説明

内視鏡操作装置及び内視鏡

【課題】内視鏡の操作部内への液体の浸入を確実に防止する。
【解決手段】操作部の外装筐体28には、上下操作用ノブ24を取り付けるためのノブ取付部30が形成されている。上下操作用ノブ24には、複数の磁石40が設けられている。ノブ取付部30の内部空間38には、第1ロータ44が設けられている。第1ロータ44には、上下操作用ノブ24の各磁石40と同じ数の磁石46が設けられている。第1ロータ44は、第1シャフト48の一端に取り付けられ、各磁石40、46が対面するように配置される。第1シャフト48の多端には、第1プーリ52が設けられている。上下操作用ノブ24を回転操作すると、各磁石40、46の磁気的な結合によって第1ロータ44が回転し、操作力が第1プーリ52に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入部に配された可動部を操作するための操作ノブが設けられた内視鏡操作装置、及び内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、体腔内に挿入される挿入部を手元操作部に繋げた形態になっている。挿入部は、先端から順に、先端部、湾曲部、及び、可撓管部によって構成されている。先端部には、観察窓、照明窓、鉗子出口、送気・送水口などが設けられている。この先端部は、硬質な樹脂材料で形成される。可撓管部は、細径かつ長尺な管状に形成されるとともに、可撓性を有しており、操作部と湾曲部との間を接続する。湾曲部は、手元操作部に設けられた操作ノブを回転操作することで、上下左右方向のいずれにも湾曲する。これにより、先端部を任意の方向に向け、体腔内の所望の位置を撮影することができるとともに、患者への挿入性をスムーズにすることができる。
【0003】
操作ノブは、手元操作部の外装筐体を貫通するシャフトを介して、手元操作部内に設けられたプーリと接続される(特許文献1、2参照)。プーリには、ワイヤが巻き掛けられる。このワイヤの両端は、可撓管部の中を通って湾曲部に接続される。操作ノブを回転操作すると、その操作力がシャフトを介してプーリに伝達され、操作ノブに同期してプーリが回転する。そして、このプーリの回転によってワイヤを押し引きすることにより、湾曲部が所定の方向に湾曲する。
【特許文献1】特開平11−47082号公報
【特許文献2】特開2001−346756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の内視鏡では、操作部内に洗浄水などの液体が浸入することを防止するため、外装筐体とシャフトとの接触部分にOリングなどのシール部材を必要としていた。これにともない、上記構成の内視鏡には、シール部分の隙間に入った汚れが洗浄しにくい、シール部材が劣化すると操作部内に液体が浸入してしまう恐れがある、などの問題があった。
【0005】
また、近年では、内視鏡をより清潔に保つため、内視鏡にオートクレーブ滅菌(高圧蒸気滅菌)を施したいという要望がある。しかしながら、シール部材の耐熱性が低いため、上記構成の内視鏡では、オートクレーブ滅菌への対応が難しい。さらに、操作ノブの操作に従動して回転するシャフトに対して水密性を保たなければならないため、構造が複雑になってしまい、コストアップや組立性の低下の要因になってしまうという問題もある。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、シール部材を必要としない簡易な構成で、操作部内への液体の浸入を確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の内視鏡操作装置は、内視鏡の挿入部に配された可動部を操作するための操作ノブと、前記操作ノブの操作に応じて変位して、前記可動部へ動力を伝える変位部材と、前記操作ノブに取り付けられた第1磁石部、及び、前記変位部材に取り付けられた第2磁石部からなり、前記第1磁石部と前記第2磁石部は、非磁性体で形成された隔壁を挟んで対面して配置されており、前記第1及び第2の各磁石部が発生する磁力によって、前記操作ノブの操作力を前記変位部材へ伝達する操作力伝達手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
なお、前記第1及び第2の各磁石部は、それぞれ前記隔壁の壁面に沿って配列された、第1及び第2の複数個の磁石からなり、前記第1及び第2の各磁石は、相互間に生じる磁力線の向きが配列方向に沿って交互に入れ替わるように配置されていることが好ましい。
【0009】
また、周壁が前記隔壁を構成し前記変位部材を収容する筐体を有し、前記操作ノブは、前記筐体の外周に取り付けられることが好ましい。
【0010】
さらに、前記筐体は、前記操作ノブと嵌合する凸状又は凹状の嵌合部を有することが好ましい。
【0011】
なお、前記筐体と前記嵌合部は、一体成形されることが好ましい。
【0012】
また、前記変位部材は、前記操作ノブの回転にともなって回転する回転部材であり、前記嵌合部は、前記回転部材の回転軸の軸方向に突出した円筒部であり、前記操作ノブは、前記円筒部と嵌合する中空部を有するドーナツ形状であることが好ましい。
【0013】
さらに、前記第1及び第2の各磁石部の境界面は、前記円筒部の周面及び前記円筒部の基端が接合する接合面の少なくとも一方の面と平行に配置されることが好ましい。
【0014】
なお、前記第1及び第2の各磁石部の境界面は、前記回転軸と平行又は前記回転軸と直交することが好ましい。
【0015】
また、前記円筒部は、その基端側から順に形成される大径部及び小径部からなり、前記操作ノブは、前記大径部及び前記小径部のそれぞれに嵌合する大径用及び小径用の2つの操作ノブからなり、前記大径用及び小径用の各操作ノブのそれぞれに、前記第1磁石部が取り付けられていることが好ましい。
【0016】
さらに、前記大径用及び小径用の各操作ノブのそれぞれが対面する面に、前記第1磁石部に起因する前記各操作ノブ相互間の干渉を防止する磁性材料が設けられていることが好ましい。
【0017】
なお、前記可動部は、前記内視鏡の挿入部に配された上下用及び左右用の2つの湾曲部からなり、前記大径用及び小径用の各操作ノブは、前記各湾曲部に割り当てられており、前記回転部材は、前記大径用及び小径用の各操作ノブのそれぞれに対応する大径用及び小径用の2つの回転部材からなることが好ましい。
【0018】
また、前記大径用及び小径用の各回転部材は、前記各湾曲部を牽引するためのワイヤが巻き掛けられた2つのプーリと同軸上に配置されることが好ましい。
【0019】
さらに、前記大径用の回転部材と前記プーリの一方を兼用するようにしてもよい。
【0020】
なお、被検体に挿入され可動部が配された挿入部と、その挿入部の基端側に前記可動部を操作する操作ノブが設けられた操作部とを有する本発明の内視鏡は、前記操作ノブの操作に応じて変位して、前記可動部へ動力を伝える変位部材と、前記操作ノブに取り付けられた第1磁石部、及び、前記変位部材に取り付けられた第2磁石部からなり、前記第1磁石部と前記第2磁石部は、非磁性材料で形成された隔壁を挟んで対面して配置されており、前記第1及び第2の各磁石部が発生する磁力によって、前記操作ノブの操作力を前記変位部材へ伝達する操作力伝達手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、隔壁を挟んで対面する各磁石部が発生する磁力によって操作ノブの操作力を伝達するようにした。これにより、隔壁によって操作部を密閉することができるので、シール部材を必要とせず、操作部内への液体の浸入を確実に防止することができる他、操作部の洗浄が容易となる。また、シール部材を必要としないので、コストアップや組立性の低下の要因になることもない。さらに、過剰なトルクを伝えないことから内視鏡挿入時の穿孔リスクを低減することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
電子内視鏡10は、図1に示すように、体腔内に挿入される挿入部11、この挿入部11の基端部分に連設される操作部(内視鏡操作装置)12、及び、ユニバーサルコード13を備えた細長い形状になっている。挿入部11は、管状に形成されており、先端から順に、先端部14、湾曲部(可動部)15、及び、可撓管部16とで構成されている。ユニバーサルコード13は、一端が操作部12に接続され、他端のコネクタ部18がプロセッサ装置19、送気装置(図示せず)、及び、光源装置(図示せず)に接続される。
【0023】
先端部14は、硬質な樹脂材料で形成されている。この先端部14の先端面14aには、観察部位からの像光を取り込むための観察窓が設けられている。そして、先端部14には、観察窓を介して入射した像光を撮像する撮像センサが内蔵されている。プロセッサ装置19は、この撮像センサから得られる撮像信号に対して画像処理を行うとともに、コンポジット信号やコンポーネント信号などの映像信号にエンコードし、その映像信号をモニタ20に出力する。これにより、患者の体腔内などを撮影した内視鏡画像がモニタ20に表示される。
【0024】
可撓管部16は、細径かつ長尺な管状に形成されるとともに、可撓性を有しており、操作部12と湾曲部15との間を接続する。湾曲部15は、先端から順に、第1及び第2湾曲部22、23を有している。第1湾曲部22は、上下方向に湾曲するように構成されている。一方、第2湾曲部23は、左右方向に湾曲するように構成されている。操作部12には、第1湾曲部22を上下方向に湾曲させるための上下用操作ノブ24と、第2湾曲部23を左右方向に湾曲させるための左右用操作ノブ25とが設けられている。各湾曲部22、23は、各ノブ24、25の回転操作に応じて、上下方向、及び左右方向に湾曲する。これにより、先端部14を任意の方向に向けることができる。
【0025】
また、操作部12には、上下用操作ノブ24の回転操作のロックと解除とを切り替えるためのロックレバー26と、左右用操作ノブ25の回転操作をロックと解除とを切り替えるためのロックダイヤル27とが設けられている。ロックレバー26は、図2(a)に示す解除位置と、図2(b)に示すロック位置との間で揺動自在に取り付けられている。ロックレバー26をロック位置にすると、上下用操作ノブ24の回転操作がロックされ、第1湾曲部22の上下方向の湾曲状態が保持される。一方、ロックレバー26を解除位置にすると、上下用操作ノブ24のロックが解除され、第1湾曲部22の上下方向への湾曲操作が可能になる。
【0026】
ロックダイヤル27は、図2(a)に示す解除位置と、図2(b)に示すロック位置との間で回転自在に取り付けられている。ロックダイヤル27をロック位置にすると、左右用操作ノブ25の回転操作がロックされ、第2湾曲部23の左右方向の湾曲状態が保持される。一方、ロックダイヤル27を解除位置にすると、左右用操作ノブ25のロックが解除され、第2湾曲部23の左右方向への湾曲操作が可能になる。
【0027】
図3に示すように、操作部12の外装筐体(隔壁)28の外面には、各ノブ24、25を取り付ける凸状のノブ取付部(嵌合部)30が形成されている。このノブ取付部30には、各ノブ24、25の他に、第1ロック機構32と第2ロック機構33とが取り付けられる。第1ロック機構32は、ロックレバー26を有し、ロックレバー26の操作に応じて上下用操作ノブ24の回転操作をロックする。第2ロック機構33は、ロックダイヤル27を有し、ロックダイヤル27の操作に応じて左右用操作ノブ25の回転操作をロックする。なお、ノブ取付部30を含む外装筐体28には、例えば、オーステナイト系ステンレスやアルミニウム、及び樹脂材料などといった非磁性体が用いられる。
【0028】
ノブ取付部30は、外装筐体28と一体に成形され、基端側から順に、大径部35と小径部36と突起部37とを有している。大径部35と小径部36とは、円筒状(図4参照)に形成されている。突起部37は、小径部36の一端面から突出する円柱状に形成されている。これらの各部は、それぞれ中心軸が一致するように形成されている。
【0029】
大径部35には、上下用操作ノブ24と第1ロック機構32とが取り付けられる。上下用操作ノブ24は、大径部35と嵌合する中空部24aを有するドーナツ形状に形成されている。上下用操作ノブ24は、中空部24aを介して回転自在に大径部35に取り付けられる。第1ロック機構32は、大径部35と嵌合する中空部32aを有している。第1ロック機構32は、中空部32aを大径部35に挿通させた後、大径部35に固定される。
【0030】
小径部36には、左右用操作ノブ25が取り付けられる。左右用操作ノブ25は、小径部36と嵌合する中空部25aを有するドーナツ形状に形成されている。左右用操作ノブ25は、中空部25aを介して回転自在に小径部36に取り付けられる。突起部37には、第2ロック機構33が形成されている。第2ロック機構33には、図示を省略した有底状の取付穴が形成されている。第2ロック機構33は、この取付穴を介して突起部37に固定される。
【0031】
図4に示すように、ノブ取付部30には、円筒状に形成された大径部35、小径部36により、密閉された内部空間38が形成されている。この内部空間38は、外装筐体28によって形成される内部空間と一続きになっている。
【0032】
上下用操作ノブ24には、中空部24aによって形成される内周面の近傍に複数の磁石40が設けられている。左右用操作ノブ25にも、同様に、中空部25aによって形成される内周面の近傍に複数の磁石41が設けられている。
【0033】
ノブ取付部30の内部空間38には、略円柱状に形成された第1及び第2の2つのロータ44、45が設けられている。第1ロータ44は、大径部35の内径よりも僅かに小さい径で形成されている。第1ロータ44の外周面には、上下用操作ノブ24に設けられた各磁石40と同じ数の磁石46が取り付けられている。第2ロータ45は、小径部36の内径よりも僅かに小さい径で形成されている。第2ロータ45の外周面には、左右用操作ノブ25に設けられた各磁石41と同じ数の磁石47が取り付けられている。
【0034】
第1ロータ44は、円筒状に形成された第1シャフト48の一端に略一体に取り付けられている。第1シャフト48は、ノブ取付部30の中心軸と同軸に配置され、外装筐体28に取り付けられる支持部材(図示は省略)に回転自在に支持される。第2ロータ45は、円筒状に形成され、第1シャフト48に挿通される第2シャフト49の一端に取り付けられる。第2シャフト49も同様に、ノブ取付部30の中心軸と同軸に配置され、外装筐体28に取り付けられる支持部材(図示は省略)に回転自在に支持される。これにより、各シャフト48、49と一体になって各ロータ44、45が回転する。
【0035】
図5に示すように、上下用操作ノブ24の各磁石40は、回転軸を中心とする円上に等間隔に配置されている。第1ロータ44の各磁石46は、外周面に等間隔に取り付けられている。そして、第1ロータ44は、図4、及び図5に示すように、上下用操作ノブ24の各磁石40と各磁石46とが大径部35を挟んで対面するように、ノブ取付部30の内部空間38に配置される。すなわち、各磁石40、46の境界面は、大径部35の周面と平行になっている。
【0036】
また、図5に示すように、各磁石40、46は、相互間に生じる磁力線の向きが配列方向に沿って入れ替わるように、対面する面の極性がN極のものとS極のものとが交互に並べられている。これにより、対面する各磁石40、46が磁力によって互いに引き合い、上下用操作ノブ24と第1ロータ44とが磁気的に結合する。
【0037】
左右用操作ノブ25の各磁石41、及び第2ロータ45の各磁石47は、上記と同様に構成される。そして、第2ロータ45は、左右用操作ノブ25の各磁石41と各磁石47とが小径部36を挟んで対面するように、ノブ取付部30の内部空間38に配置される。すなわち、各磁石41、47の境界面は、小径部36の周面と平行になっている。これにより、対面する各磁石41、47が磁力によって互いに引き合い、左右用操作ノブ25と第2ロータ45とが磁気的に結合する。なお、各磁石40、41、46、47には、例えば、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、フェライト磁石などの永久磁石を用いることができる。
【0038】
各ノブ24、25、及び各ロータ44、45は、いわゆるマグネットカップリング構造になっている。上下用操作ノブ24を回転操作すると、各磁石40、46による磁気的な結合により、第1ロータ44が従動して回転する。左右用操作ノブ25を回転操作すると、各磁石41、47による磁気的な結合により、第2ロータ45が従動して回転する。
【0039】
上下用操作ノブ24の左右用操作ノブ25と対面する面には、鉄、コバルト、クロムなどの磁性体からなる干渉防止板50が設けられている。干渉防止板50は、各磁石40から左右用操作ノブ25側に向かう磁束を上下用操作ノブ24の外周側に案内することにより、各磁石40の磁束が各磁石41、47に干渉することを防止する。これにより、上下用操作ノブ24を回転操作した際に、左右用操作ノブ25、及び第2ロータ45がつられて回転してしまうことを防止することができる。
【0040】
同様に、左右用操作ノブ25の上下用操作ノブ24と対面する面には、鉄、コバルト、クロムなどの磁性体からなる干渉防止板51が設けられている。干渉防止板51は、各磁石41から上下用操作ノブ24側に向かう磁束を左右用操作ノブ25の外周側に案内することにより、各磁石41の磁束が各磁石40、46に干渉することを防止する。これにより、左右用操作ノブ25を回転操作した際に、上下用操作ノブ24、及び第1ロータ44がつられて回転してしまうことを防止することができる。
【0041】
第1シャフト48の第1ロータ44と反対側の端部には、円板状に形成された第1プーリ(変位部材)52が略一体に取り付けられている。同様に、第2シャフト49の第2ロータ45と反対側の端部には、円板状に形成された第2プーリ(変位部材)53が略一体に取り付けられている。各プーリ52、53には、第1ワイヤ54、第2ワイヤ55が、それぞれ巻き掛けられている。第1ワイヤ54の両端部は、可撓管部16内を通って第1湾曲部22に接続されている。一方、第2ワイヤ55の両端部は、可撓管部16内を通って第2湾曲部23に接続されている。各湾曲部22、23は、各プーリ52、53の回転にともなう各ワイヤ54、55の押し引き動作により、上下方向、又は左右方向に湾曲する。
【0042】
第1ロック機構32には、ゴムなどからなるパッド60が設けられている。図4は、ロックレバー26が解除位置にある状態を示している。第1ロック機構32は、ロックレバー26をロック位置に移動させると、図示を省略したカム機構によってノブ取付部30の軸方向に移動し、パッド60を上下用操作ノブ24の裏面に押し付ける。これにより、第1ロック機構32は、上下用操作ノブ24の回転操作をロックする。
【0043】
第2ロック機構33には、ゴムなどからなるパッド61が設けられている。図4は、ロックダイヤル27が解除位置にある状態を示している。第2ロック機構33は、ロックダイヤル27をロック位置に移動させると、図示を省略したネジ機構によってノブ取付部30の軸方向に移動し、パッド61を左右用操作ノブ25の表面に押し付ける。これにより、第2ロック機構33は、左右用操作ノブ25の回転操作をロックする。
【0044】
第1湾曲部22を上下方向に湾曲させる際には、ロックレバー26が解除位置にある状態で、上下用操作ノブ24を回転操作する。上下用操作ノブ24を回転操作すると、各磁石40、46による磁気的な結合により、第1ロータ44が従動して回転する。第1ロータ44が回転すると、第1シャフト48を介して、その操作力が第1プーリ52に伝達され、第1ロータ44に同期して第1プーリ52が回転する。第1プーリ52が回転すると、その回転量に応じて第1ワイヤ54が移動する。そして、この第1ワイヤ54の移動にともなう押し引き動作により、第1湾曲部22が上下方向に湾曲する。
【0045】
また、第2湾曲部23を左右方向に湾曲させる際には、ロックダイヤル27が解除位置にある状態で、左右用操作ノブ25を回転操作する。左右用操作ノブ25を回転操作すると、各磁石41、47による磁気的な結合により、第2ロータ45が従動して回転する。第2ロータ45が回転すると、第2シャフト49を介して、その操作力が第2プーリ53に伝達され、第2ロータ45に同期して第2プーリ53が回転する。第2プーリ53が回転すると、その回転量に応じて第2ワイヤ55が移動する。そして、この第2ワイヤ55の移動にともなう押し引き動作により、第2湾曲部23が左右方向に湾曲する。
【0046】
このように、本実施形態では、各ノブ24、25の操作力を各プーリ52、53に直接伝達することなく、各磁石40、41、46、47の磁力を介して伝達するようにした。これにより、誤操作などによって各ノブ24、25に過大なトルクが加わると、各磁石40、41、46、47の磁力による磁気的な結合が崩れ、各ノブ24、25のみが回転する。従って、各ノブ24、25に過大なトルクが加わった場合にも、湾曲部15が急激に湾曲して患者の体腔を傷付けてしまうことを確実に防止することができる。
【0047】
また、磁力を介して各ノブ24、25の操作力を伝達することにより、ノブ取付部30、及び外装筐体28によって操作部12を密閉することが可能になる。これにより、Oリングなどのシール部材を設ける必要が無くなる。従って、シール部材の分だけ部品点数が減り、かつ構成も簡易になるので、電子内視鏡10のコストアップを抑えることができる。さらに、各ノブ24、25の取り付け、取り外しの際に、操作部12の防水性を心配する必要が無いので、各ノブ24、25の組立性を向上させ、取り付け、取り外しを容易に行なうことができる。
【0048】
また、取り付け、取り外しが容易であることから、例えば、磁力の強さが異なる複数の各ノブ24、25を予め用意しておき、これらを選択的にノブ取付部30に取り付けることもできる。これにより、術者の好みや検査内容などに応じて、各磁石40、41、46、47の磁気的な結合が崩れるトルクを調整することができる。さらには、各磁石40、41の磁力、大きさ、形状などを術者に合わせて各ノブ24、25を作成し、各術者が自身に合った各ノブ24、25に自由に取り替えることもできる。
【0049】
また、シール部材による隙間が形成されなくなり、かつ各ノブ24、25を取り外して洗浄することもできるので、電子内視鏡10の洗浄性を高めることができる。さらに、シール部材を設ける場合と異なり、劣化などの経時的な変化によって操作部12内に液体が浸入する心配もない。また、耐熱性の低いシール部材を用いる必要がなく、耐熱性の高い外装筐体28で操作部12を密閉することができるので、オートクレーブ滅菌にも容易に対応させることができる。なお、オートクレーブ滅菌に対応させる際には、各磁石40、41、46、47に耐熱性の高いアルニコ磁石を用いることが好適である。
【0050】
なお、図5では、各磁石40、46を8個ずつ設け、それぞれ45度の角度を空けて等間隔に配置した例を示したが、各磁石40、46の個数、及び配置角度は、これに限るものではない。また、上記実施形態では、各磁石40、41、46、47に永久磁石を用いたが、これに限ることなく、電磁石を用いてもよい。各磁石40、41、46、47に電磁石を用いる場合には、加える電圧/電流を制御することによって、磁気的な結合が崩れるトルクを調整することができる。
【0051】
次に、図6を用いて本発明の第2の実施形態について説明する。なお、上記実施形態と機能・構成上同一のものについては、同符号を付し、詳細な説明を省略する。上記第1の実施形態と同様に、操作部12には、第1湾曲部22を上下方向に湾曲させるための上下用操作ノブ70と、第2湾曲部23を左右方向に湾曲させるための左右用操作ノブ71とが設けられている。
【0052】
操作部12の外装筐体28の外面には、各ノブ70、71を取り付けるためのノブ取付部72が形成されている。ノブ取付部72は、外装筐体28の外面から略垂直に突出するように形成され、上下用操作ノブ70が取り付けられる円筒部73と、この円筒部73の外装筐体28と反対側の端部を塞ぐ平板部74と、この平板部74から略垂直に突出するように形成され、左右用操作ノブ71が取り付けられる略円柱状の突起部75とからなる。また、突起部75は、円筒部73と中心軸が一致するように形成されている。ノブ取付部72には、円筒部73と平板部74とによって密閉された内部空間が形成される。この内部空間は、外装筐体28によって形成される内部空間と一続きになっている。
【0053】
上下用操作ノブ70は、円筒部73の外径に応じた貫通孔状の取付穴を有しており、ベアリングなどを介して回転自在に円筒部73に取り付けられる。また、上下用操作ノブ70には、外装筐体28と対面する面に複数の磁石76が設けられている。左右用操作ノブ71は、突起部75の外径に応じた貫通孔状の取付穴を有しており、ベアリングなどを介して回転自在に突起部75に取り付けられる。左右用操作ノブ71にも、同様に、外装筐体28と対面する面に複数の磁石77が設けられている。図示は省略するが、上記第1の実施形態と同様に、各磁石76、77は、それぞれ回転軸を中心とする円上に等間隔に配置される。
【0054】
外装筐体28の内部には、略円板状に形成された第1及び第2の2つのプーリ78、79、及び略円柱状に形成されたシャフト80が設けられている。各プーリ78、79には、上記実施形態と同様に、第1ワイヤ54、第2ワイヤ55が、それぞれ巻き掛けられている。シャフト80は、その一部がノブ取付部72の内部空間に入り込んでいる。また、シャフト80は、ノブ取付部72の中心軸と同軸に配置され、外装筐体28に取り付けられる支持部材(図示は省略)に回転自在に支持される。第1プーリ78は、ベアリングなどを介して回転自在にシャフト80に取り付けられている。一方、第2プーリ79は、シャフト80に略一体に取り付けられている。すなわち、第1プーリ78は、シャフト80に対して独立に回転し、第2プーリ79は、シャフト80と一体になって回転する。
【0055】
第1プーリ78には、上下用操作ノブ70と対面する面に、上下用操作ノブ70に設けられた各磁石76と同じ数の磁石82が設けられている。各磁石82は、上下用操作ノブ70の各磁石76と外装筐体28を挟んで対面する。すなわち、各磁石76、82の境界面は、ノブ取付部72の基端が接合する接合面である外装筐体28と平行になっている。これにより、対面する各磁石76、82が磁力によって互いに引き合い、上下用操作ノブ70と第1プーリ78とが磁気的に結合する。
【0056】
シャフト80には、左右用操作ノブ71と対面する一端面に、左右用操作ノブ71に設けられた各磁石77と同じ数の磁石83が設けられている。各磁石83は、左右用操作ノブ71の各磁石77と平板部74を挟んで対面する。すなわち、各磁石77、83の境界面は、ノブ取付部72の基端が接合する接合面である外装筐体28と平行になっている。これにより、対面する各磁石77、83が磁力によって互いに引き合い、左右用操作ノブ71とシャフト80とが磁気的に結合する。
【0057】
上下用操作ノブ70を回転操作すると、各磁石76、82による磁気的な結合により、第1プーリ78が従動して回転する。第1プーリ78が回転すると、その回転量に応じて第1ワイヤ54が移動する。そして、この第1ワイヤ54の移動にともなう押し引き動作により、第1湾曲部22が上下方向に湾曲する。
【0058】
また、左右用操作ノブ71を回転操作すると、各磁石77、83による磁気的な結合により、シャフト80が従動して回転する。シャフト80が回転すると、これにともなって第2プーリ79が回転する。第2プーリ79が回転すると、その回転量に応じて第2ワイヤ55が移動する。そして、この第2ワイヤ55の移動にともなう押し引き動作により、第2湾曲部23が左右方向に湾曲する。
【0059】
上記第1の実施形態では、操作ノブ側の磁石とプーリ側の磁石とを同心円状に配置する、いわゆる筒状マグネットカップリング構造を示した。一方、本実施形態では、操作ノブ側の磁石とプーリ側の磁石とを回転軸と平行な方向にずらして配置する、いわゆる円盤状マグネットカップリング構造を示した。本実施形態で示すように、円盤状マグネットカップリング構造を用いた場合にも、各磁石76、77、82、83の磁力を介して各ノブ70、71の操作力を各プーリ78、79に伝達することができる。従って、円盤状マグネットカップリング構造を用いた場合にも、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
なお、上記各実施形態では、挿入部11に配された可動部として、湾曲部15を示したが、可動部は、これに限ることなく、例えば、挿入部11の鉗子チャンネルに挿通された処置具の先端を起立させる処置具起立機構などであってもよい。また、上記各実施形態では、回転操作する操作ノブを示し、この操作ノブの回転に従動するロータやシャフト、及びプーリを変位部材として示したが、操作ノブ、及び変位部材は、これに限ることなく、スライド移動するものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】内視鏡システムの構成を概略的に示す説明図である。
【図2】ロックレバーとロックダイヤルとの各位置の状態を示す説明図である。
【図3】操作部の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図4】電子内視鏡の内部構成を概略的に示す説明図である。
【図5】各磁石の配置を概略的に示す説明図である。
【図6】円盤状マグネットカップリング構造を用いた例を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
10 電子内視鏡
11 挿入部
12 操作部(内視鏡操作装置)
14 先端部
15 湾曲部(可動部)
22 第1湾曲部
23 第2湾曲部
24 上下用操作ノブ
25 左右用操作ノブ
28 外装筐体(隔壁)
30 ノブ取付部(嵌合部)
35 大径部
36 小径部
40、41 磁石(第1磁石)
44 第1ロータ
45 第2ロータ
46、47 磁石(第2磁石)
48 第1シャフト
49 第2シャフト
50、51 干渉防止板
52 第1プーリ
53 第2プーリ
54 第1ワイヤ
55 第2ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の挿入部に配された可動部を操作するための操作ノブと、
前記操作ノブの操作に応じて変位して、前記可動部へ動力を伝える変位部材と、
前記操作ノブに取り付けられた第1磁石部、及び、前記変位部材に取り付けられた第2磁石部からなり、前記第1磁石部と前記第2磁石部は、非磁性体で形成された隔壁を挟んで対面して配置されており、前記第1及び第2の各磁石部が発生する磁力によって、前記操作ノブの操作力を前記変位部材へ伝達する操作力伝達手段とを備えたことを特徴とする内視鏡操作装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の各磁石部は、それぞれ前記隔壁の壁面に沿って配列された、第1及び第2の複数個の磁石からなり、前記第1及び第2の各磁石は、相互間に生じる磁力線の向きが配列方向に沿って交互に入れ替わるように配置されていることを特徴とする請求項1記載の内視鏡操作装置。
【請求項3】
周壁が前記隔壁を構成し前記変位部材を収容する筐体を有し、前記操作ノブは、前記筐体の外周に取り付けられることを特徴とする請求項1又は2記載の内視鏡操作装置。
【請求項4】
前記筐体は、前記操作ノブと嵌合する凸状又は凹状の嵌合部を有することを特徴とする請求項3記載の内視鏡操作装置。
【請求項5】
前記筐体と前記嵌合部は、一体成形されることを特徴とする請求項4記載の内視鏡操作装置。
【請求項6】
前記変位部材は、前記操作ノブの回転にともなって回転する回転部材であり、
前記嵌合部は、前記回転部材の回転軸の軸方向に突出した円筒部であり、
前記操作ノブは、前記円筒部と嵌合する中空部を有するドーナツ形状であることを特徴とする請求項4又は5記載の内視鏡操作装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の各磁石部の境界面は、前記円筒部の周面及び前記円筒部の基端が接合する接合面の少なくとも一方の面と平行に配置されることを特徴とする請求項6記載の内視鏡操作装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の各磁石部の境界面は、前記回転軸と平行又は前記回転軸と直交することを特徴とする請求項6又は7記載の内視鏡操作装置。
【請求項9】
前記円筒部は、その基端側から順に形成される大径部及び小径部からなり、
前記操作ノブは、前記大径部及び前記小径部のそれぞれに嵌合する大径用及び小径用の2つの操作ノブからなり、
前記大径用及び小径用の各操作ノブのそれぞれに、前記第1磁石部が取り付けられていることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の内視鏡操作装置。
【請求項10】
前記大径用及び小径用の各操作ノブのそれぞれが対面する面に、前記第1磁石部に起因する前記各操作ノブ相互間の干渉を防止する磁性材料が設けられていることを特徴とする請求項9記載の内視鏡操作装置。
【請求項11】
前記可動部は、前記内視鏡の挿入部に配された上下用及び左右用の2つの湾曲部からなり、
前記大径用及び小径用の各操作ノブは、前記各湾曲部に割り当てられており、
前記回転部材は、前記大径用及び小径用の各操作ノブのそれぞれに対応する大径用及び小径用の2つの回転部材からなることを特徴とする請求項10記載の内視鏡操作装置。
【請求項12】
前記大径用及び小径用の各回転部材は、前記各湾曲部を牽引するためのワイヤが巻き掛けられた2つのプーリと同軸上に配置されることを特徴とする請求項11記載の内視鏡操作装置。
【請求項13】
前記大径用の回転部材と前記プーリの一方が兼用されることを特徴とする請求項12記載の内視鏡操作装置。
【請求項14】
被検体に挿入され可動部が配された挿入部と、その挿入部の基端側に前記可動部を操作する操作ノブが設けられた操作部とを有する内視鏡において、
前記操作ノブの操作に応じて変位して、前記可動部へ動力を伝える変位部材と、
前記操作ノブに取り付けられた第1磁石部、及び、前記変位部材に取り付けられた第2磁石部からなり、前記第1磁石部と前記第2磁石部は、非磁性材料で形成された隔壁を挟んで対面して配置されており、前記第1及び第2の各磁石部が発生する磁力によって、前記操作ノブの操作力を前記変位部材へ伝達する操作力伝達手段とを備えたことを特徴とする内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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