説明

内視鏡

【課題】挿入部の内部に格別の部材を設けることなく、振動を発生させる。
【解決手段】湾曲部を湾曲操作するための操作ワイヤ23は軟性部内では密着コイル23Rに挿通されており、その先端側に連結した先端側スリーブ24は支持ピンに対して回転可能に装着されており、密着コイル23の基端側は基端側スリーブ29Rに装着されており、この基端側スリーブ29Rには従動ギア31が設けられており、この従動ギア31は駆動ギア32と噛合し、駆動ギア32はモータ33の出力軸33aに装着されており、モータ33を作動させると、基端側スリーブ29Rが回転駆動されて、この基端側スリーブ29Rに連結されている密着コイル23Rが軸回りに回転し、この回転が先端側スリーブ24にまで伝達され、支持ピンが装着されている軟性部と湾曲部との連結部を振動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用等として用いられ、挿入部を狭窄な部位を通すようにして挿入した後に、この挿入部を円滑かつ確実に引き抜くことができるようにした内視鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、術者が手で把持して操作を行う本体操作部に体腔内への挿入部を連結して設けたものであり、挿入部は、本体操作部への連結部から大半の部位が挿入経路に沿って任意の方向に曲がる軟性部となっており、この軟性部には湾曲部及び先端硬質部が順次連結されている。先端硬質部には少なくとも内視鏡観察機構を構成する照明窓及び観察窓が設けられている。また、必要に応じて、鉗子その他の処置具を挿通させるための処置具挿通チャンネルが先端硬質部に開口しており、観察窓を洗浄するための噴射ノズルが装着されている。湾曲部は、先端硬質部を所望の方向に向けるために、本体操作部からの遠隔操作で湾曲可能となっている。
【0003】
内視鏡は、その挿入部が被検者の体内に挿入されるが、その挿入経路としては、口腔を介するものが一般的であるが、鼻腔を介して挿入するものも実用化されている。鼻腔内の挿入経路に内視鏡の挿入部を挿入するように構成すると、舌根を刺激することがなく、食道入口部に対する刺激も少ないことから、嘔吐感等が著しく緩和され、被検者の苦痛や負担が軽減される。しかも、被検者は検査中において、術者等と会話をすることができ、口呼吸も可能となる等の利点がある。
【0004】
鼻腔内の挿入経路としては、鼻道の入口である外鼻孔から中鼻道或いは下鼻道を含む鼻腔を細い経路を通り、後鼻孔から鼻咽喉部を経て食道に至る経路である。この挿入経路において、鼻中隔と、中鼻甲介及び下鼻甲介との間に形成される隙間は最も狭窄な部位である。直径が5mm程度の細径の挿入部を有する内視鏡が開発されており、このような細径挿入部を有する内視鏡を用いることによって、狭窄部が存在する鼻腔内を挿入経路として挿入することは可能である。このように、内視鏡の挿入部における細径化の要請は高いものであり、特に経鼻内視鏡として構成した場合には、僅かであっても、また部分的であっても細径化すると、挿入操作性や被検者の負担軽減等のために有利である。
【0005】
所定の外径寸法を有する湾曲部の先端に連結して設けた先端硬質部を先端に向かうに応じて細くなるテーパ形状としたものが、例えば特許文献1に開示されている。このような構成を採用すれば、前述した鼻中隔,中鼻甲介及び下鼻甲介の間に形成される隙間等のような狭窄個所であっても、挿入部の先端で挿入経路に押し込むように操作することによって、内壁を押し広げるようにして進行させることができる。その結果、被検者にさほどの苦痛を与えずに、挿入経路の狭窄個所を通過させることができる。
【0006】
狭窄個所においては、たとえ挿入経路の内壁を押し広げるにしても、挿入時に通過したのであるから、本来であれば、挿入部を引き抜く操作も円滑に行えるはずである。しかしながら、挿入経路の構造や、挿入部の外面形状等によっては、挿入部の引き抜きが困難になる場合がある。特に、湾曲部の最外周部は外皮層となっているが、この外皮層の両端の固着部は多少盛り上がった形状になっていることがあり、このように外面が不均一になっていると、挿入経路に引っ掛かりが生じる可能性がある。また、外皮層が体腔内壁を円滑に摺動せず、引き出し時に大きな抵抗が生じることもある。挿入部に振動を与えながら引き抜くようにすると、前述した引っ掛かりが解消し、摺動性も良好になる等、挿入部の狭窄個所からの抜け出しを円滑に行うことができる。挿入部の内部に振動発生手段を設ける構成としたものは、例えば特許文献2にあるように、従来から知られている。
【特許文献1】特開2007−301083号公報
【特許文献2】特開2005−237610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述した特許文献2に開示されている振動発生手段は、挿入部の先端部の内部に設けられ、シリンダ内にコイルスプリングと、このコイルスプリングに連結した錘とを挿入しておき、シリンダの外周面に電磁コイルを装着して、この電磁コイルによりコイルスプリングを伸縮させるように構成したものである。従って、この特許文献2では、挿入部の先端近傍において振動を発生することはできるものの、この振動発生手段を設けた分だけ挿入部が太径化することになり、挿入経路に狭所がある場合には、挿入することができない。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、挿入部の内部に格別の部材を設けることなく、振動を発生させることができるようにした内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明は、本体操作部と、この本体操作部に連結され、先端側から先端硬質部、湾曲部及び軟性部を連結した挿入部とから構成した内視鏡であって、前記湾曲部を湾曲操作するために、前記本体操作部には押し引き操作手段に連結した操作ワイヤを設け、この操作ワイヤは前記湾曲部内ではワイヤ挿通部に挿通させることにより回転方向に位置決めするようになし、前記湾曲部と前記軟性部との間の位置から基端側は密着コイル内に挿通させるようになし、前記密着コイルの前記本体操作部内に位置する基端部を回転駆動手段に接続して、この密着コイルを回転駆動することによって、前記湾曲部と前記軟性部との間の連結部に振動を生じさせる構成としたことをその特徴とするものである。
【0010】
操作ワイヤは本体操作部からの遠隔操作により湾曲部を湾曲させるものであり、この操作ワイヤは挿入部の軟性部内では密着コイルに挿通されている。密着コイルの基端部は本体操作部内に固定されており、先端部は軟性部と湾曲部との連結部乃至その近傍位置に固定され、操作ワイヤは密着コイルの両端から導出されている。このために、密着コイルの内部に操作ワイヤが挿通されているが、この密着コイルは操作ワイヤの作動に格別影響を与えることなく軸回りに回転駆動できる。密着コイルは曲げ方向に可撓性があり、軟性部の内部において、他の挿通部材により周囲からの押圧力により多少の規制はあるにしても、軸線と直交する方向に動くことができる。そこで、密着コイルの基端側を回転駆動することによって、この回転が先端まで伝達されるまでに曲がりや振れが生じることから、振動を発生させることができる。特に、密着コイルの先端側に向かうに応じて振動が大きくなる。
【0011】
密着コイルの両端にスリーブを連結し、基端側のスリーブを回転駆動手段により回転駆動する。密着コイルの先端側に設けたスリーブは支持部材に、軸線方向には移動不能で、回転自在に連結することによって、密着コイルと共にスリーブも回転駆動される。また、密着コイルを一方向に回転させ、この密着コイルが巻き締まる方向に回転させる場合には、この密着コイルを先端側スリーブに螺挿する構成としても良い。この場合、密着コイルの回転により前進する方向にねじ部を形成し、かつ先端側スリーブには前進方向へのストッパ部を設ける。
【0012】
密着コイルはまた所定角度往復回転させるか、1乃至複数回転する毎に回転方向を逆転させるようにすることもできる。密着コイルの回転駆動はモータにより行うように構成する。そして、回転方向が一方向であれば、モータと歯車伝達機構とすることができる。また、往復回転または往復回転させる場合には、ラック‐ピニオン機構を用い、モータによりラックを往復移動させるようにするのが望ましい。
【0013】
湾曲部と軟性部との間の連結部は、外皮層の固着部が存在する等、外面が不均一になっているので、挿入部を引き出す際に経路に最も引っ掛かり易い部位は、この連結部乃至その近傍部位である。従って、湾曲部と軟性部との連結部に最も大きい振動を与えるのが望ましい。勿論、振動する部位はこの連結部だけでなく、密着コイルが挿通されている軟性部全体がある程度振動することになる。湾曲部と軟性部との連結部において、振動を増幅させるように構成することもできる。例えば、密着コイルの回転時にこの連結部の内面を叩動させる。密着コイルと共に回転するスリーブと連結部内面、具体的には連結リングの内面とのいずれか一方、または両方に突起を設け、スリーブの回転時に突起とその相手方との間の衝突により衝撃を生じさせることにより叩動させることができる。
【0014】
ここで、内視鏡としては、鼻腔内を挿入経路とする経鼻内視鏡の場合には、急激に曲がった狭窄部があることから挿入部を振動させることにより、この狭窄部を通過させるのに有利になるが、本発明の対象とするのは、この経鼻内視鏡に限らず、口腔を挿入経路とするもの、また大腸鏡等のように、下部消化管用の内視鏡にも適用可能である。また、湾曲操作ワイヤは2本または4本設けられているが、少なくともこれらのうちの1本に設けた密着コイルを振動させるが、2本または4本の操作ワイヤの全てを振動させるように構成することもできる。
【発明の効果】
【0015】
密着コイルを振動源とすることによって、挿入部内に格別の部材を設けることなく、軟性部と湾曲部との連結部に振動を発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1に内視鏡の全体構成を示す。同図において、1は本体操作部、2は体腔内への挿入部、3はユニバーサルコードであり、これらによって内視鏡が大略構成される。挿入部2において、本体操作部1への連結側から大半の長さは軟性部2aであり、この軟性部2aには湾曲部2b及び先端硬質部2cが連結されている。湾曲部2bは先端硬質部2cを所望の方向に向けるために、遠隔操作で湾曲できるようになっている。この湾曲操作は、本体操作部1に設けた湾曲操作手段4により行われる。なお、図示した内視鏡においては、湾曲部2bは上下2方向に湾曲する構成となっているが、上下及び左右の4方向に湾曲可能にすることもできる。
【0017】
図2に先端硬質部2cの先端から湾曲部2bへの連結部の断面を示し、また図3には湾曲部2bから軟性部2aへの連結部の断面を示す。これらの図から明らかなように、挿入部2において、先端硬質部2cは、先端部本体5aと連結リング5bとから構成されており、この先端硬質部2cは湾曲部2bとの連結部から先端面に向けて連続的に縮径されたテーパ面形状となっている。また、湾曲部2bは湾曲リング10を枢支ピン11により順次相対回動可能に連結した節輪構造部材12からなり、この節輪構造部材12には、その外周に金属線材を編組した網管13が装着されており、さらにその外周部にはゴム等の弾性を有する外皮層14が装着されている。
【0018】
そして、軟性部2aは2重の螺旋管15を構造体として、その外周部には網管16が被装されており、この網管16には押し出し成形等により形成された外皮層17が積層されている。そして、挿入部2の内部において、軟性部2aから湾曲部2bには各種の部材が挿通されている。ライトガイド,ケーブル,処置具挿通チャンネル,1または複数の本の流体供給チューブ等である。これらの挿通部材のうち、図3にはケーブル6と処置具挿通チャンネル7とが表わされている。
【0019】
湾曲部2b側の外皮層14は、その先端側は先端硬質部2cの連結リング5bに固着されており、また基端側は軟性部2aと湾曲部2bとの間を連結する連結リング18に固着されている。これらの固着は、それぞれ糸巻き及び接着剤の塗布により行われ、それぞれ固着部19a,19bとなっている。また、軟性部2a側の外皮層17は成形手段により形成しており、外皮層17と外皮層14とは突き合されており、従って固着部19bは多少盛り上がった状態となる。
【0020】
湾曲部2bは本体操作部1に設けた湾曲操作手段4を回動させることにより湾曲させることができるが、このために、図4に示したように、湾曲操作手段4の回転軸はプーリ20に連結されており、このプーリ20には一対からなる操作ワイヤ21,21が巻回して設けられている。操作ワイヤ21は、プーリ20から導出されて、挿入部2内に延在されており、その先端部は、節輪構造部材12を構成する最先端の湾曲リング、即ち先端リング10a(図2)に止着されている。そして、操作ワイヤ21は湾曲部2b内では湾曲リング10に形成した切り絞り部22内に挿通されており、また軟性部2aの内部では密着コイル23内に挿通されている。
【0021】
図5に示したように、密着コイル23の先端部は先端側スリーブ24に固着して設けられており、この先端側スリーブ24の先端部は縮径されており、この先端縮径部24aは基端リング10bに取り付けた支持ピン25に穿設した挿通孔26内に挿通されている。そして、先端側スリーブ24の先端縮径部24aを挿通孔26に挿通させた状態で、その端部にストッパリング27を固定して設けることにより抜け止めを図っている。一方、図4から明らかなように、本体操作部1の内部に支持ブロック28が固定して設けられており、この支持ブロック28には基端側スリーブ29が装着されている。密着コイル23の基端部は基端側スリーブ29に挿入して固定されており、操作ワイヤ21は基端側スリーブ29を貫通して、プーリ20に巻回されている。
【0022】
ここで、2本設けた密着コイル23のうちの一方は軸回りに回転駆動されるように構成されている。そこで、図6及び図7に密着コイル23の回転駆動機構について説明する。これらの図においては、回転駆動される側の各部材には符号の後に「R」の添え字を付け、また固定側の各部材には符号の後に「S」の添え字を付けて、それらを区別するようにしている。回転駆動される側の密着コイル23Rが連結されている基端側スリーブ29Rは、支持ブロック28に対して、軸受30を介して取り付けられている。そして、基端側スリーブ29Rには従動ギア31が設けられており、この従動ギア31は駆動ギア32と噛合している。駆動ギア32はモータ33の出力軸33aに装着されており、モータ33を作動させると、基端側スリーブ29Rが回転駆動されて、この基端側スリーブ29Rに連結されている密着コイル23Rが軸回りに回転することになる。従って、この密着コイル23の先端部に連結した先端側スリーブ24は支持ピン25に対して回転可能なものとしている。
【0023】
このように構成することによって、挿入部2を体腔内に挿入したときに、その挿入経路の途中に狭窄な部位があったとしても、先端硬質部2cの最先端部がこの狭窄部に入り込みさえすれば、この狭窄部を押し広げるようにして容易に通過させることができ、このときにおける被検者に与える苦痛が抑制される。しかも、先端硬質部2cを細径となし、硬質部分の長さを短くすることにより、さらに挿入操作性が改善される。この先端硬質部2cの最先端部の直径は小さければ小さいほど狭窄部への挿入性が良好となる。
【0024】
経鼻内視鏡として構成した場合には、鼻腔内挿入経路において、挿入部2を外鼻孔から鼻中隔,中鼻甲介及び下鼻甲介の間に形成されている中鼻道の通路等が狭窄であり、しかも急激に曲がっている経路である。被検者に個人差があることから、同じ外径の挿入部2でも、殆ど抵抗なく挿入される場合もあるが、大きな抵抗が作用して、挿入が困難になったり、甚だしい場合には、挿入不能になったりすることがある。挿入部2の先端部分はテーパ形状となっているので、このような狭窄通路にも円滑かつ確実に進入させることができる。つまり、狭窄通路の大きさによっては、挿入部2でこの通路を押し広げるようにして進行することになる。
【0025】
挿入部2において、湾曲部2bは最も太いものであり、この湾曲部2bが前述した狭窄通路を通過する際に、大きく押し広げられる。湾曲部2bが狭窄部位を通過すると、軟性部2aがこの狭窄部位に至る。この軟性部2aは湾曲部2bより細径化されているので、押し広げられた狭窄部はほぼ元の状態に、若しくはある程度まで復元する。従って、被検者に対する圧迫が抑制され、苦痛の軽減が図られることになる。そして、挿入部2は、さらに後鼻孔から鼻咽喉部から食道の入口または食道内にまで円滑に導かれる。
【0026】
挿入部2を被検者の体内における検査すべき位置にまで導いて、必要な検査が行われ、また処置具挿通チャンネル7を介して鉗子等の処置具を挿通することにより適宜の処置をも行うことができる。内視鏡検査が終了した後には、挿入部2を鼻腔内挿入経路から引き抜くように操作する。
【0027】
挿入部2の引き抜き時においても、狭く、しかも急激に曲った部位では抵抗が大きくなる。特に、軟性部2aから湾曲部2bへの移行部分が狭窄で急激に曲がった部位に到達すると、この狭窄部に引っ掛かって引き抜きが困難になることがある。特に、この部位の外面には固着部19bが設けられて、多少盛り上がった状態となっている。従って、狭窄部への引っ掛かりのおそれが高くなる。しかしながら、挿入部2において、この部位を振動させることによって、引っ掛かりが解消する動きを行わせるようにする。
【0028】
即ち、挿入部2の引き抜き開始時から、または引き抜きに対する抵抗が大きくなったときには、モータ33を駆動する。これによって、駆動ギア32が回転駆動されて、従動ギア31が追従して回転することになる。従動ギア31は基端側スリーブ29Rに連結されており、この基端側スリーブ29Rは支持ブロック28に軸受30を介して支持されているので、基端側スリーブ29Rは円滑かつ効率的に回転するようになる。この基端側スリーブ29Rには密着コイル23Rが固定されており、この密着コイル23Rの先端に連結した先端側スリーブ24は支持ピン25に軸線方向には移動不能で、回転可能に連結されている。従って、密着コイル23Rが軸回りに回転することになる。ただし、この密着コイル23R内に挿通した操作ワイヤ21は回転することはない。
【0029】
ここで、体腔内においては、挿入部2はその挿入経路に沿うように曲がっており、その内部に挿通されている密着コイル23Rは曲げ方向に可撓性があることから、この密着コイル23Rの基端部を回転駆動すると、密着コイル23Rは軸回りに回転するが、この密着コイル23Rが曲っていると、振動を生じることになる。振動は密着コイル23Rが連結されている支持ピン25の位置が最も激しいものとなる。従って、挿入部2の全長のうち、挿入経路において、最も引っ掛かり易い軟性部2aと湾曲部2bとの連結部を強力に振動させて、引っ掛かりを解除しながら、円滑かつ確実に挿入部2の経路からの引き抜きを行うことができる。
【0030】
このように、挿入部2において、経路に最も引っ掛かり易い部位を中心として振動を生じさせるが、軟性部2aと湾曲部2bとの連結部を含めて、挿入部2の内部には格別の部材を付加しておらず、従って振動手段を追加しても、挿入部2の直径を増大させることはない。この振動手段はモータ33及び回転力伝達用のギア31,32が設けられているが、これらはいずれも本体操作部1の内部に配置されており、本体操作部1の内部スペースは比較的広いものであり、これらモータ33,ギア31,32を設けるスペースは容易に確保することができる。
【0031】
密着コイル23Rは先端側スリーブ24に固着しているが、密着コイル23Rの回転方向を一方向とする場合には、この密着コイル23Rを先端側スリーブ24に対して必ずしも固着しなくても良い。例えば、先端側スリーブ24の内面に密着コイル23Rの外周面とピッチ間隔を同じにしたねじ溝を形成しておき、密着コイル23Rを回転させたときに、この密着コイル23Rが先端側スリーブ24内に進入する方向とする。これによって、密着コイル23Rを回転駆動すると、この密着コイル23Rの先端が先端側スリーブ24の先端縮径部24aへの移行部の段差に当接する位置まで進行すると、密着コイル23Rの回転力が先端側スリーブ24に伝達されて、この先端側スリーブ24が一体回転することになる。
【0032】
また、モータ33による密着コイル23Rの回転方向は、この密着コイル23Rを巻き締める方向とする方が望ましい。ただし、密着コイル23Rが巻き締まるようになると、軟性部2aが硬質化する可能性がある。密着コイル23Rを巻き戻す方向に回転させると、この密着コイル23Rが太径化することになるので、他の挿通部材と干渉するおそれがある。このために、密着コイル23Rを一方向に回転させるのではなく、所定角度往復回転させるように構成することもできる。
【0033】
図8に密着コイル23Rを往復回転させる機構を示す。図中において、40は基端側スリーブ29に設けた従動ギア31をピニオンギアとして、これと噛合するラックであり、このラック40は基端側スリーブ29の軸線と直交する方向に延在させたガイドレール41に沿って往復移動するように構成されている。ラック40の一端には連接部材42が枢支されている。連接部材42の他端はクランク円板43の中心から離間した位置に設けたクランク支点44に連結されており、クランク円板43はモータ45により回転駆動されるようになっている。
【0034】
以上のように構成すると、モータ45によりクランク円板43を回転駆動すると、連接部材42が追従して動作することによって、ラック40をガイドレール41に沿って往復移動することになる。その結果、従動ギア31が往復回転して、密着コイル23Rが軸回りに往復回転することになる。従って、密着コイル23Rが一方向に回転している状態から反転する時に衝撃的な振動が発生することになる。しかも、密着コイル23Rが巻き締まり、や巻き戻しの度合い緩和されることから、密着コイル23が硬化したり、太径化したりするのを防止できる。
【0035】
ここで、挿入部2の挿入経路からの引き抜き時において、急激に曲がった狭窄部に引っ掛かるおそれが高いのは、軟性部2aと湾曲部2bとの連結部であるから、この連結部の位置において最も大きな振動が作用することが要求される。そこで、この部位、つまり密着コイル23Rの先端が連結されている先端側スリーブ24の部位の振動を増幅するように構成するのがのぞましい。このためには、図9に示したように、先端側スリーブ24に振動増幅機構を設けるようにすることができる。即ち、先端側スリーブ24の外周面に1乃至複数個所の突起部50を形成し、この突起部50を枢支ピン11が取り付けられている基端リング10bの内面と間欠的に衝突させるように構成する。これによって、密着コイル23Rの回転と共に先端側スリーブ24が回転する際に、軟性部2aと湾曲部2bとの間に設けた移行部2dにより大きな振動を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の一形態を示す内視鏡の全体構成図である。
【図2】図1の内視鏡の挿入部における先端部分の断面図である。
【図3】湾曲部と軟性部との連結部分の断面図である。
【図4】湾曲部の操作手段の構成説明図である。
【図5】密着コイルの先端部の先端側スリーブへの固定機構を示す断面図である。
【図6】密着コイルの回転駆動機構を示す平面図である。
【図7】密着コイルの回転駆動機構の外観斜視図である。
【図8】密着コイルの回転駆動機構の第2の実施形態を示す外観斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態を示す先端側スリーブの横断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 本体操作部 2 挿入部
2a 軟性部 2b 湾曲部
2c 先端硬質部 10 湾曲リング
15 螺旋管 21 操作ワイヤ
22 切り絞り部 23 密着コイル
24 先端側スリーブ 25 支持ピン
27 ストッパリング 28 支持ブロック
29 基端側スリーブ 30 軸受
31 従動ギア 32 駆動ギア
33 モータ 40 ラック
43 クランク円板 45 モータ
50 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体操作部と、この本体操作部に連結され、先端側から先端硬質部、湾曲部及び軟性部を連結した挿入部とから構成した内視鏡において、
前記湾曲部を湾曲操作するために、前記本体操作部には押し引き操作手段に連結した操作ワイヤを設け、この操作ワイヤは前記湾曲部内ではワイヤ挿通部に挿通させることにより回転方向に位置決めするようになし、前記湾曲部と前記軟性部との間の位置から基端側は密着コイル内に挿通させるようになし、
前記密着コイルの前記本体操作部内に位置する基端部を回転駆動手段に接続して、この密着コイルを回転駆動することによって、前記湾曲部と前記軟性部との間の連結部に振動を生じさせる
構成としたことを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記密着コイルの先端はスリーブに連結して設けられ、このスリーブは前記軟性部と前記湾曲部との間に設けた連結リングに軸線方向には移動不能で、回転可能に保持されており、前記密着コイルの回転時には、このスリーブも一体回転する構成としたことを特徴とする請求項1記載の内視鏡。
【請求項3】
前記スリーブの外面と前記連結リングの内面との少なくともいずれか一方には突出部を形成して、前記スリーブの回転するときに、前記突出部により前記連結リング内面または前記スリーブ外面を叩動させる構成としたことを特徴とする請求項2記載の内視鏡。
【請求項4】
前記回転駆動手段は、前記密着コイルを一方向に回転駆動するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の内視鏡。
【請求項5】
前記回転駆動手段は、前記密着コイルを所定角度分往復回転するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の内視鏡。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−268(P2010−268A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162771(P2008−162771)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】