説明

内視鏡装置

【課題】挿入部の2つの端子の少なくとも1つの短絡を検知することのできる内視鏡装置を提供する。
【解決手段】内視鏡装置1は、電源回路31と、装着される光学アダプタ29内に設置される照明用のLED30のアノード側接片及びカソード側接片の2つの接片を、先端部に有する挿入部12と、挿入部12の基端側において、アノード側接片に接続された信号線36aと電源回路31との間のA点の電圧を監視する電圧監視回路34と、LED30に定電流を供給する定電流回路32と、電圧監視回路34により監視されたA点の電圧と所定の閾値とを比較することによって、2つの接片の少なくとも一方の短絡を検知する制御回路35と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置に関し、特に、光学アダプタを装着可能な挿入部の先端部の接片の短絡を検知することができる内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内視鏡装置が、工業分野、医療分野等において広く利用されている。近年は、内視鏡用光源に、明るい光源が求められており、光源として発光ダイオード(以下、LEDともいう)が採用されるケースが増えている。
例えば、内視鏡挿入部の先端部に光学アダプタを取り付けが可能で、LEDはその光学アダプタ内部に設けられている内視鏡装置がある。
【0003】
そのような内視鏡装置では、内視鏡装置本体内部のLED駆動回路からの駆動信号は、内視鏡装置本体から内視鏡挿入部内の信号線を通して、内視鏡挿入部の先端部まで伝達される。内視鏡挿入部の先端部には、2つの接片が露出しており、内視鏡挿入部の先端部に光学アダプタを装着したときに、その2つの接片が光学アダプタの対応する2つの接片に接触することにより、LED駆動回路からの駆動信号すなわち駆動電流が光学アダプタ内のLEDに流れ、LEDが駆動される。
【0004】
図9は、内視鏡挿入部の先端部を示す図である。内視鏡挿入部101の先端部102には、それぞれ接続端子である金属の2つの接片103a、103bが露出して配設されている。内視鏡挿入部101の先端部102に図示しない光学アダプタが装着されると、2つの接片103a、103bは、光学アダプタ側の金属の接片である2つの接続端子と接触する。接片103aは、LEDのアノード側端子(LED+)に対応し、接片103bは、LEDのカソード側(LED-)に対応する。また、内視鏡挿入部101の先端部102の外周部104は、内視鏡装置本体側のグラウンド(GND)と同電位になるように構成されている。
なお、内視鏡挿入部101の先端部102には、図示しない撮像素子用の光学系のレンズ等も配設されている。
【0005】
ところで、内視鏡装置は、内視鏡挿入部101の先端部102が、水等の液体に触れる環境で使用される場合がある。その場合、長期間水に浸ることにより、イオン結合によるイオンマイグレーション現象(以下、マイグレーションという)の発生の問題がある。マイグレーションの発生は、電気的短絡現象の発生に繋がる。
【0006】
マイグレーションの発生には、3つのパターンがある。図9においては、点線で示す3つのパターンP1,P2,P3である。
パターンP1は、LEDのアノード側端子(LED+)に対応する接片103aと、カソード側端子=LED-)に対応する接片103b間で短絡が生じるパターンである。
パターンP2は、LEDのアノード側端子(LED+)に対応する接片103aと、グラウンド(GND)の電位の外周部104との間で短絡が生じるパターンである。
パターンP3は、LEDのカソード側端子(LED-)に対応する接片103bと、グラウンド(GND)の電位の外周部104との間で短絡が生じるパターンである。
【0007】
このような短絡に発生は、発煙、発火等の事故に繋がるので、その短絡の発生を検知できれば、LEDへの駆動電流の供給を停止することができるが、従来は、内視鏡挿入部101の先端部におけるこのような短絡を検知することはできなかった。
【0008】
そのため、例えば、特開2008−132330号公報に開示されているように、LEDへの供給電流を制限する回路を設ける技術が提案されている。
【0009】
図10は、電流制限回路を有する内視鏡装置の構成を示すブロック図である。内視鏡装置111は、内視鏡装置本体112と、挿入部113と、その挿入部113の先端部に着脱可能な光学アダプタ114を含んで構成されている。
内視鏡装置本体112は、所定の電源(電圧V)に接続され、LEDを駆動するためのLED駆動用電圧VLEDを出力する電源回路121と、その電源回路121に接続され、異常時に過電流からその電流Iが流れる回路を保護する役割を持つ電流制限回路122と、LEDに定電流を供給する定電流源123とを有している。挿入部113は、電流制限回路122の電流を、先端部101の一方の端子に供給するための信号線124と、先端部101の他方の端子を定電流回路123に接続するために信号線125とを含む。信号線124と125は、共に線路抵抗Rを有する。
【0010】
光学アダプタ114が挿入部113の先端部に装着されると、駆動電流Iは、信号線124を通って光学アダプタ114内のLEDに供給され、信号線125を介して定電流源123に供給される。電流制限回路122は、LEDに流れる電流I(=ILED)を一定電流になるように制限する回路であり、シャントレギュレータなどにより構成される。
通常、定電流源123の電流値は電流制限回路122で制限される電流値より低く設定し、通常のLED点灯時は電流制限回路122が動作することはないよう制御する。
【0011】
上述した3つのパターンP1,P2,P3の短絡の場合の内視鏡装置111の動作は、次の通りである。
パターンP1の場合、定電流源123は、2つの線路抵抗RLとLED駆動用電圧VLEDにより決まる電流値の電流Iを流そうとするが、電流Iの電流値は、電流制限回路122により予め設定された電流値以上には上がらず、発煙、発火などの事故が起こることはない。但し、この時、LEDには電流Iが流れないため消灯する。
【0012】
パターンP2の場合、定電流源123は、パターンP1と同じく、線路抵抗RLとLED駆動用電圧VLEDにより決まる電流値の電流Iを流そうとするが、電流Iの電流値は、電流制限回路122により予め設定された電流値以上には上がらず、発煙、発火などの事故が起こることはない。但し、パターンP1と同様、この時LEDには電流Iが流れないため消灯する。
【0013】
パターンP3の場合、定電流源123は、LEDの駆動電圧(VF)と線路抵抗RLとLED駆動用電圧VLEDにより決まる電流値の電流Iを流そうとするが、電流Iの電流値は、電流制限回路122により予め設定された電流値以上には上がらず、発煙、発火などの事故が起こることはない。但し、この時、LEDは点灯する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−132330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、従来の内視鏡装置及び上記提案の内視鏡装置は、上述した短絡という異常状態になっているにもかかわらず、その短絡を検知することができないため、異常状態で動作し続ける(すなわち適正でない状態の動作が続く)という問題があった。
【0016】
そこで、本発明は、挿入部の2つの端子の少なくとも1つの短絡を検知することのできる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様によれば、LED駆動用電源と、装着される光学アダプタ内に設置される照明用のLEDのアノード側接片及びカソード側接片の2つの接片を、先端部に有する挿入部と、前記挿入部の基端側において、前記アノード側接片に接続された信号線と前記LED駆動用電源との間の第1の電圧を監視する電圧監視回路と、前記LEDに定電流を供給する定電流回路と、前記電圧監視回路により監視された前記第1の電圧と所定の閾値とを比較することによって、前記2つの接片の少なくとも一方の短絡を検知する制御回路と、を有する内視鏡装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、挿入部の2つの端子の少なくとも1つの短絡を検知することのできる内視鏡装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係わる内視鏡装置の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る短絡検知回路の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る、各状態時のA点の電圧マップを示す図である。
【図4】図3の各閾値によって決定された範囲α、β及びγと、LEDの状態との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る、B点の電圧マップを示す図である。
【図6】図5の閾値によって決定された範囲IとIIと、LEDの状態との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る、閾値電圧を決定する動作を説明するための場合の短絡検知回路の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る内視鏡装置の種別情報に基づいて、閾値電圧を決定する動作を説明するための場合の短絡検知回路の構成を示すブロック図である。
【図9】内視鏡挿入部の先端部を示す図である。
【図10】従来の電流制限回路を有する内視鏡装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(全体構成)
まず図1に基づき、本実施の形態に係わる内視鏡装置の構成を説明する。図1は、本実施の形態に係わる内視鏡装置の構成を示す構成図である。
【0021】
内視鏡装置1は、内視鏡装置本体部(以下、本体部という)11と、蛇管である挿入部12とを有している。本体部11は、内視鏡装置全体の制御を行うメイン回路21、ユーザインターフェース(UI)回路22、液晶表示装置(LCD)等のモニタを含むモニタ回路23、照明用の光源制御回路24、および挿入部12の先端部に設けられた撮像素子(図示せず)を駆動し、その映像信号を受信する撮像装置制御回路25、外部インターフェース回路26、電源27、短絡検知回路28を含んで構成されている。
【0022】
挿入部12は、その先端部に光学アダプタ29が着脱自在に構成されている。光学アダプタ29は、光源としてのLED30を含む。
【0023】
内視鏡装置1は、先端部に装着された光学アダプタ29内に設けられた照明用光源としてのLED30により検査対象部位を照明し、先端部に設けられた撮像素子により検査対象部位を撮像し、その撮像した画像が、画像情報として本体部11の撮像装置制御回路25に伝達される。撮像装置制御回路25は、この画像情報を、解析して、メイン回路21経由で表示回路23に伝達してLCD等のモニタに表示することにより、ユーザは、検査対象部位の撮像画像を見ることが出来る。
なお、挿入部12の先端部は、図9と同様の構成を有する。すなわち、挿入部12の先端部は、LED30のアノード側端子(LED+)に対応するLEDのアノード側接片である接片103aと、LED30のカソード側(LED-)に対応するLEDのカソード側接片である接片103bが配設されている。
(短絡検知回路の構成)
図2は、本実施の形態に係る短絡検知回路の構成を示すブロック図である。図2に示すように、短絡検知回路28は、電源27の一部である電源回路31、LED30に定電流を供給する定電流回路32、電源のON/OFF制御を行う電源スイッチ33、電圧監視回路34、及び電源スイッチ34の制御を行う制御回路35を含む。なお、制御回路35は、メイン回路21の一部の回路として構成してもよい。
【0024】
電源回路31は、LED駆動用電源であり、LED30を駆動するためのLED駆動用電圧VLEDを出力する回路である。
定電流回路32は、LED30に定電流を供給する定電流源である。定電流回路32は、LED30に流れる電流I(=ILED)が一定電流になるように制御する回路であり、例えば、トランジスタ、定電流LSIなどで構成される。
電源スイッチ33は、電源回路31と、LED30のアノード側端子(LED+)に対応する接片103aに接続された信号線36aとの間の接続を制御するスイッチである。電源スイッチ33は、LED駆動用電源である電源回路31からの電源供給を制御するために、ON/OFFする機能を有し、制御回路35からの指示信号により電源回路31の出力をON/OFFする。なお、この電源スイッチ33は、電源回路31内のDC/DCコンバータに内蔵されている電源ON/OFF端子などで代用しても良い。
【0025】
電圧監視回路34は、LED30に駆動電流Iを流すための2つの信号線36a、36b間の電圧を検出する。電圧監視回路34は、例えば、アナログデジタル変換器(ADC)、コンパレータ等で構成される。
【0026】
図2に示すように、電圧監視回路34は、挿入部12を挿通する2つの信号線36a、36bのそれぞれとの接続点A、B点の電圧を検出する。電圧監視回路34は、挿入部12の基端側において、LED駆動用電源である電源回路31と、挿入部の先端部に設置されるLED30のアノード側端子(LED+)との間のA点の電圧を監視すると共に、定電流回路32と挿入部の先端部に設置されるLED30のカソード側端子(LED-)との間のB点の電圧を監視する。すなわち、電圧監視回路34は、A点及びB点の電圧を監視し、制御回路35に、その監視された電圧の信号を常時出力する機能を有している。
【0027】
制御回路35は、電圧監視回路34からの出力に応じて、電源スイッチ33のON,OFFを制御する回路である。より、具体的には、制御回路35は、電圧監視回路34からの信号を元に、正常あるいは異常状態を判定する機能を有している。さらに、制御回路は、後述するような閾値のキャリブレーションを行うキャリブレーションモードの機能も有している。制御回路35は、CPU等を含む回路から構成される。
検査対象部位を照明する時、すなわちLED30の駆動時は、主に制御回路35により電源スイッチ33に駆動指示を出し、LED30の定電流駆動動作が開始される。
(短絡検知回路の動作)
次に、本実施の形態に係る短絡検知回路28における、通常のLED駆動時とマイグレーション発生時の短絡の検知動作について説明する。
図2において、蛇管部である挿入部12内の信号線36a、36bのそれぞれの線路抵抗の抵抗値をRL、定電流回路32によるLED電流をI、定電流回路32の抵抗の抵抗値をR、LED30の駆動電圧をVFとすると、通常のLED駆動時おけるA、B点の電圧VA、VBは、次のようになる。
VA=(2RL+R)×I+VF ・・・(1)
VB=R×I ・・・(2)
マイグレーション発生時において、パターンP1のケースでのA点とB点の電圧は、それぞれ、
VA=(2RL+R)×I ・・・(3)
VB=R×I ・・・(4)
となり、パターンP2のケースでのA点とB点の電圧は、それぞれ、
VA= RL ×I ・・・(5)
VB=0 ・・・(6)
となり、パターンP3のケースでのA点、B点の電圧は、それぞれ、
VA=RL×I+VF ・・・(7)
VB=0 ・・・(8)
となる。
【0028】
図3は、各状態時のA点の電圧マップを示す図である。図3に示すように、各状態において、A点の電圧値は、互いに異なる。よって、正常なLED点灯時、各マイグレーション時、及び正常な消灯時の電圧値は、互いに異なるので、制御回路35は、各状態を容易に判別することができる。
【0029】
図3に示すように、正常なLED点灯時の電圧とパターンP1時のA点の電圧との間の電圧の閾値VAHを設定し、かつパターンP2時の電圧値よりも低い電圧の閾値VAHを設定することにより、制御回路35は、異常状態を判別することができる。
【0030】
図4は、図3の各閾値によって決定された範囲α、β及びγと、LEDの状態との関係を示す図である。異常状態の判別に用いられる閾値VAHとVAHは、挿入部12の線路抵抗RLとLED30の駆動電圧Vfに基づいて決定された値である。具体的には、図4に示すように、A点の電圧VAが範囲αにある、すなわち閾値VAH以上の場合、LED30は、正常点灯の状態にある。A点の電圧VAが範囲βにある、すなわち閾値VAH未満で、かつ閾値VALを超える場合、LED30は、上記のパターンP1からP3のいずれかの短絡状態にある。A点の電圧VAが範囲γにある、すなわち閾値VAL以下の場合、LED30は、消灯の状態にある。
【0031】
すなわち、閾値VAHは、2つの接片のいずれにも短絡がない状態でLED30が駆動された場合におけるアノード側接片に接続された信号線36aと電源回路31との間の電圧よりも小さく、かつ2つの接片間で短絡があった場合におけるアノード側の接片に接続された信号線36aと電源回路31との間の電圧よりも大きい。
【0032】
閾値VALは、アノード側接片だけが短絡した状態でLED30が駆動された場合におけるアノード側接片に接続された信号線36aと電源回路31との間の電圧よりも小さく、かつ0よりも大きい。
【0033】
以上のように、通常のLED駆動時の電圧値と、LED駆動電流値、および上述した図2の回路に関して一意的に決定される各乗数RL、VFが分かっていれば、図2のような回路構成において、A点の電圧を監視し、A点の電圧と所定の閾値とを比較することにより、制御回路35は、挿入部12の2つの端子の少なくとも1つの短絡を検知し、短絡時には、電源スイッチ33をOFFして電源回路31からの電源の供給を停止にすることができる。
【0034】
さらに、B点の電圧も同時に監視することにより、さらに、パターンP1とパターンP2、P3の別を判定することができる。図5は、B点の電圧マップを示す図である。図5に示すように、B点の電圧値は、正常なLED駆動時及びパターンP1時の電圧値と、パターンP2及びP3時の電圧値は、互いに異なる。よって、正常なLED点灯時とパターンP1時、及びパターンP2とP3時の電圧値は、互いに異なるので、制御回路35は、その2つの状態を容易に判別することができる。
【0035】
すなわち、電圧監視回路34は、挿入部12の基端側において、カソード側接片に接続された信号線36bと定電流回路32との間のB点の電圧を監視し、制御回路35は、電圧監視回路34により監視されたA点とB点の電圧と所定の閾値とを比較することによって、2つの接片の少なくとも一方の短絡を検知する。
【0036】
図6は、図5の閾値によって決定された範囲IとIIと、LEDの状態との関係を示す図である。図5に示すように、B点の電圧VBが範囲Iにある、すなわち閾値VBT以上の場合、LED30は、正常点灯の状態あるいはパターンP1の状態にある。B点の電圧VBが範囲IIにある、すなわち閾値VBT未満である場合、LED30は、上記のパターンP2あるいはP3の短絡状態、あるいは消灯の状態にある。
閾値VBTは、2つの接片のいずれにも短絡がない状態でLED30が駆動された場合におけるカソード側接片に接続された信号線36bと定電流回路32との間の電圧よりも小さい。
【0037】
以上のように、正常なLED駆動時の電圧値と、LED駆動電流値、および上述した図2の回路に関して一意的に決定される各乗数RL、VFが分かっていれば、図2のような回路構成において、A点とB点の電圧を監視することにより、制御回路35は、挿入部12の2つの端子の少なくとも1つの短絡を検知し、短絡時には、電源スイッチ33をOFFして電源回路31からの電源の供給を停止にすることができる。
(閾値電圧の決定方法)
次に、図3に示す閾値電圧VAH、VALの決定方法について説明する。
まず、図2の短絡検知回路における閾値電圧VAH、VALは、図3から以下の関係を満足する必要がある。
(2RL+R)×I+VF>VAH ・・・(9)
VAH>(2RL+R)×I ・・・(10)
RL×I>VAL ・・・(11)
VAL>0 ・・・(12)
内視鏡装置の場合、挿入部12の長さが製品の種類毎に異なるため、線路抵抗の抵抗値RLは、内視鏡装置毎に異なる。従って、全ての製品に対して一意的に閾値電圧VAH、VALを固定してしまうと、挿入部12の長さによっては先端部のマイグレーション等による2つの端子の少なくとも1つの短絡を正しく検知できないケースが発生する。そのため、閾値電圧に関しては、製品毎に、すなわち線路抵抗RLごとに、補正が必要となる。
【0038】
図7は、閾値電圧を決定する動作を説明するための場合の短絡検知回路28の構成を示すブロック図である。
制御回路35は、外部例えばユーザインターフェースからの操作信号として、内視鏡装置1をキャリブレーションモードに設定するキャリブレーション制御信号CMSを受信すると、キャリブレーションモードの機能を実行する。キャリブレーションは、製品出荷前の製品検査時、あるいはユーザによる使用前、等において行われる。なお、キャリブレーション制御信号CMSは、ユーザインターフェース以外の外部スイッチ、他基板、等から、入力されるようにしてもよい。
【0039】
また、キャリブレーションを行う場合、図7に示すように、ユーザは、挿入部12の先端部にキャリブレーション用アダプタ29Aを装着する。キャリブレーション用アダプタ29Aは、光学アダプタ29と同一の接片を有する。すなわち、キャリブレーション用アダプタ29Aは、内視鏡挿入部の先端部の2つの接片103a、103bに対応する2つの接片を有するが、内部にLEDは有しない。図7に示すように、キャリブレーション用アダプタ29Aの2つの接片は、導線により接続されていて、導通している。
【0040】
次に、キャリブレーション時の短絡検知回路28の動作を説明する。
上述したように、ユーザは、キャリブレーションを行う場合、キャリブレーション用アダプタ29Aを、挿入部12の先端部に接続し、キャリブレーション制御信号CMSを入力することにより、内視鏡装置1あるいは制御回路35を、キャリブレーションモードに設定する。このキャリブレーションモード時、制御回路35は、上述したような通常の短絡検知動作を行わない。
【0041】
制御回路35は、このキャリブレーション制御信号CMSを受け、電源スイッチ33をONにする。このとき、電圧監視回路34は、A点及びB点の電圧を監視して制御回路35に、その各電圧を出力する。制御回路35は、入力された各電圧により、A点とB点間の電圧差である電圧(VA−VB)を算出する。
【0042】
VA−VB=2RL×I ・・・(13)
電圧(VA−VB)を用いて式(13)に基づいて、線路抵抗の抵抗値RLの値を算出することにより、上述した式(9)から(12)の式から、閾値電圧VAH、VALの値を正確に決定し、設定することができる。
【0043】
よって、その決定した各閾値電圧の情報を、不揮発性のメモリ37に記憶することにより、短絡の検知時に、その記憶されたデータを用いることができる。すなわち、通常のLED駆動時、制御回路35は、そのメモリ37に記憶された各閾値電圧の情報を読み出して、上記の状態の判定時の閾値電圧VAH、VALとして、使用する。
【0044】
なお、メモリ37には、予め設定されている閾値電圧に対する補正値の情報を記憶するようにして、制御回路35は、そのメモリ37に記憶された補正値の情報を用いて、予め設定されている閾値電圧を補正して、判定用の閾値電圧VAH、VALとして、使用するようにしてもよい。
【0045】
以上のような閾値電圧VAH、VALを決定する方法では、例えば、製品出荷前の製品検査時、あるいはユーザの使用前において、内視鏡装置はキャリブレーションモードに設定され、かつキャリブレーション用アダプタ29Aを用いて、内視鏡装置毎に、A点とB点の電圧を測定し、それらの電圧から線路抵抗値RLを算出して各閾値電圧が決定され設定されるので、制御回路35は、製品毎に正確な短絡検出を行うことができる。
【0046】
次に閾値電圧の決定方法の他の方法を説明する。
1)上述したキャリブレーションによる方法では、閾値電圧VAH、VALは、実際の線路抵抗値RLを測定して決定しているが、制御回路35は、予め記録された種別情報に基づいて、各閾値電圧あるいは補正値情報をメモリから読み出して、閾値電圧VAH、VALを決定あるいは設定するようにしてもよい。
【0047】
例えば、製品としての内視鏡装置の種別に対応した各閾値情報を、不揮発性のメモリ37に予め記憶しておき、内視鏡装置が起動されると、制御回路35は短絡検知動作を行うために、内視鏡装置の種別情報が予め記憶された種別情報記憶部(図示せず)から種別情報を読み出す。制御回路35は、その読み出された種別情報に基づいてメモリ27から各閾値情報あるいは補正値情報を読み出して、状態判定に用いるようにしてもよい。なお、補正値情報の場合は、制御回路35は、予め設定された各閾値電圧をその補正値情報を用いて補正する演算を行い、その演算により求めた各閾値電圧が状態判定に用いられる。
【0048】
図8は、その内視鏡装置の種別情報に基づいて、閾値電圧を決定する動作を説明するための場合の短絡検知回路の構成を示すブロック図である。
図8において、メモリ37は、内視鏡装置の種別に応じた各閾値電圧あるいは補正値情報を記憶したテーブルを含む。内視鏡装置の種類情報(以下、IDという)は、例えば、内視鏡装置の図示しない不揮発性のメモリに記憶されている。そのIDは、制御回路35によって読み出し可能となっている。なお、IDをメモリに記憶するのではなく、内視鏡装置の種別に応じた抵抗器を内視鏡装置に設け、制御回路35が、その抵抗器の抵抗値を読み出して、その抵抗値からIDを判定するようにしてもよい。
【0049】
よって、制御回路35は、内視鏡装置が起動されると、制御回路35はIDを読み出し、さらにその読み出したIDに対応する各閾値情報あるいは補正値情報を、メモリ37から読み出して、短絡検知判定のために用いることができる。
2)さらになお、各閾値電圧の決定は、光学アダプタの種類若しくは識別情報を加味して、行うようにしてもよい。
光学アダプタ29は、レンズ配置などの構造的な違いにより光学アダプタの種類が予め決められている。光学アダプタ29内に配置される照明用のLEDの種類によっても、光学アダプタの種類が異なる場合もある。さらに、LED30の種類によって、駆動電圧(VF)が異なる場合がある。さらに、同じ種類のLEDでも、LEDの個体差により、実際の駆動電圧(VF)が範囲を有する場合がある。よって、ここでは、各閾値電圧は、光学アダプタの種類に応じて、決定あるいは補正される。
【0050】
不揮発性のメモリ37には、光学アダプタの種類を示す種類情報(以下、idという)に応じたLED駆動電圧(VF)が記憶されている。なお、id毎すなわちLEDの種類毎に、LED駆動電圧(VF)が範囲を有する場合は、その範囲の情報がメモリ37に記憶される。すなわち、メモリ37は、idに応じたLED駆動電圧(VF)あるいはその範囲をテーブルデータとして記憶する。
【0051】
光学アダプタ29には、idを記憶するid記憶部38が設けられている。光学アダプタ29の種類情報であるidを記憶するid記憶部38は、挿入部12内の信号線により、制御回路35に接続されてもよいし、無線により、制御回路35に伝達されるような機能を有していてもよいし、あるいはユーザにより図示しない入力装置から設定されてもよい。
【0052】
制御回路35は、装着された光学アダプタ29に設けられた光学アダプタのidを読み出し、メモリ37に予め記憶されたid毎のLED駆動電圧(VF)を参照する。
【0053】
制御回路35は、その参照して得られたidに対応するLED駆動電圧(VF)を用いて、メモリ37に記憶された各閾値電圧を補正して、短絡の状態判定に用いることができる。
よって、制御回路35は、内視鏡装置が起動されると、まずIDとidを読み出す。制御回路35は、短絡検知動作を行うために、その読み出したIDとidから算出して得られた閾値電圧を、状態判定に用いることができる。
3)また、線路抵抗値RLは、挿入部12の長さに比例する。よって、内視鏡装置の図示しない不揮発性メモリに挿入部12の長さ情報と、その長さに対応した閾値情報とを記憶させ、制御回路35はIDの代わりに、あるいはIDに加えて、挿入部12の長さ情報を用いて、各閾値電圧を決定又は算出するようにしてもよい。
【0054】
すなわち、内視鏡装置の種別情報は、挿入部の長さ情報を含み、メモリ37には、挿入部の長さに応じた各閾値電圧が記憶されている。制御回路35は、内視鏡装置の種別情報が予め記憶された種別情報記憶部(図示せず)から種別情報(すなわち挿入部の長さ情報)を読み出す。制御回路35は、その読み出された種別情報に基づいてメモリ37から各閾値情報あるいは補正値情報を読み出して、状態判定に用いる。
なお、メモリ37に挿入部の長さに応じた各閾値電圧を記憶しないで、制御回路35が、挿入部の長さ情報から線路ロス(すなわち線路抵抗値RL)を算出して求めるようにしてもよい。そして、その算出して得られた線路抵抗値RLを用いて、上述した式から、各閾値電圧を求めてもよい。
【0055】
さらになお、ID毎に線路抵抗値の算出する式が異なる場合は、IDに応じて線路抵抗値の算出のためのパラメータがメモリ37に記憶され、線路抵抗値の算出時に用いられるようにしてもよい。
【0056】
さらにまた、上述した1)において、メモリ37に、内視鏡装置の種別に応じた各閾値電圧あるいは補正値情報を記憶したテーブルに代えて、内視鏡装置の種別に応じた挿入部の長さ情報を記憶するテーブルを設け、その長さ情報から、線路抵抗値を求めてから、各閾値電圧を決定するようにしてもよい。
【0057】
以上のように、上述した本実施の形態の内視鏡装置では、LED駆動時に、電圧監視回路34は、LED駆動用電源である電源回路31と挿入部の先端部の、LED30用アノード側端子との間の電圧を、常時監視することにより、マイグレーション等により発生する、先端部のLED接続端子の短絡を検知することができる。よって、内視鏡装置は、安全にLED駆動をOFFすることができる。結果として、従来のように異常時に無駄な電力を消費し続けるようなことがない。
【0058】
さらに、LED駆動時に、電圧監視回路34は、定電流回路31と挿入部の先端部の、LED30用カソード側端子との間の電圧を監視することにより、より細かく短絡の状態を検知することが可能となり、異常個所の特定が容易になる。
【0059】
さらに、製品毎に挿入部の長さが異なっている場合には、上述したようなキャリブレーション用アダプタを用いたキャリブレーションを実施することにより、精度の高い短絡検知が可能になる。
【0060】
また、製品の種別情報、挿入部の長さ情報あるいは光学アダプタの種類情報に応じた情報を予め記憶しておくことにより、LED駆動時にそれら情報に基づいて決定された閾値電圧を使用することができるので、より高精度な短絡検知が可能になる。
【0061】
なお、上述した本実施の形態においては、電源スイッチにより、LED駆動用電源の出力をOFFしているが、電源スイッチに代えて、LED駆動用電源からの出力電流を少なくする、すなわち電源出力を絞るような回路を用いてもよい。
【0062】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 内視鏡装置、11 本体部、12 挿入部、21 メイン回路、22 UI回路、23 モニタ回路、24 光源制御回路、25 撮像装置制御回路、26 外部インターフェース回路、27 電源、28 短絡検知回路、29 光学アダプタ、29A キャリブレーション用アダプタ、30 LED、31 電源回路、32 定電流回路、33 電源スイッチ、34 電圧監視回路、35 制御回路、36a、36b 信号線、37 メモリ、38 id記憶部、101 先端部、103a、103b 接片、104 外周部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED駆動用電源と、
装着される光学アダプタ内に設置される照明用のLEDのアノード側接片及びカソード側接片の2つの接片を、先端部に有する挿入部と、
前記挿入部の基端側において、前記アノード側接片に接続された信号線と前記LED駆動用電源との間の第1の電圧を監視する電圧監視回路と、
前記LEDに定電流を供給する定電流回路と、
前記電圧監視回路により監視された前記第1の電圧と所定の閾値とを比較することによって、前記2つの接片の少なくとも一方の短絡を検知する制御回路と、
を有することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記所定の閾値は、前記挿入部の線路抵抗と前記LEDの駆動電圧に基づいて決定された値であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記所定の閾値は、前記2つの接片のいずれにも短絡がない状態で前記LEDが駆動された場合における前記アノード側接片に接続された信号線と前記LED駆動用電源との間の電圧よりも小さく、かつ前記2つの接片間で短絡があった場合における前記アノード側の接片に接続された信号線と前記LED駆動用電源との間の電圧よりも大きい第1の閾値を含むことを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記所定の閾値は、前記アノード側接片だけが短絡した状態で前記LED30が駆動された場合における前記アノード側接片に接続された信号線と前記LED駆動用電源との間の電圧よりも小さく、かつ0よりも大きい第2の閾値を含むことを特徴とする請求項3に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記電圧監視回路は、前記挿入部の基端側において、前記カソード側接片に接続された信号線と前記定電流回路との間の第2の電圧を監視し、
前記制御回路は、前記電圧監視回路により監視された前記第1と前記第2の電圧と所定の閾値とを比較することによって、前記2つの接片の少なくとも一方の短絡を検知することを特徴とする請求項4に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記所定の閾値は、前記2つの接片のいずれにも短絡がない状態で前記LEDが駆動された場合における前記カソード側接片に接続された信号線と前記定電流回路との間の電圧よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記短絡を検知すると、前記LED駆動用電源の出力をOFFするあるいは絞ることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記線路抵抗は、前記2つの接片を導通させるアダプタを装着して、監視された前記第1と前記第2の電圧から算出して得られた値であることを特徴とする請求項2記載の内視鏡装置。
【請求項9】
前記内視鏡装置の挿入部の長さ情報に対応して前記所定の閾値を記憶するメモリを有し、
前記制御回路は、前記メモリから前記長さ情報に対応する前記所定の閾値を読み出すことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記内視鏡装置の識別情報に対応して前記所定の閾値を記憶する第1のメモリを有し、
前記制御回路は、前記メモリから前記識別情報に対応する前記所定の閾値を読み出すことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項11】
前記光学アダプタの識別情報に対応して前記LEDの駆動電圧を記憶する第2のメモリを有し、
前記制御回路は、前記第2のメモリから前記光学アダプタの識別情報に対応する前記LEDの駆動電圧を読み出して、前記所定の閾値を補正することを特徴とする請求項10に記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−11143(P2012−11143A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153458(P2010−153458)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】