説明

内視鏡挿入支援装置およびその動作方法、並びに内視鏡挿入支援プログラム

【課題】術者が内視鏡の現在の位置から内視鏡を進めていったときに経路上にあらわれる分岐部の画像を即座に確認できるようにする。
【解決手段】管状構造物の入り口から目的部位に到達するまでの間の複数の経路において、複数の経路が該経路の分岐点により区切られる複数の区間のうち内視鏡が現在位置している区間内に存在する管状構造物の分岐部の仮想内視鏡画像Bと、内視鏡が現在位置で撮影した仮想内視鏡画像VEとを同一画面上に表示するとともに、分岐部の仮想内視鏡画像が複数の経路上のいずれの区間の画像であるかを認識可能に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元医用画像を用いて気管支のような体内の管路への内視鏡の挿入を支援する装置およびその動作方法、並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場では画像による診断が広く行われるようになり、X線CT(Computed Tomography)装置などで撮影された被検体の3次元画像データを用いて患部の診断が行われるようになってきた。CT装置は、被検体を中心に対抗するように設けられたX線照射部と検出部を、連続的に回転させつつ被検体を体軸方向に移動させることにより、被検体を中心にした螺旋状の連続スキャンを行い、連続するスライスの断層像から3次元のボリュームデータを作成し、このボリュームデータに画像処理を施して診断に利用される。
【0003】
例えば、胸部を撮影したボリュームデータにボリュームレンダリング処理を施すことにより肺の気管支の3次元画像を生成することができる。この気管支の3次元画像は、肺癌等が疑われる異常部の位置を3次元的に把握するのに利用され、その異常部の位置まで気管支内視鏡を挿入し、生検鉗子等で組織のサンプルを採取して生検が行われる。しかし、気管支のような多段階に分岐する管路内を通って、気管支の末端に近い異常部まで内視鏡の先端を短時間で到達させるのは困難である。
【0004】
そこで、ボリュームデータに基づいて気管支の3次元画像を作成し、3次元画像上で管路に沿って気管支の入り口から目的部位まで到着する経路を求め、経路に沿った管路内の気管支の分岐部の仮想内視鏡画像を作成し、気管支内視鏡で撮像したライブの内視鏡の撮影画像を表示するとともに仮想内視鏡画像を表示することで、気管支内視鏡を目的部位までナビゲーションする装置が提案されたものがある(例えば、特許文献1)。
【0005】
上述の通り気管支は多段階に分岐しているため経路上には複数の分岐部があるが、分岐部の画像はいずれも類似しているため、単に経路上の分岐部の仮想内視鏡画像を表示しても、どの位置の分岐部の画像であるかの区別がつかない。上記特許文献1では、ボリュームデータを用いて気管支の分岐部の仮想内視鏡画像を表示して挿入先を案内しているが、内視鏡によるライブの分岐部の画像がどの仮想内視鏡画像に対応するものかがわからず、術者が分岐部の現在位置を誤認する可能性がある。このような誤認は気管支内視鏡の目的部位へのナビゲーションに重大な支障を及ぼすといった問題がある。
【0006】
そこで、入り口と目的部位を結ぶ複数の経路を作成し、経路毎に存在する分岐点の仮想内視鏡画像の縮小画像(サムネイル)を作成し、内視鏡で撮影したライブ画像と縮小画像とを一緒に表示して、現在どの経路のどの分岐点に内視鏡が位置しているかを明確に示すことができるような装置が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-135215号公報
【特許文献2】特開2009-056143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2では、各経路毎にその経路上の分岐部の縮小画像が全て表示されるため、術者が表示画面で確認をするときに現在の位置から内視鏡を進めていったときに経路上にあらわれる分岐部の縮小画像がどれであるかを多数の縮小画像の中から見つけるのに時間がかかる。
【0009】
また、特許文献2では、入り口と目的部位を結ぶ複数の経路を、木構造の模式図を用いて表示しているが、単に経路に分けて縮小画像が並べられているだけであり、経路上の位置と分岐部の縮小画像との対応を把握することが困難である。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、内視鏡の経路上の位置と、内視鏡を進めていったときに現れる分岐部の仮想内視鏡画像の対応を即座に認識することが可能な内視鏡挿入支援装置およびその動作方法、並びに内視鏡挿入支援プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の内視鏡挿入支援装置は、木構造の管状構造物を撮影して得られたボリュームデータより、前記管状構造物を抽出する管状構造物抽出手段と、
前記管状構造物上の目的部位の位置を示す入力を受け付ける目的部位入力受付手段と、
前記管状構造物の入り口から内視鏡が管内を通過して前記目的部位に到達する複数の経路を抽出する経路抽出手段と、
前記抽出された経路上における前記管状構造物内を該管状構造物の管の内側から前記内視鏡を用いて撮影したと仮定した時の仮想内視鏡画像を前記ボリュームデータを用いて生成する仮想内視鏡画像生成手段と、
前記入り口から前記目的部位に到達するまでの間において、前記複数の経路が該経路の分岐点により区切られる複数の区間のうち前記内視鏡が現在位置している区間内の先方に存在する前記管状構造物の分岐部の仮想内視鏡画像と、前記内視鏡が現在位置で撮影した仮想内視鏡画像と、を同一画面上に表示するとともに、前記分岐部の仮想内視鏡画像が前記複数の経路上のいずれの区間の画像であるかを認識可能に表示する経路表示手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の上記の内視鏡挿入支援装置の動作方法は、木構造の管状構造物を撮影して得られたボリュームデータより、前記管状構造物を前記管状構造物抽出手段によって抽出する管状構造物抽出ステップと、
前記管状構造物上の目的部位の位置を示す入力を前記目的部位入力受付手段によって受け付ける目的部位入力受付ステップと、
前記管状構造物の入り口から内視鏡が管内を通過して前記目的部位に到達する複数の経路を前記経路抽出手段によって抽出する経路抽出ステップと、
前記抽出された経路上における前記管状構造物内を該管状構造物の管の内側から前記内視鏡を用いて撮影したと仮定した時の仮想内視鏡画像を前記ボリュームデータを用いて前記仮想内視鏡画像生成手段によって生成する仮想内視鏡画像生成ステップと、
前記入り口から前記目的部位に到達するまでの間において、前記複数の経路が該経路の分岐点により区切られる複数の区間のうち前記内視鏡が現在位置している区間内の先方に存在する前記管状構造物の分岐部の仮想内視鏡画像と、前記内視鏡が現在位置で撮影した仮想内視鏡画像と、を同一画面上に表示するとともに、前記分岐部の仮想内視鏡画像が前記複数の経路上のいずれの区間の画像であるかを認識可能に前記経路表示手段によって表示する経路表示ステップとを動作させることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の内視鏡挿入支援プログラムは、コンピュータを上記の内視鏡挿入支援装置として機能させるためのものである。
【0014】
「内視鏡が現在位置している区間内の先方に存在する前記管状構造物の分岐部」とは、内視鏡が位置している区間内に存在する管状構造物の分岐部であって、区間の開始位置を越えたところに存在する管状構造物の分岐部をいい、区間の終点位置の管状構造物の分岐部を含むものである。
また、「前記分岐部の仮想内視鏡画像が前記複数の経路上のいずれの区間の画像であるかを認識可能に表示する」とは、仮想内視鏡画像がいずれの区間の分岐部の画像であるかを認識することができるように画面上に表示することをいう。具体的には、例えば、経路を区間ごとに異なる色で色分けした経路図を表示して、それぞれの区間に存在する分岐部の仮想内視鏡画像を該当区間の色で縁取ることにより分岐部の仮想内視鏡画像と区間との対応が認識できるようにする。経路上の区間と分岐部の仮想内視鏡画像の対応が認識できれば、どのようなものでもよく、仮想内視鏡画像上にマウスなどで指示すると、区間の位置を表示するものであってもよい。
【0015】
また、前記経路表示手段は、前記内視鏡が現在位置している区間内の先方に存在する前記分岐部の仮想内視鏡画像を、前記内視鏡が進む順に並べて表示するものであってもよい。
【0016】
また、前記ボリュームデータより生成した前記管状構造物の模式図上に前記経路を描画した経路図を表示する経路図表示手段をさらに備えるようにして、前記経路表示手段が、前記経路図と前記分岐部の仮想内視鏡画像を同一画面上に表示して、前記経路図上の区間と前記分岐部の仮想内視鏡画像との対応を認識可能に表示するものが好ましい。
【0017】
また、前記内視鏡が現在位置している区間から進む前記経路上の次の区間の選択入力を受け付ける選択入力受付手段を備えるようにして、該選択入力受付手段による受け付けに応じて、前記経路表示手段が、前記内視鏡が現在位置している区間内の先方に存在する前記分岐部の仮想内視鏡画像を、前記選択入力された区間内の先方に存在する前記分岐部の仮想内視鏡画像に切り替えて表示するようにしてもよい。
【0018】
また、前記経路表示手段が、前記内視鏡が現在位置している区間内の先方に存在する前記分岐部の仮想内視鏡画像に加えて、前記内視鏡が通過した前記経路上の区間に存在する前記分岐部の仮想内視鏡画像を表示するものであってもよい。
【0019】
また、前記分岐部の仮想内視鏡画像が縮小画像であってもよい。
【0020】
さらに、被検者の前記管状構造物内を通過した内視鏡の現在位置を入力する現在位置入力手段と、前記内視鏡の現在位置において前記被検者の前記管状構造物内を撮影した内視鏡撮影画像を入力する内視鏡画像入力手段とをさらに備えるようにして、前記経路表示手段が、前記入力された内視鏡の現在位置に基づいて、該内視鏡が現在位置している区間内の先方に存在する前記分岐部の仮想内視鏡画像とともに、前記入力された内視鏡撮影画像を同一画面上に表示するものであってもよい。
【0021】
さらにまた、前記管状構造物が気管支であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
内視鏡が木構造の管状構造物の入り口から管内を通過して目的部位に到達するまでの間の経路を分岐点により区切られる複数の区間に分けて、仮想の内視鏡が現在位置している区間内の先方に存在する管状構造物の分岐部の仮想内視鏡画像と、内視鏡が現在位置で撮影した仮想内視鏡画像とを同一画面上に表示して、分岐部の仮想内視鏡画像が経路上のいずれの区間の画像であるかを認識することができるように表示することによって、内視鏡が現在位置している区間が確認できるとともに、内視鏡を進めていくと現れる管状構造物の分岐部の状態を前もって確認しながら、内視鏡を挿入していく様子をシミュレーションすることが可能になる。
【0023】
また、各区間の分岐部の仮想内視鏡画像を内視鏡が進む順に並べて表示するようにすれば、各区間の何処まで内視鏡が進んでいるかを把握することが容易になる。
【0024】
また、管状構造物の模式図上に経路を描画した経路図を表示するようにして、経路図の区間と分岐部の仮想内視鏡画像との対応が認識できるように表示することにより、分岐部の仮想内視鏡画像が管状構造物の全体の中の何処に存在する分岐部の画像であるかを把握することが容易になる。
【0025】
また、内視鏡が現在位置している区間から進む次の区間の選択入力を受け付けて、現在の区間の分岐部の仮想内視鏡画像を選択入力された区間の分岐部の仮想内視鏡画像に切り替えて表示することによって、管状構造物の分岐部の状態を確認して内視鏡の挿入に適した区間を選択しながら内視鏡を挿入したときの画像を確認することができる。
【0026】
さらに、被検者の管状構造物内に内視鏡を実際に挿入したときの内視鏡の現在位置と、内視鏡で撮影したライブの内視鏡撮影画像を入力して、管状構造物の分岐部の仮想内視鏡画像と一緒に表示するようにすれば、次に現れる管状構造物の分岐部の画像を先に確認しながら、内視鏡を進めていくことが可能になり目的部位まで短時間で到達させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態となる内視鏡挿入支援装置含む医療システムの概略構成図
【図2】内視鏡の概略構成図
【図3】本発明の実施の形態における内視鏡挿入支援装置の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態における内視鏡挿入支援装置を用いて内視鏡の挿入をシミュレーションする場合の処理の流れを示したフローチャート
【図5】管状構造物の木構造の一例を示す図
【図6】管状構造物の模式図の一例を示す図
【図7】管状構造物と目的部位に到達する経路の一例を示す図
【図8】管状構造物の経路図の一例を示す図
【図9】経路上の区間と各区間に存在する気管支分岐部の対応を示す図
【図10】仮想内視鏡画像を表示した画面の一例を示す図
【図11】画面の下部の管状構造物の分岐部の仮想内視鏡画像の遷移を説明するための図(その1)
【図12】画面の下部の管状構造物の分岐部の仮想内視鏡画像の遷移を説明するための図(その2)
【図13】本発明の実施の形態における内視鏡挿入支援装置を用いて内視鏡の挿入をナビゲーションする場合の処理の流れを示したフローチャート
【図14】内視鏡を挿入する様子を示す図
【図15】内視鏡の現在位置を検出する構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の内視鏡挿入支援装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の内視鏡挿入支援装置を含む医療システムの概略構成図である。医療システムは、モダリティ1、画像保管サーバ2、画像処理ワークステーション3、ネットワーク4、内視鏡5で構成される。
【0029】
モダリティ1には、患者の診断対象となる部位を撮影することにより、その被写体を表す3次元の医用画像データを生成し、その画像データにDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格で規定された付帯情報を付加して出力する装置が含まれる。具体例としては、CT装置、MRI装置などが挙げられる。
【0030】
画像保管サーバ2は、モダリティ1で取得された医用画像データや、画像処理ワークステーション3で画像処理が施された画像データを画像データベースに保存・管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置やデータベース管理用ソフトウェアを備えている。モダリティ1で撮影された3次元の医用画像データはボリュームデータVとして記憶される。
【0031】
画像処理ワークステーション3は、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置(マウス、キーボード等)、表示装置(ディスプレイモニタ)、データバス等の周知のハードウェア構成を備え、周知のオペレーティングシステム等がインストールされたものである。画像処理ワークステーション3にはGUI(Graphical User Interface)が実装されており、ユーザーは、GUIを利用してモダリティ1や画像保管サーバ2から所望の医用画像データを取得したり、各種の指示を入力することができる。さらに、画像処理ワークステーション3は、取得した医用画像データに対して種々の画像処理を施し、生成した画像を表示装置上に表示する機能を備えている。
【0032】
また、画像処理ワークステーション3は、内視鏡挿入支援装置プログラムをインストールすることにより内視鏡挿入支援処理が実装され、本発明の内視鏡挿入支援装置として機能する。この内視鏡挿入支援プログラムは、CD−ROM等の記憶媒体に記憶され、もしくはインターネット等のネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされる。
【0033】
ネットワーク4は、モダリティ1、画像保管サーバ2、画像処理ワークステーション3の各機器を接続する。ネットワーク4経由での各装置間の通信は、DICOM等のプロトコルに基づいて行なわれる。
【0034】
図2に内視鏡の構造を示す。内視鏡5は、体内に挿入するファイバースコープ51、ファイバースコープの手元側に設けられた操作部52、撮影した内視鏡画像を信号に変換して出力する画像出力部53を備えている。ファイバースコープ51の先端には、対物レンズ54、鉗子口55、ライトガイド56が設けられる。操作部52の操作により、ファイバースコープ51の先端部の対物レンズ54を注目する方向に向けて体内撮影を行なう。また、鉗子口55を通過した生検鉗子を用いて患部組織のサンプルの採取が可能なように構成される。特に、内視鏡5が気管支内視鏡である場合には、ファイバースコープ51は、気管支の末端近くの細い気管支へ挿入可能な湾曲性の高いものが好ましい。
内視鏡5の画像出力部53は、画像処理ワークステーション3に接続され、画像処理ワークステーション3の入出力インターフェースを経由して内視鏡5で撮影された画像が入力される。
【0035】
図3は、画像処理ワークステーション3の機能のうち、本発明の実施形態となる内視鏡挿入支援装置30に関連する部分のブロック図である。図に示すように、本発明の実施形態となる内視鏡挿入支援装置30は、管状構造物抽出手段31、模式図生成手段32、目的部位入力受付手段33、経路抽出手段34、仮想内視鏡画像生成手段35、経路表示手段36、ボリュームデータ記憶手段37、現在位置入力手段38、内視鏡画像入力手段39、選択入力受付手段40、経路図表示手段41で構成される。
【0036】
次に、本発明の実施形態となる内視鏡挿入支援処理を用いた気管支への内視鏡挿入のシミュレーションについて説明する。はじめに、患者の肺の気管支の管内への内視鏡の挿入を仮定して、CT装置で撮影されたボリュームデータを用いて気管支の入り口から病変部まで気管支の管内を仮想の内視鏡が通過する様子をシミュレーションする場合について説明する。図4は、内視鏡の挿入をシミュレーションする場合の術者の操作や、演算処理、表示処理等の流れを示したフローチャートである。
【0037】
まず、CT装置(モダリティ1)で検査対象の患者(被検者)の胸部を撮影したボリュームデータVが画像保管サーバ2に保管される。内視鏡の気管支への挿入をシミュレーションするために、術者は、画像処理ワークステーション3に実装された公知のオーダリングシステムの操作端末インターフェースを操作し、検査対象の患者のボリュームデータVの取得を要求する。この操作に応じて、画像処理ワークステーション3は画像保管サーバ2に対してボリュームデータVの検索要求を送信し、画像保管サーバ2は、データベース検索により、患者のボリュームデータVを取得し、画像処理ワークステーション3に送信する。画像処理ワークステーション3は、画像保管サーバ2から送信されてきたボリュームデータVをボリュームデータ記憶手段37に記憶する(#1)。
【0038】
次に、画像処理ワークステーション3で内視鏡挿入支援処理ソフトウェアを起動して、気管支の入り口から目的部位までの内視鏡の挿入をシミュレーションする。
【0039】
まず、最初に、画像処理ワークステーション3の管状構造物抽出手段31を用いてボリュームデータVから患者の気管支の構造を抽出する(#2)。
ボリュームデータV中の気管支は、気管支の内部の画素は空気領域に相当するためCT画像上では低いCT値(画素値)を示す領域として表れるが、気管支壁は比較的高いCT値を示す円柱あるいは線状の構造物であると考えられる。そこで、各画素ごとにCT値の分布に基づく形状の構造解析を行なって気管支を抽出する。以下、気管支を線状構造物として抽出する場合について説明する。
【0040】
気管支は多段階に分岐し末端に近づくほど気管支の径は小さくなっていく。異なるサイズの気管支(線状構造物)を検出することができるように、予め、三次元画像を多重解像度変換したガウシアンピラミッド画像(つまり、異なる解像度の複数の三次元画像)を生成し、生成したガウシアンピラミッドの各画像ごとに検出アルゴリズムを走査することで異なるサイズの線状構造物を検出する。
【0041】
まず、各解像度の三次元画像の各画素のヘッセ行列を算出し、ヘッセ行列の固有値の大小関係から線状構造物内の画素であるかを判定する。ヘッセ行列は、各軸(三次元画像のx軸、y軸、z軸)方向における濃度値の2階の偏微分係数を要素とする行列であり、数1のように3×3行列となる。
【数1】

任意の画素におけるヘッセ行列の固有値をλ1、λ2、λ3としたとき、固有値のうち2つの固有値が大きく、1つの固有値が0に近い場合、例えば、λ3、λ2≫λ1、λ1≒0を満たすとき、その画素は線状構造物であることが知られている。また、ヘッセ行列の最小の固有値(λ1≒0)に対応する固有ベクトルが線状構造物の主軸方向に一致する。
【0042】
気管支は木構造で表すことができるが、このようにして抽出された線状構造物は、腫瘍などの影響により、全ての線状構造物が繋がった1つの木構造として検出されるとは限らない。そこで、三次元画像全体の判別が終了後、検出された線状構造物が一定の距離内にあり、かつ抽出された二つの線状構造物上の任意の点を結ぶ基本線の向きと各線状構造物の主軸方向とが成す角が一定角度以内であるかについて評価することにより、複数の線状構造物が接続されるものであるか否かを判定して抽出された線状構造物の接続関係を再構築する。この再構築により、気管支の木構造の抽出が完了する(詳細は、本願出願人が出願した特開2010-220742号公報などを参照)。
【0043】
抽出した木構造を、開始点・端点・木構造分岐点・エッジ(辺)に分類し、開始点IN・端点・木構造分岐点をエッジで連結することによって、気管支を表す木構造データTを得る。必要に応じて、木構造の各位置における気管支の径や各エッジの長さ(気管支の分岐部間の長さ)等の特徴量も木構造データTとして格納する。図5に木構造の一例を示す。図5では、分岐点を○、端点を●、エッジを線で表している。
【0044】
さらに、模式図生成手段32は、気管支の木構造データTに基づいて、気管支をボリュームレンダリングした気管支レンダリング画像を生成し、この気管支レンダリング画像を模式図Mとする(#3)。図6に模式図Mの一例を示す。
【0045】
次に、目的部位入力受付手段33は、目的部位Objの位置を示す入力を受け付ける。例えば、模式図生成手段32で生成された模式図Mを画像処理ワークステーション3の表示装置の画面上に表示し、表示された画像上で肺の腫瘍の位置をマウスなどで囲むことにより目的部位Obj(図6参照)の位置を入力する(#4)。
【0046】
目的部位Objが設定されると、経路抽出手段34は、仮想の内視鏡が気管支の入り口から管内を通過して目的部位Objに到達する代表的な複数の経路を木構造データTに基づいて抽出する(#5)。図7に示すように、目的部位Objが腫瘍のようにある程度の大きさがある場合、目的部位Objには分岐した複数の気管支の端部E1,E2,E3が接続し、気管支の入り口から目的部位Objに達する経路も複数存在する。目的部位Objに接続する気管支の端部に対応する木構造データT上の端点を検出して、気管支の入り口に該当する木構造データTの開始点INから目的部位Objに達する端点E1,E2,E3までの経路を木構造データTをベースに探索する。経路の探索には、従来から行われている種々の経路探索法を用いることができるが、探索する際、気管支の径・気管支の分岐部が曲がっている角度等に応じてコストを割り当てて、内視鏡の挿入に適した経路を探索するようにしてもよい。図5では、破線で囲んだ端点E1,E2,E3が目的部位に該当する端点を表し、経路1〜3の3つの経路が探索された様子を示す。
【0047】
続いて、経路図表示手段41で、模式図M上に抽出された全ての経路を描画した経路図Rを作成して、表示画面上に表示する(#6)。木構造データTを用いて探索した3通りの経路は、模式図M上で図7のように対応する。図5の木構造データTでもわかるように、開始点INから目的部位Objまで、経路が3つの各経路に分岐していく。この経路が分岐する点を経路分岐点として、木構造の分岐点と区別する。図5の例では、矢印の位置の分岐点が経路分岐点になる。経路を経路分岐点で区切られる複数の区間に分けて、各区間が区別できるように、経路の区間毎に異なる色で経路を色分けした経路を模式図M上に描画したものを経路図Rとする。各区間ごとに異なる色で色分けした経路図Rの一例を図8に示す。図8では、経路図R上の白丸で挟まれた経路が1つの区間に該当する。図8では、区間1を赤、区間2を黄、区間3を青、区間4をオレンジ、区間5を緑に色分けをする。
【0048】
次に、気管支の入り口INから内視鏡を挿入していく様子をシミュレーション表示する。図10に示すように、画像処理ワークステーション3の表示装置の画面の右上に、シミュレーションする経路(経路1,2,3)を選択するために選択表示部Aに経路リストが表示される。術者は画面上で、シミュレーションする経路を選択表示部Aから選択する(#7)。
【0049】
仮想内視鏡画像生成手段35は、気管支の管の内側から仮想内視鏡を用いて撮影した時(つまり、内視鏡を用いて撮影したと仮定した時)の仮想内視鏡画像VEを、ボリュームデータVを用いてボリュームレンダリングにより生成する。仮想内視鏡画像生成手段35では、仮想内視鏡がおかれている現在位置で気管支の管内を撮影したときの仮想内視鏡画像VEと、経路上にある気管支の分岐部(以下、単に気管支分岐部という)を撮影した仮想内視鏡画像VEを生成する。気管支分岐部の仮想内視鏡画像VEは、経路の気管支分岐部の管の分岐口全体が見渡せるように仮想内視鏡が進む経路の気管支分岐部の少し手前の位置から撮影したときの画像になるように生成される。また、予め、選択された経路上に存在している全ての気管支分岐部の仮想内視鏡画像VEを生成して、生成した気管支分岐部の仮想内視鏡画像VEを所望のサイズに縮小した縮小画像を、経路の各区間と対応付けて縮小画像経路対応情報として保存しておく(#8)。
【0050】
経路表示手段36は、図10に示すように、仮想内視鏡が現在位置で撮影した仮想内視鏡画像VEを画像処理ワークステーション3の表示装置の画面の中心に表示し、気管支分岐部の仮想内視鏡画像VEの縮小画像を画面の下部Bに表示する。さらに、経路図Rも同じ画面上に表示される(#9)。
【0051】
画面の下部Bには、選択された経路(例えば経路1)のうち仮想内視鏡が現在位置している区間内に存在する気管支分岐部の仮想内視鏡画像VEの縮小画像が表示され、気管支分岐部が現れる順に並べられる。画面の下部Bに表示される縮小画像には、各区間の経路の最後の経路分岐点の位置にある気管支分岐部の縮小画像が含まれ、次の区間に入る前に、前の区間の最後の気管支分岐部(つまり、次の区間に内視鏡が入るときの気管支分岐部)の仮想内視鏡画像VEが確認できるようにする。図9に、区間1〜3の気管支分岐部の箇所を示す。区間1内には4つの気管支分岐部(図9の四角で囲まれた部分)が含まれ、区間2内には2つの気管支分岐部(図9の丸で囲まれた部分)が含まれ、区間3内には2つの気管支分岐部(図9の三角で囲まれた部分)が含まれる。
【0052】
また、縮小画像経路対応情報に基づいて、経路図R上で各区間を色分けした色と同じ色を用いて縮小画像を縁取って表示する。これにより、表示されている縮小画像と気管支の経路の区間の対応を視覚的に認識することができる。例えば、図10に示すように、図8の経路図Rの区間1と同じ赤(画面の下部Bの斜め線の枠)で、区間1の気管支分岐部の縮小画像を縁取って表示する。
【0053】
次に、仮想内視鏡の現在位置で撮影した気管支の仮想内視鏡画像VEと縮小画像の表示の遷移について説明する。
【0054】
まず、経路1のシミュレーションを開始すると、気管支の入り口INの位置で仮想内視鏡が撮影した仮想内視鏡画像VEが現在位置の画像として画面の中心に表示され、画面の下部Bに、経路の入り口INから始まる最初の区間(区間1)上にある気管支分岐部の縮小画像が表示される。中心の現在位置の仮想内視鏡画像VEは仮想内視鏡を進めていくときに観察される画像に徐々に切り替えて動画表示をする(#10)。仮想内視鏡の現在位置と次に通過する気管支分岐部との対応をわかりやすくするために、画面の下部Bの縮小画像のうち次に通過する気管支分岐部の縮小画像を点滅表示するなど強調表示を行う。点滅表示している気管支分岐部を仮想内視鏡が通過すると、次に現れる気管支分岐部の縮小画像が点滅表示するように順次切り替えられる。
【0055】
また、次に通過する気管支分岐部の画像を、縮小画像とせずに仮想内視鏡の現在位置の仮想内視鏡画像VEと同じサイズにして並べて表示するようにしてもよい。これによって現在位置の仮想内視鏡画像VEと気管支分岐部の画像との整合性を確認しながら操作することができる。また、このとき表示している気管支分岐部の画像は、縮小画像にした場合と同様の色で縁取ることで経路上の区間との対応を図ることが可能になる。
【0056】
あるいは、仮想内視鏡の現在位置から気管支分岐部までの距離によって、気管支分岐部の縮小画像の表示を変更するようにしてもよい。例えば、仮想内視鏡の現在位置と気管支分岐部までの距離が遠いほど気管支分岐部の画像の縁の色を暗くし、近いほど縁の色を明るくする、あるいは、仮想内視鏡の現在位置と気管支分岐部までの距離が遠いほど気管支分岐部の画像サイズを小さくし、近いほど画像サイズを大きくするようにしてもよい。これによって次に通過する気管支分岐部に対する準備が行いやすくなる。
【0057】
最初の区間1を通過して次の区間(区間2)に仮想内視鏡が入ると、縮小画像経路対応情報を参照して、画面の下部Bの最初の区間の気管支分岐部の縮小画像に、区間2の気管支分岐部の縮小画像を追加して表示する(#11)。このとき、最初の区間の気管支分岐部の縮小画像はそのままで、区間2の気管支分岐部の縮小画像は、経路図R上の区間2の経路の色と同じ色を用いて縁取って表示する。これにより、最初の区間の縮小画像と区別が容易になる。同様に、区間2から区間3に進んだ時も表示を変えていく。このように順次縮小画を追加表示していくことで、内視鏡が通過した前記経路上の区間に存在する気管支分岐部の縮小画像が全て表示される。図11に、区間を進む度に画面の下部Bに次の区間の縮小画像を追加して表示する様子を示す(便宜上、気管支分岐部の縮小画像は省略して、縮小画像を縁取る枠のみを示す)。1段目の表示が最初の区間(区間1)に仮想内視鏡が位置した場合の図、2段目の表示が区間2に仮想内視鏡が位置した場合の図、3段目の表示が区間3に仮想内視鏡が位置した場合の図である。
【0058】
あるいは、最初の区間1を通過して次の区間2に仮想内視鏡が入ると、画面の下部Bには最初の区間1の気管支分岐部の縮小画像を、区間2の気管支分岐部の縮小画像に切り替えて表示するようにしてもよい(#11)。このとき、区間2の気管支分岐部の縮小画像は経路図R上の区間2の経路の色と同じ色を用いて縁取って表示する。これにより、仮想内視鏡の現在位置している経路がいずれの経路であるかを容易に把握することが可能になる。図12に、区間が進む度に画面の下部Bの縮小画像を次の区間の縮小画像に切り替えて表示する様子を示す。1段目の表示が最初の区間に仮想内視鏡が位置した場合の図、2段目の表示が区間2に仮想内視鏡が位置した場合の図、3段目の表示が区間3に仮想内視鏡が位置した場合の図である。
【0059】
以上のように表示を変えていき、画面中心の仮想内視鏡が目的部位Objまで到達するとシミュレーションは終了する。
【0060】
上述では、初めに複数の経路のうちいずれかの経路を選択して、経路に沿って仮想内視鏡を進める場合について説明したが、経路分岐点まで仮想内視鏡を進めた時点で、選択入力受付手段40を用いて、現在の区間から次に進む区間を選択して、この選択入力に従って経路表示手段36で画面の下部Bの気管支分岐部の縮小画像を切り替え表示してもよい。
【0061】
例えば、区間1に仮想内視鏡が位置しているときには、次に区間2または区間4のいずれかに進むことができる(図8参照)。そこで、マウスを用いて、経路図R上で区間2または区間4のいずれかを選択する。区間2が選択された場合には、経路表示手段36で、画面の下部Bの区間1の気管支分岐部の縮小画像に選択入力された区間2の気管支分岐部の縮小画像を追加して表示、あるいは、区間1の気管支分岐部の縮小画像を区間2の気管支分岐部の縮小画像に切り替えて表示するようにしてもよい。
【0062】
このように選択しながら進むことで、内視鏡の挿入に適した気管支分岐部を確認しながら経路を選択することができる。
【0063】
次に、患者の肺の気管支の管内へ実際に内視鏡5を挿入する際に、内視鏡挿入支援処理を用いて内視鏡5の挿入をナビゲーションする場合について説明する。図13は、内視鏡の挿入をナビゲーションする場合の術者の操作や、演算処理、表示処理等の流れを示したフローチャートである。
【0064】
術者は、前述の仮想内視鏡のシミュレーションを行って内視鏡を気管支に挿入した時の画像を確認した後、実際に患者の気管支に内視鏡を挿入して内視鏡検査を行う。画像処理ワークステーション3の表示装置には、前述の仮想内視鏡のシミュレーション時と同様に図10の画面が表示されるが、シミュレーション時は画面中心に仮想内視鏡で撮影した現在位置の仮想内視鏡画像VEが表示されていたが、実際に内視鏡5を患者の気管支に挿入する際には画面中心の画像は内視鏡5で撮影されたライブの内視鏡画像Eに切り替わる。画面の下部Bの気管支分岐部の仮想内視鏡画像VEの縮小画像は、患者に内視鏡を挿入する前に、前述の#1〜#8で説明した手順と同様に用意される。また、図10の画面の右上の経路は、シミュレーションする経路ではなく内視鏡の挿入をナビゲーションする経路となる。
【0065】
まず、内視鏡を実際に患者に挿入する前に、画像処理ワークステーション3の表示装置の画面の右上の経路から、内視鏡を挿入する経路を選択するために選択表示部Aが表示される。術者は画面上で、内視鏡の挿入をナビゲーションする経路を選択表示部Aから選択する(#7)。
経路選択の後、内視鏡検査を開始する(#12)。図14に示すように、内視鏡5のファイバースコープ51を患者の口あるいは鼻から挿入し、挿入開始と同時に内視鏡による撮影を開始する。撮影された内視鏡画像Eは内視鏡5の画像出力部53から画像信号として出力され、画像処理ワークステーション3の内視鏡画像入力手段39を経由して表示装置の画面中心に表示される(#13)。
【0066】
術者は、内視鏡5が気管支の入り口INに到着したことをライブの内視鏡画像Eで確認すると、画像処理ワークステーション3の現在位置入力手段38を用いて、気管支の入り口INに内視鏡5が到着したことを入力する。現在位置入力手段38では、例えば、表示装置の画面に表示されている経路図の入り口INをマウスで指示して最初の区間1に内視鏡5が到着したことを入力する。
【0067】
気管支の入り口INが内視鏡5の現在位置であることが画像処理ワークステーション3に入力されると、画面の下部Bに、経路の入り口INから始まる最初の区間1上にある気管支分岐部の縮小画像が表示される。画面の下部Bには、仮想内視鏡のシミュレーション時と同様に、気管支の入り口INから選択された経路に沿って気管支分岐部が現れる順に縮小画像が並べられ、経路図R上で各区間を色分けした色と同じ色を用いて縮小画像を縁取って表示する。
【0068】
術者は、画面中心のライブの内視鏡画像Eの動画と画面の下部Bの縮小画像とを見比べて内視鏡の位置を確認しながら、術者が選択した経路に内視鏡5を進めるように操作部52からファイバースコープ51の先端を操作する(#14)。
【0069】
最初の区間を通過して次の区間2に内視鏡5が挿入されると、術者は、現在位置入力手段38を用いて、区間2に内視鏡5が到着したことを入力する。この入力に応じて、画面の下部Bには区間2上にある気管支分岐部の縮小画像が表示される(#15)。
【0070】
同様に、区間2から区間3に進んだ時も画面の下部Bの表示を変えていく。以上の操作を繰り返しながら、術者は、内視鏡5の操作部52を操作して目的部位Objまでファイバースコープ51の先端を進める。ファイバースコープ51の先端が目的部位Objに到達すると、鉗子口55から出ている生検鉗子を操作して患部組織のサンプルを採取する。
【0071】
上述では、画像処理ワークステーション3の表示装置の画面を確認しながら内視鏡の現在位置を入力する場合について説明したが、ファイバースコープ51の挿入量を計測する計測部と、ファイバースコープ51の先端部の傾斜角を検出するセンサーを設けて、挿入量と傾斜角から自動で内視鏡の現在位置を検出する構成にしても良い。
例えば、図15に示すように、ファイバースコープ51の周面に接触するように滑車を配し、この滑車の回転量を計測する計測部57を設けて、挿入量を検出するようにしてもよい。また、先端部には電磁コイルを設置し、湾曲による電導量の変化を読み取って先端部の傾斜角を検出するセンサー58を設けるようにしてもよい(特開2004−105725号公報など参照)。
【0072】
また、上述では、初めに複数の経路のうちいずれかの経路を選択して、経路に沿って内視鏡を進める場合について説明したが、経路分岐点まで内視鏡を進めた時点で、選択入力受付手段40を用いて、内視鏡が実際に進む区間を選択して、この選択入力に従って経路表示手段36で画面の下部の気管支分岐部の縮小画像を切り替え表示してもよい。
【0073】
上述では、気管支分岐部の仮想内視鏡画像を経路図上の各区間の色と同じ色で縁取ることにより、経路の区間と気管支分岐部の仮想内視鏡画像とを対応付ける場合について説明したが、経路の区間と気管支分岐部の仮想内視鏡画像との対応がわかるように表示されればよい。例えば、気管支分岐部の仮想内視鏡画像上にマウスを置くと、経路図上の対応する経路の区間が強調表示されるようにしてもよい。あるいは、気管支分岐部の仮想内視鏡画像上にマウスを置くと、経路図上の対応する経路の区間の位置が文字で表示されるようにしてもよい。
【0074】
以上、詳細に説明したように、本発明の内視鏡挿入支援装置を用いて、内視鏡の挿入時の画像をシミュレーションした後に、実際に内視鏡を用いて気管支に挿入することで、正確に時間をかけずに目的部位に内視鏡を挿入することが可能になる。
【符号の説明】
【0075】
1 モダリティ
2 画像保管サーバ
3 画像処理ワークステーション
4 ネットワーク
5 内視鏡
30 内視鏡挿入支援装置
31 管状構造物抽出手段
32 模式図生成手段
33 目的部位入力受付手段
34 経路抽出手段
35 仮想内視鏡画像生成手段
36 経路表示手段
37 ボリュームデータ記憶手段
38 現在位置入力手段
39 内視鏡画像入力手段
40 選択入力受付手段
41 経路図表示手段
51 ファイバースコープ
52 操作部
53 画像出力部
54 対物レンズ
55 鉗子口
56 ライトガイド
57 計測部
58 センサー
IN 入り口(開始点)
M 模式図
Obj 目的部位
R 経路図
T 木構造データ
V ボリュームデータ
VE 仮想内視鏡画像
E 内視鏡画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木構造の管状構造物を撮影して得られたボリュームデータより、前記管状構造物を抽出する管状構造物抽出手段と、
前記管状構造物上の目的部位の位置を示す入力を受け付ける目的部位入力受付手段と、
前記管状構造物の入り口から内視鏡が管内を通過して前記目的部位に到達する複数の経路を抽出する経路抽出手段と、
前記抽出された経路上における前記管状構造物内を該管状構造物の管の内側から前記内視鏡を用いて撮影したと仮定した時の仮想内視鏡画像を前記ボリュームデータを用いて生成する仮想内視鏡画像生成手段と、
前記入り口から前記目的部位に到達するまでの間において、前記複数の経路が該経路の分岐点により区切られる複数の区間のうち前記内視鏡が現在位置している区間内の先方に存在する前記管状構造物の分岐部の仮想内視鏡画像と、前記内視鏡が現在位置で撮影した仮想内視鏡画像と、を同一画面上に表示するとともに、前記分岐部の仮想内視鏡画像が前記複数の経路上のいずれの区間の画像であるかを認識可能に表示する経路表示手段とを備えた内視鏡挿入支援装置。
【請求項2】
前記経路表示手段が、前記内視鏡が現在位置している区間内の先方に存在する前記分岐部の仮想内視鏡画像を、前記内視鏡が進む順に並べて表示するものであることを特徴とする請求項1記載の内視鏡挿入支援装置。
【請求項3】
前記ボリュームデータより生成した前記管状構造物の模式図上に前記経路を描画した経路図を表示する経路図表示手段をさらに備え、
前記経路表示手段が、前記経路図と前記分岐部の仮想内視鏡画像を同一画面上に表示して、前記経路図上の区間と前記分岐部の仮想内視鏡画像との対応を認識可能に表示するものであることを特徴とする請求項1または2記載の内視鏡挿入支援装置。
【請求項4】
前記内視鏡が現在位置している区間から進む前記経路上の次の区間の選択入力を受け付ける選択入力受付手段を備え、
該選択入力受付手段による受け付けに応じて、前記経路表示手段が、前記内視鏡が現在位置している区間内の先方に存在する前記分岐部の仮想内視鏡画像を、前記選択入力された区間内の先方に存在する前記分岐部の仮想内視鏡画像に切り替えて表示することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の内視鏡挿入支援装置。
【請求項5】
前記経路表示手段が、前記内視鏡が現在位置している区間内の先方に存在する前記分岐部の仮想内視鏡画像に加えて、前記内視鏡が通過した前記経路上の区間に存在する前記分岐部の仮想内視鏡画像を表示することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の内視鏡挿入支援装置。
【請求項6】
前記分岐部の仮想内視鏡画像が縮小画像であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の内視鏡挿入支援装置。
【請求項7】
被検者の前記管状構造物内を通過した内視鏡の現在位置を入力する現在位置入力手段と、
前記内視鏡の現在位置において前記被検者の前記管状構造物内を撮影した内視鏡撮影画像を入力する内視鏡画像入力手段とをさらに備え、
前記経路表示手段が、前記入力された内視鏡の現在位置に基づいて、該内視鏡が現在位置している区間内の先方に存在する前記分岐部の仮想内視鏡画像とともに、前記入力された内視鏡撮影画像を同一画面上に表示することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の内視鏡挿入支援装置。
【請求項8】
前記管状構造物が気管支であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の内視鏡挿入支援装置。
【請求項9】
請求項1記載の内視鏡挿入支援装置の動作方法において、
木構造の管状構造物を撮影して得られたボリュームデータより、前記管状構造物を前記管状構造物抽出手段によって抽出する管状構造物抽出ステップと、
前記管状構造物上の目的部位の位置を示す入力を前記目的部位入力受付手段によって受け付ける目的部位入力受付ステップと、
前記管状構造物の入り口から内視鏡が管内を通過して前記目的部位に到達する複数の経路を前記経路抽出手段によって抽出する経路抽出ステップと、
前記抽出された経路上における前記管状構造物内を該管状構造物の管の内側から前記内視鏡を用いて撮影したと仮定した時の仮想内視鏡画像を前記ボリュームデータを用いて前記仮想内視鏡画像生成手段によって生成する仮想内視鏡画像生成ステップと、
前記入り口から前記目的部位に到達するまでの間において、前記複数の経路が該経路の分岐点により区切られる複数の区間のうち前記内視鏡が現在位置している区間内の先方に存在する前記管状構造物の分岐部の仮想内視鏡画像と、前記内視鏡が現在位置で撮影した仮想内視鏡画像と、を同一画面上に表示するとともに、前記分岐部の仮想内視鏡画像が前記複数の経路上のいずれの区間の画像であるかを認識可能に前記経路表示手段によって表示する経路表示ステップとを動作させる内視鏡挿入支援装置の動作方法。
【請求項10】
コンピュータを、
木構造の管状構造物を撮影して得られたボリュームデータより、前記管状構造物を抽出する管状構造物抽出手段と、
前記管状構造物上の目的部位の位置を示す入力を受け付ける目的部位入力受付手段と、
前記管状構造物の入り口から内視鏡が管内を通過して前記目的部位に到達する複数の経路を抽出する経路抽出手段と、
前記抽出された経路上における前記管状構造物内を該管状構造物の管の内側から前記内視鏡を用いて撮影したと仮定した時の仮想内視鏡画像を前記ボリュームデータを用いて生成する仮想内視鏡画像生成手段と、
前記入り口から前記目的部位に到達するまでの間において、前記複数の経路が該経路の分岐点により区切られる複数の区間のうち前記内視鏡が現在位置している区間内の先方に存在する前記管状構造物の分岐部の仮想内視鏡画像と、前記内視鏡が現在位置で撮影した仮想内視鏡画像と、を同一画面上に表示するとともに、前記分岐部の仮想内視鏡画像が前記複数の経路上のいずれの区間の画像であるかを認識可能に表示する経路表示手段として機能させる内視鏡挿入支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−200403(P2012−200403A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67551(P2011−67551)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】