説明

内視鏡システム

【課題】挿入部が長尺となっても使い勝手の良い携帯性に優れた内視鏡装置を提供すること。
【解決手段】内視鏡システムは、操作部24から挿入部20が延出された内視鏡2と、この内視鏡2が接続された装置本体3と、内視鏡2及び装置本体3を収納する収納部40を有する収納ケース1とを備える。収納ケース1の収納部40は、装置本体3を収容する装置本体収容凹部42と、内視鏡2の操作部24を収容する操作部収容凹部41と、操作部24から延出された挿入部20を巻回する挿入部巻回ドラム45を着脱可能に収容するドラム収容部44aを有するドラム収容バック44とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡及び内視鏡と接続された内視鏡装置本体を収納する収納ケースを備える内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、医療用分野及び工業用分野において広く利用されている。医療用分野において使用される内視鏡は、細長な挿入部を体腔内に挿入することによって、体腔内の臓器を観察すること、或いは、必要に応じて挿入部に設けられた処置具チャンネルを介して体腔内に処置具を導入することによって各種処置や検査を行える。
【0003】
一方、工業用分野において使用される内視鏡は、細長な挿入部をジェットエンジン内、工場の配管等に挿入することによって、被検部位の傷の有無、或いは腐蝕の有無の観察、或いは各種修理等を行える。
【0004】
工業用の内視鏡装置には、例えば先端に、撮像用のレンズ、CCD等の撮像素子、及びLED等の発光素子を有する撮像ユニットを配設した細長の挿入部を有する内視鏡と、該内視鏡が接続される装置本体とにより構成されるものがある。
【0005】
例えば、特許文献1には光源装置、ビデオ処理装置及びモニタの電源を乾電池や充電式電池等のバッテリを電源にして、携帯性及び作業性に優れた携帯型内視鏡装置が示されている。この携帯型内視鏡装置では、内視鏡及び装置本体は収納ケースに収納され、収納ケースに収納された状態でユーザーによって観察場所の近くまで持ち込まれる。そして、ユーザーは、収納ケースから内視鏡及び装置本体を取り出し、ベルトを例えば肩に掛けて、装置本体を提げた状態で内視鏡を観察場所まで持ち運んで観察を行う。
【0006】
ここで、収納ケースから取り出した内視鏡及び装置本体を持ち運ぶときに、挿入部が垂れ下がって邪魔になる可能性があったため、ユーザーは、収納ケースから内視鏡を取り出した後、挿入部を巻回することが考えられた(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004-24424号公報
【特許文献2】特開2005-270468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、内視鏡の操作部から延出している挿入部の長さ寸法が長尺、例えば3m以上であると、挿入部を巻回する作業を、収納ケースから取り出す度に行 わなければならず、ユーザーにとってこの作業がわずらわしかった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、挿入部が長尺となっても使い勝手の良い携帯性に優れた内視鏡システムを提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の内視鏡システムは、操作部から挿入部が延出された内視鏡と、この内視鏡が接続された装置本体と、前記内視鏡及び前記装置本体を収納する収納部を有する収納ケースとを備える内視鏡システムであって、
前記収納ケースの収納部は、前記装置本体を収容する装置本体収容部と、前記内視鏡の操作部を収容する操作部収容部と、前記操作部から延出された挿入部を巻回する挿入部巻回部材を着脱可能に収容する挿入部収容部とを備えている。
【0010】
この構成によれば、内視鏡の挿入部は、挿入部巻回部材に巻回された状態で、挿入部収容部に収容されている。このため、装置本体を装置本体収容部から取り出し、内視鏡の操作部を操作部収容部から取り出すと同時に、挿入部収容部から挿入部が巻回された挿入部巻回部材を取り出して、持ち運びを行える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、挿入部が長尺となっても使い勝手の良い携帯性に優れた内視鏡装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1乃至図8は本発明の一実施形態に係り、図1は内視鏡及び装置本体を収納して運搬する収納ケースを説明する図、図2は内視鏡装置とそれらを収納する収納ケースを備えた内視鏡システムを説明する図、図3は収納ケースの収納部の構成を説明する図、図4は挿入部巻回ドラムを説明する図、図5は収納ケースに収容された装置本体と、ドラム収容バックと、保護部材との関係を説明する図、図6は装置本体収容凹部に収容された装置本体とドラム収容バックとの関係を説明する図、図7はユーザーによって持ち運ばれる装置本体及び内視鏡を示す図、図8は挿入部巻回ドラムの操作部への別の取り付け方を示す図である。
【0013】
本実施形態の後述する内視鏡装置である内視鏡及び装置本体は、図1に示すように収納ケース1に収容されて、観察場所の近くまで運搬される。
図2に示すように内視鏡システム10は、収納ケース1と、内視鏡2と、この内視鏡2と電気的、機械的に接続される装置本体3とを備えて構成されている。
【0014】
収納ケース1は、蓋部材である上蓋1aとケース本体1bとを備えている。収納ケース1には開閉機構である複数のラッチ1cが設けられており、ケース本体1bに対して上蓋1aが開閉自在に構成されている。
【0015】
内視鏡2は、例えば挿入部20の先端部21内に撮像素子(不図示)を設けた工業用内視鏡であり、先端部21には光学部材、発光素子等を内蔵した光学アダプタ39が着脱自在に取り付けられる構成である。
【0016】
装置本体3は、画像処理部(不図示)、表示装置であるモニタ4、電力を供給するバッテリ(不図示)を備えて構成されている。画像処理部は外装筐体5内に設けられ、撮像素子の駆動及びこの撮像素子から出力される画像信号から映像信号を生成する等の処理を行う。モニタ4は、装置本体3を構成する外装筐体5にヒンジ(不図示)等を介して固定されている。本実施形態において、モニタ4は、外装筐体5に開閉自在であって、閉状態においては画像表示面4aを有するモニタ面4bの裏面が、外装筐体5の図1中、背面側に配置される構成になっている。バッテリは、光学素子、発光素子、モニタ4等に電力を供給する。
【0017】
符号6はカバーであり、内視鏡装置が未使用の際、画像表示面4aを覆って保護する。符号7は脚部であり、例えばNBR等のゴムにより形成され、外装筐体5の角部に取り付けられている。
【0018】
内視鏡2は、細長で可撓性を有する挿入部20と、この挿入部20の基端部に連設する操作部24と、この操作部24から延出する可撓性を有するユニバーサルコード29とを備えて構成されている。挿入部20は、先端側から順に、先端部21、例えば上下左右方向に湾曲自在な湾曲部22、および可撓性を有する可撓管部23を連設して構成されている。
【0019】
ユニバーサルコード29内には、発光素子へ電力を供給する電気ケーブル(不図示)、撮像素子へ駆動制御信号を伝送する信号線及び撮像素子で光電変換された画像信号を伝送する信号線を備えた信号ケーブル(不図示)等が内挿されている。
【0020】
操作部24は、操作部本体25と、操作ワイヤ配設部26と、把持部27と、側部構成部28L、28Rとを備えて構成されている。操作部本体25の天面(上面ともいう)25uには、湾曲部22を湾曲動作させる操作指示機構である、湾曲操作指示レバー(以下、湾曲レバーと略記する)30が設けられている。
【0021】
湾曲レバー30は、傾倒方向および傾倒角度を変化させる傾倒操作を行うことによって挿入部20内および操作部24内に挿通されている図示しない牽引部材を移動させて、湾曲部22を所望の方向に所望の湾曲量だけ湾曲させる。湾曲部22は、湾曲レバー30が直立状態のとき、略直線状になるように構成されている。
【0022】
操作部本体25の正面部31には、挿入部20を保持する保持孔32を備えた保持部材33が設けられている。保持孔32の内径は、挿入部20の外径より所定寸法だけ大きく形成されている。保持部材33は、操作部本体25に対して別体であって、例えば、接着剤、ネジ等によって操作部本体25に一体的に固定される。この固定状態において、保持部材33の上端側は、操作部本体25の上面25uから所定量、突出する。保持部材33は、上面25uから突出する湾曲レバー30を保護するガード部材を兼ねている。
【0023】
図3及び図6に示すように収納ケース1の上蓋1aを開状態にしたケース本体1bの収納部40内には操作部収容凹部41及び装置本体収容凹部42を備えた収容部材43及びドラム収容バック44等が設けられている。
【0024】
操作部収容凹部41は操作部収容部であって、内視鏡2の操作部24が収容される構成になっている。装置本体収容凹部42は装置本体収容部であって、装置本体3の脚部7を含む外装筐体5側が収容される構成になっている。ドラム収容バック44は、挿入部巻回部材である挿入部巻回ドラム(以下、ドラムと略記)45が収容されるドラム収容部44aを備えている。ドラム収容バック44は、例えば樹脂部材を用いて弾発性を有するように構成されている。
【0025】
ドラム45は硬質部材、例えば樹脂製で、図4に示すようにドーナツ形状、或いは円板形状であって、その外周面には挿入部20が巻回される凹み溝45aが設けられている。凹み溝45aの底面には挿入部20の先端部21を保持する挿入部保持部材46が固設されている。符号45bは孔である。この孔45bの内径寸法は、保持部材33の上端側に挿通されるように形成されている。
【0026】
なお、ドラム収容バック44は、図3に示すように収納部40の上蓋開閉部側の内壁40iに設けられている収納ポケット47の側部に対して着脱手段である例えば線ファスナー48、或いは図示しないスナップボタンを介して着脱自在に取り付けられている。
【0027】
また、符号44bは固定ベルトである。固定ベルト44bは、ドラム収容バック44のドラム収容部44aに収容されたドラム45が収容部内から外部に脱落することを防止する。固定ベルト44bの端部所定位置にはマジックテープ(登録商標)等の面ファスナー(不図示)が設けられており、ドラム収容バック44の所定位置に設けられた面ファスナー(不図示)に対して着脱自在に取り付けられる構成である。
【0028】
図5に示すように上蓋1aの内面には発泡ウレタン等で所定形状に形作られた保護部材1dが配設される。保護部材1dには図示しないリジットスリーブ等を収納するための収納凹部(不図示)が形作られている。ドラム45をドラム収容部44aに収容したドラム収容バック44は、装置本体収容凹部42に収容された装置本体3に取り付けられているモニタ4の画像表示面4aを覆って保護するカバー6上に配置される。そして、上蓋1aを閉じた状態において、ドラム収容バック44は、カバー6と保護部材1dとによって挟持される。
【0029】
このことによって、内視鏡2及び装置本体3を収納ケース1に収容して前記図1に示すように運搬しているとき、運搬中に発生する振動、或いは衝撃等によって装置本体3が収納部40内で暴れることが防止される。つまり、ドラム収容バック44は、緩衝部材を兼用している。
【0030】
上述のように構成されている内視鏡システム10の作用を説明する。
ユーザーは、内視鏡2及び装置本体3を収容した収納ケース1を観察場所の近くまで運搬する。その後、ユーザーは図5の破線に示すように上蓋1aを開状態にして、収納部40から例えば、操作部24、挿入部20が巻回収容されているドラム45、装置本体3の順に取り出していく。
【0031】
装置本体3を装置本体収容凹部42から取り出す際、図6に示すようにカバー6上に載置されているドラム収容バック44を、収納ポケット47に取り付けられている状態で上蓋1aの保護部材1d側に移動させる。このことによって、装置本体3を容易に装置本体収容凹部42から取り出すことが可能になる。
【0032】
次に、ユーザー50は、収納ケース1から内視鏡2の操作部24、挿入部20が巻回されたドラム45及び装置本体3を取り出した後、図7に示すように装置本体3に取り付けられているベルト49を例えば肩に掛け、観察場所まで装置本体3及び内視鏡2を持ち運ぶ。このとき、内視鏡2の操作部24を装置本体3に設けられている取付部に取り付け、ドラム45の孔45bを操作部24の保持部材33に引っ掛ける。
【0033】
このように、収納ケースに操作部収容凹部、装置本体収容凹部に加えて、挿入部が巻回されるドラムを収容するドラム収容部を有するドラム収容バックを設けることによって、観察場所まで収納ケースを運搬した後、収納ケースから内視鏡を取り出す際に、例え挿入部が長尺になっても、収納ケースから挿入部を取り出した後、改めて巻回する等のまとめる作業がなくなり、内視鏡及び装置本体を観察場所まで容易に持ち運ぶことができ、迅速に観察作業に移ることができる。
【0034】
なお、本実施形態においては、ドラム45に孔45bを形成し、その孔45bを操作部24の保持部材33に引っ掛けて挿入部20を巻回したドラム45を操作部24とともに移動するとしている。しかし、上述した実施形態においては、ドラム収容バック44が線ファスナー48によって収納ポケット47に着脱自在に取り付けられる構成であるので、ドラム収容バック44を収納ポケット47から取り外し、図8に示すようにドラム収容バック44に備えられている取り付け紐44cを操作部24の保持部材33に引っ掛けて、持ち運ぶようにしても良い。
【0035】
尚、本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】内視鏡及び装置本体を収納して運搬する収納ケースを説明する図
【図2】内視鏡装置とそれらを収納する収納ケースを備えた内視鏡システムを説明する図
【図3】収納ケースの収納部の構成を説明する図
【図4】挿入部巻回ドラムを説明する図
【図5】収納ケースに収容された装置本体と、ドラム収容バックと、保護部材との関係を説明する図
【図6】装置本体収容凹部に収容された装置本体とドラム収容バックとの関係を説明する図
【図7】ユーザーによって持ち運ばれる装置本体及び内視鏡を示す図
【図8】挿入部巻回ドラムの操作部への別の取り付け方を示す図
【符号の説明】
【0037】
1…収納ケース 1a…上蓋 1b…ケース本体 1d…保護部材
2…内視鏡 3…装置本体 4…モニタ 5…外装筐体 6…カバー
10…内視鏡システム 20…挿入部 24…操作部 25…操作部本体
25u…上面 26…操作ワイヤ配設部 29…ユニバーサルコード
30…湾曲レバー 31…正面部 32…保持孔 33…保持部材
40…収納部 41…操作部収容凹部 42…装置本体収容凹部
44…ドラム収容バック 44a…ドラム収容部 44b…固定ベルト
44c…取り付け紐 45…挿入部巻回ドラム 45a…凹み溝 45b…孔
46…挿入部保持部材 47…収納ポケット 48…線ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部から挿入部が延出された内視鏡と、この内視鏡が接続された装置本体と、前記内視鏡及び前記装置本体を収納する収納部を有する収納ケースとを備える内視鏡システムにおいて、
前記収納ケースの収納部は、
前記装置本体を収容する装置本体収容部と、
前記内視鏡の操作部を収容する操作部収容部と、
前記操作部から延出された挿入部を巻回する挿入部巻回部材を着脱可能に収容する挿入部収容部と、
を備えることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記内視鏡の操作部は、保持部材を有しており、
前記挿入部巻回部材に、前記保持部材が挿通する貫通孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記挿入部収容部は、前記収納ケースの前記収納部に対して着脱自在な構成にする着脱手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記内視鏡の操作部は、保持部材を有しており、
前記挿入部収容部は、前記保持部材に引っ掛けられる取り付け紐を備えることを特徴とする請求項3に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記保持部材は、前記操作部に設けられた操作指示機構を保護するガード部材を兼用することを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記収納ケースは、蓋部材とケース本体とを備え、
前記蓋部材が閉状態のとき、前記挿入部収容部は、前記蓋部材の内面と、前記ケース本体内の前記装置本体収容部に収容された装置本体との間隙に配置されて、緩衝部材を兼用することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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