説明

内視鏡

【課題】 広範囲の視野を確保することが可能な内視鏡を提供する。
【解決手段】 内視鏡1の周囲に光を照射するための光源3と、内視鏡3の先端部に設けられる広角レンズ6と、先端部の側壁に設けられ、少なくとも側方からの外光を透過する透過部(側壁)10と、先端部の内部に設けられ、側壁10から入射された外光を反射する双曲面または放物面の形状をとるミラー7と、広角レンズ6及びミラー7を通った外光に基づいて形成される各被写体像を撮像できる撮像素子9と、撮像素子9によって撮像された各被写体像から、系外の画像情報を球体の表面に有する球面画像を形成する画像形成手段14と、を備え、広角レンズ6の焦点と、ミラー7の一方の焦点とが一致するよう広角レンズ6とミラー7とが配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内視鏡では、例えば大腸内視鏡検査の場合、大腸管腔に凹凸が多いため、壁の影に隠れて病変を見落とす可能性がある。そのため、側方視野の確保が望まれていた。このような要望に対して、例えば、特許文献1には、側方視野を確保するためのドーナツ型ミラーを備え、内視鏡の先端に取り付けられるアタッチメントが記載されている。この特許文献1では、前方視野の画像表示領域の一部に直接側方視野の画像を表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2006/004083
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のドーナツ型ミラーでは、前方視野と側方視野との間に死角が生じることが考えられる。また、特許文献1に記載の構成では、前方視野の画像表示領域の一部に側方視野の画像を表示しているため、結果として、前方視野が一部妨げられていた。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、広範囲の視野を確保することが可能な内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る内視鏡は、内視鏡の周囲に光を照射するための光源と、内視鏡の先端部に設けられる広角レンズと、先端部の側壁に設けられ、少なくとも側方からの外光を透過する透過部と、先端部の内部に設けられ、透過部から入射された外光を反射する双曲面または放物面の形状をとるミラーと、広角レンズ及びミラーを通った外光に基づいて形成される各被写体像を撮像できる撮像手段と、撮像手段によって撮像された各被写体像から、系外の画像情報を球体の表面に有する球面画像を形成する画像形成手段と、を備え、広角レンズの焦点と、ミラーの一方の焦点とが一致するよう広角レンズとミラーとが配置されることを特徴とする。
【0007】
このような内視鏡によれば、広角レンズにより直視方向の被写体像を取得すると共に、ミラーにより少なくとも側視方向の被写体像を取得することができる。また、広角レンズの視野にミラーが配置されないので、広角レンズによる被写体像にミラーが含まれることがなく、前方視野が妨げられることがない。この結果、死角を極力少なくして好適に前方視野及び側方視野を確保し、広範囲の視野を確保することができる。内視鏡において広範囲の視野を確保できると、側方観察が可能となり、病変、大腸ポリープの見落とし率が低下する。また、検査手技も容易となり、検査時間の短縮、被験者の苦痛の軽減にも寄与することができる。また、広角レンズの焦点と、ミラーの一方の焦点とが一致するよう配置されるため、広角レンズによる被写体像とミラーによる被写体像が共通の視点から得られ、単一の視点からの全天周の視野を取得することができ、高精度な球面画像を形成することが可能となる。
【0008】
また、撮像手段は、広角レンズによる被写体像を撮像できる第1の撮像手段と、ミラーによる被写体像を撮像できる第2の撮像手段と、を備え、画像形成手段は、第1の撮像手段により撮像された被写体像を、広角レンズ用投影式を用いて球面画像の座標へ変換し、第2の撮像手段により撮像された被写体像を、ミラー用投影式を用いて球面画像の座標へ変換して、球面画像を形成することが好適である。
【0009】
この構成により、広角レンズとミラーという異なる経路を経て撮像された2種類の被写体像を用いて、同一の球面画像を形成することが可能となる。
【0010】
また、撮像手段は、1つの撮像素子から構成されていることが好適である。これにより内視鏡の省スペース化を図ることができる。
【0011】
また、先端部が、内視鏡本体から着脱可能であることが好適である。これにより、既存の内視鏡を利用することが可能となり、利便性が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る内視鏡によれば、広範囲の視野を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡の概略図である。
【図2】本実施形態の内視鏡で得るべき球面画像を説明する図である。
【図3】本実施形態の内視鏡において球面画像生成に係る構成を示す模式図である。
【図4】魚眼レンズの射影モデルを示す図である。
【図5】双曲面ミラーの結像原理を示す図である。
【図6】魚眼レンズ及びミラーの位置関係を示す図である。
【図7】撮像素子の受光面の平面図である。
【図8】魚眼レンズ及びミラーによる被写体像から球面画像を生成する原理を示す図である。
【図9】双曲面ミラーによる撮像素子上の結像点から仮想球面画像座標の導出を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、同一の要素には同一の符号を用いることとし重複する説明は省略する。また、図面の上方を「上」方向、下方を「下」方向とする。
【0015】
図1は、本実施形態に係る内視鏡1の概略図である。図1に示すとおり、内視鏡1は、その端面2に、被写体に光を照射する光源3と、水噴射用のノズル4と、鉗子口5と、画角が180度以上の魚眼レンズ(広角レンズ)6とを備える。また、端面2の裏側、魚眼レンズ6の下方には、内視鏡1の側方または後方の全周方向から入射する外光を内視鏡本体11方向に反射する下方凸状のミラー(反射手段)7を備える。ミラー7の下端中央部には、魚眼レンズ6を通った外光を内視鏡本体11方向に導くための孔7aが設けられている。
【0016】
内視鏡本体11の端面11aには、魚眼レンズ6及びミラー7を通った外光に基づいて形成される各被写体像を撮像できる撮像素子(撮像手段)9が設けられている。魚眼レンズ6を通った外光は、ミラー7の孔7aを経て、撮像素子9の中央部9aに照射されるように構成される。
【0017】
また、内視鏡1の端面2近傍の側壁10は透明材料で形成され、内視鏡1の側方からの外光を透過してミラー7に入射する透過部である。ミラー7で反射された外光は、撮像素子9の中央部9a周囲の周縁部9bに照射される。なお、魚眼レンズ6、ミラー7、透過部を備える側壁10を含む、図1における内視鏡本体11の端面11aより上方の部分を、内視鏡1の先端部8とする。
【0018】
撮像素子9では、魚眼レンズ6及びミラー7を通って照射される外光によって被写体像が形成され、この被写体像に基づく画像情報が画像形成手段12に送信される。画像形成手段12では、撮像素子9から送信された画像情報に基づいて画像処理を行う。
【0019】
特に本実施形態では、画像形成手段12が、魚眼レンズ6を通った外光に基づいて形成される被写体像を、一の半球面画像に変換し、さらに、ミラー7を通った外光に基づいて形成される被写体像を、他の半球面画像に変換する。そして、これらの2つの半球面画像を合成して、内視鏡1の系外の全天周にわたる画像情報を球体の表面に有する球面画像を形成する。
【0020】
ここで、本実施形態の内視鏡1で得るべき「球面画像」について説明する。本実施形態において球面画像とは、系外の全天周(周囲360度)に位置する各被写体の画像情報が球体の表面に投影されたものである。図2を参照してより具体的に説明する。
【0021】
図2は、球面画像を説明する図である。図2に示すように、空間上に単位半径の仮想的球体101を考え、その中心Oを原点として互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を設定する。空間上の任意の点Pi(iは任意の整数)と球の中心Oとを結ぶ球体の表面102上の点をmiとする。点miと原点Oとを結ぶ直線のZ軸からの仰角をθiとし、X軸からの方位角をφiとすると、点piの位置ベクトルは、次のように表される。
【数1】

【0022】
この点miは点Piが球体の表面へ投影された点に相当する。すなわち、点Piからの光が中心Oに向かって進んでいるときに球体101の表面102と交わる点がmiであり、点miは点Piからの光が担う画像を形成するために必要な情報(画像情報)を有している。したがって、球体101の表面102には、中心Oを視点としてときの周囲360度に位置する被写体を投影することができる。このように画像情報を有している球体101の表面102が球面画像に相当する。そして、このように被写体像を球面画像として表す、言い換えれば、被写体を球体の表面上に射影することを球面射影モデルとも称す。
【0023】
この球面画像は、本実施形態では、上述のように画角180度を有する魚眼レンズ6と、この魚眼レンズ6の視野の反対側、すなわち魚眼レンズ6の死角となる位置に配置されるミラー7とを利用して周囲360度の半分ずつ撮影して得られる被写体像から形成される。また、本実施形態の内視鏡1は、このような球面画像を一度の撮影によって得ることができる。
【0024】
次に、図3を参照して、本実施形態の内視鏡1において球面画像生成に係る構成について詳細に説明する。図3は、本実施形態の内視鏡1において球面画像生成に係る構成を示す模式図である。内視鏡1は、上述のとおり魚眼レンズ6と、ミラー7と、撮像素子9と、画像形成手段12とを含んで構成され、さらに、画像形成手段12が、パラメータ格納部13と、画像形成部(画像形成手段)14とを含んで構成される。
【0025】
魚眼レンズ6は、ほぼ半球の視野をカバーすることができ、全天周のほぼ半分の領域に位置する被写体を像面に投影する。言い換えれば、図2の球体101の半球体の表面上の画像情報を像面(撮像素子9の中央部(第1の受光領域)9a)に投影する。魚眼レンズ6の射影方式は、等距離射影方式、正射影方式、立体射影方式、等立体角射影方式などがある。
【0026】
ここで、射影方式による像面への投影について説明する。図4に示すように、空間での点Pからの光線が光軸となす角度をθ、画像平面(撮像素子9の中央部9a)にその投影点の光軸点cからの距離をrとすると、魚眼レンズの射影方式により、θとrは以下の関係が成り立つ。
【数2】


ただし、feは魚眼レンズの焦点距離である。このような魚眼レンズの射影方式により,周りのシーンの画像平面に占める面積が変わり、解像度が変わる。一様な球面画像を生成する目標とすれば、等立体角射影方式のレンズを用いて良い。
【0027】
なお、本実施形態において、魚眼レンズ6とは、必ずしも1つのレンズを意味するものではなく、画角wが180度以上になるように設計され魚眼レンズ特性を有するレンズ系をも含んでいる意味である。
【0028】
ミラー7は、広く使われている全方位視覚センサの反射ミラーと同様の構成をとるものであり、双曲面または放物面の形状をとる。ミラー7の形状は、どのタイプを用いることが可能であるが、本実施形態では双曲面ミラーを用いる。
【0029】
図5に示すようなO−XYZ直交座標系において(図5においてY軸は点OからX軸及びZ軸と直角に図面奥方向に延在している)、双曲面は以下の式で表せる。
【数3】


その2つの焦点の座標は、F(0,0,e)とF’(0,0,−e)となる(ただしe=(a+b)^(1/2))。a,bは、双曲面の形状を定義する係数パラメータである。
【0030】
双曲面の性質により、図5に示すように、空間での点から片方の焦点Fに向かう光線がその表面の鏡面反射によりもう片方の焦点F´に向かう。焦点F´の下部に画像平面を置けば、双曲面ミラーで反射される周りのシーンの画像を得る。
【0031】
なお、ミラー7は、魚眼レンズ6からの像を撮像素子9上の画像平面に降ろすため、下端中央部に孔が開けられている。
【0032】
魚眼レンズ6及びミラー7は、図6に示すように、魚眼レンズ6の焦点O(図4参照)と、ミラー7の焦点F(図5参照)とが一致し、魚眼レンズ6及びミラー7の結像の画像平面が同一となるように、配置されている。これにより、魚眼レンズ6による画像とミラー7による画像が共通の視点から得られることとなり、単一の視点からの全天周の視野、すなわち球面画像を獲得することができる。
【0033】
撮像素子9は、その撮像素子9が有しており複数の画素からなる受光面が、魚眼レンズ6の結像面(以下、単に「像面」ともいう)と、ミラー7の結像面とを含む平面上に位置するように配置されている。撮像素子9は、例えば、複数の画素が平面上に配置されたCCD(Charge Coupled Device)である。
【0034】
図7は、撮像素子9の受光面の平面図である。受光面は、その中心から半径Rfの円状の第1の受光領域(第1の撮像手段)9aと、この第1の受光領域の向心方向外側に隣接する、受光面中心からの半径Rhの範囲までのドーナツ状の第2の受光領域(第2の撮像手段)9bとを有している。図7中、破線は仮想的な線であって、受光面は1つである(すなわち、撮像素子9は1つである)。第1の受光領域9aに魚眼レンズ6による被写体像が結像され、第2の受光領域9bにミラー7による被写体像が結像される。撮像素子9は、魚眼レンズ6及びミラー7に入射した被写体からの外光によって形成される被写体像を同時に取得する。つまり、図1または図2の上方のシーンが撮像素子9の中央に写り、側方及び下方のシーンが周辺寄りに写る全天周画像を得ることができる。
【0035】
ここで、魚眼レンズ6の結像半径Rfとミラー7の結像半径Rhとの比率Rf/Rhと、ミラー7のパラメータとの間の関係について説明する。図6に示すように、魚眼レンズ6の焦点距離(fe)は(2e+fh)となる。魚眼レンズ6の画角はπ(180度)なので、その半球視野の結像半径Rfは魚眼レンズ6の射影方式で決まる。たとえば、等距離射影方式の場合に、以下になる。
【数4】

【0036】
また、ミラー7を介した全方位画像の結像半径Rhは、図6に示す関係より以下のように決まる。
【数5】

【0037】
よって、以下の式を得る。
【数6】

【0038】
このように、上式により、ミラー7の曲面に関するパラメータe、p(=a/b)、fhを調整することで、Rf/Rhを決めることができる。
【0039】
図2に戻り、撮像素子9上に結像され取得された被写体像は、受光面を構成する画素ごとに電気信号に変換されて画像形成手段12に入力される。
【0040】
画像形成手段12は、CPUなどを備えたいわゆるコンピュータであり、撮像素子9で取得された被写体像から球面画像を形成する。画像形成手段12は、パラメータ格納部13と、画像形成部14とを含んでいる。
【0041】
パラメータ格納部13は、内視鏡1の撮像系パラメータである魚眼レンズ6の像面の画像中心Oの位置座標、ミラー7の焦点F,F’の位置座標、魚眼レンズ6及びミラー7の焦点距離fe、fh、ミラー7の曲面に関するパラメータa,b、撮像素子9の第1の受光領域9aの半径Rf、及び第2の受光領域9bの半径Rhなどの情報を格納している。
【0042】
画像形成部14は、撮像手段によって撮像された、平面画像である魚眼レンズ6及びミラー7による各被写体像から、系外の画像情報を球体の表面に有する球面画像を形成する。具体的には、図8に示すように、仮想的な球面画像の中心を図6のFにおき、魚眼レンズ6と反射ミラー7により結像される結像点pe,phを用いて、視点Fからの光線方向を算出し、単位球面画像座標me,mhを得て、結像点の画像情報(例えば輝度値)を単位球面画像座標にマッピングして、球面画像を形成する。
【0043】
画像形成部14は、撮像素子9の第1の受光領域9aに結像された魚眼レンズ6による結像点peについては、魚眼レンズ用の変換式を用いて単位球面画像座標meに変換し、一方、撮像素子9の第2の受光領域9bに結像されたミラー7による結像点phについては、ミラー用の変換式を用いて単位球面画像座標mhに変換する。以下、それぞれの変換処理について説明する。
【0044】
まず、魚眼レンズによる結像点peの単位球面画像座標meへの変換処理について説明する。魚眼レンズ6による結像点pe(x1,y1)に対して、魚眼レンズの投影式を用いて、Fを中心とする単位球面画像座標meを計算する。例えば、等距離射影レンズに対して、その対応の単位球面画像座標meを算出する投影式は以下のようになる。
【数7】


ここで、
【数8】


であり、feは魚眼レンズ6の焦点距離を表す。なお、上記の式の導出については、例えば特開2005―244861号公報などに記載されている。
【0045】
次に、ミラーによる結像点phの単位球面画像座標mhへの変換処理について説明する。ミラー7による結像点ph(x2,y2)に対しては、ミラー用の投影式を用いて、Fを中心とする単位球面画像座標mhを計算する。
【0046】
図9に示すように、F´における座標系XcYcZ―F´を考える。画像平面へ入る光線のベクトルF´Mの単位ベクトルが以下に表せる。
【数9】


ここで、
【数10】


である。
ベクトルF´Mの長さは以下のように表せる。
【数11】


ここで、
【数12】


である。よって、ベクトルF´Mは次のようになる。
【数13】

【0047】
また、カメラ座標系XcYcZ―F´において、F’F=[0 0 e]であり、FM=F’M−F’FによりベクトルFMは以下のように表される。
【数14】

【0048】
このベクトルFMが, Fを原点とする球面画像座標系XsYsZ―Fにおける、シーン内での点Phからの光線ベクトルFPと共線であるので、ベクトルFPは次のように表すことができる。
【数15】

【0049】
そして、画像平面上の双曲面ミラー7による結像点Phに対応する単位球面画像座標mhが、FPの単位ベクトルとして求められる。すなわち双曲面ミラー7に対して、その対応の単位球面画像座標mhを算出する投影式は以下のようになる。
【数16】


ここで、
【数17】


である。
【0050】
このように、魚眼レンズ6と反射ミラー7で結像される周辺のシーンを同一の焦点Fを中心とする球面画像me,mhにマッピングすることができる.
【0051】
なお、本実施形態では、双曲面ミラーをミラー7として適用した場合について説明したが、放物線曲面(放物面)ミラーをミラー7として適用することも可能である。放物線曲面にも焦点Fがあり、その焦点Fと魚眼レンズの焦点Oとを重ねることにより、単一視点を実現することができる。そして、上述の双曲面ミラーの投影式と同様に、放物線曲面に関する従来技術(例えばK. Daniilidis,A. Makadia, T. Bulow, “Image processing incatadioptric planes: spatiotemporal derivatives and optical flow computation”, Proceedingsof Third Workshop onOmnidirectional Vision, pp.3-10, 2002)に基づき、放物線曲面ミラーの場合の投影式を導出することができ、この投影式を用いて放物線曲面ミラーによる結像から単位球面画像座標への変換処理を行うことができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る内視鏡1によれば、魚眼レンズ6により直視方向の被写体像を取得すると共に、ミラー7により側視方向の被写体像を取得することができる。また、魚眼レンズ6の視野にミラー7が配置されないので、魚眼レンズ6による被写体像にミラー7が含まれることがなく、前方視野が妨げられることがない。この結果、死角を極力少なくして好適に前方視野及び側方視野を確保し、広範囲の視野を確保することができる。内視鏡1において広範囲の視野を確保できると、側方観察が可能となり、病変、大腸ポリープの見落とし率が低下する。また、検査手技も容易となり、検査時間の短縮、被験者の苦痛の軽減にも寄与することができる。
【0053】
また、魚眼レンズ6の焦点と、ミラー7の一方の焦点とが一致するよう配置されるため、魚眼レンズ6による被写体像とミラー7による被写体像が共通の視点から得られ、単一の視点からの全天周の視野を取得することができ、高精度な球面画像を形成することが可能となる。
【0054】
また、撮像素子9は、魚眼レンズ6による被写体像を撮像できる第1の受光領域9aと、ミラー7による被写体像を撮像できる第2の受光領域9bと、を備える。画像形成部14は、第1の受光領域9aにより撮像された被写体像を、魚眼レンズ用投影式(広角レンズ用投影式)を用いて球面画像の座標へ変換し、第2の受光領域9bにより撮像された被写体像を、ミラー用投影式を用いて球面画像の座標へ変換して、球面画像を形成する。この構成により、魚眼レンズ6とミラー7という異なる経路を経て撮像された2種類の被写体像を用いて、同一の球面画像を形成することが可能となる。
【0055】
また、第1の受光領域9a及び第2の受光領域9bが1つの撮像素子9から構成されているため、内視鏡1の省スペース化を図ることができる。
【0056】
以上、本発明に係る内視鏡について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、側壁10は全周にわたり透明部材で形成され、内視鏡の側方または後方の全方向からの外光をミラー7に入射可能な構成としていたが、側壁10の一部のみを透明材料で形成された透過部としてもよく、例えばそれぞれが画角90度をとり、対角上に配置される2つの透過部を備えるよう構成してもよい。この場合、内視鏡の側方及び後方に透過部ではカバーできない死角が生じるが、内視鏡を90度回転させることによって、死角となっていた部分を観察することができる。従来の直視と側視が同時できない内視鏡では、側視をおこなうために内視鏡の先端を極度に屈曲させて、傘の持ち手のようにJの字にターンさせて観察していたが、腸管を破るなどの偶発症が危惧されていた。これに対し、内視鏡を捻り回転させるという安全な動作により内視鏡を90度回転させるだけで、全天周の観察が可能となり、検査時間の短縮、早期大腸癌の見落としを減らすだけでなく、腸管穿孔などの検査による偶発症を防ぐことが可能となる。
【0057】
また、内視鏡1の先端部が、内視鏡本体から着脱可能となるよう構成してもよい。このような構成により、既存の内視鏡を利用することが可能となり、利便性が向上する。
【0058】
また、ミラー7の代わりに、例えば先端部の内部をスパッタリング処理して反射膜を形成するなど他の反射手段を用いてもよく、内視鏡の側方から入射される外光を撮像素子9の第2の受光領域9bに照射できさえすればよい。
【0059】
また、内視鏡周囲に光を照射する光源を前方の他に側方に設けてもよい。具体的には、例えば、内視鏡1の側壁10の周方向に沿って複数のLEDを連続的に配置することや、有機ELを側壁10の周方向全体に亘って配置することにより、内視鏡側方に光源を設けることができる。
【0060】
これまでの説明では、広角レンズを画角が180度以上の魚眼レンズとして説明したが、画角が例えば120度以上又は140度以上のレンズといった、大きな画角を有するいわゆる広角レンズであればよい。この場合、実施形態における魚眼レンズ用投影式は、使用する広角レンズに応じた広角レンズ用投影式を適宜用いればよい。
【符号の説明】
【0061】
1…内視鏡、3…光源、6…魚眼レンズ、7…ミラー、8…先端部、9…撮像素子(撮像手段)、9a…第1の受光領域(第1の撮像手段)、9b…第2の受光領域(第2の撮像手段)、10…側壁(透過部)、12…画像形成手段、13…パラメータ格納部、14…画像形成部(画像形成手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡であって、
前記内視鏡の周囲に光を照射するための光源と、
前記内視鏡の先端部に設けられる広角レンズと、
前記先端部の側壁に設けられ、少なくとも側方からの外光を透過する透過部と、
前記先端部の内部に設けられ、前記透過部から入射された外光を反射する双曲面または放物面の形状をとるミラーと、
前記広角レンズ及び前記ミラーを通った外光に基づいて形成される各被写体像を撮像できる撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された各被写体像から、系外の画像情報を球体の表面に有する球面画像を形成する画像形成手段と、
を備え、
前記広角レンズの焦点と、前記ミラーの一方の焦点とが一致するよう前記広角レンズと前記ミラーとが配置されることを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記撮像手段は、前記広角レンズによる被写体像を撮像できる第1の撮像手段と、前記ミラーによる被写体像を撮像できる第2の撮像手段と、を備え、
前記画像形成手段は、第1の撮像手段により撮像された被写体像を、広角レンズ用投影式を用いて前記球面画像の座標へ変換し、前記第2の撮像手段により撮像された被写体像を、ミラー用投影式を用いて前記球面画像の座標へ変換して、前記球面画像を形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記撮像手段は、1つの撮像素子から構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記先端部が、内視鏡本体から着脱可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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