らはこれまで、マウスで同定されたセンス遺伝子及びアンチセンス遺伝子1947対を識別して解析可能なオリゴDNAチップを開発し、センス−アンチセンス遺伝子の網羅的な発現解析を行った(非特許文献3)。その結果、これらのセンス−アンチセンス遺伝子の9割以上が実際の組織で発現しており、その発現には組織特異性があることを見出した。また、センス−アンチセンス遺伝子座からは様々なサイズのRNAが転写され、それらの多くがポリ(A)鎖を欠き、核内に蓄積される傾向があることも発見した。さらにシロイヌナズナで行った解析からもポリ(A)鎖のないRNAが見つかり、この性質が動植物で共通であることがわかった。
【0005】
しかし、このような非翻訳性アンチセンスRNAの生理的な役割については、これまで全く解明されていなかった。
【0006】
非翻訳性アンチセンスRNAの生理機能を探るためには、それらの網羅的な発現解析が不可欠である。しかしながら、従来のcDNA配列を利用してプローブを設定したマイクロアレイでは、アンチセンス鎖上にcDNA配列(即ち、翻訳性RNA)が存在する遺伝子にしかプローブを設計できないため、新規のアンチセンスRNA(特に非翻訳性アンチセンスRNA)を検出することができない。
【0007】
一方、Affymetrix社が開発したゲノムタイリングアレイは、cDNA配列による遺伝子情報の存在にかかわらず、ゲノム配列上に一定間隔でタイル状にプローブを設計するもので、原理的にはcDNA配列情報がなくても新規アンチセンスRNAを検出できる可能性はある。しかしながら、ゲノムタイリングアレイは、ゲノムDNA配列に対して一定間隔で強制的にプローブを設計しているためプローブ性能に問題があり、バックグラウンドが非常に高くノイズが大きいためにシグナルとの識別が困難である。またその仕様上、センス鎖とアンチセンス鎖を区別して解析することができないなど、問題点が多い。
【0008】
そのため、新規の内在性アンチセンスRNA(特に非翻訳性アンチセンスRNA)を効率よく検出するには、従来のようなcDNA配列を基に設計されたcDNAアレイやゲノムタイリングアレイとは異なる、新規なアンチセンスRNA検出手段が求められている。
【非特許文献1】Kiyosawa et al,Genome Res.13:1324−1334(2003)
【非特許文献2】Yelin et al,Nat.Biotechnol.21:379−386(2003)
【非特許文献3】Kiyosawa et al,Genome Research,15:463−474(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、非翻訳性アンチセンスRNAを含む内在性アンチセンスRNAを網羅的かつ高精度に検出できる、新規な内在性アンチセンスRNA発現解析システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、既知cDNAの配列から推認されるアンチセンス鎖配列を仮想アンチセンスRNAとして人工的に想定し、該アンチセンス鎖配列(Artificial Antisense Sequence:AFAS)に対して、通常のcDNA配列に対してプローブを設計する場合と同様の条件、即ちハイブリダイゼーションに最適な条件で、プローブを設計し、該プローブ(AFASプローブ)をcDNA配列(センス鎖配列)に対するプローブとともに搭載したマイクロアレイを構築した。さらに、本発明者は、癌患者の試料をランダムプライミングによってラベルし、該マイクロアレイを用いて、各試料中のセンス−アンチセンス遺伝子対の発現を網羅的に解析した結果、癌遺伝子として知られるサイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)及びマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ7(MAPK7)遺伝子のセンス鎖の発現が癌組織で増加している一方、対応するアンチセンスRNAの発現が周辺の正常組織において顕著に減少していることを見出した。これらの結果は、遺伝子発現がアンチセンスRNAによって調節されており、該調節機構の異常が疾患と密接に関わっていることを示しており、内在性アンチセンスRNAが対応するセンス鎖にコードされる遺伝子の発現を調節する生理機能を有していることを、初めて明確に実証したものである。
本発明者は、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、AFASプローブセットを搭載した新規マイクロアレイと、ランダムプライミングによる非翻訳性(非ポリA付加)RNAを含む全RNAのラベリングとを組み合わせた手法が、内在性アンチセンスRNAによる遺伝子発現調節とその生物学的意義の解明に大いに有用であることを実証して、本願発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は以下の通りである:
〔1〕既知cDNAの配列から推認されるアンチセンス鎖配列とハイブリダイズし得る人工的な塩基配列を含む核酸からなるプローブを少なくとも1種以上含むことを特徴とするプローブセット。
〔2〕該cDNAの少なくとも1種は、そのアンチセンス鎖が転写されたときにポリ(A)鎖が付加されないcDNAであることを特徴とする、上記〔1〕記載のプローブセット。
〔3〕該cDNAが哺乳動物由来である、上記〔1〕又は〔2〕記載のプローブセット。
〔4〕該哺乳動物がヒト又はマウスである、上記〔3〕記載のプローブセット。
〔5〕該cDNAのセンス鎖とハイブリダイズし得る塩基配列を含む核酸からなるプローブをさらに含んでなる、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のプローブセット。
〔6〕該cDNAの数が100以上である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のプローブセット。
〔7〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のプローブセットが基板上に固定化されてなるマイクロアレイ。
〔8〕上記〔7〕記載のマイクロアレイを用いる、RNA含有試料中の内在性アンチセンスRNAの検出方法であって、下記の工程:
(a)該試料中のRNAをランダムプライミングによりラベルする工程、
(b)該マイクロアレイ上の各プローブと、前記ラベルしたRNAとを接触させる工程、
(c)該プローブと結合しなかったRNAを洗い流す工程、及び
(d)該プローブと結合したRNAのラベルを検出する工程
を含む方法。
〔9〕該アンチセンスRNAに対応するセンス鎖より転写されるmRNAの発現を検出することを含む、上記〔8〕記載の方法。
〔10〕該試料が哺乳動物由来である、上記〔8〕又は〔9〕記載の方法。
〔11〕該哺乳動物がヒト又はマウスである、上記〔10〕記載の方法。
〔12〕哺乳動物同士の内在性アンチセンスRNAの発現パターンを比較する上記〔9〕又は〔10〕記載の方法であって、ターゲット動物と対照動物のそれぞれについて前記(a)〜(d)の工程を行い、得られるターゲット動物の内在性アンチセンスRNAの発現パターンと、得られる対照動物の内在性アンチセンスRNAの発現パターンとを比較して、ターゲット動物と対照動物との間で発現変動する内在性アンチセンスRNAを同定することをさらに含む方法。
〔13〕ターゲット動物が所定の疾患に罹患している、又は所定の疾患のモデル動物である、上記〔12〕記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のAFASプローブセット及びそれを搭載したマイクロアレイは、アンチセンス鎖上にcDNA配列が見出だされていない遺伝子についても、アンチセンスRNAの検出が可能である。また、通常のcDNAアレイにおけるcDNA配列に対して行うと同様の条件でAFASに対するプローブを設計するので、ゲノムタイリングアレイに比べて検出感度および精度に優れている。さらに、ランダムプライミングによるRNAのラベリングと組み合わせることにより、非翻訳性アンチセンスRNAをも漏れなく検出することが可能である。その結果、内在性アンチセンスRNAによる遺伝子発現調節を網羅的に解析することが可能となり、該調節機構の異常と疾患との関連など、種々の生物学的事象における内在性アンチセンスRNAの関与を解明することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のプローブセットは、既知cDNAの配列から推認されるアンチセンス鎖配列とハイブリダイズし得る人工的な塩基配列を含む核酸からなるプローブを少なくとも1種以上含む。該プローブセットは上記プローブ1種のみからなる場合を包含するので、以下、2種以上の上記プローブを含むものに限定される場合を除き、「本発明のプローブ(セット)」と表記する。
既知cDNAは、mRNA(ESTを含む)の存在が知られているRNAに対応する相補DNAであれば特に制限はなく、各種cDNAおよびESTデータベース(例えば、GenBank、EMBL、DDBJ等)に登録されている任意のcDNA、あるいは新規にクローニングされたcDNAであってもよい。
対象となるcDNAの数は1以上であれば特に制限されず、目的に応じて適宜選択することが可能であるが、網羅的なアンチセンスRNAの解析という観点から、好ましくは100以上、より好ましくは1000以上、特に好ましくは10000以上である。また、cDNAは遺伝子の種類に関係なくランダムに選択することもできるし、例えば疾患特異的に発現が変動することが知られている遺伝子群(例えば、癌遺伝子など)に対応するcDNAや、薬物毒性と相関して発現が変動することが知られている遺伝子群(例えば、リン脂質症マーカー遺伝子など)に対応するcDNA、さらには幹細胞もしくは分化細胞特異的に発現する遺伝子群(未分化マーカー、分化マーカー遺伝子)など、特定の共通した性質を有する遺伝子に対応するcDNAを選択することもできる。
対象となるcDNAの由来は同一種であれば特に制限されず、いかなる生物由来のものであってもよいが、好ましくは哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ハムスター等)であり、より好ましくはヒト、マウス、ラット、サル、イヌ等、特に好ましくはヒト又はマウスである。
既知cDNAの「配列」とは、センス鎖(タンパク質に翻訳される情報を含む鎖)の配列、即ちmRNAに対応する塩基配列を意味し、「アンチセンス鎖」とは、センス鎖と相補的な鎖を意味する。
既知cDNAの配列から「推認されるアンチセンス鎖配列」とは、センス鎖配列に基づいて決定されるそれに完全相補的な配列であって、該アンチセンス鎖配列が実際にゲノムDNAから転写されることが知られているか否かに拘わらず、人為的に想定される配列を意味する。
上記アンチセンス鎖配列を含むRNAの検出用プローブは、通常の遺伝子発現解析において使用され得るハイブリダイゼーション条件の下で、標的アンチセンス鎖配列とハイブリダイズし得る塩基配列を含む核酸であれば、特に制限されない。好ましくは、該プローブは、標的アンチセンス鎖配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る塩基配列を含む核酸である。「ストリンジェントな条件」とは、目的とする核酸配列に対して完全相補的な塩基配列と95%以上、好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列のみがハイブリダイズし得る条件を意味する。当業者は、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、ハイブリダゼーション反応の温度、プローブ濃度、プローブの長さ、ミスマッチの数、ハイブリダイゼーション反応の時間、洗浄液の塩濃度、洗浄の温度等を適宜変更することにより、所望のストリンジェンシーに容易に調節することができる。
【0014】
本発明のプローブ(セット)を構成する核酸プローブの塩基長は、対象となるcDNAから推認されるアンチセンス鎖配列と特異的にハイブリダイズし得る限り特に制限されず、例えば15塩基以上、好ましくは20塩基以上、より好ましくは25塩基以上が挙げられる。合成の容易さなどを考慮すれば、プローブ長は200塩基以下であることが好ましく、100塩基以下であることがより好ましい。各プローブの塩基長は異なっていてもよいが、同じであることがより好ましい。
プローブの塩基長がアンチセンス鎖配列の全長より短い場合、標的となるアンチセンス鎖配列の位置は特に制限されない。通常、mRNAの検出・解析のために約25〜約60merのプローブを作製する場合、RNAをオリゴdTプライミングによりラベルすることが多いので、mRNAの3’末端側の塩基配列が標的として選択される場合が多いが、本発明のプローブ(セット)は、非翻訳性アンチセンスRNA、即ちポリ(A)が付加されていないアンチセンスRNAをも効率よく検出するためのものであるため、RNAサンプルのラベリングにはランダムプライミングが選択され、従ってプローブの標的配列もアンチセンス鎖上の任意の位置から、ハイブリダイゼーションに好適な配列を適宜選択して用いることができる。1つのアンチセンス鎖に対して異なる位置を標的とする2以上のプローブを設計することもできる。
【0015】
本発明のプローブ(セット)は、対象となるcDNAの少なくとも1種が、そのアンチセンス鎖が転写されたときにRNAにポリ(A)鎖が付加されないcDNAであることを特徴とする。従来のcDNA配列を基に作製されたセンス−アンチセンス遺伝子発現解析用マイクロアレイでは、アンチセンス鎖上にcDNA配列、即ちmRNAとしてポリ(A)鎖が付加される配列の存在が知られているものについてしか、アンチセンス鎖に対するプローブが設計・搭載されていない。本発明のプローブ(セット)は、アンチセンス鎖上にcDNA配列が存在するか否かにかかわらず、機械的にアンチセンス配列(AFAS)を想定して該AFASに対するプローブを設計することにより、cDNA、即ち翻訳性RNAの存在が知られていない遺伝子についても、アンチセンスRNA、特に非翻訳性のアンチセンスRNAを検出することを可能にする。
アンチセンス鎖が転写されたときにRNAにポリ(A)鎖が付加されない対象cDNAの数も特に制限はないが、非翻訳性アンチセンスRNAの網羅的な解析という観点から、好ましくは2以上、より好ましくは50以上、特に好ましくは100以上である。
【0016】
本発明のプローブセットは好ましくは、cDNAのセンス鎖とハイブリダイズし得る塩基配列を含む核酸をさらに含む。
「センス鎖」とは、上述の通りcDNAのmRNAに対応する塩基配列を含む鎖、即ち、タンパク質に翻訳される情報を含む鎖を意味する。センスRNA(mRNA)の検出用プローブは、通常の遺伝子発現解析において使用され得るハイブリダイゼーション条件の下で、標的センス鎖配列とハイブリダイズし得る塩基配列を含む核酸であれば、特に制限されない。好ましくは、該プローブは、標的センス鎖配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る塩基配列を含む核酸である。ここで「ストリンジェントな条件」は上記と同義である。センス鎖を標的とするプローブの塩基長も、上記アンチセンス鎖を標的とするプローブと同様の範囲が好ましく例示される。プローブの塩基長がcDNAの全長より短い場合、標的となるセンス鎖配列の位置は特に制限されず、上記と同様にハイブリダイゼーションに好適な配列を適宜選択して用いることができる。
【0017】
これらの核酸プローブは、標的となるアンチセンス鎖もしくはセンス鎖の塩基配列情報に基づいて、その相補鎖配列を市販のDNA/RNA自動合成機等を用いて化学的に合成することによっても得ることができる。また、シリコンやガラス等の固相上で該核酸を直接in situ(on chip)合成することにより、該核酸が固相化されたチップ(アレイ)を作製することもできる。
【0018】
これらの核酸プローブは、乾燥した状態もしくはアルコール沈澱の状態で、固体として提供することもできるし、水もしくは適当な緩衝液(例:TE緩衝液等)中に溶解した状態で提供することもできる。標識プローブとして用いられる場合、該核酸は予め上記のいずれかの標識物質で標識した状態で提供することもできるし、標識物質とそれぞれ別個に提供され、用時標識して用いることもできる。標識物質としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔32P〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、プローブと標識剤との結合にビオチン-(ストレプト)アビジンを用いることもできる。一方、プローブとなる核酸を固相上に固定化する場合には、試料中の核酸を上記と同様の標識剤を用いて標識することができる。
【0019】
本発明の好ましい実施態様においては、本発明のプローブ(セット)は、それが基板上に固定化されてなるマイクロアレイの形態で提供される。
基板の材料としては、シリコンなどの半導体、ガラス、ダイヤモンドなどの無機物、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の高分子物質を主成分とするフィルムなどが挙げられ、また基板の形状としては、スライドガラス、マイクロウェルプレート、マイクロビーズ、繊維型などが挙げられるが、それらに制限されない。
基板上にプローブを固定化する方法としては、予め核酸にアミノ基、アルデヒド基、SH基、ビオチンなどの官能基を導入しておき、一方、固相上にも該核酸と反応し得る官能基(例:アルデヒド基、アミノ基、SH基、ストレプトアビジンなど)を導入し、両官能基間の共有結合で固相と核酸を架橋したり、ポリアニオン性の核酸に対して、固相をポリカチオンコーティングして静電結合を利用して核酸を固定化するなどの方法が挙げられるが、これらに限定されない。マイクロアレイの調製法としては、フォトリソグラフィー法を用いて核酸プローブを基板(ガラス、シリコンなど)上で1ヌクレオチドづつ合成するAffymetrix方式と、マイクロスポッティング法、インクジェット法、バブルジェット(登録商標)法などを用いて、予め調製された核酸プローブを基板上にスポッティングするStanford方式とが挙げられるが、30mer以上のプローブを用いる場合にはStanford方式、あるいは両者を組み合わせた手法を用いるのが好ましい。
【0020】
本発明はまた、本発明のマイクロアレイを用いる、RNA含有試料中の内在性アンチセンスRNAの検出方法を提供する。該方法は下記の(a)〜(d)の工程を含む。
(a)該試料中のRNAをランダムプライミングによりラベルする工程
(b)該マイクロアレイ上の各プローブと、前記ラベルしたRNAとを接触させる工程
(c)該プローブと結合しなかったRNAを洗い流す工程
(d)該プローブと結合したRNAのラベルを検出する工程
RNA含有試料は、任意の生物から、公知の方法によって調製される。RNA含有試料の由来となる生物は、用いられる本発明のアイクロアレイ上のプローブが標的とする配列が由来する生物種であれば、動物、植物、細菌、細胞など、特に制限されず、いかなる生物由来のものであってもよいが、好ましくは、試料は哺乳動物由来であり、より好ましくは、試料はヒト又はマウス由来である。また、試料は、生物全体又はその一部分由来であってもよく、例えば細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など]もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織[例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、眼球、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織、骨格筋など]などが挙げられる。検出すべきRNA(例えば、疾患マーカー、毒性マーカー、分化マーカーなどのバイオマーカーとなり得るRNA)を発現し得る限り、迅速且つ簡便に採取することができ、動物への侵襲が少ないなどの点から、血液(例:末梢血)、リンパ球等が好ましい。
【0021】
上記の細胞含有試料から、例えばグアニジン−CsCl超遠心法、AGPC法などの自体公知の手法を用いて全RNA画分を調製する。市販のRNA抽出用キット(例:RNeasy Mini Kit;QIAGEN製等)を用いれば、微量試料から迅速且つ簡便に高純度の全RNAを調製することができる。
【0022】
得られた全RNA画分をランダムプライマーを用いてラベルする。ラベルとしては、放射性同位元素、蛍光物質などが用いられ得る。放射性元素としては、〔32P〕、〔H〕、〔14C〕などが用いられ、蛍光物質としては、Cy3(登録商標)、Cy5(登録商標)などが用いられる。他に、RNAと標識剤の結合に、ビオチン−(ストレプト)アビジンを用いてもよいが、これらに限定されない。ラベリングは例えば以下のようにして行うことができるが、これに限定されない。まず、全RNA画分から、ランダムプライマーを用いた逆転写反応により、T7プロモーター等の適当なプロモーターを導入したcDNAを合成し、さらにRNAポリメラーゼを用いてcRNAを合成する(この時上記標識物質でラベルしたモノヌクレオチドを基質として用いることにより、標識cRNAが得られる)。この標識cRNAを上記固相化プローブと接触させてハイブリダイゼーション反応させ、固相上の各プローブに結合した標識量を測定することにより、各遺伝子の発現量を測定することができる。ハイブリダイゼーション反応は、上記「ストリンジェントな条件」下で実施することができる。
ラベルの検出は、用いたラベルに応じて、自体公知の方法によって行われる。
また、本方法は、アンチセンスRNAに対応するセンス鎖より転写されるmRNAの発現を検出することを含み得る。
【0023】
本発明の方法はまた、ターゲット動物と対照動物のそれぞれについて前記(a)〜(d)の工程を行い、得られるターゲット動物の内在性アンチセンスRNAの発現パターンと、得られる対照動物の内在性アンチセンスRNAの発現パターンとを比較して、ターゲット動物と対照動物との間で発現変動する内在性アンチセンスRNAを同定することをさらに含む。ここでターゲット動物としては、例えば、所定の疾患に罹患している哺乳動物又は所定の疾患のモデル動物、所定の物理的もしくは化学的ストレスを負荷された哺乳動物などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0024】
例えば、ターゲット動物が所定の疾患に罹患している哺乳動物である場合、該動物から得られる内在性アンチセンスRNAの発現パターンを、疾患に罹患していない対照動物由来のRNA含有試料中の発現パターンと比較して、その疾患特異的に発現変動する内在性アンチセンスRNAを同定する。所定の疾患は、特に限定されず、例えば、大腸癌及び肝臓癌などの癌、精神疾患、免疫性疾患、炎症性疾患、代謝異常疾患、神経変性疾患、心血管障害、脳血管障害、血液疾患、感染症、消化器系疾患、呼吸器系疾患、泌尿器系疾患などの各種疾患の他、リン脂質症などの脂質代謝異常を含む薬物毒性なども包含され得る。また、対照動物としては、疾患動物と同一種の該疾患に罹患していない動物(好ましくは、正常動物)が挙げられるが、ヒトの場合、特に組織サンプルについては健常者由来の試料を得ることが困難であることから、疾患サンプルとして病変組織を、対照組織として周辺の正常組織を用いることもできる。
【0025】
疾患動物由来のRNA含有試料と対象動物由来のRNA含有試料とは、それぞれ別個に本発明のマイクロアレイとハイブリダイズさせてもよいし、同時に競合的にハイブリダイズさせてもよい。後者の場合、各試料を、例えば色の異なる蛍光色素(例えば、Cy3とCy5等)で標識しておけば、蛍光の色調をスキャン解析することにより両者の発現の差を定量的に解析することができる。
その結果、対照動物に比べて疾患動物で有意に発現が変動したアンチセンスRNAを該疾患特異的に発現変動する内在性アンチセンスRNA、即ち該疾患のマーカーアンチセンスRNAとして選択することができる。当該アンチセンスRNAが非翻訳性であるか否かは、試料のRNAをオリゴdTプライミングでラベルして同様に処理した場合の該アンチセンスRNAの発現を比較することにより検証することができる。
【0026】
あるいは、分化した細胞と未分化の細胞(幹細胞など)とからそれぞれRNAを採取して、上記と同様に発現解析を行うことにより、両者の間で有意に発現量が相違するアンチセンスRNAが得られれば、該RNAを分化マーカー(あるいは未分化マーカー)として選択することができる。
【0027】
上記のようにして得られる疾患マーカーや分化(未分化)マーカーアンチセンスRNAの発現を指標として、疾患や分化(未分化)状態を検査することができる。即ち、被験動物(被験細胞)由来のRNA含有試料と対照動物(対照細胞)由来のRNA含有試料とについて、それぞれ上記と同様に本発明のマイクロアレイを用いてアンチセンスRNAの発現を解析し、被験動物(被験細胞)における該マーカーアンチセンスRNAの発現を対照と比較することにより、該被験動物が疾患に罹患している(罹患するおそれがある)か否か、被験細胞が分化しているか未分化状態であるかを判定することができる。
あるいは、マーカーアンチセンスRNAの塩基配列に基づいて、特定のプローブや該配列を増幅し得るプライマーを設計・調製し、これらを用いてドットブロットもしくはノーザンブロットハイブリダイゼーションやRT−PCRを用いて該アンチセンスRNAの発現を定量的に解析することもできる。
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であって本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例1】
【0029】
マイクロアレイの作製
遺伝子特異的な60merのオリゴDNAからなるプローブを用い、アジレント社のシステムを使用して、カスタムマイクロアレイを作成した。プローブとしては、癌研究に利用される遺伝子の配列(センス鎖)のプローブと共に、そのアンチセンス鎖に対するプローブをマイクロアレイ上に載せた。アンチセンス鎖プローブに関しては、遺伝子(cDNA配列)の相補鎖の配列を準備し、特異的な60merを選び、アレイ上に搭載した。アンチセンス鎖プローブは、cDNA配列解析の結果、センス鎖に対するアンチセンス鎖が発見されていない遺伝子のアンチセンス鎖側のプローブも含んでいた。
【実施例2】
【0030】
発現解析
実施例1のマイクロアレイチップを用い、癌試料の発現解析を行った。試料のオリゴdTラベルには、アジレント社指定の1色法用のラベリングキットと蛍光色素(Cy3)を用い、ターゲットcRNAを作製しハイブリダイゼーションを行った。ランダムプライミング法に関しては、Amersham社のCyScribe First−Strand cDNA Labeling Kitを用いて、ターゲットcDNAを作製しハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション及び洗浄は、アジレント社の推薦するプロトコルにしたがった。
ハイブリダイゼーション後は、アジレント社のスキャナーでスライドグラス上の蛍光強度を測定し、アジレント社の提供するソフトウェア(Feature Extraction)によりデータの補正を行い、シグナル値(processed signal)を得た。
以上のデータに基づき、センス鎖とアンチセンス鎖のシグナル比を疾患試料と正常組織間で比較することにより、疾患特異的に発現するアンチセンスRNAの同定を行った。
【0031】
大腸癌試料の発現解析
大腸癌で発現が上がることが知られている遺伝子であるCDK4(cyclin−dependent kinase 4、GenBank ID:M14505)に関して、そのセンス鎖及びアンチセンス鎖の発現解析を、上記方法に従って行った。プローブとしては、アンチセンス鎖に対しては配列番号1に相補的な配列を、センス鎖に対しては配列番号2の配列を用いた。
試料には6人の大腸癌患者の手術由来の癌組織、及びその周辺の正常組織を用い、Trizol(Invitrogen)などを用いたguanidinium−thiocyanate−phenol−chloroform法でRNAを抽出した。
得られた試料に関して、オリゴdTプライム法によりラベルして解析を行ったところ、センスRNAは大腸癌試料において正常組織より全般的に高い発現が見られたが、アンチセンスRNAの発現は検出されなかった(図1、2)。一方で、試料をランダムプライミング法でラベルしたところ、アンチセンスRNAの発現は、正常組織において癌遺伝子(センス鎖)よりも高い発現を示した(図3、4)。さらに興味深いことに、大腸癌試料では6例中4例で癌遺伝子よりアンチセンスRNAの発現が低く、センス鎖とアンチセンス鎖の発現が正常と癌試料で逆転していた。
【0032】
肝臓癌試料の発現解析
肝臓癌で発現が上がることが知られている遺伝子であるMAPK7(mitogen−activated protein kinase 7、GenBank ID:U25278)に関して、そのセンス鎖及びアンチセンス鎖の発現解析を、大腸癌と同様に上記方法に従って行った。プローブとしては、アンチセンス鎖に対しては配列番号3に相補的な配列を、センス鎖に対しては配列番号4の配列を用いた。また解析試料には、5人の肝臓癌患者の試料を用いた。
その結果、大腸癌試料と同様に、オリゴdTプライム法によりラベルした解析では、センスRNAは肝臓癌試料において正常組織より全般的に高い発現が見られた(図5、6)。一方で、試料をランダムプライミング法でラベルしたところ、アンチセンスRNAの発現は、正常組織においては癌遺伝子(センス鎖)よりも高く、反対に肝臓癌試料では癌遺伝子より低い発現を示し、センス鎖とアンチセンス鎖の発現が正常組織と癌試料とで逆転していた(図7、8)。
以上の結果から、大腸癌及び肝臓癌患者では、それぞれCDK4及びMAPK7が、センス鎖とアンチセンス鎖の発現が正常組織と癌試料とで逆転するという特異的な発現パターンを有することが示された。このことから、センス鎖RNAとアンチセンス鎖RNAの二本鎖RNA形成などを通じた相互作用によりお互いの発現を制御していることが強く示唆された。
【実施例3】
【0033】
40000以上のプローブセットを搭載したアレイ(44kアレイ)の作製
実施例1と同様の手法により、以下の遺伝子セットが搭載されたヒトおよびマウスのマイクロアレイを作製した。
1.センス−アンチセンス・ペア
cDNA配列解析の結果、センスとアンチセンスの関係にある遺伝子のペアである。
ヒト:12306遺伝子(6153ペア)
マウス:15274遺伝子(7637ペア)
2.シンテニー解析に基づくペア
マウスではセンス−アンチセンスの関係になっているが、ヒトではアンチセンス鎖にcDNA配列が発見されていない遺伝子(もしくはその逆)。アンチセンス鎖にcDNA配列が無い領域に人工的にアンチセンス鎖発現を検出するプローブ(Artificial Antisense Sequence:AFAS)を設定している。
ヒト:10197遺伝子+10197 AFASプローブ
マウス:6774遺伝子+6774 AFASプローブ
3.non−coding RNA(ncRNA)遺伝子候補
タンパク質をコードしていると思われない遺伝子。
ヒト:5386遺伝子
マウス:4459遺伝子
4.癌関連遺伝子
癌研究に有用な遺伝子。内在性のアンチセンスcDNAが発見されているか否かにかかわらず遺伝子と逆の方向にAFASプローブを設定している。
ヒト:561遺伝子+2204 AFASプローブ
マウス:577遺伝子+2276 AFASプローブ
5.ゲノム刷り込み遺伝子
ゲノム刷り込み遺伝子及びその候補と、そのAFASプローブを設定している。
ヒト:74遺伝子+447 AFASプローブ
マウス:88遺伝子+499 AFASプローブ
6.アンチセンスRNAが存在しないと思われる遺伝子
cDNA情報や理研ゲノムセンターのCAGEデータよりアンチセンス鎖の発現が無いと予想される遺伝子。1遺伝子に対して最低2つのAFASプローブを設定している。
ヒト:77遺伝子+152 AFASプローブ
マウス:1605遺伝子+3210 AFASプローブ
7.その他、ハウスキーピング遺伝子や発生のマーカーの遺伝子を搭載。
ヒト・マウスとも30−40遺伝子程度。
上記1〜6の各プローブ数およびその合計並びにAFASプローブを設計する際に利用したcDNA数を、ヒトとマウスのそれぞれについて表1にまとめた。
【0034】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0035】
AFASプローブは癌研究に使われる遺伝子のみならず、網羅的にアンチセンス鎖の発現が知られていない遺伝子全般に設定することが可能であるため、ランダムプライミング法によるラベルとあわせることにより、疾患特異的アンチセンスRNAなどの、生物学的に重要な新規アンチセンスRNAの同定が可能となる。同定されたRNAに基づいた疾患の診断方法の開発や創薬ターゲットの探索などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】正常組織試料におけるオリゴdTプライム法によるCDK4の発現を示す図である。白いバーがセンス鎖、黒いバーがアンチセンス鎖の発現を示す。
【図2】大腸癌組織試料におけるオリゴdTプライム法によるCDK4の発現を示す図である。白いバーがセンス鎖、黒いバーがアンチセンス鎖の発現を示す。
【図3】正常組織試料におけるランダムプライミング法によるCDK4の発現を示す図である。白いバーがセンス鎖、黒いバーがアンチセンス鎖の発現を示す。
【図4】大腸癌組織試料におけるランダムプライミング法によるCDK4の発現を示す図である。白いバーがセンス鎖、黒いバーがアンチセンス鎖の発現を示す。
【図5】正常組織試料におけるオリゴdTプライム法によるMAPK7の発現を示す図である。白いバーがセンス鎖、黒いバーがアンチセンス鎖の発現を示す。
【図6】肝臓癌組織試料におけるオリゴdTプライム法によるMAPK7の発現を示す図である。白いバーがセンス鎖、黒いバーがアンチセンス鎖の発現を示す。
【図7】正常組織試料におけるランダムプライミング法によるMAPK7の発現を示す図である。白いバーがセンス鎖、黒いバーがアンチセンス鎖の発現を示す。
【図8】肝臓癌組織試料におけるランダムプライミング法によるMAPK7の発現を示す図である。白いバーがセンス鎖、黒いバーがアンチセンス鎖の発現を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知cDNAの配列から推認されるアンチセンス鎖配列とハイブリダイズし得る人工的な塩基配列を含む核酸からなるプローブを少なくとも1種以上含むことを特徴とするプローブセット。
【請求項2】
該cDNAの少なくとも1種は、そのアンチセンス鎖が転写されたときにポリ(A)鎖が付加されないcDNAであることを特徴とする、請求項1記載のプローブセット。
【請求項3】
該cDNAが哺乳動物由来である、請求項1又は2記載のプローブセット。
【請求項4】
該哺乳動物がヒト又はマウスである、請求項3記載のプローブセット。
【請求項5】
該cDNAのセンス鎖とハイブリダイズし得る塩基配列を含む核酸からなるプローブをさらに含んでなる、請求項1〜4のいずれかに記載のプローブセット。
【請求項6】
該cDNAの数が100以上である、請求項1〜5のいずれかに記載のプローブセット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のプローブセットが基板上に固定化されてなるマイクロアレイ。
【請求項8】
請求項7記載のマイクロアレイを用いる、RNA含有試料中の内在性アンチセンスRNAの検出方法であって、下記の工程:
(a)該試料中のRNAをランダムプライミングによりラベルする工程、
(b)該マイクロアレイ上の各プローブと、前記ラベルしたRNAとを接触させる工程、
(c)該プローブと結合しなかったRNAを洗い流す工程、及び
(d)該プローブと結合したRNAのラベルを検出する工程
を含む方法。
【請求項9】
該アンチセンスRNAに対応するセンス鎖より転写されるmRNAの発現を検出することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
該試料が哺乳動物由来である、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
該哺乳動物がヒト又はマウスである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
哺乳動物同士の内在性アンチセンスRNAの発現パターンを比較する請求項9又は10記載の方法であって、ターゲット動物と対照動物のそれぞれについて前記(a)〜(d)の工程を行い、得られるターゲット動物の内在性アンチセンスRNAの発現パターンと、得られる対照動物の内在性アンチセンスRNAの発現パターンとを比較して、ターゲット動物と対照動物との間で発現変動する内在性アンチセンスRNAを同定することをさらに含む方法。
【請求項13】
ターゲット動物が所定の疾患に罹患している、又は所定の疾患のモデル動物である、請求項12記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−295391(P2008−295391A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146341(P2007−146341)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 機能性RNAプロジェクト委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】