説明

内視鏡

【課題】挿入部の細径化を図りつつ、ハレーションによる観察の不具合、及び挿入部が摩耗することに発生する観察の不具合を防止する内視鏡を提供する。
【解決手段】内視鏡は、外形が円形でその中心軸に同軸な貫通孔5hを有する先端カバー部材と、貫通孔5hの内径と直径が同寸法で貫通孔5hに挿通配置される太径部6a、太径部6aの外形の中心軸に同軸な枠貫通孔6h、およびレンズ11の光学中心に直交する水平線より一方側に設けられた太径部6aの中心軸を中心に形成した円弧状底面を有するライトガイド設置凹部を有するレンズ枠6と光ファイバーを束ねて構成され、先端側にレンズ枠6の円弧状底面に配置される内周面、及び外周面を有するライトガイド先端部を有するライトガイドバンドル7と、先端カバー部材に挿通配置されたレンズ枠6が脱落することを防止する脱落防止機構部と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円管状の先端部に対物光学部及び照明光学部を備えた内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡は、医療分野及び工業用分野において利用されている。医療分野において用いられる内視鏡は、細長い挿入部を体内に挿入することによって観察を行え、必要に応じて処置具挿通チャンネル内に所望の処置具を挿入することによって各種処置を行える。
【0003】
一方、工業用分野において用いられる内視鏡は、細長い挿入部をボイラー、ガスタービンエンジン、または化学プラント等の配管、自動車エンジン等に挿入することによって、傷、或いは腐蝕等の検査を行える。
【0004】
内視鏡においては、挿入部の細径化が望まれている。例えば、特許文献1には、体腔内観察装置が示されている。この体腔内観察装置は、観察部を挟んで照明部を設け、照明部を構成するライトガイドと鏡胴保持部とを抱き合わせた形状が円筒形に構成されている。この体腔内観察装置では、細径化の実現ととともに、十分な照明光を得て観察することが可能である。
【0005】
また、特許文献2には硬性鏡の先端部に設けられるライトガイドの出射端を略三日月状に成形することにより、出射端を同面積の円形形状に成形した場合に比べて挿入部の外形を細径にできることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−136473号公報
【特許文献2】特開平08−122663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、工業用分野で使用される内視鏡は、観察対象が金属であり、挿入部が金属面上を移動していく。このため、特許文献1の内視鏡では、左右対称に配置されている照明部の照明端が観察部の金属面に対して近接配置されることにより、ハレーションが発生して観察に支障を来すおそれがあった。
【0008】
一方、特許文献2の内視鏡では、略三日月形状の出射端を金属面から離間させることによりハレーションが防止されて良好な観察を行える。しかし、この内視鏡では、出射端とは逆側の観察窓端から先端部外周までの肉厚が薄く構成されるため、挿入部が繰り返し金属面上を移動することにより摩耗が生じ、観察に支障を来すおそれがあった。
【0009】
加えて、内視鏡の挿入部を構成する部材の脱落防止手段として抜け止めピンを配置する場合、挿入部の細径化に伴って、抜け止めピンの大きさが小さくなり、部品の加工が困難になると共に、組立作業が困難になるという問題が生じる。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、挿入部の細径化を図りつつ、ハレーションによる観察の不具合、及び挿入部が摩耗することに発生する観察の不具合を防止した内視鏡を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様における内視鏡は、外形が円形でその中心軸に同軸な貫通孔を有する内視鏡挿入部の先端部外装を構成する先端カバー部材と、前記先端カバー部材の貫通孔の内径と直径が同寸法で該貫通孔に挿通配置される太径部、対物レンズ群を構成するレンズが配置されるレンズ配置穴が設けられる、前記太径部の外形の中心軸に同軸な枠貫通孔、および前記レンズ配置穴に固設されたレンズの光学中心に直交する水平線より一方側の前記太径部に設けられた該太径部の中心軸を中心に形成した円弧状底面を有するライトガイド設置凹部、を有するレンズ枠部材と、照明光を導く複数の光ファイバーを束ねて構成され、先端側に前記レンズ枠部材の円弧状底面に配置されて固定される内周面及び外周面を有する半円管状或いは組み合わせて半円管状に構成されるように成型されたライトガイド先端部を有する、前記先端カバー部材内に配置されるライトガイドバンドルと、前記先端カバー部材の貫通孔に挿通配置される前記レンズ枠部材が脱落することを防止する脱落防止機構部と、を具備している。
【0012】
本発明の他の態様における内視鏡は、照明光を導く複数の光ファイバーを束ねて構成され、先端側に半円管状或いは組み合わせて半円管状を形成するように成型されたライトガイド先端部を有するライトガイドバンドルと、前記半円管状のライドガイド先端部の外径と同一な外径の管状部材で構成され、対物光学部を構成する固体撮像素子の前面に配置される複数のレンズが固設されるレンズ配置穴、前記レンズ配置穴に配置されたレンズの光学中心に直交する仮想線より一方側の外周方向に窪んで形成され、前記ライトガイド先端部の内周面が配置される円弧状底面を有するライトガイド設置部、および、前記仮想線より他方側の先端部外周面の予め定めた位置を切り欠いて平面及び立ち上がり面を設けることによって形成される枠先端部、を備えるレンズ枠部材と、金属製円管状部材で構成され、前記ライトガイド設置部に前記ライトガイド先端部を一体に配設して外形が円形な観察部組が配置される貫通孔、及び前記貫通孔の先端側内面に突出して設けられ、前記レンズ枠部材に設けられた前記平面が設置される第1面及び前記立ち上がり面が設置される第2面を有する肉厚部、を備え、外形の中心軸と前記貫通孔の中心軸とが同心である内視鏡挿入部の外装を構成する先端カバー部材と、を具備している。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、挿入部の細径化を図りつつ、ハレーションによる観察の不具合、及び挿入部が摩耗することに発生する観察の不具合を防止した内視鏡を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】内視鏡システムを説明する図
【図2】内視鏡の先端部の先端面を説明する正面図
【図3】図2のY3−Y3線断面図
【図4】レンズ枠とレンズ枠に設置されるライトガイド先端部とを説明する図
【図5】レンズ枠及び撮像枠のライトガイド設置凹部にライトガイド先端部を固定して構成された観察部組の正面図
【図6】観察部組斜視図
【図7】ハレーションが軽減された観察状態を示す図
【図8】ハレーションが発生して観察に不適な観察状態を示す図
【図9A】脱落防止機構部の他の構成を説明する図であって、先端カバー部材に孔を備え、レンズ枠に凸部を備える構成の先端部を説明する図
【図9B】レンズ枠に形成する切除部を説明する図
【図9C】先端カバー部材の貫通孔にレンズ枠を挿通させている状態を説明する図
【図10】レンズ枠の太径部に凸部を残す構成を説明する図
【図11】凸部を有するレンズ枠にライトガイド先端部が固設された観察部組を先端カバー部材の貫通孔に配置した状態を説明する図
【図12】脱落防止機構部の別の構成を説明する図であって、先端カバー部材にカシメ突起を備え、レンズ枠に切り欠き部によって形成された凹部を備える構成の先端部を説明する図
【図13】先端カバー部材の先端部にカシメ部を設けて先端カバー部材とレンズ枠とを一体固定した状態を説明する正面図
【図14】図13のY14−Y14断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように内視鏡システム1は、細長な挿入部2を備えた内視鏡10と、内視鏡10の操作部3から延出するユニバーサルコード4が接続された装置本体30とを備えて構成されている。
【0016】
挿入部2は、先端側から順に、先端部2aと、例えば上下方向に湾曲可能に構成された湾曲部2bと、可撓性を有する長尺に形成された可撓管部2cとを連設して構成されている。先端部2aにはC−MOS等の撮像素子を有する撮像装置(不図示)が内蔵されている。
【0017】
操作部3には、湾曲部2bを湾曲動作させる操作を行うための湾曲操作レバー3aが設けられている。湾曲操作レバー3aの配置位置は、操作部3を机上面、或いは作業台面等に載置した際に回動操作可能に設けられている。そして、湾曲操作レバー3aに設けられている指載せ部3bは、操作部3から延出する挿入部の上方向に一致している。湾曲部2bは、湾曲操作レバー3aの回動操作に応じて、挿入部2の上方向である湾曲上方向、または挿入部2の下方向である湾曲下方向に湾曲する構成になっている。
なお、操作部3には、湾曲操作レバー3aの他、例えば先端部2a内に設けられた撮像装置の各種撮像動作を指示する各種スイッチ3cが設けられている。
【0018】
装置本体30には撮像装置で撮像した内視鏡画像を表示するモニター31が備えられている。装置本体30の筐体32の内部には、画像処理用のCPU、処理画像を記録する記録装置等の電気部品(不図示)、照明光を供給する光源装置(不図示)、電源を供給するバッテリユニット(不図示)等が配設されている。
バッテリーの電力は、撮像装置、モニター31、電気部品、光源装置等に供給される。
【0019】
ユニバーサルコード4内には、撮像装置に接続される信号ケーブル、光源装置の照明光を伝送するライトガイドバンドル(以下、LGバンドルと略記する)等が挿通している。
【0020】
図2−図6を参照して先端部2aの構成を説明する。
図2、図3に示すように先端部2aは、先端カバー部材5と、レンズ枠部材(以下、レンズ枠と略記する)6と、LGバンドル7と、撮像枠8とを備えて構成されている。LGバンドル7は、照明光を導く複数の光ファイバーを束ねて構成される照明光学部である。
【0021】
先端部2aの先端面には、照明窓部70と、先端レンズ11とが設けられている。
照明窓部70は、LGバンドル7から出射される照明光を外部に出射するための開口である。本実施形態において、照明窓部70は、略U字形状の開口であり、レンズ枠6と先端カバー部材5とを組み合わせて構成される。照明窓部70には後述するライトガイド先端部7aが配置される。そして、照明窓部70の先端側空間には、例えば透明樹脂が充填される。なお、透明樹脂の代わりに照明レンズが配置するようにしてもよい。
【0022】
先端レンズ11は、円形であり、レンズ枠6に形成された第1レンズ配置穴6h1に固設されている。本実施形態において、レンズ枠6に配置された先端レンズ11の光学中心と、先端カバー部材5の外形の中心軸とは同軸であり、先端部2aの中心軸2aAである。
符号5ahはD字形状孔であって、D字形状の観察部配置孔である。D字形状孔5ah内には、後述する観察部組9を構成したレンズ枠6の枠先端部6c及びLGバンドル7のライトガイド先端部7aが配置される。
【0023】
図3、図4に示すレンズ枠6は、金属部材で構成される。レンズ枠6は、円管状で太径部6a及び細径部6bと、枠貫通孔6hとを備えている。太径部6aは、レンズ枠6の最大外形部であり、予め定めた直径Dで構成され、段部6eによって枠先端部6cと枠本体6dとに区分されている。太径部6a及び細径部6bの外形の中心軸と、枠貫通孔6hの中心軸とは同軸である。
【0024】
図3に示すように枠貫通孔6hには対物レンズ群を構成する各種レンズを配置するための例えばレンズ配置穴6h1、6h2、6h3が設けられている。第1レンズ配置穴6h1には先端レンズ11が固設され、第2レンズ配置穴6h2には光学レンズ12、13が固設され、第3レンズ配置穴6h3には光学レンズ14、15が固設されている。そして、各レンズ11−15の光軸は、一致している。
【0025】
図2、図4に示すように太径部6aの外周面側には、円弧状底面6f1を有するライトガイド設置凹部6f及び枠先端部形成平面(以下、先端平面と略記する)6g1を有する切り欠き部6gが設けられている。
【0026】
ライトガイド設置凹部6fは、図2に示す先端レンズ11の光学中心でもある中心軸2aAに直交する仮想線である水平線HLより一方側に設けられ、切り欠き部6gは水平線HLを挟んでライトガイド設置凹部6fの他方側に設けられている。
【0027】
具体的に、ライトガイド設置凹部6fは、図2、図4に示すように水平線HLより一方側である図中上側の外周に設けられ、円弧状底面6f1の半径はRに設定されている。なお、円弧状底面6f1の中心軸、太径部6aの中心軸とは同軸である。
【0028】
これに対して、切り欠き部6gは、水平線HLより他方側である図中下側の外周に設けられている。切り欠き部6gを構成する先端平面6g1は、水平線HLに対して平行な面に設定されている。
【0029】
そして、太径部6aに切り欠き部6gを形成したことによって、太径部6aには立ち上がり面6e1を有する段部6eが構成される。そして、段部6eによって区分された枠先端部6cは、断面外形形状が略D字状となる。
なお、水平線HLより図中上側は、挿入部2の上方向、言い換えれば、湾曲部2bの湾曲上方向である。
【0030】
図4に示すようにライトガイド設置凹部6fにはLGバンドル7のライトガイド先端部7aが配置される。ライトガイド先端部7aは、LGバンドル7の先端部を予め定めた形状に成型されて構成される。本実施形態において、ライトガイド先端部7aは、同心の外周面7c及び内周面7dを有する半円管状に成型されている。半円管状のライトガイド先端部7aの外周半径は、太径部6aの直径Dの半分であるR1、又はそれより短く設定され、内周半径は、円弧状底面6f1の半径Rと同寸法、又はそれより長く設定され、長さは後述する図6に示すようにレンズ枠6先端から撮像枠8の基端までの長さより短く設定されている。
【0031】
なお、ライトガイド先端部7aは、半円管形状に限定されるものではなく、図5、図6に示すように第1ライトガイド先端部7a1と第2ライトガイド先端部7a2とに分割して、組み合わせて半円管形状を形作るように成型しても良い。また、分割数は、2つに限定されるものではなく、それ以上であってもよい。また、符号7bは、出射面である。
【0032】
図3に示すように撮像枠8は貫通孔8hを備え、貫通孔8hは、連結孔8h1と撮像孔8h2とを備えている。連結孔8h1は、レンズ枠6の細径部6bの外周面に対して外嵌配置される。撮像孔8h2には、光学反射部材であるプリズム8aと、保護部材8bと、撮像素子8cと、電子部品8d等が実装された基板8eとで主に構成されている。保護部材8bは、プリズム8aの反射面に接合されている。撮像素子8cは、プリズム8aの下面に接合され、撮像面を中心軸2aAに対して平行に配置されている。
【0033】
そして、撮像枠8は、ピント出し調整を行ってレンズ枠6に一体に固定されて対物光学部を構成する。この結果、レンズ枠6が備える対物レンズ群を通過してプリズム8aに入射した光学像は、プリズム8aで折り曲げられて、撮像素子8cの撮像面に結像される。
【0034】
なお、保護部材8bは、プリズム8aと同一材質、或は同様な線膨張係数(熱膨張係数)の光透過性のある透明なガラス部材、或いは光透過性を有していない合成樹脂、金属部材等で形成されている。プリズム8aと保護部材8bは、反射面にて接合されて、上下側部全ての周囲形状が同一となる1つのブロック体として構成されている。そして、本実施形態においては、プリズム8aと保護部材8bとが一体なブロック体が、撮像孔8h2の内面に固定されることにより、プリズム8aが撮像枠8に強固に固定される。
また、撮像素子8cは、基板8eに電気的に接続されている。符号8fは封止樹脂である。
【0035】
図5、図6に示すようにライトガイド先端部7aの内周面7dは、ライトガイド設置凹部6fの円弧状底面6f1に配置され、接着によってレンズ枠6に一体的に固定されて、観察部組9を構成する。符号6e1hは連通孔である。連通孔6e1hは、枠貫通孔6hの第2レンズ配置穴6h2と外部とを連通している。
また、撮像枠8の外周面にはレンズ枠6のライトガイド設置凹部6fと同様のライトガイド設置凹部(不図示)が設けられている。
【0036】
図2、図3に示すように先端カバー部材5は、外装を構成する。先端カバー部材5は、円形の外形の中心軸と同軸の貫通孔5hを有している。貫通孔5hの先端部側内面には、先端カバー部材5の円形の先端側開口を略D字形状の先端側開口に形成するための厚肉部5aが設けられている。
【0037】
厚肉部5aは、設置面である第1面5a1と、当接面である第2面5a2とを備え、第1面5a1にはレンズ枠6を構成する先端平面6g1が設置され、第2面5a2には立ち上がり面6e1が当接配置される。つまり、貫通孔5hは、厚肉部5aを設けた貫通孔先端側を構成するD字形状孔5h1と、厚肉部5aの第2面5a2より基端側を構成する貫通孔5hの内周面である円形孔5h2とを備えて構成されている。そして、円形孔5h2の内径は、レンズ枠6を構成する太径部6aの直径Dと同寸法に設定されている。
なお、第2面5a2と立ち上がり面6e1とは脱落防止機構部を構成する。
【0038】
ここで、内視鏡2の先端部2aの組み付けについて説明する。
内視鏡2の先端部2aは、観察部組9を先端カバー部材5の貫通孔5h内に配設して構成される。作業者は、観察部組9の先端側を先端カバー部材5の貫通孔5hの基端側から挿入する。すると、太径部6aの外周面が先端カバー部材5の貫通孔5hの内周面に当接する。そして、枠先端部6cをD字形状孔5h1内に配置し、枠本体6dを円形孔5h2内に配置する、このとき、立ち上がり面6e1が厚肉部5aの第2面5a2に当接する。このことによって、観察部組9がレンズ枠6に対して所定の位置に位置決めされる。この後、作業者は、レンズ枠6と先端カバー部材5とを間に接着剤を塗布してレンズ枠6と先端カバー部材5とを一体固定する。
【0039】
上述のように構成した先端部2aを構成した内視鏡2によれば、レンズ11−15の光軸と、先端カバー部材5の外形の軸と貫通孔5hの軸とが同軸で、レンズ枠6の太径部6aの外周面の直径を貫通孔5hの円形孔5h2の内径とを同寸法に設定して、レンズ枠6の枠貫通孔6hに配設されたレンズ11−15の光軸と、先端カバー部材5の外形の中心軸とを同軸にしている。加えて、LGバンドル7のライトガイド先端部7aがレンズ11−15の光軸より一方側に配置されている。
【0040】
このため、図7に示すように照明光出射端10aが先端レンズ11を挟んで観察対象面20から離間された状態においては、照明光がレンズ11−15の光軸より上側に位置する照明窓部70から出射される。この結果、照明光出射端10aから観察対象面20までの距離を確保して、ハレーションの軽減を図ることができる。仮に、図8のように先端部2aが上下逆になって配置された場合には、挿入部を最大でも180度回転させる。このことによって、内視鏡10の先端部2aの配置状態を図7に示した状態に修正してハレーションの軽減を図ることができる。
【0041】
また、先端カバー部材5の先端部に厚肉部5aを設け、レンズ枠6の太径部6aに切り欠き部6gを設けて、厚肉部5aの第2面5a2に切り欠き部6gを設けることによって構成された段部6eの立ち上がり面6e1を当接させる構成にしている。このことにより、レンズ枠6が先端カバー部材5の枠貫通孔6hから脱落することを確実に防止することができるとともに、挿入部2の先端部2aの摩耗耐性を高めることができる。
【0042】
さらに、レンズ枠6の枠貫通孔6hに配設されたレンズ11−15の光軸と、先端カバー部材5の外形の中心とを同心に設定して、ライトガイド先端部7aをレンズ11−15の光軸より一方側に配置し、脱落防止部機構を光軸より他方側に設けたことによって、空いているスペースを有効活用し、先端部2aを最も細径にする構成を実現することができる。
【0043】
なお、上述した内視鏡10によれば、操作部3を例えば机上面に載置した状態において、挿入部2を観察対象面20に沿わせ配置した際、照明光出射端10aが観察対象面20(載置面)から離間して配置され、厚肉部5aが観察対象20側に配置される構成になる。
【0044】
このため、内視鏡使用環境が、挿入部2を単に目的部位に挿入して観察対象面20に沿わせて検査を行うような場合、使用者は、観察対象面20に対する挿入部先端の上下関係を、操作部3を把持した状態で直感的に把握できるので、使用感の向上を図れる。 また、観察対象面20に対する照明光出射端10aの位置、および、厚肉部5aの位置は、予め、操作部3を把持した状態における使用頻度の高い状況を考慮して構成されている。このため、使用者は、ハレーション、或いは観察対象面20との接触による摩耗を考慮することなく、即ち、挿入部先端の状況を気にすることなく、挿入部の挿抜を行って効率よい検査を行うことができる。
【0045】
また、上述の実施形態においては、撮像素子8cの撮像面を中心軸2aAに対して平行に配置する構成としている。しかし、撮像素子8cの撮像面を中心軸2aAに対して直交させて配置する構成であってもよい。
【0046】
さらに、レンズ枠6が先端カバー部材5の枠貫通孔6hから脱落することを防止する脱落防止機構部は、上述したように第2面5a2に立ち上がり面6e1を当接させる構成に限定されるものではない。
【0047】
例えば、図9Aに示すように先端カバー部材5の所定位置に貫通孔5hと外部とを連通する脱落防止孔5bを設け、レンズ枠6の太径部6aの所定位置に脱落防止孔5bに係入配置する凸部6jを設ける。凸部6jは、脱落防止孔5bに配置された状態において、レンズ枠6の外周面から突出しない構成である。
【0048】
この構成においては、凸部6jの突出量をXに設定する。そして、凸部6jの突出量Xと、レンズ枠6のライトガイド設置凹部6fを形成する円弧状底面6f1から先端カバー部材5の内周面までの距離(D/2−R)との間の関係を、X<(D/2−R)に設定する。また、図9Bの斜線に示すようにレンズ枠6の側部を予め定めた距離L、切除する。斜線部は切除部6kである。このことによって、レンズ枠6は、貫通孔5h内で(D/2−R)移動可能に設定される。
【0049】
この構成においては、以下の手順で先端部2aの組み付けを行う。
すなわち、作業者は、図9の矢印Y9に示すようにレンズ枠6を先端カバー部材5の貫通孔5hに挿通していく。そして、レンズ枠6の凸部6jを、先端カバー部材5の脱落防止孔5bに落とし込む。その後、作業者は、レンズ枠6と先端カバー部材5とを例えば接着によって一体固定する。
【0050】
次に、作業者は、先端カバー部材5の内周面とレンズ枠6のライトガイド設置凹部6fとで構成される空間部にLGバンドル7のライトガイド先端部7aを配置する。配置後、作業者は、ライトガイド先端部7aを先端カバー部材5の内周面およびレンズ枠6の円弧状底面6f1に接着固定する。
このことによって、上述した実施形態と同様の作用及び効果を有する内視鏡の先端部を構成することができる。
【0051】
また、先端カバー部材の貫通孔に対して、レンズ枠を高精度に配置するため、図10に示すようにレンズ枠6Aの太径部6aに当接凸部6mが残るようにライトガイド設置凹部6f設けると共に、撮像枠8Aに凸部8gが残るようにライトガイド設置凹部8fを設けるようにしてもよい。
【0052】
この構成においては、レンズ枠6のライトガイド設置凹部6fは、第1ライトガイド設置凹部6fAと第2ライトガイド設置凹部6fBとに分離して構成され、当接凸部6mの外周面の径寸法は、太径部と同寸法である。また、撮像枠8のライトガイド設置凹部8fも、第1ライトガイド設置凹部(図示されず)と、第2ライトガイド設置凹部8fBとに分離して構成される。
【0053】
そして、ライトガイド設置凹部6fA、8fAおよびライトガイド設置凹部6fB、撮像枠8のライトガイド設置凹部(不図示)に、それぞれのライトガイド設置凹部の形状に対応するライトガイド先端部7a1を配置し、接着によって固定して観察部組9Aを構成する。本実施形態においては、ライトガイド先端部7aは、2つのライトガイド先端部7a1と、ライトガイド先端部7a1の間に配置される当接凸部6mとによって、半円管状に構成される。
その他の構成は上述した実施形態と同様であり、同部材には同符号を付して説明を省略する。
【0054】
この構成によれば、観察部組9Aを先端カバー部材5の貫通孔5h内に配置した際、図11に示すようにレンズ枠6Aの太径部6Aaの外周面が貫通孔5hの内周面に当接するとともに、当接凸部6mの外周面が貫通孔5hに当接する。
【0055】
この結果、先端カバー部材5に対してレンズ枠6Aを高精度に且つ速やかに配置することができる。この結果、先端カバー部材5に対してレンズ11及びライトガイド先端部7a1が予め定めた位置に正確に配置されて最良の内視鏡画像を得ることができる。
【0056】
なお、図11、図12に示すように先端カバー部材5の先端の予め定めた位置に予め定めた量突出するカシメ突起5cを設ける。一方、レンズ枠6Aには図10−図12に示すようにレンズ枠6Aの先端面の予め定めた位置に切り欠き部6gAを設けてカシメ突起5cを収容する凹部を設ける。
【0057】
そして、先端カバー部材5の貫通孔5hにレンズ枠6Aを配置した後、カシメ突起5cを切り欠き部6gAによって形成された凹部に収容されるようにカシメ、先端カバー部材5と、レンズ枠6Aとを一体に固定する。
【0058】
このように、先端カバー部材5とレンズ枠6Aとをカシメ固定することによって、先端カバー部材5からレンズ枠6Aが脱落することを確実に防止することができる。このことにより、先端カバー部材5の構造を簡略にして、部品コスト及び製造コストの低減を図ることができる。
【0059】
なお、先端カバー部材5とレンズ枠6Aとの一体固定は、カシメ突起5cによるカシメ固定に限定されるものではなく、例えば、図13、図14に示すように先端カバー部材5の先端部に対してカシメ加工を施してカシメ部5dを設けて先端カバー部材5をレンズ枠6Aに一体固定するようにしてもよい。このカシメ部5dは、先端カバー部材5の先端部がレンズ枠6Aの切り欠き部6gAに押圧配置されるように形成される。
【0060】
尚、本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…内視鏡システム 2…挿入部 2a…先端部 2b…湾曲部
2c…可撓管部 2aA…中心軸 3…操作部 3a…湾曲操作レバー
3b…指載せ部 3c…スイッチ 4…ユニバーサルコード
5…先端カバー部材 5a…厚肉部 5a1…第1面 5a2…第2面
5b…脱落防止孔 5c…カシメ突起 5d…カシメ部 5h…貫通孔
5h1…D字形状孔 5h2…円形孔 6、6A…レンズ枠 6Aa…太径部
6a…太径部 6b…細径部 6c…枠先端部 6d…枠本体 6e…段部
6e1…立ち上がり面 6e1h…連通孔 6f…ライトガイド設置凹部
6f1…円弧状底面 6fA…第1ライトガイド設置凹部
6fB…第2ライトガイド設置凹部 6g、6gA…切り欠き部 6g1…先端平面
6h…枠貫通孔 6h1…第1レンズ配置穴 6h2…第2レンズ配置穴
6h3…第3レンズ配置穴 6j…凸部 6k…切除部 6m…当接凸部
7…LGバンドル 7a、7a1、7a2…ライトガイド先端部 7b…出射面
7c…外周面 7d…内周面 8、8A…撮像枠 8a…プリズム
8b…保護部材 8c…撮像素子 8d…電子部品 8e…基板
8f…ライトガイド設置凹部 8fB…ライトガイド設置凹部 8g…凸部
8h…貫通孔 8h1…連結孔 8h2…撮像孔 9、9A…観察部組
10…内視鏡 10a…照明光出射端 11…先端レンズ
12、13、14、15…光学レンズ 20…観察対象面 30…装置本体
31…モニター 32…外装筐体 70…照明窓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形が円形でその中心軸に同軸な貫通孔を有する内視鏡挿入部の先端部外装を構成する先端カバー部材と、
前記先端カバー部材の貫通孔の内径と直径が同寸法で該貫通孔に挿通配置される太径部、対物レンズ群を構成するレンズが配置されるレンズ配置穴が設けられる、前記太径部の外形の中心軸に同軸な枠貫通孔、および前記レンズ配置穴に固設されたレンズの光学中心に直交する水平線より一方側の前記太径部に設けられた該太径部の中心軸を中心に形成した円弧状底面を有するライトガイド設置凹部、を有するレンズ枠部材と、
照明光を導く複数の光ファイバーを束ねて構成され、先端側に前記レンズ枠部材の円弧状底面に配置されて固定される内周面及び外周面を有する半円管状或いは組み合わせて半円管状に構成されるように成型されたライトガイド先端部を有する、前記先端カバー部材内に配置されるライトガイドバンドルと、
前記先端カバー部材の貫通孔に挿通配置される前記レンズ枠部材が脱落することを防止する脱落防止機構部と、
を具備することを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記レンズの光学中心と、前記先端カバー部材の中心軸とが同軸であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記レンズ枠部材の太径部の一部は、前記先端カバー部材の貫通孔の内周面に当接して配置されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記ライトガイドバンドルのライトガイド先端部の成型される硬質長の長さは、前記レンズ枠の先端から撮像枠の基端までの長さより短く設定されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記脱落防止機構部は、
前記ライトガイド設置凹部を設けた太径部の前記水平線より他方側に切り欠き部を設けて構成される、前記レンズ枠部材に設けられる立ち上がり面と、
前記先端カバー部材の貫通孔の先端部側内面に設けられ、円形の先端側開口を略D字形状の先端側開口にする厚肉部に形成される前記立ち上がり面が当接配置される当接面と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記脱落防止機構部は、
前記レンズ枠部材の外周面の予め定めた位置に予め定めた突出量で突出する凸部と、
前記先端カバー部材の予め定めた位置に形成され前記凸部が配置される脱落防止孔と、で構成され、
前記凸部の突出量は、前記貫通孔に前記レンズ枠部材を組み付けた状態における、該レンズ枠部材が有するライトガイド設置凹部の円弧状底面から該先端カバー部材の内周面までの距離より小さく設定されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記脱落防止機構部は、
前記先端カバー部材の先端の予め定めた位置に突出するカシメ突起と、
前記レンズ枠部材の先端部先端面側の予め定めた位置に切り欠き部によって設けられる凹部とであり、
前記カシメ突起を前記凹部に収容するようにカシメて、前記先端カバー部材から前記レンズ枠部材が脱落することを防止することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記レンズ枠部材の太径部の前記レンズ配置穴に固設されたレンズの光学中心に直交する水平線より一方側に複数のライトガイド設置凹部を設け、
隣り合う前記ライトガイド設置凹部の間に前記太径部の直径と同寸法の外周面を有する凸部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項9】
照明光を導く複数の光ファイバーを束ねて構成され、先端側に半円管状或いは組み合わせて半円管状を形成するように成型されたライトガイド先端部を有するライトガイドバンドルと、
前記半円管状のライドガイド先端部の外径と同一な外径の管状部材で構成され、対物光学部を構成する固体撮像素子の前面に配置される複数のレンズが固設されるレンズ配置穴、前記レンズ配置穴に配置されたレンズの光学中心に直交する仮想線より一方側の外周方向に窪んで形成され、前記ライトガイド先端部の内周面が配置される円弧状底面を有するライトガイド設置部、および、前記仮想線より他方側の先端部外周面の予め定めた位置を切り欠いて平面及び立ち上がり面を設けることによって形成される枠先端部、を備えるレンズ枠部材と、
金属製円管状部材で構成され、前記ライトガイド設置部に前記ライトガイド先端部を一体に配設して外形が円形な観察部組が配置される貫通孔、及び前記貫通孔の先端側内面に突出して設けられ、前記レンズ枠部材に設けられた前記平面が設置される第1面及び前記立ち上がり面が設置される第2面を有する肉厚部、を備え、外形の中心軸と前記貫通孔の中心軸とが同心である内視鏡挿入部の外装を構成する先端カバー部材と、
を具備することを特徴とする内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−141418(P2012−141418A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293551(P2010−293551)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】