説明

内燃機関用点火コイル

【課題】部品点数の増加や構造の複雑化を招くことなく、端末ピンと高圧端子との電気的接続性を安定させることのできる内燃機関用点火コイルを提供すること。
【解決手段】一次コイルと二次コイルとを鉄心で磁気的に結合させる鉄心・コイル組立体を絶縁ケース内に収納し、この絶縁ケースの下端に延設された筒状の高圧タワー内に配設した高圧端子と前記二次コイルの端末に接続した端末ピンとを接続する内燃機関用点火コイルであって、前記絶縁ケースの下端域で高圧タワーに臨む部位の一底壁を前記高圧タワーの中心軸線方向へ延設して係止片を構成し、前記係止片の下端と高圧タワーの下方から圧入された高圧端子とで前記端末ピンの先端部を押圧固定するので、部品点数の増加や構造の複雑化を招くことなく、端末ピンと高圧端子との電気的接続性を安定させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の内燃機関エンジンの点火プラグに火花放電を発生させるために高電圧を供給する内燃機関用点火コイルに関し、特に二次コイルと端末ピン(接続ピン)との接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の内燃機関用点火コイルの一例を示す縦断面図である。図3において、内燃機関用点火コイル11は、鉄心・コイル組立体12と、この鉄心・コイル組立体12を収容する合成樹脂製の絶縁ケース13と、二次端子(高圧端子)14と、絶縁ケース13内に各構成部品を絶縁しながら固定する絶縁性を有した熱硬化性樹脂15等から構成されている。
【0003】
また、鉄心・コイル組立体12は、鉄心16と一次コイルボビン17と、この一次コイルボビン17に配設され、一次端子に接続される一次端末ピン18A,18Bと、一次コイルボビン17の周囲に巻き付けられ、巻き始めが一次端末ピン18Aに接続されるとともに、巻き終わりが一次端末ピン18Bに接続される一次コイル19と、この一次コイル19と二次コイル21が同心円状に巻回される二次コイルボビン20と、この二次コイルボビン20の一端に配設され、二次コイル21と接続された二次端末ピン22とで構成されている。二次端末ピン22が圧接する二次端子14の円錐状部分に嵌合可能な筒状の仲介端子23が配設されている。そして、二次端末ピン22の仲介端子23に対応する部分にV字状の折り曲げ部22Vを設けたものが提案されている(特許文献1)。この従来例では、二次端末ピン22の弾性力を利用して高圧端子14と接触の安定を図っている。
【0004】
図4は、別の従来例を示す要部拡大断面図である。この実施例においては、接続端子41は、高圧端子42の上端に圧入されることによって拡径する環状部41aと、この環状部41aに連なり、環状部41aが拡径することによって間隔が窄んで二次コイルに接続された端末ピン43を両側から挟み込む第1、第2挟持片41b,41cとで構成され、この第1、第2挟持片41b,41c間に端末ピン43を圧入することにより、接続している。なお、第1、第2挟持片41b,41cの上端は、端末ピン43を保持し易くするために、上方が拡開している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3655870号公報
【特許文献2】特許第3595285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような構成の従来の内燃機関用点火コイルにおいて、特許文献1のように二次端末ピンの弾性力を利用して高圧端子と接触させる構造では、弾性力の低下等に起因する接触不良と云う不安定要素が存在した。
また、引用文献2に示すように、挟持片間に端末ピンを圧入する構造では、挟持片の構成が複雑になる上に、その高い寸法精度が要求されると云う欠点が存在した。
【0007】
この発明は、上記に鑑み提案されたもので、絶縁ケースの下端域で高圧タワーに臨む部位の一底壁を高圧タワーの中心軸線方向へ延設して係止片を構成し、この係止片の下端と高圧タワーの下方から圧入された高圧端子とで端末ピンの先端部を押圧固定するので、部品点数を増加することなく端末ピンと高圧タワーとの接続信頼性を向上できる内燃機関用点火コイルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に、一次コイルと二次コイルとを鉄心で磁気的に結合させる鉄心・コイル組立体を絶縁ケース内に収納し、この絶縁ケースの下端に延設された筒状の高圧タワー内に配設した高圧端子と前記二次コイルの端末に接続した端末ピンとを接続する内燃機関用点火コイルであって、前記絶縁ケースの下端域で高圧タワーに臨む部位の一底壁を前記高圧タワーの中心軸線方向へ延設して係止片を構成し、前記係止片の下端と高圧タワーの下方から圧入された高圧端子とで前記端末ピンの先端部を押圧固定することを特徴としている。
【0009】
また、本発明において、前記端末ピンの先端部は、前記係止片の突出方向と略平行に折曲して形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明は上記した構成からなるので、以下に説明するような効果を奏することができる。
【0011】
本発明では、一次コイルと二次コイルとを鉄心で磁気的に結合させる鉄心・コイル組立体を絶縁ケース内に収納し、この絶縁ケースの下端に延設された筒状の高圧タワー内に配設した高圧端子と前記二次コイルの端末に接続した端末ピンとを接続する内燃機関用点火コイルであって、前記絶縁ケースの下端域で高圧タワーに臨む部位の一底壁を前記高圧タワーの中心軸線方向へ延設して係止片を構成し、前記係止片の下端と高圧タワーの下方から圧入された高圧端子とで前記端末ピンの先端部を押圧固定するので、複雑な形状や高い寸法精度を必要とすることなく、端末ピンと高圧端子との電気的接続性を安定させることができる。また、部品点数の増加を招くこともない。
【0012】
また、本発明において前記端末ピンの先端部は、前記係止片の突出方向と略平行に折曲して形成されたので、端末ピン先端と高圧端子との接触範囲を広くすることができる。したがって、接続信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明に係る内燃機関用点火コイルの一例を示す縦断面図である。
【図2】図2は、同内燃機関用点火コイルの要部拡大断面図である。
【図3】図3は、従来の内燃機関用点火コイルの一例を示す縦断面図である。
【図4】図4は、従来の内燃機関用点火コイルの他の例を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
内燃機関用点火コイルにおいて、絶縁ケースの下端域で高圧タワーに臨む部位の一底壁を高圧タワーの中心軸線方向へ延設して係止片を構成し、この係止片の下端と高圧タワーの下方から圧入された高圧端子とで端末ピンの先端部を押圧固定するので、複雑な形状や高い寸法精度を必要とすることなく、端末ピンと高圧端子との間の電気的接続性を安定させることができる。
【実施例】
【0015】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、本発明に係る内燃機関用点火コイルの一例を示す縦断面図、図2は本願発明の内燃機関用点火コイルの要部拡大断面図である。ここで、内燃機関用点火コイル100は、一次コイル101と二次コイル102とを鉄心103で磁気的に結合させる鉄心・コイル組立体104を絶縁ケース105内に収納し、この絶縁ケース105の下端に延設された筒状の高圧タワー106内に配設した高圧端子107と前記二次コイル102の端末と電気的に接続した端末ピン108とを接続するものであって、前記絶縁ケース105の下端域で高圧タワー106に臨む部位105aの一底壁を前記高圧タワー106の中心軸線L方向へ延設して係止片109を構成し、前記係止片109の下端と高圧タワー106の下方から圧入される高圧端子107とで端末ピン108の先端部108aを押圧固定する構成となっている。また、絶縁ケース105の一側端には、一次端子111が収納された一次ソケット112が形成されており、この一次端子111が一次コイル101に接続されている。
【0016】
高圧タワー106は、絶縁ケース105の下端に連続して形成されており、その連続部位に係止片109が水平に突設されている。係止片109は、絶縁ケースの一底壁を筒状の高圧タワー106の中心軸線L方向へ延設して形成する。したがって、高圧タワー106の下方から圧入された高圧端子107は、この係止片109で上昇が押えられるとともに狭幅に形成された上端106aに嵌合して停止する。また、係止片109は、絶縁ケース105の底面の一部しか閉じていないので、開口した部分から端末ピン108を挿通することができる。更に、係止片109の下端面には、滑り止めの凹凸を形成してもよい。
【0017】
端末ピン108は、導電性材料から成り、二次コイル102の巻回されたコイルボビン113の一部に一端が挿入固定されるとともに、下方斜めで高圧タワー106の中心軸線L方向に延設され、先端部108a(自由端)が係止片109の突出方向と略平行に折曲して形成されている。
また、端末ピン108の先端部108aは、梨地或いは凹凸形状に構成してもよい。
【0018】
以上のような構造の内燃機関用点火コイルは、次のような手順で製造される。
先ず、絶縁ケース105の上端開口からに一次コイル101および二次コイル102がコイルボビンに巻回された鉄心・コイル組立体104の下端に端末ピン108を取り付けたものを、端末ピン108が下側になるように挿入する。
また、端末ピン108の先端部108aは、係止片109の下端に位置するように挿入する。次に、高圧タワー106の下方から高圧端子107を圧入する。また、一次端子111の後端と一次コイル101とは溶接等によって電気的に接続する。
このように、絶縁ケース105内に鉄心・コイル組立体104、端末ピン108等を収納した後、全体を真空槽に入れ、周囲を真空にした後に溶融した熱硬化性樹脂を真空注型し、熱硬化させて固定する。この際、絶縁ケース105の下端は、圧入された高圧端子107によって封鎖されている。
【0019】
次に、以上のように構成された内燃機関用点火コイル100は、係止片109の下端と高圧タワー106の下方から圧入された高圧端子107とで端末ピン108の先端部108aを押圧固定するので、部品点数の増加や構造の複雑化を招くことなく、端末ピンと高圧端子との電気的接続性を安定させることができる。
【符号の説明】
【0020】
100 内燃機関用点火コイル
101 一次コイル
102 二次コイル
103 鉄心
104 鉄心・コイル組立体
105 絶縁ケース
105a 下端域
106 高圧タワー
107 高圧端子
108 端末ピン
108a 先端部
109 係止片
111 一次端子
112 一次ソケット
113 コイルボビン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイルと二次コイルとを鉄心で磁気的に結合させる鉄心・コイル組立体を絶縁ケース内に収納し、この絶縁ケースの下端に延設された筒状の高圧タワー内に配設した高圧端子と前記二次コイルの端末に接続した端末ピンとを接続する内燃機関用点火コイルであって、
前記絶縁ケースの下端域で高圧タワーに臨む部位の一底壁を前記高圧タワーの中心軸線方向へ延設して係止片を構成し、
前記係止片の下端と高圧タワーの下方から圧入された高圧端子とで前記端末ピンの先端部を押圧固定することを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項2】
前記端末ピンの先端部は、前記係止片の突出方向と略平行に折曲して形成されたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−243737(P2011−243737A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114358(P2010−114358)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000174426)阪神エレクトリック株式会社 (291)
【Fターム(参考)】