説明

内装ボードの取付け構造

【課題】 内装ボードを建築物の躯体壁に対して高精度に且つ迅速に取付け、交換、取外しを可能とし、併せて再利用を可能とすることができる取付け構造を提供することを課題とする。
【解決手段】 受け具1を躯体壁2に取り付けると共に、掛け具3を内装ボード4に取付け、受け具1と掛け具3とを係合することにより躯体壁2に内装ボード4を着脱可能に取付けることを基本とする。受け具1は板状部材にて形成し、その一部を膨出した鉤受け状の受け部5とし、掛け具3は同じく板状部材にて形成し、その一部を突出して更に屈曲した鉤状の掛け部6とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物の躯体壁に内装ボードを着脱可能に装着する取付け構造に関するものであり、より詳しくは取付け施工を高精度化、効率化、迅速化し、取外し作業を効率化、迅速化し、併せて取外し後の原形維持、再利用を可能とすることができる内装ボードの取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内装ボードは建築物の躯体壁に対して接着剤や両面粘着テープなどにて装着されるのが通常であり、建築物の解体や模様替えなどの際には原形を留めて剥がす事が不可能なため殆どが廃棄処分されており、凡そ使い捨てとされていた。更に、内装ボードを剥がす際には躯体壁も損傷することから、模様替えの際には躯体壁も修復あるいは新規に造作する必要があり、損傷した躯体壁も殆どが廃棄処分され凡そ使い捨てとされていた。
また、取付け施工においては平面性の確保や位置合せなど高度な施工技術と相当な作業時間も要するものであり、予てより内装ボードを高精度に短時間で取付けることができる手段が切望されていた。また併せて、躯体壁を損傷せず原形を留めて内装ボードを迅速に取外し、取外し後の内装ボードや躯体壁を有効に再利用することも強く望まれていた。
【0003】
尚、以上および以下の記述において、「建築物の躯体壁」とは、コンクリート壁や木造壁および木製や金属性の枠組に板材や断熱材などを施した下地、あるいは間仕切り壁など、凡そ建築物の縦構成面を広く意味する用語として用いるものである。また、「内装ボード」とは、例えば石膏やケイ酸カルシウムなどから成る板状の部材、および、これにフィルムシートやクロスなどを貼着したり塗装や印刷を施すなどして装飾性を高めた化粧パネルの類を含めたものなど、凡そ内装用の薄板部材を広く意味する用語として用いるものである。
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような現状に鑑みて成されたものであり、内装ボードを建築物の躯体壁に対して高精度に且つ迅速に取付け、交換、取外しを可能とし、併せて再利用を可能とすることができる取付け構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような課題を解決するために、本発明の内装ボードの取付け構造は、板状部材の一部を膨出した鉤受け状の受け部とした受け具を躯体壁に取付けると共に、板状部材の一部を突出して更に屈曲した鉤状の掛け部とした掛け具を内装ボードに取付け、受け具と掛け具とを係合することにより躯体壁に内装ボードを着脱可能に装着することを基本とするものである。また、鉤状の掛け部はバネ性を備えると共に先端部分に受け部を受入れるための湾曲部を備えるものとするほか、鉤受け状の受け部は下方が狭くなるテーパー形状とする。更に、受け具や掛け具は金属製の板状部材をプレス加工により形成するものである。
そして、本発明の内装ボードの接続具は、隣接する内装ボード同士を接続する接続具であって、一方および他方の内装ボードの各々に固定する一対の接続片から成り、両者接合状態における全体の最大厚み寸法を内装ボードと躯体壁との隙間寸法と略同寸法とすると共に、全体の最小巾寸法を一定寸法とするものである
【発明の効果】
【0007】
本発明の内装ボードの取付け構造は、このような構成としたことにより、取付け施工の高精度化、効率化、迅速化を図り、取外し作業を効率化、迅速化することができ、併せて取外し後の原形維持、再利用を可能とすることができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
【実施例】
【0009】
本発明の実施例を以下、図面に基づいて説明する。尚、各図に共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1および図2は本発明の実施例を示す概略斜視図であり、図1は全体の構成を示し、図2は受け具と掛け具の詳細を示すものである。
本発明に係る内装ボードの取付け構造は、図1に示すように受け具1を躯体壁2に取り付けると共に、掛け具3を内装ボード4に取付け、受け具1と掛け具3とを係合することにより躯体壁2に内装ボード4を着脱可能に取付けることを基本とするものである。
【0010】
受け具1は図2に示すように板状部材にて形成し、その一部を膨出した鉤受け状の受け部5としたものであり、掛け具3は同じく図2に示すように板状部材にて形成し、その一部を突出して更に屈曲した鉤状の掛け部6としたものである。
この例においては受け部5と掛け部6は各々3ヶ所に設けてあり、受け部5の巾寸法Aは掛け部6の巾寸法Bよりも長いものとすることにより、互いに係合した状態で掛け部6を横方向に移動することが可能となっている。従って、躯体壁2に対して内装ボード4を水平状態に維持しつつスライドさせて取付け位置を微調整することが可能となっており、また、内装ボード4の荷重を3ヶ所に分散させることにより十分な耐荷重強度を確保することができるようになっている。
尚、受け具1を躯体壁2に取付けるには、平面部7を利用して各種のビスなどにて固定することができる。また、掛け具3を内装ボード4に取付けるには、内装ボード4が壊れやすい薄板部材であるため平面部8を利用して接着剤にて固定することが好ましく、この平面部8は大面積であることから接着剤の使用について好都合である。
【0011】
受け具1および掛け具3は、このように板状部材にて形成するものであり、その部材面を荷重方向に平行とすることにより十分な強度を有しつつ、併せて隙間を極力少なくして躯体壁2に内装ボード4を装着することができるものであり、そして、極めて簡素な構成にて必要とされる機能を存分に発揮するものである。
また、受け具1および掛け具3はプラスチックなど合成樹脂にて形成することも可能であるが、特に板状部材を金属製としてプレス加工にて形成すれば、強度やコストにおいて格段に有利である。更に、掛け具3を金属製とした場合には、高周波加熱タイプの接着剤を使用することができ、製造や施工においてコストや時間の低減が可能となり一層好都合なものとなる。
【0012】
図3(a)および図3(b)は、受け具1と掛け具3との係合を示す概略断面図である。先ず、図3(a)の状態から内装ボード4を上方へ移動すると共に躯体壁2に接近させ、次いで、図3(b)のように内装ボード4を下方へ移動することにより、受け部5と掛け部6とが係合して内装ボード4を躯体壁2に装着することができる。
尚、掛け具3の掛け部6はバネ性を備えて受け部5を強く挟持することができるようになっており、受け具1と掛け具3との密着性を高めることにより、装着後に内装ボードが不用意に動くことを防止できるようになっている。また、掛け部6の先端部分には湾曲部6aが設けられており、内装ボード4を下方へ移動する際に掛け部6が受け部5を受け入れ易くすることができるようになっている。
【0013】
図4(a)、図4(b)、図4(c)は、それぞれ本発明の他の実施例を示すものであり、図4(a)は受け具9の概略斜視図、図4(b)は受け具9を躯体壁2に装着した状態の概略断面図、図4(c)は受け具9と掛け具3との係合を示す概略断面図である。
受け具9は、図4(a)および図4(b)に詳しく示すように、鉤受け状の受け部10の下方が狭くなるテーパー形状としたものである。従って、図4(c)に示すように、掛け具3の掛け部6と受け具9の受け部10とが係合した際にバネ性を備えた掛け部6が大きく変位することにより、バネの付勢力を一層強く作用させて受け部10を強力に挟持することができ、受け具9と掛け具3との密着性を更に高めることができるようになっている。
【0014】
図5(a)、図5(b)、図5(c)および図6(a)、図6(b)、図6(c)は、それぞれ本発明の内装ボードの取付け構造と共に使用する笠木11と巾木12の例を示し、併せて躯体壁2に内装ボード4を装着する際の手順を示す概略断面図である。
笠木11は、建築物の天井面(不図示)と内装ボード4の上部との間に介する横長部材であり、巾木12は、建築物の床面(不図示)と内装ボード4の下部との間に介する横長部材であり、共に躯体壁2に固定されており、内装ボード4の上部と下部を収容して保護すると共に装飾性を高めるものである。
内装ボード4の装着に際しては、先ず、図5(a)および図6(a)に示すように内装ボード4を少し傾斜させて上部を笠木11内に挿入する。次いで、図5(b)および図6(b)に示すように内装ボード4を更に上方へ移動させながら下部を躯体壁2に接近させて傾斜を戻し垂直状態とする。そして、図5(c)および図6(c)に示すように内装ボード4を下方へ移動させて下部を巾木12内に納めて着座させる。この間に受け具と掛け具は互いに係合しており、これにて躯体壁2に内装ボード4を装着することができるようになっている。
笠木11および巾木12は金属製のほか樹脂製とすることも自在であり、種々の素材を用いて形成することができ、更に適宜の装飾を施して内装ボード4の意匠性に適合させることが好ましい。
【0015】
尚、以上および以下の記述において、「鉤状」とは、先端部分を屈曲させたフック状の形状であり、凡そ何らかの物に引掛けることが可能な形状を広く意味する用語として用いるものであり、また、「鉤受け状」とは、孔(穴)や凸縁および隙間や線条など、凡そ上記の「鉤状」とした形状のものに引掛けられることが可能な形状を広く意味する用語として用いるものである。
従って、本発明の内装ボードの取付け構造における受け具の受け部および掛け具の掛け部は、上記に示す実施例の形状に限るものでなく、凡そ板状部材を基本として膨出や突出あるいは屈曲などの形状変化を与えて形成することができる様々な形状が考えられる。
【0016】
図7は本発明の内装ボードの接続具の実施例を示す一部断面概略図である。接続具13は一方の内装ボード4に固定する接続片13Aと、他方の内装ボード4に固定する接続片13Bとから成る一対のものである。接続片13Aは断面が略U字形状を呈するものであり、接続片13Bは断面が略クランク形状を呈するものであり、両者はそれぞれ隣接する一方および他方の内装ボード4の裏面の縦辺縁に全長に亘る長さで固定されている。
これら一対の接続片13Aと接続片13Bの両者を接合状態とした全体の最大厚み寸法Sは、内装ボード4と躯体壁2との隙間寸法と略同寸法としていることから、内装ボード4の縦辺縁が押されて撓んだり異音が発生することを防止することができるものである。
また、接続片13Aと接続片13Bの両者を接合状態とした全体の最小巾寸法Wを一定寸法としていることから、内装ボード4同士の隙間寸法Pを一定とすることができる。
このことは、内装ボードの「目透かし」貼り施工において目地となる隙間の寸法を正確に一定とし且つ迅速に仕上げることが現場にて調整不要で可能となるものであり、高級感を醸し出して有益な「目透かし」貼り施工を高精度化し高効率化する絶大な効果を有するものである。また、接続片13Bの表面を「目透かし」の底目地として予め内装ボード4の意匠と同意匠に仕上げておくことにより、更に施工を高効率化することが可能となる。
【0017】
図8(a)、図8(b)、図8(c)、図8(d)は、それぞれ本発明の内装ボードの接続具の他の実施例の幾つかを示す一部断面概略図である。
図8(a)は図7に示す先の実施例の接続片13Aと、断面が板状部材の一部を折り返した形状を呈する接続片14Bとを一対として成る接続具14を示すものである。
図8(b)は断面が階段状の二段クランク形状を呈する接続片15Aと、断面が平板形状を呈する接続片15Bとを一対として成る接続具15を示すものである。
図8(c)はそれぞれ断面がアングル鋼材(不等辺山形鋼)形状を呈する接続片16Aと16Bとを一対として成る接続具16を示すものである。
図8(d)は断面が一部逆階段形状を呈する弾性部材にて形成した接続片17Aと、断面が平板形状を呈する接続片15Bとを一対として成る接続具17を示すものである。
このように、本発明の内装ボードの接続具は様々な形状や構造が多々考えられるものであり、これらの例に限らず、要は一対の接続片の接合状態における全体の最大厚み寸法を内装ボードと躯体壁との隙間寸法と略同寸法とし、全体の最小巾寸法を一定寸法とするものであれば同様に使用できるものであり、本発明の内装ボードの取付け構造にて使用して尚好ましいものである。
尚、隣接する内装ボード4同士を隙間無く貼り詰める場合にも、本発明の内装ボードの接続具を上述の隙間寸法Pが0(ゼロ)になるように設定して利用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
以上、説明してきた如く本発明の内装ボードの取付け構造は、このような構成としたことにより、内装ボードを建築物の躯体壁に対して高精度に且つ迅速に取付け、交換、取外しを行なうことができる。
建築の現場においては、極めて多種類の作業が行なわれることから、各作業は他の作業の合間を縫って限られた期間内に行なう必要がある。内装ボードの装着作業については、下地調整や寸法取りなどの前準備を始め、高所用の作業台や機材資材の搬入、そして装着作業や細かい位置の調整など、一連の作業には高度な施工技術と相当な作業時間も要するものである。本発明によれば、予め躯体壁の所定の位置に受け具を装着しておき、一方、内装ボードには他の場所にて予め所定の位置に掛け具を装着しておけば、現場に搬入して直ちに装着することが可能であり、また、細かい位置の調整も装着後に可能なことから、全体の作業を極めて短期間に且つ効率的に精度良く行なうことができる。従って、例えば商業施設の模様替えなどを新装開店の前夜に速やかに行うことなども可能となる。
また、取外しは極めて容易なことから短時間で行なうことができるほか、壊れ易い内装ボードの原形を維持して取外すことが可能なことから、これを再度利用することも可能となる。
更には、躯体壁を損傷せずに内装ボードを取外すことができることから、躯体壁も有効に再利用することが可能となる。
本発明の内装ボードの取付け構造は、このように機能および効果において産業的に高い能力と優位性を持つものであり、更には構造として極めて簡素で製造容易性や経済性にも優れるものであり、その利用可能性は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 本発明の実施例の全体構成を示す概略斜視図。
【図2】 図1に示す実施例の受け具1と掛け具3の詳細を示す斜視図。
【図3】 (a)および(b)はそれぞれ図1および図2に示す実施例の受け具1と掛け具3との係合を示す概略断面図。
【図4】 (a)は本発明の他の実施例である受け具9を示す要部斜視図。(b)は受け具9の詳細を示す概略断面図。(c)は受け具9と掛け具3との係合を示す概略断面図。
【図5】 (a)、(b)、(c)はそれぞれ本発明の実施例の使用状態を示す概略断面図。
【図6】 (a)、(b)、(c)はそれぞれ本発明の実施例の使用状態を示す概略断面図。
【図7】 本発明の内装ボードの接続具の実施例を示す一部断面概略図。
【図8】 (a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ本発明の内装ボードの接続具の他の実施例を示す一部断面概略図。
【符号の説明】
1、9 … 受け具
2 … 躯体壁
3 … 掛け具
4 … 内装ボード
5、10 … 受け部
6 … 掛け部
6a … 湾曲部
13、14、15、16、17 … 接続具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の躯体壁に内装ボードを着脱可能に装着する取付構造であって、板状部材の一部を膨出した鉤受け状の受け部とした受け具を躯体壁に取付けると共に、板状部材の一部を突出して更に屈曲した鉤状の掛け部とした掛け具を内装ボードに取付け、受け具と掛け具とを係合することにより躯体壁に内装ボードを装着するものである内装ボードの取付け構造。
【請求項2】
鉤状の掛け部は、バネ性を備えると共に先端部分に受け部を受入れるための湾曲部を備えたものである請求項1に記載の内装ボードの取付け構造。
【請求項3】
鉤受け状の受け部は、下方が狭くなるテーパー形状としたものである請求項1に記載の内装ボードの取付け構造。
【請求項4】
受け具および/または掛け具は、金属性の板状部材をプレス加工により形成したものである請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の内装ボードの取付け構造。
【請求項5】
隣接する内装ボード同士を接続する接続具であって、一方および他方の内装ボードの各々に固定する一対の接続片から成り、両者接合状態における全体の最大厚み寸法を内装ボードと躯体壁との隙間寸法と略同寸法とする共に、全体の最小巾寸法を一定寸法とするものである内装ボードの接続具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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