説明

内燃機関の冷却装置

【課題】 燃焼効率を十分に改善可能な内燃機関の冷却装置を提供すること。
【解決手段】 エンジンブロックを備えた内燃機関と、前記エンジンブロックの歪みを検出する歪みセンサと、前記歪みセンサにより検出された歪み量が所定値以下となるように、前記エンジンブロック内の冷却通路内に冷却水を循環制御する冷却手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の冷却システムとして特許文献1に記載の技術が知られている。この公報には、冷却水の温度を検出し、電動ウォーターポンプの作動を制御することで、冷却水を適正な温度とすることで、エンジンフリクションの低減を図り、燃焼効率を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−242550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、エンジンフリクションを低減するにはエンジンブロックを比較的高めの温度に設定したい。ところが、高温によりエンジンブロックが歪むことは回避する必要があることから、冷却水の上限温度設定については大きな安全代を持って設定する必要がある。よって、エンジンフリクションを更に低減する余地が残されていた。
本発明の目的とするところは、燃焼効率を十分に改善可能な内燃機関の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の内燃機関の冷却装置では、エンジンブロックを備えた内燃機関と、前記エンジンブロックの歪みを検出する歪みセンサと、前記歪みセンサにより検出された歪み量が所定値以下となるように、前記エンジンブロック内の冷却通路内に冷却水を循環制御する冷却手段と、を備えた。
【発明の効果】
【0006】
よって、エンジンフリクションを低減することで燃費効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の内燃機関の冷却装置のシステム図である。
【図2】実施例1の歪みセンサの構成を表す概略図である。
【図3】実施例1のホイートストンブリッジ回路を表す回路図である。
【図4】実施例1のひずみセンサとダミー抵抗の形状とシリコン基板の結晶方位との関係を示す図である。
【図5】実施例1の冷却制御処理を表すフローチャートである。
【図6】実施例1の冷却装置の制御処理を表すタイムチャートである。
【図7】図7は実施例2の内燃機関の冷却装置のシステム図である。
【図8】実施例2のエンジン始動制御処理を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施例1]
図1は実施例1の内燃機関の冷却装置のシステム図である。内燃機関であるエンジン1は、エンジンブロックとしてシリンダヘッド1とシリンダブロック2とから構成され、シリンダヘッド1内及びシリンダブロック2内には、それぞれ冷却水が循環するヘッド側循環流路43とブロック側循環流路42が形成されている。また、シリンダブロック3にはシリンダブロック3の歪み量を検出する歪みセンサ7を有する。エンジン1は、燃料と空気の混合気をシリンダ内に噴射し、点火プラグにより点火して所望の駆動力を得る。
【0009】
エンジン1には、冷却水を循環させる循環回路を有する。循環回路は、冷却水を吐出する電動ウォーターポンプ4と、温度に応じて開閉動作するサーモスタット5と、温水を走行風や電動ファンにより冷却するラジエータ6とを有する。電動ウォーターポンプ4は、吐出流路41と接続され、この吐出流路41はブロック側循環流路42とヘッド側循環流路43に接続され、これら循環流路42,43を通過した冷却水は排出流路44へと流出する。排出流路44には、サーモスタット5に接続されたバイパス流路45と、ラジエータ6に接続されたラジエータ側分岐流路46とが接続されている。また、ラジエータ6とサーモスタット5との間は、ラジエータ排出流路47が接続されている。
【0010】
サーモスタット5は、電動ウォーターポンプ4との間を接続する吸入流路48と、バイパス流路45と、ラジエータ側排出流路47とが接続され、冷却水の温度に応じてラジエータ排出流路47側から流れ込む流量と、バイパス流路45側から流れ込む流量とを調整し、吸入流路48に流れ込む流量比率を制御する電子制御バルブである。サーモスタット5の制御例として具体的には、冷却水の温度が高いときは、ラジエータ6による冷却が必要であることからラジエータ排出流路47側の流量を増やし、バイパス流路45の流量を減らす。一方、冷却水の温度が低いときは、ラジエータ排出流路47側の流量を減らし、バイパス流路45の流量を増やす。
【0011】
電動ウォーターポンプ4は、電動モータにより冷却水を吸入・吐出するポンプであり、冷却コントローラ10からの指令信号に応じて電動モータの回転数を制御する。例えば、冷却の必要性が高い場合に循環流量を増やすときは、電動モータの回転数を高回転とする制御を行い、冷却の必要性が低い場合に循環流量を減らすときは、電動モータの回転数を低回転とする制御を行う。
【0012】
冷却コントローラ10は、歪みセンサ7により検出された信号に基づいてシリンダブロック3の歪み量に変換するブロック歪み量算出部101と、歪み量の上限値(これ以上歪むと、エンジンの性能に影響を与えるおそれがある値)である所定値との偏差を算出する偏差算出部102と、算出された偏差に基づいて電動ウォーターポンプ4の駆動量を制御する冷却制御部103とを有する。冷却制御部103では、偏差が正と判断された場合には、電動ウォーターポンプ4の回転数を低く設定して流量を小さくし、偏差が負と判断された場合には、電動ウォーターポンプ4の回転数を高く設定して流量を大きくする。以下、これら冷却水の循環回路を備えた構成を冷却手段と記載する。
【0013】
〔歪みセンサの構成について〕
ここで、歪みセンサ7の詳細について説明する。図2は実施例1の歪みセンサの構成を表す概略図である。この歪みセンサ7は、同一の単結晶シリコン基板141上に、少なくともピエゾ抵抗効果を利用したひずみセンサ142とダミー抵抗142aを有するホイートストンブリッジ回路144、ひずみセンサアンプ群143、アナログ/デジタルコンバータ145、整流・検波・変復調回路部146、通信制御部147、接着部148、アンテナ149を備えている。尚、以下ではシリコン基板141と、シリコン基板141上に構成した薄膜群を総称してチップ140と記載する。アンテナ149は、電力を稼ぐために外部に大きなアンテナを形成しても良いが、ここではチップ140内に内蔵する場合を例に説明する。
【0014】
アンテナ149を内蔵している場合には、歪みセンサ7がチップ140に相当し、アンテナを外付けとした場合にはチップ140とアンテナ149を併せて歪みセンサ7とする。チップ140内にアンテナを内蔵しているため、外部接続用の電極パッドが不要となり、電極がチップ表面に露出することがなく、劣悪な環境下で用いる場合にも、電極パッドの腐食等が起こらず、信頼性が高い。歪みセンサ7は接着部148によりシリンダブロック3に接着され、シリコン基板141にひずみが伝達される。シリコン基板141全体にひずみが付加されると、シリコン基板141中のひずみセンサ142の抵抗が変化し、ひずみセンサアンプ群143、アナログ/デジタルコンバータ145を通してデジタル信号に変換され、アンテナ149からリーダに送信される。一方、リーダから送られた電力用高周波信号をアンテナ149で受信し、整流・検波・変復調回路部146で平滑化し、一定電圧の直流電力にしてチップ140内の各回路に電源として供給する。尚、実施例1ではアンテナに誘導電磁界を形成する電磁誘導を用いたもの、もしくはマイクロ波を受信、復調して用いたもの、光を用いてエネルギ供給及び交信を行なってもよい。尚、シリコン基板裏面をシリンダブロック3との接着面とする。尚、実施例1では、歪みセンサ7に対する電力供給やセンサ信号の送受信を無線により行なうこととしたが、有線により行なってもよい。この場合は配線等の制約が生じるものの、無線関係機器等を削減することができるため、外乱ノイズへの耐性を確保しやすくなる。
【0015】
歪みセンサ7は素子形成面に対向したシリコン基板裏面に接着部148が配されている。そして、シリンダブロック3のひずみがシリコン基板全体に接着部148を通してひずみを与えることによってひずみを計測する。すなわち、ひずみセンサ142とその処理回路が同一のシリコン基板中に高集積されるため、コンパクトな構成を達成している。このとき、シリコン基板の厚さを100μm以下にすることが望ましく、その場合にはシリンダブロック3のひずみの値とひずみセンサ142の位置でのひずみの値をほぼ一致させることができる。すなわち、シリコン基板141の厚さを100μm以下にすることによって測定精度を向上している。また、シリコン基板141の厚さを100μm以下にすると、シリンダブロック3との接着面が曲面を持っていたとしても、破壊することなく該曲面に沿って貼り付けることができる。さらに、シリコン基板141は絶縁膜に比べて熱伝導率が高いため、シリコン基板141の裏面に接着部148を配したことによってシリンダブロック3の温度がシリコン基板141の表面のひずみセンサ142に伝わりやすく、温度補正を行なった際にも温度不均一による精度の低下が発生しないという利点もある。また、シリンダブロック3に接着した状態で温度が上昇すると、チップ140とシリンダブロック3の間に大きな熱応力が発生する場合がある。しかしながら、この歪みセンサ7は、シリコン基板裏面に接着部148を配しており、シリコン基板裏面のほうがガラス等で構成されているチップ表面よりも接着強度や破壊強度が大きいため、シリンダブロック3の温度が上昇した場合でも、接着部148での破壊や剥離が起きず、信頼性ある測定ができる。接着部148はシリコンの裏面を荒らした構造を有しており、凹凸の大きさは粗さで1ミクロン以上と、チップ表面の凹凸に比べて大きくする。これにより凹凸によるアンカー効果が発生し、シリンダブロック3との接着性が更に向上する。
【0016】
また、同一のシリコン基板中にひずみセンサ142と、ひずみセンサアンプ群143及びアナログ/デジタルコンバータ145を形成し、更にこれらの回路をチップ内で配線した構造を持つため、ひずみセンサ142と他の部分をつなぐ配線の長さを非常に短くすることができ、これにより電磁誘導もしくはマイクロ波で供給された電力を用いて動作させた場合でも、ノイズの混入が非常に小さく出来る。誘導電流を電源に用いて回路の動作をさせる際にはセンサの消費電力の低減が必須であるが、この場合においてもセンサのデータがノイズに埋もれることなく正しい測定が可能となる。
【0017】
また、通常考えられるように、ひずみセンサのみを被測定物に接着し、他の回路はひずみを受けないように、センサとは別に形成した場合には、電磁誘導もしくはマイクロ波用の電波を受けた際にリード線からノイズが乗りやすく、特別な考慮なしでは実質はノイズに埋もれて測定は不可能となる。これはセンサとその他の回路が離れた場所に存在するために、電波照射時にセンサと他の回路で位相差が生じ、異なった電位となるためである。一方、実施例1では、ひずみ測定に関与する箇所は電波の広がりに対してほぼ点であるとみなせることから、位相のずれがなく、ノイズの混入が非常に小さく出来るため、正しい測定が可能となる。
【0018】
更に、実施例1では、ひずみセンサ142とひずみセンサアンプ群143が隣に形成され、さらにひずみセンサアンプ群143とアナログ/デジタルコンバータ145が隣に形成されている。ひずみセンサ142とひずみセンサアンプ群143、及びひずみセンサアンプ群143とアナログ・デジタルコンバータ145が整流・検波・変復調回路部146、通信制御部147に比べて近距離に配置されているため、配線長さが短く、電波照射時にもノイズが混入しにくいという利点がある。
【0019】
図3はホイートストンブリッジ回路を表す回路図である。ホイートストンブリッジ回路144において、ひずみセンサ142はシリコン基板141中に局所的にP型の不純物層を拡散して形成され、その長手方向は<110>方向とする。またダミー抵抗142aは同様にシリコン基板中に局所的にP型の不純物層を拡散して形成され、図2に示すようにV字型とし、そのV字型を形成する直線部分の長手方向は<100>となるようにする。さらにひずみセンサ142とダミー抵抗142aの抵抗値はほぼ同じ値となるように形成する。また、ダミー抵抗142aはV字型をしているが、V字を形成する二つの直線部分の長さが等しくなるように折れ曲がるようにする。
【0020】
図4はひずみセンサとダミー抵抗の形状とシリコン基板の結晶方位との関係を示す図である。ひずみセンサ142をP型不純物拡散層で形成し、<110>方向を長手とすることで、長手方向の応力感度が大きく出来る。また、ダミー抵抗142aをP型不純物拡散層で形成し、長手方向を<100>とすることで垂直応力に対する感度を打ち消すことができるので、更にダミー抵抗142aの感度を低下させることができる。
【0021】
このように、単結晶シリコン基板の(001)面に、互いに対向する2辺に設けられた二つのひずみセンサ142及び他の互いに対向2辺に設けられた二つのダミー抵抗142aからなる4辺のホイートストンブリッジ回路144を有し、ひずみセンサ142及びダミー抵抗142aをP型不純物拡散層で形成し、ひずみセンサ142の長手方向は<110>方向とし、ダミー抵抗142aはV字状をなし且つ当該V字を形成する直線部分の長手方向が<100>方向となるように形成したことで、ノイズの混入が非常に小さく、正しい測定ができる。
【0022】
尚、このセンサのひずみセンサ142とダミー抵抗142aの組み合わせと、各センサ及び抵抗の長手方向の関係は以下のように、
1)ひずみセンサをN型不純物拡散層で<100>方向を長手とし、ダミー抵抗をP型不純物拡散層で<100>方向を長手とし、二つのひずみセンサ及び二つのダミー抵抗が平行配置されているもの
2)ひずみセンサをN型不純物拡散層で<100>方向を長手とし、ダミー抵抗をN型不純物拡散層で、ダミー抵抗はV字形状でV字を形成する直線部分の長手方向が<110>方向とされているもの
3)ひずみセンサをP型不純物拡散層で、ダミー抵抗をN型不純物拡散層で形成し、ひずみセンサ及びダミー抵抗をともに<110>方向を長手とするように形成し、かつ、二つのひずみセンサ及び二つのダミー抵抗が平行配置されているもの
の組み合わせのいずれかであってもよい。
【0023】
(冷却制御処理)
次に、上記歪みセンサ7を用いた内燃機関の冷却制御処理について説明する。図5は実施例1の冷却制御処理を表すフローチャートである。
【0024】
ステップS1では、歪みセンサ7によるエンジン歪み量を算出する。
ステップS2では、歪み量が上限値より大きいか否か、すなわち偏差が正か否かを判断し、偏差が正のときは歪み量が上限値を超えていないと判断してステップS3に進み、偏差が負のときは歪み量が上限値を超えたと判断してステップS4に進む。
ステップS3では、冷却装置の操作量を小さくする。具体的には、電動ウォーターポンプ4の回転数を低くする。
ステップS4では、冷却装置の操作量を大きくする。具体的には、電動ウォーターポンプ4の回転数を高くする。このとき、電動ウォーターポンプ4の回転数を達成可能な最大回転数に設定することで、急速に冷却することができるため、応答性が良好な観点からも、よりエンジンブロックの温度を高い状態とすることができる。
【0025】
図6は実施例1の冷却装置の制御処理を表すタイムチャートである。尚、図6(a)は冷却水温度に基づいて制御した比較例であり、図6(b)は実施例1の歪み量に基づいて制御した場合を示す。図6(a)に示す比較例のように、冷却水温度に基づいて制御した場合、シリンダブロック3の温度と冷却水温度との相違や応答遅れが生じるため、これらを考慮した余裕代を設定する必要がある。よって、目標水温としては低めに設定せざるを得ず、十分にエンジンブロックの温度が低めに維持されるため、エンジンフリクションの低減も図りにくい。
【0026】
これに対し、図6(b)に示す実施例1では、歪み量を直接的に検知し、それに基づいて冷却手段の流量を制御するため、シリンダブロックと冷却水との間の熱伝達の応答遅れ等を考慮する必要がなく、比較的高い冷却水温度を保つことができる。これにより、エンジンブロックの温度を高めに維持することができ、エンジンフリクションの低減を図ることができる。
【0027】
以上説明したように、実施例1にあっては下記の作用効果を得ることができる。
(1)シリンダブロック3を備えたエンジン1(内燃機関)と、シリンダブロック3の歪みを検出する歪みセンサ7と、歪みセンサ7により検出された歪み量が所定値以下となるように、エンジンブロック内の冷却通路内に冷却水を循環制御する冷却手段と、を備えた。
よって、冷却水温度等に基づく制御に比べて、より直接的にエンジンブロックの状態を検出しつつ制御することができる。これにより、エンジンブロックの温度を高く維持することが可能となり、エンジンフリクションを低減することで燃費効率を改善することができる。
【0028】
(2)冷却手段は、歪み量が所定値に到達するまで、冷却水の温度が上昇するように循環制御する。言い換えると、歪み量が所定値に到達するまで、電動ウォーターポンプ4の操作量を小さくする。これにより、積極的にエンジンブロックの温度を高めに維持することができ、エンジンフリクションを低減することができる。
【0029】
(3)前記冷却手段は、前記歪み量が所定値に到達したときは、前記冷却水の温度を最大速度で降下させる。具体的には、電動ウォーターポンプ4の回転数を達成可能な最大回転数に設定する。
これにより、急速に冷却することができるため、応答性が良好な観点からも、よりエンジンブロックの温度を高い状態とすることができる。
【0030】
(4)歪みセンサ7は、単結晶シリコン基板の(001)面に、互いに対向する2辺に設けられた二つのひずみセンサ及び他の互いに対向2辺に設けられた二つのダミー抵抗からなる4辺のホイートストンブリッジ回路と、該ホイートストンブリッジ回路からの信号を増幅してデジタル信号に変換する変換回路と、該デジタル信号と前記シリコン基板の外部に電送するための電送回路と、前記シリコン基板の外部から受けた振動等に基づいて各回路に電源を供給する電源回路と、を有するセンサである。
よって、非常にコンパクトな構成でありながら、極めて高精度な歪み量を検出することができ、エンジンブロックの歪みを精度良く検出することができる。
【0031】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図7は実施例2の内燃機関の冷却装置のシステム図である。実施例1では、シリンダブロック3側にのみ歪みセンサ7を装着して電動ウォーターポンプ4の作動を制御した。これに対し、実施例2では、シリンダヘッド2側にも歪みセンサ8を設け、またブロック側循環流路42と排出流路44との間に電子制御式の電制T/S9を備えた点が異なる。この電制T/S9は、全開と全閉の2位置バルブであり、全開時には、電動ウォーターポンプ4から吐出された冷却液がブロック側循環流路42内に流入することでシリンダブロック3を冷却可能とし、全閉時には、ブロック側循環流路42の流通が阻害されることから冷却液による冷却を行なわない構成とされている。
【0032】
また、冷却コントローラ10内には、シリンダブロック3の歪み量の上限値を表す歪み量第1所定値と同様、シリンダヘッド2の歪み量の上限値を表す歪み量第2所定値が設定されている。また、歪みセンサ8により検出された信号に基づいてシリンダヘッド2の歪み量に変換するブロック歪み量算出部1011と、歪み量の上限値(これ以上歪むと、エンジンの性能に影響を与えるおそれがある値)である第2所定値との偏差を算出する偏差算出部1021とを有する。
【0033】
(冷却制御処理)
次に、上記歪みセンサ7,8を用いた内燃機関の冷却制御処理について説明する。図8は実施例2の冷却制御処理を表すフローチャートである。
【0034】
ステップS21では、歪みセンサ7,8によるシリンダヘッド歪み量及びシリンダブロック歪み量を算出する。
ステップS22では、シリンダヘッド歪み量が上限値より大きいか否か、すなわち偏差が正か否かを判断し、偏差が正のときはシリンダヘッド歪み量が上限値を超えていないと判断してステップS23に進み、偏差が負のときはシリンダヘッド歪み量が上限値を超えたと判断してステップS25に進む。
ステップS23では、冷却装置の操作量を小さくする。具体的には、電動ウォーターポンプ4の回転数を低くする。
ステップS24では、電制T/S9を全閉状態とする。これにより、シリンダヘッド2及びシリンダブロック3の両方の昇温が継続する。
【0035】
ステップS25では、シリンダブロック歪み量が上限値より大きいか否か、すなわち偏差が正か否かを判断し、偏差が正のときはシリンダブロック歪み量が上限値を超えていないと判断してステップS26に進み、偏差が負のときはシリンダブロック歪み量が上限値を超えたと判断してステップS28に進む。
ステップS26では、冷却装置の操作量をエンジン発熱量にあわせた流量に設定する。具体的には、電動ウォーターポンプ4の回転数を例えばシリンダヘッド歪み量に応じて設定する。尚、冷却水の温度を検出する温度センサ等を設け、この温度に応じて回転数を制御してもよい。
ステップS27では、電制T/S9を全閉状態とする。これにより、シリンダヘッド2のみ冷却水が循環されることで、シリンダヘッド2は冷却が進み、シリンダブロック3は昇温が継続する。
ステップS28では、冷却装置の操作量を最大にする。具体的には電動ウォーターポンプ4の回転数を最大値に設定する。
ステップS29では、電制T/S9を全開状態とする。これにより、シリンダヘッド2及びシリンダブロック3の両方の冷却が行なわれる。
【0036】
このように、シリンダヘッド2とシリンダブロック3のそれぞれに歪みセンサ7,8を備え、それぞれの歪み量に応じて冷却水の循環流量を制御することで、より決め細やかなエンジンブロックの温度管理を達成することができ、更にエンジンフリクションを低減することができる。
【0037】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、具体的構成は上記に限定されない。実施例では冷却装置の循環流量を制御することで昇温や冷却を制御し、これによりエンジンブロック温度を制御したが、例えば、冷却を促進したい場合には、エンジンに対しトルクダウン指令を行なって発熱を抑制してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 エンジン
2 シリンダヘッド
3 シリンダブロック
4 電動ウォーターポンプ
9 電制T/S
10 冷却コントローラ
140 チップ
141 シリコン基板
142 ひずみセンサ
142a ダミー抵抗
143 センサアンプ群
144 ホイートストンブリッジ回路
145 アナログ・デジタルコンバータ
146 整流・検波・変復調回路部
147 通信制御部
148 接着部
149 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンブロックを備えた内燃機関と、
前記エンジンブロックの歪みを検出する歪みセンサと、
前記歪みセンサにより検出された歪み量が所定値以下となるように、前記エンジンブロック内の冷却通路内に冷却水を循環制御する冷却手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記冷却手段は、前記歪み量が所定値に到達するまで、前記冷却水の温度が上昇するように循環制御することを特徴とする内燃機関の冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記冷却手段は、前記歪み量が所定値に到達したときは、前記冷却水の温度を最大速度で降下させることを特徴とする内燃機関の冷却装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記センサは、単結晶シリコン基板の(001)面に、互いに対向する2辺に設けられた二つのひずみセンサ及び他の互いに対向2辺に設けられた二つのダミー抵抗からなる4辺のホイートストンブリッジ回路と、該ホイートストンブリッジ回路からの信号を増幅してデジタル信号に変換する変換回路と、該デジタル信号と前記シリコン基板の外部に電送するための電送回路と、前記シリコン基板の外部から受けた振動等に基づいて各回路に電源を供給する電源回路と、を有するセンサであることを特徴とする内燃機関の冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−72285(P2013−72285A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209526(P2011−209526)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】