説明

内視鏡装置、内視鏡装置のCDS回路のタイミング調整方法及びプログラム

【課題】種々の要因で歪む映像信号に対して、CDS回路のタイミングパルスのタイミング調整をすることができる内視鏡装置を提供すること。
【解決手段】内視鏡装置1は、CCD10より出力される映像信号に対して、フィードスルー電圧クランプパルスFPと映像データ電圧クランプパルスVPを用いて相関二重サンプリング処理を行うCDS 部26Aと、映像信号中のフィードスルー期間FTを含む波形部分の2点の電圧を監視する映像信号監視部26Bと、映像信号監視部26Bにより監視された2点の電圧差に基づいて、CDS 部26Aにおける相関二重サンプリング処理のためのフィードスルー電圧クランプパルスFPのタイミングを決定して調整する映像処理回路21とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置、内視鏡装置のCDS回路のタイミング調整方法及びプログラムに関し、特に、相関二重サンプリング回路におけるタイミングパルスのタイミングを適切に調整することができる内視鏡装置、内視鏡装置のCDS回路のタイミング調整方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工業分野及び医療分野において内視鏡装置が広く利用されている。内視鏡装置は、内視鏡本体部(以下、本体部という)と細長い挿入部とから構成されており、電子内視鏡装置では、挿入部の先端に撮像素子を有して、被検査部位を撮像して得られた映像信号は本体部へ送信される。
【0003】
例えば、撮像素子としてCCD を使用する場合、映像信号からリセットノイズや低周波成分のノイズを取り除くために相関二重サンプリング(以下、CDS という)が行われており、そのため、通常は、本体部のアナログフロントエンド部(以下、AFE部という)に、CDS回路が設けられている。
【0004】
電子内視鏡装置では、本体部に接続される電子内視鏡の長さが種類によって異なる場合がある。電子内視鏡の長さが異なると、CDS回路におけるサンプルホールドのタイミングが相違することになるため、CDS回路が有効に機能するように、CDS回路を内視鏡の操作部に設ける提案がある(例えば、特許第2790948号公報参照)。この提案によれば、電子内視鏡の長さの異なる種類毎に本体側で煩雑な調整をする必要がなくなるというメリットがある。
【0005】
また、CDS回路のサンプルホールドのタイミングを、リセットゲートパルスのパルス幅で調整することによって、高品質な画像を得るための技術の提案もある(例えば、特許第4255223号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2790948号公報
【特許文献2】特許第4255223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、電子内視鏡装置の場合、挿入部を相通する信号線の長さ、すなわち撮像素子からCDS回路までの線路長、が長いため、CDS回路に入力される映像信号の波形は、挿入部の長さだけでなく、使用環境温度等の要因によっての歪み、かつ映像信号の波形における歪みの現れ方も要因によって異なる。例えば、挿入部長が長くなればなるほど、波形全体の鈍り具合は大きくなり、使用環境温度が変動すると映像信号波形の位相がずれ、挿入部の先端部の湾曲状態に応じて波形が歪む。
【0008】
従って、内視鏡装置の場合、このような種々の要因による波形の歪みの現れ方を考慮して、CDS回路のタイミングパルスのタイミングを調整しなければならないが、上述した従来の提案に係る技術では、そのような種々の歪み方をする映像信号を考慮したCDS回路のタイミングパルスのタイミング調整は行われていない。
【0009】
特に、近年は、撮像素子の高画素化が進み、映像信号の周波数も高くなっているので、CDS回路のタイミングパルスのタイミング調整が適切に行われないと、高画質な画像を生成することができない。
【0010】
そこで、本発明は、種々の要因で歪む映像信号に対して、CDS回路のタイミングパルスのタイミング調整をすることができる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、被写体を撮像する機能を有する撮像素子が先端部に設けられ、前記撮像素子の駆動信号線と映像信号線が挿通された挿入部の基端部が接続される本体部と、前記本体部に設けられ、前記撮像素子より出力される映像信号に対して、フィードスルー電圧クランプパルスと映像データ電圧クランプパルスを用いて相関二重サンプリング処理を行うCDS 回路と、前記映像信号中のフィードスルー期間を含む波形部分の少なくとも2点の電圧を監視するフィードスルー期間電圧監視部と、前記フィードスルー期間電圧監視部により監視された前記少なくとも2点の電圧差に基づいて、前記CDS回路における前記相関二重サンプリング処理のための前記フィードスルー電圧クランプパルスのタイミングを決定して調整するタイミング調整部と、を有する内視鏡装置を提供することができる。
【0012】
本発明の一態様によれば、内視鏡の挿入部の基端部が接続される本体部に設けられた、相関二重サンプリング処理を行うCDS 回路、フィードスルー期間電圧監視部及びタイミング調整部を用いて、内視鏡装置の前記CDS回路のタイミング調整方法であって、前記CDS回路は、前記撮像素子より出力される映像信号に対して、フィードスルー電圧クランプパルスと映像データ電圧クランプパルスを用いて相関二重サンプリング処理を行い、前記フィードスルー期間電圧監視部は、前記映像信号中のフィードスルー期間を含む波形部分の少なくとも2点の電圧を監視し、前記タイミング調整部は、前記フィードスルー期間電圧監視部により監視された前記少なくとも2点の電圧差に基づいて、前記CDS回路における前記相関二重サンプリング処理のための前記フィードスルー電圧クランプパルスのタイミングを決定して調整する、内視鏡装置のCDS回路のタイミング調整方法を提供することができる。
【0013】
本発明の一態様によれば、内視鏡の挿入部の基端部が接続される本体部に設けられた、相関二重サンプリング処理を行うCDS 回路、フィードスルー期間電圧監視部及びタイミング調整部とを用いて、内視鏡装置の前記CDS回路のタイミング調整方法を実行するプログラムであって、前記CDS回路により、前記撮像素子より出力される映像信号に対して、フィードスルー電圧クランプパルスと映像データ電圧クランプパルスを用いて相関二重サンプリング処理を行う機能と、前記フィードスルー期間電圧監視部により、前記映像信号中のフィードスルー期間を含む波形部分の少なくとも2点の電圧を監視する機能と、前記タイミング調整部により、前記フィードスルー期間電圧監視部により監視された前記少なくとも2点の電圧差に基づいて、前記CDS回路における前記相関二重サンプリング処理のための前記フィードスルー電圧クランプパルスのタイミングを決定して調整する機能と、をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る内視鏡装置によれば、種々の要因で歪む映像信号に対して、CDS回路のタイミングパルスのタイミング調整をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる内視鏡装置の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる、CDS調整回路26の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係わる、CCD駆動回路22の出力信号とCCD10からの映像信号の波形を示す波形図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係わる、CDS部26AによるCDSの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係わる、映像信号入力CCD_INの波形の歪み方を説明するための波形図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係わる、フィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2及び映像データ電圧クランプパルスVPのタイミングを説明するための図である。
【図7】図6に示す映像信号入力CCD_INの波形の拡大図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係わる、映像信号監視部26Bによる映像信号入力CCD_INの傾きを監視する処理を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係わる、フィードスルー差分電圧DIF_OUTと、フィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2及び映像データ電圧クランプパルスVPの各タイミングとの関係を説明するための図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係わる、各タイミングの設定範囲を説明するためのフィードスルー部FTの波形図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係わる補正値テーブルの例を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係わる、映像処理回路21において実行されるタイミング調整処理の流れの例を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係わる、映像処理回路21において実行されるタイミング制御を説明するための図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係わる内視鏡装置1Aの構成を示す構成図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態に係わる、補正値テーブルの例を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係わる、映像処理回路21において実行されるタイミング調整処理の流れの例を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係わる、映像処理回路21において実行されるタイミング調整処理の流れの例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
(全体構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる内視鏡装置の構成を示す構成図である。内視鏡装置1は、本体部2と、細長の挿入部3とを有している。
【0017】
本体部2は、図示しない、メインプロセッサ(CPUを含む)と、その周辺回路と、光源周辺回路、操作部など周辺機能回路、電源周辺回路、及び図示する映像処理部などで構成されている、内視鏡画像を処理する内視鏡装置である。図1では、映像信号を処理する映像信号処理部の一部、特に、CDS 調整に関連する部分のみを示している。
【0018】
挿入部3の基端部は、本体部2に接続されている。挿入部3の先端部4には、図示しない光源などの他に、撮像ユニット5が設けられている。さらに、先端部4の基端側には、湾曲部6が、設けられている。
【0019】
挿入部3は、様々な内視鏡としての機能に必要な構造物、例えば湾曲部6を湾曲させるための湾曲用ワイヤー、先端部光源用信号あるいはライトガイドなど(図示せず)の他に、信号ケーブル7,8を含んで構成されている。なお、図1では、2本の信号ケーブル7,8のみ示されているが、挿入部3には、先端部4の撮像ユニット5の回路制御などに必要な数の信号線(図示せず)が収納されている。
【0020】
先端部4に実装されている被写体を撮像するための撮像ユニット5は、対物光学系としての光学レンズ9、固体撮像素子であるCCD 10、及びCCD10 の映像信号を本体部2へ伝送するためのバッファ回路11を含んで構成されている。すなわち、挿入部3は、被写体を撮像する機能を有する撮像素子であるCCD10が先端部4に設けられ、CCD10の駆動信号線と映像信号線を含む信号ケーブル7,8が挿通されている。
【0021】
内視鏡装置としての本体部2の映像信号処理部は、各種映像処理及びCCD10の駆動制御を行う映像処理回路21と、CCD10を駆動するための駆動信号を出力するCCD 駆動回路22と、映像信号のアナログ処理を行うアナログフロントエンド部(以下、AFE部という)23とを含んで構成されている。AFE部23は、アナログ電圧をデジタル電圧に変換するアナログデジタル変換器(以下、ADCという)24,25と、CDS 調整を行うCDS 調整回路26と、ゲイン調整を行う2つのAGC(自動利得制御器)回路(以下、AGCという)27,28とを含む。
なお、図示しないが、信号ケーブル8とCDS調整回路26の間には、回路を終端する終端回路と、線路ロス分を、AFE部23が処理し易いレベルに増幅するプリアンプとが設けられている。
【0022】
映像処理回路21は、後述する処理を実行する中央処理装置(以下、CPUという)21aと、各種データ及びプログラムを記憶する不揮発性メモリ21bを含む。不揮発性メモリ21bには、後述するタイミングパルス調整プログラム、各タイミングパルスの補正値テーブル、初期値データ等が、記憶されている。
CDS調整回路26には、フィードスルー電圧クランプパルスFP、及び映像データ電圧クランプパルスVPに加えて、フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2が、映像処理回路21から入力されるようになっている。フィードスルー電圧クランプパルスFP及び映像データ電圧クランプパルスVPは、CDS 用のタイミングパルスである。
【0023】
フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2は、映像信号入力CCD_INの監視用のタイミングパルスである。後述するように、映像処理回路21は、これらのフィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2により得られた映像信号入力CCD_INの2つの電圧から、フィードスルー差分電圧DIF_OUTを算出する。映像処理回路21からの4つのタイミングパルスの各タイミング、すなわちフィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2及び映像データ電圧クランプパルスVPの各出力タイミングは、映像処理回路21において、設定あるいは決定される。
AGC27及びADC24は、CDS用であり、AGC28及びADC25は、フィードスルー差分電圧監視用である。
【0024】
CCD10を駆動して、内視鏡検査の検査対象の検査部位を撮像する場合、映像処理回路21から各種CCD 制御信号が出力され、各種CCD 駆動信号は、CCD 駆動回路22で処理された後、信号ケーブル7を介して伝達され、先端部4内のCCD10 に入力される。CCD10は、入力された各種CCD 制御信号に従い、各種動作モードで検査部位の像を光電変換して、映像信号出力CCD_OUTを出力する。
【0025】
映像信号出力CCD_OUTは、CCD10からアナログ信号で出力され、線路ロス補償用のバッファ回路11に入力される。バッファ回路11は、あらかじめ信号ケーブル8の線路インピーダンス及びAFE部23の内部インピーダンスから計算された最適な出力で、映像信号出力BUF_OUTを出力する。この映像信号出力BUF_OUTは、信号ケーブル8を介して伝達され、AFE部23内のCDS 調整回路26に入力され、CDS調整が行われる。
【0026】
なお、挿入部3は、図1において点線で示すように、コネクタ部12を介して、本体部2に対して着脱可能な構成でもよい。その場合、挿入部3のコネクタには、挿入部3の識別情報を保持する識別情報保持部12aが内蔵される。識別情報保持部12aは、例えば、不揮発性のメモリであり、挿入部3の識別情報を記憶する。そして、映像処理回路21は、識別情報保持部12aに記憶された識別情報を読み出して、挿入部3の種類を識別することができる。
さらになお、識別情報保持部12aは、メモリでなくても、抵抗器等の素子でもよい。その場合、その素子の電圧値などの物理量をデジタル信号に変換して、映像処理回路21に供給することによって、映像処理回路21は、その物理量に基づいて、挿入部3の種類を識別する。
【0027】
図2は、CDS調整回路26の構成を示すブロック図である。CDS調整回路26は、CDS部26Aと、映像信号監視部26Bとを有する。
CDS部26Aは、サンプルホールド回路31,32,33と、減算器34とを含む。サンプルホールド回路31には、フィードスルー電圧クランプパルスFPと映像信号入力CCD_INが入力され、サンプルホールド回路31は、フィードスルー電圧クランプパルスFPの入力タイミングで映像信号入力CCD_INをクランプする。
【0028】
サンプルホールド回路32には、映像データ電圧クランプパルスVPとサンプルホールド回路31の出力が入力され、サンプルホールド回路32は、映像データ電圧クランプパルスVPの入力タイミングでサンプルホールド回路31の出力をクランプする。
【0029】
サンプルホールド回路33には、映像データ電圧クランプパルスVPと映像信号入力CCD_INが入力され、サンプルホールド回路33は、映像データ電圧クランプパルスVPの入力タイミングで映像信号入力CCD_INをクランプする。
【0030】
減算器34は、サンプルホールド回路32と33の出力を入力して、サンプルホールド回路33の出力とサンプルホールド回路32の出力の差分を演算して、CDS調整出力CDS_OUTとして出力する。従って、CDS 回路であるCDS部26Aは、本体部2に設けられ、CCD10より出力される映像信号に対して、フィードスルー電圧クランプパルスFPと映像データ電圧クランプパルスVDを用いて相関二重サンプリング処理を行う。
【0031】
映像信号監視部26Bは、サンプルホールド回路41,42,43と、減算器44とを含む。サンプルホールド回路41には、フィードスルー電圧クランプパルスFP1と映像信号入力CCD_INが入力され、サンプルホールド回路41は、フィードスルー電圧クランプパルスFP1の入力タイミングで映像信号入力CCD_INをクランプする。
【0032】
サンプルホールド回路42には、フィードスルー電圧クランプパルスFP2とサンプルホールド回路41の出力が入力され、サンプルホールド回路42は、フィードスルー電圧クランプパルスFP2の入力タイミングでサンプルホールド回路41の出力をクランプする。
【0033】
サンプルホールド回路43には、フィードスルー電圧クランプパルスFP2と映像信号入力CCD_INが入力され、サンプルホールド回路43は、フィードスルー電圧クランプパルスFP2の入力タイミングで映像信号入力CCD_INをクランプする。
【0034】
減算器44は、サンプルホールド回路42と43の出力を入力して、サンプルホールド回路43の出力とサンプルホールド回路42の出力の差分を演算して、フィードスルー差分電圧DIF_OUTとして出力する。
【0035】
CDS調整出力CDS_OUTは、AGC27でゲイン調整され、ADC24でデジタル信号に変換されて、映像処理回路21に入力される。フィードスルー差分電圧DIF_OUTは、AGC28でゲイン調整され、ADC25でデジタル信号に変換されて、映像処理回路21に入力される。
(CCD駆動と映像信号の出力)
ここで、CCD10の駆動信号と映像信号について説明する。
図3は、CCD駆動回路22の出力信号とCCD10からの映像信号の波形を示す波形図である。なお、CCD 10を駆動するための信号には、リセットゲートパルスRG、水平転送パルスHだけでなく、垂直転送パルス(Vn:n=1、2、、、)等もあるが、ここでは、CDS の説明のため、リセットゲートパルスRG、水平転送パルスHとCCDの映像信号について説明する。
【0036】
CCD駆動回路22は、図3に示すように、一画素期間T0毎に水平転送パルスHとリセットゲートパルス出力RG_OUTを出力するが、CCD10に入力されるリセットゲートパルス入力RG_INの波形は、信号ケーブル7の線路ロスにより、鈍ってしまう。
【0037】
一方、CCD10から一画素期間T0毎に出力される映像信号出力CCD_OUTの波形は、リセットゲートパルスRGのカップリング部RC、フィードスルー部FT及び映像データ部VDを含む。
バッファ回路11から出力される映像信号出力BUF_OUTの波形は、映像信号出力CCD_OUTの波形と同様の形状を有する。
【0038】
映像信号出力BUF_OUTは、信号ケーブル8を介してAFE部23のCDS調整回路26に入力されるが、信号ケーブルの線路ロスの影響を受け、CDS調整回路26に入力される映像信号入力CCD_INの波形は、鈍ってしまう。
この映像信号入力CCD_INの波形の鈍り具合は、ケーブル長及びケーブル径(すなわち線路長及び線路径)だけでなく、ケーブル間でのノイズ成分、挿入部3の湾曲状態による高周波成分、内視鏡の使用温度などによって異なる。
(CDS部)
図4は、CDS部26AによるCDSの動作を説明するためのタイミングチャートである。CDS部26Aには、映像信号入力CCD_INと、フィードスルー電圧クランプパルスFPと、映像データ電圧クランプパルスVPとが入力される。
【0039】
フィードスルー電圧クランプパルスFPが映像信号入力CCD_IN のフィードスルー部FTにおけるあるタイミングで出力され、そのタイミングで映像信号入力CCD_INは、基準電圧としてクランプされる。
映像データ電圧クランプパルスVPが映像信号入力CCD_IN の映像データ部VDにおけるあるタイミングで出力され、そのタイミングで映像信号入力CCD_INはクランプされる。
【0040】
図4における点P1,P2,P3は、それぞれ図2のサンプルホールド回路31,32,33の出力電圧を示す。減算器34の出力するCDS調整出力CDS_OUTは、AGC27においてゲイン調整され、AGC27は、AGC出力の遅延時間d1だけ遅れて、ACG調整された信号AGC_OUTを出力する。信号AGC_OUTは、ADC24に入力され、ADC24は、アナログ/デジタル変換時間d2後、デジタルのゲイン調整されたCDS調整出力ADC_CDS_OUTを出力する。
(映像信号監視部26B)
図5は、映像信号入力CCD_INの波形の歪み方を説明するための波形図である。図5に示すように、CCD10は、リセットゲートパルスRGに応じて、映像信号出力CCD_OUTを出力する。映像データ部VDにおける波形の形状すなわち電圧レベルは、点線の矢印A1で示すように、当該画素の輝度に応じて変化する。
【0041】
AFE部23に入力される映像信号入力CCD_INの波形の鈍り具合は、内視鏡の挿入部3は細長いため、線路長等の各種要因によって異なっている。
例えば、挿入部3の長さが長くなればなるほど、線路ロスによる影響が大きくなるので、図5の波形CCD_IN(A)のように、映像信号入力CCD_INの波形の鈍り方が大きくなる。このような大きな歪みがあると、フィードスルー部FT及び映像データ部VDのそれぞれの期間は短くなる。従って、フィードスルー電圧クランプパルスFPと映像データ電圧クランプパルスVPのタイミングが固定されていると、挿入部3の長さが長くなればなるほど、フィードスルー電圧クランプパルスFPと映像データ電圧クランプパルスVPのタイミングが適切なタイミング位置から大きくズレてしまう。
【0042】
なお、このズレ量は、挿入部3の長さと、信号ケーブル8の径、線材などによって決まるため、例えば、同一内視鏡本体部に対して、挿入部を交換して使用するような用途の場合、このズレ分に応じて、内視鏡の映像品質は悪化する。
【0043】
更に、挿入部3が長くなると、図5の波形CCD_IN(D)のように、よりノイズの影響を受けやすくなり、映像信号入力CCD_INの波形へのノイズ成分の影響が顕著になってくるという問題もある。
【0044】
また、先端部4にCCD10を搭載する内視鏡装置において、CCD10の特性上、使用環境温度により、映像信号入力CCD_INの位相が、波形CCD_IN(B)のように、変動するという問題がある。映像信号入力CCD_INの位相の変動により、フィードスルー電圧クランプパルスFPと映像データ電圧クランプパルスVPのそれぞれのタイミングがズレるので、そのズレた分に応じて、内視鏡の映像品質は悪化する。
【0045】
さらにまた、内視鏡装置では、挿入部3の先端の視野方向は、湾曲部6を湾曲させることにより、変更できる。例えば映像信号線を同軸ケーブルで構成していた場合、同軸ケーブルの湾曲状態により特性インピーダンス値は変動する。映像信号線の特性インピーダンス値の変動は、映像信号入力CCD_INの波形の歪みに影響する。通常、内視鏡検査は、挿入部3を湾曲させながら行われることが多いので、その湾曲状態に応じて、映像信号入力CCD_INの波形は変化する。
【0046】
図5において、波形CCD_IN(C)が、点線A2で示すように、リセットゲートパルスRGのカップリング部RCのフィードスルー部FTに近い部分の波形が歪み、フィードスルー部FTの期間が短くなったり、波形CCD_IN(C) 映像データ部VDの波形が、点線A3で示すように歪み、映像データ部VDの期間が短くなる。従って、このような歪みにより、フィードスルー電圧クランプパルスFPと映像データ電圧クランプパルスVPのそれぞれのタイミングがズレるので、そのズレた分に応じて、内視鏡の映像品質は悪化する。
【0047】
なお、信号ケーブルは、信号伝送に必要な径を有しているが、挿入部には細径化が要求される。このため、この信号ケーブルの径は十分太く取れない場合が多く、信号ケーブルの径を太くすることにより、このような問題を解決する方法は選択し難いという状況もある。
上述した問題は、近年の撮像素子の高画素化に伴い、映像信号の周波数が高くなるので、より顕著になる。
【0048】
このような歪みを有する映像信号入力CCD_INの波形に対して、適切なタイミングを決定するために、フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2が利用される。まず、フィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2及び映像データ電圧クランプパルスVPのタイミングの関係について説明する。
図6は、フィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2及び映像データ電圧クランプパルスVPのタイミングを説明するための図である。
【0049】
線路ロスの影響である程度歪んだ波形を有する映像信号入力CCD_INは、4つのクランプパルスFP,FP1,FP2,VPによりクランプされる。フィードスルー電圧クランプパルスFPの出力タイミング及び映像データ電圧クランプパルスVPの出力タイミングは、所定の周期で、ここでは、映像のフレーム毎に、調整される。この調整方法については、後述する。
【0050】
なお、CDS調整のタイミングは、フィードスルー電圧クランプパルスFPの出力タイミング及び映像データ電圧クランプパルスVPの出力タイミングが更新される点を除いては、従来のCDS調整処理と同様である。
【0051】
また、フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2は、映像信号入力CCD_INのフィードスルー期間監視用のタイミングパルスである。フィードスルー電圧クランプパルスFP1のタイミングは、図6に示すように、リセットゲートパルスRGのカップリング部RC側で設定され、フィードスルー電圧クランプパルスFP2のタイミングは、映像データ部VD 側で設定される。なお、フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2の各タイミングは、初期値は予め決められているが、その後は、後述するタイミング調整制御により、調整される。
【0052】
映像処理回路21は、タイミング調整制御において、現在の映像信号入力CCD_INの波形状態を解析し、最適なフィードスルー電圧クランプパルスFPと映像データ電圧クランプパルスVPのそれぞれのタイミングを決定する。フィードスルー電圧クランプパルスFPと映像データ電圧クランプパルスVPの各タイミングも、初期値は予め決められているが、その後は、後述するタイミング調整制御により、調整される。
【0053】
図7は、図6に示す映像信号入力CCD_INの波形の拡大図である。映像信号入力CCD_INは、上述した各種要因、例えば、挿入部長、使用環境温度、湾曲動作などによって、歪み、図6及び図7に示すように、フィードスルー部FTの波形が大きく傾斜する場合がある。
【0054】
図7に示すように、フィードスルー電圧クランプパルスFP1が最初に映像信号入力CCD_INをクランプし、そのクランプ電圧V-FP1が、サンプルホールド回路41,42において保持される。フィードスルー電圧クランプパルスFP2がフィードスルー電圧クランプパルスFPに続いて出力され、そのクランプ電圧V-FP2が、サンプルホールド回路43において保持される。クランプ電圧V-FP1は、図2における点P4,P5に出力され、クランプ電圧V-FP2は、図2における点P6に出力される。上述した減算器44が、クランプ電圧V-FP1とクランプ電圧V-FP2の差、すなわちフィードスルー差分電圧DIF_OUTを出力する。
【0055】
図7に示すように、フィードスルー差分電圧DIF_OUTは、フィードスルー部FTのフィードスルー電圧クランプパルスFP1 とFP2 の間の傾き量、すなわち平坦具合を示している。言い換えれば、フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2は、映像信号入力CCD_INの波形中のフィードスルー部FTの傾きを検出するためのパルス信号である。
【0056】
なお、本実施の形態では、映像信号監視部26Bは、映像信号中のフィードスルー期間であるフィードスルー部FTを含む波形部分の2点の電圧を監視するが、3点以上の電圧を監視して、複数の傾きの平均値を求める等するようにしてもよい。従って、映像信号監視部26Bは、映像信号中のフィードスルー期間を含む波形部分の少なくとも2点の電圧を監視するフィードスルー期間電圧監視部を構成する。
【0057】
図8は、映像信号監視部26Bによる映像信号入力CCD_INの傾きを監視する処理を説明するためのタイミングチャートである。上述したように、映像信号監視部26Bには、映像信号入力CCD_INと、フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2が入力される。
【0058】
フィードスルー電圧クランプパルスFP1とFP2は、それぞれ、映像信号入力CCD_IN のフィードスルー部FTの所定のタイミングで出力され、映像信号入力CCD_INは、それぞれのタイミングでクランプされる。
【0059】
一画素期間T0毎に、クランプ電圧V-FP1とクランプ電圧V-FP2の差であるフィードスルー差分電圧DIF_OUTは、出力される。そして、フィードスルー差分電圧DIF_OUTは、AGC28においてゲイン調整され、AGC28は、AGC出力の遅延時間d1だけ遅れて、ACG調整された信号AGC_OUTを出力する。信号AGC_OUTは、ADC25に入力され、ADC25は、アナログ/デジタル変換時間d2後、デジタル信号で、ゲイン調整されたフィードスルー期間差分電圧ADC_DIF_OUTを出力する。
【0060】
映像処理回路21は、一画素期間T0毎に更新されるフィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)を常時監視することによりフィードスルー部FTの状態、すなわち傾き量、を判別する。
【0061】
なお、本実施の形態では、各タイミングパルスのタイミング調整は、フレーム毎に行われ、フレーム内の所定の画素(あるいは所定の一部の複数の画素でもよい)について取得されたフィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)の移動平均値が利用される。すなわち、映像処理回路21は、1フレーム毎に取得されたフィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)の移動平均値を、タイミング調整用の取得差分電圧値とする。
【0062】
さらなお、タイミング調整部である映像処理回路21は、所定の周期で、フィードスルー電圧クランプパルスFPと映像データ電圧クランプパルスVPのタイミングを調整し、2点の電圧差を示すフィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)は、フィードスルー期間電圧監視部である映像信号監視部26Bにより監視して得られた2点の電圧から算出された移動平均値であるが、各タイミングパルスを調整する所定の周期と、移動平均値の算出周期は、同じでも、異なっていてもよい。これは、CPU21aの演算処理の能力が高くない場合にも、各タイミングパルスの調整と、移動平均値の算出とが可能となるというメリットがある。
【0063】
そして、映像処理回路21は、その判別結果に基づいて、フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2,FP及び映像データ電圧クランプパルスVPのそれぞれのタイミングを調整する。すなわち、映像処理回路21は、フィードスルー期間電圧監視部により監視された前記少なくとも2点の電圧差に基づいて、CDS部26Aにおける相関二重サンプリング処理のためのフィードスルー電圧クランプパルスFP及び映像データ電圧クランプパルスVPのタイミングを決定して、フィードスルー電圧クランプパルス及び映像データ電圧クランプパルスVPのタイミングを調整するタイミング調整部を構成する。
(映像信号入力CCD_INの傾き)
フィードスルー期間差分電圧DIF_OUTと映像信号入力CCD_INの波形状態との関係について説明する。図9は、フィードスルー差分電圧DIF_OUTと、フィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2及び映像データ電圧クランプパルスVPの各タイミングとの関係を説明するための図である。
【0064】
図9に示すように、基本的に、フィードスルー差分電圧DIF_OUT(=V-FP1−V-FP2)が+(プラス)の場合(すなわちV-FP1>V-FP2の場合)は、フィードスルー電圧監視用のフィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2のタイミングは、リセットゲートパルスRGのカップリング部RC側に接近していることを意味している。逆に、フィードスルー差分電圧DIF_OUT(=V-FP1−V-FP2)が−(マイナス)の場合(すなわちV-FP1<V-FP2の場合)は、フィードスルー電圧監視用のフィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2のタイミングは、映像データ部VD側に接近していることを意味している。
【0065】
また、フィードスルー差分電圧DIF_OUT(=V-FP1−V-FP2)が0(ゼロ)の場合(すなわちV-FP1=V-FP2の場合)は、フィードスルー電圧監視用のフィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2のタイミングは、フィードスルー部FTにあることを示している。
【0066】
なお、フィードスルー差分電圧DIF_OUTが0(ゼロ)であるか否かは、フィードスルー差分電圧DIF_OUT(=V-FP1−V-FP2)の絶対値が、所定の閾値VTH以上であるか否かにより判定される。その絶対値が所定の閾値VTH以上であるとき、フィードスルー差分電圧DIF_OUTは、+(プラス)又は−(マイナス)と判定される。この判定は、映像処理回路21において、フィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)に基づいて行われる。
【0067】
図9の表において、黒い三角のマークは、フィードスルー電圧クランプパルスFPのタイミングを示し、白い三角のマークは、映像データ電圧クランプパルスVPのタイミングを示している。
(クランプパルスFP,FP1,FP2,VPのタイミングの設定と範囲)
(初期値)
フィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2と映像データ電圧クランプパルスVPの各タイミングの初期値は、予め設定されている。例えば、挿入部3の信号線長、信号線径、信号線材等に基づいて予め決定された値が、各パルスタイミングの初期値として、映像処理回路21の不揮発性メモリ21bに記憶されている。
【0068】
なお、挿入部3が本体部2に着脱可能で、本体部2に、コネクタ部12を介して種々の挿入部3が接続可能な場合は、不揮発性メモリ21bに、挿入部3の種類毎に設定された複数の初期値を記憶させておくようにしてもよい。そして、映像処理回路21は、上述した識別情報保持部12aに記憶されている識別情報に基づいて、接続されている挿入部3の種類を判別し、判別された種類に対応する初期値を、不揮発性メモリ21aからに読み出すようにしてもよい。
各パルスタイミングの初期値は、例えば、リセットゲートパルスRGの出力タイミングからの時間として設定されている。
(タイミングの設定範囲及び条件)
フィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2と映像データ電圧クランプパルスVPの各タイミングの設定範囲及び条件について説明する。
【0069】
図10は、各タイミングの設定範囲を説明するためのフィードスルー部FTの波形図である。図10において、波形W1は、映像信号入力CCD_INの遅延量が最も小さいときの映像信号入力CCD_INの波形であり、波形W2は、映像信号入力CCD_INの遅延量が最も大きいときの映像信号入力CCD_INの波形である。図10において、縦軸が電圧であり、横軸は時間である。なお、図10は、説明のために、極端に示している。
【0070】
この映像信号入力CCD_INの遅延量が最小の時と最大の時の差が、映像信号入力CCD_INの最大遷移幅TMAXである。映像信号入力CCD_INの遅延量が最小の時と最大の時の値は、例えば、挿入部3を想定される環境において、湾曲、温度等のパラメータを最大及び最小にしたときの実測により決定される。
【0071】
図10において、映像信号入力CCD_INの遅延量が最小の時における、フィードスルー電圧クランプパルスFP1のタイミングT1と、フィードスルー電圧クランプパルスFP2のタイミングT2が決定される。タイミングT1とT2の間隔FT1は、予め決められている。同様に、映像信号入力CCD_INの遅延量が最大の時における、フィードスルー電圧クランプパルスFP1のタイミングT3と、フィードスルー電圧クランプパルスFP2のタイミングT4が決定される。タイミングT3とT4の間隔FT2は、間隔FT1と同じ時間である。
【0072】
よって、フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2のタイミングの設定範囲は、次の通りである。
FP1≧T1 ・・・(式1)
FP2≦T4 ・・・(式2)
すなわち、フィードスルー電圧クランプパルスFP1のタイミングは、タイミングT1以上であり、フィードスルー電圧クランプパルスFP2のタイミングは、タイミングT4以下である。そして、フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2の間隔は一定である。
【0073】
また、フィードスルー電圧クランプパルスFPのタイミングの条件は、次の通りである。
FP1<FP<FP2 ・・・(式3)
すなわち、フィードスルー電圧クランプパルスFPのタイミングは、FP1のタイミングよりも後でかつFP2のタイミングよりも前である。フィードスルー電圧クランプパルスFPは、フィードスルー電圧クランプパルスFP1とFP2の間の所定のタイミング位置で出力されるが、ここでは、フィードスルー電圧クランプパルスFPは、フィードスルー電圧クランプパルスFP1とFP2の間の真ん中のタイミングで出力される。よって、フィードスルー電圧クランプパルスFPは、フィードスルー電圧クランプパルスFP1に対して所定の位相差PH1で出力される。
【0074】
さらに、映像データ電圧クランプパルスVPのタイミングの条件は、フィードスルー電圧クランプパルスFPのタイミングから所定の時間経過後のタイミングで出力されるという条件である。よって、映像データ電圧クランプパルスVPは、フィードスルー電圧クランプパルスFPに対して所定の位相差PH2で出力される。
従って、フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2 間の位相差は、挿入部3内の信号ケーブル8の線路長、線路径、線路線材等により予め決められた位相差で常に固定である。また、フィードスルー電圧クランプパルスFP とFP1,FP2 との位相差、及び、映像データ電圧クランプパルスVP とフィードスルー電圧クランプパルスFP 間の位相差も固定である。よって、フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2については、タイミングT1とT4の範囲が、設定範囲RS1であり、フィードスルー電圧クランプパルスFPについては、設定範囲RS1とに位相差PH1によって決定される範囲が、設定範囲RS2であり、映像データ電圧クランプパルスVPについては、設定範囲RS1とに位相差PH1と位相差PH2とによって決定される範囲が、設定範囲RS3である。
【0075】
なお、挿入部3が本体部2に着脱可能で、本体部2に、コネクタ部12を介して種々の挿入部3が接続可能な場合は、不揮発性メモリ21bに、挿入部3の種類毎に設定された各種の位相差データを複数を記憶させておくようにしてもよい。そして、映像処理回路21は、上述した識別情報保持部12aに記憶されている識別情報に基づいて、接続されている挿入部3の種類を判別し、判別された種類に対応する位相差データを、不揮発性メモリ21aからに読み出すようにしてもよい。
(タイミング調整用の補正値テーブル)
タイミング調整処理の説明の前に、タイミング調整用の補正値テーブルについて説明する。後述するように、タイミング調整処理において、映像信号入力CCD_INの波形を解析して、その解析結果に基づいて、フィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2及び映像データ電圧クランプパルスVPの位相が調整される。その位相調整のために、ここでは、位相を補正するための補正値を記憶する補正値テーブルが用いられる。
【0076】
図11は、補正値テーブルの例を示す図である。補正値テーブルTBL1は、フィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)に対応して、各補正値tf,tm,tdを記憶している。補正値テーブルTBL1は、不揮発性メモリ21bに記憶される。すなわち、補正値テーブルTBL1は、少なくとも2点の電圧差であるフィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)に応じた補正値を記憶する補正値テーブルであり、タイミング調整部である映像処理回路21は、フィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)に基づいて、補正値テーブルTBL1を参照することによって、各タイミングパルスのタイミングを決定する。
【0077】
補正値tdは、フィードスルー電圧クランプパルスFPの補正値であり、補正値tmは、フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2の補正値であり、補正値tdは、映像データ電圧クランプパルスVPの補正値である。
【0078】
上述したように、本実施の形態では、フィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)の移動平均値を用いるので、図11に示す補正値テーブルTBL1の一番左の列には、周期すなわち時刻iごとに計算されるフィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)の移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)が設定され、その移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)毎に、各タイミングパルスの補正値tf,tm,tdが、記憶されている。
【0079】
移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)毎の各補正値tf,tm,tdは、例えば、挿入部3の信号線長、信号線径及び信号線タイプをパラメータとして、補正値テーブルTBL1の補正値を設定する者が実際の映像や波形を見ながら、ノイズが最も小さいタイミングを決定し、そのタイミングから決定される。移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)毎の各補正値tf,tm,tdを決定することにより、補正値テーブルTBL1は作成される。
【0080】
図11の補正値テーブルTBL1は、挿入部3の種類毎の補正値データテーブルtb1,tb2,・・・tbjを有している。jは整数である。補正値データテーブルtb1,tb2,・・・tbjは、挿入部3の信号線長、信号線径及び信号線タイプによって、一意的に決定される。よって、挿入部3が本体部2に対して固定されているときには、接続されている挿入部3に対応する特定の補正値データテーブルが選択される。
【0081】
なお、補正値テーブルTBL1は、信号線長、信号線径及び信号線材の特性インピーダンス(信号線タイプ)に応じて補正値データテーブルtb1,tb2,・・・tbjが分けられているが、補正値データテーブルtb1,tb2,・・・tbjは、信号線長、信号線径あるいは信号線材の特性インピーダンスの少なくとも1つ毎に設けてもよい。
【0082】
また、挿入部3が本体部2に対して着脱可能な場合は、映像処理回路21は、上述したように、接続されている挿入部3の種類を識別情報保持部12aの識別情報に基づいて判定し、その判定結果から接続されている挿入部3に対応する特定の補正値データテーブルが選択される。
【0083】
図11において、移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)は、上述した所定の閾値VTHに対応する範囲βは、補正値を0(ゼロ)とし、その範囲βを±(プラスマイナス)5(mV)の電圧差の単位で12の範囲に分けられている。その分けられた各範囲毎に、各補正値tf,tm,tdが設定されている。範囲βは、最小差分電圧、言い換えれば、傾きの最小値を意味する。
(フィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)の移動平均)
映像処理回路21は、CDS 調整回路26より出力されるフィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)(デジタル値)を入力し、フィードスルー期間FT内の単発的なノイズ成分を除去するために、移動平均計算処理を実行する。
【0084】
上述したように、各タイミングパルスのタイミング調整は、フレーム毎に行われる。フィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)は、各フレーム内のある画素について取得される。
【0085】
映像処理回路21は、各フレームについて取得されたフィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)の移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)を計算する。ここでは、移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)は、n枚(nは、所定の整数)のフレームのフィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)の平均値である。nは、内視鏡装置1毎、あるいは挿入部3毎に設定される。例えば、着脱式の挿入部3の場合は、nの値は、挿入部3の識別情報保持部12aに保持され、本体部2の映像処理回路21により、移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)の計算のために読み出されて使用される。
【0086】
具体的な移動平均値の計算方法について説明する。n枚のフレームが揃うまでは、次のようにして、移動平均値を計算する。
最初の周期i(=0)のとき、フィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)とCDS調整出力ADC_CDS_OUTは、それぞれ次の式4と式5により算出される値である。
ADC_DIF_OUT(0) = κ(VFP1(0)-VFP2(0)) ・・・(式4)
ADC_CDS_OUT(0) = η・CDS_OUT(0) ・・・(式5)
ここで、κは、AGC28でのゲインであり、ηは、AGC27でのゲインである。
【0087】
以降の周期i(i=1〜(n−1))のとき、フィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)とCDS調整出力ADC_CDS_OUTは、それぞれ次の式6と式7により算出される値である。
ADC_DIF_OUT(i) = κ(VFP1(i)-VFP2(i)) ・・・(式6)
ADC_CDS_OUT(i) = η・CDS_OUT(i) ・・・(式7)
従って、周期i(i=1〜(n−1))のときの、移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)は、次の式8により算出される値である。
(SMA(ADC_DIF_OUT(i))=(ADC_DIF_OUT(0)+ADC_DIF_OUT(1)+・・・
+ADC_DIF_OUT(i)) / i ・・・(式8)
そして、それ以降周期の(i>n)のときの、移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)は、次の式9により算出される値である。
(SMA(ADC_DIF_OUT(i)) = ( ADC_DIF_OUT(i-n)+ ADC_DIF_OUT(i-n+1)+・・・
+ADC_DIF_OUT(i) ) / n ・・・(式9)
以上のようにして、映像処理回路21、具体的にはCPU21aは、n枚のフレームのフィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)から移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)を算出し、フレーム毎に、その算出された移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)を用いて、タイミング調整を行う。
(タイミング調整処理)
図12は、映像処理回路21において実行されるタイミング調整処理の流れの例を示すフローチャートである。図12の処理は、映像処理回路21のCPU21aによって実行される。
映像処理回路21は、前式で所定の周期毎、ここではフレーム毎に計算されたフィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)の移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT(i)を計算し、次周期以降のフィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2及び映像データ電圧クランプタイミングVPの各タイミングを、前述の補正値テーブルTBL1を参照し決定する。
【0088】
図12のフローチャートを説明する前に、図12の処理によるタイミング制御の大まかな処理について説明する。
図13は、映像処理回路21において実行されるタイミング制御を説明するための図である。図13において、黒い三角のマークは、フィードスルー電圧クランプパルスFPのタイミングを示し、白い三角のマークは、映像データ電圧クランプパルスVPのタイミングを示している。なお、以下、補正値Tfは、フィードスルー電圧クランプパルスFP についての補正値であり、補正値Tdは、映像データ電圧クランプタイミングVP についての補正値であり、補正値Tmは、フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2 についての補正値である。
【0089】
サンプルn個のサンプル間における移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)が+(プラス)の場合は、映像処理回路21は、+(プラス)の補正値を加算して各タイミングを遅れるように制御する。
【0090】
サンプルn個のサンプル間における移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)が−(マイナス)の場合は、映像処理回路21は、−(マイナス)の補正値を加算して各タイミングを速めるように制御する。
【0091】
そして、サンプルn個のサンプル間における移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)が0、すなわち所定の閾値Th以下の場合は、映像処理回路21は、次の周期の各タイミングを補正しないように制御する。
【0092】
図12のフローチャートに戻り、CPU21aは、まず、内視鏡装置1が起動されると、CPU21aは、不揮発性メモリ21bから各タイミングパルスの初期値を読み出して、その初期値に基づいて、フィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2及び映像データ電圧クランプパルスVPを出力して、映像処理を開始する。映像処理が開始されると、CPU21aは、図12のタイミング調整処理を実行する。図12の処理は、所定の周期毎に、ここではフレーム毎に実行される。
【0093】
始めに、CPU21aは、フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2により得られたフィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)を取得し、移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)を計算する(S1)。移動平均値SMA(ADC_DIF_OUT)の算出方法は、上述した通りである。
【0094】
CPU21aは、フィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)に基づいて、挿入部3に対応する補正値データテーブルtbを参照して、各タイミングパルスの補正値tf,tm,tdを取得する(S2)。
【0095】
CPU21aは、取得した補正値tf,tm,tdに基づいて補正した各タイミングパルスFP1,FP2,FP,VPのタイミングが、それぞれ図10を用いて説明した設定範囲RS1,RS2,RS3を超えているか否かを判定する(S3)。例えば、フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2の場合、補正後のフィードスルー電圧クランプパルスFP1のタイミングがタイミングT1以上で、かつ補正後のフィードスルー電圧クランプパルスFP2のタイミングがタイミングT4以下であるか否かが判定される。
【0096】
フィードスルー電圧クランプパルスFP1,FP2,FP,VPのタイミングがそれぞれの設定範囲RS1,RS2,RS3を超えているとき(S3:NO)、CPU21aは、設定範囲を超えているタイミングパルスのタイミングを下限値あるいは上限値に変更するように、補正値データを修正する(S4)。例えば、フィードスルー電圧クランプパルスFP1のタイミングが下限値T1を下回ってしまうときは、フィードスルー電圧クランプパルスFP1のタイミングが下限値T1になるように、フィードスルー電圧クランプパルスFP1用の補正値tmは修正される。また、フィードスルー電圧クランプパルスFP2のタイミングが上限値T4を超えてしまうときは、フィードスルー電圧クランプパルスFP2のタイミングが上限値T4になるように、フィードスルー電圧クランプパルスFP2用の補正値tmは修正される。
【0097】
各タイミングパルスのタイミングがそれぞれの設定範囲を超えていないとき(S3:YES)、及びS4の後、処理は、S5に移行する。
CPU21aは、フィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2が所定の条件、具体的には上記の式3、を満足するか否かを判定する(S5)。
【0098】
フィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2が式3を満足しないとき(S5:NO)、CPU21aは、所定の条件を満たすように、補正値データを修正する(S6)。修正方法としては、CPU21aは、式3を満たすような補正値データを算出して求める、あるいはフィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2のタイミングを前回のタイミングになるような補正値データを算出して求める。
【0099】
フィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2が所定の条件を満たすとき(S5:YES)、及びS6の後、処理は、S7へ移行する。
CPU21aは、フィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2及び映像データ電圧クランプパルスVPの各タイミングを、次の式により計算して決定する(S7)。
FP(i) =FP(i-1) +Tf(i-1) ・・・(式10)
FP1(i)=FP1(i-1) +Tm(i-1) ・・・(式11)
FP2(i)=FP2(i-1) +Tm(i-1) ・・・(式12)
VP(i) =VP(i-1) +Td(i-1) ・・・(式13)
ここで、iは、調整処理対象の周期(ここではフレーム)を示し、(i-1)は、iよりも1つ前の周期を意味する。補正値Tf(i-1)は、周期すなわち時刻(i−1)における、フィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)(移動平均値)から補正値テーブルTBL1を参照して得られるフィードスルー電圧クランプパルスFPの調整用位相差(時間)である。補正値Tm(i-1)は、周期すなわち時刻(i−1)における、フィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)(移動平均値)から補正値テーブルTBL1を参照して得られるフィードスルー期間監視用パルスFP1,FP2の調整用位相差(時間)である。補正値Td(i-1)は、周期すなわち時刻(i−1)における、フィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)(移動平均値)から補正値テーブルTBL1を参照して得られる映像データ電圧クランプパルスVPの調整用位相差(時間)である。
【0100】
すなわち、S7では、次の調整周期(i)におけるタイミングは、その前の周期(i-1)のタイミングを、補正値テーブルTBL1を参照して得た補正値(あるいはその修正された補正値)で修正される。
【0101】
なお、ここでは、フィードスルー電圧クランプパルスFP1とFP2の各タイミングは、共に変動するが、例えばフィードスルー電圧クランプパルスFP2のタイミングは固定し、フィードスルー電圧クランプパルスFP1のみを修正するようにしてもよい。すなわち、映像信号監視部26Bが監視する複数の点のうち1つのタイミングは、固定されている。
【0102】
S7の処理の後、CPU21aは、計算された各タイミングパルスのタイミングでタイミングを調整して、各タイミングパルスを出力する(S8)。
【0103】
以上の処理が、所定の周期毎に(例えば、1フレーム毎に)実行されるので、挿入部の長さ、使用環境温度、湾曲状態等の種々の要因で歪む映像信号に対して、適切なタイミングでサンプルホールドすることができるように、CDS回路であるCDS部26Aのフィードスルー電圧クランプパルスFP及び映像データ電圧クランプパルスVPのタイミング調整が行われる。
【0104】
従って、挿入部3の長さが長く、CDS回路に入力される映像信号入力CCD_INの波形が鈍って、フィードスルー期間FTが短くなっても、あるいは使用環境温度が変化して、フィードスルー期間FTと映像データ電圧クランプパルスVPの位相がズレても、あるいは挿入部3の湾曲部6の湾曲動作により同軸ケーブルの湾曲状態により特性インピーダンス値が変動しても、上述した内視鏡装置1では、CDS部26Aのフィードスルー電圧クランプパルスFP及び映像データ電圧クランプパルスVPのタイミング調整が適切に調整されるので、画質の劣化のない内視鏡画像を得て表示することができる。
【0105】
なお、上述した例では、フィードスルー電圧クランプパルスFP及び映像データ電圧クランプパルスVPの2つのタイミングを、それぞれの補正値により補正して調整しているが、フィードスルー電圧クランプパルスFPのタイミングと映像データ電圧クランプパルスVPのタイミングの間隔を固定して、フィードスルー電圧クランプパルスFPのタイミングのみを補正値により補正するようにし、映像データ電圧クランプパルスVPのタイミングは、フィードスルー電圧クランプパルスFPのタイミングに基づいて補正するようにしてもよい。
【0106】
また、内視鏡装置の使用環境温度が大きく変化しないような場合は、映像データ電圧クランプパルスVPのタイミングを固定して、フィードスルー電圧クランプパルスFPのタイミングのみを補正値により補正するようにしてもよい。
【0107】
さらになお、上述したように、各タイミングパルスは、使用環境温度によって、適切なタイミングが異なる。そこで、温度に応じた各タイミングパルスの初期値を予め不揮発性メモリ21bに記憶しておくようにしてもよい。そして、図1の内視鏡装置1の挿入部3には温度センサが設けられていないが、後述する第2の実施の形態に示すような、CCD10の温度を検出するための温度センサを先端部4に設け、その温度センサにより検出された温度情報に基づいて、不揮発性メモリ12bの温度に応じた初期値情報を参照して、タイミングパルスの初期値を決定するようにしてもよい。
【0108】
また、上述した例では、所定の周期として、1フレームを1周期としているが、例えば、0.1秒、0.5秒等の時間でもよい。
さらにまた、上述した例では、単発ノイズの影響を排除するためにフィードスルー差分電圧(DIF_OUT)の移動平均値を計算して利用しているが、移動平均を用いなくてもよい。
【0109】
従って、本実施の形態に係る内視鏡装置によれば、内視鏡の挿入部の長さだけでなく、使用環境温度及び湾曲動作などの種々の要因で歪む映像信号に対して、CDS回路のタイミングパルスの適切なタイミングを決定することができる。
【0110】
特に、CDS回路のタイミングパルスのタイミング調整が所定の周期で実行されるので、映像データタイミングのズレにもリアルタイムで対応でき、品質の高い映像信号を取得することが可能となる。
さらに、フィードスルー電圧クランプパルスFP1とFP2の間隔を短くすれば、映像信号の波形の平坦な部分を精度良く判定することができる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る内視鏡装置は、挿入部3のCCD10の温度、すなわち内視鏡の使用環境温度、を検出して、タイミング調整処理はその検出結果を利用して、CDS回路のタイミングパルスのタイミング調整を行う。
【0111】
図14は、本発明の第2の実施の形態に係わる内視鏡装置1Aの構成を示す構成図である。図14において、図1の内視鏡装置1と同じ構成要素については、同じ符号を付し、説明は省略する。図14に示すように、温度センサ13が、先端部4内のCCD10の付近に配置され、CCD10の温度を検出し、本体部2の映像処理回路21は、常時、CCD10 の温度情報を取得できるようになっている。
【0112】
温度センサ13は、サーミスタなどであり、温度センサ13からのアナログ電圧信号が本体部2のADC29においてデジタル信号に変換されて、温度センサ13の出力として、映像処理回路21に入力される。
【0113】
図15は、補正値テーブルの例を示す図である。補正値テーブルTBL2は、フィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)に対応して、各補正値tf,tm,tdを記憶している。さらに、補正値テーブルTBL2は、不揮発性メモリ21bに記憶される温度範囲毎の温度範囲別テーブルTBL2(TR1), TBL2(TR2), TBL2(TR3),・・・, TBL2(TRm)を含んでいる。例えば、温度範囲別テーブルTBL2(TR1)は、使用環境温度が、0℃以下の温度範囲TR1のためのテーブルであり、温度範囲別テーブルTBL2(TR2)は、使用環境温度が、0℃を超えて20℃以下の温度範囲TR2のためのテーブルであり、温度範囲別テーブルTBL2(TR3)は、使用環境温度が、20℃を超えて40℃以下の温度範囲TR3のためのテーブルであり、と、というように、補正値テーブルTBL2は、所定の温度範囲毎の補正値テーブルを含んでいる。すなわち、補正値テーブルTBL2は、温度範囲に応じた複数のテーブルを含んで構成されている。
【0114】
図16と図17は、映像処理回路21において実行されるタイミング調整処理の流れの例を示すフローチャートである。図16と図17において、図12と同じ処理については、同じステップ番号を付して、説明は簡単化する。
【0115】
まず、CPU21aは、フィードスルー差分電圧を取得して上述したフィードスルー期間差分電圧(ADC_DIF_OUT)(移動平均値)を計算する(S1)。さらに、CPU21aは、温度センサ13の出力に基づいて算出された現在の温度が属する温度範囲が、一周期前の温度が属する温度範囲と異なるか否かを判定する(S11)。例えば、温度範囲TR1が0℃を超えて20℃以下の温度範囲であり、温度範囲TR2が20℃を超えて40℃以下の温度範囲であるとき、現在の温度が21℃(温度範囲TR2に属する)で、一周期前の温度範囲TR1であったとする。この場合、現在の温度が属する温度範囲は一周期前の温度が属する温度範囲と異なると判定される。
【0116】
現在の温度が属する温度範囲が一周期前の温度が属する温度範囲と異なると判定された場合(S11:YES)、現在の温度が属する温度範囲に対応する補正値テーブルを参照して、各タイミングパルスの補正値を取得する(S12)。例えば、上述の例では、現在の温度が21℃であり、一周期前の温度範囲TR2であった場合、CPU21aは、21℃に対応する温度範囲別の補正値テーブルTBL2(TR3)を参照して、補正値tf,tm,tdを取得する。その後の処理は、図12のS3〜S8と同様である。
【0117】
また、現在の温度が属する温度範囲が一周期前の温度が属する温度範囲と異ならないと判定された場合(S11:NO)、前回の周期で参照した補正値テーブルを参照して、各タイミングパルスの補正値を取得する(S13)。例えば、上述の例では、現在の温度が21℃であり、一周期前の温度範囲TR3であった場合、CPU21aは、前の周期で参照した、21℃に対応する温度範囲別の補正値テーブルTBL2(TR3)を参照して、補正値tf,tm,tdを取得する。その後のS14からS17の処理は、図12のS3〜S6と同様である。
【0118】
なお、S3及びS14における判定の基準となる設定範囲RS1,RS2,RS3は、温度範囲別に予め設定されており、現在の温度が属する温度範囲に対応する設定範囲が、S3及びS14において使用される。
【0119】
また、ここでは、S16及びS17の後、CPU21aは、各タイミングパルスのタイミングを計算する処理を実行するが、その処理は、上述したS7の処理とは異なっている。具体的には、フィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1,FP2及び映像データ電圧クランプパルスVPの各タイミングを、次の式により計算して決定する(S18)。
FP(i) =FP(i-1) +Tf(i-1) ・・・(式10)
FP1(i)=FP1(i-1) +Tm(i-1) ・・・(式11)
FP2(i)=FP2(i-1) ・・・(式14)
VP(i) =VP(i-1) +Td(i-1) ・・・(式13)
式14からわかるように、フィードスルー電圧クランプパルスFP2は、前回のタイミングを維持するように調整される。すなわち、フィードスルー電圧クランプパルスFP,FP1と映像データ電圧クランプパルスVPの各タイミングは、それぞれ式10,式11,式13により補正されるが、フィードスルー電圧クランプパルスFP2のタイミングは、補正されない、言い換えれば変動しないように、制御される。すなわち、映像信号監視部26Bが監視する複数の点のうち1つのタイミングは、CCD10の温度に対応する温度範囲に応じた所定のタイミングに固定されている。
【0120】
これは、CCD10の温度変化があったときは、フィードスルー電圧クランプパルスFP2のタイミングも移動するが、温度変化がないすなわち前の温度範囲と同じ範囲にあったときは、フィードスルー電圧クランプパルスFP2のタイミングは動かないすなわち固定してもよいと考えられるからである。S18の後、処理は、S8に移行する。
【0121】
以上のように、補正値テーブルTBL2は、温度範囲に応じた複数のテーブルを有し、タイミング調整部である映像処理回路21は、CCD10の温度に基づいて、CCD10の温度に対応する温度範囲のテーブルを参照することによって、フィードスルー電圧クランプパルスFP等のタイミングを決定する。
【0122】
従って、本実施の形態の内視鏡装置によれば、第1の実施の形態と同様の効果が生じると共に、CCD10の温度に応じた補正値テーブルを参照して、各タイミングパルスのタイミングを補正するようにしたので、温度の変化に迅速に追随できるCDS調整を行うことができる。
【0123】
以上説明した2つの実施の形態に係る内視鏡装置によれば、内視鏡の挿入部の長さだけでなく、使用環境温度及び湾曲動作の影響による波形の歪みを考慮した、CDS回路のフィードスルーパルスの最適なタイミングを決定することができる。特に、CDS回路のタイミングパルスの調整が所定の周期で略リアルタイムで行われるので、映像データタイミングのズレにもリアルタイムで対応でき、品質の高い映像信号を取得することが可能となる。
【0124】
なお、以上説明した動作を実行するプログラムは、コンピュータプログラム製品として、フレキシブルディスク、CD−ROM等の可搬媒体や、ハードディスク等の記憶媒体に、その全体あるいは一部が記録され、あるいは記憶されている。そのプログラムがコンピュータにより読み取られて、動作の全部あるいは一部が実行される。あるいは、そのプログラムの全体あるいは一部は、通信ネットワークを介して流通または提供することができる。利用者は、通信ネットワークを介してそのプログラムをダウンロードしてコンピュータにインストールしたり、あるいは記録媒体からコンピュータにインストールすることで、容易に本発明の内視鏡装置及び内視鏡装置のCDS回路のタイミング調整方法を実現することができる。
【0125】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0126】
1、1A 内視鏡装置、2 本体部、3 挿入部、4 先端部、5 撮像ユニット、6 湾曲部、7、8 信号ケーブル、9 光学レンズ、10 CCD、11 バッファ回路、12 コネクタ部、12a 識別情報保持部、13 温度センサ、21 映像処理回路、21a CPU、21b 不揮発性メモリ、22 CCD駆動回路、23 AFE(アナログフロントエンド)部、24,25 ADC(アナログデジタル変換器)、26 CDS調整回路、26A CDS部、26B 映像信号監視部、27,28 AGC(自動利得制御器)、31〜33,41〜43 サンプルホールド回路、34,44 減算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像する機能を有する撮像素子が先端部に設けられ、前記撮像素子の駆動信号線と映像信号線が挿通された挿入部の基端部が接続される本体部と、
前記本体部に設けられ、前記撮像素子より出力される映像信号に対して、フィードスルー電圧クランプパルスと映像データ電圧クランプパルスを用いて相関二重サンプリング処理を行うCDS 回路と、
前記映像信号中のフィードスルー期間を含む波形部分の少なくとも2点の電圧を監視するフィードスルー期間電圧監視部と、
前記フィードスルー期間電圧監視部により監視された前記少なくとも2点の電圧差に基づいて、前記CDS回路における前記相関二重サンプリング処理のための前記フィードスルー電圧クランプパルスのタイミングを決定して調整するタイミング調整部と、
を有することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記少なくとも2点の電圧差に応じた補正値を記憶する補正値テーブルを有し、
前記タイミング調整部は、前記少なくとも2点の電圧差に基づいて、前記補正値テーブルを参照することによって、前記フィードスルー電圧クランプパルスのタイミングを決定することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記補正値テーブルは、前記挿入部に挿通された前記映像信号線の線路長、線路径又は信号線材の特性インピーダンスの少なくとも1つ毎に、設けられており、
前記タイミング調整部は、前記映像信号線の前記少なくとも1つに対応する補正値テーブルを参照することによって、前記フィードスルー電圧クランプパルスのタイミングを決定することを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記補正値テーブルは、温度範囲に応じた複数のテーブルを有し、
前記タイミング調整部は、前記撮像素子の温度に基づいて、前記撮像素子の温度に対応する温度範囲のテーブルを参照することによって、前記フィードスルー電圧クランプパルスのタイミングを決定することを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記タイミング調整部は、所定の周期で、前記フィードスルー電圧クランプパルスのタイミングを調整することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記少なくとも2点の電圧差は、前記フィードスルー期間電圧監視部により監視して得られた前記少なくとも2点の電圧から算出された移動平均値であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記タイミング調整部は、前記相関二重サンプリング処理のための前記映像データ電圧クランプパルスのタイミングも決定して、前記映像データ電圧クランプパルスのタイミングも調整することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記フィードスルー期間電圧監視部が監視する前記少なくとも2点のうち1つのタイミングは、固定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項9】
前記フィードスルー期間電圧監視部が監視する前記少なくとも2点のうち1つのタイミングは、前記撮像素子の温度に対応する所定の温度範囲に応じた所定のタイミングに、固定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記少なくとも2点の電圧差は、前記フィードスルー期間電圧監視部により監視して得られた前記少なくとも2点の電圧から算出された移動平均値であり、
前記所定の周期と、前記移動平均値の算出周期は、異なることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡装置。
【請求項11】
前記本体部に、基端部が接続された前記挿入部を有することを特徴とする前記請求項1から10のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項12】
内視鏡の挿入部の基端部が接続される本体部に設けられた、相関二重サンプリング処理を行うCDS 回路、フィードスルー期間電圧監視部及びタイミング調整部とを用いて、内視鏡装置の前記CDS回路のタイミング調整方法であって、
前記CDS回路は、前記撮像素子より出力される映像信号に対して、フィードスルー電圧クランプパルスと映像データ電圧クランプパルスを用いて相関二重サンプリング処理を行い、
前記フィードスルー期間電圧監視部は、前記映像信号中のフィードスルー期間を含む波形部分の少なくとも2点の電圧を監視し、
前記タイミング調整部は、前記フィードスルー期間電圧監視部により監視された前記少なくとも2点の電圧差に基づいて、前記CDS回路における前記相関二重サンプリング処理のための前記フィードスルー電圧クランプパルスのタイミングを決定して調整する、
ことを特徴とする内視鏡装置のCDS回路のタイミング調整方法。
【請求項13】
内視鏡の挿入部の基端部が接続される本体部に設けられた、相関二重サンプリング処理を行うCDS 回路、フィードスルー期間電圧監視部及びタイミング調整部を用いて、内視鏡装置の前記CDS回路のタイミング調整方法を実行するプログラムであって、
前記CDS回路により、前記撮像素子より出力される映像信号に対して、フィードスルー電圧クランプパルスと映像データ電圧クランプパルスを用いて相関二重サンプリング処理を行う機能と、
前記フィードスルー期間電圧監視部により、前記映像信号中のフィードスルー期間を含む波形部分の少なくとも2点の電圧を監視する機能と、
前記タイミング調整部により、前記フィードスルー期間電圧監視部により監視された前記少なくとも2点の電圧差に基づいて、前記CDS回路における前記相関二重サンプリング処理のための前記フィードスルー電圧クランプパルスのタイミングを決定して調整する機能と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−239650(P2012−239650A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112755(P2011−112755)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】