説明

内蓋付きタンク

【課題】 本発明は、塗料、接着剤、インキ、オイル等の粘稠性と流動性のある液状物を、保管、運搬するためのタンクであって、タンク内部の液面を覆うように設けた内蓋の位置を検知することによってタンク内に貯留された液状物の量を管理できる内蓋付きタンクにおいて、該タンク内部や内蓋の点検や清掃作業を簡便にした液面レベル計付きのタンクを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明による内蓋付きタンクは、底部を有する胴部を立設していて該胴部の上部に上蓋を設けてなるタンクと、該タンク内に貯留された液状物の液面を覆っていて液状物の液面変化に追従して移動する内蓋と、底部に連通された流出入管とを備えた内蓋付きタンクであって、内蓋に連結したワイヤーを、当該タンク胴部側壁上部を貫通するワイヤー導管を経由して当該タンク外壁部に付設した液面レベル計に連結することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、接着剤、インキ、オイル等の粘稠性と流動性のある液状物を、保管、運搬、供給等するためのタンクに関する。特にタンク内部の液面を覆うように設けた内蓋の位置を検知することによって、タンク内に貯留された液状物の量を管理できる内蓋付きタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷インキ等の液状物をその製造工場から次の処理工程の工場やユーザーへ供給する方式の一つとしてタンクローリーの使用が挙げられる。また使用形態や納入形態及び需要形態によって、ユーザーへの輸送には、使い捨てのドラム缶にインキを充填して搬送する方式や、タンク内にインキを充填して運搬し使用後に回収して再度インキを充填して搬送するという通い式タンク方式等が採用されている。使い捨てのドラム缶は、廃棄処理による環境問題等があるために、近年では通い式タンク方式が用いられることが多くなっている。
【0003】
通い式タンク方式を用いた場合、例えば液状物が高粘度の塗料やインキの場合はタンク内の液の表面(液面)が空気との接触により乾燥し、皮膜を形成して異物となることがある。特に印刷インキの場合、異物が混入すると、印刷物に転写されて品質に悪い結果をもたらすことがある。
【0004】
このような問題を防ぐために、タンク内の液状物の液面上に自重で落下する内蓋を配設し、液状物の使用による液面の低下に追従して前記内蓋が落下し、液面が空気と接触することを防止する技術が開発されている。
【0005】
このような従来技術の一例として、特許文献1に開示された内蓋付きタンクがある。この技術によれば、タンク内のインキ液面上に液面の低下に応じて自重で降下する内蓋を配設し、内蓋に取り付けたワイヤーをタンク上部開口部に被着された上蓋を通してタンク外部に引き出して、先端に液面計の錘(おもり)を吊り下げる構成としている。そしてインキの使用によって液面が低下すると、タンク外部の錘が上昇することになり、この錘の位置で内蓋の高さ(レベル高さ)を検出しようとするものである。
【0006】
そしてタンク内のインキを使用して、内蓋が底面近くに下降してインキ残量が少なくなった時に、錘の位置を目視により確認するか、自動的に残量警報を出力させることにより、タンクの交換をすることになる。
【0007】
タンク内にホコリやゴミ等が侵入することを防ぐためにも、上蓋を開けてタンク内の内蓋を直接観察することは好ましくない。またタンクの外周面の一部に窓を設けて、外部から液面を直接目視しようとしても、インキの付着によって窓が遮蔽され目視できない。そのために、上述のように錘の位置によって、間接的にインキの液面や残量を検出せざるを得なかったのである。
【0008】
【特許文献1】特開平9−188388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところでインキの消費による液面低下に伴って、内蓋はタンク内を液面に追従して密着しつつ自重で下降するものであるが、内蓋の傾き、内蓋に取り付けられた掻き取り部材の偏圧、タンク内壁面に付着したインキ固化物等が原因となり、摺動抵抗が大きくなって、液面に追従して十分降下しないことがある。このため内蓋の状態を点検する必要があるが,内蓋に連結したワイヤーが上蓋を通してタンク外面に付設した液面レベル計に結合されているとワイヤーを一旦液面レベル計の指示錘から切り離す必要があり,点検作業が簡単にはできない。
【0010】
またインキの消費による液面低下に伴って、内蓋はタンク内を液面に追従して密着しつつ自重で円滑に下降する必要があるが,このためにはタンク内壁面に付着したインキ固化物や内蓋の汚れ等を定期的に清掃しなければならない。内蓋と液面計とを連結するワイヤーが、タンク上面に載置する上蓋を通して設置されている場合は、連結ワイヤーをはずして上蓋を取り外す必要があるが、容易でない。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、タンク内部の点検や清掃作業を簡便にした内蓋付きタンクの液面レベル計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による内蓋付きタンクは、底部を有する胴部を立設していて該胴部の上部に上蓋を設けてなるタンクと、該タンク内に貯留された液状物の液面を覆っていて液状物の液面変化に追従して移動する内蓋と、底部に連通された流出入管とを備えた内蓋付きタンクであって、内蓋に連結したワイヤーを当該タンク胴部側壁上部を貫通するワイヤー導管を経由して当該タンク外壁部に付設した液面レベル計に連結することを特徴とする。
【0013】
内蓋の上面には,ワイヤー連結用のアイボルトが固定されており,末端にロック付きワイヤーフックを設けたワイヤーが自在に繋留されている。このワイヤーは、タンク胴部上部に設けられた貫通部を通して,タンク外壁面に付設されている液面計の指示用錘に連結されている。
【0014】
内蓋に固着されるワイヤー連結用アイボルトの位置は、平面配置において、ワイヤーを液面計に引き出すタンク貫通部とともに、内蓋の中心と液面計とを結ぶ直線上にあり,液面計を付設したタンク胴部の内壁面に接する内蓋の外周部から内蓋の中心までの間が好ましい。
【0015】
タンク内部の内蓋とタンク胴部外面に付設された液面計の指示用錘とを連結するワイヤーが、タンク胴部の上部に設けられた貫通部を通して設置されることにより,満杯近傍においては液面低下に伴う液面計の移動量が少なく,残量が少なくなった状態では液面低下に伴う液面計の変化量が大きくなることで,タンクの切り替え時点を検知するという実際上の有利な効果を得るためには、内蓋の中心から液面計側の内壁面に接する内蓋の外周までの距離の2分の1までの位置がより好ましい。
【0016】
タンク内の液体が満杯近傍にある時と、残量が少なくなった時の液面計の表示の変化量の差を大きく取るためには、内蓋に固着されるワイヤー連結用アイボルトの位置を、液面計に対し内蓋の中心部の反対側に設置すれば良いが、こうした場合、内蓋の回り止めが無ければ振動等の原因で、内蓋のワイヤー連結部が液面計側に来てしまうため、液面計の表示がタンク液面を反映したものとならなくなる。
【0017】
タンク壁面貫通部の構造は,内蓋と液面計表示錘を連結するワイヤーがタンク液面の変化に伴い、引っかかる等の液面レベルと連動しない現象を惹起しないで摺動することが必要である。したがってタンク壁面にワイヤーを通す穴を開けただけの構造では、ワイヤーが鋭角に折れ曲がるため好ましくない。これを避けるために導管または滑車等の手段が採用できる。
【0018】
導管の形状として、タンク内部とタンク外部では異なることが望ましい。タンク内側においては,内蓋の連結部と液面計の錘とを結ぶワイヤーが、タンク内液面の上下移動に伴って内蓋連結部と導管端部とがなす角度が振れた場合でも導管端部に当たらないように広げておくことが好ましい。タンク外部の導管開口部は,タンク液面計の直上に位置することが必要であり、かつ下向きに開いていることが好ましい。また導管の形状は下向きの変形したU字状を呈しており、直管部があってもよいが、連結用ワイヤーの摺動抵抗をできるだけ少なくするために、タンク貫通部の両端の曲がり部は円弧状をなしていることが望ましい。導管の内径は、ワイヤーが円滑に摺動可能であることが必要であるが,過大であることは不必要であり,ワイヤー径の2倍〜20倍程度が適当である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る内蓋付きタンクによれば、上蓋の着脱が自由に行えるので,タンク内部の点検や清掃作業が簡略化できる。
【0020】
また、タンク内部の内蓋とタンク外面に付設された液面計の指示用錘とを連結するワイヤーが、タンク胴部壁面上部に設けられた貫通部を通して設置されるため,満杯近傍においては液面低下に伴う液面計の移動量が少なく,残量が少なくなった状態では液面低下に伴う液面計の相対的な変化量が大きくなり,タンクの切り替え時点を検知するという実際上の有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明の実施形態を添付図面により説明する。
【0022】
図1は本発明の第一の実施の形態による内蓋付きタンクの概略構成図、図2は内蓋付きタンク胴部側壁貫通部の形状を示す模式図、図3は内蓋に固着されたワイヤー繋留用アイボルトと、液面レベル計表示用錘と、連結するワイヤー及びタンク胴部貫通部の位置関係を示す図、図4はタンク内における液面の低下と内蓋の降下に伴う液面レベル計表示用錘の変化量を示す模式図である。
【0023】
図1に示す本発明の実施の形態による内蓋付きタンクにおいて、タンク1は例えば有底略円筒形状を有しており、円筒状の胴部2とその底面3とを有しており、上部開口には上蓋4が取り外し可能に装着されている。タンク1の内部には粘性を有する液状体として例えば平版オフセットインキ等の油性のインキkが収容されている。タンク2内に満たされたインキkの液面K1には落とし蓋として液面の変化に応じて自重で昇降可能な内蓋5が密着して配設されている。
【0024】
内蓋5はタンク1の胴部2の内径より若干小さい外径を有する円盤形状を有しており、材質は例えばSUSで重さ30〜50kg程度であり、厚みは例えば200mm程度に設定されている。内蓋5の外周面5aには径方向外側に全周に亘って内蓋5の傾斜を抑制する水平保持部6が設けられており、その外径は胴部2の内壁面2aの内径よりわずかに小さい。そして外周面5aには水平保持部6の上下に可撓性を有する下部シール部材7aと上部シール部材7bがそれぞれ設けられている。
【0025】
各シール部材7a、7bは水平保持部6より径方向長さが大きく、下部シール部材7aは胴部2の下方へ、上部シール部材7bは、胴部2の上方に湾曲して先端がそれぞれ内壁面2aに当接させられている。そのため、特に内蓋5の降下時や上昇時にはシール部材7a、7bで胴部2の内壁面2aに付着するインキを掻き取りながら摺動することになる。
【0026】
内蓋5の上面5bには、内蓋5の高さを検出するために、胴部2の外壁面2bに略垂直に取り付けられた液面計ガイド兼目盛り板8および液面計表示錘9とからなる液面計が設置され、この液面計の液面計表示錘9と、液面計ガイド兼目盛り板8の上部で胴部2を貫通して設置される液面計用ワイヤー導管10を通してワイヤー11で結ばれる連結リング12が固定されている。この連結リングは、内蓋5の中心から液面計用ワイヤー導管10が設置される胴部側の内蓋5の外周まで設置できる。
【0027】
タンク1の底面3の下側にはタンク1を運搬するためにフォークリフトのフォークを差し込むための脚部13が複数設けられている。タンク1の底面3には、インキkを外部に流出させたりタンク内部に流入させるための流出入管14の一端が連結され、この流出入管14の他端は、この図で図示されないポンプの圧送部に連結されている。流出入管14は底面3との間に開閉バルブ15が設けられ、更に図示されないポンプ圧送部に向かって着脱可能な接続口部16が設けられている。
【0028】
図2は、タンク貫通部の構造を説明する模式図である。(a)図は、筒状の構造になっており、タンク外側は湾曲して開口部が直下を向くようになっている。タンク内側の開口部はラッパ状に拡大した構造になっており、内蓋に連結したワイヤーが、液面の上下動によって動くことによっても接触しないようにしている。(b)は、貫通部にワイヤーの動きを支える滑車を設けた例である。この滑車の径は、タンク壁面の厚みよりも大きく、かつ液面計の錘が液面計ガイド兼目盛り板8に対して、円滑に動けるだけの距離を確保できる大きさである。
(c)は、貫通部の内側と外側におのおの1個づつ滑車を設けた構造であり,(b)と同様な機能を有する。(b)および(c)については、雨滴等のタンク内部への侵入を防止するために、ワイヤーの動きを阻害しない形状を有するカバーを設置することができる。
【0029】
図3は、内蓋と液面計の指示錘を結ぶワイヤーの繋留位置の関係を説明する図である。Cは内蓋の中心点であり、貫通部導管10と液面計ガイド8と同一断面上にある。
例として、ワイヤー繋留用アイボルトの固定位置が、内蓋の中心Cに対し貫通部の反対側にあってこれらと同一断面上にある図3のM3の位置である。このときの液面計の位置を9’とする。タンク内部の液体を消費せずに運搬等の振動がかかった状態では,何らかの内蓋の回転防止機構がないと内蓋が回転することがあり、その場合にはワイヤー係合用アイボルトの位置は、最も貫通部に近づいたときは内蓋の中心点Cに対してM3とは反対側のM1になる。このとき液面計のレベル表示は9の位置になり、内蓋の位置を正しく指示できない。したがって、液面レベル計と内蓋とのワイヤー係合位置は、内蓋の中心点Cと液面計ガイド8側の内蓋外周部M2との間に限定され、望ましくは内蓋の中心点Cと、CとM2の中間点との範囲が良い。
【0030】
図4は、タンク1に収容されるインキの量の多少によって、液面レベルの変化に伴う液面レベル計の変化量の関係を示す図である。タンク1に満杯に入った状態でのインキレベルをL1とし、このときのレベル計の指示錘の位置はP1とする。レベル計の指示錘に結合されたワイヤーは、タンク胴部上部に設けられた貫通部を通して内蓋の中心線を表すTとL1の交点A1の位置で、内蓋に繋留されている。インキの使用によって少しインキのレベルが下がった状態の液面位置をL2とする。このとき、ワイヤーの繋留点A1はBになるとすると、液面レベル計の指示錘はP1から引き上げられ、その引き上げ量は、ワイヤー貫通部のタンク内側端点をSとすると、L2位置でのワイヤー繋留点Bとの距離SBから、レベルL1での繋留点A1とSとの距離SA1を半径とし、Sを中心とする円弧R1とSBとの交点をA2とするとき、A2Bの距離となる。
【0031】
同様に、タンク1内のインキ量がかなりの程度減った場合のインキレベルをL3とし、このときの液面レベル計の錘の位置はP2とする。使用により更にインキ液面がL4まで低下し、液面差L1−L2=L3−L4となるとする。このとき、L3でのワイヤーの繋留点C1はDになるとすると、液面レベル計の錘はP2から引き上げられ、その引き上げ量は、ワイヤー貫通部のタンク内側端点をSとすると、L4位置でのワイヤー繋留点Dとの距離SDから、レベルL3での繋留点C1とSとの距離SC1を半径とし、Sを中心とする円弧R2とSDとの交点をC2とすると、C2Dの距離となる。
【0032】
図4より明らかなように、C2D>A2Bであり、液面計への連結するワイヤーをタンク胴部上面から貫通部を通じて引き出すことにより、タンク内部のインキ量が満杯に近い状態での単位インキ使用量当たりの変化量が小さく、これに対し、タンク内インキ残量が少なくなった状況での単位インキ使用量当たりの変化量が大きくなる。これは、通常残量の管理が重要であるので、使用上の有利な効果となる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
上述の発明は、塗料、粘性剤、インキ、オイル等の粘稠性と流動性のある液状体物を、保管、運搬、供給等をするためのタンクに用いられ、特にタンク内部の液面の変化に対して、液面を覆うように設けた内蓋の位置を検知することによってタンク内に貯留された液状物の量を管理できる容器に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態による内蓋付きタンクの概略構成図を示す。
【図2】本発明の内蓋付きタンク胴部貫通部の形状を表す模式図を示す。
【図3】本発明の内蓋のワイヤー繋留用アイボルトと液面レベル計表示用錘、連結するワイヤー及びタンク胴部貫通部の位置関係を表す配置図を示す。
【図4】タンク内における液面の低下と内蓋の降下に伴う液面レベル計表示用錘の変化量を表す模式図を示す。
【符号の説明】
【0035】
1 タンク
2 胴部
3 底面
4 上蓋
5 内蓋
6 水平保持部
7a 下部シール部材
7b 上部シール部材
8 液面計ガイド兼目盛り板
9 液面計指示錘
10 ワイヤー貫通部
11 ワイヤー
12 繋留用アイボルト
13 脚部
14 流出入官
15 開平バルブ
16 接続口
k インキ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部を有する胴部を立設して、該胴部の上部に上蓋を設けてなるタンクと、該タンク内に貯留された液状物の液面を覆っていて液状物の液面変化に追従して移動する内蓋と、前記底部に連通された流出入管とを備えた内蓋付きタンクであって、液状物の液面に追従する前記内蓋の位置を検知して液面レベルを表示する手段として、タンク胴部側壁の上部を貫通する穴を通して前記内蓋と液面レベル表示部とを結合するワイヤー等の連結手段と,前記貫通部直下でかつタンク外壁に設けられた液面レベル表示部を備えてなる内蓋付きタンク。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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