説明

内視鏡の鉗子栓

【課題】通路開放状態では、確実に所定の開口径が得られて、大型の処置具を挿通でき、通路を閉鎖する際には、確実に密閉させる。
【解決手段】鉗子栓30は処置具導入部22に装着した口金25に装着される弾性部材からなる支持筒体31の内部に可撓筒32を装着したものから構成され、可撓筒32の外周部にはコイル34が囲繞し、支持筒体31の上端部には回転操作部材33が回転可能に嵌合されており、コイル34は粗いピッチ間隔で数ピッチ分の長さを有し、その両端部は直線状態となるように曲成されて、回転操作部材33と支持筒体31とに連結されており、回転操作部材33を回転させると、コイル34が巻き締まるようになって、可撓筒32が螺旋状にオーバーラップするようにして連通路32aが密閉される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の本体操作部に設けた処置具導入部に装着されて、この処置具導入部の通路を開閉させる鉗子栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡には処置具挿通チャンネルが設けられており、この処置具挿通チャンネル内に鉗子その他の処置具を挿通させることによって、細胞採取,組織の切開,止血等の処置を行うことができる構成となっている。このために、処置具挿通チャンネルは、挿入部の先端に開口させた処置具導出口を有し、この処置具導出口に可撓性部材からなる処置具挿通チューブが接続して設けられる。処置具挿通チューブは本体操作部の内部にまで延在されており、この本体操作部に設けた処置具導入部に他端が接続されている。処置具挿通チャンネルには処置具が挿通される他、体内からの吸引を行う吸引通路としても使用される。従って、本体操作部において、処置具導入部の前方位置に分岐部が設けられ、処置具挿通チューブはこの分岐部で処置具導入部に通じる通路と吸引通路とに分岐している。
【0003】
吸引通路は本体操作部からユニバーサルコードに延在されており、このユニバーサルコードに設けられ、光源装置等に着脱可能に接続されるコネクタの位置で吸引源装置に接続した負圧配管が着脱可能に接続されている。そして、本体操作部には吸引バルブが設けられており、吸引通路はこの吸引バルブに接続されている。従って、本体操作部を把持する手の指で吸引バルブを操作することにより吸引操作が行われる。
【0004】
処置具導入部には処置具が導入されることから、先端部は大気に開放されており、処置具挿通チャンネルを吸引通路として機能させる際には、この処置具導入部には栓部材が装着されて、大気と連通・遮断できるようにしている。ただし、処置具を導入させる度毎に栓部材を着脱するのではなく、この栓部材を装着したままで通路を開閉できるようにする。このように、通路の開閉が可能な栓部材の代表的なものとしては、特許文献1に示されているように、栓部材を弾性部材で形成して、処置具挿入部を覆う天蓋部にスリットを形成する構成としたものが広く用いられている。このスリットの両側の壁面を相互に密着可能となし、処置具を挿通しないときには、スリットを構成する両側の壁面が密着して通路を閉鎖する。一方、処置具を挿通する際には、このスリットを左右に押し開くことにより栓部材を通過させることができるようになる。
【0005】
この特許文献1の鉗子栓は、処置具を挿通させる前の状態では、完全な密閉性が保たれているが、一度処置具を挿通させると、スリットの部位が強制的に押し広げられることになる。特に、長い時間にわたって処置具を挿通させた状態に保持したり、繰り返し処置具を挿脱したりすると、スリットの密閉性が低下して、その後に吸引を行う際には、スリットの部位から吸引された体液等が漏出するおそれがあり、また不完全な密閉により、吸引時にこのスリットから外気が吸い込まれて、負圧吸引力が低下する。このような事態が生じないようにするにはスリットを開いた後にも密閉性を保持しなければならないことから、鉗子栓の素材としては、ある程度高いゴム硬度と高い弾性復元力とを備えたものを用いる必要がある。このために、処置具を挿通させる際には、大きな抵抗力が作用することになり、鉗子等のように腰の強い処置具であればともかく、例えば細いチューブ部材等のように、圧縮に対する抵抗が十分得られない処置具については、その挿通操作が困難になるという問題点がある。
【0006】
他のタイプの鉗子栓として、処置具導入部の先端側に拡径する段差部を設けて、この段差部に処置具が挿通可能な内径を有する弾性リングを装着して、この弾性リングを鉗子栓として用いるように構成したものが、特許文献2に示されている。この特許文献2では、処置具を挿通する際には、弾性リングを自由状態に保持し、通路を閉鎖する際には、弾性リングの外径側を規制した状態で、押動部材により上下から押し潰して内向きに膨出させることによって、通路空間を閉鎖するように構成している。
【特許文献1】特開2005−198834号公報
【特許文献2】実開昭55−70108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2のように、弾性リングを上下から押し潰すことによって、弾性リングの内径は縮小することになるが、通路断面が変化するのは、通路の軸線と直交する方向の単一の平面においてであるから、その内径部分を完全に閉鎖するのは極めて困難であって、鉗子栓の閉鎖時における密閉不良が生じる可能性がある。弾性リングの厚みを大きくして、その内径を小さくすれば、ある程度の密閉性が得られるが、そうすると挿通可能な処置具の外径が制約されることになる。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、通路開放状態では、確実に所定の開口径が得られて、大型の処置具を挿通でき、通路を閉鎖する際には、確実に密閉させることができる鉗子栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明は、内視鏡の本体操作部に設けられ、一端が外部に開放され、他端が処置具挿通チャンネルに連通する通路を設けた処置具導入部に装着され、この通路を全開状態から全閉状態まで変化させる鉗子栓であって、前記通路に連通する連通路が形成され、内周面が拡縮可能となった可撓筒と、前記可撓筒の外周部に配置され、複数ピッチを有する螺旋状部と、この螺旋状部と前記可撓筒の外周部との接触状態を変化させることによって、前記可撓筒の内径を前記全開状態から前記全閉状態まで変化させる操作部とを有する通路可変手段とから構成したことをその特徴とするものである。
【0010】
処置具導入部の通路の延長線上の位置に可撓筒を設けて、この可撓筒を拡縮させることによって、通路断面積を全開状態から全閉状態まで変化させる。全開状態では、最大径の処置具を円滑に挿通させることができる。また、処置具挿通チャンネルを吸引経路として用いる場合には、全閉状態とすることによって、挿入部先端にまで確実に最大限の負圧吸引力を作用させ、また吸引している汚物が処置具導入部から流出するのを防止する。
【0011】
処置具導入部の全閉状態では、通路におけるある特定の断面位置で全周から絞り込むというのではなく、複数ピッチを有する螺旋状部によって、軸線方向に位置を違えるようにして可撓筒の外周面に接触させ、この状態で可撓筒を押圧変形させることにより、この可撓筒の内周面を螺旋状にオーバーラップさせるようにしている。従って、螺旋状部を最縮径状態とすると、可撓筒の軸線方向における所定長さ分にわたって螺旋状に絞り込み作用が発揮することから、完全な密閉が行われる。また、螺旋状部は軸線方向に向けて所定の長さを有しているので、完全な密閉状態となっていなくても、つまり多少の隙間が生じていても、隙間は螺旋状となり、かつ隙間の大きさが変化するラビリンス構造となるので、負圧漏れや汚物の流出が防止される。
【0012】
処置具導入部に鉗子栓を一体に組み込んでも良いが、使用の都度廃棄するようになし、新たな鉗子栓と交換して装着するのが望ましく、このためには処置具導入部の先端に着脱可能に連結できるようにする。可撓筒は、それ自体では形状を保持できないものもあり、またそれ自体で所定の形状となるものであっても良い。また、可撓筒は、その内周面は実質的に凹凸がない平滑面とするが、外周面については平滑面であっても、また凹凸を形成しているものであっても良い。外周面が平滑面であれば、螺旋状部の作用で密閉する際には、螺旋状に絞り込むようにする。また、外周面に螺旋状の凹凸部を形成して、その突出部分を螺旋状部により内向きに押圧させるようにする。
【0013】
可撓筒は、螺旋状部の作用で開閉するものであるから、可撓性を有するもので構成されるが、全閉状態から開放した時に弾性的に復元することは必ずしも要求されない。即ち、処置具を挿通させる際に、この処置具で可撓筒を押し広げるようになっていても良い。従って、可撓筒それ自体で形状保持ができないものの場合には、ゴム等の弾性部材または軟性の合成樹脂で構成することができる。例えば、処置具の挿通操作性の観点から、滑りの良い部材から構成することも可能である。一方、可撓筒自体で形状保持できるものとする場合には、ゴム等の弾性部材で構成されることになる。
【0014】
それ自体で形状保持ができない可撓筒については、直接処置具導入部に装着することはできない。そこで、このような可撓筒については当然として、形状保持できる可撓筒であっても必要に応じて、処置具導入部に硬質部材からなる支持筒体を着脱可能に設け、この支持筒体に可撓筒の両端を固定して設けることができる。そして、通路可変手段を構成する螺旋状部は、一端が固定的に設けた弾性を有する線材を巻回したコイルで構成し、また操作部は前記支持筒体に回転可能に連結した円環状の回転式の操作部とすることができる。コイルは、その一端を支持筒体やその他の固定側部材に固定し、他端を操作部に固定して設けることができる。操作部を回転させて、可撓筒の内径を縮径させた状態で固定的に保持するために、コイルが巻き戻る方向への抵抗を発生させて、操作部が自由回転するのを防止する抵抗発生部を設けることができる。
【0015】
一方、可撓筒がそれ自体で所定の形状となるように保持できるものである場合には、この可撓筒を処置具導入部に着脱可能に連結するように構成することもできる。この場合には、軸線方向に貫通する貫通路を設け、外周面にはねじ部を形成した弾性部材から構成する。そして、通路可変手段としては、硬質部材で構成され、内周面が可撓筒のねじ部に螺合されるねじ溝を形成することにより螺旋状部となし、外周面が操作部となり、螺回操作可能な操作リングから構成する。可撓筒の外周面のねじ部または硬質リングの内周面のねじ溝の少なくとも一方をテーパ状として、操作リングを可撓筒に沿って移動させることによって、貫通路を閉鎖させるように構成する。
【0016】
例えば、可撓筒の外周面にねじ溝を形成する場合には、その開口端側から処置具導入部への連結側に向けて外周面側が連続的に大径化したテーパ状とする。そして、ねじ部におけるねじ溝を深底として、ねじ山とねじ山との間の部位を薄肉化するのが望ましい。これによって、操作リングを移動させると、そのねじ溝によりねじ部のねじ山が内向きに押圧されるように変形して、貫通路の内周壁がオーバーラップするようにして、密閉性が確保される。
【発明の効果】
【0017】
通路を開放した状態では、確実に所定の開口径が得られて大型の処置具を挿通でき、通路を閉鎖すると、確実に密閉させることができて、処置具挿通チャンネルを吸引通路として機能させる際に、逆流防止機能はもとより、処置具導出口に高い負圧吸引力を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1に内視鏡の全体構成を示す。1は内視鏡であって、内視鏡1は、本体操作部2、挿入部3及びユニバーサルコード4から大略構成される。挿入部3は、本体操作部2への連結部から大半の長さ部分が軟性部3aで、この軟性部3aには湾曲部3bが、湾曲部3bには先端硬質部3cが連結されている。先端硬質部3cには、図2に示したように、照明窓10,10と、両照明窓10,10間の観察窓11とが設けられており、また鉗子等の処置具を導出するための処置具導出口12が開口している。さらに、図中において、13は観察窓11が汚損されたときに、この汚れを除去する洗浄用流体を噴射する洗浄ノズルである。
【0019】
図3から明らかなように、先端が処置具導出口12に接続されている処置具挿通チャンネル20が本体操作部2内にまで延在されており、この処置具挿通チャンネル20は通路分岐部材21に接続されている。この通路分岐部材21には、本体操作部2のケーシング2aに設けた処置具導入部22に向けて延在した処置具通路23が接続されており、また吸引通路24が接続されている。従って、処置具通路23が処置具挿通チャンネル20に連通する通路を構成するものである。処置具導入部22には口金25が装着されており、この口金25の端部は処置具通路23に連結して設けられており、この口金25から処置具通路23を通り、通路分岐部材21は処置具通路23に螺挿されている。従って、口金25内に処置具を挿入すると、この処置具は処置具通路23から通路分岐部材21を通り、処置具挿通チャンネル20内に導かれて、挿入部3の先端硬質部3cに設けた処置具導出口12から導出させることになる。
【0020】
一方、吸引通路24は、本体操作部2からユニバーサルコード4内に延在されており、このユニバーサルコード4のコネクタ部(図示せず)に設けた接続口として開口しており、この接続口に吸引源からの配管が着脱可能に接続される。そして、本体操作部2の内部であって、吸引通路24の途中位置には吸引バルブ14が装着されている。この吸引バルブ14は本体操作部2を把持する手の指で操作可能なものであって、常時においては、吸引通路24の処置具挿通チャンネル20への連結側を吸引源側から遮断した状態に保持されており、吸引源側は大気と連通している。そして、吸引バルブ14を押し込むと、吸引通路24における吸引源側が処置具挿通チャンネル20側と連通して、処置具導出口12に負圧吸引力が作用することになる。
【0021】
ここで、体腔内は大気圧より高い圧力状態となっているから、体内から処置具挿通チャンネル20内に体液等が逆流しないように保持し、また吸引バルブ14を操作したときに、処置具導出口12に確実に負圧吸引力を作用させ、かつ吸引物が処置具導入部22側に逆流するのを防止するために、処置具導入部22に装着した口金25には鉗子栓が設けられている。ここで、口金25は、処置具通路23への連結側がこの処置具通路23とほぼ同じ内径となった細径部25aで、途中から連続的に拡径する拡径部25bとなり、大気への開口側における所定の長さ分は大径部25cとなっており、鉗子栓は大径部25cに着脱可能に装着されるようになっている。
【0022】
図4乃至図7は鉗子栓の第1の実施の形態を示すものである。図4及び図5において、30は鉗子栓であって、この鉗子栓30は処置具導入部22に装着した口金25の大径部25cに嵌合させるようにして装着される支持筒体31を有するものである。支持筒体31はゴム等の弾性部材から構成され、その口金25への連結側の端部近傍には円環状の係止溝31aが形成されている。従って、この係止溝31aは口金25の大径部25cに嵌合させることになる。
【0023】
支持筒体31の内部には口金25を介して処置具通路23に連通する連通路32aを形成した可撓筒32が挿通されており、また支持筒体31の上端部には回転操作部材33が回転可能に嵌合して設けられている。さらに、可撓筒32の外周部にはコイル34が囲繞するように装着されている。コイル34は螺旋状部であり、回転操作部材33はコイル34を拡縮するための操作部を構成するものであり、これらコイル34と回転操作部材33とで通路可変手段が構成される。
【0024】
回転操作部材33は、処置具を処置具通路23に導入するための先端の開口部を構成するものであり、先端が大径部となった貫通孔33aが形成されている。そして、可撓筒32はこの貫通孔33a内に装着されており、処置具はこの可撓筒32の内部に挿通されることになる。可撓筒32は、ゴム等の弾性部材または軟性の合成樹脂からなる可撓性部材であって、連通路32aを構成する周胴部は容易に変形させることができるように、比較的薄肉の円筒形状となっている。この可撓筒32の先端部にはフランジ部32bが形成されており、このフランジ部32bが回転操作部材33の貫通孔33aの段差部に固定的に保持されている。
【0025】
可撓筒32は回転操作部材33の貫通孔33aから支持筒体31の内部に延在されている。支持筒体31には、その内面における中間位置に可撓筒32の他端部を保持する円環状の保持壁31bが形成されており、また可撓筒32の他端側には挟持部片32b,32cが形成されて、これら挟持部片32b,32c間で保持壁31bを挟み込むようにして装着されている。この可撓筒32の他端部は、支持筒体31に対して非固着状態にしているが、保持壁31bに固着することもできる。
【0026】
コイル34は弾性を有する線材を螺旋状に巻回させたものであり、回転操作部材33の貫通孔33aの内壁と可撓筒32の外周面との間の円環状の隙間に配置されている。このコイル34は自由状態では、外径が貫通孔33aの内面に当接または僅かな隙間を置いて近接するようになっており、内径側は可撓筒32の外周面に対してほぼ当接するようにしている。そして、コイル34は粗いピッチ間隔を有するものであり、かつ数ピッチ分、即ち数巻き分、好ましくは3〜5ピッチ分程度の長さを有するものである。このコイル34の両端部は直線状態に曲折されて、係止部34a,34bとなし、係止部34aは回転操作部材33に設けた係止孔33bに挿通され、また係止部34bは支持筒体31に設けた係止孔31cに挿通されることにより固定的に保持されている。なお、係止部34a,34bの先端部分には保護球体35,35が設けられている。
【0027】
支持筒体31には、その先端近傍位置に円環状凹溝31dが形成されており、回転操作部材33の支持筒体31への嵌合側端部にはこの円環状凹溝31dに挿嵌される連結突起部33cが設けられている。従って、回転操作部材33は、支持筒体31の先端開口部を拡径させて、連結突起部33cを円環状凹溝31dに嵌入させることにより連結されている。このように回転操作部材33を支持筒体31に連結した状態で、回転操作部材33は支持筒体31に対して回転可能となっており、手動操作で回転させることになるが、所望の回転位置となったときに、この回転操作部材33から手を離しても、自由回転しないように保持する抵抗発生部を有する構成となっている。
【0028】
即ち、図7に示したように、連結突起部33cは角隅部が曲面形状となった四角形のものとなっており、支持筒体31の内径Rは、連結突起部33cの対角線Dの長さより小さくなっている。従って、連結突起部33cの角隅部は支持筒体31に押し付けられて、この支持筒体31を弾性変形させることになる。この押し付け力により回転操作部材33の自由回転が防止される。そして、この押し付け力より大きな回転力を作用させれば、この回転操作部材33を回転操作できる。
【0029】
以上のように構成される鉗子栓20は、支持筒体31と、可撓筒32を装着した回転操作部材33及びコイル34とが組み込まれてユニット化されて、処置具導入部22に設けた口金25に装着される。支持筒体31は弾性部材から構成されているので、その係止溝31aを口金25の大径部25cに嵌合させることによって、鉗子栓20が処置具導入部22に安定的に固定される。
【0030】
このようにして装着した鉗子栓20は、図4に示した状態では、処置具通路23の入口部分を構成する可撓筒32の連通路32aが開放されている。従って、処置具を挿通させたときに、この連通路32aから処置具導入部22における処置具通路23を介して処置具挿通チャンネル20に導かれて、挿入部3の先端に設けた処置具導出口12から導出される。ここで、可撓筒32の連通路32aは、処置具通路23から処置具導出口12に至る処置具挿通路のうち、最も細い通路部分よりも広くする必要はないが、処置具の挿通操作の操作性からは、できるだけ広い通路とするのが望ましい。
【0031】
処置具挿通チャンネル20を吸引用の通路として使用する場合には、この処置具挿通チャンネル20から分岐させた吸引通路24に作用する負圧吸引力の漏れが生じるのを防止し、かつ吸引汚物が鉗子栓30から溢出するのを防止するために、鉗子栓30を全閉状態とする。このために、回転操作部材33を回転させる。これによって、コイル34が巻き締まるようになり、その内径が縮小するが、コイル34の内側には可撓筒32が配置されているので、この可撓筒32が絞り込まれる。コイル34は数巻き分からなり、軸線方向に所定の長さを有しており、従ってコイル34が絞り込まれて、絞り機能を発揮することになる。その結果、可撓筒32の内面が螺旋状に内向きに突出する。可撓筒32の周胴部は所定の厚みを有する可撓部材で構成されているので、図5に示したように、可撓筒32は螺旋状にオーバーラップするようにして連通路32aが密閉される。そして、連通路32aが密閉された全閉状態となると、コイル34が最縮径状態となるので、回転操作部材33をそれ以上回転させることができなくなる。
【0032】
このように、可撓筒32の連通路32aを全閉状態にすることによって、また仮に多少の隙間が生じていたとしても、隙間は所定の長さ分の螺旋状に点在するものとなり、しかも隙間の大きさも変化するラビリンス構造となるので、処置具導入部22の密閉性が高くなり、処置具挿通チャンネル20は、挿入部3の先端に設けた処置具導出口12を除き、完全に密閉された状態となるので、吸引操作を行う際に、この処置具導入部22からの逆流を防止するだけでなく、負圧吸引力が低下するのを防止することができる。従って、処置具挿通チャンネル20の先端における処置具導出口12における吸引能力を高めることができる。
【0033】
処置具を使用して行う処置なり検査なりが終了して、処置具挿通路を開放する際には、回転操作部材33を前述とは逆方向に回転させる。これによって、コイル34が巻き戻されるようになり、その内径が大きくなる。可撓筒32がゴム等の弾性部材で形成されているときには、この可撓筒32が弾性復元することになるので、直ちに連通路32aが形成される。一方、可撓筒32を軟性の合成樹脂で構成した場合には、コイル34が離間したときにも、必ずしも連通路32aが形成されるわけではないが、連通路32aを開放するのは、処置具を挿通するためであるから、処置具により可撓筒32を押し広げるようにして進行させることもできる。特に、滑りの良い樹脂材で可撓筒32を形成すれば、処置具の挿通操作がかえって円滑になることもある。そして、回転操作部材33を回転させて、可撓筒32が最大径になると、コイル34が回転操作部33の貫通孔33aの内壁に当接することから、回転操作部材33はそれ以上回転させることができなくなる。
【0034】
鉗子栓30は洗浄して繰り返し使用することもできるが、症例毎に廃棄して、新たな鉗子栓30を装着するのが望ましい。内視鏡1を使用した後、それを洗浄及び消毒する際には、鉗子栓30を取り外す。この作業は、支持筒体31の係止溝31aを口金25の大径部25cから分離させることにより容易に行うことができる。また、鉗子栓30を取り外すと、吸引通路として使用された処置具挿通路全体を容易に洗浄できる。
【0035】
次に、図8及び図9は、本発明による鉗子栓の第2の実施の形態を示すものである。まず、図8において、40は鉗子栓であって、この鉗子栓40は可撓筒41を有し、この可撓筒41はゴム等の弾性部材の長尺部材で形成されており、外周面はねじ部41を形成した凹凸形状となっており、内周面は平滑になって長さ方向に貫通する連通路41bが形成されている。可撓筒41は口金25の大径部25cに嵌合させることにより固定されるものであり、このために口金25への連結側の端部は円板部41cとなっており、この円板部41cには口金25の大径部25cに係合する係止溝41dが形成されている。
【0036】
可撓筒41は、ゴム等の弾性部材で形成されており、円板部41cを口金25の大径部25cに連結した状態では、それ自体で形状が保持されるように、つまり自立状態を確保されている。そして、可撓筒41に設けた連通路41bは処置具導入部22の処置具通路23と連通するものであって、処置具挿通路の一部を構成している。ここで、可撓筒41のねじ部41aは、その外径が円板部41cに向かうに応じて大きくなるテーパ形状となっている。しかも、ねじ部41aにおける円板部41cに近接する位置の数ピッチ分については、溝底を深くすることにより深溝領域42となっている。従って、この深溝領域42では溝底部分の厚みが他の部位より薄くなっている。ただし、この深溝領域42においても、溝底部分は自立状態を確保できる程度の厚みとなっている。
【0037】
可撓筒41のねじ部41aには、内周面にねじ溝43aを形成したナットからなる操作リング43が螺合されている。この操作リング43は硬質部材から構成されており、硬質部材である操作リング43の内面に形成したねじ溝43aが螺旋状部であり、弾性部材からなる可撓筒41のねじ部41の深溝領域42の部位と螺合させることによって、この可撓筒41の連通路41bの内径を拡縮させる螺旋状部が構成される。また、操作リング42は、その外周面が手動により回転可能となっており、従ってこの外周面が操作部を構成し、これらにより通路可変手段が構成されることになる。なお、図中において、41eは可撓筒41の先端に設けた操作リング42の抜け止めストッパである。
【0038】
栓部材40において、処置具挿通路を開放状態とするには、操作リング43を抜け止めストッパ41e側に配置する。このときには、可撓筒41のねじ部41aの頂部は操作リング43のねじ溝43aの溝底部との間に隙間が存在し、可撓筒41は実質的に押圧変形されることはない。これによって、連通路41bが全開状態になり、全長にわたって均等な内径に保持されて、大型の処置具を挿通させることができるようになる。
【0039】
この状態から、連通路41bを閉鎖するには、操作リング43を螺回して可撓筒41の円板部41c側に向けて移動させるように操作する。可撓筒41のねじ部41aは円板部41cに向かうに応じてねじ山の高さが高くなっており、操作リング43は硬質部材で形成されているので、そのねじ溝43aにより可撓筒41のねじ部41aに連通路41cの軸線方向に向けての押圧力が作用する。
【0040】
可撓筒41は弾性部材から構成されており、しかも溝底部は薄肉となっており、さらに操作リング43のねじ溝43aによりねじ山の部位が弾性変形する方向が規制されるようになっているので、ねじ部41aのねじ山が内向きに弾性変形することになる。これによって、図9に示したように、ねじ山とねじ山との間の溝底部における薄肉部位が変形することになり、ねじ山の部位が内方に押圧されることになる。その結果、可撓筒41の内面が螺旋状にオーバーラップするようにして深溝領域42における連通路41aの部位が密閉される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の鉗子栓が装着されている内視鏡の全体構成図である。
【図2】図1の内視鏡における挿入部の先端面を示す正面図である。
【図3】図1の内視鏡の本体操作部の要部断面図であって、処置具挿通チャンネル及び吸引通路以外を省略して示す図である。
【図4】本発明の鉗子栓の第1の実施の形態を示す断面図であって、通路の全開状態に保持している図である。
【図5】鉗子栓の通路の全閉状態を示す図4と同様の断面図である。
【図6】鉗子栓の分解斜視図である。
【図7】図4のA−A位置の断面図である。
【図8】本発明の鉗子栓の第2の実施の形態を示す断面図である。
【図9】通路の全閉状態としたときの図8の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 内視鏡 2 本体操作部
3 挿入部 3c 先端硬質部
12 処置具導出口 20 処置具挿通チャンネル
21 通路分岐部材 22 処置具導入部
23 処置具導入路 24 吸引通路
25 口金 30,40 鉗子栓
31 支持筒体 32 回転操作部
33a 貫通孔 34 コイル
41 可撓筒 41a ねじ部
41b 連通路 42 深溝領域
43 操作リング 43a ねじ溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の本体操作部に設けられ、一端が外部に開放され、他端が処置具挿通チャンネルに連通する通路を設けた処置具導入部に装着され、この通路を全開状態から全閉状態まで変化させる鉗子栓において、
前記通路に連通する連通路が形成され、内周面が拡縮可能となった可撓筒と、
前記可撓筒の外周部に配置され、複数ピッチを有する螺旋状部と、この螺旋状部と前記可撓筒の外周部との接触状態を変化させることによって、前記可撓筒の内径を前記全開状態から前記全閉状態まで変化させる操作部とを有する通路可変手段と
を備える構成としたことを特徴とする鉗子栓。
【請求項2】
前記可撓筒は、前記処置具導入部に着脱可能に設けた支持筒体に一端が固定して設けられ、前記螺旋状部は一端が前記支持筒体に固定的に設けられ、前記可撓筒を囲繞するように装着した弾性を有するコイルから構成され、また前記操作部は前記支持筒体に回転可能に連結されており、前記コイルは、その一端を前記支持筒体に固定し、他端を前記操作部に固定して設ける構成としたことを特徴とする請求項1記載の内視鏡の鉗子栓。
【請求項3】
前記操作部は所定角度回転させる毎に前記コイルが巻き戻る方向への抵抗を発生させて、この操作部が自由回転するのを防止する抵抗発生部を有するものであることを特徴とする請求項2記載の内視鏡の鉗子栓。
【請求項4】
前記可撓筒は、外周面にねじ部を有するものであり、かつ軸線方向に貫通するように前記連通路を形成した弾性部材からなり、前記処置具導入部に着脱可能に連結されるものであり、前記通路可変手段は、内周面が前記ねじ部に螺合されるねじ溝を形成することにより前記螺旋状部となし、外周面は螺回操作可能とした前記操作部となった硬質部材の操作リングで形成され、前記可撓筒の外周面のねじ溝または前記硬質リングの内周面のねじ溝の少なくとも一方をテーパ状として、前記操作リングを前記可撓筒に沿って移動させることによって前記可撓筒を押圧変形させて、前記貫通路を閉鎖させる構成としたことを特徴とする請求項1記載の内視鏡の鉗子栓。
【請求項5】
前記可撓筒は前記処置具導入部への連結側に向けて大径化するテーパ形状となし、かつその最大径側から所定のピッチ分だけ前記ねじ部の溝底部を薄肉化させる構成としたことを特徴とする請求項4記載の内視鏡の鉗子栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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