説明

内燃機関用ピストン

【課題】スカート部とシリンダ内面の摩擦抵抗を低減させ、燃費を向上させることが可能なピストンを提供する。
【解決手段】本発明は、シリンダ内面12に沿って摺動する際、スカート部6の中央に高面圧部14が発生し、高面圧部14の両側に低面圧部15が発生する内燃機関用ピストン1であって、複数の部分のうちの高面圧部14には、水平溝16が設けられ、複数の部分のうちの低面圧部15には、高面圧部14側に向かって下傾し、水平溝16の端部に接続される傾斜溝17が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用ピストン(以下、単に「ピストン」と称する場合がある。)に関し、特に、ピストンのスカート部に形成される溝の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な内燃機関では、シリンダ内に収納されたピストンの昇降運動がコンロッドを介してクランクシャフトに伝達されて、クランクシャフトが回転するように構成されている。また、通常、上記したピストンの外周部にはスカート部が形成されている。
【0003】
ところで、ピストンは、内燃機関の稼働条件によってストライベック曲線における境界潤滑領域−混合潤滑領域−流体潤滑領域にわたる幅広い潤滑条件下で作動する。そのため、ピストンのスラスト側と反スラスト側では潤滑状況が異なり、ピストンの部位によっても潤滑状況が異なる。
【0004】
このような潤滑状況の差異は、上記したスカート部内においても生じる。つまり、ピストンがシリンダ内面に沿って摺動する際に、スカート部には面圧の異なる複数の部分が発生し、この複数の部分のうちの面圧が高い部分(高面圧部)は油膜が薄い状態となり、特に、ピストンが上死点に達した際に油膜が最も薄くなる。これに伴って、焼付きや摩耗が発生しやすくなるという問題が生じる。
【0005】
このため、スカート部に潤滑油を保持させることを目的として、レーザーや切削加工によるパターニングによってスカート部の外周面に潤滑油溜りを形成する方法が提案されてきた。また、微視的に固体接触(スカート部とシリンダ内面の接触)が発生する境界潤滑領域や混合潤滑領域における耐焼付き性及び摺動特性を向上させるために、スカート部の外周面に表面処理を行う方法が提案されてきた。
【0006】
さらに、スカート部の外周面に上記したパターニングと表面処理を同時に行う方法も提案されており、その安価で簡便な方法の例として、樹脂コートに対するパターニングが存在する。また、ピストンの摺動時にスカート部の外周面の両端部(低面圧部)から中央部(高面圧部)に潤滑油を導くようにパターニングを行う方法が提案されている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−30521号公報
【特許文献2】特表2007−509279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されたピストンは、スカート部の外周面の中央部に潤滑油を保持させる機能が低かった。そのため、ピストンの摺動時にスカート部の外周面の中央部の油膜が薄くなり、スカート部とシリンダ内面の摩擦抵抗が大きくなって、燃費の低下を招く虞が有った。
【0009】
また、特許文献2に記載されたピストンにおいては、スカート部の中央に潤滑油の貯蔵チャネル(同文献の図3及び図3A参照)が設けられているものの、潤滑油の貯蔵量は不十分である。更に、この貯蔵チャネルは、ピストンの摺動方向(上下方向)と平行に設けられているため、ピストンの摺動に伴って貯蔵チャネル内の潤滑油が減少しやすいという問題が有る。
【0010】
そこで、本発明は上記の事情を考慮し、スカート部とシリンダ内面の摩擦抵抗を低減させ、燃費を向上させることが可能なピストンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、シリンダ内面に沿って摺動する際、スカート部の中央に高面圧部が発生し、該高面圧部の両側に低面圧部が発生する内燃機関用ピストンであって、前記高面圧部には、水平溝が設けられ、前記低面圧部には、前記高面圧部側に向かって下傾し、前記水平溝の端部に接続される傾斜溝が設けられていることを特徴とする。
【0012】
このような構成を採用することにより、ピストンの上昇時には、低面圧部から高面圧部に潤滑油を円滑に流入させ、ピストンの下降時には、潤滑油の一部を高面圧部に留めることが可能となる。そのため、ピストンが上死点に達した際においても、高面圧部に一定量の潤滑油を保持させて、高面圧部とシリンダ内面の固体接触を抑制することができる。これに伴って、高面圧部とシリンダ内面の摩擦抵抗を低減させ、燃費を向上させることが可能となる。
【0013】
また、前記水平溝には、少なくとも上下いずれか一方に向かって部分的に拡張する保持部が設けられていても良い。
【0014】
このような構成を採用することで、ピストンの昇降時に一定量の潤滑油を上記した保持部に保持させることが可能になり、高面圧部に潤滑油を保持させる機能が更に向上する。これに伴って、高面圧部とシリンダ内面の固体接触を一層効果的に抑制することが可能となり、高面圧部とシリンダ内面の摩擦抵抗を一層低減させることが可能となる。
【0015】
更に、前記傾斜溝には、少なくとも上下いずれか一方に向かって部分的に拡張する保持部が設けられていても良い。
【0016】
このような構成を採用することで、ピストンの昇降時に高面圧部だけでなく低面圧部にも一定量の潤滑油を保持させることができ、スカート部に潤滑油を保持させる機能が更に向上する。
【0017】
更にまた、前記水平溝及び前記傾斜溝は、上下に複数段ずつ所定の間隔を介して設けられ、前記各水平溝の間及び前記各傾斜溝の間には、前記水平溝及び前記傾斜溝とは独立した凹部が設けられていても良い。
【0018】
このような構成を採用することにより、凹部に常時一定量の潤滑油を保持させておくことが可能となり、スカート部に潤滑油を保持させる機能がより一層向上する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スカート部とシリンダ内面の摩擦抵抗を低減させ、燃費を向上させることが可能なピストンを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるピストンを示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかるピストンのスカート部において、(a)は、ピストン上昇時の潤滑油の流れを示す側面図であり、(b)は、ピストン下降時の潤滑油の流れを示す側面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態にかかるピストンを示す側面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】本発明の第3の実施形態にかかるピストンを示す側面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態にかかるピストンを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づき、本発明にかかるピストン1の好適な実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態について、図1、図2を用いて説明する。なお、本実施形態では説明の便のため、図1における左側をピストン1の正面側(前側)とした場合について説明する。
【0022】
図1に示されるように、ピストン1は、内燃機関のシリンダ2内に昇降可能に収納されている。ピストン1は、アルミ合金材などにより有蓋円筒形状に形成されている。ピストン1は、その上端に設けられるクラウン部3と、クラウン部3の前後両側から下方に延びる前後一対のピンボス部5と、クラウン部3の外周から下方に延びる左右一対のスカート部6(図1では、手前側のスカート部6のみを表示)と、を備えている。
【0023】
クラウン部3の上方には、シリンダ2とシリンダヘッド7の間に燃焼室8が形成されている。クラウン部3の外周には、環状のリング溝10が設けられ、このリング溝10にピストンリング(図示せず)が取り付けられている。
【0024】
各ピンボス部5には、ピン孔11が水平方向に設けられている。図示を省略するが、ピン孔11にはピストンピンが取り付けられ、このピストンピンを介して、ピストン1にコンロッドが接続され、コンロッドにはクランクシャフトが接続されている。そして、ピストン1の昇降運動がコンロッドを介してクランクシャフトの回転に変換されるように構成されている。
【0025】
各スカート部6は、シリンダ内面12に沿って弧状に湾曲している。スカート部6の外周面13には、樹脂コートが施されている。この樹脂コートは、例えば、二硫化モリブデン、グラファイト、PTFEなどの固体潤滑剤をポリアミドイミドなどの熱硬化性樹脂に分散させた薬剤を、スプレー式、スクリーン印刷式、パッド印刷式などの方式によりスカート部6の外周面13に塗布することで形成されており、薬剤の塗布部分が凸部、薬剤の非塗布部分が凹部(潤滑油溜まり)となっている。なお、図1及び図2において、薬剤の塗布部分S(樹脂コート部分S)には多数のドットが付されている(図3以降においても同様である)。
【0026】
内燃機関の稼働に伴うピストン1の摺動時において、スカート部6の外周面13は均一な応力分布とはならず、面圧の異なる複数の部分が発生する。例えば、本実施形態のスカート部6の場合、この複数の部分のうちの面圧が高い方の部分(以下、「高面圧部14」と称する。)がスカート部6の前後方向中央に発生し、上記した複数の部分のうちの面圧が低い方の部分(以下、「低面圧部15」と称する。)が高面圧部14の前後両側に発生する。なお、図1、図2において表示されている二点鎖線X、Xは、高面圧部14と低面圧部15の境界を示している(図3以降においても同様である)。
【0027】
スカート部6の高面圧部14には、水平方向(本実施形態では前後方向)に沿って水平溝16が設けられている。水平溝16は、クラウン部3のリング溝10と略平行に設けられている。水平溝16は、前述した樹脂コートに対するパターニングによって形成されている。つまり、樹脂コートが施されていない部分(薬剤の非塗布部分)が、水平溝16になっている。水平溝16は、上下に複数段ずつ所定の間隔を介して設けられている。
【0028】
スカート部6の低面圧部15には、高面圧部14側に向かって下傾する傾斜溝17が設けられている。傾斜溝17の水平方向に対する傾斜角度は5度〜60度であり、さらに好ましくは10度〜30度である。傾斜溝17は、上記した水平溝16と同様に、樹脂コートに対するパターニングによって形成されている。つまり、樹脂コートが施されていない部分(薬剤の非塗布部分)が傾斜溝17になっている。傾斜溝17は、上下に複数段ずつ所定の間隔を介して設けられており、傾斜溝17の高面圧部14側の端部は、水平溝16の両端部に接続されている。
【0029】
上記の如く構成されたものにおいて、スカート部6の外周面13の油膜は、ピストン1が上死点に達する際に最も薄くなり、これに伴って高面圧部14とシリンダ内面12の間で微視的な固体接触が発生し、摩擦抵抗の上昇や焼付きや摩耗が発生しやすくなる。これに対して、本実施形態では以下のようにして、上記各不具合を回避している。
【0030】
まず、ピストン1の上昇時には、図2(a)に矢印で示されるように、傾斜溝17から水平溝16に潤滑油が流入し、低面圧部15から高面圧部14に潤滑油が供給される。その際に、傾斜溝17が高面圧部14側に向かって下傾しているため、傾斜溝17に沿って潤滑油が水平溝16に円滑に流入する。これに伴って、油膜が薄く、潤滑状態が厳しくなる高面圧部14に潤滑油を集中させ、高面圧部14における油膜の希薄化を抑制することが可能となる。
【0031】
また、ピストン1の下降時には、図2(b)に斜め横向きの矢印で示されるように、一部の潤滑油が水平溝16の両端部から傾斜溝17に流出する。一方で、別の一部の潤滑油は、図2(b)の部分拡大図に上向きの矢印で示されるように、傾斜溝17に流出することなく、水平溝16によって高面圧部14内に保持される。
【0032】
本実施形態ではこのように、ピストン1の摺動時に発生する面圧の差でスカート部6の外周面13を領域分けし、高面圧部14と低面圧部15にそれぞれ異なるパターンの溝16、17を設けている。そして、ピストン1の上昇時には、低面圧部15から高面圧部14に潤滑油を円滑に流入させ、ピストン1の下降時には、潤滑油の一部を高面圧部14に留めている。そのため、従来技術と比較して高面圧部14の油膜を厚くすることが可能となり、ピストン1が上死点に達した際にも、高面圧部14に一定量の潤滑油を保持させることができる。これに伴って、高面圧部14とシリンダ内面12の固体接触を抑制することができ、高面圧部14とシリンダ内面12の摩擦抵抗を低減させることが可能となるため、摺動性及び燃費が向上する。
【0033】
また、本実施形態では、スカート部6の外周面13に施された樹脂コートに対するパターニングによって水平溝16及び傾斜溝17が形成されているため、安価且つ容易な方法により水平溝16及び傾斜溝17を形成することが可能となる。また、樹脂コートでスカート部6の潤滑機能を高めつつ、水平溝16及び傾斜溝17で潤滑油の保持機能を高めることができるため、高面圧部14とシリンダ内面12の摩擦抵抗を一層低減させて、燃費の向上を図ることが可能となる。
【0034】
本実施形態では、樹脂コートに対するパターニングによって水平溝16及び傾斜溝17を形成しているが、他の異なる実施形態では、レーザー加工や機械加工(切削加工)によってスカート部6の外周面13に対して直接パターニングを行っても良い。
【0035】
本実施形態では、水平溝16と傾斜溝17を上下に複数段ずつ所定の間隔を介して設けたが、他の異なる実施形態では、水平溝16と傾斜溝17が一段ずつであっても良い。
【0036】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について、図3及び図4を用いて説明する。なお、スカート部6の高面圧部14以外の部分の構成については、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
図3に示されるように、高面圧部14の各水平溝16には、上方に向かって部分的に拡張する複数個の上側保持部20aが設けられると共に、下方に向かって部分的に拡張する複数個の下側保持部20bが設けられている。各保持部20a、20bは、樹脂コートに対するパターニングによって形成されている。つまり、樹脂コートが施されていない部分(薬剤の非塗布部分)が、各保持部20a、20bになっている。
【0038】
図4に最も良く示されるように、各保持部20a、20bは半円状を成しており、上側保持部20aと下側保持部20bは、それぞれ対応する位置に設けられている。このような保持部20a、20bの形状及び配置は、各水平溝16を形成する直線状のパターンに正円状のパターンを組み合わせることで、容易に実現することができる。
【0039】
一の水平溝16に形成される各保持部20a、20bと上記した一の水平溝16の上下に配置される水平溝16に形成される各保持部20a、20bの位置は、前後にずれている。つまり、上下に隣接して配置された水平溝16同士で、各保持部20a、20bの位置が重ならないように配置されている。
【0040】
上記の如く構成されたものにおいて、各保持部20a、20bはピストン1の摺動に伴う影響を受けにくく、ピストン1の下降時には上側保持部20aに潤滑油が保持され、ピストン1の上昇時には下側保持部20bに潤滑油が保持される。これに伴って、潤滑油が水平溝16から傾斜溝17に流出するのを防止することが可能となり、ピストン1の昇降時に一定量の潤滑油を高面圧部14に保持させて、高面圧部14とシリンダ内面12の固体接触を一層効果的に抑制することが可能となる。これに伴って、高面圧部14とシリンダ内面12の摩擦抵抗を一層低減させることが可能となる。
【0041】
本実施形態では、各保持部20a、20bを半円状としたが、他の異なる実施形態では、各保持部20a、20bを三角形、四角形などの半円以外の形状としても良い。また、本実施形態では、上側保持部20aと下側保持部20bの両方を水平溝16に設ける場合について説明したが、他の異なる実施形態では、上側保持部20aと下側保持部20bのいずれか一方のみを水平溝16に設けても良い。但し、潤滑油が高面圧部14から低面圧部15に流出しやすいピストン1の下降時において一定量の潤滑油を高面圧部14に確実に保持させるためには、少なくとも上側保持部20aが形成されているのが好ましい。
【0042】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について、図5を用いて説明する。なお、スカート部6の低面圧部15以外の部分の構成については、第2の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0043】
第2の実施形態では、高面圧部14の水平溝16のみに上側保持部20a及び下側保持部20bを設けていたが、本実施形態では、高面圧部14の水平溝16だけでなく低面圧部15の傾斜溝17にも部分的に拡張する上側保持部21a及び下側保持部21bを設けている。
【0044】
傾斜溝17に設けられた各保持部21a、21bは、樹脂コートに対するパターニングによって形成されている。つまり、樹脂コートが施されていない部分(薬剤の非塗布部分)が、傾斜溝17になっている。
【0045】
各保持部21a、21bは半円状を成しており、上側保持部21aと下側保持部21bは、それぞれ対応する位置に設けられている。このような保持部21a、21bの形状及び配置は、各傾斜溝17を形成する直線状のパターンに正円状のパターンを組み合わせることで、容易に実現することができる。
【0046】
一の傾斜溝17に形成される各保持部21a、21bと上記した一の傾斜溝17の上下に配置される傾斜溝17に形成される各保持部21a、21bの位置は、前後にずれている。つまり、上下に隣接して配置された傾斜溝17同士で、各保持部21a、21bの位置が重ならないように配置されている。
【0047】
本実施形態のように、高面圧部14の水平溝16だけでなく低面圧部15の傾斜溝17にも上側保持部21a及び下側保持部21bを設けることで、ピストン1の昇降時において高面圧部14だけでなく低面圧部15にも一定量の潤滑油を保持させることができる。そのため、スカート部6に潤滑油を保持させる機能が更に向上する。
【0048】
なお、傾斜溝17に設ける各保持部21a、21bについても、水平溝16に設ける各保持部20a、20bと同様に、三角形、四角形等の半円以外の形状としても良い。また、本実施形態では、上側保持部21aと下側保持部21bの両方を傾斜溝17に設ける場合について説明したが、他の異なる実施形態では、上側保持部21aと下側保持部21bのいずれか一方のみを傾斜溝17に設けても良い。
【0049】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について、図6を用いて説明する。なお、スカート部6の高面圧部14と低面圧部15以外の部分の構成については、第3の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0050】
第4の実施形態では、上記した第3の実施形態の構成に加えて、水平溝16及び傾斜溝17とは独立した多数の凹部22がスカート部6の外周面13に設けられている。各凹部22は、樹脂コートに対するパターニングによって形成されている。つまり、樹脂コートが施されていない部分(薬剤の非塗布部分)が、凹部22になっている。各凹部22は、正円状を成している。換言すると、各凹部22は、正円状のパターンによって形成されている。本実施形態では、各水平溝16の間に凹部22が上下2段で各段複数個ずつ配置され、各傾斜溝17の間に凹部22が一段で複数個配置されている。なお、最上段の水平溝16及び傾斜溝17の上方には、凹部22が上下3段で各段複数個ずつ配置されている。
【0051】
各凹部22の位置は、その上下の凹部22及び保持部20a、20b、21a、21bの位置と前後にずれている。つまり、上下に隣接して配置された凹部22同士や凹部22と保持部20a、20b、21a、21bは、互いの位置が重ならないように配置されている。
【0052】
このように水平溝16、傾斜溝17、保持部20a、20b及び保持部21a、21bと、多数の凹部22を組み合わせることで、凹部22にも常時一定量の潤滑油を保持させておくことが可能となり、スカート部6に潤滑油を保持させる機能を一層高めて、摩擦抵抗を更に低減させることが可能となる。
【0053】
本実施形態では、凹部22を正円状としたが、他の異なる実施形態では、凹部22を三角形、四角形などの多角形や楕円などの正円以外の形状としても良い。
【0054】
なお、本発明に係るピストン1は、自動車、自動二輪車、雪上車、ATV(不整地走行車両)、船外機など、あらゆる用途の内燃機関に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 内燃機関用ピストン
6 スカート部
12 シリンダ内面
13 外周面
14 高面圧部
15 低面圧部
16 水平溝
17 傾斜溝
20a、20b 保持部
21a、21b 保持部
22 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内面に沿って摺動する際、スカート部の中央に高面圧部が発生し、該高面圧部の両側に低面圧部が発生する内燃機関用ピストンであって、
前記高面圧部には、水平溝が設けられ、
前記低面圧部には、前記高面圧部側に向かって下傾し、前記水平溝の端部に接続される傾斜溝が設けられていることを特徴とする内燃機関用ピストン。
【請求項2】
前記水平溝には、少なくとも上下いずれか一方に向かって部分的に拡張する保持部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ピストン。
【請求項3】
前記傾斜溝には、少なくとも上下いずれか一方に向かって部分的に拡張する保持部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関用ピストン。
【請求項4】
前記水平溝及び前記傾斜溝は、上下に複数段ずつ所定の間隔を介して設けられ、前記各水平溝の間及び前記各傾斜溝の間には、前記水平溝及び前記傾斜溝とは独立した凹部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関用ピストン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−36415(P2013−36415A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174062(P2011−174062)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】