説明

内視鏡の湾曲装置

【課題】最大屈曲角度が大きい湾曲方向に配置された湾曲操作ワイヤが短期間の使用で破損せず、総分解修理までの期間の長い耐久性の優れた内視鏡の湾曲装置を提供すること。
【解決手段】湾曲部2の最大屈曲角度が最も大きい湾曲方向に配置された湾曲操作ワイヤ7Uを挿通案内するワイヤガイド8Uが、湾曲部2の最大屈曲角度が最も小さい湾曲方向に配置された湾曲操作ワイヤ7Dを挿通案内するワイヤガイド8Dより摩擦係数の小さな材料で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡の湾曲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡においては一般に、観察方向を自由に変えることができるように、可撓性挿入部の先端部分に設けられた湾曲部を遠隔操作によって任意の方向に任意の角度だけ屈曲させることができるようになっている。
【0003】
そのような内視鏡の湾曲装置においては、可撓性挿入部内から湾曲部内にわたって挿通配置された複数の湾曲操作ワイヤを可撓性挿入部の基端側から選択的に牽引操作することにより、その牽引された湾曲操作ワイヤが配置されている方向に湾曲部が屈曲するように構成され、湾曲部内には、複数の湾曲操作ワイヤを個別に緩く挿通案内するワイヤガイドが、湾曲操作ワイヤの数と位置に合わせて例えば90°間隔で4ヵ所に配置されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−159212
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内視鏡の湾曲部は各方向にいくらでも屈曲させることができるように構成することができれば理想的であるが、光学繊維束等のような内蔵物の耐久性の問題があるので、特定の方向(例えば、観察範囲の上方向)のみに大きな最大屈曲角度を与えて他の方向の最大屈曲角度はある程度抑制した仕様とする場合が少なくない。したがって、大きな最大屈曲角度が与えられた方向の湾曲操作ワイヤに他に比べて大きな張力が作用する。
【0005】
その結果、最も大きな最大屈曲角度が与えられた方向の湾曲操作ワイヤがワイヤガイドとの摩擦により比較的早期に破損して、内視鏡の総分解修理という重修理が必要になる場合がある。
【0006】
そこで本発明は、最大屈曲角度が大きい湾曲方向に配置された湾曲操作ワイヤが短期間の使用で破損せず、総分解修理までの期間の長い耐久性の優れた内視鏡の湾曲装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の湾曲装置は、遠隔操作によって屈曲する湾曲部が可撓性挿入部の先端部分に設けられ、可撓性挿入部内から湾曲部内にわたって挿通配置された複数の湾曲操作ワイヤを可撓性挿入部の基端側から選択的に牽引操作することにより、その牽引された湾曲操作ワイヤが配置されている方向に湾曲部が屈曲するように構成された内視鏡の湾曲装置であって、複数の湾曲操作ワイヤを個別に緩く挿通案内するワイヤガイドが湾曲部内に配置されたものにおいて、湾曲部の最大屈曲角度が最も大きい湾曲方向に配置された湾曲操作ワイヤを挿通案内するワイヤガイドが、湾曲部の最大屈曲角度が最も小さい湾曲方向に配置された湾曲操作ワイヤを挿通案内するワイヤガイドより摩擦係数の小さな材料で形成されているものである。
【0008】
なお、湾曲部の最大屈曲角度が最も大きい湾曲方向に配置されたワイヤガイドが、湾曲部の最大屈曲角度が最も小さい湾曲方向に配置されたワイヤガイドより厚肉に形成されていてもよい。
【0009】
また、湾曲部の最大屈曲角度が最も大きい湾曲方向に配置された複数のワイヤガイドの中の、湾曲部の先端寄りの部分に配置されたワイヤガイドのみが、摩擦係数の小さな材料で形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湾曲部の最大屈曲角度が最も大きい湾曲方向に配置された湾曲操作ワイヤを挿通案内するワイヤガイドが、湾曲部の最大屈曲角度が最も小さい湾曲方向に配置された湾曲操作ワイヤを挿通案内するワイヤガイドより摩擦係数の小さな材料で形成されていることにより、そこに挿通配置されている湾曲操作ワイヤが短期間の使用で破損せず、総分解修理までの期間の長い優れた耐久性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
遠隔操作によって屈曲する湾曲部が可撓性挿入部の先端部分に設けられ、可撓性挿入部内から湾曲部内にわたって挿通配置された複数の湾曲操作ワイヤを可撓性挿入部の基端側から選択的に牽引操作することにより、その牽引された湾曲操作ワイヤが配置されている方向に湾曲部が屈曲するように構成された内視鏡の湾曲装置であって、複数の湾曲操作ワイヤを個別に緩く挿通案内するワイヤガイドが湾曲部内に配置されたものにおいて、湾曲部の最大屈曲角度が最も大きい湾曲方向に配置された湾曲操作ワイヤを挿通案内するワイヤガイドが、湾曲部の最大屈曲角度が最も小さい湾曲方向に配置された湾曲操作ワイヤを挿通案内するワイヤガイドより摩擦係数の小さな材料で形成されている。
【実施例】
【0012】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は内視鏡の全体構成を示しており、可撓性挿入部1の先端部分に湾曲部2が形成され、図示されていない観察窓や照明窓等が配置された先端部本体3が湾曲部2の先端に連結されている。
【0013】
可撓性挿入部1内から湾曲部2内にわたって、湾曲部2を屈曲操作するための4本の湾曲操作ワイヤ7が軸線周りに略90°間隔で挿通配置されており、内視鏡観察画面の上方向(図2において右方向)にあたる位置に配置された湾曲操作ワイヤ7を上方向湾曲操作ワイヤ7U、下方向にあたる位置に配置された湾曲操作ワイヤ7を下方向湾曲操作ワイヤ7D、右方向にあたる位置に配置された湾曲操作ワイヤ7を右方向湾曲操作ワイヤ7R、左方向にあたる位置に配置された湾曲操作ワイヤ7を左方向湾曲操作ワイヤ7Lという。
【0014】
可撓性挿入部1の基端に連結された操作部4には、複数の湾曲操作ワイヤ7U,7D,7R,7Lを選択的に牽引操作するための二つの湾曲操作ノブ5UD,5RLが回転自在に配置されており、上下方向湾曲操作ノブ5UDを回転操作することにより上方向湾曲操作ワイヤ7Uと下方向湾曲操作ワイヤ7Dのうち一方を牽引して他方を送り出し、左右方向湾曲操作ノブ5RLを回転操作することにより右方向湾曲操作ワイヤ7Rと左方向湾曲操作ワイヤ7Lのうち一方を牽引して他方を送り出すようになっている。
【0015】
湾曲部2は、例えば短筒状に形成された複数の節輪をリベット等で回動自在に連結して構成された公知のものであり、4本の湾曲操作ワイヤ7U,7D,7R,7Lの中の牽引された湾曲操作ワイヤが配置されている方向に屈曲する。
【0016】
この実施例において、湾曲部2の最大屈曲角度は例えば上方向に180°、下方向に90°、左右方向に各々120°であり、二つの湾曲操作ノブ5UD,5RLを同時に操作すれば、湾曲部2は上下方向と左右方向を複合した方向に屈曲する。
【0017】
各節輪の内周面には、各湾曲操作ワイヤ7U,7D,7R,7Lを緩く挿通ガイドするためのワイヤガイド8U,8D,8R,8Lが各々取り付けられており、湾曲部2がどの方向に屈曲した状態でも湾曲部2内で湾曲操作ワイヤ7U,7D,7R,7Lの配列が乱れないようになっている。
【0018】
図1は、湾曲部2の軸線に垂直な断面における断面図であり、断面形状が円環状に形成された節輪21の外周部に網状管22が被覆され、最外周部には弾力性のあるゴムチューブが被覆されている。11、12、13、14は、撮像信号伝送用信号ケーブル、照明用ライトガイド束、処置具挿通チャンネル、送気送水チューブである。
【0019】
節輪21の内周面の上下左右方向の各位置には、ワイヤガイド8U,8D,8R,8Lが略90°間隔でロー付け等により固着されていて、各ワイヤガイド8U,8D,8R,8L内に湾曲操作ワイヤ7U,7D,7R,7Lが1本ずつ緩く挿通配置されている。各湾曲操作ワイヤ7U,7D,7R,7Lの先端は各々湾曲部2の先端において最先端位置の節輪21に固着されている。
【0020】
上下左右方向に4列に各々複数ずつ配置されたワイヤガイド8U,8D,8R,8Lのうち、下方向ワイヤガイド8D、右方向ワイヤガイド8R及び左方向ワイヤガイド8Lはいずれもステンレス鋼管材により形成されている。
【0021】
そして、上方向ワイヤガイド8Uは全て、他のワイヤガイド8D,8R,8Lより摩擦係数の小さな例えば四フッ化エチレン樹脂等を含む材料をコーティングした金属材で形成されている。ただし、他のワイヤガイド8D,8R,8Lより摩擦係数の小さなセラミック等のような非金属材で形成してもよい。
【0022】
その結果、最大屈曲角度が最大で使用時に大きな負荷がかかる上方向湾曲操作ワイヤ7Uと上方向ワイヤガイド8Uとの間の摩擦が低減されるので、上方向湾曲操作ワイヤ7Uの摩耗が軽減されて上方向湾曲操作ワイヤ7Uが短期間の使用で破損せず長寿命を有することができる。
【0023】
なお、この実施例においては、湾曲部2の左右方向の屈曲角度が下方向よりやや大きいが、その程度の相違ではワイヤガイド8D,8R,8Lに差を設けるほどのこともなく、湾曲部2の最大屈曲角度が最も大きい湾曲方向に配置された上方向ワイヤガイド8Uとして、最大屈曲角度が最も小さい湾曲方向に配置された下方向ワイヤガイド8Dより摩擦係数の小さなワイヤガイドを用いるだけでも十分な効果を得ることができる。
【0024】
図3は、本発明の第2の実施例の湾曲部2の軸線に垂直な断面の断面図であり、摩擦係数の小さな材料で形成された上方向ワイヤガイド8Uの肉厚を他のワイヤガイド8D,8R,8Lより厚く形成したものである。
【0025】
このように構成することにより、最大屈曲角度が最大で使用時に大きな負荷がかかる上方向湾曲操作ワイヤ7Uを案内することで破損し易い上方向ワイヤガイド8Uの強度を向上させて、上方向ワイヤガイド8Uの早期の破損も防止することができる。
【0026】
図4は、本発明の第3の実施例の湾曲部2を示しており、最大屈曲角度が最も大きい湾曲方向の例えば9個の上方向ワイヤガイド8U,8U′の中の、湾曲部2の先端寄りの半部に配置された4個のワイヤガイド8Uだけを摩擦係数の小さな材料で形成し、後寄りの半部の5個のワイヤガイド8U′は他の方向のワイヤガイド8D,8R,8Lと同じ部材を用いたものである。
【0027】
上方向湾曲操作ワイヤ7Uが操作部4で牽引操作されると、まず湾曲部2の後寄りの半部が屈曲し終わってから先端寄りの半部が屈曲し、湾曲部2の後寄りの半部に位置するワイヤガイド8U′部分では上方向湾曲操作ワイヤ7Uとの間に大きな摩擦抵抗が発生しないので、このように構成しても前述の第1の実施例と同様に上方向湾曲操作ワイヤ7Uの寿命を伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施例の湾曲部の軸線に垂直な断面における断面図である。
【図2】本発明の実施例の内視鏡の全体構成を示す側面図である。
【図3】本発明の第2の実施例の湾曲部の軸線に垂直な断面における断面図である。
【図4】本発明の第3の実施例の湾曲部の側面断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 可撓性挿入部
2 湾曲部
7 湾曲操作ワイヤ
7U 上方向湾曲操作ワイヤ
7D 下方向湾曲操作ワイヤ
7R 右方向湾曲操作ワイヤ
7L 左方向湾曲操作ワイヤ
8U,8U′ 上方向ワイヤガイド
8D 下方向ワイヤガイド
8R 右方向ワイヤガイド
8L 左方向ワイヤガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作によって屈曲する湾曲部が可撓性挿入部の先端部分に設けられ、上記可撓性挿入部内から上記湾曲部内にわたって挿通配置された複数の湾曲操作ワイヤを上記可撓性挿入部の基端側から選択的に牽引操作することにより、その牽引された湾曲操作ワイヤが配置されている方向に上記湾曲部が屈曲するように構成された内視鏡の湾曲装置であって、上記複数の湾曲操作ワイヤを個別に緩く挿通案内するワイヤガイドが上記湾曲部内に配置されたものにおいて、
上記湾曲部の最大屈曲角度が最も大きい湾曲方向に配置された湾曲操作ワイヤを挿通案内するワイヤガイドが、上記湾曲部の最大屈曲角度が最も小さい湾曲方向に配置された湾曲操作ワイヤを挿通案内するワイヤガイドより摩擦係数の小さな材料で形成されていることを特徴とする内視鏡の湾曲装置。
【請求項2】
上記湾曲部の最大屈曲角度が最も大きい湾曲方向に配置されたワイヤガイドが、上記湾曲部の最大屈曲角度が最も小さい湾曲方向に配置されたワイヤガイドより厚肉に形成されている請求項1記載の内視鏡の湾曲装置。
【請求項3】
上記湾曲部の最大屈曲角度が最も大きい湾曲方向に配置された複数のワイヤガイドの中の、上記湾曲部の先端寄りの部分に配置されたワイヤガイドのみが、上記摩擦係数の小さな材料で形成されている請求項1記載の内視鏡の湾曲装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−311918(P2006−311918A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135575(P2005−135575)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】