説明

内視鏡装置

【課題】 体腔内壁等の反射光像を取得して、体腔内壁や骨等の奥における血管の有無を判断することができる内視鏡装置を提供する。
【解決手段】 体内に挿入される挿入部11と、挿入部11と連結され、体外に配置される制御部31とを備え、挿入部11には、挿入部11の先端から被観察表面領域に向かって白色光を照射する第一光源部12と、白色光が照射された被観察表面領域の反射光像を取得する第一撮像部13とが配置された内視鏡装置1であって、挿入部11には、挿入部11の先端から被観察表面領域の奥となる被照射部位に向かって近赤外光を出射する第二光源部14と、被照射部位から反射及び/又は散乱して挿入部11の先端に到達する近赤外光を検出する第二撮像部15とが配置され、制御部31は、第二撮像部15で検出された近赤外光の強度の時間変化を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色光を被観察表面領域へ照射し、被観察表面領域の画像(反射光像)を取得する内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の表面から体腔内に向けて近赤外光からなる照明光を照射し、体腔内に挿入された撮像素子により、生体を透過した照明光を検出して透過画像を取得する内視鏡装置が提案されている。このような内視鏡装置によれば、生体に照射された照明光は生体により拡散されるため、均一な状態で撮像素子に到達する。これにより、胃等の消化器官内壁の状態や、粘膜下の血管の状態の観察を行うことができる。
【0003】
ところで、照明光を生体に照射した場合、照明光の減衰率は非常に大きい。例えば、波長が1000nm付近の照明光は厚さ30cmの生体を透過すると、光子計数法を使用しないと透過光量を計測できないほど減衰する。
このため、撮像素子として、例えばCMD(Charge Multiplying Detector)−CCD等が用いられている(例えば、特許文献1参照)。このようなCMD−CCDを備えた内視鏡装置によれば、生体により照明光が大きく減衰されても撮像により得られた信号電荷を増倍して撮影感度を向上させることができるので、得られる透過画像のS/Nを向上させることができる。また、照明光の光量をそれほど大きくする必要がないため、生体を損傷するおそれもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−360513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、医師等が内視鏡を用いて外科手術を行う手術方法がある。例えば、副鼻腔の外科手術では、医師等は映像を見ながら病的な粘膜等を取り除く。このとき、骨の後方に血管が存在したときには血管を傷つける可能性がある。よって、外科手術を安全に行うためには、手術対象部位付近に存在する血管の配置(走行状態)を認識することが重要とされており、血管の走行状態に個人差があっても正確に認識することが必要となっている。
しかしながら、上述したような内視鏡装置では、生体を透過した照明光から透過画像を取得することで、胃等の消化器官内壁の状態や、粘膜下の血管の状態の観察を行うことができるが、透過画像では外科手術を安全に行うことは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件発明者らは、体腔内壁の反射光像を取得しながら、体腔内壁や骨の奥(後方)における血管の存在の有無を判断することができる内視鏡装置について検討を行った。
ところで、近年、脳の活動状況を観察するために、光を用いて簡便に非侵襲で測定する光脳機能イメージング装置が開発されている。光脳機能イメージング装置では、送光用プローブと受光用プローブとを備える。これにより、光脳機能イメージング装置では、被検者の頭部表面上に配置した送光用プローブにより、近赤外光を脳に照射するとともに、頭部表面上に配置した受光用プローブにより、脳から散乱された各波長の近赤外光の強度をそれぞれ検出している。これにより生体組織のヘモグロビン量の変化を検出できる。
【0007】
ここで、送光用プローブと受光用プローブとの間の距離(チャンネル)と、測定部位との関係について説明する。図4(a)は、一対の送光用プローブ及び受光用プローブと、測定部位との関係を示す断面図であり、図4(b)は、図4(a)の平面図である。
送光用プローブ112が被検者の頭部表面の送光点Tに押し当てられるとともに、受光用プローブ113が被検者の頭部表面の受光点Rに押し当てられる。そして、送光用プローブ112から光を照射させるとともに、受光用プローブ113に頭部表面から放出される光を入射させる。このとき、光は、頭部表面の送光点Tから照射された光のうちで、バナナ形状(測定領域)を通過した光が、頭部表面の受光点Rに到達する。これにより、この光が通過してきた領域に存在するヘモグロビン量の変化を検出できるとしている。
【0008】
そこで、本件発明者らは、被観察表面領域の反射光像を取得するとともに、体腔内から被観察表面領域の奥となる被照射部位に向けて近赤外光を照射し、生体を反射及び/又は散乱した近赤外光を検出し、近赤外光の強度の時間変化を取得することにより、近赤外光の強度の時間変化に心拍と同期する振幅成分が含まれるか否かを観察することで、被照射部位における血管の有無の判定が可能であることを見いだした。
【0009】
すなわち、本発明の内視鏡装置は、体内に挿入される挿入部と、前記挿入部と連結され、体外に配置される制御部とを備え、前記挿入部には、前記挿入部の先端から被観察表面領域に向かって白色光を照射する第一光源部と、前記白色光が照射された被観察表面領域の反射光像を取得する第一撮像部とが配置された内視鏡装置であって、前記挿入部には、前記挿入部の先端から被観察表面領域の奥となる被照射部位に向かって近赤外光を出射する第二光源部と、前記被照射部位から反射及び/又は散乱して前記挿入部の先端に到達する近赤外光を検出する第二撮像部とが配置され、前記制御部は、前記第二撮像部で検出された近赤外光の強度の時間変化を取得するようにしている。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の内視鏡装置によれば、体腔内壁等の反射光像を取得しながら、体腔内壁や骨等の奥(後方)における血管の有無を判断することができる。
【0011】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明の内視鏡装置では、前記第二光源部の出射位置と第二撮像部の検出位置との間の距離は、3mm以上10mm以下であるようにしている。
本発明の内視鏡装置によれば、被観察表面領域の2〜5mm奥側となる被照射部位を認識することができる。
【0012】
さらに、本発明の内視鏡装置は、前記被観察表面領域の反射光像を表示するとともに、前記近赤外光の強度の時間変化に基づいて作成されたトレンドグラフを表示するようにしている。
本発明の内視鏡装置によれば、被観察表面領域の反射光像と、被観察表面領域の奥(後方)におけるトレンドグラフとを認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態である電子内視鏡装置の概略構成の一例を示すブロック図。
【図2】図1に示すスコープの拡大図。
【図3】表示装置に表示された画像を示す図。
【図4】送光用プローブと受光用プローブとの間の距離(チャンネル)と、測定部位との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態である電子内視鏡装置の概略構成の一例を示すブロック図であり、図2は、図1に示すスコープの拡大図である。
電子内視鏡装置1は、スコープ10とプロセッサ30とを備える。
スコープ10は、被検者の体内に挿入される硬性の挿入部11と、挿入部11の後端に連結されているケーブル20とを備える。ケーブル20は、後述する信号等を伝送するための電線等が内部に配置されたものであり、ケーブル20の後端はプロセッサ30に着脱可能に接続されている。
【0016】
挿入部11は、先端部に設けられた第一光源部12と第一撮像部13と第二光源部14と第二撮像部15とを備える。
第一光源部12は、白色光Lを出射する第一LED12aと、第一LED12aの前方に配置された配光レンズ12bとを有する。これにより、第一LED12aから出射された白色光Lは、配光レンズ12bを介して、挿入部11の前方に存在する体腔内壁等である被観察表面領域Hに照射されるようになっている。
第一LED12aは、プロセッサ30に設けられた光源駆動装置33からケーブル22を介して送信される制御信号により制御されるようになっている。なお、第一LED12aは、LEDであるが、プロセッサ30に設けられたレーザダイオード、ハロゲンランプ、キセノンランプ等と光ファイバ等で連結された構造であってもよい。
【0017】
第一撮像部13は、CCD(撮像素子)13aと、CCD13aの前方に配置された対物レンズ13bとを有する。これにより、白色光Lが照射された被観察表面領域Hにおける反射光Lは、対物レンズ13bによってCCD13aの撮像面上に集光され、被観察表面領域Hの反射光像がCCD13aの撮像面上に結像されるようになっている。
CCD13aは、プロセッサ30に設けられた反射光像表示制御部32aからケーブル24を介して送信される制御信号により制御されるようになっている。また、CCD13aは、入射した反射光Lに基づき映像信号を生成して、生成した映像信号をケーブル25とA/D34とを介して反射光像表示制御部32aに送信するようになっている。
【0018】
第二光源部14は、700〜900nmの波長を含む近赤外光Lを出射する第二LEDを有する。これにより、第二LED14から出射された近赤外光Lは、挿入部11の前方に存在する体腔内壁(被観察表面領域)Hや骨等を透過して被照射部位Sに照射されるようになっている。
第二LED14は、プロセッサ30に設けられた光源駆動装置33からケーブル21を介して送信される制御信号により制御されるようになっている。なお、第二LED14は、LEDであるが、プロセッサ30に設けられたレーザダイオード、ハロゲンランプ、キセノンランプ等と光ファイバ等で連結された構造であってもよい。
【0019】
第二撮像部15は、フォトダイオード(光検出器)を有する。第二光源部14の先端(出射位置)と第二撮像部15の先端(検出位置)との間の距離Xは、3mm以上10mm以下となっており、第二光源部14の出射位置と第二撮像部15の検出位置との間に、第一光源部12と第一撮像部13とは配置されている。
これにより、第二LED14から出射された近赤外光Lのうちで、バナナ形状(測定領域)を通過した近赤外光Lが、フォトダイオード15に到達する。このとき、測定領域におけるヘモグロビン量の変動が検出される。
フォトダイオード15は、入射した近赤外光Lの強度(受光量情報)Aをケーブル23とA/D34とを介してグラフ表示制御部32bに送信するようになっている。なお、フォトダイオード15は、フォトダイオードが、プロセッサ30に設けられた光検出器等と光ファイバ等で連結された構造であってもよい。光ファイバで連結する場合には、LEDの代わりにLD(レーザダイオード)、フォトダイオードの代わりにアバランシェフォト大オートや光電子増倍管などを用いることもできる。
【0020】
プロセッサ30は、第一光源部12と第一撮像部13と第二光源部14と第二撮像部15とを制御する制御部31と、映像を表示するためのモニタ画面等を有する表示装置41と、キーボード(入力装置)42とを備える。制御部31は、第一光源部12及び第二光源部14を駆動する光源駆動装置33と、A/D(A/Dコンバータ)34と、CCD13aからの映像信号を処理する反射光像表示制御部32aと、フォトダイオード15からの受光量情報Aを処理するグラフ表示制御部32bとを有する。
図3は、表示装置に表示された画像を示す図である。なお、図3(a)は、血管が存在しないと判断される画像であり、一方、図3(b)は、血管が存在すると判断される画像である。
【0021】
反射光像表示制御部32aは、CCD13aからの映像信号に基づいて、表示装置41のモニタ画面に被観察表面領域Hの反射光像51を表示する制御を行う。
具体的には、図3(a)及び図3(b)に示すように、表示装置41のモニタ画面の左側領域に被観察表面領域Hの反射光像51を表示する。これにより、医師等は反射光像51を見ながら、体腔内壁(被観察表面領域)Hの状態等の観察を行うことができる。
【0022】
グラフ表示制御部32bは、フォトダイオード15からの受光量情報Aの時間変化に基づいて、フーリエ変換等を行い、表示装置41のモニタ画面にトレンドグラフ52を表示する制御を行う。
具体的には、図3(a)及び図3(b)に示すように、表示装置41のモニタ画面の右側領域に、縦軸に光強度Aを示し横軸に時間tを示すトレンドグラフ52を表示する。
図3(a)では、医師等はトレンドグラフ52に被検者の心拍と同期する振幅成分が含まれておらず、血管が存在しないと判断することができる。これにより、医師等は反射光像51を見ながら、病的な粘膜等を安全に取り除くことができる。一方、図3(b)では、医師等はトレンドグラフ52に被検者の心拍と同期する振幅成分が含まれており、血管が存在すると判断することができる。これにより、医師等は取り除く位置を変更したりすることで、病的な粘膜等を安全に取り除くことができる位置を探すことになる。
【0023】
以上のように、本発明の電子内視鏡装置1によれば、体腔内壁(被観察表面領域)H等の反射光像51を取得して、体腔内壁や骨等の奥(被照射部位)Sにおける血管の有無を判断することができる。
【0024】
<他の実施形態>
(1)上述した電子内視鏡装置1において、挿入部11は第一光源部12と第一撮像部13と第二光源部14と第二撮像部15とを備えるような構成を示したが、第一光源部と第二光源部とを一体的に形成するように、一つの光源部で白色光と近赤外光との両方を出射することができるような構成としてもよい。
(2)上述した電子内視鏡装置1において、挿入部11は第一光源部12と第一撮像部13と第二光源部14と第二撮像部15とを備えるような構成を示したが、第一撮像部と第二撮像部とを一体的に形成するように、一つの撮像部で白色光と近赤外光との両方を検出することができるような構成としてもよい。
【0025】
(3)上述した電子内視鏡装置1において、第二光源部14は、700〜900nmの波長の近赤外光Lを出射するような構成を示したが、この範囲内で複数波長の近赤外光を出射するような構成としてもよい。
(4)上述した電子内視鏡装置1において、反射光像51を表示するとともにトレンドグラフ52を表示するような構成を示したが、さらにパルスオキシメータやレーザ血流計等で他の部位(指先等)の心拍を計測して、その心拍を表示するような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、白色光を被観察表面領域へ照射し、被観察表面領域の画像(反射光像)を取得する内視鏡装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1: 電子内視鏡装置
11: 挿入部
12: 第一光源部
13: 第一撮像部
14: 第二光源部
15: 第二撮像部
31: 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入される挿入部と、
前記挿入部と連結され、体外に配置される制御部とを備え、
前記挿入部には、前記挿入部の先端から被観察表面領域に向かって白色光を照射する第一光源部と、前記白色光が照射された被観察表面領域の反射光像を取得する第一撮像部とが配置された内視鏡装置であって、
前記挿入部には、前記挿入部の先端から被観察表面領域の奥となる被照射部位に向かって近赤外光を出射する第二光源部と、前記被照射部位から反射及び/又は散乱して前記挿入部の先端に到達する近赤外光を検出する第二撮像部とが配置され、
前記制御部は、前記第二撮像部で検出された近赤外光の強度の時間変化を取得することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記第二光源部の出射位置と第二撮像部の検出位置との間の距離は、3mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記被観察表面領域の反射光像を表示するとともに、前記近赤外光の強度の時間変化に基づいて作成されたトレンドグラフを表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内視鏡装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate