説明

内視鏡挿入補助具

【課題】簡単な構成で体腔管腔内への内視鏡挿入部の挿入を円滑かつ迅速におこない得ると共に良好な挿入操作性を備えた内視鏡挿入補助具を提供する。
【解決手段】筒状の挿入空間を形成する内向き面10aを有したチューブ10と、チューブの一端に連設される把持部11とからなるチューブ本体と、チューブ本体に設けられ挿入空間側に位置する突出位置とこの突出位置から内向き面方向へ変位した退避位置との間で、内向き面に対して移動可能な押圧面12bとを具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡挿入補助具、詳しくは内視鏡挿入部の挿入を円滑かつ迅速におこない得るよう補助する内視鏡挿入補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、細長状の挿入部を体腔内に挿入することにより、体腔内深部の臓器などを観察したり、必要に応じて挿入部に設けられている処置具挿通用チャンネル内に処置具を挿通させて、体腔内深部において各種の治療や処置などをおこない得るように構成される内視鏡が広く利用されている。
【0003】
細長状の挿入部を有する従来の内視鏡においては、一般に挿入部の先端側に湾曲部を設けて構成されている。この湾曲部は、これを構成する湾曲駒に接続される操作ワイヤを進退させることによって、例えば上下方向及び左右方向への湾曲動作を自在におこない得るように構成されている。この場合において、操作ワイヤの進退操作は、操作部に設けられている湾曲ノブなどの操作部材を、術者が手動で回動操作する等によっておこなわれるようになっているのが一般である。
【0004】
通常の場合、複雑に入り組んだ体腔内の管腔であって、例えば大腸などのように360°のループを描く管腔に対して内視鏡の挿入部を挿入する際には、その管腔に沿うように曲線を形成しながら挿入部を挿入することになる。この場合において、管腔の曲線部分では、図30,図31に示すように内視鏡102の挿入部102aと管腔の内壁(腸壁等)とが接触し滑り入ることで、術者が手100等によって挿入部102aを図に示す矢印Xに沿う方向へと押し込む力(挿入部の軸方向に沿う方向の押し込み力)の向きが管腔に沿う方向に変換され、これにより挿入部の先端部は体腔内の深部へと進み入るようになっている。
【0005】
また、例えばS字状結腸部のように管腔の曲率が大きい場合には、術者は、例えば湾曲ノブを操作して挿入部先端側に設けられる湾曲部を任意に湾曲動作させると共に、挿入部に対して捻り操作をおこなうことで、当該挿入部の先端部を体腔内深部の観察目的部位へと近付けるように挿入するという手段が用いられる。
【0006】
そうして、図32に示すように、挿入部の先端部が体腔内深部へと進むにつれて、挿入部と管腔内壁面(腸壁等)との接触部分が増えてくることから、挿入させる際の抵抗が強くなってくる。そこで、さらに挿入部の先端部を先へと進めるためには、その抵抗に抗する強い力量で挿入部を押し込む必要がある。
【0007】
ところが、上述したように、例えば図32に示すように挿入部が体腔内に向けてある程度挿入されて、挿入部と体腔内壁面との接触が増えてくると、挿入部の基端側から押し込む操作をおこなっても、図33に示すように管腔の入口近傍(直腸近傍)にて挿入部が折れ曲がってしまうなどにより、押し込む操作によっては挿入部の先端部を先に進めることができなくなってしまうという問題点がある。
【0008】
また、複雑に入り組んだ大腸内の深部にまで内視鏡の挿入部を挿入するのに際して、患者への負担を抑えつつ、円滑かつ迅速に短時間で、当該挿入部を体腔内の管腔を挿通させ得るまでにはさらなる熟練を要することになる。特に、経験の浅い術者においては、挿入部を深部へと挿入していく際に、挿入方向を見失う等に起因して挿通に手間取ってしまったり、腸の走行状態を大きく変化させてしまうようなこともある。
【0009】
このような点を考慮して、挿入部の挿入性を向上させるための種々の提案が従来よりなされている。
【0010】
例えば特開平10−286222号公報によって開示されている内視鏡挿入補助具は、内側チューブと外側チューブとによって構成される二重構造チューブからなり、当該チューブの内側空間に内視鏡挿入部を挿通し得るように構成し、内側チューブと外側チューブとを封止して形成される中間室(バルーン部)には、加圧吸引ポンプ等によって空気等の流体を供給または吸引することで、当該補助具を拡張または収縮し得るようになっている。
【0011】
そして、加圧吸引ポンプを駆動させて中間室に対して空気(流体)を供給したときには、補助具は拡張するので、当該補助具とこれに挿通された挿入部とが一体化するようになっている。さらに、このとき外側チューブの外面側は体腔内の腸壁に接触し、腸内において固設されるようになっている。一方、加圧吸引ポンプを駆動させて中間室から空気(流体)を吸引したときには、当該補助具と挿通された挿入部とが別体となるよう、かつ腸壁に対する外側チューブの接触が解除されるように構成している。
【特許文献1】特開平10−286222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、前記特開平10−286222号公報によって開示されている内視鏡挿入補助具では、挿入部を挿入する際に加圧吸引ポンプによる拡張と収縮を繰り返す必要があり、その操作性が煩雑であるという問題点がある。
【0013】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、簡単な構成でありながら、体腔管腔内への内視鏡挿入部の挿入を円滑かつ迅速におこなうことができると共に、より良好な挿入操作性を備えた内視鏡挿入補助具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明による内視鏡補助具は、筒状の挿入空間を形成する内向き面を有したチューブと、前記チューブの一端に連設される把持部とからなるチューブ本体と、前記チューブ本体に設けられ、挿入空間側に位置する突出位置とこの突出位置から前記内向き面方向へ変位した退避位置との間で、前記内向き面に対して移動可能な押圧面とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構成でありながら、体腔管腔内への内視鏡挿入部の挿入を円滑かつ迅速におこなうことができると共に、より良好な挿入操作性を備えた内視鏡挿入補助具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。
(第1の実施形態)
図1〜図8は、本発明の第1の実施形態に関し、このうち図1は、本実施形態の内視鏡挿入補助具の構成を示す斜視図である。なお、この図1及び以下に説明する図2〜図4では、本実施形態の内視鏡挿入補助具に対してその所定の部位に内視鏡挿入部を設置した状態を示している。図2は、図1の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態における先端部近傍を示す要部拡大断面図である。図3は、図1の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部が非固定状態にある場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図である。図4は、図1の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部を固定状態とした場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図である。
【0017】
図5〜図8は、本実施形態の内視鏡挿入補助具を用いて内視鏡挿入部を体腔管腔内に挿入する際の手順を示す概念図である。このうち図5は、本実施形態の内視鏡挿入補助具を内視鏡挿入部と共に肛門からS字状結腸部まで挿入した状態を示す図である。図6は、内視鏡挿入部を図5の状態よりも深部(下行結腸部)へと進めた状態を示す図である。図7は、内視鏡挿入部を図6の状態よりも深部(横行結腸部)へと進めた状態を示す図である。図8は、内視鏡挿入部を図7の状態よりも深部(盲腸部近傍)まで進めた状態を示す図である。
【0018】
本実施形態の内視鏡挿入補助具1は、図1〜図4に示すように可撓性を有し筒状の挿入空間を形成する内向き面10a(図3,図4参照)を有した中空チューブ10と、この中空チューブ10の後側に設けられ使用時に術者が把持する把持部11とからなるチューブ本体によって主に構成されている。
【0019】
把持部11は、中空の略円筒形状によって構成され、内部に挿入体である内視鏡2の挿入部2aを挿通させ得る挿通部11aが形成されている。この挿通部11aには、図3,図4に示すように中空チューブ10が一体に連設されている。これにより、把持部11の挿通部11aに挿通される内視鏡2の挿入部2aは、当該挿通部11aから中空チューブ10の挿入空間を挿通した後、同中空チューブ10の先端側から突出するようになっている。
【0020】
把持部11の外周上の略中央部近傍には、本内視鏡挿入補助具1に挿通される挿入部2aの固定状態を実現する固定部であってかつ挿入部2の固定状態と非固定状態とを切り換える操作部でもある固定解除操作部12が配設されている。この固定解除操作部12は例えば円柱状または角柱状の部材よりなり、その中程の部位であって、上記挿通部11aと重なる部位に、この挿通部11aと略同形同寸法の貫通孔12aが穿設されている。
【0021】
そして、固定解除操作部12は、把持部11の挿通部11aに挿通される内視鏡2の挿入部2aの軸方向(挿通方向。図3の矢印Xに沿う方向)に対して略直交する方向(図3の矢印Yに沿う方向)に移動自在に配設されている。
【0022】
つまり、固定解除操作部12は、中空チューブ10の挿入空間側に突出する位置に配置される突出位置(図4参照)と、この突出位置から中空チューブ10の内向き面10a方向へ変位した退避位置(図3参照)との間で中空チューブ10の内向き面10aに対して移動可能に設けられている。
【0023】
また、把持部11の外周面上であって、上記固定解除操作部12が図4に示す矢印F1に沿う方向に移動したときに当接する部位には、例えば膜状のゴム部材や薄板状の板バネ部材等からなる弾性部材13が貼着されている。この弾性部材13は、固定解除操作部12が常に解除状態を維持するように配設されている。したがって、通常状態においては、図3に示す状態が維持されている。これにより、通常状態では、把持部11の挿通部11aと固定解除操作部12の貫通孔12aと中空チューブ10の内部空間が連通するようになっており、ここに内視鏡2の挿入部2aを抵抗無しに挿通させ得るようになっている。この状態を挿入部2aの非固定状態といい、このときの固定解除操作部12の位置を退避位置または非固定位置というものとする。
【0024】
一方、図3の通常状態において、固定解除操作部12に対して図4の矢印F1に沿う方向への押圧力を加えると、同固定解除操作部12は、把持部11に対して同方向に移動する。これにより、把持部11の挿通部11aに対して固定解除操作部12の貫通孔12aの位置がずれることにより、両者の間の連通状態が閉鎖される。このとき、挿通部11aと貫通孔12aとの間に内視鏡2の挿入部2aが挿通されている状態にあれば、挿入部2aは、固定解除操作部12によって挿通部11aの内壁面に押し付けられる。つまり、固定解除操作部12の貫通孔12aの内周側の押圧面12bが内視鏡2の挿入部2aの外周面の所定部位に当接し、当該部位を図4の矢印F1方向に押圧する。これにより、挿入部2aの外周面の当該部位の近傍が挿通部11aの内壁面に向けて押し付けられ、よって進退し得ない状態に固定される。
【0025】
この状態は、図4の矢印F1に沿う方向への押圧力が加えられている間は維持されることになる。この状態を挿入部2aの固定状態といい、このときの固定解除操作部12の位置を突出位置または固定位置というものとする。
【0026】
なお、図4の状態(固定状態)において、固定解除操作部12に対する図4の矢印F1に沿う方向への押圧力を解除すれば、同固定解除操作部12は、弾性部材13の同図矢印F2に沿う方向への復元弾性力によって図3の状態へと復帰するようになっている。
【0027】
また、中空チューブ10は、上述したように可撓性を有する部材によって構成されていると共に、その内側表面及び外側表面共に潤滑性を有する部材、例えばポリウレタン等によって形成されるチューブ部材である。したがって、中空チューブ10の内向き面10aは、固定解除操作部12の押圧面12bと比較して潤滑性を有している。
【0028】
このように構成される本実施形態の内視鏡挿入補助具1を適用し得る内視鏡2は、図1に示すように、例えば、一般的な従来の医療用内視鏡と同様の構成からなるものである。
【0029】
即ち、内視鏡2の概略構成は、細長形状の挿入部2aと、この挿入部2aの基端側に設けられ各種の操作部材が設けられる操作部2bと、この操作部2bの側部から延出するユニバーサルコード2d等を備えて構成されている。そして、図示を省略しているが、ユニバーサルコード2dは、例えば光源ユニットやビデオプロセッサ等に接続されている。
【0030】
なお、本発明の内視鏡挿入補助具1が適用される内視鏡2において、その挿入部2aの先端部近傍については、例えば図2に示すように構成されているものとする。
【0031】
即ち、先端側から先端硬質部2eと、この先端硬質部2eの基端側に先端が連設される湾曲部2hと、この湾曲部2hの基端側に先端が連設される可撓部2g等によって構成されている。
【0032】
先端硬質部2eは、最先端部位に配設される先端部材と、これに連設される先端基端部材2hとによって構成されている。
【0033】
先端部材には、特に図示していないが観察像を結像させるための撮像光学系や観察対象物に対して照明を照射する照明光学系等の窓部や内視鏡挿入部内を挿通する処置具挿通用チャンネルに連通する処置具開口等が設けられている。先端基端部材の内部には、撮像素子等の各種の構成部材が配設されている。湾曲部2hには、挿入部2aの先端部近傍を上下方向及び左右方向への湾曲動作を可能とする湾曲機構が構成されている。
【0034】
この場合において、先端部材と先端基端部材との連設部位21a及び先端基端部材と湾曲部2hとの連設部位21bは、例えば糸巻接着等の手段によってそれぞれ連設されている。ここで、当該内視鏡2の挿入部2aにおける最大直径d1(図2参照)は、この連設部位21a,21bが相当することになる。
【0035】
そして、図2に示すように、本実施形態の内視鏡挿入補助具1の中空チューブ10の内径d2は、挿入部2aの最大直径d1よりも大となるように設定されている。したがって、これにより中空チューブ10の管腔内に挿入部2aを挿通させることができるようになっている。
【0036】
通常の内視鏡においては、挿入部における最大直径部分は先端硬質部にある。しかし、本実施形態においては、挿入部における先端硬質部を除く可撓部において、図2に示すように前記先端硬質部最大径より大きい径の部分がある。なお、通常の内視鏡のように、先端硬質部において最大直径を有する挿入部としても良いのは言うまでもない。
【0037】
このように構成される内視鏡2の挿入部2aを本実施形態の内視鏡挿入補助具1を用いて体腔管腔に挿入する際の手順について、図3,図4及び図5〜図8を用いて、以下に詳述する。なお、以下の説明は、内視鏡挿入補助具1を用いて内視鏡2の挿入部2aを大腸へと挿入する場合の手技の例示である。
【0038】
まず、内視鏡2の挿入部2aを内視鏡挿入補助具1を用いて体腔管腔に挿入するのに先立って、挿入部2aを内視鏡挿入補助具1にセットする。即ち、本実施形態の内視鏡挿入補助具1が図3の通常状態にあるときに、内視鏡2の挿入部2aを、その先端側を把持部11の挿通部11aの基端側から挿入し、同挿通部11aを挿通させ、固定解除操作部12の貫通孔12aを経て中空チューブ10の内部空間に挿通させる。そして、挿入部2aの最先端部を中空チューブ10の先端部近傍に配置させる。この場合において、挿入部2aの最先端部は、中空チューブ10の先端部より突出しない位置、即ち挿入部2aの最先端面と中空チューブ10の先端面とが面一になる状態、若しくは挿入部2aの最先端部が、中空チューブ10の先端部より没入した状態に設定する。また、挿入部2aの最先端部が、中空チューブ10の先端部より若干突出した状態でも構わない。
【0039】
この状態において、術者(特に図示せず)は、把持部11を把持しつつ、固定解除操作部12に対して図4に示す矢印F1に沿う方向への押圧力を加える。すると、この固定解除操作部12は弾性部材13の弾性力に抗して同方向に移動する。
【0040】
このとき固定解除操作部12の貫通孔12aの内壁面は、挿入部2aの外周面に当接して、この挿入部2aを挿通部11aの内壁面に向けて押し付ける。これにより、挿入部2aは、内視鏡挿入補助具1の内部において、その軸方向(図3の矢印Xに沿う方向)への進退が規制される固定状態(図4の状態)となる。術者は、把持部11を把持し続けることにより、この固定状態を維持し続ける。
【0041】
術者は、図4の固定状態を維持しながら、挿入部2aが挿通された状態の内視鏡挿入補助具1の先端部を、例えばベッド(特に図示せず)上に横たわっている患者(特に図示せず)の肛門41から大腸40内へと挿入する。このとき、術者は、例えば右手100にて把持部11及び固定解除操作部12を把持しつつ、左手(図示せず)にて内視鏡挿入補助具1の先端部を把持して肛門41からの挿入操作をおこなう。
【0042】
この挿入操作は、内視鏡挿入補助具1の中空チューブ10の外周側を把持しながら、これを、同内視鏡挿入補助具1の軸方向に体腔内に向けて押し込むように進めていく操作である。これによって、内視鏡挿入補助具1は、内視鏡2の挿入部2aを内部に挿通させた状態で、大腸40内を深部に向かって進んでいく。
【0043】
この場合において、肛門41から挿入された内視鏡挿入補助具1は、術者の挿入操作によって直腸42からS字状結腸部43に向かって進んでいく。
【0044】
内視鏡挿入補助具1がS字状結腸部43に到達すると、術者は、内視鏡2の操作部2bの湾曲操作や挿入部2aの捻り操作等の手元操作をおこなうことで、内視鏡挿入補助具1を、図5に示すようにS字状結腸部43の曲線部分を通過させる。
【0045】
挿入部2aをS字状結腸部43から、さらに深部へと進めると、内視鏡挿入補助具1の先端部は、図6に示すように下行結腸部44の近傍に達する。
【0046】
この状態において、術者は、図4の固定状態を解除する。即ち、把持部11の把持状態を解放することにより、固定解除操作部12に対する図4の矢印F1に沿う方向への押圧力を解除する。すると、固定解除操作部12は、弾性部材13の図4の矢印F2に沿う方向への復元弾性力によって図3の通常状態へと復帰して、図3の通常状態が維持される。これにより、内視鏡挿入補助具1に挿通されている挿入部2aは、挿通部11aと貫通孔12aと中空チューブ10の内部空間において、その軸方向、つまり図3の矢印Xに沿う方向に進退自在である非固定状態となる。
【0047】
次いで、術者は、図7に示すように内視鏡挿入補助具1をその位置に留置させた状態で、手100によって挿入部2aを押し込む挿入操作をおこなう。このとき、中空チューブ10の内面側は潤滑性を有して形成されていることから、挿入部2aは、S字状結腸部43においても中空チューブ10の内部を円滑に抵抗なく進むことになる。
【0048】
そして、挿入部2aの先端部は、図7に示すように横行結腸部45を経て、上行結腸部48を通過し、図8に示すように盲腸部49へと到達する。なお、脾湾曲46や肝湾曲47等の曲線部分においては、操作部2bの湾曲操作や挿入部2aの捻り操作等の手元操作をおこなって通過させる。
【0049】
このようにして、挿入部2aが、その目的部位である盲腸部49近傍に到達すると、続いて術者は、大腸40内の内視鏡検査をおこなうために、挿入部2aの引き戻し操作をおこなう。
【0050】
そして、挿入部2aの先端部が肛門41から抜去された時点で、この内視鏡検査を終了する。
【0051】
以上説明したように上記第1の実施形態によれば、挿入部2aが固定保持した状態の内視鏡挿入補助具1を、体内管腔(実施形態においては大腸40)内の所定の部位まで挿通させた後、挿入部2aの固定状態を解除して、内視鏡挿入補助具1をその位置に留置した状態で、挿入部2aの挿入操作をおこなうようにしている。これにより、当該挿入部2aは、例えばS字状結腸部43等の曲線部等においては、内視鏡挿入補助具1の潤滑性を有する中空チューブ10の内部で移動することになるので、挿入部2aは通常の押し込み操作及び湾曲操作等の挿入操作によって、円滑かつ迅速に短時間で体内管腔(大腸40)内の深部にある目的部位まで到達させることができる。
【0052】
また、挿入部2aの固定状態と非固定状態とを切り換える固定解除操作部12を、把持部11に設けることにより、把持部11を把持する操作のみで固定解除操作部12による挿入部2aの固定状態とすることができる。その一方で、固定解除操作部12は、弾性部材13の弾性力によって常に非固定状態を維持するように構成しているので、把持部11の把持状態を解除することのみで、挿入部2aの固定状態を解除することが容易にできる。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態の内視鏡挿入補助具について、図9〜図11に基づいて、以下に説明する。
【0054】
本実施形態の内視鏡挿入補助具の基本的な構成は、上述の第1の実施形態と略同様の構成からなり、挿入部の固定状態と非固定状態とを切り換える固定非固定切換部の構成が異なるのみである。したがって、上述の第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を附してその詳細な説明は省略し、異なる部材についてのみ以下に詳述する。
【0055】
図9,図10,図11は、本発明の第2の実施形態の内視鏡挿入補助具を示し、このうち図9は、本実施形態の内視鏡挿入補助具の構成を示す斜視図である。図10は、図9の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部が固定状態にある場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図である。図11は、図9の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部を非固定状態とした場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図である。なお、図9,図10,図11では、本実施形態の内視鏡挿入補助具に対してその所定の部位に内視鏡挿入部を設置した状態を示している。
【0056】
本実施形態の内視鏡挿入補助具1Aは、図9に示すように可撓性を有し筒状の挿入空間を形成する内向き面10aを有した中空チューブ10と、この中空チューブ10の後側に設けられ使用時に術者が把持する把持部11Aとからなるチューブ本体によって主に構成されているのは、上述の第1の実施形態と同様である。
【0057】
把持部11Aは、中空の略円筒形状によって構成され、内部に挿入体である内視鏡2の挿入部2aを挿通させ得る挿通部11aが形成されている。そして、把持部11Aの基端側には挿通部11aを挟持し得るように互いに対向する位置に形成される一対の固定爪部15が一体に配設されている。この固定爪部15は、弾性体によって形成されていて、図11に示す通常状態においては、同図矢印R1に沿う方向への弾性が作用している。したがって、図11の通常状態では、挿通部11aが開放状態となるようになっている。
【0058】
また、把持部11Aの外周側には、環状の硬質部材によって形成される固定非固定切換部である固定解除リング14が図11の矢印X1に沿う方向に摺動自在に配設されている。つまり、この固定解除リング14を任意に矢印X1に沿う方向に摺動させることで、当該内視鏡挿入補助具1Aに挿通させる内視鏡2の挿入部2aを非固定状態(図11の状態)と固定状態(図10の状態)とに切り換えることができるようになっている。
【0059】
つまり、固定爪部15は、固定解除リング14の矢印X1方向への摺動操作によって、中空チューブ10の挿入空間側に突出する位置に配置される突出位置(図10参照)と、この突出位置から中空チューブ10の内向き面10a方向へ変位した退避位置(図11参照)との間で中空チューブ10の内向き面10aに対して移動可能に設けられている。
【0060】
したがって、図11の通常状態においては、固定爪部15は同図矢印R1に沿う方向への弾性の作用により、同図に示すように挿通部11aは開放状態となっている。これにより、把持部11の挿通部11aと中空チューブ10の内部空間とが連通しているので、ここに内視鏡2の挿入部2aを抵抗無しに挿通させ得るようになっている。この状態を挿入部2aの非固定状態(図11の状態)といい、このときの固定爪部15及び固定解除リング14の位置を退避位置または非固定位置というものとする。
【0061】
一方、図11の通常状態において、固定解除リング14を図10の矢印X2に沿う方向へ摺動させて図10の状態にすると、同固定解除リング14は、固定爪部15を挿通部11aの内部に向けて互いが相対する方向(図11の矢印R1とは反対方向)へと押圧する。このとき、挿通部11aに内視鏡2の挿入部2aが挿通されている状態にあれば、挿入部2aは、固定爪部15の押圧面15aによって挟持される状態になる。
【0062】
この状態を挿入部2aの固定状態(図10の状態)といい、このときの固定爪部15及び固定解除リング14の位置を突出位置または固定位置というものとする。なお、図10の状態(固定状態)において、固定解除リング14を図11の矢印X1に沿う方向へ摺動させて図11の状態にすると、固定爪部15は自身の図11の矢印R1に沿う方向への復元弾性力によって図10の状態に復元するようになっている。
【0063】
つまり、本実施形態においては、当該内視鏡挿入補助具1Aに挿通される内視鏡2の挿入部2aの外周面の所定部位に当接し、当該部位を押圧する押圧面15aを有する固定爪部15と、この固定爪部15を作動させて非固定位置(退避位置)と固定位置(突出位置)を切り換える固定解除リング14とによって、挿入部2aの固定状態を実現する固定部が構成されている。
【0064】
また、本実施形態においても、中空チューブ10は、上述の第1の実施形態と同様に材質の部材により形成されており、中空チューブ10の内向き面10aは、固定爪部15の押圧面15aと比較して潤滑性を有している。
【0065】
その他の構成は、上述の第1の実施形態と略同様である。また、本実施形態の内視鏡挿入補助具1Aを適用し得る内視鏡2は、上述の第1の実施形態と同様に、例えば、一般的な従来の医療用内視鏡と同様の構成からなるものである。また、同内視鏡2の挿入部2aの先端部近傍の構成についても、上述の第1の実施形態と同様である(図2参照)。
【0066】
このように構成される本実施形態の内視鏡挿入補助具1Aを用いて内視鏡2の挿入部2aを体腔管腔(例えば大腸等)へと挿入する際の手順は、上述の第1の実施形態と略同様である(図5〜図8参照)。
【0067】
なお、上述したように、本実施形態と上述の第1の実施形態とでは、固定非固定切換部の操作が異なる。したがって、内視鏡挿入補助具1Aによる挿入部2aの体腔管腔内への挿入手順においては、次に示すような違いがある。
【0068】
即ち、挿入部2aを内視鏡挿入補助具1Aにセットする際においては、内視鏡2の挿入部2aを把持部11Aの挿通部11aから中空チューブ10の内部空間に挿通させて、挿入部2aの最先端部を中空チューブ10の先端部近傍に配置させる。この場合において、挿入部2aの最先端部は、中空チューブ10の先端部より突出しない位置、即ち挿入部2aの最先端面と中空チューブ10の先端面とが面一になる状態、若しくは挿入部2aの最先端部が、中空チューブ10の先端部より没入した状態に設定する。また、挿入部2aの最先端部が、中空チューブ10の先端部より若干突出した状態でも構わない。
【0069】
この状態においては、固定解除リング14は図11に示す非固定位置にある。そこで、術者は、固定解除リング14を図10の矢印X2に沿う方向へと摺動させて図10の固定位置に配置する。すると、固定解除リング14は、固定爪部15を弾性力に抗して図11の矢印R1とは反対方向へと移動させる。そして、固定爪部15は挿入部2aを対向する方向から挟持することで、同挿入部2aが進退し得ないように固定する。これにより、挿入部2aは固定状態となる。この状態とした後は、術者は把持部11Aから手を放したとしても挿入部2aの固定状態は維持される。
【0070】
したがって、挿入部2aが挿通された状態の内視鏡挿入補助具1Aを大腸40内へと挿入する挿入操作をおこなう際には、術者は、常に把持部11Aを把持し続けている必要がない。
【0071】
以降、上述の第1の実施形態の場合と同様に内視鏡挿入補助具1Aの挿入操作を続けて、内視鏡挿入補助具1Aの先端部が下行結腸部44の近傍に達すると(図6参照)、この状態で、術者は、挿入部2aの固定状態(図10の状態)を解除する。
【0072】
即ち、図10の状態に有る固定解除リング14を同図矢印Xに沿う方向へと摺動させて固定爪部15を解放する。これにより、固定爪部15は、図11の矢印R1に沿う方向への復元弾性力によって図11に示す通常状態へと復帰し、挿入部2aへの押圧力が解除される。これにより、内視鏡挿入補助具1Aに挿通されている挿入部2aは、挿通部11aと中空チューブ10との内部空間において、その軸方向、つまり図11の矢印X1に沿う方向に進退自在となる非固定状態になる。その他の挿入手順は、上述の第1の実施形態と全く同様である。
【0073】
そして、挿入部2aが目的部位である盲腸部49近傍に到達した後、術者は、続いて大腸40内の内視鏡検査をおこなうために、挿入部2aの引き戻し操作をおこなう。
【0074】
そして、挿入部2aの先端部が肛門41から抜去された時点で、この内視鏡検査を終了する。
【0075】
以上説明したように上記第2の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
これに加えて本実施形態においては、固定非固定切換部である固定解除リング14によって挿入部2aを固定状態とした後は、術者の手が内視鏡挿入補助具1Aから離れたとしても、その固定状態が維持されるように構成している。これにより、術者は、挿入部2aの固定状態を維持するために把持部11及び固定非固定切換部を常に把持している必要がなくなり、他の操作等のために、挿入部上の任意の位置を握ることができるようになる。
【0077】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態の内視鏡挿入補助具について、図12〜図20に基づいて、以下に説明する。
【0078】
本実施形態の内視鏡挿入補助具の基本的な構成は、上述の第1の実施形態と略同様の構成であって、挿入部の固定状態と非固定状態とを切り換える固定非固定切換部の構成が異なるのみである。したがって、上述の第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を附してその詳細な説明は省略し、異なる部材についてのみ以下に詳述する。
【0079】
図12〜図20は、本発明の第3の実施形態に関し、このうち図12は、本実施形態の内視鏡挿入補助具の構成を示す斜視図である。図13は、図12の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部が非固定状態にある場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図である。図14は、図12の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部を固定状態とした場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図である。図15は、本実施形態の内視鏡挿入補助具における流体注入治具の構成を示す断面図であって、当該流体注入治具を内視鏡挿入補助具に装着した状態を示している。図16は、図15の流体注入治具の作用を示す図であって、当該流体注入治具を内視鏡挿入補助具から取り外すことで、バルーンの膨張状態が維持されるようすを示す図である。なお、図12〜図16では、本実施形態の内視鏡挿入補助具に対してその所定の部位に内視鏡挿入部を設置した状態を示している。
【0080】
また、図17〜図20は、本実施形態の内視鏡挿入補助具を用いて内視鏡挿入部を体腔管腔内に挿入する際の手順を示す概念図である。このうち図17は、本実施形態の内視鏡挿入補助具を内視鏡挿入部と共に肛門からS字状結腸部まで挿入した状態を示す図である。図18は、内視鏡挿入部を図17の状態よりも深部(下行結腸部)へと進めた状態を示す図である。図19は、内視鏡挿入部を図18の状態よりも深部(横行結腸部)へと進めた状態を示す図である。図20は、内視鏡挿入部を図19の状態よりも深部(盲腸部近傍)まで進めた状態を示す図である。
【0081】
本実施形態の内視鏡挿入補助具1Bは、図12に示すように可撓性を有し筒状の挿入空間を形成する内向き面10aを有した中空チューブ10と、この中空チューブ10の後側に設けられ使用時に術者が把持する把持部11Bとからなるチューブ本体によって主に構成されているのは、上述の第1の実施形態と同様である。
【0082】
把持部11Bは、管状部材からなり、その外周上の略中央部近傍には、本内視鏡挿入補助具1Bに挿通される挿入部2aの固定状態を実現する固定部であってかつ挿入部2aの固定状態と非固定状態とを切り換える固定非固定切換部の一部を構成する流体注入排出部17が配設されている。この流体注入排出部17は、中空の略円筒形状からなり、両端部には貫通孔17a,17bが穿設されている。
【0083】
そして、把持部11Bには、流体注入排出部17の貫通孔17bに連設する貫通孔11bが形成されている。この貫通孔11bは、挿通部11aまで達しており、中空チューブ10の先端部近傍に配設される一対のバルーン19との間に流路を形成する管路18の一端部が配設されている。
【0084】
つまり、管路18は、一端が流体注入排出部17の貫通孔17bに接続されており、把持部11の貫通孔11bを介して挿通部11aへと延出され、さらに挿通部11a及び中空チューブ10の内壁面に沿って当該中空チューブ10の先端部へと延出し、他端部がバルーン19に接続されている。
【0085】
一方、流体注入排出部17の貫通孔17aには、この貫通孔17aを開閉するための開閉弁16が図13の矢印Yに沿う方向に摺動自在に配設されている。
【0086】
そして、後述する流体注入治具20(図15,図16参照)を用いることにより、流体注入排出部17から管路18を介してバルーン19に空気や水等の流体を注入し、同バルーン19を膨張させることができるようになっている。また、バルーン19を膨張させた状態(図14参照)において、流体注入排出部17の開閉弁16を図13に示す矢印F1に沿う方向に押圧操作することで、管路18及びバルーン19に注入されている流体を流体注入排出部17を介して外部へと排出し、膨張状態にあるバルーン19を緊縮状態とすることができるようになっている。
【0087】
一対のバルーン19は、中空チューブ10の先端部近傍において、その内壁面の沿わせて互いに対向する位置に配設されている。そして、当該バルーン19は、上述したように膨張状態(図14の状態)に変位させることによって、バルーン19の表面の一部は押圧面19aとして当該内視鏡挿入補助具1Bに挿通されている挿入部2aの外表面に当接しこれを押圧することにより当該挿入部2aを固定状態とする。また、当該バルーン19を緊縮状態(図13の状態)に変位させることによって、挿入部2aの外表面に対して当接状態にあったバルーン19の押圧部19aは、その押圧を解除して、挿入部2aを非固定状態とするようになっている。
【0088】
なお、中空チューブ10の内向き面10aは、バルーン19が膨張状態となったときに挿入部2aの外表面に当接する押圧部19aと比較して潤滑性を有している。
【0089】
ここで、上述の流体注入治具20の構成について、図15,図16に基づいて説明する。
【0090】
流体注入治具20は、図15に示すように流体注入排出部17に嵌合する口金部22と、この口金部22に一端が連設され他端が例えばシリンジ等の流体供給装置(特に図示せず)に接続される流体注入管21とによって主に構成されている。
【0091】
口金部22の開放端は、上述したように流体注入排出部17に嵌合し得るようになっている。そのために、口金部22の開放端の内径寸法は流体注入排出部17の外径寸法よりも若干大となるように形成されている。なお、口金部22が流体注入排出部17に嵌合した状態では両者間において略気密状態が保持されるようになっている。この場合において、例えば口金部22の内径寸法を開放端から閉塞端側に向けて、徐々に狭まるように形成する等の工夫が考えられる。
【0092】
一方、口金部22の閉塞端には、外表面から外部に向けて突設される凸部22aと、内表面から内部に向けて突設される凸部22bとが形成されていて、この凸部22a,22bには、口金部22の内部空間と外部とを連設する流体流路22cが形成されている(特に図15参照)。
【0093】
凸部22aには、流体注入管21の一端部が接続されるようになっている。また、凸部22bは、当該口金部22が流体注入排出部17に装着された状態(図15の状態)となったときには、その頂部が開閉弁16に接触して、これを押圧するようになっている。
【0094】
これにより、口金部22を流体注入排出部17に装着する動作をおこなうと、これに伴って開閉弁16が開状態とされるようになっている。したがって、これにより流体注入治具20の流体注入管21から口金部22,流体注入排出部17,管路18を介してバルーン19へと至る流体通路が形成されるようになっている。
【0095】
その他の構成は、上述の第1の実施形態と略同様である。また、本実施形態の内視鏡挿入補助具1Aを適用し得る内視鏡2は、上述の第1の実施形態と同様に、例えば、一般的な従来の医療用内視鏡と同様の構成からなるものである。また、同内視鏡2の挿入部2aの先端部近傍の構成についても、上述の第1の実施形態と同様である(図2参照)。
【0096】
このように構成される本実施形態の内視鏡挿入補助具1Bを用いて内視鏡2の挿入部2aを体腔管腔(例えば大腸等)へと挿入する際の手順は、上述の第1の実施形態と略同様である(図17〜図20参照)。
【0097】
なお、上述したように、本実施形態と上述の第1の実施形態とでは、固定非固定切換部の操作が異なる。したがって、内視鏡挿入補助具1Bによる挿入部2aの体腔管腔内への挿入手順においては、次に示すような違いがある。
【0098】
即ち、挿入部2aを内視鏡挿入補助具1Bにセットする際には、まず、把持部11Bの挿通部11aから中空チューブ10の内部空間に挿入部2aを挿通させて、挿入部2aの最先端部を中空チューブ10の先端部近傍に配置させる。この場合において、挿入部2aの最先端部は、中空チューブ10の先端部より突出しない位置、即ち挿入部2aの最先端面と中空チューブ10の先端面とが面一になる状態、若しくは挿入部2aの最先端部が、中空チューブ10の先端部より没入した状態に設定する。また、挿入部2aの最先端部が、中空チューブ10の先端部より若干突出した状態でも構わない。
【0099】
この状態において、術者は、把持部11Bの流体注入排出部17に対して流体注入治具20を装着して、流体注入管21を介して流体供給装置より供給される流体をバルーン19へと送ることによって、当該バルーン19を膨張させるための操作をおこなう。
【0100】
ここで、流体注入治具20を用いてバルーン19を膨張させる際の作用を主に図15,図16を用いて以下に説明する。
【0101】
上述のようにして、流体注入排出部17に対して流体注入治具20を装着すると、これにより、流体注入治具20の凸部22bが開閉弁16を図15に示す矢印Y1に沿う方向に押圧する。これにより、開閉弁16は、貫通孔17aを開状態にする。
【0102】
この状態で、流体注入治具20の流体注入管21を介して流体供給装置(図示せず)より流体を供給する。これにより、流体は、流体供給装置から流体注入管21,流体流路22cを通って口金部22の内部空間へと送り込まれる。次いで、同流体は、口金部22の内部空間から、開閉弁16により開状態とされている貫通孔17aを通って流体注入排出部17の内部空間に送り込まれる。さらに、同流体は、流体注入排出部17の内部空間から、流体注入排出部17の貫通孔17bに接続される管路18を介してバルーン19へと流入する。これによりバルーン19は図16に示すような膨張状態になる。
【0103】
この状態で、流体注入治具20の口金部22を、図16に示す矢印Y2に沿う方向へと引き抜いて、同口金部22を流体注入排出部17から離脱させる。すると、開閉弁16は、流体注入排出部17の内部に充填されている流体の内圧によって同図16の矢印Y2に沿う方向へと移動して、開閉弁16を閉状態にする。これにより流体注入排出部17は、気密状態になる。したがって、流体注入排出部17に対して管路18を介して連設され、流体が充填されている状態のバルーン19の膨張状態が維持される。
【0104】
このようにして、バルーン19が膨張状態にされると、中空チューブ10の内部に挿通されている状態の内視鏡2の挿入部2aは、同中空チューブ10の先端部において、バルーン19によって挟持され、これにより、挿入部2aは、その軸方向への進退が規制され固定状態になる(図16参照)。
【0105】
この状態において、術者は、挿入部2aが挿通された状態の内視鏡挿入補助具1Bの先端部を肛門41から大腸40内へと挿入する挿入操作をおこなう。このとき、術者は、上述の第2の実施形態と同様に、内視鏡挿入補助具1Bから手を放したとしても挿入部2aの固定状態が維持されるようになっている。したがって、術者は、この挿入操作をおこなう際には、図17に示すように、常に把持部11Bを把持し続けている必要がないのは、上述の第2の実施形態と同様である。
【0106】
以降、上述の第1の実施形態の場合と同様に内視鏡挿入補助具1Bの挿入操作を続けて、内視鏡挿入補助具1Bの先端部がS字状結腸部43に到達すると、術者は、操作部2bの湾曲操作や挿入部2aの捻り操作等の手元操作をおこなって、内視鏡挿入補助具1Bを、図17に示すようにS字状結腸部43の曲線部分を通過させる。
【0107】
挿入部2aをS字状結腸部43から、さらに深部へと進めると、内視鏡挿入補助具1Bの先端部は、図18に示すように下行結腸部44の近傍に達する。この状態で、術者は、挿入部2aの固定状態を解除する。
【0108】
即ち、術者は、開閉弁16に対して図13,図14に示す矢印F1に沿う方向への押圧力を加えることにより、開閉弁16を開状態にする。すると、流体注入排出部17の内部空間,管路18,バルーン19に充填されている流体、貫通孔17aから外部へと流出する。これによってバルーン19は図13等に示す緊縮状態になる。したがって、挿入部2aは非固定状態になり、その軸方向への進退が自在な状態になる。その後の挿入手順は、上述の第1の実施形態と全く同様である(図19,図20参照)。
【0109】
そして、挿入部2aが目的部位である盲腸部49近傍に到達した後(図20参照)、術者は、続いて大腸40内の内視鏡検査をおこなうために、挿入部2aの引き戻し操作をおこなう。
【0110】
また、挿入部2aの先端部近傍が内視鏡挿入補助具1Bの先端部近傍まで到達したら、その時点で、挿入部2aの引き戻し操作を一時中断し、内視鏡挿入補助具1Bを引き抜く。その後、挿入部2aの引き戻し操作を再開する。
【0111】
そして、挿入部2aの先端部が肛門41から抜去された時点で、この内視鏡検査を終了する。
【0112】
以上説明したように上記第3の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、バルーン19を膨張状態にすることで、挿入部2aを固定状態にすることができ、開閉弁16を開状態にすることにより流体を放出しない限り、その固定状態を維持することができるので、上述の第2の実施形態と同様に挿入部2aを固定状態とした後は、術者の手が内視鏡挿入補助具1Bから離れたとしても、その固定状態が維持される。したがって操作性の向上に寄与することができる。
【0113】
また、膨張させることによって挿入部2aを固定状態とするバルーン19を中空チューブ10の先端側に配設したことにより、内視鏡挿入補助具1Bの挿入操作時において、例えば中空チューブ10の先端側が腸壁等に干渉することで捲れてしまうようなことがなく、確実な挿入をおこなうことができる。
【0114】
なお、バルーン19の配設位置については、上述の第3の実施形態においては、中空チューブ10の先端側の所定の部位としているが、これに限ることはない。例えば、中空チューブ10の内壁面において先端側から基端側に至る範囲内で全体的にバルーンを配設するようにしてもよい。
【0115】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態の内視鏡挿入補助具について、図21〜図29に基づいて、以下に説明する。
【0116】
本実施形態の内視鏡挿入補助具の基本的な構成は、上述の第1の実施形態と略同様であり、挿入部の固定状態と非固定状態とを切り換える固定非固定切換部の構成が異なるのみである。したがって、上述の第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を附してその詳細な説明は省略し、異なる部材についてのみ以下に詳述する。
【0117】
図21〜図29は、本発明の第4の実施形態に関し、このうち図21は、本実施形態の内視鏡挿入補助具の構成を示す斜視図である。図22は、図21の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部が非固定状態にある場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図である。図23は、図21の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部を固定状態とした場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図である。
【0118】
図24,図25は、本実施形態の内視鏡挿入補助具についての変形例の構成を示す断面図であって、図24は、進退ローラによる挿入部の挟持状態を示す図である。図25は、進退ローラによる挿入部の挟持状態を解除した状態を示す図である。
【0119】
なお、図21〜図25では、本実施形態の内視鏡挿入補助具に対してその所定の部位に内視鏡挿入部を設置した状態を示している。
【0120】
また、図26〜図29は、本実施形態の内視鏡挿入補助具を用いて内視鏡挿入部を体腔管腔内に挿入する際の手順を示す概念図である。このうち図26は、本実施形態の内視鏡挿入補助具を内視鏡挿入部と共に肛門からS字状結腸部まで挿入した状態を示す図である。図27は、内視鏡挿入部を図26の状態よりも深部(下行結腸部)へと進めた状態を示す図である。図28は、内視鏡挿入部を図27の状態よりも深部(横行結腸部)へと進めた状態を示す図である。図29は、内視鏡挿入部を図28の状態よりも深部(盲腸部近傍)まで進めた状態を示す図である。
【0121】
本実施形態の内視鏡挿入補助具1Cは、図21に示すように可撓性を有し筒状の挿入空間を形成する内向き面10aを有した中空チューブ10とこの中空チューブ10の後側に設けられ使用時に術者が把持する把持部11Cとからなるチューブ本体と、把持部11Cに連設され挿入部2aの固定状態と非固定状態とを切り換えると共に同挿入部2aに対して推進力を供給する駆動源である駆動モータ27及びこの駆動モータ27の駆動力を伝達する手段を構成するギアボックス26等からなる駆動部とによって主に構成されている。
【0122】
把持部11Cは、管状部材からなり、その外周上の略中央部近傍には、本内視鏡挿入補助具1Cに挿通される挿入部2aの固定状態を実現する固定部であってかつ挿入部2aの固定状態と非固定状態とを切り換える固定非固定切換部であり、同時に挿入部2aの進退駆動をおこなう駆動部の一部を構成する進退スイッチ25が配設されている。
【0123】
把持部11Cの内部には、挿通部11aを挟んで対向する部位に一対の進退ローラ28が配設されている。この進退ローラ28の一方はギアボックス26を介して駆動モータ27に連設されている。これにより、駆動モータ27の駆動力はギアボックス26を介して進退ローラ28の一方に伝達され、一方の進退ローラ28を正逆回転させることができるようになっている。つまり、一対の進退ローラ28,ギアボックス26,駆動モータ27,進退スイッチ25等によって、挿入部2aの自動送り機構を構成すると同時に、同挿入部2aの固定非固定切換部の役目もしている。
【0124】
この場合において、駆動モータ27は、進退スイッチ25が電気的に連動しており、同スイッチ25のオンオフ操作によって駆動モータ27の駆動制御をおこなうことができるようになっている。なお、進退ローラ28の他方は常に回動自在状態となっている。
【0125】
そして、一対の進退ローラ28の間隔は、挿入部2aの外径寸法と略同等か若干狭い程度に設定されている。したがって、挿入部2aが挿通部11aに挿通された状態では、同挿入部2aは、一対の進退ローラ28の間に挟持されるようになっている。
【0126】
そして、駆動モータ27によって一方の進退ローラ28が、例えば図22に示す矢印R2に沿う方向へと回動されると、挿入部2aは、図22に示す矢印X1に沿う方向(挿入部2aの軸方向)に進行する非固定状態とされるようになっている。また、駆動モータ27の駆動状態が停止され、一方の進退ローラ28の回動が停止状態になると、挿入部2aは固定状態とされるようになっている。
【0127】
その他の構成は、上述の第1の実施形態と略同様である。また、本実施形態の内視鏡挿入補助具1Cを適用し得る内視鏡2は、上述の第1の実施形態と同様に、例えば、一般的な従来の医療用内視鏡と同様の構成からなるものである。また、同内視鏡2の挿入部2aの先端部近傍の構成についても、上述の第1の実施形態と同様である(図2参照)。
【0128】
ところで、上述の第4の実施形態では、進退ローラ28の駆動を停止させることで、一対の進退ローラ28により挟持される挿入部2aの固定状態を実現している。したがって、この場合においては、挿入部2aは常に進退ローラ28に挟持されている状態にあり、例えば挿入部2aの捻り操作をおこないたいような場合には、内視鏡挿入補助装置1Cごと捻るといった操作が必要になる。
【0129】
そこで、挿入部2aに対する進退ローラ28の挟持状態を任意に解除し得るような構成とすれば至便である。これについての変形例を図24,図25に示す。
【0130】
本変形例の内視鏡挿入補助具1Dは、上述の第4の実施形態の構成と基本的に略同様であり、把持部11Dを必要に応じて任意に二分割し得るように構成した点が異なる。したがって、上述の第4の実施形態と同様の構成については、同じ符号を附してその詳細な説明は省略し、異なる部位についてのみ以下に説明する。
【0131】
本変形例における把持部11Dは、上述したように任意に二分割し得る構成となっている。即ち、図25に示すように把持部11Dの下半部11Ddは、ヒンジ部11Dbを回動中心として本体部分に対して回動自在に配設されている。把持部11Dの下半部11Ddには、上述の第4の実施形態における他方の進退ローラ28、即ち駆動部には連設されず、常に回動自在状態の進退ローラ28が配設されている。
【0132】
そして、術者が把持部11Dを把持することにより、本体部と下半部11Ddとを合わせ持つことによって、一対の進退ローラ28により挿入部2aを挟持状態とすることができるようになっている。また、術者は、任意のときに把持部11Dの把持状態を解放することで、把持部11Dの下半部11Ddは本体部に対して図25に示す矢印R4に沿う方向に回動するようになっている。これにより、下半部11Ddの側の進退ローラ28は挿入部2aから離脱する。したがって、一対の進退ローラ28による挿入部2aの挟持状態は解除されるようになっている。
【0133】
このような構成とすることによって、例えば挿入部2aの捻り操作(図25に示す矢印R3に沿う方向へ捻る操作)をおこないたいときには、把持部11Dの下半部11Ddの把持を解放することで、一対の進退ローラ28による挿入部2aの挟持状態を解除することができる。したがってこれにより、さらなる操作性の向上に寄与することができることになる。
【0134】
このように構成される本実施形態の内視鏡挿入補助具1Cを用いて内視鏡2の挿入部2aを体腔管腔(例えば大腸等)へと挿入する際の手順は、上述の第1の実施形態と略同様である(図26〜図29参照)。なお、本実施形態の変形例(図24,図25参照)についての操作手順は、本実施形態と略同様である。したがって、以下の説明では、上記第4の実施形態とその変形例における作用を合わせて説明するものとする。
【0135】
本実施形態及びその変形例と上述の第1の実施形態とでは、固定非固定切換部の操作が異なる。したがって、内視鏡挿入補助具1C(1D)による挿入部2aの体腔管腔内への挿入手順においては、次に示すような違いがある。
【0136】
即ち、挿入部2aを内視鏡挿入補助具1C(1D)にセットする際には、まず、把持部11C(11D)の挿通部11aから中空チューブ10の内部空間に挿入部2aを挿通させて、挿入部2aの最先端部を中空チューブ10の先端部近傍に配置させる。この場合において、挿入部2aの最先端部は、中空チューブ10の先端部より突出しない位置、即ち挿入部2aの最先端面と中空チューブ10の先端面とが面一になる状態、若しくは挿入部2aの最先端部が、中空チューブ10の先端部より没入した状態(押圧面12bが内向き面10aよりも外部に向けて凹んだ位置となる状態)に設定する。また、挿入部2aの最先端部が、中空チューブ10の先端部より若干突出した状態でも構わない。
【0137】
この場合において、本実施形態の内視鏡挿入補助具1Cの場合には、挿通部11aに対して挿入部2aを挿通させ、挿入部2aの先端部分が進退ローラ28に当接した時点で、進退スイッチ25をオン状態にする。これにより、進退ローラ28は、図22に示す矢印R2に沿う方向に回動し、挿入部2aを挟持しながら同図矢印Xに沿う方向へと進行させる。そして、挿入部2aが所定の位置(中空チューブ10の先端部近傍の位置)に配置された時点で進退スイッチ25をオフ状態にする。これにより、挿入部2aは、その位置で固定状態となる。
【0138】
本実施形態の変形例の内視鏡挿入補助具1Dの場合には、把持部11Dの下半部11Ddを把持した状態とすれば、上述の第4の実施形態と全く同様の操作で、挿入部2aを中空チューブ10の所定の位置へと設置できる。
【0139】
また、同変形例の場合には、把持部11Dの下半部11Ddを把持しない状態としておけば、挿入部2aは何の抵抗もなく中空チューブ10の内部空間を挿通させることができるので、挿入部2aの基端側を図25の矢印Xに沿う方向へと単に押し込んでやればよい。
【0140】
このようにして挿入部2aを固定状態とした後、術者は、挿入部2aが挿通された状態の内視鏡挿入補助具1C(1D)の先端部を肛門41から大腸40内へと挿入する挿入操作をおこなう。
【0141】
この場合において、本実施形態の内視鏡挿入補助具1Cに場合には、上述の第2,第3の実施形態と同様に、術者が内視鏡挿入補助具1Cから手を放したとしても挿入部2aの固定状態が維持されるようになっている。したがって、術者は、この挿入操作をおこなう際には、常に把持部11Cを把持し続けている必要がない。
【0142】
以降、上述の第1の実施形態の場合と同様に内視鏡挿入補助具1C(1D)の挿入操作を続けて、内視鏡挿入補助具1C(1D)の先端部がS字状結腸部43に到達すると、術者は、操作部2bの湾曲操作や挿入部2aの捻り操作等の手元操作をおこなって、内視鏡挿入補助具1C(1D)を、図26に示すようにS字状結腸部43の曲線部分を通過させる。
【0143】
挿入部2aをS字状結腸部43から、さらに深部へと進めると、内視鏡挿入補助具1C(1D)の先端部は、図27に示すように下行結腸部44の近傍に達する。この状態で、術者は、挿入部2aの固定状態を解除する。
【0144】
即ち、術者は、進退スイッチ25をオン状態にする。すると、駆動モータ27が回転駆動を開始して、その駆動力はギアボックス26を介して進退ローラ28へと伝達される。これによって進退ローラ28は図22の矢印R2に沿う方向へと回動を始める。これにより、挿入部2aは図22,図24に示す矢印Xに沿う方向へと進行する。その後の挿入手順は、上述の第1の実施形態における挿入部2aの押し込み操作に換えて、駆動モータ27の駆動力を利用して挿入部2aを所定方向(軸方向)へと進行させる点が異なるのみでその他の手順は略同様である(図28,図29参照)。
【0145】
そして、挿入部2aが目的部位である盲腸部49近傍に到達した後(図29参照)、術者は、続いて大腸40内の内視鏡検査をおこなうために、挿入部2aの引き戻し操作をおこなう。
【0146】
この場合において、挿入部2aの引き戻し操作は、本実施形態の場合には、駆動モータ27を駆動制御して進退ローラ28の回転方向を挿入時とは逆方向の回転とすれば、挿入部2aは、駆動モータ27の駆動力によっておこなうことが可能である。
【0147】
挿入部2aの先端部が肛門41から抜去された時点で、この内視鏡検査を終了する。
【0148】
以上説明したように上記第4の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、上述の第2,第3の実施形態と同様に挿入部の固定状態を維持することができるので、挿入部2aを固定状態とした後は、術者の手が内視鏡挿入補助具1Cから離れたとしても、その固定状態が維持される。したがって操作性の向上に寄与することができる。
【0149】
さらに、挿入部2aの進退操作を駆動モータ27による電動操作としたので、挿入部2aを押し込み引き戻す操作を手動でおこなう必要がなく、駆動モータ27の駆動制御をスイッチのオンオフ操作でおこなうのみで、容易に挿入部2aの進退を制御することができる。したがって、さらなる操作性の向上に寄与することができる。
【0150】
なお、上述の各実施形態においては、内視鏡2の挿入部2aを挿入させる体内管腔を大腸として説明しているが、挿入部2aが挿入される管腔としては大腸に限定されるものではなく、例えば口腔から食道や胃及び小腸まで等の体内管腔等であっても、同様に適用することができる。
【0151】
[付記]
上記発明の実施形態により、さらに、以下のような構成の発明を得ることができる。
【0152】
(1)内視鏡挿入補助具を用いておこなう内視鏡挿入操作方法は、以下の手順による。
【0153】
第1の手順は、内視鏡挿入補助具に対して内視鏡挿入部を把持部の基端側から先端側に向けて所定位置まで挿通させる手順、
第2の手順は、内視鏡挿入補助具に対して固定非固定切換部の切換操作にて内視鏡挿入部を所定位置にて固定する手順、
第3の手順は、固定非固定切換部の切換操作による内視鏡挿入部の固定状態を維持しながら内視鏡補助具を体腔管腔内の所定位置まで挿入する手順、
第4の手順は、体腔管腔内の所定位置まで挿入した内視鏡挿入補助具の固定非固定切換部を切換操作にて内視鏡挿入部の固定状態を解除する手順、
第5の手順は、内視鏡挿入補助具を体腔管腔内の所定位置に留置した状態で、内視鏡挿入部のみを体腔管腔内の深部へと挿入する手順、
第6の手順は、体腔管腔内の深部の目的部位に到達した内視鏡挿入部を引き戻し操作をしながら内視鏡検査をおこなう手順、
である。
【0154】
(2)前記固定非固定切換部の切換操作は、前記把持部と共に前記固定非固定切換部を把持することにより前記内視鏡挿入部を固定状態とし、前記把持部及び前記固定非固定切換部を把持状態を解放することで前記内視鏡挿入部を非固定状態とする付記(1)に記載の内視鏡挿入操作方法。
【0155】
(3)前記固定非固定切換部の切換操作は、前記把持部に設けられるリング状部材を所定方向に摺動操作することによりおこなう付記(1)に記載の内視鏡挿入操作方法。
【0156】
(4)前記固定非固定切換部による前記内視鏡挿入部の非固定状態から固定状態への切換操作は、前記把持部に設けられる流体注入部より流体を注入操作することによりおこなう付記(1)に記載の内視鏡挿入操作方法。
【0157】
(5)前記固定非固定切換部による前記内視鏡挿入部の固定状態から非固定状態への切換操作は、前記把持部に設けられる操作部を押圧操作することによりおこなう付記(1)に記載の内視鏡挿入操作方法。
【0158】
(6)前記固定非固定切換部の切換操作は、前記把持部に設けられるスイッチ操作によって駆動モータの駆動制御をおこなって、前記駆動モータの駆動を停止させることで前記内視鏡挿入部を固定状態とし、前記駆動モータを駆動させることで前記内視鏡挿入部を非固定状態とする付記(1)に記載の内視鏡挿入操作方法。
【0159】
(7)前記固定非固定切換部の切換操作は、前記駆動モータの動力伝達経路を維持した状態で前記駆動モータの駆動を停止させることで前記内視鏡挿入部を固定状態とし、前記駆動モータの動力伝達経路の一部を遮断することで前記内視鏡挿入部を非固定状態とする付記(1)に記載の内視鏡挿入操作方法。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明の第1の実施形態の内視鏡挿入補助具の構成を示す斜視図。
【図2】図1の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態における先端部近傍を示す要部拡大断面図。
【図3】図1の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部が非固定状態にある場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図。
【図4】図1の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部を固定状態とした場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図。
【図5】図1の内視鏡挿入補助具を用いて内視鏡挿入部を体腔管腔内に挿入する際の手順を示し、本内視鏡挿入補助具を内視鏡挿入部と共に肛門からS字状結腸部まで挿入した状態を示す概念図。
【図6】図1の内視鏡挿入部を図5の状態よりも深部(下行結腸部)へと進めた状態を示す概念図。
【図7】図1の内視鏡挿入部を図6の状態よりも深部(横行結腸部)へと進めた状態を示す概念図。
【図8】図1の内視鏡挿入部を図7の状態よりも深部(盲腸部近傍)まで進めた状態を示す概念図。
【図9】本発明の第2の実施形態の内視鏡挿入補助具の内視鏡挿入補助具の構成を示す斜視図。
【図10】図9の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部が非固定状態にある場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図。
【図11】図9の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部を固定状態とした場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図。
【図12】本発明の第3の実施形態の内視鏡挿入補助具の構成を示す斜視図。
【図13】図12の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部が非固定状態にある場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図。
【図14】図12の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部を固定状態とした場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図。
【図15】図12の内視鏡挿入補助具における流体注入治具の構成を示し、当該流体注入治具を内視鏡挿入補助具に装着した状態を示す断面図。
【図16】図15の流体注入治具の作用を示す図であって、当該流体注入治具を内視鏡挿入補助具から取り外すことで、バルーンの膨張状態が維持されるようすを示す図。
【図17】図12の内視鏡挿入補助具を用いて内視鏡挿入部を体腔管腔内に挿入する際の手順を示し、本内視鏡挿入補助具を内視鏡挿入部と共に肛門からS字状結腸部まで挿入した状態を示す概念図。
【図18】図12の内視鏡挿入部を図17の状態よりも深部(下行結腸部)へと進めた状態を示す概念図。
【図19】図12の内視鏡挿入部を図18の状態よりも深部(横行結腸部)へと進めた状態を示す概念図。
【図20】図12の内視鏡挿入部を図19の状態よりも深部(盲腸部近傍)まで進めた状態を示す概念図。
【図21】本発明の第4の実施形態の内視鏡挿入補助具の構成を示す斜視図。
【図22】図21の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部が非固定状態にある場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図。
【図23】図21の内視鏡挿入補助具に内視鏡挿入部を挿通させた状態であってかつ挿入部を固定状態とした場合の当該内視鏡挿入補助具の概略断面を示す図。
【図24】本発明の第4の実施形態の内視鏡挿入補助具についての変形例の構成を示す断面図であって、進退ローラによる挿入部の挟持状態を示す図。
【図25】図24の内視鏡挿入補助具において、進退ローラによる挿入部の挟持状態を示す図。
【図26】図21の内視鏡挿入補助具を用いて内視鏡挿入部を体腔管腔内に挿入する際の手順を示し、本内視鏡挿入補助具を内視鏡挿入部と共に肛門からS字状結腸部まで挿入した状態を示す概念図。
【図27】図21の内視鏡挿入部を図26の状態よりも深部(下行結腸部)へと進めた状態を示す概念図。
【図28】図21の内視鏡挿入部を図27の状態よりも深部(横行結腸部)へと進めた状態を示す概念図。
【図29】図21の内視鏡挿入部を図28の状態よりも深部(盲腸部近傍)まで進めた状態を示す概念図。
【図30】従来の問題点を示す図であって、内視鏡挿入部を内視鏡挿入補助具無しで体腔管腔内に挿入する際の手順を示し、内視鏡挿入部をS字状結腸部まで挿入した状態を示す図。
【図31】図30の時点より内視鏡挿入部を深部へと進めた状態を示す図。
【図32】図31の時点より内視鏡挿入部を深部へと進めた状態を示す図。
【図33】図32の時点で内視鏡挿入部を挿入方向に押し込んだ結果、入口近傍で押し込み操作ができなくなった状態を示す図。
【符号の説明】
【0161】
1,1A,1B,1C,1D……内視鏡挿入補助具
2……内視鏡
2a……挿入部
10……中空チューブ
10a……内向き面
11,11A,11B,11C,11D……把持部
11a……挿通部
11b……貫通孔
12……固定解除操作部
12a……貫通孔
12b……押圧面
13……弾性部材
14……固定解除リング
15……固定爪部
15a……押圧面
16……開閉弁
17……流体注入排出部
17a……貫通孔
17b……貫通孔
18……管路
19……バルーン
19a……押圧面
20……流体注入治具
21……流体注入管
22……口金部
22c……流体流路
25……進退スイッチ
26……ギアボックス
27……駆動モータ
28……進退ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の挿入空間を形成する内向き面を有したチューブと、前記チューブの一端に連設される把持部とからなるチューブ本体と、
前記チューブ本体に設けられ、挿入空間側に位置する突出位置とこの突出位置から前記内向き面方向へ変位した退避位置との間で、前記内向き面に対して移動可能な押圧面と、
を具備することを特徴とする内視鏡挿入補助具。
【請求項2】
前記内向き面は、前記押圧面と比較して潤滑性を有してなることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡挿入補助具。
【請求項3】
前記押圧面の退避位置は、前記押圧面が内向き面よりも外部に向けて凹んだ位置となることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一方に記載の内視鏡挿入補助具。
【請求項4】
筒状の挿入空間を有したチューブと、
このチューブの後側に設けられた把持部と、
前記挿入空間に挿入した挿入体に対して前記チューブを固定するための固定部と、
この固定部による前記チューブの固定状態と非固定状態とを切り換え可能とする操作部と、
を具備し、
前記操作部は、前記把持部に設けられていることを特徴とする内視鏡挿入補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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