説明

内燃機関用の点火コイル

【課題】溶接又は半田付け等を使用しないことで溶接又は半田による不良の発生が無くなり、さらには容易に組み立てられる点火コイルを提供する。
【解決手段】内燃機関用点火コイルにおいて、1次コイル端子16bとイグナイタ端子22a、コネクタ端子24aは突出方向を同方向とし、前記1次コイル端子16bと前記イグナイタ端子22a、前記コネクタ端子24aはそれぞれの間で電気的導通を実現する如く接続され、また前記1次コイル端子16bと前記イグナイタ端子22a、前記コネクタ端子24aは接合端子28で接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の点火コイルのコネクタ端子とイグナイタ端子、1次ボビン端子の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりケースのコイル収容部に1次コイルと2次コイルと鉄芯からなるコイル部と、当該コイル部へ1次電圧と点火信号とを供給するイグナイタと、当該イグナイタと外部のバッテリとを接続するコネクタを備え、ケースのコイル収容部にモールド樹脂を充填した内燃機関用点火コイルにおいて、コネクタ端子、イグナイタ端子、1次ボビン端子又は2次コイル端子の電気的接続方法はいくつか提案されており、当該点火コイルの各端子間の接続は、接続の容易性及び信頼性の向上等を目的としていくつかの構成が提案されている。この代表的な例として、例えば特開平11−050938号公報(以下「特許文献1」)では、1次コイル、2次コイル、鉄芯、イグナイタ、コネクタを備えた閉磁路型点火コイルにおいて、前記イグナイタの接続端子はほぼ同一の仮想取り出し平面上でイグナイタ本体から平行に取り出され、隣接する前記接続端子の少なくとも一方は前記イグナイタ本体からの取り出し後折り曲げられており、前記点火コイル内において外部端子と電気的に接続する前記接続端子の隣接する電気的接続部を結ぶ仮想直線は、前記仮想取り出し平面と交差し抵抗溶接を行った点火コイルが提案されている。
【0003】
また、別の例として、特開平11−062800号公報(以下「特許文献2」)では、内燃機関の点火装置に印加する高電圧を発生する内燃機関用点火コイルにおいて、内燃機関の電子制御装置と電気的に接続される複数のコネクタ端子と、前記点火コイル内に収容されるイグナイタ本体と、前記イグナイタ本体からほぼ同一の仮想取り出し平面上で平行に取り出される複数の接続端子であって、隣接する少なくとも一方の接続端子が他方の接続端子と異なる長さを有する接続端子と、前記点火コイル内において前記コネクタ端子と前記接続端子とを電気的に接続する複数の電気的接続部であって、前記仮想取り出し平面上において隣接する少なくとも一方の電気的接続部が他方の電気的接続部と前記イグナイタ本体から異なる距離の前記接続端子と前記コネクタ端子との交点に設けられる接続部とを備え抵抗溶接を行った点火コイルも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−050938号公報
【特許文献2】特開平11−062800合公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来の点火コイルでは次のような課題が生じている。即ち、上記特許文献1の点火コイルでは、イグナイタの接続端子を取り出し交互に折り曲げて平面交差させているが、溶接又は半田付けのバラツキがおこるため、誤って隣接した端子を接続したり若しくは端子を正確に接続できていないといった不具合で信頼性が維持できないという問題が生じている。
【0006】
また、特許文献2の点火コイルでは、コネクタ端子もしくはイグナイタ端子を平面上で取り出しどちらか一方の端子の長さを長くし、電気的接続部分の間隔を大きくしているが、コネクタ端子及びイグナイタ端子は複数あるため、溶接又は半田付けのバラツキがおこるため、誤って隣接した端子を接続したり若しくは端子を正確に接続できていないといった不具合で信頼性が維持できないという問題が生じている。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、溶接又は半田付け等を使用しないことで溶接又は半田による不良の発生が無くなり、さらには容易に組み立てられる点火コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明は次のような構成とする。すなわち、請求項1の発明においては、ケースのコイル収容部に1次コイルと2次コイルと鉄芯からなるコイル部と、当該コイル部へ1次電圧と点火信号とを供給するイグナイタと、当該イグナイタと外部のバッテリとを接続するコネクタを備え、ケースのコイル収容部にモールド樹脂を充填した内燃機関用点火コイルにおいて、前記1次コイルと前記2次コイルの入力端子と出力端子のうち少なくとも前記イグナイタの端子と接続される端子と、前記コネクタの端子と、前記イグナイタの端子とは略平板状の金属端子を有し、前記それぞれの端子は突出方向を同方向としており、前記それぞれの端子はそれぞれの間で電気的導通を実現する如く接続され、前記それぞれの端子は接合端子での接続されていることを特徴とする点火コイルとする。
【0009】
上記の構成においては、前記それぞれの端子には少なくとも1箇所に前記接合端子を嵌合するための抜け防止用の溝を形成してもよい。また前記接合端子は樹脂等で形成されたホルダー内に圧入してもよいし、前記ホルダーには前記接合端子を保持する接合端子保持部と、前記接合端子には前記ホルダー内に圧入された際に保持される曲げ部等を形成してもよい。また前記ホルダーから前記接合端子が抜けることを防止するために前記曲げ部の最も幅広の長さL1寸法を前記接合端子保持部―前記接合保持部間の距離L2寸法より長くしてもよい。さらに前記接合端子を圧入した前記ホルダー内に前記モールド樹脂充填後も導通を確保するための導電性シリコン等を注入してもよい。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の通り、イグナイタ端子とコネクタ端子と1次コイル端子又は2次コイル端子の接続を接合端子によって行うことによって、接合状態のバラツキが無くなり、不良の発生を抑えることができると共に容易に組み立てられる点火コイルが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例とする点火コイルの斜視図である。
【図2】本発明の実施例とする点火コイルの側面断面図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】コネクタとイグナイタとコイルの電気的接続部分の斜視図である。
【図5】ホルダーに挿入した接合端子の斜視図である。
【図6】プレス加工後の接合端子の斜視図である。
【図7】タイバーカットした接合端子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明においては、特に1次コイルとイグナイタ、コネクタから導出される各接続端子間の接続構造に特徴を有し、これらそれぞれの端子間を溶接、半田付け等することなく端子接合部材によって容易に接続可能な構造としたことを特徴とする。上記接合部材により接続される端子は、コネクタ端子−イグナイタ端子間、またはコネクタ端子−1次コイル端子、あるいはこれら3種類の信号、グランド、電源端子等複数の組合せがあり、本発明においては適宜接続枚数およびこの組合せは変更可能なものである。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例による本発明の実施例とする点火コイルの斜視図を図1に、当該図1の側面断面図を図2に示す。本発明の点火コイルは、図示しないエンジン上部に形成されたプラグホール外にコイル部が配置され、当該コイル部から作られる高電圧は導電部材を介して点火プラグへ供給するものとなっている。
【0014】
図1と2において、点火コイル10のコイル部を形成しているケース14は樹脂性で箱型に形成されている。前記ケース14にはエンジンへの取付け固定するためのケース固定部15を備えている。前記ケース14内には、点火コイルの点火動作を制御するイグナイタ22と、少なくとも一部が収容されるように鉄芯20とを備え、前記鉄芯20の外側には1次ボビン16aの外周に1次巻線16cを100ターン前後巻き回した1次コイル16と、当該1次コイル16の外側には2次ボビン18aの外周に2次巻線18bを8000〜15000ターン程度巻き回した2次コイル18を配置されており、組み立て工程の最終段階においては、当該ケース内部には熱硬化性のモールド樹脂が充填されることで上記各構成部材の固定と絶縁が保たれている。なお、上記構成においては、イグナイタ22はケース14の開口面に対して垂直方向に縦置きされ、この端子出し方向がケース14側面と略平行とすることでケース14の高さ方向の寸法を低く抑えることを可能にするとともにコネクタ端子とコイル端子との接続を容易にしている。
【0015】
また、前記ケース14の外周側面の一面には図示しないバッテリ及び外部のECU等点火コイル制御部とを接続するコネクタ24が備えられている。
【0016】
次に、本発明の実施例とする点火コイルの各端子間の接続構造について説明する。本実施例においては、特に1次コイル16とイグナイタ22、コネクタ24から導出される各接続端子を接合部材によって接続している。以下のこの具体的な構造を述べる。図3には図2のA部拡大図を、図4にはコネクタとイグナイタと1次コイルの電気的接続部分の斜視図を示す。図2乃至図4において、1次コイル端子16bの中でイグナイタ端子22aと接続される端子と、コネクタ端子24aと前記イグナイタ端子22aとは略平板状の金属端子を有し、前記1次コイル端子16bと前記イグナイタ端子22a、前記コネクタ端子24aは突出方向を同方向としている。また前記1次コイル端子16bと前記イグナイタ端子22a、前記コネクタ端子24aはそれぞれの間で電気的導通を実現する如く接続されている。また前記1次コイル端子16bと前記イグナイタ端子22a、前記コネクタ端子24aは接合端子28で接続されている。さらに前記接合端子28は弾性力を有する金属等の導電部材で形成されている。さらに前記1次コイル端子16bと前記イグナイタ端子22a、前記コネクタ端子24aの接合端子28の当接する部分には当該部分と係合するための抜け防止用の溝部26が形成されている。当該溝部26は各端子の平板面にキリカキ溝を掘るように設けることが望ましいが、他の手段によって形成してもよい。また、当該溝部26は接合端子28が各端子から抜けることを防止するために設けているが、当該抜け防止構造は、前記の通り溝26を形成することのほか、接合端子28を直接ケースに係合させる構造としてもよい。
【0017】
次に前記接合端子28をホルダー12に挿入した接続端子の斜視図を図5に、前記接合端子28のホルダー12組み付け前の斜視図を図6と7にそれぞれ示す。図5乃至7において、接合端子28はPBTで形成されたホルダー12内に圧入されている。また前記ホルダー12には前記接合端子28を保持する接合端子保持部12aと、接合端子28の天面の固定を行う上部固定部12bとを備えており、前記接合端子28には前記ホルダー12内に圧入された際に前記接合端子保持部12aに保持される曲げ部28aが形成されている。また前記ホルダーから前記接合端子が抜けることを防止するために前記曲げ部28aの最も幅広の長さL1寸法が前記接合端子保持部12a−前記接合端子保持部12a間の距離L2寸法より長くされており、さらに前記接合端子28を圧入した前記ホルダー12内に前記モールド樹脂充填後も導通を確保するための導電性シリコン30が注入されている。
【0018】
なお上記実施例の変形例として、前記1次コイル16の端子と前記2次コイル18の端子、前記イグナイタ端子22a、前記コネクタ端子24aの中で略平板状の金属端子にする端子は設計事項により任意に選んでもよい。また前記接合端子28は他の素材、例えば真鍮、ステンレス、アルミニウム、リン青銅等を用いてもよいし、スズメッキ、ニッケルメッキを用いて表面処理を施してもよい。また前記1次コイル16の端子と前記2次コイル18の端子、前記イグナイタ端子22a、前記コネクタ端子24aに形成される前記接合端子28を嵌合するための抜け防止用の溝部26の数及び位置は設計事項により任意に変更してもよい。また前記ホルダー12は他の素材、例えば変性PPE、ナイロン、PPS、PET、エラストマ等を用いてもよい。さらに前記接合端子28に形成される曲げ部を突出部にしてもよい。さらに前記ホルダー12a内に注入する樹脂は導電性接着剤を用いてもよい。また、前記導電性シリコン30は、各端子間の接続が十分になされる場合にあっては必ずしも必要なものではなく、この場合では接合端子28のみで各端子の接合を行ってもよいし、当該導電性シリコンは変形容易な他の導電性を有した部材、例えばエポキシ、ウレタン、アクリル、熱可塑性樹脂等に置き換えてもよいものである。
【0019】
次に、点火コイルの接合端子の製造方法をプレス加工後の接合端子の斜視図を示す図6及びタイバーカットした接合端子の斜視図を示す図7に基づき説明する。図6において前記接合端子28は前記1次コイル16の端子と前記2次コイル18の端子、前記イグナイタ端子22a、前記コネクタ端子24aの接続に必要な数を1枚の鉄板をプレス加工して形成されている。また前記接合端子28はPBTで形成されたホルダー12に圧入され前記接合端子28の曲げ部28aにより前記ホルダー12内に保持されている。さらに図7において前記ホルダー12内には導電性シリコン30を注入後、タイバーカットし各前記接合端子28を分離させている。
【符号の説明】
【0020】
10:点火コイル
12:ホルダー
12a:接合端子保持部
12b:上部固定部
14:ケース
15:ケース固定部
16:1次コイル
16a:1次ボビン
16b:1次ボビン端子
16c:1次巻線
18:2次コイル
18a:2次ボビン
18b:2次巻線
20:鉄芯
20a:中心鉄芯
20b:外装鉄芯
22:イグナイタ
22a:イグナイタ端子
24:コネクタ
24a:コネクタ端子
26:溝部
28:接合端子
28a:曲げ部
30:導電性シリコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースのコイル収容部に1次コイルと2次コイルと鉄芯からなるコイル部と、
当該コイル部へ1次電圧と点火信号とを供給するイグナイタと、
当該イグナイタと外部のバッテリとを接続するコネクタを備え、
ケースのコイル収容部にモールド樹脂を充填した内燃機関用点火コイルにおいて、
前記1次コイルと前記2次コイルの入力端子と出力端子のうち少なくとも前記イグナイタの端子と接続される端子と、前記コネクタの端子と、前記イグナイタの端子とは略平板状の金属端子を有し、
前記それぞれの端子は突出方向を同方向としており、
前記それぞれの端子はそれぞれの間で電気的導通を実現する如く接続され、
前記それぞれの端子は接合端子での接続されていることを特徴とする点火コイル。
【請求項2】
請求項1に記載の点火コイルにおいて、前記それぞれの端子には少なくとも1箇所に前記接合端子を嵌合するための抜け防止用の溝を形成していることを特徴とする点火コイル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の点火コイルにおいて、前記接合端子は樹脂等で形成されたホルダー内に圧入されることを特徴とする点火コイル。
【請求項4】
請求項3に記載の点火コイルにおいて、前記ホルダーには前記接合端子を保持する接合端子保持部と、
前記接合端子には前記ホルダー内に圧入された際に保持される曲げ部等を形成し、
前記ホルダーから前記接合端子が抜けることを防止するために前記曲げ部の最も幅広の長さL1寸法を前記接合端子保持部−前記抵抗保持部間の距離L2寸法より長くすることを特徴とする点火コイル。
【請求項5】
請求項3乃至4に記載の点火コイルにおいて、前記接合端子を圧入した前記ホルダー内に前記モールド樹脂充填後も導通を確保するための導電性シリコン等を注入することを特徴とする点火コイル。
【請求項6】
ケースのコイル収容部に1次コイルと2次コイルと鉄芯からなるコイル部と、
当該コイル部へ1次電圧と点火信号とを供給するイグナイタと、
当該イグナイタと外部のバッテリとを接続するコネクタを備え、
ケースのコイル収容部にモールド樹脂を充填した内燃機関用点火コイルの製造方法において、
前記それぞれの端子の接続に必要な数の前記接合端子は1枚の金属板からプレス加工によって形成され、
前記ホルダー内に圧入後それぞれの前記接合端子をタイバーカットして分離させたことを特徴とする点火コイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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