説明

内部塗膜を備えるカートリッジを有する眼内レンズ送達デバイス

眼内レンズ(IOL)送達デバイスについて、開示される。本デバイスは、内部塗膜を有する、眼内レンズカートリッジを含み、塗膜は、カートリッジを形成する材料のポリマー材料と適合性がある、ポリマー材料を含む。好ましくは、塗膜、カートリッジ、または両方のポリマー材料は、ポリウレタン材料である。一実施形態において、IOL送達デバイスは、本体部分とノズルとを有する送達カートリッジであって、該本体部分およびノズルは、該本体部分および該ノズルに沿って延在する管腔を画定する内部表面を含み、少なくとも該内部表面は、異種骨格を有するポリウレタン材料または非オレフィンポリマー材料であるポリマー材料から形成される、送達カートリッジと、該内部表面上に配置される塗膜であって、ポリウレタン材料と親水性材料とから形成される塗膜とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国特許法第119条により、米国仮特許出願第61/116,443号(2008年11月20日出願)に基づく優先権を主張する。該仮出願の全内容が参照により本明細書に引用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、内部塗膜を有する眼内レンズカートリッジに関し、塗膜は、カートリッジを形成する材料のポリマー材料と適合性があるポリマー材料を含む。
【背景技術】
【0003】
ヒトの眼は、角膜と呼ばれる透明な外側部分を通して、光を透過および屈折させ、さらに、水晶体を経由して、眼の奥の網膜上に結像することによって、視力を提供するように機能する。結像の質は、眼のサイズ、形状、および長さ、ならびに角膜および水晶体の形状および透明性を含む、多くの要因に依存する。
【0004】
外傷、加齢、疾患、またはその他によって、個人の天然水晶体の透明性が弱まると、網膜に透過され得る光の減少のため、視力は、低下する。眼の水晶体におけるこのような欠陥は、多くの場合、白内障と称される。このような病態のための治療は、天然水晶体の外科的除去および眼内レンズ(IOL)の移植である。
【0005】
初期のIOLは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の硬質プラスチックから作製されていたが、シリコーン、軟質アクリル、およびヒドロゲルから作製される軟質の折畳可能IOLが、これらの軟質レンズを折畳または圧延し、より小さい切開を通して挿入する能力のため、ますます人気となっている。レンズを圧延または折畳するいくつかの方法が、使用される。人気の方法の1つは、レンズを折畳し、通常、軟質先端プランジャによって、レンズが眼の中に押入され得る、比較的に小さい直径の管腔を提供する、注入カートリッジである。一般的に使用される注入カートリッジ設計の1つは、特許文献1(Bartell)に例証されるものであって、分割した縦方向に蝶着されたカートリッジを含む。類似設計は、特許文献2および特許文献3(Feingold)ならびに特許文献4および特許文献5(Eaglesら)に例証されており、参照することによって、全内容が本明細書に組み込まれる。さらに他のカートリッジは、特許文献6(Rheinishら)、特許文献7(Reichら)、および特許文献8(Van Noyら)に説明されており、参照することによって、全内容が本明細書に組み込まれる。
【0006】
IOLが、プランジャによって、カートリッジの小径管腔を通して、押動されるのに伴って、比較的に大量の力が、プランジャ、カートリッジ、および/またはIOLにかかる可能性がある。概して、IOLの効果的送達をもたらすために、これらの力を管理するカートリッジを有することが望ましい。これらの力は、近年、高まる懸念になりつつある。特に、医学界は、より小さいノズルを有し、それによって、外科医が、個人の眼へのIOLの送達のために、より小さい切開を使用することが可能となる、IOLカートリッジに対する要望を表明している。これらのより小さいノズルは、IOL送達の際、IOLが押動されることになる、より小さい管腔をもたらす。したがって、IOLの送達の際、IOL、カートリッジノズル、およびプランジャにかかる力は、大幅に増大し、これらの力の管理は、困難となり得る。
【0007】
IOL送達の際に生じる力を軽減するために、多くの場合、低摩擦塗膜が、カートリッジの内部表面に塗布され、内部表面によって画定される管腔を通して、IOLをより容易に通過させる。しかしながら、IOLカートリッジのための従来の塗膜は、塗布が複雑であって、複数の層および複数の異なる材料を伴い得る。それによって、そのような塗膜は、一貫して塗布することが困難となり、通常、IOLが通過するであろう管腔の空間を占有し得る。
【0008】
また、塗膜に加え、IOL送達力の管理も、それらの力に対処可能な材料、特に、送達カートリッジのための材料の使用を通して達成可能である。しかしながら、任意の眼への挿入のために好適であって、IOL送達力に対処するために所望の物理的特性を呈する一方、同時に、IOL送達カートリッジの内部表面に塗布される塗膜と適合性がある材料を見つけることは、非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,681,102号明細書
【特許文献2】米国特許第5,494,484号明細書
【特許文献3】米国特許第5,499,987号明細書
【特許文献4】米国特許第5,616,148号明細書
【特許文献5】米国特許第5,620,450号明細書
【特許文献6】米国特許第5,275,604号明細書
【特許文献7】米国特許第5,653,715号明細書
【特許文献8】米国特許第5,947,876号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述に照らして、塗膜が、従来の塗膜と比較して改良され、カートリッジを形成する材料が、改良された塗膜と適合性がある一方、依然として、望ましい物理的特性を呈する、IOLカートリッジと塗膜との組み合わせを提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
故に、本発明は、IOL送達デバイスを対象とする。本デバイスは、本体部分と、ノズルと、を有し、本体部分およびノズルは、本体部分およびノズルに沿って延在する管腔を画定する、内部表面を含む、送達カートリッジを含む。内部表面は、異種骨格を有するポリウレタン材料または非オレフィンポリマー材料である、ポリマー材料から形成される。塗膜が、内部表面上に配置され、本塗膜は、ポリウレタン材料と、親水性材料と、から形成される。
【0012】
塗膜のポリウレタン材料は、架橋または線形基質を形成し、親水性材料は、基質全体を通して分散される。塗膜は、その上に任意の塗膜層を伴わずに、カートリッジの内部表面上に直接配置される、単一層であることが好ましいが、他の構成も可能であり得る。
【0013】
また、カートリッジおよび内部表面は、必要ではないが、別途記載がない限り、単独ポリマー材料から形成されることが好ましい。内部表面の材料は、典型的には、少なくとも200MPa、より典型的には、少なくとも1200MPa、さらにより典型的には、少なくとも2000MPaの曲げ弾性率を呈する。さらに、内部表面の材料は、典型的には、少なくとも50D、より典型的には、少なくとも75D、さらに可能性として、少なくとも90Dの硬度を呈する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明のある側面による、例示的IOL送達デバイスの図面である。
【図2】図2は、図1のIOL送達デバイスの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ある材料と、その材料と適合性がある塗膜と、から形成される、送達カートリッジを含む、IOL送達デバイスの提供を前提とする。送達カートリッジの材料は、好ましくは、カートリッジを通してIOLの送達の際に生じる力に対応するために望ましい、物理的特性を呈する。さらに、カートリッジの材料と塗膜との間の適合性は、塗膜の塗布を容易にし得る。概して、カートリッジの材料は、塗膜のポリマー材料と同一分類に由来する、または別様に、塗膜のポリマー材料の材料に対して親和性を呈する、ポリマー材料である。好ましい実施形態では、カートリッジおよび塗膜(例えば、塗膜の材料を形成する基質)は両方とも、ポリウレタン材料から形成される。
【0016】
図1を参照すると、本体部分14と、ノズル16と、を有する、カートリッジ12を含む、例示的IOL送達デバイス10が、例証される。カートリッジ12、特に、本体部分14およびノズル16は、カートリッジ12、本体部分14、およびノズル16の長さ(L)に沿って延在する管腔20を画定する、内部表面18を画定する。内部表面18は、本発明による、塗膜22によって被覆される。ノズル16は、典型的には、眼の切開内に挿入可能であって、ノズル16を通して、眼にIOLを送達する支援をするように構成される。図から分かるように、ノズル16は、ノズルの長さに沿って延在する軸24に垂直にとられる、内径(ID)と、外径(OD)と、を有し、そのような軸は、図1−3に示される長さ(L)と同一である。必要ではないが、別途記載がない限り、ノズル16の内径、外径、または両方は、6ミリメートル(mm)未満、より典型的には、3mm未満、さらにより典型的には、2.5mm未満、さらに可能性として、1.9mm未満であることが好ましい。
【0017】
カートリッジは、概して、種々のポリマー材料から形成可能であって、単独ポリマー材料または複数のポリマー材料から形成され得る。複数のポリマー材料が採用される場合、層状である、または混合され得る。潜在的ポリマー材料の実施例として、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルブロックアミド、ポリプロピレン、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸、ポリエチレンまたはポリプロピレンコポリマー、ポリ塩化ビニル、エポキシド、ポリアミド、ポリエステル、あるいはゴム、シロキサン、もしくは他のポリマーとのコポリマー、それらの組み合わせ等を含むが、それらに制限されない。
【0018】
概して、カートリッジおよび/または管腔の内部表面を形成する材料は、比較的に親水性であって、好ましくは、ポリウレタン材料である、材料を塗膜の整合ポリマー材料とより適合させるようにするために、所望の水接触角を呈することが好ましい。そのような接触角は、典型的には、少なくとも50°、より典型的には、少なくとも70°、さらにより典型的には、少なくとも75°である。また、そのような接触角は、典型的には、85°未満、より典型的には、80°未満である。接触角は、本発明の場合、液滴接触角測定技術を使用して、測定可能である。
【0019】
塗膜を受容するカートリッジの材料は、好ましくは、実質的または完全に、非ポリオレフィン系である。これは、カートリッジを形成するおよび/またはカートリッジの管腔の内部表面を形成する材料が、重量比50%未満、より典型的には、30%未満、さらにより典型的には、20%未満、さらに可能性として、5%未満の任意のポリオレフィン、特に、ポリプロピレンおよびポリエチレンを含み、一好ましい実施形態では、任意のポリオレフィンを完全に伴わないことを意味する。概して、カートリッジを形成するおよび/またはカートリッジの管腔の内部表面を形成する材料は、ポリウレタン材料(すなわち、ポリウレタンの実質的部分を含む材料)であることが好ましい。本明細書で使用されるように、ポリウレタンの実質的部分を含有するとは、重量比少なくとも20%、より典型的には、少なくとも40%、可能性として、少なくとも70%のポリウレタンを含有することを意味する。
【0020】
カートリッジおよび/または管腔の内部表面のポリウレタン材料は、それと混合または共重合される任意の他のポリマー種を伴わずに、完全または実質的に完全に、ポリウレタンから形成可能である。代替として、ポリウレタン材料は、ポリウレタンと、1つ以上の他のポリマーまたはポリウレタンおよび1つ以上の他のポリマーのコポリマーとの混合物であり得る。概して、必ずしも必要ではないが、別途記載がない限り、熱可塑性物質材料は、完全または実質的に完全に、熱可塑性物質であることが好ましい。例示的コポリマーとして、ポリウレタン/ポリエーテルコポリマー、ポリエステル/ポリウレタンコポリマー、それらの組み合わせ等を含み得るが、それらに制限されない。
【0021】
例示的好適なポリウレタン材料は、The Dow Chemical Company、Midland、Michiganから市販の商標名ISOPLAST(登録商標) 2531およびISOPLAST(登録商標) 2530として販売されている、硬質熱可塑性ウレタンを含む。別の例示的好適なポリウレタン材料は、コポリマーであり得る、熱可塑性ポリウレタンエラストマーである。そのようなポリウレタン材料の実施例は、ポリエーテル系ポリウレタン材料であり、それらは、多くの場合脂肪族化合物であり、The Dow Chemical Company、Midland、Michiganから市販の商標名PELLETHANE(登録商標) 2362 75DおよびPELLETHANE(登録商標) 2363 65Dとして販売されている。他の好適な熱可塑性ポリウレタンコポリマーは、芳香族ポリエーテル/ポリウレタンコポリマー、ポリカプロラクトンコポリエステル/ポリウレタンコポリマー等を含むが、それらに制限されない。また、上述のポリマー材料の任意の組み合わせも、カートリッジのための材料として採用され得ることが想定される。
【0022】
カートリッジの材料および管腔を画定する表面は、好ましくは、ポリウレタン材料であるが、ポリウレタンに類似する特性を有し、したがって、塗膜に対して類似親和性を呈する、他の材料が使用され得ることも想定される。そのような材料は、典型的には、本明細書に説明されるような水接触角を有するであろう。さらに、そのような材料は、典型的には、異種骨格を伴うポリマーであって、それらの骨格は、典型的には、そのモノマー、オリゴマー、または両方において、炭素および酸素原子の両方を含むであろう。ポリカーボネートは、これらの代替材料の優れた実施例である。別の好適な実施例として、420、rue d'Estienne d'Orves、F−92705 Colombes Cedex Franceに住所を有するArkemaから市販されている、商標名PEBAX(登録商標)として販売されているようなポリエーテルアミドを含む。
【0023】
IOL送達カートリッジとして使用する場合、カートリッジの材料は、所望の曲げ弾性率および所望の硬度を有することが望ましい。典型的には、曲げ弾性率は、少なくとも200MPa、より典型的には、少なくとも1200MPa、さらにより典型的には、少なくとも2000MPaであるだろう。曲げ弾性率は、典型的には、5000MPa未満、より典型的には、3000MPa未満、さらにより典型的には、2600MPa未満であるだろう。曲げ弾性率は、ASTM D790に従って測定可能である。典型的には、硬度は、少なくとも50D、より典型的には、少なくとも75D、さらに可能性として、少なくとも90Dであるだろう。硬度は、典型的には、120D未満、より典型的には、100D未満、さらに可能性として、95D未満であるだろう。硬度は、ゴム特性デュロメータ硬度のためのASTM D2240標準試験法に従って測定可能である。
【0024】
塗膜22の材料は、カートリッジ12の内部表面18を形成するポリマー材料に整合する(すなわち、同一分類に由来する)、ポリマー材料の実質的部分を含むことが好ましい。特に、整合材料(すなわち、塗膜のポリマー材料およびカートリッジ12の内部表面18を形成するポリマー材料)は、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも90%の同一単量体反復単位、オリゴマー反復単位、または両方を有することが好ましい。代替として、または加えて、整合材料は、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも90%のウレタン構造から構成可能である。
【0025】
カートリッジの内部表面のポリマー材料と整合する、塗膜のポリマー材料は、塗膜材料が塗布および乾燥されると、好ましくは、重量比少なくとも30%、より典型的には、少なくとも40%、さらにより典型的には、少なくとも45%の塗膜材料である。また、ポリマー材料は、塗膜材料が塗布および乾燥されると、典型的には、重量比約90%未満、より典型的には、約80%未満、さらにより典型的には、約60%未満の塗膜材料である。本整合ポリマー材料は、カートリッジの材料と関連して論じられる分類のいずれかに由来し得ることが可能である。好ましくは、整合ポリマー材料は、ポリウレタン材料である。
【0026】
ポリウレタンは、使用される場合、典型的には、塗膜中への混入に先立って、特定の特性を有するであろう。ポリウレタンは、典型的には、23°C時、少なくとも約50センチポイズ(cps)、より具体的には、少なくとも100cpsの粘度を有するであろう。23°C時のポリウレタンの粘度は、典型的には、約390cps未満、より典型的には、約250cps未満である。また、ポリウレタンは、典型的には、約30乃至50、より具体的には、約35乃至41の固形分を有するであろう。また、ポリウレタンは、典型的には、約6.0乃至約10、より好ましくは、約7.5乃至約9.0のpHを有するであろう。
【0027】
好ましい実施形態では、塗膜は、ポリマー整合材料、親水性材料、および随意に、架橋剤または架橋体を含む。そのような実施形態では、ポリマー整合材料は、典型的には、架橋性であって、親水性材料の保有を支援するために好適な基質を形成する。そのような塗膜の実施例は、米国特許第6,238,799号に提供されており、あらゆる目的のために、参照することによって本明細書に組み込まれる。好適な塗膜の別の実施例は、商標名LUBRILAST(登録商標)として販売されており、Advanced Surface Technologies、9 Linnell Circle、Billerica、MA 01821から市販されている。
【0028】
親水性材料は、典型的には、水の存在下、膨張し、「滑りやすい」、すなわち、潤滑表面を提供する、ポリマーである。例示的親水性ポリマーとして、ポリ(N−ビニルラクタム、例えば、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)等、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンエチレンオキシド)(PPO)、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース等、ポリアクリル酸、例えば、アクリルおよびメタクリル酸等、ポリビニルアルコール、ならびにポリビニルエーテル等を含むが、それらに制限されない。
【0029】
塗膜内のポリマー整合材料(例えば、ポリウレタン)と親水性ポリマーとの重量比は、典型的には、約10:1乃至約1:10、より典型的には、約5:1乃至約1:5、さらにより典型的には、約2:1乃至約1:2、さらにより典型的には、約1.3:1乃至約1:1.3である。
【0030】
特に好ましい実施形態では、親水性材料は、PVPである、またはそれを含む。PVPは、K15から、可能性として、K90まで、または可能性として、それ以上のK値の1つあるいはその混合を有してもよい。好ましいPVPは、約80乃至110のK値を有する。PVPは、典型的には、少なくとも約500,000ダルトン、より典型的には、少なくとも800,000ダルトン、さらにより典型的には、少なくとも1.0Mダルトンの平均分子量を有する。また、PVPの分子量は、典型的には、約3.0Mダルトン未満、より典型的には、約1.8Mダルトン未満、さらにより典型的には、約1.4Mダルトン未満である。
【0031】
塗膜の整合ポリマー材料の架橋反応は、ポリマー自体の官能基が架橋を形成するように、自己開始性であり得る。自己架橋可能な好適な官能基として、アルキド酸化乾燥樹脂、ホルムアルデヒド縮合物、メチロールアクリルアミド、およびアリル基を含むが、それらに制限されない。そのような架橋結合は、例えば、熱またはUVエネルギーの印加によって開始され得る。150°C以上までの加熱ステップが、使用され得る。
【0032】
他の実施形態では、架橋反応は、塗膜組成に架橋剤を添加することによって開始され得る。そのような架橋剤は、被膜作業直前に、塗膜組成に添加され得る。代替として、被膜された物品は、一例として、架橋剤を含有する水溶液中における乾燥塗膜の膨張等、被膜後、架橋剤に曝露され得る。好適な架橋剤として、多官能性アジリジン、多官能性カルボジイミド、および多官能性エポキシドを含むが、それらに制限されない。典型的には、架橋剤は、二官能性または三官能性化合物であるが、しかしながら、発明の範囲内として、任意の数の官能基を有する多官能性架橋剤を使用することも想定される。架橋剤は、支持性ポリマーと1つ以上の架橋を形成する、および/または隣接する架橋剤と架橋結合してもよい。加えて、特に、官能基を曝露するために、表面の前処理によって、官能基が表面上に生成される場合、架橋剤は、IOLカートリッジ表面上の活性基板部分と反応してもよい。これは、親水性ポリマーに対して、より高い架橋密度をもたらし、いくつかの事例において、例えば、親水性ポリマーが、より低い分子量である場合、所望より支持性ポリマーに対して乏しい親和性を有する場合、または支持性ポリマーが、低レベルの官能部分を保有する場合、望ましい場合がある。
【0033】
IOLカートリッジは、種々のポリマー成形または加工技術を使用して、形成可能である。実施例として、圧縮成形または射出成形(例えば、熱可塑性射出成形または反応射出成形)を含むが、それらに制限されない。塗膜によって被膜されるカートリッジの表面は、処理(例えば、プラズマ処理)され、その表面に上述の反応基を提供してもよい。好ましい実施形態では、管腔を画定する内部表面を含む、カートリッジは、単独連続材料から射出成形される。
【0034】
塗膜は、典型的には、水性または他の媒体中において、整合ポリマー材料を親水性材料と、随意に、架橋剤と結合することによって形成される。好ましい実施形態では、整合ポリマー材料および親水性材料は両方とも、水性媒体中で別個に提供され、撹拌棒によって、容器(例えば、フラスコまたはビーカー)内でともに混合され、混合物を形成する。次いで、架橋剤は、IOLカートリッジに塗膜を塗布する直前に、本混合物中に混合される。
【0035】
塗膜は、種々の技術を使用して、カートリッジの管腔の内部表面に塗布され得る。例えば、塗膜は、浸漬被膜、拭塗、刷塗、または別様に塗布され得る。一好ましい実施形態では、針等の注入デバイスを使用して、送達の際、IOLが進行するであろうノズル等の領域およびノズルに隣接する領域において、塗膜材料によって、カートリッジの内部管腔を充填する。このように、塗膜は、管腔の内部表面と結合される(すなわち、接着および/または反応される)。次いで、余剰塗膜は、カートリッジから一掃される(すなわち、排出される)。その後、塗膜は、加熱および/または蒸発を通して、乾燥される。
【0036】
塗膜は、典型的には、水を受容および保有可能な表面を提供し、それによって、潤滑表面を提供する。次いで、IOLは、その送達の際、被膜された表面全体を比較的に容易に摺動可能となる。これは、比較的狭小管腔を通して送達される、より柔らかいIOLの送達の場合、特に有利である。したがって、本送達システムは、個人の眼内への疎水性のアクリル系折畳可能IOLの送達のために、非常に望ましい。
【0037】
有利には、ポリウレタンと、特にポリウレタンコポリマー材料またはポリカーボネートとが、カートリッジの材料として使用される場合、それらの材料は、IOLカートリッジ、特に、カートリッジのノズルのために、非常に望ましい特性を提供可能である。さらにまた、そのような塗膜は、IOLカートリッジの表面に直接接着および/または接合可能であるため、それらの材料は、塗膜のポリウレタン整合ポリマー材料と併用するために、非常に望ましい。これによって、塗膜は、単一層として塗布可能となり、従来のIOL塗膜の1つ以上の層および/または1つ以上の塗布ステップが、回避可能である。例えば、少なくとも1つの従来のIOL塗膜は、カートリッジの内部表面がプラズマ処理され、所望の塗膜の塗布前に、ベース塗膜が内部表面に塗布されることを必要とした。好ましい単一層塗膜を使用することによって、ベース塗膜、さらに可能性として、プラズマ処理が、余分となる。
【0038】
出願人は、本開示に引用される全参考文献の全内容を具体的に組み込む。さらに、ある範囲、好ましい範囲、または好ましい上限値および好ましい下限値のリストとして、量、濃度、あるいは他の値またはパラメータが与えられる場合、範囲が別個に開示されているかどうかにかかわらず、任意の上範囲限界または好ましい値と任意の下範囲限界または好ましい値との任意の対から形成される、全範囲を具体的に開示するものとして理解されたい。数値範囲が、本明細書に列挙される場合、別途記載されない限り、範囲は、その端点および範囲内の全整数ならびに分数を含むことが意図される。発明の範囲が、範囲を画定する場合、列挙される特定の値に制限されることを意図するものではない。
【0039】
本発明の他の実施形態は、本明細書の検討および本明細書に開示される本発明の実践から、当業者に明白となるであろう。本明細書および実施例は、以下の請求項およびその均等物によって示される、本発明の真の範囲および精神とともに、例示のみとして検討されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IOL送達デバイスであって、
本体部分とノズルとを有する送達カートリッジであって、該本体部分およびノズルは、該本体部分および該ノズルに沿って延在する管腔を画定する内部表面を含み、少なくとも該内部表面は、異種骨格を有するポリウレタン材料または非オレフィンポリマー材料であるポリマー材料から形成される、送達カートリッジと、
該内部表面上に配置される塗膜であって、ポリウレタン材料と親水性材料とから形成される塗膜と
を備えている、デバイス。
【請求項2】
前記塗膜は、実質的に、前記ポリウレタン材料および前記親水性材料のみから成る、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記親水性材料は、ポリビニルピロリドンを含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記塗膜のポリウレタン材料は、架橋基質または線形基質を形成し、前記親水性材料は、該基質全体を通して分散される、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記塗膜は単一層であり、該単一層は、該単一層の上にどんな塗膜層も伴わずに、前記カートリッジの内部表面上に直接配置される、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記塗膜は、該塗膜と前記内部表面との間にどんなベース塗膜も伴わずに、該内部表面上に直接配置される、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記カートリッジおよび前記内部表面は、単独ポリマー材料から形成される、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記単独ポリマー材料は、ポリマーまたはコポリマーの混合物である、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記塗膜は、架橋体をさらに含む、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記内部表面の材料は、少なくとも1200MPaの曲げ弾性率を有する、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記曲げ弾性率は、3000MPa未満である、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記内部表面の材料は、少なくとも75Dの硬度を有する、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記硬度は、100D未満である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記塗膜内の前記ポリウレタン材料と親水性ポリマーとの重量比は、約10:1乃至約1:10である、請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記親水性材料は、PVPであるか、または該PVPを含み、該PVPは、約80乃至110のK値を有し、該PVPは、少なくとも800,000ダルトンかつ約1.8Mダルトン未満の平均分子量を有する、請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記カートリッジは、ノズルを含み、該ノズルの内径、外径、または両方は、2.5mm未満である、請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記内部表面のポリマー材料は、ポリウレタンである、請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−509150(P2012−509150A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537558(P2011−537558)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/064882
【国際公開番号】WO2010/059655
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】