説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】内燃機関の排気ガスに含まれる排気微粒子をコロナ放電を利用して処理し、排気微粒子が外部へ排出されるのを防止する。
【解決手段】 排気浄化装置1は、エンジン41の排気流路42に接続される筒状ハウジングH内に、コロナ放電電極2と対向電極3とを配設し、両電極2、3間に高電圧を印加してコロナ放電を発生させるコロナ放電部を備える。コロナ放電部には、コロナ放電による発生エネルギが、排気中の排気微粒子を酸化するための活性化エネルギ以上となるエネルギを投入して、排気微粒子を酸化燃焼により浄化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスに含まれる排気微粒子をコロナ放電を利用して浄化する排気微粒子浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンやリーンバーンガソリンエンジンから排出される排気微粒子(PM)を処理するために、種々の装置が提案されている。その一例として、排気流路に多孔質セラミックスからなるパティキュレートフィルタを設置して、排気微粒子を捕集することが行われているが、粒子径がナノミクロン級と小さい微粒子(ナノ微粒子)が捕捉されずに通過してしまうおそれがある。一方、微粒子のすり抜けを防止するために、パティキュレートフィルタの目を細かくすると、排気流路の圧損が増大する不具合がある。
【0003】
そこで、コロナ放電を利用して微粒子を静電凝集させる装置が検討されている。例えば、特許文献1には、排気流路の中央部に高電圧電極を、その外周に低電圧電極を配置し、コロナ放電を発生させて帯電した排気微粒子を外周側に移動させることにより、微粒子の空間密度分布が高い外周側と空間密度分布が低い中央部とに分流し、それぞれに適したフィルタを下流に配置して微粒子を捕集する装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−76497号公報
【0004】
また、特許文献2には、排気流路内に放電電極と、導電網状の集塵電極を対向配設させた装置が開示されている。この装置は、集塵電極に放出された電荷がコイルを介して接地部に回収される構成となっており、排気微粒子の帯電状態が持続しやすいために、集電電極に未到達の微粒子との間でクーロン力が作用し、帯電した微粒子の凝集を促進させる。
【特許文献2】特開2006−37899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、静電凝集した微粒子は結合力が弱いため、再分散する問題があった。特許文献1の装置では、高電圧電極の外周に配した低電圧電極に透過部を設け、静電凝集させた微粒子を、透過部の外側のフィルタにて捕集するようになっているが、排気流れがあるために、凝集微粒子がフィルタ内で衝突し再分散、離脱するおそれがある。
【0006】
特許文献2の構成でも、集塵電極で凝集した微粒子を捕集するために、下流にパティキュレートフィルタ(DPF)等が設置されるが、排ガスの流れが速いと、DPFのセル壁面への衝突により凝集微粒子が再分散し、セル壁をすり抜けてしまう。その場合、離脱した微粒子が捕集されずに、外部へ排出されるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、内燃機関の排気ガスに含まれる排気微粒子をコロナ放電を利用して処理し、排気微粒子が外部へ排出されるのを防止することができる排気微粒子浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明請求項1の排気浄化装置は、内燃機関の排気流路の一部を構成する筒状容器内に、コロナ放電電極と対向電極とを配設し、両電極間に高電圧を印加してコロナ放電を発生させるコロナ放電部を備える。該コロナ放電部には、コロナ放電による発生エネルギが、排気中の排気微粒子を酸化するための活性化エネルギ以上となるエネルギを投入して、排気微粒子を酸化燃焼により浄化することを特徴とする。
【0009】
コロナ放電による発生エネルギが、排気微粒子の酸化反応に必要な活性化エネルギを越えると、排気微粒子を構成する炭素が排気中の酸素と結合して二酸化炭素となる。すなわち、十分なエネルギを投入することで、ナノ微粒子を燃焼させて浄化することができ、ナノ微粒子のすり抜けや凝集微粒子の再分散・離脱による外部への放出を抑制して、高い浄化性能を実現することが可能となる。
【0010】
請求項2の発明において、上記コロナ放電部は、上記筒状容器の略中央部に配置される上記コロナ放電電極の放電部から、上記排気流路内に電子を放出させ、該放出電子が酸素と付着し酸素イオンとなって排気微粒子に衝突させて酸化エネルギを付与する。
【0011】
具体的には、コロナ放電電極を排気流路の略中央部に配置し、導入される排気微粒子に向けて電子を効率よく放射させるのがよい。
【0012】
請求項3の発明において、上記コロナ放電部へ投入されるエネルギを制御する制御部を設け、該制御部は、内燃機関にて発生する排気微粒子の量に応じて、上記コロナ放電電極への印加電圧を決定する。
【0013】
具体的には、制御部にて、発生する排気微粒子を酸化するのに必要なエネルギを算出し、必要なエネルギを効率よく投入するのがよい。
【0014】
請求項4の発明において、上記コロナ放電部内または上記コロナ放電部の下流に、排気微粒子の捕集部を設け、上記コロナ放電部に投入されるエネルギの一部により排気微粒子の一部を帯電および凝集させて、上記捕集部に捕集する。
【0015】
排気微粒子の酸化による浄化に加えて、帯電・凝集による捕集を併用することもできる。この時、好適には、捕集部を設けて凝集微粒子を捕集することで、外部への排出を防止することができる。
【0016】
請求項5の発明において、上記コロナ放電部は、上記筒状容器の内周面に沿って配置される中空メッシュ状の導電性筒壁部を上記対向電極とし、その内部空間を上記捕集部とする。
【0017】
具体的には、捕集部を中空メッシュ状の導電性筒壁部とし、対向電極を兼ねる構成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明をディーゼルエンジンの排気浄化装置に適用した第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1(a)は、排気浄化装置1の全体構成を示し、図1(b)は、排気浄化装置1の排気管41への接続構造を示している。図中、排気浄化装置1は、エンジン41の排気管42に接続される筒状容器としてのハウジングH内に、コロナ放電電極2と対向電極となる接地電極3を配設してコロナ放電部を構成している。本実施形態では、コロナ放電電極2を取り囲むハウジングHの筒部を接地電位として、筒内壁を接地電極3として構成する。ハウジングHは排気管42より大径の円筒管状で、その内部は円形断面の排気流路11となり、両端小径部にて排気管の直線部に接続されるようになっている。
【0019】
図1(a)において、コロナ放電電極2は、上半部がハウジングHの筒壁から外部(図の上方)に突出し、下半部がハウジングH内の排気流路11に位置している。ハウジングHには、上部筒壁に設けた開口部を閉鎖するように保持プレート12がボルト固定してあり、コロナ放電電極2はその碍子部23外周に設けた雄ねじ部が、保持プレート12に設けた雌ねじ部に螺合され、ナット13にて締付け固定される。
【0020】
コロナ放電電極2は、外周が碍子部23に保持される棒状の導電部21と、その先端(図の下端側)に設けられる放電部22とからなる。導電部21は、ハウジングH外に位置し碍子部23から突出する基端(図の上端側)が図示しない直流高電圧電源と接続され、先端側は碍子部23から露出してL字状に屈曲している。L字状の屈曲部は排気流路11の軸線に沿って延び、最先端の放電部22へ高電圧を導くようになっている。放電部22は、例えば略円盤状で、外周に放射状に設けた多数の突起を有する形状とする。このように、多数の突起を設けることで放電率を高めるとともに、排気流路11内に均等にコロナ放電を発生させて、浄化性能を高めることができる。
【0021】
次に、本発明の排気浄化装置1による排気微粒子浄化のメカニズムについて説明する。図1(b)において、エンジン41で発生し排気管42へ放出される排気微粒子は、通常、0.01μmから数μm程度の粒径であり、通常のパティキュレートフィルタ(DPF)では捕捉できないナノ微粒子を含んでいる。排気浄化装置1には、コロナ放電電極2への通電を制御する制御部5が設けられており、コロナ放電電極2の導電部21に直流高電圧電源から負の直流高電圧を印加すると、放電部22先端の突起近傍においてコロナ放電が発生する。図中に1)〜3)として示すように、この時、コロナ放電により放射される電子は高いエネルギを有しており、酸素に付着して酸素イオンとなって排気流路11内の排気微粒子(図中ナノPM)に衝突して反応させる。
【0022】
これを図1(c)に示すと、反応物質である排気微粒子(C)および酸素分子(O2 )に、コロナ放電による発生エネルギが付与されて、活性化状態となる。すなわち、酸化反応を生起するのに必要な活性化エネルギを越えるために、排気微粒子(C)および酸素イオン(O2)が反応して二酸化炭素(CO2 )を生成することができる。本発明では、ナノ微粒子を気体分子である二酸化炭素(CO2 )に直接変化させるので、コロナ放電の発生エネルギを効果的に利用して、ナノ微粒子を浄化することができる。
【0023】
制御部5は、コロナ放電電極2へ投入されるエネルギを制御する。コロナ放電部へ投入されるエネルギは、エンジン41にて発生する排気微粒子の量に応じて決定され、排気浄化装置1に導入される排気微粒子を酸化燃焼させるのに必要なエネルギを、コロナ放電によって発生させる。図2は、発生する排気微粒子の量(発生PM量:g/hr)とPM燃焼させるのに必要なエネルギ(E:kJ/hr)の関係を示すグラフで、例えば、排気管42に排出されるPM量がM0 であるとすると、M0 に相当する炭素を活性化して酸化するための必要エネルギE0 以上、コロナ放電での発生エネルギがあればよいことがわかる。
【0024】
ここで、PM燃焼に必要なエネルギEは、下記式(1)を用いて算出される。
E=(M/m)・Ea・・・(1)
・捕集PM燃焼のための必要エネルギ :E(kJ/hr)
・捕集PM重量 :M(g/hr)
・炭素分子量 :m(=12)
・活性化エネルギ:Ea(=236kJ/mol)
一方、コロナ放電での発生エネルギEcは、下記式(2)を用いて算出される。
Ec=Ev・Ia・t・・・(2)
・供給電圧 :Ev(kV)
・電流 :Ia(A)
・時間 :t(s)
【0025】
式(1)より、例えばM0 =1.2(g/hr) とすると、PM燃焼に必要なエネルギE=24(kJ/hr)であるから、E0 ≧24(kJ/hr)の発生エネルギがあれば、酸化燃焼による排気微粒子の浄化が可能である。また式(2)より、E0 =Ec≧24(kJ/hr)が成立するには、例えば、下記式(3)のように供給電圧と電流を設定すればよい。
Ec=Ev・Ia・t
=13×0.5×10-3×602 =24(kJ/hr)・・・・・・(3)
すなわち電流Ia=0.5(mA) の時、導電部21に直流高電圧電源から印加される負の直流高電圧が、Ev=−13(kV) 以上であれば、活性化エネルギ以上となる。
【0026】
この時、排気微粒子の濃度が高いコロナ放電部の略中央部にコロナ放電電極2を配置して、効率よい浄化を図っているが、実際には、コロナ放電部内の排気微粒子分布等により、発生エネルギのロスが生じる。このため、好適には、発生エネルギのロス分を考慮して、例えば1.5倍以上のエネルギ(E1 =1.5×E0 )を投入するのがよい。従って、式(1)、(2)より、例えばM0 =1.2(g/hr) 、電流Ia=0.5(mA) の場合、E1 ≧36(kJ/hr)の発生エネルギがあればよく、このための印加電圧Ev=−20(kV) 以上であれば、十分な浄化性能が得られる。
【0027】
このように、本発明では、制御部5による投入エネルギを、発生する排気微粒子の量に応じて変更し、燃焼に必要なエネルギを発生させるので、より効果的に排気微粒子を浄化することができる。その具体的な制御の一例を図3のフローチャートに示すと、まず、ステップ1において、エンジン41の負荷および回転数情報を取り込み、ステップ2において、これら情報を用いてエンジン41で発生する排気微粒子の量(PM量M:g/hr) を算出する。PM量Mは、例えば、予め実験を行って負荷および回転数と排気微粒子の発生量の関係を求め、マップとして制御部5に記憶しておくことができる。
【0028】
ステップ3では、ステップ2において算出したPM量Mが0以上(PM量M>0)であるかどうかを判定する。ステップ2が肯定判定された場合には、ステップ4へ進み、否定判定された場合には、ステップ1に戻る。これは、例えば高負荷時のようにエンジン41の燃焼効率が高く排気微粒子の発生がほとんどない場合、または排気温度が高く、発生した排気微粒子が自然燃焼するような運転状態においては、排気浄化装置1を作動させる必要がないと判断されるためで、コロナ放電部へ通電しないことで、エネルギロスを避けることができる。
【0029】
ステップ4では、上記式(1)、(2)および図2の関係を用いて、ステップ2において算出したPM量M(g/hr) を酸化するための必要エネルギE1 を算出し、コロナ放電電極2への供給電圧Evを決定する。続くステップ5で、コロナ放電電極2へ直流高電圧電源から所定の電圧Evを印加し、ステップ1へ戻る。このようにして、エンジンの運転状態に応じた供給電圧Evを印加し、コロナ放電を発生させて排気微粒子を浄化することができる。
【0030】
図4は、本発明の排気浄化装置1による効果を確認するために行った評価試験結果である。図4(a)は、評価装置構成を示す図で、PM発生装置6から排出される排気微粒子とエアボンベ7からのエアを、排気浄化装置1に導入してコロナ放電を発生させ、その下流に配設したCO2 計8で、CO2 濃度の変化を調べた。CO2 計8は、ppmオーダの低濃度CO2 を計測するもので、評価条件を常温とする必要があることから、実車エンジンでなくPM発生装置6を用いて同等の排気微粒子を発生させた。排気微粒子の発生量Qp=3.9g/min.、エア流量=7.6L/min.とし、排気浄化装置1に上記図2、3に示した方法で算出した必要エネルギを投入した場合に、排気浄化装置1から排出される排気中のCO2 濃度変化を図4(b)に示した。
【0031】
図4(b)に示されるように、排気浄化装置1の作動を開始した時点より、排気中のCO2 濃度が急増しており、コロナ放電電極2への電圧印加によってコロナ放電が発生し、排気微粒子の酸化反応が生じてCO2 が生成したことが確認された。排気浄化装置1は、作動を継続している間、CO2 濃度が高い状態にあり、作動を停止した時点から徐々に減少して、初期濃度に戻った。
【0032】
図5に本発明の第2の実施形態を示す。本実施形態の排気浄化装置1は、コロナ放電エネルギを用いた排気微粒子の酸化反応による浄化と、排気微粒子の帯電による凝集を併用するものである。排気浄化装置1の接地電極3は、集塵電極を兼ねており、凝集微粒子を保持する機能を有する。その他の装置構成は、上記第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0033】
上述した図3に基づく制御では、発生する排気微粒子が多くなるほど、酸化に必要なエネルギが増加する。このために、例えば、バッテリ電圧が低下している状態では、排気微粒子の量に応じた十分なエネルギが投入できず、活性化エネルギ不足となるおそれがある。そこで本実施形態では、排気微粒子の量とバッテリ電圧に応じて、投入可能なエネルギを決定し、発生する排気微粒子の全部を酸化反応させず、一部は帯電凝集させて捕集する。この場合、コロナ放電が発生して電子が放射されると、その一部は電子親和性の高い気体分子(酸素)をマイナスイオン化し、付近の排気微粒子(図中ナノPM)に付着してこれを負に帯電させる(図中1)〜2))。帯電した排気微粒子(ナノPM)は、クーロン力によって集塵電極を兼ねる接地電極3に引き寄せられ、下流へ向かうガス流から徐々に離脱して、凝集しながら外周側へ移動する。凝集した排気微粒子が、接地電極3に達すると、放電し、凝集保持される(図中3)〜5))。
【0034】
図6に示すように、排気微粒子の浄化手法は、発生する排気微粒子の量(PM重量)と投入エネルギによって決まる。排気微粒子の酸化反応による浄化をCO2 領域、排気微粒子の帯電による凝集を帯電捕集領域とすると、PM重量が少なく投入エネルギが多い領域は、CO2 領域となり、PM重量が多く投入エネルギが少ない領域は、帯電捕集領域となる。これらの中間領域は、CO2 領域+帯電捕集領域となる。このように、投入可能なエネルギに応じて、酸化反応による浄化に、帯電捕集を組み合わせることで、エネルギを効率よく利用して、排気微粒子を浄化可能である。
【0035】
図7は、本実施形態の排気浄化装置1において、コロナ放電電極2への電圧印加による排気微粒子の凝集現象を検証した結果である。図7(a)は、印加電圧0V、すなわち、コロナ放電を発生させない状態で、排気浄化装置1の集塵電極を兼ねる接地電極3付近に付着する微粒子の粒径分布を、図7(b)は、印加電圧−10Vとした時の、接地電極3付近に付着した微粒子の粒径分布を、それぞれ示すものである。図7(a)は、粒径分布のピークが1μm以下にあり、エンジンから排出されたままの標準粒子が、主に1μm以下の極微小粒子の集合体であることがわかる。これに対し、図7(b)では、1μm以下のピークがなくなり、5〜10μmの粗大粒子の重量が増加しており、コロナ放電の発生エネルギにより微粒子の帯電・凝集が生じたことが確認された。
【0036】
図8は、本実施形態の制御部5による制御の一例を示すものである。まず、ステップ11において、エンジン41の負荷および回転数情報を取り込み、ステップ12において、これら情報を用いてエンジン41で発生する排気微粒子の量(PM量M:g/hr) を算出する。PM量Mは、例えば、予め実験を行って負荷および回転数と排気微粒子の発生量の関係を求め、マップとして制御部5に記憶しておくことができる。
【0037】
ステップ13では、ステップ12において算出したPM量Mが0以上(PM量M>0)であるかどうかを判定する。ステップ12が肯定判定された場合には、ステップ14へ進み、否定判定された場合には、ステップ11に戻る。ステップ14では、バッテリ電圧情報を取り込み、この情報を基に、ステップ15で、投入可能な発生エネルギを算出する。これは、バッテリ電圧が低い状態では、算出したPM量M(g/hr) を酸化するための必要エネルギE1 を供給できない場合があるためで、まず投入可能なエネルギを設定することで、効率よく排気微粒子を浄化する。
【0038】
ステップ16では、算出したPM量Mおよび投入可能な発生エネルギと、上記図6の関係を用いて、浄化手法を決定する。浄化手法は、排気微粒子の酸化反応による浄化(CO2 領域)、排気微粒子の帯電による凝集(帯電捕集領域CO2 領域)、またはこれらの組み合わせとなる。次いで、ステップ17で、投入可能な発生エネルギに対応する電圧を印加し、コロナ放電エネルギを投入する。
【0039】
さらに、ステップ18では、帯電凝集した排気微粒子の捕集量Mc(累積値)を算出し、ステップ19で、捕集量Mcが捕集許容値を越えているか否か(Mc>捕集許容値)を判定する。ステップ19が否定判定されると、ステップ17に戻り、肯定判定されるとステップ20へ進んで、運転者へのアラーム(警告)手段を作動させる。このように、酸化燃焼による排気微粒子の浄化手法に加えて、帯電凝集による捕集手法を適宜組み合わせることで、発生エネルギを有効利用して効果的に排気微粒子を浄化することができる。
【0040】
図9に本発明の第3の実施形態を示す。本実施形態の排気浄化装置1は、上記図5の第2の実施形態の構成を基本とし、さらに捕集部に設けて、帯電凝集した排気微粒子を捕集可能としたものである。図9のように、本実施形態において、排気浄化装置1のハウジングHは、コロナ放電電極2の下流側を拡径した形状を有し、接地電極3となる拡径部の内周に沿って、中空メッシュ状の導電性筒状体よりなる捕集部31を設けている。捕集部31は、筒内を排気流路11としており、排気流路11に開口する多数の通孔を有する構成となっている。その他の構成は上記第2の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0041】
本実施形態においても、酸化燃焼による排気微粒子の浄化と、帯電凝集による捕集を組み合わせることで、排気浄化装置1内に、コロナ放電による帯電微粒子が発生する(図中1)〜2))。この帯電微粒子が、クーロン力によって集塵電極を兼ねる接地電極3に引き寄せられ、外周側へ移動して、排気流路11に開口する多数の通孔から、捕集部31内に侵入する。帯電微粒子は、さらに捕集部31の奥へ移動し、電子を放出した後、凝集・保持される(図中3)〜5))。
【0042】
このように、排気浄化装置1の外周に捕集部31を設けて、フィルタ機能を持たせることで、帯電凝集した排気微粒子が再分散するのを防止する効果が得られる。
【0043】
捕集部31を構成する中空メッシュ状の導電性筒状体は、通常、1μmから10μm程度の粒径となる粗大粒子の流入を妨げない程度の大きさを有し、かつ内部に凝集微粒子を保持する十分な空間を有することが望ましい。通孔の大きさや形状、深さを適宜調整して、所望の捕集効果が得られるようにするとよい。
【0044】
以上のように、本発明によれば、ディーゼルエンジンやガソリンリーンバーンエンジンから排出される排気微粒子を酸化燃焼により浄化し、さらに帯電凝集による捕集やフィルタ機能を組み合わせることで、外部への放出を抑制することができる。よって、コロナ放電を用いて、浄化性能に優れ、高効率で低圧損の排気浄化装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態における排気浄化装置の全体概略構成図、(b)は第1の実施形態の作動を説明するための図であり、(c)は排気微粒子の浄化のメカニズムを説明するための図である。
【図2】発生PM量とPM燃焼のための必要エネルギの関係を示す図である。
【図3】第1の実施形態における投入エネルギ制御のフローチャートである。
【図4】(a)は第1の実施形態の効果を確認するための評価装置構成図、(b)は評価結果を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における排気浄化装置の全体概略構成図である。
【図6】第2の実施形態におけるPM浄化手法を説明するための図である。
【図7】(a)、(b)は第2の実施形態の効果を説明するための図である。
【図8】第2の実施形態における投入エネルギ制御のフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施形態における排気浄化装置の全体概略構成図である。
【符号の説明】
【0046】
1 排気浄化装置
11 排気流路
2 コロナ放電電極
21 導電部
22 放電部
23 碍子部
3 接地電極(対向電極)
31 捕集部
4 エンジン
41 排気管
5 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気流路の一部を構成する筒状容器内に、コロナ放電電極と対向電極とを配設し、両電極間に高電圧を印加してコロナ放電を発生させるコロナ放電部を備え、該コロナ放電部には、コロナ放電による発生エネルギが、排気中の排気微粒子を酸化するための活性化エネルギ以上となるエネルギを投入して、排気微粒子を酸化燃焼により浄化することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
上記コロナ放電部は、上記筒状容器の略中央部に配置される上記コロナ放電電極の放電部から、上記排気流路内に電子を放出させ、該放出電子を排気微粒子に衝突させて酸化エネルギを付与する請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
上記コロナ放電部へ投入されるエネルギを制御する制御部を設け、該制御部は、内燃機関にて発生する排気微粒子の量に応じて、上記コロナ放電電極への印加電圧を決定する請求項1または2記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
上記コロナ放電部内または上記コロナ放電部の下流に、排気微粒子の捕集部を設け、上記コロナ放電部に投入されるエネルギの一部により排気微粒子の一部を帯電および凝集させて、上記捕集部に捕集する請求項1ないし3のいずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
上記コロナ放電部は、上記筒状容器の内周面に沿って配置される中空メッシュ状の導電性筒壁部を上記対向電極とし、その内部空間を上記捕集部とする請求項1ないし4のいずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−243419(P2009−243419A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93530(P2008−93530)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】