説明

内視鏡の保管方法及び内視鏡

【課題】内視鏡の保管時に、内視鏡内部の管路に汚れや菌が付着することを簡単に防ぐことができる内視鏡の保管技術を提供する。
【解決手段】管路を有する内視鏡の保管工程(S16)において、殺菌成分及び抗菌成分のうち少なくともいずれか一方を含むゲル状の充填体が内視鏡の管路(鉗子チャネル)に充填される(S20)。管路に充填された充填体は冷却等により固化され(S22)、固化した充填体を管路に配置した状態で内視鏡は保管される。そして、内視鏡の使用前に固化した充填体を管路から除去することで(S24)、内視鏡保管時に汚れや菌が管路に付着することを有効に防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路を有する内視鏡の保管方法及び内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、手術等の治療時に患者の体内に挿入されて汚れや菌が付着するため、内視鏡を繰り返し使用する場合には洗浄消毒を行って汚れや菌を内視鏡から適切に取り除く必要がある。内視鏡に付着したこのような汚れや菌(バイオフィルム等)を効率的に除去するため、洗剤や消毒剤を利用して内視鏡を洗浄消毒することが一般に行われている。
【0003】
洗浄消毒後の内視鏡は、再び使用されるまで、汚れや菌が付着しないように保管される。
【0004】
例えば特許文献1は、紫外線ランプを備える保管庫を開示する。この装置では、紫外線ランプを含む殺菌手段により除菌及び脱臭された空気が保管庫本体内に送り出されるようになっており、外気取り入れ口の吸入空気量よりも排気口の排気空気量を少なくすることで庫内を常時陽圧とし、保管庫の扉を開けた際に外気が庫内に侵入することを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−340783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、内視鏡を繰り返し使用する場合には、洗浄消毒プロセスにおいて使用後の内視鏡から汚れや菌を取り除くだけではなく、洗浄消毒プロセスを経た内視鏡に汚れや菌が付着しないように再使用時まで適切に保管することが要求される。
【0007】
とりわけ内視鏡内部の管路(例えば鉗子チャネル等)は、外部に露出されておらず、管路内の汚れや菌をユーザーが簡単には確認することができないので、保管時の内部管路に対する汚れや菌の付着については特に注意を払うことが望まれる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のような紫外線ランプを備える保管庫では、内部管路に対する汚れや菌の付着について、特段の工夫はなされていない。また、紫外線ランプを備える保管庫は比較的大型になるため、そのような保管庫を容易には設置・導入することはできず、設置場所も制限される。したがって、洗浄消毒プロセスが行われる場所の近くに保管庫を設置することができない場合には、洗浄消毒された内視鏡を保管庫まで運ぶ間に汚れや菌が内視鏡の管路内に付着してしまう懸念がある。同様に、内視鏡を再使用する場所の近くに保管庫を設置することができない場合には、内視鏡を保管庫から出して再使用するまでの間に汚れや菌が内視鏡の管路内に付着してしまう懸念もある。
【0009】
したがって、使用直前まで、内視鏡管路に対する汚れや菌の付着を防ぐことができる簡便な手法の提案が望まれている。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、内視鏡の保管時に、内視鏡管路に汚れや菌が付着してしまうことを簡便に防ぐことができる内視鏡の保管方法及び内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、管路を有する内視鏡の保管方法であって、殺菌成分及び抗菌成分のうち少なくともいずれか一方を含む充填体により前記管路を充填する充填工程と、前記内視鏡の使用前に前記充填体を前記管路から除去する除去工程とを備えることを特徴とする内視鏡の保管方法に関する。
【0012】
本態様によれば、管路に充填された充填体によって、充填工程〜除去工程の間、汚れや菌が管路に付着することを簡便に防ぐことができる。また、充填体が管路に存在している間、充填体の殺菌成分や抗菌成分によって管路に対する菌の着床を効果的に防ぐことができる。
【0013】
なお、ここでいう「充填体」は、管路に充填可能であれば特に限定されず、その状態も限定されない。また、ここでいう「殺菌成分」は菌を殺す成分全般を指し、「殺菌」の概念には所謂「滅菌」や「除菌」の概念が含まれうる。また「抗菌成分」は、菌の増殖を抑える成分全般を指し、その対象は特に限定されない。
【0014】
前記管路に充填された前記充填体を固化する固化工程を更に備え、前記充填工程において、流動性を示す前記充填体を前記管路に注入し、前記除去工程において、固化した前記充填体を前記管路から除去することが好ましい。
【0015】
本態様によれば、管路に注入時の充填体は流動性を示すため管路の隅々にまで充填体を簡単に充填することができるとともに、管路から除去する際には充填体が固化しているため簡単に充填体を管路から除去することができる。ここでいう「流動性を示す充填体」は、流動性を示す任意の充填剤を含みうる概念であり、所定条件下で固化可能な液体物質やゲル状物質が含まれうる。
【0016】
前記充填体は、細長状の充填部材を有し、前記充填工程において、前記管路に前記充填部材を挿入することが好ましい。
【0017】
本態様によれば、細長状の充填部材が管路に挿入されるため、充填体(充填部材)の管路への充填及び管路からの引き抜きを容易に行うことができる。
【0018】
前記充填部材は、前記管路の断面径よりも大きな断面径から、前記管路の断面径と同じ大きさの断面径に変形可能な弾性を有することが好ましい。
【0019】
本態様によれば、充填部材の弾性によって、充填部材を管路に対して適切に充填することができる。
【0020】
前記充填体は、前記充填部材に保持される充填剤を更に有し、前記充填剤は、前記殺菌成分及び抗菌成分のうち少なくともいずれか一方を含有することが好ましい。
【0021】
本態様によれば、充填部材が保持する充填剤を管路に充填する状態を実質的に実現することができる。
【0022】
前記充填部材を介して前記管路内に前記充填剤を補充する充填剤補充工程を更に備えることが好ましい。
【0023】
本態様によれば、充填剤が管路から揮発等して減少しても、更なる充填剤が管路内に補充可能となっており、長時間にわたって、汚れや菌が管路に付着することを防ぐことができる。
【0024】
前記充填工程において前記管路に前記充填体を充填した後に、密閉手段により前記管路を密閉する密閉工程を更に備えることが好ましい。
【0025】
本態様によれば、管路が密閉手段により密閉されるので、管路から充填体が出て行ってしまうことを確実に防ぐことができるだけではなく、外部からの異物(汚れや菌等)の管路内への浸入も防ぐことができる。
【0026】
本発明の別の態様は、管路と、前記管路内に配設される充填体であって、殺菌成分及び抗菌成分のうち少なくともいずれか一方を含む充填体とを備え、前記充填体は、前記内視鏡の使用前に除去されることを特徴とする内視鏡に関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、充填体を管路に充填して内視鏡が保管され、内視鏡の使用前に充填体が管路から除去されるため、内視鏡保管時に汚れや菌が管路に付着してしまうことを充填体によって簡便且つ効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】内視鏡を示す斜視図である。
【図2】鉗子チャネルを示す図であり、(a)は鉗子チャネルの正面図を示し、(b)は鉗子チャネルの一部の断面図を示す。
【図3】内視鏡を繰り返し使用する場合の全体の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の第一実施形態に係る内視鏡の保管工程を示す流れ図である。
【図5】管路に充填体を注入するために用いられる注入具の一例を示す図であり、(a)は注入具の外観の概略構成図であり、(b)は図5(a)の符号「A」で示される範囲の拡大図である。
【図6】図5(a)及び図5(b)に示される注入具の使用例を示す断面拡大図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る充填部材の例を示す断面図であり、(a)はブラシ部を具備する充填部材を示し、(b)はスポンジ部を具備する充填部材を示す。
【図8】本発明の第二実施形態の変形例を示す部分断面図であり、(a)はブラシ部を具備する充填部材の変形例を示し、(b)はスポンジ部を具備する充填部材の変形例を示す。
【図9】本発明の第三実施形態に係る鉗子チャネルを概略的に示す断面図であり、蓋部により鉗子チャネルを密閉する密閉工程を説明する図である。
【図10】本発明の第三実施形態の一変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、理解を容易にするため、各図面に描かれる装置構成の大きさ(縮尺)は必ずしも一致していないが、各装置間の関係は当業者であれば各図面から当然に理解されるものである。
【0030】
本発明は、管路を有する内視鏡の保管技術に係り、清浄な状態の内視鏡の管路に充填体を充填した状態で保管し、内視鏡の使用前に当該充填体を管路から除去するものである。
【0031】
まず、本発明の清浄対象となる内視鏡の一例について説明する。
【0032】
<内視鏡の構造>
図1は、内視鏡100の一例を示す斜視図である。内視鏡100は、術者によって把持される手元操作部12と、この手元操作部12に連設され被験者の体内に挿入される挿入部14とを備える。
【0033】
手元操作部12にはユニバーサルケーブル16が接続され、ユニバーサルケーブル16の先端にはLGコネクタ18が設けられる。このLGコネクタ18は、不図示の光源装置に着脱自在に設けられており、この光源装置に連結されることによって、挿入部14の先端部44に配設される照明光学系52に照明光を送ることができる。またLGコネクタ18には、ケーブル22を介して電気コネクタ24が接続され、電気コネクタ24は不図示のプロセッサに対して着脱自在に設けられている。電気コネクタ24をこのプロセッサに接続することによって、内視鏡100で得られた観察画像のデータがプロセッサに出力され、さらにプロセッサに接続されたモニタ(不図示)に画像を表示することができる。
【0034】
また手元操作部12には、送気・送水ボタン26、吸引ボタン28、シャッターボタン30及び機能切替ボタン32が並設される。送気・送水ボタン26は、挿入部14の先端部44に配設された送気・送水ノズル54からエアや水を噴射するための操作ボタンであり、先端部44に設けられた観察光学系(観察レンズ)50に向けて送気・送水ノズル54からエアや水が噴出するようになっている。また吸引ボタン28は、先端部44に配設された鉗子口56から病変部等を吸引するための操作ボタンであり、シャッターボタン30は、観察画像の録画等を操作するための操作ボタンであり、機能切替ボタン32は、シャッターボタン30の機能等を切り替えるための操作ボタンである。
【0035】
また手元操作部12には、一対のアングルノブ34、34及びロックレバー36、36が設けられる。アングルノブ34を操作することによって湾曲部42が湾曲操作され、ロックレバー36を操作することによってアングルノブ34の固定及び固定解除が操作される。
【0036】
さらに、手元操作部12には鉗子挿入部38が設けられており、この鉗子挿入部38は先端部44の鉗子口56に連通されている。鉗子等の処置具(不図示)は、この鉗子挿入部38から挿入され可撓管40内部の鉗子チャネルを通って鉗子口56から導出可能となっている。
【0037】
一方、挿入部14は、手元操作部12側から順に、可撓管40、湾曲部42、及び先端部44が配設されて構成される。湾曲部42は、前述の手元操作部12のアングルノブ34により調節されて湾曲自在に設けられており、先端部44の端面に設けられた観察光学系(観察レンズ)50、照明光学系52、送気・送水ノズル54及び鉗子口56の位置及び方向を適切に調整することができるようになっている。可撓管40は、円筒状に形成された可撓性を有する部材であり、多層構造によって被験者に挿入時に必要とされる柔軟性及び剛性が確保されている。
【0038】
図2(a)及び図2(b)は、鉗子挿入部38と鉗子口56との間に設けられる鉗子チャネル57を示す図であり、図2(a)は鉗子チャネル57の正面図を示し、図2(b)は鉗子チャネル57の断面図を示す。
【0039】
鉗子チャネル57は、ポリテトラフルオロエチレン(商品名:テフロン(登録商標))、ポリエチレン、ポリオレフィン等から成るベース部58によって壁面が構成され、円形の断面形状を有する。鉗子挿入部38から鉗子チャネル57に挿入される鉗子等の処置具は、鉗子チャネル57に導かれ、鉗子口56を経て患部に到達する。
【0040】
上述のような構成を有する内視鏡100を被験者に対して使用すると、被験者の体液や病片に含まれる汚れや菌が内視鏡100に付着し、外部に露出する箇所だけではなく、鉗子等の処置具が通過する鉗子チャネル57等の内部管路にも汚れや菌が付着する。したがって、使用後の内視鏡100を再び使用する場合には、洗浄消毒によって内視鏡100に付着した汚れや菌を取り除いた状態で、次回の使用時まで保管する必要がある。
【0041】
<内視鏡を繰り返し使用する際のフロー>
図3は、内視鏡を繰り返し使用する場合の全体の流れを示すフローチャートである。
【0042】
被験者に対して内視鏡100が使用され(図3のS10)、汚れや菌が付着した内視鏡100は、その使用履歴から使用限度に達していないか否かが判定される(S11)。対象の内視鏡100が多数回使用される等により使用限度に達しており更なる洗浄消毒や使用に適さないと判定される場合(S11のYES)、当該内視鏡100は再使用されずメーカー等に送られて、適切なメンテナンスを受ける。
【0043】
一方、対象の内視鏡100が使用限度には達しておらず更なる洗浄消毒や再使用が可能であると判定される場合(S11のNO)、当該内視鏡100は洗浄消毒処理を受けて、付着していた汚れや菌が取り除かれる(S12)。
【0044】
ここでいう洗浄消毒処理は、内視鏡100から汚れや菌などの異物を除去することができる任意のプロセスを含みうる。例えば、ブラシやシートなどによって内視鏡100の予備洗浄を行った後、洗剤(酸性洗剤、アルカリ(塩基)洗剤、酵素洗剤、等)により油脂成分やタンパク成分を洗い流す本洗浄を行って、消毒剤(殺菌剤、抗菌剤、等)により内視鏡100を消毒することにより、内視鏡100の洗浄消毒処理を行うことも可能である。
【0045】
そして、洗浄消毒工程により清浄化された内視鏡100は、汚れや菌が付着しないように保管され(S13)、その後、再使用に供される(S10)。
【0046】
このように「内視鏡の使用(内視鏡使用工程)」、「内視鏡の洗浄消毒(洗浄消毒工程)」、及び「内視鏡の保管(保管工程)」を繰り返すことにより、内視鏡100は繰り返し使用されることとなる。
【0047】
本発明は、これらの各工程のうち内視鏡の保管工程において、特に内視鏡内部の管路に対して汚れや菌が付着してしまうことを効果的に防ぐものである。
【0048】
以下、内視鏡の保管工程に関し、本発明の各実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態では、一例として、内視鏡100の鉗子チャネル57に対して本発明を適用する場合について説明するが、他の内視鏡管路に対しても同様に本発明を適用することが可能である。
【0049】
<第一実施形態>
図4は、本発明の第一実施形態に係る内視鏡の保管工程を示す流れ図である。
【0050】
本実施形態に係る内視鏡の保管工程では、流動性を示す固化可能な充填体が管路(鉗子チャネル)に注入されて、管路が充填体によって満たされる(図4のS20「充填工程」)。そして、充填体は管路内において固化され(S21「固化工程」)、固化した充填体を管路内に配設した状態で内視鏡100は保管される。そして当該内視鏡100の使用前に、固化した充填体が管路から引き抜かれ(S22「除去工程」)、その後、内視鏡100は使用されることとなる。
【0051】
本実施形態で用いられる「流動性を示す固化可能な充填体」は、例えばゲル状の寒天を主成分として含み、殺菌成分及び抗菌成分のうち少なくともいずれか一方を含む。具体的には、消毒用エタノール、イソプロパノール等の殺菌成分や、カテキン、銀イオン等の抗菌成分を充填体は含みうる。なお、本実施形態で用いられる充填体は、上述の各工程(充填工程(S20)、固化工程(S21)、及び除去工程(S22))を適切に実施することが可能であれば、特に限定されない。
【0052】
図5(a)は、充填工程(図4のS20参照)において鉗子チャネル57に充填体を注入するために用いられる注入具60の一例を示す外観構成図であり、図5(b)は、注入具60の一部範囲(図5(a)の符号「A」で示される範囲)の拡大図である。
【0053】
本実施形態で用いられる注入具60は、細長状の円筒部材によって構成され、その円周側面において多数の吐出口62が千鳥状に配設される。注入具60の一端部に設けられる注入口64から注入具60の中空内部に注入される充填剤(図5(a)の矢印B参照)は、注入具60の側面の各吐出口62から射出されるようになっている。なお、注入具60内の充填剤に適圧を作用させて各吐出口62から充填剤を適切に射出するために、注入具終端66は閉端構造を有する。
【0054】
図6(a)〜図6(e)は、図5(a)及び図5(b)に示される注入具60の使用例を示す断面図であり、鉗子チャネル57の一部分を拡大した図面である。
【0055】
本実施形態に係る充填工程(図4のS20参照)では、まず、内視鏡100の鉗子挿入部38(図1参照)から鉗子チャネル57に注入具60が挿入され、鉗子チャネル57の略全域に注入具60が配設される(図6(a)参照)。そして、鉗子チャネル57内に配設される注入具60の吐出口62から充填剤68が射出され(図6(b)参照)、鉗子チャネル57が充填剤68によって満たされる(図6(c)参照)。
【0056】
そして、鉗子チャネル57内に注入具60が配設された状態のまま、鉗子チャネル57に充填された充填剤68は冷却されて固化され(図6(d)参照(固化工程))、次回の使用時まで、固化した充填剤68及び注入具60を鉗子チャネル57内に配置した状態で内視鏡100が保管される。そして、次回の使用の直前に充填剤68及び注入具60を鉗子チャネル57から引き抜いて(図6(e)参照(除去工程))、内視鏡100は再使用に供される。
【0057】
なお、鉗子チャネル57に対する汚れや菌の付着を防止する観点からは、固化後の充填剤68が鉗子チャネル57の壁面(ベース部58)に密着した状態で、内視鏡100が保管されることが好ましい。しかしながら、充填剤68は固化により収縮して鉗子チャネル57の壁面(ベース部58)から離間してもよく、このような場合、注入具60及び充填剤68を鉗子チャネル57から容易に引き抜くことができるという利点がある。
【0058】
以上説明したように本実施形態によれば、鉗子チャネル57をゲル状の充填剤68によって満たし、内視鏡100の次回使用時まで、注入具60と共に充填剤68を鉗子チャネル57に配置した状態にしておくことで、内視鏡100の保管時に鉗子チャネル57に汚れや菌が付着してしまうことを簡単に防ぐことができる。
【0059】
また、充填剤68を鉗子チャネル57から除去する際に充填剤68は固化状態となっているため、鉗子チャネル57から充填剤68を簡単に引き抜くことができる。したがって、内視鏡100の再使用直前まで充填剤68を鉗子チャネル57内に滞在させておいても、注入具60と共に固化した充填剤68を鉗子チャネル57から素早く取り除くことができ、本実施形態に係る内視鏡の保管技術はユーザビリィティーに優れている。
【0060】
<第二実施形態>
次に本発明の第二実施形態について説明する。本実施形態において、上述の第一実施形態と同じ要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0061】
図7(a)は、本発明の第二実施形態において鉗子チャネル57に充填部材70が挿入された状態を示す断面図である。
【0062】
上述の第一実施形態では、注入具60を介してゲル状の充填剤68を鉗子チャネル57に充填しているが、第二実施形態では、充填剤を保持する細長状の充填部材70が鉗子チャネル57に挿入される。
【0063】
充填部材70は、鉗子チャネル57内に配置されることとなるブラシ部72を具備し、このブラシ部72は液状の充填剤を一本一本のブラシ間に保持する。ブラシ部72により保持される充填剤は、上述の第一実施形態で用いられる充填剤と同様に、殺菌成分及び抗菌成分のうち少なくともいずれか一方を含有する。なお本例で用いられる充填剤は、特に限定されないが、揮発し難い成分組成を有することが好ましい。
【0064】
このような構成の充填部材70のブラシ部72を鉗子チャネル57に挿入すると、実質的に、ブラシ部72が保持する充填剤が鉗子チャネル57に充填された状態となる。そのため、充填部材70のブラシ部72を鉗子チャネル57に挿入した状態で次回使用時まで内視鏡100を保管することによって、保管時の鉗子チャネル57に対する汚れや菌の付着・着床を防ぐことができる。そして、内視鏡100を使用する際には、充填部材70を鉗子チャネル57から簡単に引き抜くことができる。
【0065】
なお、充填部材70のブラシ部72は、鉗子チャネル57と相似の円形の断面形状を有し、通常時は鉗子チャネル57の断面径Dよりも大きな断面径を有するが、外力が加えられることによって、鉗子チャネル57の断面径Dと同じ大きさの断面径を有するように形状弾性による変形が可能となっている。
【0066】
このブラシ部72の弾性により、鉗子チャネル57の壁面(ベース部58)に対してブラシ部72を着実に当接させることができ、ブラシ部72が保持する充填剤を鉗子チャネル57に充填した状態を簡単に実現することができる。また、鉗子チャネル57の形状が途中で変化して複数段の断面径を鉗子チャネル57が有する場合であっても、ブラシ部72の弾性変形により、鉗子チャネル57の内壁面(ベース部58の表面)にブラシ部72を適切に当接させることができる。
【0067】
次に、本実施形態の一変形例について説明する。図7(b)は、本発明の第二実施形態の一変形例を示す断面図である。図7(b)に示す充填部材70は、ブラシ部72の代わりにスポンジ部74を具備し、このスポンジ部74が液状の充填剤を保持する。本変形例のスポンジ部74も、鉗子チャネル57と相似の円形の断面形状を有し、通常時は鉗子チャネル57の断面径Dよりも大きな断面径を有するが、外力が加えられることによって、鉗子チャネル57の断面径Dと同じ大きさの断面径を有するように体積弾性による変形が可能となっている。
【0068】
本変形例のスポンジ部74は図7(a)のブラシ部72と同様に作用し、スポンジ部74を鉗子チャネル57に挿入した状態で次回使用時まで内視鏡100を保管することによって、保管時の鉗子チャネル57に対する汚れや菌の付着・着床を防ぐことができる。
【0069】
なお、液状の充填剤をブラシ部72(図7(a)参照)やスポンジ部74(図7(b)参照)によって保持する例について説明したが、他の態様の充填剤をブラシ部72やスポンジ部74によって保持してもよい。例えばゲル状の充填剤をブラシ部72やスポンジ部74によって保持してもよく、また微粒子等の固形成分を含有する充填剤をブラシ部72やスポンジ部74によって保持してもよい。
【0070】
また、殺菌成分及び抗菌成分のうち少なくともいずれか一方をブラシ部72自体又はスポンジ部74自体が含むように充填部材70を構成することによって、ブラシ部72自体又はスポンジ部74自体を充填剤として活用することも可能である。
【0071】
さらに、ブラシ部72(図7(a)参照)やスポンジ部74(図7(b)参照)の代わりに、他の弾性部材を用いることも可能である。
【0072】
次に、本実施形態の他の変形例について説明する。図8(a)及び図8(b)は、本発明の第二実施形態の変形例を示す部分断面図であり、図8(a)は図7(a)に示す例の変形例を示し、図8(b)は図7(b)に示す例の変形例を示す。
【0073】
図8(a)及び図8(b)に図示される変形例では、充填剤補充ユニット75が充填部材70に接続され、充填剤補充ユニット75から充填部材70に充填剤が適宜送られるようになっている(充填剤補充工程)。充填部材70に補充された充填剤は、鉗子チャネル57内に送られるようになっており、充填剤補充ユニット75から充填部材70を介して鉗子チャネル57内に充填剤を送る構成は任意である。例えば、充填部材70がブラシ部72やスポンジ部74に連通する中空部(図示省略)を有し、充填剤補充ユニット75から送られてくる充填剤がこの中空部を通ってブラシ部72やスポンジ部74に補充されるように構成することもできる。
【0074】
<第三実施形態>
次に本発明の第三実施形態について説明する。本実施形態において、上述の第一実施形態と同じ要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0075】
図9は、本発明の第三実施形態において注入具60が挿入された状態の鉗子チャネル57を概略的に示す断面図である。なお図9には、鉗子チャネル57や当該鉗子チャネル57の壁面を構成するベース部58が示されているが、理解を容易にするため、他の隣接要素についての図示は省略する。
【0076】
本実施形態では、注入具60によって充填剤68が鉗子チャネル57に充填された後に、蓋部76(密閉手段)によって鉗子チャネル57が密閉される(密閉工程)。すなわち、充填剤が鉗子チャネル57に充填されると(図4のS20参照)、鉗子チャネル57の両端(鉗子挿入部38及び鉗子口56)の各々が蓋部76によって塞がれ、鉗子チャネル57は外部と遮断されて密閉される。これにより、鉗子チャネル57に充填された充填剤の揮発を抑えることができるとともに、汚れや菌が外部から鉗子チャネル57内に浸入することを確実に防ぐことができる。なお、蓋部76は、注入具60及び充填剤68を鉗子チャネル57から引き抜く際(除去工程)に、鉗子チャネル57から取り外される。
【0077】
蓋部76の構成は特に限定されず、鉗子チャネル57を密閉することが可能で、充填剤に対して耐性を有する任意の蓋部76を用いることができる。また、注入具60の注入口64側の端部が鉗子チャネル57の外部に存在することが可能なように、注入具60が貫通可能な貫通部(図示省略)を蓋部76は有する。
【0078】
なお、図9に示す例は上述の第一実施形態に対して蓋部76を適用した例に関するが、この蓋部76は上述の第二実施形態に対しても適用可能であり、図9に示す注入具60を第二実施形態の充填部材70(図7及び図8参照)に置き換えてもよい。この場合にも蓋部76によって、充填部材70のブラシ部72(図7(a)及び図8(b)参照)やスポンジ部74(図7(b)及び図8(b)参照)に保持される充填剤の揮発を抑えることができるとともに、汚れや菌が外部から鉗子チャネル57内に浸入することを確実に防ぐことができる。
【0079】
また図10は、本発明の第三実施形態の一変形例を示す断面図である。本変形例では、液状の充填剤68のみが鉗子チャネル57に充填され、鉗子チャネル57の両端(鉗子挿入部38及び鉗子口56)には蓋部76が取り付けられる。
【0080】
蓋部76によって鉗子チャネル57を密閉する場合には、本変形例のように液状の充填剤68のみを鉗子チャネル57に充填した状態で、内視鏡100を保管することも可能である。液状の充填剤68のみを鉗子チャネル57に充填して内視鏡100を保管する際には、図4のS21に示すような充填体の固化工程は省略され、液状のまま充填剤68が鉗子チャネル57から排出除去される。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、他の形態に対しても適宜応用可能である。
【符号の説明】
【0082】
12…手元操作部、14…挿入部、16…ユニバーサルケーブル、18…LGコネクタ、22…ケーブル、24…電気コネクタ、26…送水ボタン、28…吸引ボタン、30…シャッターボタン、32…機能切替ボタン、34…アングルノブ、36…ロックレバー、38…鉗子挿入部、40…可撓管、42…湾曲部、44…先端部、52…照明光学系、54…送水ノズル、56…鉗子口、57…鉗子チャネル、58…ベース部、60…注入具、62…吐出口、64…注入口、66…注入具終端、68…充填剤、70…充填部材、72…ブラシ部、74…スポンジ部、75…充填剤補充ユニット、76…蓋部、100…内視鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路を有する内視鏡の保管方法であって、
殺菌成分及び抗菌成分のうち少なくともいずれか一方を含む充填体により前記管路を充填する充填工程と、
前記内視鏡の使用前に前記充填体を前記管路から除去する除去工程とを備えることを特徴とする内視鏡の保管方法。
【請求項2】
前記管路に充填された前記充填体を固化する固化工程を更に備え、
前記充填工程において、流動性を示す前記充填体を前記管路に注入し、
前記除去工程において、固化した前記充填体を前記管路から除去することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の保管方法。
【請求項3】
前記充填体は、細長状の充填部材を有し、
前記充填工程において、前記管路に前記充填部材を挿入することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の保管方法。
【請求項4】
前記充填部材は、前記管路の断面径よりも大きな断面径から、前記管路の断面径と同じ大きさの断面径に変形可能な弾性を有することを特徴とする請求項3に記載の内視鏡の保管方法。
【請求項5】
前記充填体は、前記充填部材に保持される充填剤を更に有し、
前記充填剤は、前記殺菌成分及び抗菌成分のうち少なくともいずれか一方を含有することを特徴とする請求項3又4に記載の内視鏡の保管方法。
【請求項6】
前記充填部材を介して前記管路内に前記充填剤を補充する充填剤補充工程を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡の保管方法。
【請求項7】
前記充填工程において前記管路に前記充填体を充填した後に、密閉手段により前記管路を密閉する密閉工程を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の内視鏡の保管方法。
【請求項8】
管路と、
前記管路内に配設される充填体であって、殺菌成分及び抗菌成分のうち少なくともいずれか一方を含む充填体とを備え、
前記充填体は、前記内視鏡の使用前に除去されることを特徴とする内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−65905(P2012−65905A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214107(P2010−214107)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】