説明

内視鏡挿入部組み立て用調整治具および組み立て方法

【課題】 挿入部の細径化を達成しつつも挿入部内部において構成部材を損傷させることなく安全かつ簡易に配設することができる内視鏡挿入部の組み立てに好適な調整治具を提供すること。
【解決手段】 調整治具は、調整治具は、内視鏡の挿入部の外殻である細管状体内に、該挿入部の先端部を有する構成部材を挿入する際に用いられる調整治具であって、外殻の一端近傍を構成するつなぎ管の外径に略等しい内径を有し、軸方向を含む面で複数部品に分割自在に構成される円筒状の本体と、本体から該本体の軸方向に沿って所定量延出し、前記構成部材を前記挿入部内へ案内する案内手段と、を有し、本体をつなぎ管に嵌合した状態において、案内手段は、細管状体内部におけるアングルガイドチャネル配設位置を回避しつつ、構成部材を前記挿入部内へ案内するように挿置されている構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、体腔内に挿入され生体組織を撮像、観察するための内視鏡を構成する挿入部の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、術者が把持する把持部、該把持部から延出しており内視鏡観察時には体腔内に挿入される挿入部等を有する。挿入部は、先端部と、該先端部の体腔内での位置を変化させるための湾曲部と、先端部と湾曲部間に位置し内視鏡観察に必要な部材が配設される硬性部と、湾曲部と把持部間に位置する長尺の可撓管とから構成される。このような内視鏡の挿入部および該挿入部内に配設される複数の配線や部材(以下、これらを構成部材と総称する。)は、非常に長尺である。一般に、作業効率の観点から、挿入部は、以下のようにして組み立てられていた。すなわち、まず硬性部、湾曲部、可撓管を互いに接合して外殻が形成される。そして、先端部を含む構成部材を硬性部側から挿入し、挿入部内部に配設する。
【0003】
しかし、挿入部における可撓管から湾曲部までの内部には、把持部による湾曲操作を実現するためのアングルワイヤを挿通させるため長手方向に沿って延出するガイドチャネルが複数箇所形成されている。そのため、硬性部側から構成部材を挿入する際、該ガイドチャネルと接触しないように、かつ該ガイドチャネルによって構成部材にねじれ等の無用な外圧がかからないように十分に注意しなければならない。これは、組み立てを行う作業者に無用の負担をかけることになり、作業効率の低下にも繋がりかねない。
【0004】
そのため、近年、構成部材を破損等させることなく、短時間で効率よく挿入部の組み立て作業を行うことができる挿入部の組み立て方法がいくつか提案されている。該提案は、例えば、以下の特許文献1に開示される。
【0005】
【特許文献1】特開平7−23902号公報
【0006】
特許文献1では、構成部材を、略円筒状の集束手段によって集束させる。そして、該集束手段によって集束された状態にある構成部材を先端部端面から挿入し、挿入部内部に配設する。
【0007】
特許文献1に記載のような組み立て方法の場合、集束手段によって構成部材の略全域が被覆された状態にあるため、挿入過程において、構成部材がガイドチャネルと干渉するおそれは低減される。
【0008】
しかし、近年、例えば、観察倍率が異なったり、照射光の波長域が異なったりする複数種類の光学系を搭載する等、内視鏡の高性能化が図られている。このような高性能な近年の内視鏡の場合、必然的に構成部材の径は大きくなる。そのため、上記特許文献1に記載の方法では、集束手段の厚みが挿入部の細径化を妨げる一因になりかねない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、挿入部の細径化を達成しつつも挿入部内部において構成部材を損傷させることなく安全かつ簡易に配設することができる内視鏡挿入部の組み立てに好適な調整治具、および該調整治具を用いた内視鏡挿入部の組み立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る内視鏡挿入部組み立て用調整治具は、内視鏡の挿入部の外殻である細管状体内に、該挿入部の先端部を有する構成部材を挿入する際に用いられる調整治具であって、外殻の一端近傍を構成するつなぎ管の外径に略等しい内径を有し、前端から後端にわたって延びる切断面によって複数部品に分割自在に構成される中空状の本体と、本体から該本体の軸方向に沿って所定量延出し、前記構成部材を前記挿入部内へ案内する案内手段と、を有し、本体をつなぎ管に嵌合した状態において、案内手段は、細管状体内部におけるアングルガイドチャネル配設位置を回避しつつ、構成部材を前記挿入部内へ案内するように挿置されていることを特徴とする。
【0011】
上記のように構成することにより、湾曲部のアングルガイドチャネルを硬性部内に延伸させたのと同等の状態を擬似的に作り出すことができる。よって、該ガイドの位置が正確に把握できた状態で構成部材を挿入部内部に挿入させることができる。つまり、安全かつ簡易に構成部材を挿入部内部に配設することが可能になる。
【0012】
請求項2に記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具によれば、より実効性を高めるためには、案内手段は、つなぎ管の全長に略等しい全長を有することが望まれる。これにより、湾曲部内のアングルガイドチャネルと硬性部内に配設される棒状部を略連続させることができ、より安全に構成部材を挿入させることが可能になる。
【0013】
請求項3に記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具によれば、案内手段は、本体から該本体の軸方向に沿って延出する棒状部を細管状体内部におけるアングルガイドチャネルの配設数と同数有し、本体は、内壁に、つなぎ管との軸周りの相対的位置を決める位置決め部が形成されており、位置決め部によって本体とつなぎ管との相対位置決めがなされつつ嵌合された状態において、棒状部が、それぞれ、細管状体内部におけるアングルガイドチャネル配設位置に対応して位置するように構成することができる。
【0014】
請求項4に記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具によれば、
挿入部は、内視鏡の把持部側から順に可撓管、湾曲部、硬性部、先端部が連結されて構成されており、上記本体の内壁を基準とした径方向の棒状部の突出量をL、湾曲部の内壁を基準とした径方向のアングルガイドチャネルの突出量をhとすると、
L≧h
を満足することが望ましい。
【0015】
請求項5に記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具によれば、つなぎ管は硬性部の外殻を構成しており、位置決め部は、先端部との位置決めのために形成されたつなぎ管の切り欠き形状に適合するように構成される。これにより、つなぎ管と本体との位置決めが簡易になされる。
【0016】
請求項6に記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具によれば、案内手段は、弾性を有していることが望ましい。これにより、構成部材を挿入する工程中に、棒状部と接触することによる構成部材の損傷を効果的に抑えることができる。
【0017】
請求項7に記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具によれば、分割された部品間を接続するための係止手段をさらに有することができる。例えば、係止手段は、前記本体に設けられたねじ止め部および該ねじ止め部に螺合されるねじである(請求項8)。
【0018】
請求項9に記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具によれば、上記本体は、円筒形状を有することができる。
【0019】
別の観点から、本発明に係る内視鏡挿入部の組み立て方法は、可撓管、湾曲部、硬性部、先端部から構成される内視鏡挿入部を組み立てる組み立て方法であって、可撓管、湾曲部、硬性部の順に互いを連結する連結工程と、連結工程により湾曲部と連結された硬性部の外殻を構成するつなぎ管に、上記の種々の特徴を有する内視鏡挿入部組み立て用調整治具を、位置決め部による位置決めを行いつつ嵌合する嵌合工程と、先端部を有する構成部材を、該先端部の逆側から、嵌合工程を経たつなぎ管を介して湾曲部、可撓管内部へと挿入する挿入工程と、挿入工程後、つなぎ管から調整治具を取り外す取り外し工程と、先端部をつなぎ管に接合する接合工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
請求項11に記載の内視鏡挿入部組み立て方法によれば、取り外し工程は、調整治具を分解することにより行われる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によれば、挿入部に構成部材を挿入する時にのみ供され、組み立て完了時には取り外される調整治具が提供される。これにより、従来の集束手段のように、挿入部の径を太くすることがなくなる。また、当該治具に設けられた棒状部が擬似的にアングルガイドチャネルを硬性部まで延伸させた状態を作り出すことにより、構成部材を損傷させることなく内視鏡挿入部内部に配設することが可能になる。つまり、本発明に係る内視鏡挿入部組み立て方法によれば、上記調整治具を使用することにより、該内視鏡挿入部の径を細く維持しつつも、安全かつ簡易に挿入部を組み立てることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本実施形態の組み立て方法を用いて組み立てられた挿入部を有する、電子内視鏡100を示す図である。図1に示すように、電子内視鏡100は、挿入部1と、鉗子差込口2と、把持部3とを有する。
【0023】
電子内視鏡100に形成された挿入部1は、体腔内に挿入される長い管であり、可撓性を有している。挿入部1は、基端側から順に、可撓管11、湾曲部12、硬性部13、先端部14を有する。硬性部13および先端部14には、内視鏡観察時、体腔内を撮像するために供される光学系等の内視鏡構成部材が配設されている。
【0024】
図2は、挿入部1先端部を拡大して示す図である。但し、説明の便宜上、図2は、各部の周囲を被覆するゴム管等一部構成を省略した透視図である。なお、本文において各部材を説明するに際し、把持部3に近い側を基端側、先端部14に近い側を先端側という。図2に示すように、挿入部1は、可撓管11先端側と湾曲部12基端側(基端ベース121)、湾曲部12先端側(先端ベース123)と硬性部13基端側(基端側接合領域131)、硬性部13先端側(先端側接合領域132)と先端部14基端側(接合部141)を一部嵌合した状態で接合することにより構成される。
【0025】
挿入部1の構成をさらに詳述する。図3(A)〜(C)は、主として湾曲部12の構成を示す図である。図3(A)、(B)は、それぞれ異なる角度からみた湾曲部12を示し、図3(C)は、図3(A)における矢印線Z1方向から臨んだ湾曲部12を示す。
【0026】
図3(A)〜(C)に示すように、湾曲部12は、基端ベース121、節輪構造122、先端ベース123を有する。基端ベース121は、円筒形状を有しており、可撓管11先端側と接合される。本実施形態では、図3(A)〜(C)に示すように、基端ベース121は、可撓管11先端側にビス止めされることにより接合される。節輪構造122は、複数のリング状部材(以下、セグメントという)Sを軸を揃えて並べることにより円筒形状を形成している。各セグメントSは、互いに隣接するセグメントS同士の一部をピンPによって回動自在に軸止めされている。先端ベース123は、円筒形状を有しており、次に詳述する硬性部12基端側と接合される。詳しくは、先端ベース123には、つなぎ管130の凹状部131b(図4(A)参照)に対応する形状を有し、硬性部13との位置決めの指標となる凸状部123aが形成されている。
【0027】
なお、図2に示すように、節輪構造122は、強度維持および内部の構成部材保護のため、金属製の網チューブ125によって被覆されている。網チューブ125は、先端ベース123の先端近傍にて半田付けされる。そこで、硬性部13との位置決めの指標(凸状部123a)を凸状に形成することにより、半田付け領域を十分に確保し、網チューブの堅固な固定を実現している。
【0028】
また、図3(A)〜(C)に示すように、基端ベース121、節輪構造122の各セグメントS、先端ベース123は、それぞれの内壁部の所定の4カ所にガイドホール124を有する。詳しくは、基端ベース121、節輪構造122の各セグメントS、先端ベース123のそれぞれにおいて、4つのガイドホール124は、長手方向に沿って4列のガイドチャネルGが形成されるように設けられている。
【0029】
各ガイドチャネルGには、それぞれ挿入部1先端近傍を湾曲操作する操作部材としての可撓性あるアングルワイヤ(不図示)が挿通される。アングルワイヤは、一端が把持部の操作機構に接続されており、他端が先端ベース123に接続されている。つまり、本実施形態の電子内視鏡100は、術者等が該操作機構を操作することにより、各ガイドチャネルG内を挿通された4本のアングルワイヤが適宜牽引、解放される。これにより、湾曲部12と可撓管11との接合部を起点として湾曲部12から先端側は、上下、左右方向に回動する。
【0030】
なお、各ベース121、123、各セグメントSの内径は必ずしも同一ではない。特に各ベース121、123の径は、それぞれ可撓管11先端、硬性部12基端に適合するように設計される。そのため、各ベース121、123と隣接するセグメントS間に段差が生じる、つまり各ガイドチャネルGは、湾曲部12の径方向に沿って誤差が生じることがある。そこで、以下の説明では、ガイドチャネルGのサイズを規定する内壁からの突出量hを、図3(C)に示すように、湾曲部12の中心(軸)に向かって最も突出しているガイドホール124の突出量として定義する。なお、各ガイドチャネルGが持つ誤差は、アングルワイヤの撓みによって吸収することができる程度の微少量である。
【0031】
硬性部13は、該硬性部13の外殻を構成する金属製の円筒部材であるつなぎ管130を有する。図4(A)、(B)は、つなぎ管130を拡大して示す図である。図4(A)はつなぎ管130の斜視図、図4(B)は、つなぎ管130を内視鏡先端側からみた図である。図4に示すように、つなぎ管130は、基端側接合領域131、先端側接合領域132を有している。
【0032】
基端側接合領域131は、湾曲部12の先端ベース123と嵌合し、接合するための領域である。接合領域131の内径は、先端ベース123の外径に略等しい。また、接合領域131は、内部において、該領域131の端部(つまりつなぎ管130の基端側端部)から所定深さの位置に、つなぎ管130の中心軸に直交する環状の当てつけ面131aを有する。また、基端側接合領域131には、先端ベース123の凸状部123aに対応する形状を有し、湾曲部12との位置決めの指標となる凹状部131bが設けられている。
【0033】
先端側接合領域132は、先端部14の基端側と接合するための領域である。詳しくは、本実施形態の先端側接合領域132は、先端部14の基端側の外径と略等しい内径を有し、端部近傍にねじ穴132aを有する。ねじ穴132aは複数箇所に形成されるが、図4では一カ所のみ示す。また、先端側接合領域132は、先端部14を接合する際につなぎ管130との軸周りの位置決めを行う指標となる切り欠き部132bを有する。
【0034】
先端部14は、図2に示すように、接合部141を有する。接合部141は、上記つなぎ管130のねじ穴132aに対応するねじ穴141a、およびつなぎ管130の切り欠き部132bに適合する凸部141bを有する。なお、先端部14は、体腔内に露出する部位であることに鑑み、電気安全性の観点から樹脂製を採用することが多い。また、修理の際に要求される分解作業の効率性に鑑みると、先端部14が金属製であったとしても、つなぎ管130と先端部14は半田付けによる接合に適さない。よって本実施形態では、ねじ止めによる接合を採用している。
【0035】
次に、上述した構成の挿入部1の組み立て方法について詳述する。挿入部1を以下のようにして組み立てられる。すなわち、図5に示すように、まず可撓管11、湾曲部12、つなぎ管130を互いに接合し細管状体1tを形成する(連結工程)。そして、先端部14が取り付けられた構成部材50を細管状体1tに挿入する(挿入工程)。これにより、挿入部1は組み立てられる。
【0036】
ここで、既述の通り挿入部1は非常に細径かつ長尺である。つまり細管状体1t、構成部材50ともに非常に細径かつ長尺である。そのため、構成部材50同士が干渉し合ったり、細管状体1tの内壁(つまり各部材11〜13の内壁)に衝突したりしないように、細管状体1tに構成部材50を挿入する必要がある。特に上記の通り、湾曲部12内部に形成されているガイドチャネルGは、内壁から突出して形成されるため、例えば該ガイドチャネルG端部(ちょうど湾曲部12とつなぎ管130との接合領域近傍)と挿入中の構成部材50が接触しやすい状態にある。そのため、挿入時の構成部材50とガイドチャネルGとの関係においては、より一層の注意を払う必要がある。しかし、つなぎ管130を介して湾曲部12内部の状態を把握することは非常に困難である。
【0037】
そこで、本実施形態の組み立て方法では、以下に説明する組み立て用調整治具を用いることにより、挿入工程時における作業者の負担を軽減し、挿入部1の安全かつ簡易な組み立てを実現している。
【0038】
図6(A)〜(C)は、実施形態の調整治具500の構成を概略的に示す図である。図6(A)は調整治具500を示す斜視図、図6(B)は図6(A)におけるZ2方向から調整治具を臨んだときの形状を示す図、図6(C)は調整治具500の分解図である。
【0039】
図6(A)〜(C)に示すように、調整治具500は、本体の前端から後端まで延びる切断面によって、複数の部品に分割される。本実施形態では、調整治具500は、本体の中心軸を含む任意の一断面によって二つの部品500A、500Bに等分割される。各部品500A、500Bは、それぞれ、断面が半円状の本体501、該本体501内壁から所定量延出するガイド筒502、ねじ止め部503を有する。本体501は、内壁に凹部領域501aと凸部領域501bが形成されている。凸部領域501bはつなぎ管130の切り欠き部132bに適合する形状を有する。各部品500A、500Bは、互いのねじ止め部503を当接させると、本体501は中空状体(ここでは円筒体)を形成する。該円筒体において、凹部領域501aの径は、つなぎ管130の先端側接合領域132の外径に略等しい。
【0040】
調整治具500は、湾曲部12が有するガイドチャネルGと同数のガイド筒502を有する。つまり本実施形態の調整治具500は、ガイド筒502を4本有する。各部品500A、500Bに着目するとそれぞれ2本ガイド筒502を有する。ガイド筒502は、一定の剛性を有しつつも弾性も持つ部材で構成される。例えば、本実施形態のガイド筒502は、一般的な内視鏡において挿入部に内蔵されている湾曲操作用アングルワイヤを保護するための密着巻きガイドコイルを想定する。
【0041】
各ガイド筒502は、凸部領域501bの形成位置を基準として、互いが、湾曲部12における各ガイドチャネルGの位置関係に対応する位置関係で配設されている。各ガイド筒502は、一端が、本体501内壁における凸部領域501bと略同一曲面上で固定される。従って、ガイド筒502は、凹部領域501a上空では本体501に対して非接触(非固定)状態で、本体の軸方向に沿って延出する。各ガイド筒502において、凸部領域501bから軸方向への突出量をLとすると、該突出量Lは、上記ガイドチャネルの突出量hと以下の関係を有するように設定される。
L≧h
【0042】
なお、凹部領域501aとガイド筒502間の距離は、つなぎ管130の先端側接合領域132の厚みに対応する。また、ガイド筒502の長さ(延出量)は、つなぎ管130の全長に略等しい。以上のように構成された調整治具500をつなぎ管にはめ込んだ状態で構成部材50を挿入することにより、ガイド筒502によって案内される構成部材50は、ガイドチャネルGの配設位置を適切に回避しつつ挿入される。つまり、調整治具500を使用することにより、構成部材をガイドチャネルGに接触させるおそれがより一層低減される。
【0043】
本実施形態の組み立て方法では、構成部材50を細管状体1tに挿入する挿入工程に先立って、上記のように構成された調整治具500をつなぎ管130先端側に嵌合する(嵌合工程)。図7は、調整治具500を嵌合した細管状体1tを示す図である。また、図8は、調整治具500を嵌合した細管状体1tに関する断面図である。より詳しくは、図8は、図6(B)中一点鎖線POQでの調整治具500の断面およびこれに対応する細管状体1tの断面を示す図である。
【0044】
嵌合するに先だって、調整治具500を構成する各部品500A、500Bは、互いのねじ止め部503間にねじ504を挿通させ一体化される。但し、ここでは完全に螺合するのではなく、両者500A、500B間には微少なクリアランスcが形成された状態にある。
【0045】
図8に示すように、各部品500A、500Bが一体化された調整治具500は、凸部領域501bがつなぎ管130の切り欠き部132bに適合するように嵌合される。ここで、図8に示すように、上記連結工程において、湾曲部12とつなぎ管130は、凸状部123aと凹状部131bによって軸周りの位置決めがなされた状態にある。従って、調整治具500は、凸部領域501bとつなぎ管130の切り欠き部132bとによってつなぎ管130との位置決めがなされると、自動的に湾曲部12との位置決めもなされることになる。上記の通り、調整治具500では、凸部領域501bを基準として各ガイド筒502が配設されている。よって、凸部領域501bとつなぎ管130の切り欠き部132bとによる位置決めがなされると、各ガイド筒502のつなぎ管130内での軸周りの相対的位置も決定する。具体的には、図8に示すように、各ガイド筒502は、各ガイドチャネルGの長手方向延長線上に位置する。
【0046】
嵌合後、ねじ504を用いて各部品500A、500Bを螺合し、クリアランスcを消滅させる。これにより、つなぎ管130の先端側接合領域132は、調整治具500の各部品500A、500Bによって挟持される。つまり、調整治具500とつなぎ管130(つまり細管状体1t)は、軸周りおよび軸方向の位置決めがなされた状態で固定される。
【0047】
次いで、上述した挿入工程を実行する。上記嵌合工程によって、つなぎ管130内には、調整治具500のガイド筒502が各ガイドチャネルGに対応する位置に配設されている。従って、該挿入工程では、構成部材50は、調整治具500によって、各ガイドチャネルGの配設位置を適切に回避しつつ、極めて安全かつスムーズに細管状体1t内を案内される。
【0048】
図9は、挿入工程によって概ね構成部材50が細管状体1t内に挿入された状態を示す図である。長尺状の構成部材50を挿入していき、先端部14とつなぎ管130の先端側接合領域132とが近接した状態で、該つなぎ管130から調整治具500を取り外す工程(取り外し工程)を実行する。具体的には、まず、調整治具500の各部品500A、500Bを一体化していたねじ504を取り外して両者を分離させる。そして各部品500A、500Bをつなぎ管130から別個独立して取り外す。ここで、各ガイド筒502は弾性を有しているため、各部品500A、500Bをつなぎ管130の軸から離れる方向(図9中矢印線方向)に取り外しても挿入済みの構成部材50を傷つけることはない。
【0049】
以上の取り外し工程が完了すると、先端部14が細管状体1tより正確にはつなぎ管130の先端側接合領域132に接合される(接合工程)。具体的には、先端部14は、接合部141における凸部141bを先端側接合領域132の切り欠き部132bに一致させることにより先端部14とつなぎ管130との位置決めを行いつつ、ねじ穴132a、141aにおいてねじ止めを行う。
【0050】
以上のように本実施形態の組み立て方法によれば、調整治具500を用いることにより、構成部材50を非常に安全かつ簡易に細管状体1tに挿入させることができる。しかも、該調整治具500は構成部材50挿入後取り外されるため、挿入部1の細径化の妨げにはならない。
【0051】
以上が本発明の実施形態である。本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態の調整治具500は、二つの部品500A、500Bに等分割している。しかし、本発明に係る調整治具は、この構成に限定されるものではなく、三つ以上の部品に分割することも可能である。また、各部品は等分割される必要もない。
【0053】
また、上記実施形態では、調整治具500の各部品500A、500Bは、ねじ止めにより一体化されさらにはつなぎ管130に固定されている。本発明に係る調整治具はこのような構成に限定されるものではない。例えば、ねじ止めの代替として粘着テープ等を貼付することにより固定することも可能である。
【0054】
また、上記実施形態の調整治具は、本体501から延出し、構成部材50を細管状体1t内に案内する手段として、ガイドチャネルGに対応する個数、配置のガイド筒502を提示した。本発明に係る調整治具はこれに限定されるものではない。構成部材挿入口、つまりつなぎ管130の先端側端面から臨んだ時に各ガイドチャネルが隠れるような部材であれば各ガイドチャネルを回避しつつ細管状体1t内への挿入を案内する手段として有効に機能する。従って、例えば、各ガイドチャネルと干渉しないように細管状体1t内の径(つまり挿入経路)を規制する円筒状部材であってもよい。このような円筒状部材であれば、細管状体1tと調整治具は位置決めをする必要がないため非常に簡易である。但し、上記実施形態のように、各ガイドチャネルに対応するガイド筒502を使用した場合、各ガイドチャネル間に存在する空間にも有効に構成部材を挿置させることができ、より無駄のない内部配置が実現されるという独自の利点もある。
【0055】
また、上記実施形態の調整治具は、本体501が円筒形状を有しているが、これに限定されるものではない。本体は、少なくとも内径がつなぎ管の外径に略等しい中空形状であれば、外面形状は例えば取り扱いやすい形状にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態の電子内視鏡を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の電子内視鏡の挿入部先端部を拡大して示す図である。
【図3】本発明の実施形態の湾曲部の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態のつなぎ管を拡大して示す図である。
【図5】本発明の実施形態の挿入部組み立て方法を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態の調整治具の構成を示す図である。
【図7】調整治具が嵌合された状態の細管状体を示す外観図である。
【図8】調整治具が嵌合された状態の細管状体を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態の挿入部組み立て方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0057】
1 挿入部
11 可撓管
12 湾曲部
13 硬性部
130 つなぎ管
14 先端部
100 内視鏡
500 調整治具
501 本体
501b 凸部領域(位置決め部)
502 ガイド筒(案内手段)
G ガイドチャネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の挿入部の外殻である細管状体内に、該挿入部の先端部を有する構成部材を挿入する際に用いられる調整治具であって、
前記外殻の一端近傍を構成するつなぎ管の外径に略等しい内径を有し、前端から後端にわたって延びる切断面によって複数部品に分割自在に構成される中空状の本体と、
前記本体から該本体の軸方向に沿って所定量延出し、前記構成部材を前記挿入部内へ案内する案内手段と、を有し、
前記本体を前記つなぎ管に嵌合した状態において、前記案内手段は、前記細管状体内部におけるアングルガイドチャネル配設位置を回避しつつ、前記構成部材を前記挿入部内へ案内するように挿置されていることを特徴とする内視鏡挿入部組み立て用調整治具。
【請求項2】
請求項1に記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具において、
前記案内手段は、前記つなぎ管の全長に略等しい全長を有することを特徴とする内視鏡挿入部組み立て用調整治具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具において、
前記案内手段は、前記本体から該本体の軸方向に沿って延出する棒状部を前記細管状体内部におけるアングルガイドチャネルの配設数と同数有し、
前記本体は、内壁に、前記つなぎ管との軸周りの相対的位置を決める位置決め部が形成されており、
前記位置決め部によって前記本体と前記つなぎ管との相対位置決めがなされつつ嵌合された状態において、前記棒状部は、それぞれ、前記細管状体内部におけるアングルガイドチャネル配設位置に対応して位置していることを特徴とする内視鏡挿入部組み立て用調整治具。
【請求項4】
請求項3に記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具において、
前記挿入部は、内視鏡の把持部側から順に可撓管、湾曲部、硬性部、前記先端部が連結されて構成されており、
前記本体の内壁を基準とした径方向の前記棒状部の突出量をL、前記湾曲部の内壁を基準とした径方向の前記アングルガイドチャネルの突出量をhとすると、
L≧h
を満足することを特徴とする内視鏡挿入部組み立て用調整治具。
【請求項5】
請求項4に記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具において、
前記つなぎ管は、前記硬性部の外殻を構成しており、
前記位置決め部は、前記先端部との位置決めのために形成された前記つなぎ管の切り欠き形状に適合することを特徴とする内視鏡挿入部組み立て用調整治具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具において、
前記案内手段は、弾性を有していることを特徴とする内視鏡挿入部組み立て用調整治具。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具において、
分割された複数の前記部品を一体として係止にする係止手段をさらに有することを特徴とする内視鏡挿入部組み立て用調整治具。
【請求項8】
請求項7に記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具において、
前記係止手段は、ねじにより複数の前記部品を螺合するように構成されていることを特徴とする内視鏡挿入部組み立て用調整治具。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具において、
前記本体は、円筒形状を有することを特徴とする内視鏡挿入部組み立て用調整治具。
【請求項10】
可撓管、湾曲部、硬性部、先端部から構成される内視鏡挿入部を組み立てる組み立て方法であって、
前記可撓管、前記湾曲部、前記硬性部の順に互いを連結する連結工程と、
前記連結工程により前記湾曲部と連結された前記硬性部の外殻を構成するつなぎ管に、請求項1から請求項9のいずれかに記載の内視鏡挿入部組み立て用調整治具を嵌合する嵌合工程と、
前記先端部を有する前記構成部材を、該先端部の逆側から、前記嵌合工程を経た前記つなぎ管を介して前記湾曲部、前記可撓管内部へと挿入する挿入工程と、
前記挿入工程後、前記つなぎ管から前記調整治具を取り外す取り外し工程と、
前記先端部を前記つなぎ管に接合する接合工程と、を有することを特徴とする内視鏡挿入部の組み立て方法。
【請求項11】
請求項10に記載の内視鏡挿入部の組み立て方法において、
前記取り外し工程は、前記調整治具を分離することにより行われることを特徴とする内視鏡挿入部の組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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