説明

内視鏡用リークテスタ

【課題】連通チューブ内から内視鏡内への漏水発生を防止することができ、しかも極小ピンホール等を迅速に検出することができる内視鏡用リークテスタを提供すること。
【解決手段】内視鏡50内と連通させるための連通チューブ6の先端に、内外連通弁60に対して接続/分離自在な接続口金10が設けられた内視鏡用リークテスタ1において、接続口金10に、内外連通弁60に接続されていない状態の時に連通チューブ6内との間の水の通過を阻止して、内外連通弁60に接続された状態の時には少なくとも空気を通過させる防水手段15,17,25が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡外壁部にピンホール等ができていないかどうかを検査するために用いられる内視鏡用リークテスタに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、使用後に洗浄液等に浸漬して洗浄消毒することができるよう水密に構成されている。そのため、エチレンオキサイドガス滅菌装置等に入れられて周囲が減圧された環境になると、柔軟な湾曲ゴム等が膨らんでパンクするおそれがある。また、外壁のどこかにピンホール等ができているのを知らずに洗浄液等に浸漬すると、内部への水漏れにより総分解等を必要とする重故障が発生するおそれがある。
【0003】
そこで、エチレンオキサイドガス滅菌処理の際や、リークテスタによるピンホール検査の際だけ開いて内視鏡の内外を連通状態にすることができる内外連通弁が内視鏡の外壁部に設けられている。リークテスタは、内視鏡の内部空間を加圧してその後の内圧の変化を計測することにより、ピンホール等の有無を検出するものである(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−60996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リークテスタは一般に、内視鏡内と連通させるための連通チューブを備えており、内視鏡の内外連通弁に対して接続/分離自在な接続口金が連通チューブの先端に取り付けられている。
【0006】
そのような内視鏡用リークテスタを単独で洗浄消毒したり、誤って水中に落下させたり等して連通チューブ内に水が残留する場合がある。すると、内視鏡のピンホール検査のためにリークテスタでまず内視鏡内を加圧する際に、連通チューブ内の水が接続口金を経由して内視鏡内に送り込まれ、重大な故障を引き起こすおそれがある。
【0007】
本発明は、連通チューブ内から内視鏡内への漏水発生を防止することができ、しかも極小ピンホール等を迅速に検出することができる内視鏡用リークテスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡用リークテスタは、気密な内視鏡の外壁部に設けられた内外連通弁に接続されて、内視鏡の内圧を上昇させてその内圧の変化を計測することができる内視鏡用リークテスタであって、内視鏡内と連通させるための連通チューブの先端に、内外連通弁に対して接続/分離自在な接続口金が設けられたものにおいて、接続口金に、内外連通弁に接続されていない状態の時に連通チューブ内との間の水の通過を阻止して、内外連通弁に接続された状態の時には少なくとも空気を通過させる防水手段が配置されているものである。
【0009】
なお、防水手段が、接続口金を内外連通弁に接続することにより開かれて接続口金内と連通チューブ内とを連通させ、その接続を解くことにより閉じる開閉弁であってもよく、その場合、接続口金が内外連通弁に接続された状態の時に開く通気孔が開閉弁に形成されていて、その通気孔が円弧状の長孔であってもよい。
【0010】
また、防水手段が、空気は通過させるが水は通過させない特性を備えた防水フィルタであってもよく、その防水フィルタが、接続口金に着脱自在に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接続口金に、内外連通弁に接続されていない状態の時に連通チューブ内との間の水の通過を阻止して、内外連通弁に接続された状態の時には少なくとも空気を通過させる防水手段が配置されていることにより、接続口金が内外連通弁に接続されていない時に連通チューブ内に水が浸入しないので、接続口金が内外連通弁に接続された時に連通チューブ内から内視鏡内への漏水発生を防止することができ、極小ピンホール等を迅速に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施例に係る内視鏡用リークテスタと内外連通弁との接続部の側面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る内視鏡用リークテスタと内外連通弁とが接続された状態の側面断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る内視鏡用リークテスタの部分分解斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係る内視鏡用リークテスタが内外連通弁に接続された状態における部分分解斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施例に係る内視鏡用リークテスタの部分分解斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施例に係る内視鏡用リークテスタと内外連通弁との接続部の側面断面図である。
【図7】本発明が適用される内視鏡とリークテスタの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図7において、50は内視鏡であり、可撓性挿入部51の基端が操作部52の下端に連結されている。操作部52の上端近傍から後方に延出する連結用可撓管53の先端には、図示されていないビデオプロセッサ兼光源装置に接続されるコネクタ部54が取り付けられている。
【0014】
このような構成を備えた内視鏡50は、各部の外壁が気密に形成されていて、内部はほぼ全体が連通している。そして、通常は閉じていて内視鏡50を気密に保持し、必要に応じて開かせて内視鏡50の内外を連通状態にすることができる内外連通弁60が、コネクタ部54の外壁部に突出して設けられている。
【0015】
1は、内視鏡50の内圧を上昇させてその内圧の変化を計測することにより、内視鏡50の外壁部にピンホール等が無いかどうかを検査することができる内視鏡用リークテスタの一例を示している。内視鏡50の外壁部にピンホール等があると、内視鏡50の内圧を上昇させてもその後に次第に低下する。
【0016】
リークテスタ1には、空気を加圧して送り出すためのゴム球状の手動加圧ポンプ2、圧力計3、手動加圧ポンプ2の出口近くに設けられて加圧空気の流路を大気開放することができる圧力開放弁4等が備えられている。ただし、リークテスタ1がその他の構成のものであっても差し支えない。
【0017】
リークテスタ1には、内視鏡50内と連通させるための連通チューブ6の先端に、内外連通弁60に対して接続/分離自在な接続口金10が設けられている。内視鏡50内への加圧空気の送出や内視鏡50内の圧力計測が、連通チューブ6を介して行われる。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施例の内外連通弁60と接続口金10の構成を詳細に示している。なお、後述する回転弁17と係合突起66等の部分に関しては、あい異なる複数の断面が中心軸線の左右に表示されている。
【0019】
内外連通弁60は、外方に突出する状態にコネクタ部54の外壁に固設された支持外筒61内に、弁体62が外方(即ち、閉じ方向)に向かってコイルスプリング63で付勢された構成を備えている。64は、弁体62に取り付けられたシール用のOリングである。
【0020】
その結果、内外連通弁60は、通常は支持外筒61の内面に形成された斜面(弁座)にOリング64が押し付けられてコネクタ部54の内外の間を閉塞し、コイルスプリング63の付勢力に抗して弁体62を内方に移動させると、コネクタ部54の内部と外部が連通した状態になる。
【0021】
リークテスタ1の接続口金10は、内外連通弁60の支持外筒61の外面に被さるように着脱自在な段付き円筒状の口金筒体11を備えている。13は、支持外筒61の外周面に密接するシール用のOリングである。
【0022】
12は、支持外筒61の側面に突設されたガイドピン65と係合するように口金筒体11に形成されたL字状のガイド溝であり、その形状により、接続口金10が内外連通弁60に着脱される操作の際には、口金筒体11が支持外筒61の軸線周りに例えば90°だけ回転される。
【0023】
口金筒体11内の奥側の位置には、連通チューブ6内と口金筒体11内との間を遮る円盤状の閉鎖弁15が、口金筒体11の内周部に外縁が固着された状態に固定的に配置されている。そのような閉鎖弁15には、軸線と平行方向に固定通気孔16が貫通形成されている。
【0024】
また、閉鎖弁15の外面(即ち、口金筒体11の開口部側の面)側に密着して円盤状の回転弁17が軸線周り方向に回転自在に、但し軸線方向には移動できない状態に配置されている。
【0025】
回転弁17の中心軸線位置に外方に向かって突出形成された弁押しロッド18は、接続口金10が内外連通弁60に接続された状態の時に内外連通弁60の弁体62を押し下げて、内外連通弁60を「開」状態にするためのものである。
【0026】
閉鎖弁15と回転弁17とを分解した状態で図示する図3に示されるように、回転弁17には、軸線と平行方向に可動通気孔19が貫通形成されている。固定通気孔16と可動通気孔19は、閉鎖弁15と回転弁17の各軸線位置から同じ半径上に各々180°対称の二箇所に形成されている。
【0027】
ただし、接続口金10が内外連通弁60に取り付けられていない状態では、固定通気孔16と可動通気孔19とは位置がずれていて、口金筒体11内と連通チューブ6内との間の水等の液体の通過が阻止される。
【0028】
また、回転弁17には、支持外筒61の突端に突設された係合突起66と係合する係合孔20が凹んで形成されている。接続口金10が内外連通弁60に着脱される際に口金筒体11が支持外筒61に対し回転されても、係合孔20が係合突起66に係合することより、接続口金10側において回転弁17だけは内外連通弁60に対し回転しない。
【0029】
その結果、口金筒体11内においては、回転弁17が閉鎖弁15に対して相対的に軸線周り方向に回転された状態になり、図2に示されるように、接続口金10が内外連通弁60に取り付けられた状態では、図4にも示されるように、可動通気孔19と固定通気孔16とが真っ直ぐに連通して、空気等の気体がそこをスムーズに通過できる状態になる。但し、液体も自由に通過することができる。
【0030】
このようにして、接続口金10を内外連通弁60に接続することにより開いて、その接続を解くことにより閉じる開閉弁(防水手段)が閉鎖弁15と回転弁17等とで形成されており、接続口金10が内外連通弁60に取り付けられると、可動通気孔19と固定通気孔16とが真っ直ぐにつながった状態になる。
【0031】
またそれと同時に、図2に示されるように、弁押しロッド18によって内外連通弁60の弁体62が押し開かれるので、連通チューブ6内とコネクタ部54内(即ち、内視鏡50内)とが連通した状態になり、リークテスタ1により、内視鏡50の外壁の微小リーク(即ち、極小ピンホール)を迅速に検出することができる。
【0032】
そして、接続口金10が内外連通弁60から取り外された状態では、図1に示されるように、固定通気孔16と可動通気孔19とがつながっておらず、連通チューブ6内と口金筒体11内との間が閉塞された状態になっている。ただし、完全気密である必要はない。
【0033】
したがって、リークテスタ1を単独で洗浄消毒したり、誤って水中に落下させたり等しても連通チューブ6内に水が浸入しないので、リークテストの際に連通チューブ6内から内視鏡50内への漏水が発生せず、安全にリークテスタ1を使用することができる。
【0034】
図5は、本発明の第2の実施例の開閉弁(閉鎖弁15と回転弁17)を示しており、固定通気孔16と可動通気孔19が各々同一半径上の円弧状の長孔になっている。その他の構成は第1の実施例と同じである。このように構成することにより、接続口金10が内外連通弁60に接続された時の、開閉弁(15,17)の通気性がより高まる。
【0035】
図6は、本発明の第3の実施例の接続口金10と内外連通弁60を示しており、防水手段として、第1の実施例の開閉弁(15,17)に代えて、空気は通過させるが水は通過させない特性を備えた防水フィルタ25が配置されている。内外連通弁60側の係合突起66は不要なので設けられていない。
【0036】
このように構成しても、接続口金10が内外連通弁60に接続されていない状態で連通チューブ6内に水が浸水することを阻止して、リークテストの際に連通チューブ6内から内視鏡50内への漏水を防ぐことができる。
【0037】
なお、防水フィルタ25は、目詰まりした時に単独で取り出して洗浄できることが望ましい。そこで、口金筒体11の内周部と螺合部30で螺合する円盤状の押さえ板27の奥に防水フィルタ25を配置して、押さえ板27を取り外すことにより防水フィルタ25を口金筒体11に対し任意に着脱することができるようにしている。
【0038】
押さえ板27には、通気のための複数の通気孔29が形成されており、押さえ板27に一体に形成された弁押しロッド18の突端部に、押さえ板27を回転させる工具(ドライバ等)を係合させるための工具係合溝31が形成されている。
【符号の説明】
【0039】
1 リークテスタ
6 連通チューブ
10 接続口金
11 口金筒体
15 閉鎖弁(開閉弁、防水手段)
16 固定通気孔
17 回転弁(開閉弁、防水手段)
18 弁押しロッド
19 可動通気孔
20 係合孔
25 防水フィルタ(防水手段)
50 内視鏡
54 コネクタ部
60 内外連通弁
66 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密な内視鏡の外壁部に設けられた内外連通弁に接続されて、上記内視鏡の内圧を上昇させてその内圧の変化を計測することができる内視鏡用リークテスタであって、上記内視鏡内と連通させるための連通チューブの先端に、上記内外連通弁に対して接続/分離自在な接続口金が設けられたものにおいて、
上記接続口金に、上記内外連通弁に接続されていない状態の時に上記連通チューブ内との間の水の通過を阻止して、上記内外連通弁に接続された状態の時には少なくとも空気を通過させる防水手段が配置されていることを特徴とする内視鏡用リークテスタ。
【請求項2】
上記防水手段が、上記接続口金を上記内外連通弁に接続することにより開かれて上記接続口金内と上記連通チューブ内とを連通させ、その接続を解くことにより閉じる開閉弁である請求項1記載の内視鏡用リークテスタ。
【請求項3】
上記接続口金が上記内外連通弁に接続された状態の時に開く通気孔が上記開閉弁に形成されていて、その通気孔が円弧状の長孔になっている請求項2記載の内視鏡用リークテスタ。
【請求項4】
上記防水手段が、空気は通過させるが水は通過させない特性を備えた防水フィルタである請求項1記載の内視鏡用リークテスタ。
【請求項5】
上記防水フィルタが、上記接続口金に着脱自在に配置されている請求項4記載の内視鏡用リークテスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−5090(P2011−5090A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153123(P2009−153123)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】