説明

内燃機関における排気装置

【課題】各気筒からの排気ガスを集めた集合排気管1に,当該集合排気管内を流れる排気ガスに対する排気センサ3を設けて成る排気装置において,前記排気センサ3の検出精度を,製造コスト及び流れ抵抗のアップを招来することなく,向上する。
【解決手段】
前記集合排気管1のうち前記排気センサ3よりも上流側の部位に,内部への貫通孔4を穿設し,前記集合排気管内における排気ガスの流れを横切る方向に延びる構成にした棒状部材5を,前記貫通孔4から前記集合排気管1内に挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,内燃機関において,その各気筒からの排ガスを大気中に放出する排気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に,この種の排気装置においては,各気筒からの排気ガスを集めた集合排気管の途中に,排気ガス中の酸素濃度等のガス成分や,空燃比等を検出する排気センサを設けており,この排気センサには,排気ガスを,均一に混合した状態で,広い面積にわたって接触させることが,その高い検出精度を確保するために必要である。
【0003】
そこで,先行技術としての特許文献1,2及び3は,前記集合排気管における内壁面のうち前記排気センサの上流側の部位に,一枚ないし複数枚の整流板を設けることにより,排気ガスが,この整流板によって前記排気センサに向かうようにガイドすることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−159823号公報
【特許文献2】実開昭63−162917号公報
【特許文献3】特開2008−025387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし,前記した各先行技術によると,排気ガスを整流板にて排気センサに向かうようにガイドするので,排気ガスを均一に混合したうえで,排気センサに広い面積にわたって接触することができるものの,そのいずれも,前記整流板を,集合排気管を鋳造するときに,その内壁面に一体に形成するか,前記集合排気管の内壁面に溶接にて固着して成る構成であることにより,前記整流板を設けることに多大の手数がかかるから,製造コストの大幅なアップを招来するばかりか,前記整流板によって排気ガスの流れ抵抗が増大するという問題がある。
【0006】
また,整流板の構成であると,この整流板における排気センサに対する整流角度を,高い精度にしなければならないという問題もあった。
【0007】
本発明は,これらの問題を解消することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「内燃機関における各気筒からの排気ガスを集めた集合排気管に,当該集合排気管内の排気ガスに対する排気センサを設けて成る排気装置において,
前記集合排気管のうち前記排気センサよりも上流側の部位に,内部への貫通孔を穿設し,前記集合排気管内における排気ガスの流れを横切る方向に延びる構成にした棒状部材を,前記貫通孔から前記集合排気管内に挿入した。」
ことを特徴としている。
【0009】
また,請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記集合排気管のうち前記貫通孔を穿設する部分を,前記棒状部材の軸線と直角な平面にするか,又は直角に近似する平面にした取付け座面に形成し,この取付け座面に,前記棒状部材に設けた鍔部を接当して溶接した。」
ことを特徴としている。
【0010】
更にまた,請求項3は,
「前記請求項1又は2の記載において,前記棒状部材を,先細のテーパに構成した。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1によると,集合排気管の内部を流れる排気ガスには,棒状部材の箇所を通過するときに乱流が付与され,この乱流が付与されたのち,その下流における排気センサの箇所に至ることになるから,前記棒状部材の乱流形成により,排気ガスを,均一に混合したしたうえで,排気センサに広い面積にわたって接触することができる。
【0012】
この場合,前記棒状部材を,集合排気管の内部に,当該集合排気管の外側から挿入するという構成であることにより,部品点数が少なく,容易に製造できるから,前記先行技術に比べて,製造コストを大幅に低減できるとともに,排気ガスの流れ抵抗を,大幅に低減できる。
【0013】
その上,前記したように,棒状部材を集合排気管内に差し込むという構成であることにより,既存の内燃機関に対しても,簡単に適用できる。
【0014】
また,請求項2によると,前記した効果に加えて,前記集合排気管に対する棒状部材の取付けが,前記集合排気管の外側からの挿入と溶接によって,より簡単に,且つ,より強固にできる利点があるとともに,前記棒状部材の軸線と,排気ガスの流れ方向との間における角度を,所定値に正確に設定することができる。
【0015】
そして,請求項3によると,集合排気管内のうち流速が遅い箇所での乱流の形成を確保しながら,中心部の流速が速い部分における流れ抵抗の増加を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】集合排気管の縦断正面図である。
【図2】図1のII−II視断面図である。
【図3】図2を分解した状態を示す図である。
【図4】棒状部材の変形例を示す図である。
【図5】棒状部材の使用箇所を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明の実施の形態を,図1〜図5の図面について説明する。
【0018】
これらの図において,符号1は,図示しない内燃機関における各気筒からの排気ガスを集合して成る集合排気管を示す。
【0019】
この集合排気管1は,その上流側における排気ガス浄化装置2から下流に延びる構成であり,この集合排気管1のうち前記排気ガス浄化装置2の下流側の部位には,排気ガス中の酸素濃度等のガス成分や,空燃比等を検出する排気センサ3が,前記集合排気管1の内部に突出するように装着されている。
【0020】
前記集合排気管1のうち,前記排気センサ3より上流側で,且つ,前記排気ガス浄化装置2より下流側の部位には,当該集合排気管1の内部への貫通孔4を穿設している。
【0021】
また,図1〜図5において,符号5は,棒状部材を示し,この棒状部材5は,前記貫通孔4から前記集合排気管1内に,当該集合排気管1内における排気ガスの流れを横切る方向に延びるように差し込み挿入され,この状態で,前記集合排気管1に固着されている。
【0022】
なお,前記棒状部材5は,断面が丸形,多角形又は楕円形にした棒状体であり,断面を多角形にした場合には,以下に述べる乱流の形成に効果的であるが,断面を角のない丸形又は楕円形にした場合には,その外周面に煤等の固形物が付着することを低減できる。
【0023】
そして,前記棒状部材5の前記集合排気管1への取付けに際しては,前記集合排気管1のうち前記貫通孔4を穿設する部分を,前記棒状部材5の軸線と直角な平面にするか,又は直角に近似する平面にした取付け座面6に凹み形成し,この取付け座面6に,前記棒状部材5に一体に設けた鍔部7を接当し,この状態で,前記鍔部7を前記取付け座面6に対して,符号8で示すように,溶接するという構成を採用している。
【0024】
前記集合排気管1内に,棒状部材5を,当該棒状部材5が集合排気管1内における排気ガスの流れを横切る方向に延びるように差し込み挿入することにより,前記集合排気管1内のうち前記棒状部材5の下流側には,排気ガスの流れに乱流が発生して,この乱流が,これにより下流の排気センサ3に至ることになるから,この棒状部材5の乱流形成により,排気ガスを,均一に混合したうえで,排気センサ3に対して広い面積にわたって接触することができる。
【0025】
前記棒状部材5の集合排気管1への取付けに際しては,前記集合排気管1に,雌ねじ孔を有するナットを溶接等にて固着し,このナットに対して前記棒状部材5をねじ込むという構成を作用しても良いが,前記図示の実施の形態のように,前記集合排気管1のうち前記貫通孔4を穿設する部分を,前記棒状部材5の軸線と直角な平面にするか,又は直角に近似する平面にした取付け座面6に凹み形成し,この取付け座面6に,前記棒状部材5に設けた鍔部7を接当して溶接するという構成にした場合には,前記棒状部材5の取付けが,前記集合排気管1の外側からの挿入と溶接によって,より簡単に,且つ,より強固にできるとともに,前記棒状部材5の軸線と,排気ガスの流れ方向との間における角度を,所定値に正確に設定することができる。
【0026】
ところで,前記集合排気管1内における排気ガスの流速は,前記集合排気管1の内壁面に近い部位において遅く,中心部において速くなるという傾向にあるから,この集合排気管1内に挿入する前記棒状部材として,図4に示すように,先細のテーパに構成した棒状部材5′を使用することにより,流速が遅い箇所での乱流の形成を太径の部分で確保しながら,中心部における流れ抵抗の増加を,小径の部分で回避できる。
【0027】
また,前記実施の形態は,前記排気センサ3及び棒状部材5を,前記排気ガス浄化装置2の下流側における集合排気管1に設ける場合であったが,本発明は,これに限らず,前記排気センサ3及び棒状部材5を,前記排気ガス浄化装置2の上流側における集合排気管に設けるという構成にすることができる。
【0028】
また,前記棒状部材5,5′は,図5に示すように,前記集合排気管1のうち曲がり管1′の上流側に設けるか,下流側に設けることにより,曲がり管1′との関係において,乱流の形成を,前記棒状部材5,5′と,前記曲がり管1′とによって相乗的に促進できる。
【符号の説明】
【0029】
1 集合排気管
2 排気ガス浄化装置
3 排気センサ
4 貫通孔
5,5′ 棒状部材
6 取付け座面
7 鍔部
8 溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関における各気筒からの排気ガスを集めた集合排気管に,当該集合排気管内の排気ガスに対する排気センサを設けて成る排気装置において,
前記集合排気管のうち前記排気センサよりも上流側の部位に,内部への貫通孔を穿設し,前記集合排気管内における排気ガスの流れを横切る方向に延びる構成にした棒状部材を,前記貫通孔から前記集合排気管内に挿入したことを特徴とする内燃機関における排気装置。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記集合排気管のうち前記貫通孔を穿設する部分を,前記棒状部材の軸線と直角な平面にするか,又は直角に近似する平面にした取付け座面に形成し,この取付け座面に,前記棒状部材に設けた鍔部を接当して溶接したことを特徴とする内燃機関における排気装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2の記載において,前記棒状部材を,先細のテーパに構成したことを特徴とする内燃機関における排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−77615(P2012−77615A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220363(P2010−220363)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】