内燃機関とその吸気装置
【課題】
内燃機関における燃料の気化と混合を促進する。また、高回転,高負荷時においても吸入空気量を低減させることなく、内燃機関の負荷や回転数によらずシリンダ内に充分な強さの縦渦を形成し、かつ製作コストが安価な内燃機関の吸気装置を提供することを目的としている。
【解決手段】
吸気マニホールドから2本の対称な吸気ポートに分かる内燃機関の吸気通路の、吸気ポートの分岐開始位置から吸気ポート出口までのいずれかの断面位置において、吸気ポート断面を対称面を底辺とした略二等辺三角形状とする。
内燃機関における燃料の気化と混合を促進する。また、高回転,高負荷時においても吸入空気量を低減させることなく、内燃機関の負荷や回転数によらずシリンダ内に充分な強さの縦渦を形成し、かつ製作コストが安価な内燃機関の吸気装置を提供することを目的としている。
【解決手段】
吸気マニホールドから2本の対称な吸気ポートに分かる内燃機関の吸気通路の、吸気ポートの分岐開始位置から吸気ポート出口までのいずれかの断面位置において、吸気ポート断面を対称面を底辺とした略二等辺三角形状とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の吸気装置に関し、特に高負荷時の吸入空気量を減少させることなくシリンダ内に生成される縦渦流動を強化できる内燃機関とその吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特開2004−169570号公報に示されるように、吸気ポートの断面を上下に分割する隔壁と、隔壁と吸気ポート壁面で構成された2つの空気通路のどちらかを開閉可能なタンブル制御バルブによって閉塞することが行われている。本手法においては、隔壁と吸気ポート壁面で構成された通路の片側をタンブル制御バルブによって閉塞することによって、吸気ポートからシリンダの接線方向に高速なガス流動が生成され、シリンダ内に強い縦渦が形成される。
【0003】
また、実公平5−44526号公報に示されるように、シリンダ軸線に対してほぼ直角方向から導入されて、シリンダ軸線にほぼ平行する方向へ湾曲しながら2つに分岐して燃焼室に開口するシリンダヘッドの吸入通路において、その吸入通路全長に亘って、軸線より湾曲の遠心側を横幅方向に拡大し、求心側を横幅方向に縮小した断面形状に形成することが行われている。本手法においては、湾曲する通路において遠心力によって湾曲の遠心側に多くの燃料ガスが流れるので、その遠心側の断面積を求心側よりも大きくすることで、ガスの吸気抵抗が減ってシリンダへの吸入ガス量を増やすことができる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−169570号公報
【特許文献2】実公平5−44526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2004−169570号公報に記載された技術においては、内燃機関が高負荷,高速で運転される場合は、吸気抵抗をできるだけ小さくするためにタンブル制御バルブを開け、隔壁で分割された2つの通路の双方にからシリンダ内へガスを供給する。このため、高負荷,高速運転時には、タンブルバルブによるガスの高速化作用が無くなり、シリンダ内に充分に強い縦渦を形成できない。また、タンブルバルブを開いた場合においても、タンブルバルブ,隔壁による吸気抵抗の増加が発生するため、シリンダへ吸入される空気量が減少する。さらにタンブルバルブや隔壁を設置するため製作コストが高くなるといった課題がある。
【0006】
また、実公平5−44526号公報に示された技術においては、湾曲する通路の遠心側の空気密度を増やすことによって、シリンダ壁面へ衝突するガスの流量が増えるため、シリンダ流入後のガス速度が減速し、シリンダ内へ充分に強い縦渦を形成できないといった課題がある。
【0007】
本課題について図1から図10を用いてさらに詳細に説明する。図1は従来技術による吸気装置を用いた内燃機関の概略形状を示した平面図である。また図2は、従来技術による吸気装置を用いた内燃機関の概略形状を示した縦断面図である。本内燃機関は、シリンダヘッド上に吸気2弁,排気2弁を有する、所謂4バルブ内燃機関の構成となっている。図1,図2においてシリンダ3にはピストン6が嵌入され、シリンダ3とシリンダヘッド3h,ピストン6の冠面に囲まれ燃焼室3Cが形成されている。
【0008】
シリンダヘッド3hには燃焼室3Cに開口する2つの吸気ポート1,1と2つの排気ポート2,2が設けられている。2つの吸気ポート1,1は吸気隔壁1Cの上流側で1つに纏まり吸気マニホールドINTを形成している。同様に2つの排気ポート2,2は排気隔壁2Cの上流側で1つに纏まり排気マニホールドEXHを形成している。
【0009】
吸気ポート1と燃焼室3Cの間の開口部には吸気バルブ9が設けられ、排気ポート2と燃焼室3Cの間の開口部には排気バルブ10が設けられている。
【0010】
シリンダヘッド3hの略中央には点火プラグ4が設けられ、シリンダヘッド3hの吸気側側面には燃料インジェクタ5が設けられている。即ち、本内燃機関は燃焼室3C内へ直接燃料を噴射する筒内噴射内燃機関の構成となっている。
【0011】
図3は図1,図2に示した内燃機関形状を簡素化して示した図である。即ち図3では、図1,図2における吸気マニホールドINT,吸気ポート1,吸気バルブ9,シリンダヘッド3h及びシリンダ3のみを示している。
【0012】
図3に示すように吸気通路断面A1−A1,A2−A2,A3−A3をそれぞれ定義する。即ち各断面A1−A1・・・A3−A3は、吸気通路の中心軸AXに対して垂直な断面である。また、A1−A1は吸気マニホールドINTの断面,A2−A2は吸気ポート1の略中央位置での断面,A3−A3はA2−A2より下流かつ吸気ポート1の燃焼室への開口部より少し上流側の断面である。また、2つの吸気ポート1,1の対象面をCLとする。
【0013】
従来技術による吸気装置の断面形状例を図4及び図5に示す。図4は、吸気管部の断面A1−A1では略小判型の断面形状であり、分岐後の吸気ポート断面A2−A2及びA3−A3では略円形状の例である。また図5は吸気管部の断面A1−A1では略小判型の断面形状であり、吸気ポートの略中央部の断面A2−A2では、上広がりの略三角形状,吸気ポート下流のA3−A3では略円形状の例である。
【0014】
従来技術による吸気装置における吸気行程のガス流れを図6,図7に示す。吸気行程では吸気バルブ9が燃焼室3C側に向かって開くことによって、吸気ポート1と燃焼室3Cの間に開口部S9ができる。またピストン6が下降することによって燃焼室3C内が吸気ポート1内に比べて圧力が低下することで、吸気ポート1から開口部S9を通って燃焼室3C内へガスが引き込まれる。
【0015】
図7に示すように吸気ポート1は燃焼室の中心軸CCに対して吸気側へ傾いているため、ガスの慣性力によって、吸気バルブの左側(燃焼室中心側)の流速VFが吸気バルブの右側(シリンダ壁面側)の流速VRより速くなり、結果として燃焼室3C内には左回りの縦渦TUが発生する。
【0016】
この縦渦TUは燃焼室3C内での空気と燃料の混合を促進する、圧縮行程の後期に崩壊して乱流渦に変わることにより燃焼速度を増加するなどの作用がある。これらは、燃料の燃焼を促進し、燃費低減,出力向上,ノッキングの抑制,排気清浄化など、内燃機関の基本性能の向上に重要な役割を果たすことが知られている。
【0017】
図8,図9は吸気行程において吸気バルブ9から燃焼室3C内へ入るガスの速度分布を示した例である。図8は図4に示したポート断面形状を用いた場合の吸気バルブでの速度分布を示す。また図9は図5に示したポート断面形状を用いた場合の吸気バルブでの速度分布を示す。
【0018】
図8においては、図4に示すように吸気ポート断面(A2−A2)が軸対称形状であるため、吸気ポート内の流速分布はほぼ均一となる。このため主に燃焼室3C内に縦渦を生成するガス速度成分VFが、吸気バルブ9の吸気側から入り縦渦生成を抑制するガス速度成分VRに比べて充分に強くないため、燃焼室3C内に生成される縦渦は比較的弱くなる。
【0019】
一方、図9においては図5に示すように吸気ポート断面(A2−A2)が上広がりの略三角形状となっているため、吸気ポート断面が広がっている方(吸気ポート曲率の外側方向)により多くのガスが流れる。図10はポート各断面での流量分布の例を示す。上広がりの略三角形状A2−A2断面において吸気ポートの曲率外側へ流量重心が偏り、この傾向は吸気バルブ開口部の直前であるA3−A3断面においても残る。
【0020】
この結果、バルブから入るガスの流速分布は図9に示すように、吸気バルブから対称面CLに平行で、かつ排気側へ向かうガス速度成分VF,燃焼室3Cの中心へ向かうガス速度成分VC,シリンダ外側へ向かうガス速度成分VSが、吸気側シリンダ壁へ向かうガス速度成分VRなどに比べて大きくなる。
【0021】
図9に示す速度分布において、ガス速度成分VF,VCの増加は燃焼室3C内での縦渦を強化する効果がある。しかしシリンダ外側へ向かうガス速度成分VSは、吸気バルブ開口部から燃焼室に入った直後にシリンダ3の壁に衝突し、その運動量が減衰する。このため、ガス速度成分VSの増加は燃焼室3C内の縦渦の強化には有効に働かず、また、壁面衝突により吸気抵抗が増大する虞がある。
【0022】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、高回転,高負荷時においても吸入空気量を低減させることなく、内燃機関の負荷や回転数によらずシリンダ内に充分な強さの縦渦を形成し、かつ製作コストが安価な内燃機関の吸気装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
吸入空気量を低減させることなく燃焼室内に生成される縦渦を強化するには吸気バルブから燃焼室に入るガス速度を図11に示すような分布にすることが望ましい。
【0024】
すなわち、吸気バルブ9から対称面CLに平行で、かつ排気側へ向かうガス速度成分VF,燃焼室3Cの中心へ向かうガス速度成分VCを、吸気側シリンダ壁へ向かうガス速度成分VRに比べて大きくする。また、シリンダ外側へ向かうガス速度成分VS1,VS2を、前記VF,VCに比べて小さくする。吸気バルブ9の中心を通り、対称面CLと平行な軸をCVYとしたとき、吸気バルブ開口のCVYよりも内側(対称面CL側)のガス流速が、吸気バルブ開口のCVYよりも外側(対称面CLと対向する側)のガス流速に比べて速くなるようにする。かつ、吸気バルブ9の中心を通り、対称面CLと直角な軸をCVXとしたとき、CVXよりも排気側から燃焼室に入るガス流速を、CVXよりも吸気側から燃焼室に入るガス流速より速くなるようにする。
【0025】
前記のように、吸気バルブから対称面CLに平行で、かつ排気側へ向かうガス速度成分VFは、燃焼室3C内に生成される縦渦の流動方向と一致するため、この縦渦の強度をより高める効果がある。
【0026】
また、吸気バルブ9から燃焼室3Cの中心へ向かうガス速度成分VCは燃焼室3Cに入った後は対称面CLでお互いに衝突し、対称面CLに平行で排気側に向かう合成速度成分VC′を形成する。この速度成分VC′も速度成分VFと同様に燃焼室3C内に生成される縦渦の流動方向と一致するため、この縦渦の強度をより高める効果がある。なお、対称面CL上で面対称な速度成分が衝突した場合、その境界面(衝突面)では双方のガスが衝突面に沿って同じ速度で移動するため、所謂すべり壁条件となり、VCが衝突して生成されるVC′の運動量の損失は小さい。
【0027】
一方、シリンダ外側へ向かうガス速度成分VS1,VS2は小さいため、燃焼室3Cに流入した後でシリンダ3の壁に衝突することによる運動量の損失は小さい。すなわち壁面衝突による流入損失は低く抑えられる。
【0028】
以上で説明したように吸気行程において吸気バルブから燃焼室に入るガスの速度を図11に示すような分布にすることで、吸入空気量を低減することなく燃焼室に生成される縦渦をより強化する事が可能となる。
【発明の効果】
【0029】
図45に本発明による内燃機関の吸気装置(図14)と従来の吸気装置(図5)による燃焼室内の縦渦強さ(タンブル比)と、燃焼室内に吸入された空気量の比較結果を示す。本結果は、3次元流体シミュレーション解析ソフトウェア(CFD)を用いて計算した結果である。エンジンの排気量は500cm3、エンジンの回転速度は6500rpm、スロットルバルブは全開(WOT)条件とした。図45に示されるように、本発明では燃焼室内に吸入する空気量の低減無しに、燃焼室内の縦渦強さを約20%向上できる。
【0030】
燃焼室内の縦渦強さを向上することによって、燃料の気化促進,燃料と空気の混合促進,燃焼速度の向上が図られ、排気エミッションの低減,燃費効率の向上,出力の向上等、エンジンの基本性能を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図12に本発明における一実施形態を示す。図12は吸気2弁,排気2弁の内燃機関において、吸気マニホールドINT,2つの吸気ポート1,1,2つの吸気バルブ9,9とシリンダヘッド3h,シリンダ3を斜視した図である。
【0032】
吸気マニホールドINTは隔壁1Cによって2つの吸気ポート1,1に分かれ、吸気ポート1,1はシリンダヘッド3hに開口している。2つの開口部にそれぞれ吸気バルブ9が設けられ、ポート開口部の開閉が可能となっている。
【0033】
なお排気ポート,排気バルブ,点火プラグ,燃料インジェクタ等は図1,図2に示した構成と同様であるため図12においては省略して示している。
【0034】
図12においてS1,S2,・・・,S5は吸気マニホールドINTと吸気ポート1の断面形状を示している。
【0035】
図13には図12に示した本発明における一実施形態の縦断面図を示す。図13において吸気マニホールドINT,吸気ポート1の断面中心を結んだ軸をAXとし、AXに直角な断面をA1−A1,A2−A2,A3−A3と定義する。ここにA1−A1は吸気マニホールドINTの下流断面,A2−A2は隔壁1Cと吸気ポート1の燃焼室開口部との略中心位置での吸気ポート断面,A3−A3は吸気ポート1の燃焼室開口部直前の吸気ポート断面である。
【0036】
ピストン6を上から見た形状を図40に、図40のA−A断面を図41に示す。ピストン6の冠面の中心部には吸気弁側から排気弁側に向けてその中央部がもっとも深く、外周形状が長方形で、断面が弧状の曲面形状の底面を持つキャビティ6Cが設けられ、キャビティ6Cの両側壁6Wはピストン6の水平面6Hよりも高い壁として形成されている。
【0037】
また、キャビティ6Cの底面は断面A−Aに沿う方向には平坦な面になっており、断面A−Aに直角方向には図13に示すように吸排気弁側に行くに従って徐々に浅くなる弧状になっている。このキャビティ6Cには、ピストン6の点火プラグ4に対面する位置を横切るように図40,図41に示すような細長い小さな段差(凸部)6Sが形成されており、段差6Sはキャビティ6Cの底面に対し滑らかな曲面で接続されている。段差6Sの高さはキャビティ6Cの底面から例えば2mm程度である。キャビティ6Sの側壁6Wは図41に示すように外側に向かって曲面となっており、ピストン6冠面とキャビティ6C底面に接続されている。キャビティ6C内は段差6S以外の段差は設けていない。キャビティ6Cの側壁6Wはキャビティの底面から例えば5mm程度に形成されている。
【0038】
燃料インジェクタ5から燃焼室内へ噴射される噴霧は、シリンダやピストン壁面への付着をできるだけ避けるよう、また、空気との混合が良好に行われるよう、その噴射方向や噴霧パターンが選択される。また噴霧を生成する燃料インジェクタ5としては、多孔式ノズル弁,高圧スワール弁,スリットノズル弁,外開き弁などが使用される。
【0039】
本実施例における燃料インジェクタ5の噴霧形状の一例を図42に示す。図42は燃料圧力11MPa、雰囲気圧力が大気圧の条件において燃料インジェクタのノズル先端から30mm下の断面B−Bにおける、燃料噴射から1ms後の噴霧の断面形状を表している。本インジェクタは多孔式ノズル弁であり、SP1〜SP4から成る6本の噴霧ビームから構成される。
【0040】
噴霧ビームSP1は対称面CL上でかつ点火プラグの電極位置のやや下方を指向している。噴霧ビームSP1は対称面CL上でかつ噴霧ビームSP1の下側を指向している。噴霧ビームSP2はSP1,SP2の間にあり、対称面CLに対して外側を指向している。噴霧ビームSP4はSP3より下側であり、対称面CLに対して外側を指向している。またSP2よりもSP4の方が外側に広がっており、全体としてSP1,SP4,SP4を頂点とした略三角形の噴霧ビームの配置となっている。
【0041】
図14にA1−A1,A2−A2,A3−A3の各断面の吸気ポート形状を示す。吸気マニホールド(断面A1−A1)における略小判型断面から吸気ポートの略中間位置(断面A2−A2)では対称面CL側の壁面を底辺とした略二等辺三角形状となり、吸気ポート開口部近傍(断面A3−A3)では略円形断面形状となっている。
【0042】
図15には図14に示した3断面位置での通路断面積の変化を示す。なお図15における断面A2,A3については、対称面CLを挟んだ2つの吸気ポート断面積の総和を示している。図15に示すように断面位置A2とA3の間では通路断面積はほぼ一定に保たれている。またA1位置で示される吸気マニホールドの断面積とA2位置で示される吸気ポートの断面積は、ほぼ同じ(破線)、もしくは吸気ポートの断面積が大きくなるように(実線)、吸気ポート及び吸気マニホールドの大きさが決められている。このように吸気マニホールドと吸気ポートの断面積を軸方向に一定に保つことで吸気マニホールド,吸気ポート内での流速増加を抑えて、流動抵抗をできるだけ少なくすることができる。もしくは吸気マニホールドの断面積より吸気ポートの断面積を広くすることで、吸気マニホールドから2つの吸気ポートに分岐したときに生じる偏流や渦による流動抵抗の増加を防ぐことができる。
【0043】
また、図16に示すように断面位置A2の吸気ポートの断面積を他の断面位置の通路面積より広げてもよい。断面A2−A2で吸気ポートを対称面側を底辺とした略二等辺三角形の断面形状にすることで、断面内の流速分布が他の断面に対して大きく変化し、流動損失が大きくなる虞がある。そこで断面位置A2の吸気ポートの断面積を他の断面位置の通路面積より広げることで、この流動損失を低減することが可能である。
【0044】
図17に吸気行程における吸気マニホールドINT,吸気ポート1内のガスの流量分布を示す。吸気マニホールドの断面A1−A1では放物型の流量分布となるが、吸気ポートA2−A2断面では図14に示したように対称面CL側を底辺とした略三角形の断面形状であるため、断面内のガスが対称面CL側に偏り、吸気バルブ9の中心よりも対称面CL側に最大値を持つ流量分布となる。流体の慣性力によって、この分布はさらに下流のA3−A3断面においても維持される。従って、吸気バルブ9の開口部では、バルブ中心よりも対称面CL側から燃焼室に入るガス流量が、バルブ中心よりも対称面CLの対向側より燃焼室に入るガス流量が多くなる。吸気バルブ開口部でのガス流速は、流量を開口断面積で除算したものである。よって、本吸気ポート形状における吸気バルブ部でのガス流速は図11に示すような分布となり、前記した理由により、流動抵抗を増やすことなく燃焼室内に生成される縦渦をより強くすることができる。
【0045】
本発明においては図11に示す吸気バルブ周りの速度分布を生成するために、吸気ポート断面の一部を、対称面側を底辺とした略二等辺三角形状とする。このようなポート断面形状については、以下のような形状が考えられる。なお2本の吸気ポート形状は対称面CLに対して面対称の関係にあるため、以下の説明では対称面CLに対して右側の吸気ポート形状のみについてその特徴を述べる。
【0046】
本発明におけるA2−A2断面の形状として図18に示す形状が考えられる。図18において、ポート内壁面の対称面CL側に向かい合う面の接線をP1、ポート曲率外側のポート内壁面の接線をP2とする。図18に示す吸気ポート断面形状は、P1とP2との交角αが鋭角、即ち90度よりも狭いことを特徴とする。
【0047】
また本発明におけるA2−A2断面の形状として図19に示す形状が考えられる。吸気ポート断面の幅をW、吸気ポート断面の高さをHとする。また、W方向の座標をX,H方向の座標をYとし、Wの中点,Hの中点を原点とした直角座標系X−Yを定義する。そして、X−Y座標の第一象限内に含まれる吸気ポート断面積をS1,第二象限内に含まれる吸気ポート断面積をS2,第三象限内に含まれる吸気ポート断面積をS3,第四象限内に含まれる吸気ポート断面積をS4とする。図19に示す吸気ポート断面形状は、S2とS3の総和面積がS1とS4の総和面積よりも大きく、かつ、S1がS4と等しいか、S1がS4よりも小さいことを特徴とする。
【0048】
また本発明におけるA2−A2断面の形状として図20に示す形状が考えられる。吸気ポート断面の幅をW、吸気ポート断面の高さをHとする。また、W方向の座標をX,H方向の座標をYとし、Wの中点,Hの中点を原点とした直角座標系X−Yを定義する。そして、X−Y座標の第一象限内に含まれる吸気ポート断面積をS1,第二象限内に含まれる吸気ポート断面積をS2,第三象限内に含まれる吸気ポート断面積をS3,第四象限内に含まれる吸気ポート断面積をS4とする。また対称面CLと対向する側の吸気ポート壁面とX軸との交点をCxと定義する。図20に示す吸気ポート断面形状は、対称面CLと対向する側の吸気ポート壁面のX座標の最大値CxmaxがCxと等しく、かつ、S2とS3の総和断面積がS1とS4の総和断面積よりも大きいことを特徴とする。
【0049】
また本発明におけるA2−A2断面の形状として図21に示す形状が考えられる。吸気ポート断面の幅をW、吸気ポート断面の高さをHとする。また、W方向の座標をX,H方向の座標をYとし、Wの中点,Hの中点を原点とした直角座標系X−Yを定義する。またポート曲率外側方向の吸気ポート壁面のY座標の最大値をCymaxとする。図21に示す吸気ポート断面形状は、X>0において吸気ポート壁面のY座標が常にCymaxよりも小さいことを特徴とする。
【0050】
なお図12〜図14に示す本発明の実施例においては、吸気マニホールドINTの断面を図14、A1−A1断面に示すような略小判型形状とした。しかし図22,図23に示すように吸気マニホールドINTのA1−A1断面を、略菱形形状としてもよい。このようにA1−A1断面を、略菱形形状とすることによって、A2−A2断面に至るまでの断面形状の変化が小さく、吸気マニホールド内のガス流がよりスムーズにA2−A2断面の吸気ポートに流れる。これによって流動抵抗をより低減可能となる。
【0051】
またこの吸気マニホールドの菱形断面形状は、前記図18〜図21で示したA2−A2断面の吸気ポート形状断面との組み合わせにおいても、同様の効果が得られる。
【0052】
図24に本発明の実施形態における吸気ポートの縦断面形状を示す。前述したように、本発明の実施例においてはA2−A2断面が対称面を底辺とした略二等辺三角形状とあり、また図15,図16に示したようにA2−A2断面の面積が他の断面の面積と等しいか大きくなるようにする。このため吸気ポートの縦断面形状は、図24に示すようにA2−A2断面部が吸気ポートの上下方向に広がり、略樽型の断面形状となる。ここで図24の1U,1Bはそれぞれ図25に示すように略三角断面形状の吸気ポートの最上部,最下部の稜線を示している。また1U′,1B′はそれぞれ図25に示すように略円形断面形状の吸気ポートの最上部,最下部の稜線を示している。A2−A2断面からA3−A3断面に向かって吸気ポート断面形状が略三角形から略円形に変化することで、1Bと1B′の間、1Uと1U′の間には変曲点PBとPUがそれぞれできる。曲面1Bの変曲点PBにおける接線ベクトルをVtb、曲面1Uの変曲点PUにおける接線ベクトルをVtuとする。
【0053】
本発明における吸気ポート形状では、吸気バルブがリフトして生じるシリンダ中心側の開口部をVOとすると、吸気ポート下面の接線ベクトルVtbが開口部VOを指向している事が望ましい。
【0054】
また、本発明における吸気ポート形状では、吸気バルブ9の傘部底面の中心座標をPVCとすると、吸気ポート上面の接線ベクトルVtuが吸気バルブの中心座標PVCよりも排気側(シリンダ中心側)を指向している事が望ましい。
【0055】
なお上記2点については、両立することでより強い縦渦を生成することが可能であるが、どちらか一方であっても縦渦を強化する作用がある。以下で、本形状により縦渦が強化される理由を説明する。
【0056】
図24に示すような縦断面形状を有する吸気ポートでは、図26に示すように吸気ポートの下側壁面1Bに沿ったガス流れが、吸気ポート下面の接線ベクトルが開口部VOを指向している事から、吸気バルブ9の排気側開口部VOを通って燃焼室3Cに入る。また吸気ポートの上側壁面1Uに沿ったガス流れは、吸気ポート上面の接線ベクトルVtuが吸気バルブの中心座標PVCよりも排気側(シリンダ中心側)を指向している事から、吸気バルブ9の排気側開口部VOを通って燃焼室3Cに入る。これらの流れは燃焼室3Cの上部で吸気側から排気側に向かうガス流れVTとなる。燃焼室上部において、燃焼室3Cにガス流れVTは燃焼室3C内の縦渦TUを促進する方向に作用するためが一致するため、図24に示すような縦断面形状を有する吸気ポートを用いることによって縦渦TUをより強くすることができる。
【0057】
また、吸気ポートの縦断面形状については図27に示すように、吸気ポート下面の曲率半径をRb、吸気ポート下面の曲率半径をRuとしたときに、RbがRuよりも小さくなるように断面形状を決めてもよい。Rbをより小さくすることで、吸気ポート下面1Bに沿った流れを吸気バルブの排気側開口部VOに導くことができる。またRuをより大きくすることで、吸気ポート上面1Uに沿った流れを吸気バルブの排気側開口部VOに導くことができる。これらは図26で説明したように燃焼室3C内の縦渦TUがより強くなるように作用する。
【0058】
また、内燃機関が低回転,低負荷時により強い縦渦を生成するために、図28,図29に示すように吸気ポート内に整流板TPと縦渦制御弁TVLを設けてもよい。整流板TPは吸気ポート1の断面を上下に分割する薄板で構成される。図28,図29では吸気ポートのほぼ中央断面に整流板TPを設けた例を示しているが、断面位置については要求される縦渦の強さがガス流量によって適宜調整される。すなわち低回転,低負荷時により強い縦渦が要求される場合には整流板TPを吸気ポートの中央断面位置よりも上の位置に取り付けると良い。また縦渦制御弁TVLは整流板TPの上流に設けられ、図示しないモーター等の駆動機構によって、整流板TPで仕切られた下側の吸気ポート通路を閉塞したり、開放したりする。低回転,低負荷時により強い縦渦が要求される場合には縦渦制御弁TVLによって、整流板TPで仕切られた下側の吸気ポート通路を閉塞し、整流板TPで仕切られた上側の吸気ポートからガスを流入することで燃焼室3C内に強い縦渦TUを生成する。高回転,高負荷時には、図30に示すように流動損失を低減するため縦渦制御弁TVLは開放され、吸気ポート断面全体からガスが燃焼室内へ導入される。整流板TPは吸気ポートのガス流れの乱れを抑制し、吸気ポートの軸方向へ整流する効果があるため、縦渦制御弁TVLが開放された場合においても、整流板TPを設けない場合に対して燃焼室内の縦渦TUを強化する効果がある。また整流板TPの設置は、本発明による縦渦の強化メカニズムである、吸気ポートの排気側,対称面側からの流入速度向上を何ら阻害するものでは無い。このため、本発明の吸気ポート形状と整流板TPを組み合わせることで、より強い縦渦TUを生成することができる。
【0059】
図31は吸気行程における燃焼室3C内の噴霧とガス流動を示している。筒内噴射式内燃機関において均質燃焼を行う際には、通常燃料は吸気行程に噴射される。これは吸気行程中に生成されるガス流動を用いて噴霧の気化と気化燃料と空気の混合を促進するためである。燃料の噴射時期は、内燃機関の回転数や負荷(燃料噴射量)によって適切な時期が設定される。例えば、2000rpmの全負荷運転では、燃料は上死点後60〜90度クランク角付近から噴射開始される。
【0060】
図32には吸気行程での噴霧とガス流動をシリンダ上方から見た図である。吸気弁9のリフトが最大時(上死点後100度クランク角度前後)である。
【0061】
本発明による吸気ポート形状においては、吸気ポートの排気側,対称面側からの流入速度向上を図り燃焼室内の縦渦強化を図るため、流入部の速度分布は図32に示すように吸気バルブの中心軸CVYよりも対称面CL側に速度ピークのある分布となる。吸気行程に噴射された燃料の気化促進と、燃焼室内に吸入された空気と燃料との混合促進には、ガス流動の強い部分に噴霧を配置させることが有効である。これは以下の理由による。
【0062】
通常,液滴からの気化速度は液滴と空気との速度差が大きいほど速くなるためガス流速の速い部分に噴霧があると気化が促進される。液滴と空気との速度差が大きいほど、空気のせん断力による液滴の微粒化が促進され、ガス流速の速い部分に噴霧があると気化が促進される。さらにガス流速が速いとガスの対流による混合と、乱流渦による混合が行われ、空気と燃料の混合が促進する。
【0063】
図32に示すように、吸気バルブが最大リフト時においてバルブ中心軸CVYと吸気バルブ傘部の外周部との2つの交点をPv,Pv、噴霧点をPiとして、Pv−Pi−Pvによって定義される角度をα1、噴霧の最外角をα2と定義する。本発明による吸気ポートによって生成されるガス流動の強い部分に噴霧を配置させるには、α2≦α1の関係になるように、燃料インジェクタ5から噴射される噴霧SPの角度を設定することが望ましい。これによって吸気ポートから燃焼室内に入る速度の速いガス流動に向かって燃料噴霧SPが噴射され、燃料の微粒化,気化,空気と燃料との混合がより促進される。
【0064】
また、低負荷時において希薄燃焼を行う場合、もしくは冷機始動直後において点火時期遅角制御によって触媒暖機を行う場合には、図43に示すように燃料の一部もしくは全量を圧縮行程に噴射することが行われる。本実施例では、燃料は圧縮行程の後期、例えば圧縮上死点前40度クランク角付近で燃料噴射される。この場合、ピストン6がシリンダヘッド側へ上昇しているため、燃料噴霧の一部はピストン6の冠面に設けられたキャビティ6C内に向かって噴射される。また、ピストン冠面には段差6Sがあるため、キャビティ6C内に噴射された燃料は段差6Sによって燃焼室3C内の排気側への分散が抑制される。さらに段差6Sによって、ピストン6表面を流れる縦渦TUは、段差6Sで上向きの流れになり、燃焼室3Cのほぼ中央部で上昇流が生じる。さらに圧縮行程が進むと、キャビティ6Cの噴霧は気化する。燃焼室3Cの縦渦TUによって生じた燃焼室3C中央部付近での上昇流と、噴霧自体の貫徹力によって段差6Sで生じる上昇流によって、気化した燃料FVは段差6Sから点火プラグ4の電極部に向かって上昇する。この結果、点火プラグ4の電極周りの気化燃料の濃度が高くなり、所謂成層混合気が形成される。このように混合気を成層化することで、全体として希薄な混合気に対して確実な点火を行ったり、冷機始動直後において点火時期を遅角化した場合に安定な燃焼を行うことが可能となる。また前述したように、混合気を点火プラグ周りに成層化させるには、燃焼室内の縦渦によって生成される燃焼室中央部での上昇流が必要である。この上昇流の強さは縦渦の強さにほぼ比例する。このため低負荷時の成層燃焼においても燃焼室内に充分な強さの縦渦の形成が不可欠であり、本発明による縦渦強化が有効である。
【0065】
次に、本発明のポート噴射内燃機関への適用事例について図34から図39を用いて説明する。図33において燃料インジェクタ5が吸気マニホールドINTに設けられ、吸気マニホールドINT及び吸気ポート1内に燃料が噴射される。燃料噴霧の高さ方向の噴霧角α3は、燃料噴霧の最外角部が吸気ポート1の下流側(吸気バルブ開口部よりやや上流側)において、吸気ポートの上下壁面に衝突するように定められている。
【0066】
また図34に示すように、燃料噴霧SPは2つの吸気弁9,9に向けて2方向に噴射される。
【0067】
吸気ポート1のA2−A2断面は図35に示すように対称面CLを底辺とした略二等辺三角形の断面形状,A3−A3断面は略円形形状となっている。
【0068】
本実施例に用いる燃料噴霧の形態を図36を用いて説明する。図36は燃料インジェクタのノズルよりLi離れた断面での噴霧の流量分布を示している。ここでLiは図33に示すようにインジェクタ5を内燃機関に取り付けた状態において、インジェクタ5のノズル先端から吸気バルブ9までの距離である。すなわち図36に示す噴霧の流量分布は、内燃機関における吸気バルブ位置での流量分布を示している。噴霧の幅をW、噴霧の高さをHとしたとき、本インジェクタから噴射される噴霧はH>W、すなわち縦長の形状となっているのが特徴である。また流量の重心は吸気バルブ中心よりも対称面側に偏った分布である。
【0069】
前記のような特徴を有する噴霧を吸気マニホールド及び吸気ポート内に噴射すると、A2−A2断面においては図37に示すような噴霧形態となる。即ち、噴霧重心が対称面CL側に偏り、かつ噴霧が縦長形状であるため、略三角形断面形状であるA2−A2断面の吸気ポート1内では、三角形の底面近傍に噴霧SPが集中する。このため縦長形状の噴霧SPであっても、吸気ポート1の上側壁面1Uや下側壁面1Bに噴霧SPが衝突するのを防ぐことができる。
【0070】
図38は内燃機関の上方から噴霧形態及び吸気バルブ部でのガス流速分布の関係を見た図である。燃料インジェクタ5から噴射された噴霧SPは対称面側に偏っているため2つの吸気バルブの内側に衝突する。前述したように吸気ポートの断面形状によって吸気バルブの内側(対称面側)のガス流速が速くなる。図39は内燃機関の排気側から燃料の液膜形態及び燃焼室流入部のガス速度分布の関係を見た図である。噴霧重心が対称面CL側に偏った分布となっていることから、燃料噴霧の多くは吸気バルブ9の内側(対称面側)に衝突し、その衝突位置に燃料液膜LFを形成する。噴霧を縦長形状とすることで噴霧の壁面への付着面積が広がり、吸気バルブ上に生成される液膜は薄くなる。広範囲に薄い燃料液膜が形成されると、液膜とガス,壁面間の伝熱面積,液膜とガス間の蒸発面積が増え、かつ熱伝導による液膜への伝熱が促進されるため、液膜の気化が促進される。
【0071】
図39に示すように、流入部のガス速度分布は対称面側にピークが偏った分布であるため、燃焼室流入部のガス速度の速い部分が燃料液膜LFの表面を流れることになる。燃料液膜の気化速度は、燃料液膜の速度とその表面を流れるガス速度の差が大きいほど速くなるため、燃焼室流入部のガス速度の速い部分が燃料液膜LFの表面を流れることで、燃料液膜LFの気化が促進される。また燃料液膜の速度とその表面を流れるガス速度の差が大きいため、ガスのせん断力による液膜の微粒化が促進される。さらに吸気バルブ9上で気化した燃料は吸気バルブ内側の高速のガス流動によって速やかに燃焼室3C内に流入し、空気との良好な混合が行われる。
【0072】
以上、ポート噴射式内燃機関における本実施例の効果をまとめる。吸気ポートのA2−A2断面を対称面を底辺とした略二等辺三角形断面形状とし、かつ、吸気ポート内に噴射される燃料噴霧の形状を縦長、かつ対称面に偏った分布とすることで、以下の効果が得られる。
(1)ポート壁面への噴霧干渉を防ぎつつ噴霧を広角にすることができ、薄い液膜を形成可能となる。これにより液膜の気化促進ができる。
(2)ガス流速が速い吸気バルブの対称面側に液膜を形成することで、液膜の気化促進と、燃焼室内での燃料と空気の混合促進が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】4弁式内燃機関の概略構成図(平面図)。
【図2】4弁式内燃機関の概略構成図(縦断面図)。
【図3】従来の吸気ポート構成図。
【図4】従来の吸気ポート断面図。
【図5】従来の吸気ポート断面図。
【図6】従来の吸気ポートによるガス流れを示す平面図。
【図7】従来の吸気ポートによるガス流れを示す縦断面図。
【図8】従来の吸気ポートによるガス流れを示す平面図。
【図9】従来の吸気ポートによるガス流れを示す平面図。
【図10】従来の吸気ポート断面の流量分布図。
【図11】本発明の吸気ポートによるガス流れを示す平面図。
【図12】本発明の吸気ポート形状を示す斜視図(例1)。
【図13】本発明の吸気ポート縦断面図。
【図14】本発明の吸気ポート断面図(例1)。
【図15】本発明の吸気ポートの断面積変化例1。
【図16】本発明の吸気ポートの断面積変化例2。
【図17】本発明による吸気ポート内の流量分布。
【図18】本発明のA2−A2断面における吸気ポート断面形状(例1)。
【図19】本発明のA2−A2断面における吸気ポート断面形状(例2)。
【図20】本発明のA2−A2断面における吸気ポート断面形状(例3)。
【図21】本発明のA2−A2断面における吸気ポート断面形状(例4)。
【図22】本発明の吸気ポート形状を示す斜視図(例2)。
【図23】本発明の吸気ポート断面図(例2)。
【図24】本発明の吸気ポート縦断面図。
【図25】本発明の吸気ポート断面図。
【図26】本発明の吸気ポートによるガス流れを示す縦断面図。
【図27】本発明の吸気ポート縦断面図。
【図28】本発明の吸気ポート形状を示す斜視図(例3)。
【図29】本発明の吸気ポートによるガス流れを示す縦断面図(縦渦制御弁を閉じた場合)。
【図30】本発明の吸気ポートによるガス流れを示す縦断面図(縦渦制御弁を開いた場合)。
【図31】吸気行程に燃料を噴射した場合の噴霧挙動とガス流動を示す縦断面図。
【図32】吸気行程に燃料を噴射した場合の噴霧挙動とガス流動を示す平面図。
【図33】本発明によるポート噴射式エンジンの構成例を示す縦断面図。
【図34】本発明によるポート噴射式エンジンの構成例を示す平面図。
【図35】本発明の吸気ポート断面図。
【図36】本発明によるポート噴射インジェクタの噴霧形状を示す図。
【図37】本発明による吸気ポート内の噴霧形態を示す断面図。
【図38】本発明によるポート噴射式エンジンの燃料挙動とガス流速分布を示す平面図。
【図39】本発明によるポート噴射式エンジンの燃料液膜分布とガス流速分布を示す排気側からシリンダ内を見た平面図。
【図40】本発明の実施例に示すピストンの平面図。
【図41】本発明の実施例に示すピストンの縦断面図。
【図42】本発明の実施例に示す燃料インジェクタの噴霧形状。
【図43】圧縮行程後期に燃料を噴射した場合の噴霧挙動とガス流動を示す縦断面図。
【図44】圧縮行程後期での気化燃料とガス流動を示す縦断面図。
【図45】本発明と従来技術による縦渦強さと吸入空気量の比較。
【符号の説明】
【0074】
1 吸気ポート
1C 吸気ポートの隔壁
1B 吸気ポートの凹部下面
1B′ 吸気ポートの直線部下面
1U 吸気ポートの凸部上面
1U′ 吸気ポートの直線部上面
2 排気ポート
2C 排気ポートの隔壁
3 シリンダ
3C 燃焼室
3h シリンダヘッド
4 点火プラグ
5 燃料インジェクタ
6 ピストン
6C ピストン冠面にキャビティ
6S ピストン冠面に設けた段差
6W ピストン冠面に設けたキャビティの側壁
9 吸気バルブ
10 排気バルブ
AX 吸気ポート中心軸
CC シリンダ中心軸
CL 対称面
CVY 対称面に平行な吸気バルブ中心軸
INT 吸気マニホールド
EXH 排気マニホールド
FV 気化燃料
H 噴霧高さ
LF 燃料液膜
SP 燃料噴霧
TP 吸気ポート断面の仕切り板
TU 縦渦
TVL 縦渦制御弁
W 噴霧幅
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の吸気装置に関し、特に高負荷時の吸入空気量を減少させることなくシリンダ内に生成される縦渦流動を強化できる内燃機関とその吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特開2004−169570号公報に示されるように、吸気ポートの断面を上下に分割する隔壁と、隔壁と吸気ポート壁面で構成された2つの空気通路のどちらかを開閉可能なタンブル制御バルブによって閉塞することが行われている。本手法においては、隔壁と吸気ポート壁面で構成された通路の片側をタンブル制御バルブによって閉塞することによって、吸気ポートからシリンダの接線方向に高速なガス流動が生成され、シリンダ内に強い縦渦が形成される。
【0003】
また、実公平5−44526号公報に示されるように、シリンダ軸線に対してほぼ直角方向から導入されて、シリンダ軸線にほぼ平行する方向へ湾曲しながら2つに分岐して燃焼室に開口するシリンダヘッドの吸入通路において、その吸入通路全長に亘って、軸線より湾曲の遠心側を横幅方向に拡大し、求心側を横幅方向に縮小した断面形状に形成することが行われている。本手法においては、湾曲する通路において遠心力によって湾曲の遠心側に多くの燃料ガスが流れるので、その遠心側の断面積を求心側よりも大きくすることで、ガスの吸気抵抗が減ってシリンダへの吸入ガス量を増やすことができる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−169570号公報
【特許文献2】実公平5−44526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2004−169570号公報に記載された技術においては、内燃機関が高負荷,高速で運転される場合は、吸気抵抗をできるだけ小さくするためにタンブル制御バルブを開け、隔壁で分割された2つの通路の双方にからシリンダ内へガスを供給する。このため、高負荷,高速運転時には、タンブルバルブによるガスの高速化作用が無くなり、シリンダ内に充分に強い縦渦を形成できない。また、タンブルバルブを開いた場合においても、タンブルバルブ,隔壁による吸気抵抗の増加が発生するため、シリンダへ吸入される空気量が減少する。さらにタンブルバルブや隔壁を設置するため製作コストが高くなるといった課題がある。
【0006】
また、実公平5−44526号公報に示された技術においては、湾曲する通路の遠心側の空気密度を増やすことによって、シリンダ壁面へ衝突するガスの流量が増えるため、シリンダ流入後のガス速度が減速し、シリンダ内へ充分に強い縦渦を形成できないといった課題がある。
【0007】
本課題について図1から図10を用いてさらに詳細に説明する。図1は従来技術による吸気装置を用いた内燃機関の概略形状を示した平面図である。また図2は、従来技術による吸気装置を用いた内燃機関の概略形状を示した縦断面図である。本内燃機関は、シリンダヘッド上に吸気2弁,排気2弁を有する、所謂4バルブ内燃機関の構成となっている。図1,図2においてシリンダ3にはピストン6が嵌入され、シリンダ3とシリンダヘッド3h,ピストン6の冠面に囲まれ燃焼室3Cが形成されている。
【0008】
シリンダヘッド3hには燃焼室3Cに開口する2つの吸気ポート1,1と2つの排気ポート2,2が設けられている。2つの吸気ポート1,1は吸気隔壁1Cの上流側で1つに纏まり吸気マニホールドINTを形成している。同様に2つの排気ポート2,2は排気隔壁2Cの上流側で1つに纏まり排気マニホールドEXHを形成している。
【0009】
吸気ポート1と燃焼室3Cの間の開口部には吸気バルブ9が設けられ、排気ポート2と燃焼室3Cの間の開口部には排気バルブ10が設けられている。
【0010】
シリンダヘッド3hの略中央には点火プラグ4が設けられ、シリンダヘッド3hの吸気側側面には燃料インジェクタ5が設けられている。即ち、本内燃機関は燃焼室3C内へ直接燃料を噴射する筒内噴射内燃機関の構成となっている。
【0011】
図3は図1,図2に示した内燃機関形状を簡素化して示した図である。即ち図3では、図1,図2における吸気マニホールドINT,吸気ポート1,吸気バルブ9,シリンダヘッド3h及びシリンダ3のみを示している。
【0012】
図3に示すように吸気通路断面A1−A1,A2−A2,A3−A3をそれぞれ定義する。即ち各断面A1−A1・・・A3−A3は、吸気通路の中心軸AXに対して垂直な断面である。また、A1−A1は吸気マニホールドINTの断面,A2−A2は吸気ポート1の略中央位置での断面,A3−A3はA2−A2より下流かつ吸気ポート1の燃焼室への開口部より少し上流側の断面である。また、2つの吸気ポート1,1の対象面をCLとする。
【0013】
従来技術による吸気装置の断面形状例を図4及び図5に示す。図4は、吸気管部の断面A1−A1では略小判型の断面形状であり、分岐後の吸気ポート断面A2−A2及びA3−A3では略円形状の例である。また図5は吸気管部の断面A1−A1では略小判型の断面形状であり、吸気ポートの略中央部の断面A2−A2では、上広がりの略三角形状,吸気ポート下流のA3−A3では略円形状の例である。
【0014】
従来技術による吸気装置における吸気行程のガス流れを図6,図7に示す。吸気行程では吸気バルブ9が燃焼室3C側に向かって開くことによって、吸気ポート1と燃焼室3Cの間に開口部S9ができる。またピストン6が下降することによって燃焼室3C内が吸気ポート1内に比べて圧力が低下することで、吸気ポート1から開口部S9を通って燃焼室3C内へガスが引き込まれる。
【0015】
図7に示すように吸気ポート1は燃焼室の中心軸CCに対して吸気側へ傾いているため、ガスの慣性力によって、吸気バルブの左側(燃焼室中心側)の流速VFが吸気バルブの右側(シリンダ壁面側)の流速VRより速くなり、結果として燃焼室3C内には左回りの縦渦TUが発生する。
【0016】
この縦渦TUは燃焼室3C内での空気と燃料の混合を促進する、圧縮行程の後期に崩壊して乱流渦に変わることにより燃焼速度を増加するなどの作用がある。これらは、燃料の燃焼を促進し、燃費低減,出力向上,ノッキングの抑制,排気清浄化など、内燃機関の基本性能の向上に重要な役割を果たすことが知られている。
【0017】
図8,図9は吸気行程において吸気バルブ9から燃焼室3C内へ入るガスの速度分布を示した例である。図8は図4に示したポート断面形状を用いた場合の吸気バルブでの速度分布を示す。また図9は図5に示したポート断面形状を用いた場合の吸気バルブでの速度分布を示す。
【0018】
図8においては、図4に示すように吸気ポート断面(A2−A2)が軸対称形状であるため、吸気ポート内の流速分布はほぼ均一となる。このため主に燃焼室3C内に縦渦を生成するガス速度成分VFが、吸気バルブ9の吸気側から入り縦渦生成を抑制するガス速度成分VRに比べて充分に強くないため、燃焼室3C内に生成される縦渦は比較的弱くなる。
【0019】
一方、図9においては図5に示すように吸気ポート断面(A2−A2)が上広がりの略三角形状となっているため、吸気ポート断面が広がっている方(吸気ポート曲率の外側方向)により多くのガスが流れる。図10はポート各断面での流量分布の例を示す。上広がりの略三角形状A2−A2断面において吸気ポートの曲率外側へ流量重心が偏り、この傾向は吸気バルブ開口部の直前であるA3−A3断面においても残る。
【0020】
この結果、バルブから入るガスの流速分布は図9に示すように、吸気バルブから対称面CLに平行で、かつ排気側へ向かうガス速度成分VF,燃焼室3Cの中心へ向かうガス速度成分VC,シリンダ外側へ向かうガス速度成分VSが、吸気側シリンダ壁へ向かうガス速度成分VRなどに比べて大きくなる。
【0021】
図9に示す速度分布において、ガス速度成分VF,VCの増加は燃焼室3C内での縦渦を強化する効果がある。しかしシリンダ外側へ向かうガス速度成分VSは、吸気バルブ開口部から燃焼室に入った直後にシリンダ3の壁に衝突し、その運動量が減衰する。このため、ガス速度成分VSの増加は燃焼室3C内の縦渦の強化には有効に働かず、また、壁面衝突により吸気抵抗が増大する虞がある。
【0022】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、高回転,高負荷時においても吸入空気量を低減させることなく、内燃機関の負荷や回転数によらずシリンダ内に充分な強さの縦渦を形成し、かつ製作コストが安価な内燃機関の吸気装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
吸入空気量を低減させることなく燃焼室内に生成される縦渦を強化するには吸気バルブから燃焼室に入るガス速度を図11に示すような分布にすることが望ましい。
【0024】
すなわち、吸気バルブ9から対称面CLに平行で、かつ排気側へ向かうガス速度成分VF,燃焼室3Cの中心へ向かうガス速度成分VCを、吸気側シリンダ壁へ向かうガス速度成分VRに比べて大きくする。また、シリンダ外側へ向かうガス速度成分VS1,VS2を、前記VF,VCに比べて小さくする。吸気バルブ9の中心を通り、対称面CLと平行な軸をCVYとしたとき、吸気バルブ開口のCVYよりも内側(対称面CL側)のガス流速が、吸気バルブ開口のCVYよりも外側(対称面CLと対向する側)のガス流速に比べて速くなるようにする。かつ、吸気バルブ9の中心を通り、対称面CLと直角な軸をCVXとしたとき、CVXよりも排気側から燃焼室に入るガス流速を、CVXよりも吸気側から燃焼室に入るガス流速より速くなるようにする。
【0025】
前記のように、吸気バルブから対称面CLに平行で、かつ排気側へ向かうガス速度成分VFは、燃焼室3C内に生成される縦渦の流動方向と一致するため、この縦渦の強度をより高める効果がある。
【0026】
また、吸気バルブ9から燃焼室3Cの中心へ向かうガス速度成分VCは燃焼室3Cに入った後は対称面CLでお互いに衝突し、対称面CLに平行で排気側に向かう合成速度成分VC′を形成する。この速度成分VC′も速度成分VFと同様に燃焼室3C内に生成される縦渦の流動方向と一致するため、この縦渦の強度をより高める効果がある。なお、対称面CL上で面対称な速度成分が衝突した場合、その境界面(衝突面)では双方のガスが衝突面に沿って同じ速度で移動するため、所謂すべり壁条件となり、VCが衝突して生成されるVC′の運動量の損失は小さい。
【0027】
一方、シリンダ外側へ向かうガス速度成分VS1,VS2は小さいため、燃焼室3Cに流入した後でシリンダ3の壁に衝突することによる運動量の損失は小さい。すなわち壁面衝突による流入損失は低く抑えられる。
【0028】
以上で説明したように吸気行程において吸気バルブから燃焼室に入るガスの速度を図11に示すような分布にすることで、吸入空気量を低減することなく燃焼室に生成される縦渦をより強化する事が可能となる。
【発明の効果】
【0029】
図45に本発明による内燃機関の吸気装置(図14)と従来の吸気装置(図5)による燃焼室内の縦渦強さ(タンブル比)と、燃焼室内に吸入された空気量の比較結果を示す。本結果は、3次元流体シミュレーション解析ソフトウェア(CFD)を用いて計算した結果である。エンジンの排気量は500cm3、エンジンの回転速度は6500rpm、スロットルバルブは全開(WOT)条件とした。図45に示されるように、本発明では燃焼室内に吸入する空気量の低減無しに、燃焼室内の縦渦強さを約20%向上できる。
【0030】
燃焼室内の縦渦強さを向上することによって、燃料の気化促進,燃料と空気の混合促進,燃焼速度の向上が図られ、排気エミッションの低減,燃費効率の向上,出力の向上等、エンジンの基本性能を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図12に本発明における一実施形態を示す。図12は吸気2弁,排気2弁の内燃機関において、吸気マニホールドINT,2つの吸気ポート1,1,2つの吸気バルブ9,9とシリンダヘッド3h,シリンダ3を斜視した図である。
【0032】
吸気マニホールドINTは隔壁1Cによって2つの吸気ポート1,1に分かれ、吸気ポート1,1はシリンダヘッド3hに開口している。2つの開口部にそれぞれ吸気バルブ9が設けられ、ポート開口部の開閉が可能となっている。
【0033】
なお排気ポート,排気バルブ,点火プラグ,燃料インジェクタ等は図1,図2に示した構成と同様であるため図12においては省略して示している。
【0034】
図12においてS1,S2,・・・,S5は吸気マニホールドINTと吸気ポート1の断面形状を示している。
【0035】
図13には図12に示した本発明における一実施形態の縦断面図を示す。図13において吸気マニホールドINT,吸気ポート1の断面中心を結んだ軸をAXとし、AXに直角な断面をA1−A1,A2−A2,A3−A3と定義する。ここにA1−A1は吸気マニホールドINTの下流断面,A2−A2は隔壁1Cと吸気ポート1の燃焼室開口部との略中心位置での吸気ポート断面,A3−A3は吸気ポート1の燃焼室開口部直前の吸気ポート断面である。
【0036】
ピストン6を上から見た形状を図40に、図40のA−A断面を図41に示す。ピストン6の冠面の中心部には吸気弁側から排気弁側に向けてその中央部がもっとも深く、外周形状が長方形で、断面が弧状の曲面形状の底面を持つキャビティ6Cが設けられ、キャビティ6Cの両側壁6Wはピストン6の水平面6Hよりも高い壁として形成されている。
【0037】
また、キャビティ6Cの底面は断面A−Aに沿う方向には平坦な面になっており、断面A−Aに直角方向には図13に示すように吸排気弁側に行くに従って徐々に浅くなる弧状になっている。このキャビティ6Cには、ピストン6の点火プラグ4に対面する位置を横切るように図40,図41に示すような細長い小さな段差(凸部)6Sが形成されており、段差6Sはキャビティ6Cの底面に対し滑らかな曲面で接続されている。段差6Sの高さはキャビティ6Cの底面から例えば2mm程度である。キャビティ6Sの側壁6Wは図41に示すように外側に向かって曲面となっており、ピストン6冠面とキャビティ6C底面に接続されている。キャビティ6C内は段差6S以外の段差は設けていない。キャビティ6Cの側壁6Wはキャビティの底面から例えば5mm程度に形成されている。
【0038】
燃料インジェクタ5から燃焼室内へ噴射される噴霧は、シリンダやピストン壁面への付着をできるだけ避けるよう、また、空気との混合が良好に行われるよう、その噴射方向や噴霧パターンが選択される。また噴霧を生成する燃料インジェクタ5としては、多孔式ノズル弁,高圧スワール弁,スリットノズル弁,外開き弁などが使用される。
【0039】
本実施例における燃料インジェクタ5の噴霧形状の一例を図42に示す。図42は燃料圧力11MPa、雰囲気圧力が大気圧の条件において燃料インジェクタのノズル先端から30mm下の断面B−Bにおける、燃料噴射から1ms後の噴霧の断面形状を表している。本インジェクタは多孔式ノズル弁であり、SP1〜SP4から成る6本の噴霧ビームから構成される。
【0040】
噴霧ビームSP1は対称面CL上でかつ点火プラグの電極位置のやや下方を指向している。噴霧ビームSP1は対称面CL上でかつ噴霧ビームSP1の下側を指向している。噴霧ビームSP2はSP1,SP2の間にあり、対称面CLに対して外側を指向している。噴霧ビームSP4はSP3より下側であり、対称面CLに対して外側を指向している。またSP2よりもSP4の方が外側に広がっており、全体としてSP1,SP4,SP4を頂点とした略三角形の噴霧ビームの配置となっている。
【0041】
図14にA1−A1,A2−A2,A3−A3の各断面の吸気ポート形状を示す。吸気マニホールド(断面A1−A1)における略小判型断面から吸気ポートの略中間位置(断面A2−A2)では対称面CL側の壁面を底辺とした略二等辺三角形状となり、吸気ポート開口部近傍(断面A3−A3)では略円形断面形状となっている。
【0042】
図15には図14に示した3断面位置での通路断面積の変化を示す。なお図15における断面A2,A3については、対称面CLを挟んだ2つの吸気ポート断面積の総和を示している。図15に示すように断面位置A2とA3の間では通路断面積はほぼ一定に保たれている。またA1位置で示される吸気マニホールドの断面積とA2位置で示される吸気ポートの断面積は、ほぼ同じ(破線)、もしくは吸気ポートの断面積が大きくなるように(実線)、吸気ポート及び吸気マニホールドの大きさが決められている。このように吸気マニホールドと吸気ポートの断面積を軸方向に一定に保つことで吸気マニホールド,吸気ポート内での流速増加を抑えて、流動抵抗をできるだけ少なくすることができる。もしくは吸気マニホールドの断面積より吸気ポートの断面積を広くすることで、吸気マニホールドから2つの吸気ポートに分岐したときに生じる偏流や渦による流動抵抗の増加を防ぐことができる。
【0043】
また、図16に示すように断面位置A2の吸気ポートの断面積を他の断面位置の通路面積より広げてもよい。断面A2−A2で吸気ポートを対称面側を底辺とした略二等辺三角形の断面形状にすることで、断面内の流速分布が他の断面に対して大きく変化し、流動損失が大きくなる虞がある。そこで断面位置A2の吸気ポートの断面積を他の断面位置の通路面積より広げることで、この流動損失を低減することが可能である。
【0044】
図17に吸気行程における吸気マニホールドINT,吸気ポート1内のガスの流量分布を示す。吸気マニホールドの断面A1−A1では放物型の流量分布となるが、吸気ポートA2−A2断面では図14に示したように対称面CL側を底辺とした略三角形の断面形状であるため、断面内のガスが対称面CL側に偏り、吸気バルブ9の中心よりも対称面CL側に最大値を持つ流量分布となる。流体の慣性力によって、この分布はさらに下流のA3−A3断面においても維持される。従って、吸気バルブ9の開口部では、バルブ中心よりも対称面CL側から燃焼室に入るガス流量が、バルブ中心よりも対称面CLの対向側より燃焼室に入るガス流量が多くなる。吸気バルブ開口部でのガス流速は、流量を開口断面積で除算したものである。よって、本吸気ポート形状における吸気バルブ部でのガス流速は図11に示すような分布となり、前記した理由により、流動抵抗を増やすことなく燃焼室内に生成される縦渦をより強くすることができる。
【0045】
本発明においては図11に示す吸気バルブ周りの速度分布を生成するために、吸気ポート断面の一部を、対称面側を底辺とした略二等辺三角形状とする。このようなポート断面形状については、以下のような形状が考えられる。なお2本の吸気ポート形状は対称面CLに対して面対称の関係にあるため、以下の説明では対称面CLに対して右側の吸気ポート形状のみについてその特徴を述べる。
【0046】
本発明におけるA2−A2断面の形状として図18に示す形状が考えられる。図18において、ポート内壁面の対称面CL側に向かい合う面の接線をP1、ポート曲率外側のポート内壁面の接線をP2とする。図18に示す吸気ポート断面形状は、P1とP2との交角αが鋭角、即ち90度よりも狭いことを特徴とする。
【0047】
また本発明におけるA2−A2断面の形状として図19に示す形状が考えられる。吸気ポート断面の幅をW、吸気ポート断面の高さをHとする。また、W方向の座標をX,H方向の座標をYとし、Wの中点,Hの中点を原点とした直角座標系X−Yを定義する。そして、X−Y座標の第一象限内に含まれる吸気ポート断面積をS1,第二象限内に含まれる吸気ポート断面積をS2,第三象限内に含まれる吸気ポート断面積をS3,第四象限内に含まれる吸気ポート断面積をS4とする。図19に示す吸気ポート断面形状は、S2とS3の総和面積がS1とS4の総和面積よりも大きく、かつ、S1がS4と等しいか、S1がS4よりも小さいことを特徴とする。
【0048】
また本発明におけるA2−A2断面の形状として図20に示す形状が考えられる。吸気ポート断面の幅をW、吸気ポート断面の高さをHとする。また、W方向の座標をX,H方向の座標をYとし、Wの中点,Hの中点を原点とした直角座標系X−Yを定義する。そして、X−Y座標の第一象限内に含まれる吸気ポート断面積をS1,第二象限内に含まれる吸気ポート断面積をS2,第三象限内に含まれる吸気ポート断面積をS3,第四象限内に含まれる吸気ポート断面積をS4とする。また対称面CLと対向する側の吸気ポート壁面とX軸との交点をCxと定義する。図20に示す吸気ポート断面形状は、対称面CLと対向する側の吸気ポート壁面のX座標の最大値CxmaxがCxと等しく、かつ、S2とS3の総和断面積がS1とS4の総和断面積よりも大きいことを特徴とする。
【0049】
また本発明におけるA2−A2断面の形状として図21に示す形状が考えられる。吸気ポート断面の幅をW、吸気ポート断面の高さをHとする。また、W方向の座標をX,H方向の座標をYとし、Wの中点,Hの中点を原点とした直角座標系X−Yを定義する。またポート曲率外側方向の吸気ポート壁面のY座標の最大値をCymaxとする。図21に示す吸気ポート断面形状は、X>0において吸気ポート壁面のY座標が常にCymaxよりも小さいことを特徴とする。
【0050】
なお図12〜図14に示す本発明の実施例においては、吸気マニホールドINTの断面を図14、A1−A1断面に示すような略小判型形状とした。しかし図22,図23に示すように吸気マニホールドINTのA1−A1断面を、略菱形形状としてもよい。このようにA1−A1断面を、略菱形形状とすることによって、A2−A2断面に至るまでの断面形状の変化が小さく、吸気マニホールド内のガス流がよりスムーズにA2−A2断面の吸気ポートに流れる。これによって流動抵抗をより低減可能となる。
【0051】
またこの吸気マニホールドの菱形断面形状は、前記図18〜図21で示したA2−A2断面の吸気ポート形状断面との組み合わせにおいても、同様の効果が得られる。
【0052】
図24に本発明の実施形態における吸気ポートの縦断面形状を示す。前述したように、本発明の実施例においてはA2−A2断面が対称面を底辺とした略二等辺三角形状とあり、また図15,図16に示したようにA2−A2断面の面積が他の断面の面積と等しいか大きくなるようにする。このため吸気ポートの縦断面形状は、図24に示すようにA2−A2断面部が吸気ポートの上下方向に広がり、略樽型の断面形状となる。ここで図24の1U,1Bはそれぞれ図25に示すように略三角断面形状の吸気ポートの最上部,最下部の稜線を示している。また1U′,1B′はそれぞれ図25に示すように略円形断面形状の吸気ポートの最上部,最下部の稜線を示している。A2−A2断面からA3−A3断面に向かって吸気ポート断面形状が略三角形から略円形に変化することで、1Bと1B′の間、1Uと1U′の間には変曲点PBとPUがそれぞれできる。曲面1Bの変曲点PBにおける接線ベクトルをVtb、曲面1Uの変曲点PUにおける接線ベクトルをVtuとする。
【0053】
本発明における吸気ポート形状では、吸気バルブがリフトして生じるシリンダ中心側の開口部をVOとすると、吸気ポート下面の接線ベクトルVtbが開口部VOを指向している事が望ましい。
【0054】
また、本発明における吸気ポート形状では、吸気バルブ9の傘部底面の中心座標をPVCとすると、吸気ポート上面の接線ベクトルVtuが吸気バルブの中心座標PVCよりも排気側(シリンダ中心側)を指向している事が望ましい。
【0055】
なお上記2点については、両立することでより強い縦渦を生成することが可能であるが、どちらか一方であっても縦渦を強化する作用がある。以下で、本形状により縦渦が強化される理由を説明する。
【0056】
図24に示すような縦断面形状を有する吸気ポートでは、図26に示すように吸気ポートの下側壁面1Bに沿ったガス流れが、吸気ポート下面の接線ベクトルが開口部VOを指向している事から、吸気バルブ9の排気側開口部VOを通って燃焼室3Cに入る。また吸気ポートの上側壁面1Uに沿ったガス流れは、吸気ポート上面の接線ベクトルVtuが吸気バルブの中心座標PVCよりも排気側(シリンダ中心側)を指向している事から、吸気バルブ9の排気側開口部VOを通って燃焼室3Cに入る。これらの流れは燃焼室3Cの上部で吸気側から排気側に向かうガス流れVTとなる。燃焼室上部において、燃焼室3Cにガス流れVTは燃焼室3C内の縦渦TUを促進する方向に作用するためが一致するため、図24に示すような縦断面形状を有する吸気ポートを用いることによって縦渦TUをより強くすることができる。
【0057】
また、吸気ポートの縦断面形状については図27に示すように、吸気ポート下面の曲率半径をRb、吸気ポート下面の曲率半径をRuとしたときに、RbがRuよりも小さくなるように断面形状を決めてもよい。Rbをより小さくすることで、吸気ポート下面1Bに沿った流れを吸気バルブの排気側開口部VOに導くことができる。またRuをより大きくすることで、吸気ポート上面1Uに沿った流れを吸気バルブの排気側開口部VOに導くことができる。これらは図26で説明したように燃焼室3C内の縦渦TUがより強くなるように作用する。
【0058】
また、内燃機関が低回転,低負荷時により強い縦渦を生成するために、図28,図29に示すように吸気ポート内に整流板TPと縦渦制御弁TVLを設けてもよい。整流板TPは吸気ポート1の断面を上下に分割する薄板で構成される。図28,図29では吸気ポートのほぼ中央断面に整流板TPを設けた例を示しているが、断面位置については要求される縦渦の強さがガス流量によって適宜調整される。すなわち低回転,低負荷時により強い縦渦が要求される場合には整流板TPを吸気ポートの中央断面位置よりも上の位置に取り付けると良い。また縦渦制御弁TVLは整流板TPの上流に設けられ、図示しないモーター等の駆動機構によって、整流板TPで仕切られた下側の吸気ポート通路を閉塞したり、開放したりする。低回転,低負荷時により強い縦渦が要求される場合には縦渦制御弁TVLによって、整流板TPで仕切られた下側の吸気ポート通路を閉塞し、整流板TPで仕切られた上側の吸気ポートからガスを流入することで燃焼室3C内に強い縦渦TUを生成する。高回転,高負荷時には、図30に示すように流動損失を低減するため縦渦制御弁TVLは開放され、吸気ポート断面全体からガスが燃焼室内へ導入される。整流板TPは吸気ポートのガス流れの乱れを抑制し、吸気ポートの軸方向へ整流する効果があるため、縦渦制御弁TVLが開放された場合においても、整流板TPを設けない場合に対して燃焼室内の縦渦TUを強化する効果がある。また整流板TPの設置は、本発明による縦渦の強化メカニズムである、吸気ポートの排気側,対称面側からの流入速度向上を何ら阻害するものでは無い。このため、本発明の吸気ポート形状と整流板TPを組み合わせることで、より強い縦渦TUを生成することができる。
【0059】
図31は吸気行程における燃焼室3C内の噴霧とガス流動を示している。筒内噴射式内燃機関において均質燃焼を行う際には、通常燃料は吸気行程に噴射される。これは吸気行程中に生成されるガス流動を用いて噴霧の気化と気化燃料と空気の混合を促進するためである。燃料の噴射時期は、内燃機関の回転数や負荷(燃料噴射量)によって適切な時期が設定される。例えば、2000rpmの全負荷運転では、燃料は上死点後60〜90度クランク角付近から噴射開始される。
【0060】
図32には吸気行程での噴霧とガス流動をシリンダ上方から見た図である。吸気弁9のリフトが最大時(上死点後100度クランク角度前後)である。
【0061】
本発明による吸気ポート形状においては、吸気ポートの排気側,対称面側からの流入速度向上を図り燃焼室内の縦渦強化を図るため、流入部の速度分布は図32に示すように吸気バルブの中心軸CVYよりも対称面CL側に速度ピークのある分布となる。吸気行程に噴射された燃料の気化促進と、燃焼室内に吸入された空気と燃料との混合促進には、ガス流動の強い部分に噴霧を配置させることが有効である。これは以下の理由による。
【0062】
通常,液滴からの気化速度は液滴と空気との速度差が大きいほど速くなるためガス流速の速い部分に噴霧があると気化が促進される。液滴と空気との速度差が大きいほど、空気のせん断力による液滴の微粒化が促進され、ガス流速の速い部分に噴霧があると気化が促進される。さらにガス流速が速いとガスの対流による混合と、乱流渦による混合が行われ、空気と燃料の混合が促進する。
【0063】
図32に示すように、吸気バルブが最大リフト時においてバルブ中心軸CVYと吸気バルブ傘部の外周部との2つの交点をPv,Pv、噴霧点をPiとして、Pv−Pi−Pvによって定義される角度をα1、噴霧の最外角をα2と定義する。本発明による吸気ポートによって生成されるガス流動の強い部分に噴霧を配置させるには、α2≦α1の関係になるように、燃料インジェクタ5から噴射される噴霧SPの角度を設定することが望ましい。これによって吸気ポートから燃焼室内に入る速度の速いガス流動に向かって燃料噴霧SPが噴射され、燃料の微粒化,気化,空気と燃料との混合がより促進される。
【0064】
また、低負荷時において希薄燃焼を行う場合、もしくは冷機始動直後において点火時期遅角制御によって触媒暖機を行う場合には、図43に示すように燃料の一部もしくは全量を圧縮行程に噴射することが行われる。本実施例では、燃料は圧縮行程の後期、例えば圧縮上死点前40度クランク角付近で燃料噴射される。この場合、ピストン6がシリンダヘッド側へ上昇しているため、燃料噴霧の一部はピストン6の冠面に設けられたキャビティ6C内に向かって噴射される。また、ピストン冠面には段差6Sがあるため、キャビティ6C内に噴射された燃料は段差6Sによって燃焼室3C内の排気側への分散が抑制される。さらに段差6Sによって、ピストン6表面を流れる縦渦TUは、段差6Sで上向きの流れになり、燃焼室3Cのほぼ中央部で上昇流が生じる。さらに圧縮行程が進むと、キャビティ6Cの噴霧は気化する。燃焼室3Cの縦渦TUによって生じた燃焼室3C中央部付近での上昇流と、噴霧自体の貫徹力によって段差6Sで生じる上昇流によって、気化した燃料FVは段差6Sから点火プラグ4の電極部に向かって上昇する。この結果、点火プラグ4の電極周りの気化燃料の濃度が高くなり、所謂成層混合気が形成される。このように混合気を成層化することで、全体として希薄な混合気に対して確実な点火を行ったり、冷機始動直後において点火時期を遅角化した場合に安定な燃焼を行うことが可能となる。また前述したように、混合気を点火プラグ周りに成層化させるには、燃焼室内の縦渦によって生成される燃焼室中央部での上昇流が必要である。この上昇流の強さは縦渦の強さにほぼ比例する。このため低負荷時の成層燃焼においても燃焼室内に充分な強さの縦渦の形成が不可欠であり、本発明による縦渦強化が有効である。
【0065】
次に、本発明のポート噴射内燃機関への適用事例について図34から図39を用いて説明する。図33において燃料インジェクタ5が吸気マニホールドINTに設けられ、吸気マニホールドINT及び吸気ポート1内に燃料が噴射される。燃料噴霧の高さ方向の噴霧角α3は、燃料噴霧の最外角部が吸気ポート1の下流側(吸気バルブ開口部よりやや上流側)において、吸気ポートの上下壁面に衝突するように定められている。
【0066】
また図34に示すように、燃料噴霧SPは2つの吸気弁9,9に向けて2方向に噴射される。
【0067】
吸気ポート1のA2−A2断面は図35に示すように対称面CLを底辺とした略二等辺三角形の断面形状,A3−A3断面は略円形形状となっている。
【0068】
本実施例に用いる燃料噴霧の形態を図36を用いて説明する。図36は燃料インジェクタのノズルよりLi離れた断面での噴霧の流量分布を示している。ここでLiは図33に示すようにインジェクタ5を内燃機関に取り付けた状態において、インジェクタ5のノズル先端から吸気バルブ9までの距離である。すなわち図36に示す噴霧の流量分布は、内燃機関における吸気バルブ位置での流量分布を示している。噴霧の幅をW、噴霧の高さをHとしたとき、本インジェクタから噴射される噴霧はH>W、すなわち縦長の形状となっているのが特徴である。また流量の重心は吸気バルブ中心よりも対称面側に偏った分布である。
【0069】
前記のような特徴を有する噴霧を吸気マニホールド及び吸気ポート内に噴射すると、A2−A2断面においては図37に示すような噴霧形態となる。即ち、噴霧重心が対称面CL側に偏り、かつ噴霧が縦長形状であるため、略三角形断面形状であるA2−A2断面の吸気ポート1内では、三角形の底面近傍に噴霧SPが集中する。このため縦長形状の噴霧SPであっても、吸気ポート1の上側壁面1Uや下側壁面1Bに噴霧SPが衝突するのを防ぐことができる。
【0070】
図38は内燃機関の上方から噴霧形態及び吸気バルブ部でのガス流速分布の関係を見た図である。燃料インジェクタ5から噴射された噴霧SPは対称面側に偏っているため2つの吸気バルブの内側に衝突する。前述したように吸気ポートの断面形状によって吸気バルブの内側(対称面側)のガス流速が速くなる。図39は内燃機関の排気側から燃料の液膜形態及び燃焼室流入部のガス速度分布の関係を見た図である。噴霧重心が対称面CL側に偏った分布となっていることから、燃料噴霧の多くは吸気バルブ9の内側(対称面側)に衝突し、その衝突位置に燃料液膜LFを形成する。噴霧を縦長形状とすることで噴霧の壁面への付着面積が広がり、吸気バルブ上に生成される液膜は薄くなる。広範囲に薄い燃料液膜が形成されると、液膜とガス,壁面間の伝熱面積,液膜とガス間の蒸発面積が増え、かつ熱伝導による液膜への伝熱が促進されるため、液膜の気化が促進される。
【0071】
図39に示すように、流入部のガス速度分布は対称面側にピークが偏った分布であるため、燃焼室流入部のガス速度の速い部分が燃料液膜LFの表面を流れることになる。燃料液膜の気化速度は、燃料液膜の速度とその表面を流れるガス速度の差が大きいほど速くなるため、燃焼室流入部のガス速度の速い部分が燃料液膜LFの表面を流れることで、燃料液膜LFの気化が促進される。また燃料液膜の速度とその表面を流れるガス速度の差が大きいため、ガスのせん断力による液膜の微粒化が促進される。さらに吸気バルブ9上で気化した燃料は吸気バルブ内側の高速のガス流動によって速やかに燃焼室3C内に流入し、空気との良好な混合が行われる。
【0072】
以上、ポート噴射式内燃機関における本実施例の効果をまとめる。吸気ポートのA2−A2断面を対称面を底辺とした略二等辺三角形断面形状とし、かつ、吸気ポート内に噴射される燃料噴霧の形状を縦長、かつ対称面に偏った分布とすることで、以下の効果が得られる。
(1)ポート壁面への噴霧干渉を防ぎつつ噴霧を広角にすることができ、薄い液膜を形成可能となる。これにより液膜の気化促進ができる。
(2)ガス流速が速い吸気バルブの対称面側に液膜を形成することで、液膜の気化促進と、燃焼室内での燃料と空気の混合促進が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】4弁式内燃機関の概略構成図(平面図)。
【図2】4弁式内燃機関の概略構成図(縦断面図)。
【図3】従来の吸気ポート構成図。
【図4】従来の吸気ポート断面図。
【図5】従来の吸気ポート断面図。
【図6】従来の吸気ポートによるガス流れを示す平面図。
【図7】従来の吸気ポートによるガス流れを示す縦断面図。
【図8】従来の吸気ポートによるガス流れを示す平面図。
【図9】従来の吸気ポートによるガス流れを示す平面図。
【図10】従来の吸気ポート断面の流量分布図。
【図11】本発明の吸気ポートによるガス流れを示す平面図。
【図12】本発明の吸気ポート形状を示す斜視図(例1)。
【図13】本発明の吸気ポート縦断面図。
【図14】本発明の吸気ポート断面図(例1)。
【図15】本発明の吸気ポートの断面積変化例1。
【図16】本発明の吸気ポートの断面積変化例2。
【図17】本発明による吸気ポート内の流量分布。
【図18】本発明のA2−A2断面における吸気ポート断面形状(例1)。
【図19】本発明のA2−A2断面における吸気ポート断面形状(例2)。
【図20】本発明のA2−A2断面における吸気ポート断面形状(例3)。
【図21】本発明のA2−A2断面における吸気ポート断面形状(例4)。
【図22】本発明の吸気ポート形状を示す斜視図(例2)。
【図23】本発明の吸気ポート断面図(例2)。
【図24】本発明の吸気ポート縦断面図。
【図25】本発明の吸気ポート断面図。
【図26】本発明の吸気ポートによるガス流れを示す縦断面図。
【図27】本発明の吸気ポート縦断面図。
【図28】本発明の吸気ポート形状を示す斜視図(例3)。
【図29】本発明の吸気ポートによるガス流れを示す縦断面図(縦渦制御弁を閉じた場合)。
【図30】本発明の吸気ポートによるガス流れを示す縦断面図(縦渦制御弁を開いた場合)。
【図31】吸気行程に燃料を噴射した場合の噴霧挙動とガス流動を示す縦断面図。
【図32】吸気行程に燃料を噴射した場合の噴霧挙動とガス流動を示す平面図。
【図33】本発明によるポート噴射式エンジンの構成例を示す縦断面図。
【図34】本発明によるポート噴射式エンジンの構成例を示す平面図。
【図35】本発明の吸気ポート断面図。
【図36】本発明によるポート噴射インジェクタの噴霧形状を示す図。
【図37】本発明による吸気ポート内の噴霧形態を示す断面図。
【図38】本発明によるポート噴射式エンジンの燃料挙動とガス流速分布を示す平面図。
【図39】本発明によるポート噴射式エンジンの燃料液膜分布とガス流速分布を示す排気側からシリンダ内を見た平面図。
【図40】本発明の実施例に示すピストンの平面図。
【図41】本発明の実施例に示すピストンの縦断面図。
【図42】本発明の実施例に示す燃料インジェクタの噴霧形状。
【図43】圧縮行程後期に燃料を噴射した場合の噴霧挙動とガス流動を示す縦断面図。
【図44】圧縮行程後期での気化燃料とガス流動を示す縦断面図。
【図45】本発明と従来技術による縦渦強さと吸入空気量の比較。
【符号の説明】
【0074】
1 吸気ポート
1C 吸気ポートの隔壁
1B 吸気ポートの凹部下面
1B′ 吸気ポートの直線部下面
1U 吸気ポートの凸部上面
1U′ 吸気ポートの直線部上面
2 排気ポート
2C 排気ポートの隔壁
3 シリンダ
3C 燃焼室
3h シリンダヘッド
4 点火プラグ
5 燃料インジェクタ
6 ピストン
6C ピストン冠面にキャビティ
6S ピストン冠面に設けた段差
6W ピストン冠面に設けたキャビティの側壁
9 吸気バルブ
10 排気バルブ
AX 吸気ポート中心軸
CC シリンダ中心軸
CL 対称面
CVY 対称面に平行な吸気バルブ中心軸
INT 吸気マニホールド
EXH 排気マニホールド
FV 気化燃料
H 噴霧高さ
LF 燃料液膜
SP 燃料噴霧
TP 吸気ポート断面の仕切り板
TU 縦渦
TVL 縦渦制御弁
W 噴霧幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気マニホールドから2本の吸気ポートに分かれる内燃機関の吸気通路を有する吸気装置において、前記吸気ポートの分岐開始位置から前記吸気ポートの出口までの断面が、
前記2本の吸気ポートが対向する面を底辺とした略二等辺三角形状であることを特徴とした内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
吸気マニホールドから2本の対称な吸気ポートに分かれる内燃機関の吸気通路の、吸気ポートの分岐開始位置から吸気ポート出口までのいずれかの断面位置において、
2本の吸気ポートの向かい合う面が対称面に対して平行であり、かつ、吸気ポートの曲率の外側面の接線と、吸気ポートの向かい合う面の接線との交角が90度よりも小さいことを特徴とした内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
吸気マニホールドから2本の対称な吸気ポートに分かれる内燃機関の吸気通路の、吸気ポートの分岐開始位置から吸気ポート出口までのいずれかの断面位置において、
片側吸気ポートの幅方向をX軸、高さ方向をY軸として、片側吸気ポートの幅方向の中点と高さ方向の中点を原点としたX−Y座標系において、第1象限のポート断面積をS1,第2象限のポート断面積をS2,第3象限のポート断面積をS3,第4象限のポート断面積をS4としたとき、S2+S3>S1+S4、かつ、S1≦S4であることを特徴とした内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
吸気マニホールドから2本の対称な吸気ポートに分かれる内燃機関の吸気通路の、吸気ポートの分岐開始位置から吸気ポート出口までのいずれかの断面位置において、
片側吸気ポートの幅方向をX軸、高さ方向をY軸として、片側吸気ポートの幅方向の中点と高さ方向の中点を原点としたX−Y座標系において、第1象限のポート断面積をS1,第2象限のポート断面積をS2,第3象限のポート断面積をS3,第4象限のポート断面積をS4とし、X軸とポート断面外側との交点をCxとしたとき、ポート最外側のX座標とCxが等しく、かつ、S2+S3>S1+S4であることを特徴とした内燃機関の吸気装置。
【請求項5】
吸気マニホールドから2本の対称な吸気ポートに分かれる内燃機関の吸気通路の、吸気ポートの分岐開始位置から吸気ポート出口までのいずれかの断面位置において、
片側吸気ポートの幅方向をX軸、高さ方向をY軸として、片側吸気ポートの幅方向の中点と高さ方向の中点を原点としたX−Y座標系において、吸気ポート断面の最大高さをCymaxとしたときに、X≧0において吸気ポート断面のY座標が常にY<Cymaxであることを特徴とした内燃機関の吸気装置。
【請求項6】
ポート内面の最下面の稜線が下に凸の曲率を持つことを特徴とした、請求項1から請求項5に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項7】
ポート内面の最下面の稜線が下に凸の曲率を持つ部分Bと、ポート内面の最下面の稜線が略直線から成る部分B′で構成され、BとB′の接合部におけるBの接線方向ベクトルV1が、吸気バルブリフト時のシリンダ中心側のバルブ開口部に向くことを特徴とした、請求項6に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項8】
ポート内面の最上面の稜線が上に凸の曲率を持つ部分Uと、ポート内面の最上面の稜線が略直線から成る部分U′で構成され、UとU′の接合部におけるUの接線方向ベクトルV2が、吸気バルブがフルリフト時の吸気バルブ中心よりもシリンダ中心側に向くことを特徴とした、請求項6に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項9】
ポート内面の最下面の稜線が下に凸の曲率を持つ部分Bと、ポート内面の最下面の稜線が略直線から成る部分B′で構成され、BとB′の接合部におけるBの接線方向ベクトルV1が、吸気バルブリフト時のシリンダ中心側のバルブ開口部に向き、
かつ、
ポート内面の最上面の稜線が上に凸の曲率を持つ部分Uと、ポート内面の最上面の稜線が略直線から成る部分U′で構成され、UとU′の接合部におけるUの接線方向ベクトルV2が、吸気バルブが最大リフト時の吸気バルブ中心よりもシリンダ中心側に向くことを特徴とした、請求項6に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項10】
ポート内面の下面の曲率半径Rbと上面の曲率半径RuがRb<Ruであることを特徴とした、請求項1から請求項5に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項11】
2つの吸気ポートの間に設けた燃料インジェクタによって燃焼室内に直接燃料を噴射する筒内直接噴射式内燃機関において、
請求項1から請求項10のいずれかに記載された吸気装置を用いて、
吸気バルブが最大リフト時においてバルブ中心軸CVYと吸気バルブ傘部の外周部との2つの交点をPv,Pv、噴霧点をPiとして、Pv−Pi−Pvによって定義される角度をα1としたときに、前記燃料インジェクタから噴射される噴霧の最外角度をα1以下とすることを特徴とした筒内直接噴射式内燃機関。
【請求項12】
吸気管に設けた燃料インジェクタによって吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射式内燃機関において、
請求項1から請求項10のいずれかに記載された吸気装置を用いて、
前記燃料インジェクタから噴射される噴霧が、吸気バルブ中心よりも対称面側に流量重心を有することを特徴としたポート噴射式内燃機関。
【請求項13】
燃料インジェクタから噴射される噴霧の高さが噴霧の幅よりも大きいことを特徴とした請求項12記載のポート噴射式内燃機関。
【請求項1】
吸気マニホールドから2本の吸気ポートに分かれる内燃機関の吸気通路を有する吸気装置において、前記吸気ポートの分岐開始位置から前記吸気ポートの出口までの断面が、
前記2本の吸気ポートが対向する面を底辺とした略二等辺三角形状であることを特徴とした内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
吸気マニホールドから2本の対称な吸気ポートに分かれる内燃機関の吸気通路の、吸気ポートの分岐開始位置から吸気ポート出口までのいずれかの断面位置において、
2本の吸気ポートの向かい合う面が対称面に対して平行であり、かつ、吸気ポートの曲率の外側面の接線と、吸気ポートの向かい合う面の接線との交角が90度よりも小さいことを特徴とした内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
吸気マニホールドから2本の対称な吸気ポートに分かれる内燃機関の吸気通路の、吸気ポートの分岐開始位置から吸気ポート出口までのいずれかの断面位置において、
片側吸気ポートの幅方向をX軸、高さ方向をY軸として、片側吸気ポートの幅方向の中点と高さ方向の中点を原点としたX−Y座標系において、第1象限のポート断面積をS1,第2象限のポート断面積をS2,第3象限のポート断面積をS3,第4象限のポート断面積をS4としたとき、S2+S3>S1+S4、かつ、S1≦S4であることを特徴とした内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
吸気マニホールドから2本の対称な吸気ポートに分かれる内燃機関の吸気通路の、吸気ポートの分岐開始位置から吸気ポート出口までのいずれかの断面位置において、
片側吸気ポートの幅方向をX軸、高さ方向をY軸として、片側吸気ポートの幅方向の中点と高さ方向の中点を原点としたX−Y座標系において、第1象限のポート断面積をS1,第2象限のポート断面積をS2,第3象限のポート断面積をS3,第4象限のポート断面積をS4とし、X軸とポート断面外側との交点をCxとしたとき、ポート最外側のX座標とCxが等しく、かつ、S2+S3>S1+S4であることを特徴とした内燃機関の吸気装置。
【請求項5】
吸気マニホールドから2本の対称な吸気ポートに分かれる内燃機関の吸気通路の、吸気ポートの分岐開始位置から吸気ポート出口までのいずれかの断面位置において、
片側吸気ポートの幅方向をX軸、高さ方向をY軸として、片側吸気ポートの幅方向の中点と高さ方向の中点を原点としたX−Y座標系において、吸気ポート断面の最大高さをCymaxとしたときに、X≧0において吸気ポート断面のY座標が常にY<Cymaxであることを特徴とした内燃機関の吸気装置。
【請求項6】
ポート内面の最下面の稜線が下に凸の曲率を持つことを特徴とした、請求項1から請求項5に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項7】
ポート内面の最下面の稜線が下に凸の曲率を持つ部分Bと、ポート内面の最下面の稜線が略直線から成る部分B′で構成され、BとB′の接合部におけるBの接線方向ベクトルV1が、吸気バルブリフト時のシリンダ中心側のバルブ開口部に向くことを特徴とした、請求項6に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項8】
ポート内面の最上面の稜線が上に凸の曲率を持つ部分Uと、ポート内面の最上面の稜線が略直線から成る部分U′で構成され、UとU′の接合部におけるUの接線方向ベクトルV2が、吸気バルブがフルリフト時の吸気バルブ中心よりもシリンダ中心側に向くことを特徴とした、請求項6に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項9】
ポート内面の最下面の稜線が下に凸の曲率を持つ部分Bと、ポート内面の最下面の稜線が略直線から成る部分B′で構成され、BとB′の接合部におけるBの接線方向ベクトルV1が、吸気バルブリフト時のシリンダ中心側のバルブ開口部に向き、
かつ、
ポート内面の最上面の稜線が上に凸の曲率を持つ部分Uと、ポート内面の最上面の稜線が略直線から成る部分U′で構成され、UとU′の接合部におけるUの接線方向ベクトルV2が、吸気バルブが最大リフト時の吸気バルブ中心よりもシリンダ中心側に向くことを特徴とした、請求項6に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項10】
ポート内面の下面の曲率半径Rbと上面の曲率半径RuがRb<Ruであることを特徴とした、請求項1から請求項5に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項11】
2つの吸気ポートの間に設けた燃料インジェクタによって燃焼室内に直接燃料を噴射する筒内直接噴射式内燃機関において、
請求項1から請求項10のいずれかに記載された吸気装置を用いて、
吸気バルブが最大リフト時においてバルブ中心軸CVYと吸気バルブ傘部の外周部との2つの交点をPv,Pv、噴霧点をPiとして、Pv−Pi−Pvによって定義される角度をα1としたときに、前記燃料インジェクタから噴射される噴霧の最外角度をα1以下とすることを特徴とした筒内直接噴射式内燃機関。
【請求項12】
吸気管に設けた燃料インジェクタによって吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射式内燃機関において、
請求項1から請求項10のいずれかに記載された吸気装置を用いて、
前記燃料インジェクタから噴射される噴霧が、吸気バルブ中心よりも対称面側に流量重心を有することを特徴としたポート噴射式内燃機関。
【請求項13】
燃料インジェクタから噴射される噴霧の高さが噴霧の幅よりも大きいことを特徴とした請求項12記載のポート噴射式内燃機関。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【公開番号】特開2010−90849(P2010−90849A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263374(P2008−263374)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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