説明

内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物及び吸気系部品

【課題】高強度・低比重化を維持したまま、燃焼残渣を低減し、音響特性を改良する内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物及び吸気系部品を提供する。
【解決手段】下記成分(1),(2)及び(3)を含む樹脂組成物であって、この樹脂組成物からなる測定片の肉厚と共振周波数との関係が、下記式の関係を満たす内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物。
[成分]
(1)ポリプロピレン系樹脂: 67〜89重量%
(2)酸変性ポリプロピレン系樹脂: 1〜3重量%
(3)炭素繊維及び黒鉛粉末: 10〜30重量%
[肉厚と共振周波数と関係]
共振周波数(Hz) ≧ (98.5×肉厚(mm))+15

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物及びそれからなる吸気系部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関の吸気系部品には、リサイクル性能に優れるポリプロピレン系樹脂が使われている。このとき、内燃機関の吸気系部品の高温時の強度や剛性を補うため、また、吸気時に内部で発生する騒音を外部に伝えにくくするため、即ちイナータンス性の改良のため(イナータンス性は部品中の波動の伝わり難さを示す指標である)、ポリプロピレン系樹脂にタルク等の無機フィラーを添加している。無機フィラーの添加量を増加させることにより、これらの特性を改善することができる(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、フィラーを非常に多く配合すると、成形時の流動加工性低下、充填不足の問題等の問題があった。
特に、近年の自動車技術においては材料面からの軽量化が求められおり、吸気系部品においても比重が大きいフィラー量を増やすと部品の重量が増えるために、フィラー量を増やすことはできなかった。
【0004】
また、サーマルリサイクル(燃焼によるエネルギー回収)の面からも、燃焼残渣を低減する技術が求められており、この点からも無機フィラー量を増やすことができなかった。
【0005】
通常使われているタルクと比較しアスペクト比の大きなガラス繊維を用いることで、より少量で剛性の改質効果が得られる。しかし、繊維状のフィラーを用いると成形時に反り変形が発生する。このため、板状フィラーであるマイカを使用して、反り変形を抑え、より少ないフィラー量で同等以上の剛性を得ることが提案されている。
【0006】
また、燃焼残渣を減らすために、フィラーとして黒鉛粉末や炭素繊維を使用する例もある。黒鉛単体をフィラーとして使用する例もあるが(例えば、特許文献2)、実際の部品にするためには強度が不足しており、また、炭素繊維単体では成形時に反り変形が発生するため、マイカ等の無機成分を適量混合している。
【0007】
一方、炭素フィラーによる内部損失特定の改良について記載はあるが(例えば、特許文献3)、黒鉛の見掛け密度と共振周波数との関係については知られていない。
【0008】
【特許文献1】特開2005−023164号公報
【特許文献2】特開平01−319549号公報
【特許文献3】特開平02−058552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、リサイクル性能に優れるポリプロピレン樹脂を用い、無機フィラー系と比較し、高強度・高剛性を維持したまま、燃焼残渣を増やさずに反り発生を抑え、かつ音響特性を改善する樹脂が求められていた。
本発明の目的は、高強度・低比重化を維持したまま、燃焼残渣を低減し、音響特性を改良する内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物及び吸気系部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、炭素繊維及び黒鉛粉末を含む樹脂組成物において、組成物からなる測定片の肉厚と共振周波数が特定の関係を満たすものが、上記の目的を達成できること、さらに、黒鉛粉末の形状に着目し、粒径・見掛け密度(薄さ)の最適化を行うことで、上記の目的を達成できる樹脂組成物を見出した。
本発明によれば、以下の内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物等が提供される。
1.下記成分(1),(2)及び(3)を含む樹脂組成物であって、この樹脂組成物からなる測定片の肉厚と共振周波数との関係が、下記式の関係を満たす内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物。
[成分]
(1)ポリプロピレン系樹脂: 67〜89重量%
(2)酸変性ポリプロピレン系樹脂: 1〜3重量%
(3)炭素繊維及び黒鉛粉末: 10〜30重量%
[肉厚と共振周波数と関係]
共振周波数(Hz) ≧ (98.5×肉厚(mm))+15
2.下記成分(i),(ii)及び(iii)を含む内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物。
[成分]
(i)メルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)が5〜70g/10分のポリプロピレン系樹脂: 67〜89重量%
(ii)酸変性ポリプロピレン系樹脂: 1〜3重量%
(iii)繊維径(D1)が5μm<D1<10μmの炭素繊維、及び平均粒径(D2)が5μm≦D2≦15μmで見掛け密度(ρ)が0.02g/cm≦ρ≦0.1g/cmの黒鉛粉末: 10〜30重量%
3.前記吸気系部品が、
内燃機関の吸気通路を構成するエアダクト、
内燃機関の吸気通路に設けられ、吸気騒音を低減するレゾネータ若しくはサイドブランチ、又は
内燃機関の吸気通路中のダストを除去するエアクリーナ
である1又は2記載の内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物。
4.JISK−7171に準拠して測定される、曲げ強度が80MPa以上、曲げ弾性率が3800MPa以上であり、かつ
燃焼残渣測定試験において前記炭素繊維及び黒鉛粉末由来の燃焼残渣が3%以下である1〜3いずれか記載の内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物。
5.1〜4いずれか記載の樹脂組成物からなる内燃機関の吸気系部品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高強度・低比重化を維持したまま、燃焼残渣を低減し、音響特性を改良する内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物及び吸気系部品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物は、下記成分(1),(2)及び(3)を含む。
(1)ポリプロピレン系樹脂: 67〜89重量%
(2)酸変性ポリプロピレン系樹脂: 1〜3重量%
(3)炭素繊維及び黒鉛粉末: 10〜30重量%
【0013】
さらに、本発明の樹脂組成物からなる測定片の肉厚と共振周波数との関係が、下記式の関係を満たす。
共振周波数(Hz) ≧ (98.5×肉厚(mm))+15
好ましくは下記式の関係を満たす。
共振周波数(Hz) ≧ (98.5×肉厚(mm))+25
共振周波数は高いほど好ましい。共振周波数は、通常肉厚により変化し、肉厚が厚いほど高くなる。上記の式を満たす組成物は、比較的薄い肉厚で、高い共振周波数を示すため、製品として薄肉化が可能となり、製品重量を低減できる。
【0014】
また、本発明の内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物は、下記成分(i),(ii)及び(iii)を含む。
(i)メルト・フロー・レート(温度230℃、荷重2.16kg)が5〜70g/10分のポリプロピレン系樹脂: 67〜89重量%
(ii)酸変性ポリプロピレン系樹脂: 1〜3重量%
(iii)繊維径(D1)が5μm<D1<10μmの炭素繊維、及び平均粒径(D2)が5μm≦D2≦15μmで見掛け密度(ρ)が0.02g/cm≦ρ≦0.1g/cmの黒鉛粉末: 10〜30重量%
【0015】
以下、本発明の組成物の各成分について説明する。
1.ポリプロピレン系樹脂
本発明の組成物において、ポリプロピレン系樹脂はマトリックス樹脂である。ポリプロピレン系樹脂はホモポリマー、ブロックコポリマー又はこれらの混合物でもよく、具体例としては、例えば、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
本発明の組成物に用いるポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR)(温度230℃、荷重2.16kg、JIS K7210に準拠して測定)が、好ましくは5〜70g/10分であり、より好ましくは10〜70g/10分であり、特に好ましくは20〜60g/10分である。MFRが5g/10分未満では、成形が困難な場合があり、70g/10分を超えると、衝撃強度が低下する場合がある。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂は、市販品を用いることができ、その具体例としては、例えば、J−2003GP(出光石油化学社製、MFR=20g/10分)、J−3000GP(出光石油化学社製、MFR=30g/10分)、Y−6005GM(出光石油化学社製、MFR=60g/10分)等が挙げられる。
【0017】
本発明の組成物における、ポリプロピレン系樹脂の配合量は、67〜89重量%であり、好ましくは77〜89重量%である。ポリプロピレン系樹脂の配合量が67重量%未満では、成形性が悪く、89重量%を超えると、剛性、耐熱性が不十分となる。
【0018】
2.酸変性ポリプロピレン系樹脂
酸変性ポリプロピレン系樹脂を、本発明の組成物に添加することにより、ポリプロピレン系樹脂と炭素繊維との界面強度を向上させることができる。
【0019】
酸変性ポリプロピレン系樹脂のポリプロピレン系樹脂は、上記のポリプロピレン系樹脂と同様である。酸変性ポリプロピレン系樹脂の酸基としては、マレイン酸基、フマル酸基、アクリル酸基等のカルボン酸が例示され、マレイン酸基が好ましい。酸付加量は通常0.1〜10重量%程度である。
酸変性ポリプロピレン系樹脂は、市販品を用いてもよく、その具体例としては、例えば、ポリボンド3200、ポリボンド3150(白石カルシウム社製、マレイン酸変性ポリプロピレン)、ユーメックス1001、ユーメックス1010、ユーメックス1003、ユーメックス1008(三洋化成工業社製、マレイン酸変性ポリプロピレン)、アドマーQE800、アドマーQE810(三井化学社製、マレイン酸変性ポリプロピレン)、トーヨータックH−1000P(東洋化成工業社製、マレイン酸変性ポリプロピレン)等が挙げられる。
【0020】
本発明の組成物における、酸変性ポリプロピレン系樹脂の配合量は、1〜3重量%である。酸変性ポリプロピレン系樹脂の配合量が1重量%未満では、曲げ強度及び耐熱性(熱変形温度)が低下し、3重量%を超えると、製造コストが高くなり現実的でない。
【0021】
3.炭素繊維
炭素繊維は、本発明の組成物に、高剛性を付与し、組成物から得られる成形体のいわゆる補強強化成分であると同時に、本発明の組成物が低密度、低灰分となり、音響特性が改善されるために必要な成分である。
【0022】
本発明の組成物で用いる炭素繊維の種類は特に制限されず、PAN系(HT、IM、HM)、ピッチ系(GP、HM)、レーヨン系のいずれも使用可能であるが、PAN系が好ましい。
【0023】
本発明の組成物で用いる炭素繊維は、繊維径(D1)が5μm<D1<10μmであることが好ましい。繊維径が5μm以下であると、繊維が折れやすく、強度が低下する場合があるだけでなく、工業的に製造コストが高くなり実用的でなくなる恐れがある。10μm以上であると繊維のアスペクト比が小さくなりコストが高くなり実用的でなくなる恐れがある。
炭素繊維の繊維径は、電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【0024】
上記範囲の繊維径を有する炭素繊維を製造する方法としては、例えば、特開2004−11030号公報、特開2001−214334号公報、特開平5−261792号公報、新・炭素材料入門(炭素材料学会編、(株)リアライズ社、1996年発行)等に記載の方法が挙げられる。
【0025】
炭素繊維としては、上記繊維径を有するものであれば特に制限なく使用することができ、市販品を用いてもよく、その具体例としては、例えば、ベスファイト(登録商標)・チョップドファイバーHTA−C6−S、HTA−C6−SR、HTA−C6−SRS、HTA−C6−N、HTA−C6−NR、HTA−C6−NRS、HTA−C6−US、HTA−C6−UEL1、HTA−C6−UH、HTA−C6−OW、HTA−C6−E、MC HTA−C6−US;ベスファイト(登録商標)・フィラメントHTA−W05K、HTA−W1K、HTA−3K、HTA−6K、HTA−12K、HTA−24K、UT500−6K、UT500−12K、UT−500−24K、UT800−24K、IM400−3K、IM400−6K、IM400−12K、IM600−6K、IM600−12K、IM600−24K、LM16−12K、HM35−12K、TM35−6K、UM40−12K、UM40−24K、UM46−12K、UM55−12K、UM63−12K、UM68−12K(以上、東邦テナックス社製);パイロフィル(登録商標)チョップドファイバーTR066、TR066A、TR068、TR06U、TR06NE、TR06G(以上、三菱レイヨン社製);トレカチョップドファイバーT008A−003、T010−003(以上、東レ社製)等が挙げられる。
【0026】
また、炭素繊維は、表面処理、特に電解処理されたものが好ましい。表面処理剤としては、例えば、エポキシ系サイジング剤、ウレタン系サイジング剤、ナイロン系サイジング剤、オレフィン系サイジング剤等が挙げられる。表面処理することによって、引張り強度、曲げ強度が向上するという利点が得られる。上記表面処理された炭素繊維は、市販品を用いてもよく、その具体例としては、例えば、東邦テナックス社製の、ベスファイト(登録商標)・チョップドファイバーHTA−C6−SRS、HTA−C6−S、HTA−C6−SR、HTA−C6−E(以上、エポキシ系サイジング剤で処理されたもの)、HTA−C6−N、HTA−C6−NR、HTA−C6−NRS(以上、ナイロン系サイジング剤で処理されたもの)、HTA−C6−US、HTA−C6−UEL1、HTA−C6−UH、MC HTA−C6−US(以上、ウレタン系サイジング剤で処理されたもの);三菱レイヨン社製の、パイロフィル(登録商標)チョップドファイバーTR066、TR066A(以上、エポキシ系サイジング剤で処理されたもの)、TR068(エポキシ−ウレタン系サイジング剤で処理されたもの)、TR06U(ウレタン系サイジング剤で処理されたもの)、TR06NE(ポリアミド系サイジング剤で処理されたもの)、TR06G(水溶性サイズされたもの)等が挙げられる。
【0027】
4.黒鉛粉末
本発明の組成物において、黒鉛粉末は、本発明の組成物から得られる成形体の反り・変形を防止し、音響特性を改善する機能を有する成分である。
【0028】
本発明の組成物で用いる黒鉛粉末としては、超薄片化黒鉛が好ましい。
超薄片化黒鉛は、特殊な粉砕製造工程により一般の黒鉛よりも薄片化したもので、通常平均粒径10μm以下、見掛け密度0.1g/cm未満である。
【0029】
本発明の組成物で用いる黒鉛粉末は、好ましくは平均粒径(D2)が5μm≦D2≦15μmである。黒鉛粉末の粒径は小さい方が共振周波数は高くなるが、5μm未満では、これを含む組成物から得られる成形体の反り・変形を防止する効果が十分発現せず、15μmを超えると、衝撃強度が低下し易い場合がある。黒鉛粉末の平均粒径の測定は、JIS R 1629に準じ、レーザー回折散乱法で測定する。
【0030】
さらに、黒鉛粉末は、好ましくは見掛け密度(ρ)が0.02g/cm≦ρ≦0.1g/cmである。黒鉛粉末の見掛け密度が0.02g/cm未満では、これを含む組成物から得られる成形体の反り・変形を防止する効果が十分発現せず、0.1g/cmを超えると、衝撃強度が低下し易い場合がある。黒鉛粉末の見掛け密度の測定は、JIS K5101に準拠し静置法で測定する。
【0031】
黒鉛粉末としては、市販品を用いることができ、その具体例としては、例えば、UP−10(日本黒鉛工業社製)、GR−15(日本黒鉛工業社製)等が挙げられる。
【0032】
本発明の組成物における、炭素繊維と黒鉛粉末の配合量は合わせて、10〜30重量%であり、好ましくは10〜20重量%である。配合量が10重量%未満では、反り低減効果が期待できず、30重量%を超えると、組成物又は組成物から得られる成形体自体の密度が大きくなり(重くなる)、炭素繊維を用いる利点(低密度)が損なわれる。
炭素繊維(Wcf)に対する黒鉛粉末(Wg)の質量比(Wg/Wcf)は、好ましくは1〜10である。
【0033】
本発明の組成物から得られる成形体の、JISK−7171に準拠して測定される曲げ強度は好ましくは80MPa以上であり、曲げ弾性率は好ましくは3800MPa以上である。
また、本発明の組成物から得られる成形体の燃焼残渣測定試験における、炭素繊維及び黒鉛粉末由来の燃焼残渣は、好ましくは3%以下である。
【0034】
本発明の組成物は、通常、次のようにして製造することができる。
原料を混合(ドライブレンド)後、押出機で溶融混練することで製造することができる。押出機は、単軸押出機、二軸押出機等の公知のものが使用でき、炭素繊維は、他の原料とともに混合投入しても、別途サイドフィードから投入してもよい。その他、特開昭62−60625号公報、特開平10−264152号公報、国際公開第WO97/19805号公報等に記載の方法を用いることもできる。
【0035】
本発明の組成物には、上記成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲内において、種々の添加剤を配合することができる。配合することができる添加剤としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、金属不活性剤、カーボンブラック、増核剤、離型剤、滑剤、耐電防止剤等が挙げられる。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、内燃機関の吸気系部品の原料として好適に使用できる。吸気系部品として、内燃機関の吸気通路を構成するエアダクト、内燃機関の吸気通路に設けられ、吸気騒音を低減するレゾネータ若しくはサイドブランチ、内燃機関の吸気通路中のダストを除去するエアクリーナ等が例示される。
本発明の樹脂組成物から得られる内燃機関の吸気系部品は、十分な強度と寸法安定性を有し、特にイナータンス特性に優れる。また、フィラーに炭素繊維、黒鉛粉末を使用しているため、燃焼残渣がほとんど無く、サーマルリサイクル性に優れる(燃焼による熱エネルギーでの回収に優れる)。
【実施例】
【0037】
実施例及び比較例の組成物に使用した成分は以下の通りである。
1.ポリプロピレン系樹脂
ポリプロピレン(PP):J−2003GP(出光興産社製、MFR=20g/10分)
【0038】
2.酸変性ポリプロピレン系樹脂
マレイン酸変性ポリプロピレン(MAH−PP):ポリボンド3200(白石カルシウム社製)
【0039】
3.炭素繊維
炭素繊維:HTA−C6−SRS(東邦テナックス社製;繊維径7μm、エポキシ系サイジング剤で処理)
【0040】
4.黒鉛粉末
UP−10(日本黒鉛工業社製、人造黒鉛粉末、平均粒径10μm、見掛け密度0.04)
PAG5(日本黒鉛工業社製、人造黒鉛粉末、平均粒径35μm、見掛け密度0.30)
PAG KS(日本黒鉛工業社製、土状黒鉛粉末、平均粒径9μm、見掛け密度0.12 )
GR−15(日本黒鉛工業社製、薄片化黒鉛、平均粒径15μm、見掛け密度0.10)
【0041】
5.その他
(1)ガラス繊維(GF): MAFT170A (旭グラスファイバー社製、繊維径13μm)
(2)マイカ: 80目(富士タルク製、平均粒径170μm)
(3)タルク: JM209(浅田製粉社製、平均粒径4.5μm)
【0042】
実施例及び比較例の組成物の特性の測定方法は以下の通りである。
1.粒径
JIS R1629に準拠し、レーザー回析散乱法で測定した。
【0043】
2.見掛け密度
JIS K5101に準拠し静置法で測定した。
【0044】
3.曲げ強度
実施例又は比較例で得られた組成物を射出成形して、80mm×10mm×4mmのサンプルを製造した。
このサンプルについて、JISK−7171に準拠して曲げ強度を測定した。
【0045】
4.曲げ弾性率
曲げ強度測定用サンプルについて、JISK−7171に準拠して曲げ弾性率を測定した。
【0046】
5.共振周波数
実施例又は比較例で得られた組成物から縦124mm、横12.7mm、肉厚3mmの測定片を製造した。この測定片について、中央加振法(JIS G0602準拠)にて共振周波数を測定した。
【0047】
6.灰分量(燃焼残渣)
実施例又は比較例で得られた組成物を溶融混練法によりペレットを製造した。
このペレットを用いて以下の手順で灰分量を測定した。
(1)坩堝の重量を測定し、この重量をW0とした。
(2)坩堝に灰分量を測定するペレットを入れ、重量を測定し、この重量をW1とした。
(3)坩堝ごとマッフル炉へ入れ、1000℃で灰化を行なった。
(4)灰化終了後、装置より坩堝を取り出し重量を測定し、この重量をW2とした。
(5)以下の式より灰分量を計算した。
灰分量〔%〕=(W2−W0)/(W1−W0)×100
灰化後の重量 灰化前の重量
以下の機器を使用した。
(1)電子天秤:研精工業株式会社製 ER180A
(2)マッフル炉:ヤマト科学株式会社製 Muffle Furnace FP 310
【0048】
実施例1
ポリプロピレン(PP)(J−2003GP)83重量%、マレイン酸変性ポリプロピレン(MAH−PP)(ポリボンド3200)2重量%、炭素繊維(HTA−C6−SRS)5重量%、及び黒鉛粉末(UP−10)10重量%を、混合して組成物を製造した。
得られた組成物について、密度、曲げ強度、曲げ弾性率、共振周波数、灰分量を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
実施例2
実施例1において、黒鉛粉末を、GR−15に変えた他は、実施例1と同様にして組成物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0050】
比較例1,2
実施例1において、黒鉛粉末を、PAG5(比較例1)又はPAG KS(比較例2)に変えた他は、実施例1と同様にして組成物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0051】
比較例3
ポリプロピレン(J−2003GP)69重量%、マレイン酸変性ポリプロピレン(ポリボンド3200)1重量%、ガラス繊維(GF)11重量%、及びマイカ19重量%を、混合して組成物を製造した。
得られた組成物について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0052】
比較例4
ポリプロピレン(J−2003GP)60重量%、タルク40重量%を、混合して組成物を製造した。
得られた組成物について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1から、比較例1は実施例1に対し、黒鉛粉末の粒径が大きく、見掛け密度も大きい(アスペクト比が小さい)ため、強度、弾性率、共振周波数が小さくなり、製品としたときの要求性能が不足することが予想される。
比較例2は実施例1に対し、黒鉛粉末の粒径は小さいが、見掛け密度が大きい。このため強度、弾性率、共振周波数が小さくなり、比較例1と同じく、製品としたときの要求性能が不足することが予想される。これは、単に黒鉛粉末の粒径を小さくしても、要求を満たすものではないことを示している。
実施例2は比較例2と比べ、黒鉛粉末の粒径は大きいが見掛け密度は小さい。強度、弾性率、共振周波数が大きく、製品としてより良い性状を示すことが期待できる。このことからも、黒鉛粉末の見掛け密度(アスペクト比)が重要な因子であることがわかる。
【0055】
図1は、肉厚に対する共振周波数の関係を示すグラフである。このグラフにおいて、●は実施例1の組成物、■は比較例3の組成物、◆は比較例4の組成物を示す。この図から「共振周波数≧98.5×肉厚+15」を満足する範囲が好ましいことが分かる。
共振周波数は製品の肉厚により変化し、肉厚が厚いほど高く良好な値を示す。
比較例4では肉厚3mmで300Hz、比較例3では肉厚3mmで315Hzであった。実施例1では、肉厚3mmで325Hzとなり、比較例3,4と比較するとより高い値を示した。目標とする共振周波数の値を仮に300Hzとした場合、実施例1の組成物では、300Hzを満足する肉厚は2.8mm程度ですみ、製品として薄肉化が可能となり、製品重量の低減につながる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の組成物は、内燃機関の吸気系部品に使用できる。特に、内燃機関の吸気通路を構成するエアダクト、内燃機関の吸気通路に設けられ吸気騒音を低減するレゾネータ又はサイドブランチ、及び内燃機関の吸気通路中のダストを除去するエアクリーナ等に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】肉厚に対する共振周波数の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(1),(2)及び(3)を含む樹脂組成物であって、この樹脂組成物からなる測定片の肉厚と共振周波数との関係が、下記式の関係を満たす内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物。
[成分]
(1)ポリプロピレン系樹脂: 67〜89重量%
(2)酸変性ポリプロピレン系樹脂: 1〜3重量%
(3)炭素繊維及び黒鉛粉末: 10〜30重量%
[肉厚と共振周波数と関係]
共振周波数(Hz) ≧ (98.5×肉厚(mm))+15
【請求項2】
下記成分(i),(ii)及び(iii)を含む内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物。
[成分]
(i)メルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)が5〜70g/10分のポリプロピレン系樹脂: 67〜89重量%
(ii)酸変性ポリプロピレン系樹脂: 1〜3重量%
(iii)繊維径(D1)が5μm<D1<10μmの炭素繊維、及び平均粒径(D2)が5μm≦D2≦15μmで見掛け密度(ρ)が0.02g/cm≦ρ≦0.1g/cmの黒鉛粉末: 10〜30重量%
【請求項3】
前記吸気系部品が、
内燃機関の吸気通路を構成するエアダクト、
内燃機関の吸気通路に設けられ、吸気騒音を低減するレゾネータ若しくはサイドブランチ、又は
内燃機関の吸気通路中のダストを除去するエアクリーナ
である請求項1又は2記載の内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物。
【請求項4】
JISK−7171に準拠して測定される、曲げ強度が80MPa以上、曲げ弾性率が3800MPa以上であり、かつ
燃焼残渣測定試験において前記炭素繊維及び黒鉛粉末由来の燃焼残渣が3%以下である請求項1〜3いずれか記載の内燃機関の吸気系部品用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の樹脂組成物からなる内燃機関の吸気系部品。

【図1】
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【公開番号】特開2007−100027(P2007−100027A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294979(P2005−294979)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【出願人】(000223034)東洋▲ろ▼機製造株式会社 (51)
【Fターム(参考)】