説明

内燃エンジンを備える締結工具

【課題】支持材内に締結具を打ち込むために使用される工具を提供すること。
【解決手段】本発明の締結工具は、ピストン(5)を備えるシリンダー(3)と、燃焼チャンバー(1、11)と、燃焼チャンバー(1)内に燃料点火手段(36)を有するシリンーヘッド(12)と、締結具とピストン(5)のシャフト(7)を受け入れるピンガイド(9)と、ケージ(21)とを備える。また、ピンガイド(9)を前方に移動し燃焼チャンバー(11)を開放する戻し手段と、燃焼チャンバーのための開閉当接手段とが備えられる。さらに、燃焼チャンバー(11)を開放する単一の中央スプリング(32)と、シリンダー(3)の対応側部において平行移動可能に燃焼チャンバーと一体化されて工具の各側部に取り付けられた単一の開閉側部チャンバー当接部(18、55)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持材内に締結具を打ち込むための手持ち式締結工具であって、一回分の燃料を受け入れて使用されるチャンバーを備え、点火の際に、シリンダー内にて推進ピストン動かして締結具の移動をもたらすような内燃エンジンを具備する締結工具に関する。
【0002】
本発明は、例えば、釘止め機タイプあるいはステープル止め機タイプの手持ち式工具に関する。
【背景技術】
【0003】
工具内に収容されたカートリッジからもたらされる燃料の点火は、後方シリンダーヘッドにより支持された点火プラグにより生じる。このような点火は、チャンバー(室)が閉鎖された後、すなわち、チャンバーが後方に移動してシリンダーヘッドに当接された後にのみ生じうる。このようなチャンバーの動きは、支持材に対して工具を当接させて後方にピンガイドを押し戻す間に生じ、ピンガイドは、当接をもたらす部分とともに移動し、ヨークやケージを通してチャンバーと一体化される。燃料を受け入れる空間と、このような空間の限定することが可能な工具の移動壁との両方が、無差別にチャンバーとして参照されることに留意されたい。
【0004】
工具を前方に移動するとき、作業者が工具を開放するときに、チャンバーは、当接部分を通してシリンダーと当接する。チャンバーが後方に移動するときに、上述したように、チャンバーはシリンダーヘッドに対して当接する。このような後方当接は、しばしば、どちらか一方の部分の破損を任意的に突然にもたらす。仏国特許2,858,261号公報にて示されているように、工具の損傷を単純化するために中間後方当接部分を提供することがすでに提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仏国特許2,858,261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述されたようなタイプの工具であって、チャンバーが安全に前方当接及び後方当接しうるような工具を簡易な構成にて提供することである。
【0007】
本発明を述べる前に、工具を開放するときにおけるチャンバーの前方への移動は、ピンガイドを前方に押して開放位置にケージ及びチャンバーを移動させるようにピンガイドに作用する戻し手段により生じるということが留意されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内燃エンジン(2)を備え、支持材内に締結具を打ち込むための締結工具であって、
推進ピストンが滑動可能に取り付けられたシリンダーと、
燃料が供給されるように構成された燃焼チャンバーと、
後方シリンダーヘッドであって、燃焼チャンバーが該シリンダーヘッドに対して当接して閉じられて工具が閉じられた後に燃焼チャンバー内にて燃料を点火する燃料点火手段を有する後方シリンダーヘッドと、
平行移動可能なピンガイドであって、ピストンのシャフトと締結具とを受け入れるピンガイドと、
燃焼チャンバーとともに移動可能に燃焼チャンバーと後方にて一体化されたケージであって、ピンガイドとともに移動可能にピンガイドと前方にて一体化されたケージと、
工具を開放するときに、ピンガイドを前方へ移動させて燃焼チャンバーを開放することをもたらす戻し手段と、
燃焼チャンバーに備えられる開閉当接手段とを具備する、締結工具において、
燃焼チャンバーを開放する単一の中央スプリングと、
シリンダーの対応側部において平行移動可能に燃焼チャンバーと一体化されて前記工具の各側部に取り付けられた単一の開閉側部チャンバー当接部と、
を具備する、締結工具に関する。
【0009】
本発明によれば、容易な保守および魅力的なコストとともに、極めて簡単な工具の取付けを可能とする。
【0010】
本発明の工具の好適な実施形態においては、開放スプリングが、後方においてはシリンダーに対して当接し、前方においてはケージが固定される中間ヨークに対して当接するように取り付けられる。
【0011】
有利には、チャンバー当接部の各々は、シリンダーの側部に備えられた通路を滑動するように構成され、該滑動通路は、シリンダーの表面に形成される溝部であり、チャンバー当接部が、溝部において係合されるパッドを備えるか、あるいは、該滑動通路は、シリンダー上に備えられる滑動部(滑走台)であり、チャンバー当接部が、滑動部を受容する溝部が配置されるパッドを有する。
【0012】
開閉チャンバー当接部は、堅固なものとされるか、あるいは、制振材料(damping material)から作られうる。
【0013】
本発明は、添付された図面を参照する本発明の工具の好適な実施形態の以下の記載から、より良く理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】チャンバーが開放状態にある、工具の斜視図である。
【図2】チャンバーが開放状態にある図であって、4分の3の部分が断面として示された図である。
【図3】チャンバーが閉鎖状態にある、工具の斜視図である。
【図4】チャンバーが閉鎖状態にある図であって、4分の3の部分が断面として示された図である。
【図5】チャンバー当接部及びその滑動通路の第1の実施形態の拡大図である。
【図6】チャンバー当接部及びその滑動通路の第2の実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に記載される工具は、支持材内に釘を打ち込むための釘止め機であって、工具の内燃エンジン2の燃焼チャンバー(燃焼室)1内に事前に導入される1回分の空気と燃料との混合物の点火を可能とするために工具が当接されるべき支持材内に釘を打ち込むための釘止め機である。エンジンは、軸線4を有するシリンダー3を備え、ピンガイド9の軸線方向穴8と係合し軸線4に沿って延在するシャフト7及びヘッド6を有し滑動可能に取り付けられたピストン5が存在し、打ち込まれるべき釘がピストンステム7により支持材内に案内される。ピンガイド9は、シリンダー3の前方にて固定されたサポート部10内にて滑動可能に取り付けられる。
【0016】
エンジン2はさらに、軸線4を有するチャンバー壁11(チャンバーとも称される)であって、シリンダー3上に滑動可能に取り付けられ、該壁11とピストンヘッド6と後方シリンダーヘッド12との間に燃焼チャンバー1を形成するためにシリンダー3上に滑動可能に取り付けられたチャンバー壁を備え、後方シリンダーヘッド12は、混合物を点火しピストン5を推進してピンガイド9内に案内された釘を打ち込むために、チャンバー1内の混合物用点火プラグ36を有する。ちなみに、本実施形態における工具は、チャンバー1内に、モータ16を備えるファン13であって混合機能及び冷却機能を確実にするファン13を有する。チャンバー壁は、シリンダーヘッド12を受け入れる後方部分15と前方部分14とを有する。
【0017】
シリンダー3の周辺には、径方向において対向する2つの溝部17であって、チャンバー開放位置とチャンバー閉鎖位置との間でチャンバー壁11のストローク(行程)とほぼ等しい距離に沿って軸線方向に延在する溝部17が備えられる。各溝部17は、シリンダーの表面上に延在する2つのリブ51、52の間に配置される。
【0018】
チャンバー壁11は、前方部分14において、径方向において対向する側面部であってシリンダーの両方に溝部に対応する側面部にては、工具の軸線4と同じ側に配置された対応するシリンダーの溝部17の内側に突出する側部チャンバー当接部18を受け入れるように構成される(図5)。両方のチャンバー当接部(チャンバー当接体)18は、ブロックあるいはパッドのような形態を有し、本実施形態においては制振材料にて作られる。より詳細には、各チャンバー当接部18は、チャンバー壁11の前方部分14の前端縁20の近くに形成されるケーシング19内に収容される。ケーシング19は、ピン50により、ケージ21の対応下側部分25(26)に固定される。
【0019】
チャンバー壁11は、中間ケージ用ヨーク22に前方にて固定されるチャンバー開閉ケージ21の後方にて固定される。本実施形態におけるケージ21は、シリンダー3の表面で動くように構成された2対の側部後方アーム23、24を有し、各対の両方のアーム25、26は、同じ側に配置されたチャンバー当接部18の受容ケーシング19に後方にて固定される。各対23、24の両方の後方アーム25、26は、ヨーク22に対して前方にて固定された2つの前方アーム27、28につながる。ケージ用ヨーク22は、ピンガイドのサポート部10に平行移動可能に取り付けられる。かくして、ケージ用ヨークは、前方および後方の両方の移動においてケージと一体化される。ケージ用ヨークは、前方の移動においてのみピンガイド9と一体化される、あるいは逆に言えば、ピンガイド9は、後方の移動においてのみケージ用ヨーク22と一体化される。この後者の一体関係は、ピンガイド9の後方支持脚部29によりもたらされる。より詳細には、ケージ用ヨーク22は、ピンガイド9の前方端部の外側へのピストンシャフト7の前端部の打込み深さを調整するための節部37を有する。しかし、このことは本願発明の対象ではない。
【0020】
節部37は、ケージ用ヨーク22の前方ブリッジ(橋)39と後方ブリッジ38とであって取り付けられる節部用シャフト31のベアリングとして作用する前方ブリッジ及び後方ブリッジとの間において回転可能に取り付けられる(図2)。節部用シャフト31の後方部分は、チャンバーを開放するためのスプリング(バネ)32のためのガイド(案内)として作用し、このようなスプリングの座屈を防止する。
【0021】
節部37のシャフト31の前方部分は、その端部に、ピンガイド9のためのスラストディスク30を備え、該ディスクの周辺縁部は、ケージ用ヨーク20の前方ブリッジ39に当接する後方支持縁部40を形成する。節部用シャフト31のスラストディスク30と協働するために、ピンガイドは、節部用シャフト31のスラストディスク30の推力を受けるための当接ディスク41を後方端部に備える支持脚部29を有する。
【0022】
スプリング32は、単一の中央開放スプリングである。スプリングは、シリンダー3の前方部分のハウジング33に後方にて当接して取り付けられる。スプリングの前方は、ケージ用ヨーク22の後方ブリッジ38に当接する。
【0023】
両方のチャンバー当接部18は、単一のチャンバー開閉当接部(チャンバー開閉当接体)である。
【0024】
作業者が、工具を支持材から離すように移動して工具を開放するとき、スプリング32は拡張してケージ用ヨーク22を前方に押圧し、ケージ21は、当接部18が溝部17の前方下側部分34に対して当接する開放当接状態になるまで、シリンダー3上で前方にチャンバー壁11、14、15を引く(図2)。発射を実行するために、作業者は、受容材に対して工具を当接させて押し付ける。ピンガイド9は後方に押し戻され、その支持脚部29は、ヨーク22の前方部分に対して当接しているスラストディスク30を押し戻し、ヨーク22を後方に押し戻し、ケージ21が後方に押し戻され、さらに、チャンバー壁の後方部15がシリンダーヘッド12を覆い且つチャンバー当接部18が溝部17の後方下側部分35に対して当接する閉鎖当接状態になるまで、チャンバー壁11を後方に移動する(図4)。
【0025】
図5はチャンバー当接部の第1の実施形態を示し、該実施形態においては、チャンバー当接部の滑動通路はシリンダーの表面に形成される溝部であり、当接パッドが滑動可能に取り付けられる。
【0026】
図6は選択的な実施形態を示し、いわば逆さの実施形態を示す。すなわち、当接パッド55が溝部53を有し、滑動部(滑走台)54がシリンダーの表面に延在して形成される。他の部材は同様であり、同じ参照番号が付される。
【符号の説明】
【0027】
3 シリンダー
5 ピストン
9 ピンガイド
12 シリンダーヘッド
18 チャンバー当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジン(2)を備え、支持材内に締結具を打ち込むための締結工具であって、
推進ピストン(5)が滑動可能に取り付けられたシリンダー(3)と、
燃料が供給されるように構成された燃焼チャンバー(1、11)と、
後方シリンダーヘッド(12)であって、前記燃焼チャンバーが該後方シリンダーヘッド(12)に対して当接して閉じられて前記工具が閉じられた後に前記燃焼チャンバー内にて燃料を点火する燃料点火手段(36)を有する後方シリンダーヘッドと、
平行移動可能なピンガイド(9)であって、前記推進ピストン(5)のシャフト(7)と締結具とを受け入れるピンガイドと、
前記燃焼チャンバー(11)とともに移動可能に前記燃焼チャンバーと後方にて一体化されたケージ(21)であって、前記ピンガイド(9)とともに移動可能に前記ピンガイドと前方にて一体化されたケージと、
前記工具を開放するときに、前記ピンガイド(9)を前方へ移動させて前記燃焼チャンバー(11)を開放することをもたらす戻し手段と、
前記燃焼チャンバーに備えられた開閉当接手段とを具備する、締結工具において、
前記燃焼チャンバー(11)を開放する単一の中央スプリング(32)と、
前記シリンダー(3)の対応側部において平行移動可能に前記燃焼チャンバー(11)と一体化されて前記工具の各側部に取り付けられた単一の開閉側部チャンバー当接部と、
を具備する、ことを特徴とする締結工具。
【請求項2】
前記スプリング(32)は、後方においては前記シリンダー(3、33)に対して当接し、前方においては前記ケージ(21)が固定される中間ヨーク(22)に対して当接するように取り付けられる、請求項1に記載の締結工具。
【請求項3】
前記スプリング(32)用のガイド(31)を備える、請求項1または請求項2に記載の締結工具。
【請求項4】
前記スプリング(32)の前記ガイド(31)は、前記ケージ用ヨークの前方ブリッジ(39)及び後方ブリッジ(38)に取り付けられるシャフトである、請求項3に記載の締結工具。
【請求項5】
前記シャフト(31)の前方部分は、前記ピンガイド(9)の支持脚部(29)と協働するように配置されたスラストディスク(30)を備える、請求項4に記載の締結工具。
【請求項6】
前記チャンバー当接部(18;55)の各々は、前記シリンダーの側部に配置された通路(17;54)を滑動するように構成される、請求項1から請求項5のいずれか一つの請求項に記載の締結工具。
【請求項7】
前記通路は、前記シリンダーの表面に形成された溝部であり、前記チャンバー当接部は、前記溝部(17)において係合されるパッド(18)を有する、請求項6に記載の締結工具。
【請求項8】
前記通路は、前記シリンダー上に備えられた滑動部(54)であり、前記チャンバー当接部は、前記滑動部(54)を受容する溝部(53)が備えられるパッド(55)を有する、請求項6に記載の締結工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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