説明

内面研磨治具

【課題】ガス導管等に形成した貫通孔周囲内面の樹脂層を作業性良く除去する。
【解決手段】内面研磨治具1の回転軸2先端に取付けられた研磨ブラシ3のフィラメント5を回転軸2に沿って平行に配置する。内面研磨治具1を貫通孔2に挿入するとき、研磨ブラシ3のフィラメント5が回転軸2に沿って平行に配置されているから貫通孔2に容易に挿入できる。貫通孔2に挿入した研磨ブラシ3を回転しながらフィラメント5を貫通孔2周囲に内面に押し付けて先端部を放射状に広げ、フィラメント5に含まれている研磨砥粒により貫通孔2内面を研磨する。研磨が終了したとき、研磨ブラシ3をハウジング4内に押し込み、フィラメント5の放射状に広がった先端部の外周を貫通孔2の直径より小さくして内面研磨治具1を貫通孔2から引き抜く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば内面を樹脂層で被覆した鋼管からなるガス導管等に形成した貫通孔を塞ぐためにプラグを溶接したり、貫通孔に他の管を接合したりするため、貫通孔周囲内面の樹脂層等を除去する内面研磨治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば内面を樹脂層で被覆した鋼管からなるガス導管の一部を取替えたり、不要になった分岐管を除去するとき、図5に示すように、ガス導管20の取替える部分23の両側に貫通孔22を穿孔し、この貫通孔22からガス導管20内にゴム玉24を挿入して膨らませてガスを遮断してから取替える部分23を切断して除去する。この除去した部分に新しい管を接合した後、貫通孔22からゴム玉24を取り外し、貫通孔22にプラグを取付け溶接して封止する。
【0003】
このガス導管20に穿孔した貫通孔22にプラグを取付けて溶接するとき、貫通孔22周囲内面の樹脂層21が溶接熱により加熱されてミスト状になって飛散し、飛散した粒子がガス導管20内に流れるガスとともに下流側に移動する。この粒子が下流のバルブやガス機器に付着するとバルブやガス機器を正常に動作させることができなくなる危険性がある。
【0004】
この危険性を解消するため、特許文献1に示すように、鋼製ワイヤーに砥粒を固定した研磨部材の一方の端部を、かしめ治具で複数本ずつ一体に固定した研磨材ユニットを複数中空可動軸の下端部に放射状に、かつ揺動自在に取付け、この中空可動軸の下端部から上部に開口を有する筒体の底部に下端部を固定した回転軸を挿入して中空可動軸の下端部にある研磨材ユニットの取付部を筒体の内部に挿入して、筒体開口端に対する研磨材ユニットの取付部の位置に応じて研磨部材を構成する鋼製ワイヤーの中空可動軸に対する取付角度を切り換える研磨治具を使用している。
【0005】
この研磨治具を管に設けた貫通孔に挿入したり、貫通孔から取り出すときは、中空可動軸の下端部を筒体の底部まで挿入した状態で中空可動軸を回転軸に固定し、筒体の開口端により研磨部材の中空可動軸に対する取付角度を小さくし、回転軸の軸芯から研磨部材の先端までの距離を管に設けた貫通孔の半径より小さくして研磨部材の先端が貫通孔に接触しないようにしている。このようにして研磨治具を管に設けた貫通孔に挿入した後、回転軸に対する中空可動軸の固定を解除し、中空可動軸を上方に移動して研磨材ユニットの取付部を筒体の開口端近傍まで移動し、筒体の開口端で規制している研磨部材の中空可動軸に対する取付角度を大きくして回転軸の軸芯から研磨部材の先端までの距離を管に設けた貫通孔の半径より大きくし、研磨部材の先端が貫通孔周囲の内面面に接触するようにする。この状態で回転軸を回転し、研磨部材を貫通孔周囲の内面面に圧接しながら回転して貫通孔周囲の内面面に形成された樹脂層を除去する。この樹脂層を除去するとき、回転軸を上向きに引き上げて研磨部材先端の回転半径を大きくし所定範囲の樹脂層を除去する。
【特許文献1】特開2003−191159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように研磨部材に弾性を有する鋼製ワイヤーを使用しているため、研磨治具を貫通孔から取り出すときだけでなく研磨治具を貫通孔に挿入する場合も、回転軸の軸芯から研磨部材の先端までの距離が貫通孔の半径より小さくなるように研磨部材の姿勢を変えて貫通孔の外周部に傷が付くことを防ぐ必要があり、回転軸に対する中空可動軸の固定位置を変える必要があり、この位置変えに時間がかかってしまう。
【0007】
また、貫通孔周囲の内面に形成された樹脂層を除去するとき、研磨部材を構成する鋼製ワイヤーを高速で回転しながら管内面に押し付けるため、鋼製ワイヤーの先端部に変形が生じ、研磨治具を貫通孔から取り出すときに研磨部材の姿勢を変えても、鋼製ワイヤーの先端部が貫通孔の外周部に引っかかり、研磨治具の取り出しが容易でないという短所もある。
【0008】
さらに、変形した鋼製ワイヤーの先端が折れやすく、折れた破片が飛び散るという危険性もある。
【0009】
この発明は、このような短所を改善し、内面を樹脂層で被覆した鋼管からなるガス導管等に形成した貫通孔周囲内面の樹脂層を作業性良く除去できる内面研磨治具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の内面研磨治具は、回転軸の先端に取付けられた研磨ブラシ及びハウジングを有し、研磨ブラシは、多数のフィラメントとフィラメント保持部を有し、フィラメントは合成樹脂に研磨砥粒を含ませて形成され、フィラメント保持部は底面の中心部に設けられ前記回転軸を通す貫通孔を有する軸連結部と、該軸連結部の外周部に設けられたフィラメント固定溝を有し、軸連結部に回転軸の先端部をフィラメント固定溝側から挿入して固定し、フィラメント固定溝にフィラメントの先端部を挿入して接着剤で固定して多数のフィラメントを回転軸に沿って平行に配置し、ハウジングはフィラメント保持部の外周と嵌合する内径を有する円筒状に形成され、一方の端部にフィラメント保持部の外周端を係止する係止部を有し、回転軸を係止部と反対側から挿入してフィラメントを係止部から突出させてフィラメントの一部とフィラメント保持部との外周部を覆うことを特徴とする。
【0011】
前記研磨ブラシのフィラメントを、ポリアミド樹脂に研磨砥粒を含ませて押し出し加工により形成することが望ましい。
【0012】
また、前記ハウジングの全長は、前記研磨ブラシの前記フィラメント保持部に固定した前記フィラメントのフィラメント保持部から先端までの長さのほぼ70%にフィラメント保持部の長さを加えた長さに形成すると良い。
【発明の効果】
【0013】
この発明の内面研磨治具は、貫通孔に挿入するとき、研磨ブラシのフィラメントが回転軸に沿って平行に配置されているから、貫通孔に容易に挿入することができる。
【0014】
また、研磨ブラシのフィラメントを合成樹脂で形成するから、貫通孔に挿入した研磨ブラシを回転しながらフィラメントを貫通孔周囲に内面に押し付けることにより、フィラメントの先端部を容易に放射状に広げることができる。
【0015】
さらに、貫通孔周囲内面に押し付けられて回転するフィラメントは貫通孔周囲内面に倣って屈曲して内面に安定して接触し、フィラメントに含まれている研磨砥粒により貫通孔内面を確実に研磨することができる。
【0016】
また、フィラメントを靭性や弾力性に富むとともに摩擦に強い特性を有するポリアミド樹脂で形成することにより、フィラメントを貫通孔周囲内面に大きな接触力で安定して接触させて研磨することができるとともに研磨中にフィラメントの先端が折れることを防ぐことができる。
【0017】
また、貫通孔周囲内面の研磨が終了したとき、研磨ブラシをハウジング内に押し込むことにより、放射状に広がってある程度湾曲したフィラメントをハウジングの係止部内周面で押えて、フィラメントの放射状に広がった先端部の外周を貫通孔の直径より小さくすることができ、内面研磨治具を貫通孔から容易に引き抜くことができる。
【0018】
さらに、ハウジングの全長は、前記研磨ブラシの前記フィラメント保持部に固定した前記フィラメントのフィラメント保持部から先端までの長さのほぼ70%にフィラメント保持部の長さを加えた長さに形成することにより、フィラメントの放射状に広がった先端部の外周を貫通孔の直径より確実に小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1はこの発明の内面研磨治具の構成を示す断面図である。図に示すように、内面研磨治具1は回転軸2の先端に取付けられた研磨ブラシ3及びハウジング4を有する。研磨ブラシ3は、図2の断面図に示すように、多数のフィラメント5とフィラメント保持部6を有する。フィラメント5はポリアミド樹脂に研磨砥粒を含ませて押し出し加工により形成され、靭性や弾力性に富んで折れにくいとともに摩擦に強い特性を有する。フィラメント保持部6は底面の中心部に回転軸2を通す貫通孔を有する軸連結部7を有し、軸連結部7の外周部にフィラメント固定溝8を有する。この軸連結部7の貫通孔に回転軸2の先端ねじ部をフィラメント固定溝8側から挿入してナット9,10で固定し、フィラメント固定溝8に多数のフィラメント5の先端部を挿入して接着剤で固定して、多数のフィラメント5を回転軸2に沿って平行に配置した研磨ブラシ3を形成する。
【0020】
ハウジング4はフィラメント保持部6の外周と嵌合する内径を有する円筒状に形成され、一方の端部にフィラメント保持部6の外周端を係止する係止部11を有する。このハウジング4の全長Lは研磨ブラシ3のフィラメント保持部6に固定したフィラメント5のフィラメント保持部6から先端までの長さL1のほぼ70%にフィラメント保持部6の長さL2を加えた長さに形成されている。そしてハウジング4の係止部11と反対側から研磨ブラシ3を有する回転軸2を挿入し、研磨ブラシ3のフィラメント保持部6を係止部11に係止させて回転軸2とフィラメント5をハウジング4から突出させて内面研磨治具1を構成する。
【0021】
この内面研磨治具1を使用して例えばガス導管20に穿孔した貫通孔22の周囲の内面樹脂層21を除去するときの操作を図3の工程図を参照して説明する。
【0022】
まず、図3(a)に示すように、内面研磨治具1をハウジング4側からガス導管20に穿孔した貫通孔22に挿入する。この内面研磨治具1を貫通孔22に挿入するとき、研磨ブラシ3のフィラメント5が回転軸2に沿って平行に配置されているから貫通孔22からガス導管20内に容易に挿入することができる。
【0023】
内面研磨治具1をガス導管20に挿入した後、図3(b)に示すように、回転軸2を貫通孔22の中心から外周側に移動し、回転軸2に沿って平行に配置されている研磨ブラシ3のフィラメント5の先端をガス導管20の内面樹脂層21に接触させた状態で回転軸2を回転ながら徐々に引き上げる。この回転軸2の回転と引き上げによりフィラメント5の先端部は放射状に広がり、貫通孔22の周囲の内面樹脂層21に回転しながら押し付けられる。このフィラメント5の放射状の広がりは回転軸2の引き上げに応じて大きく広がる。この状態で回転軸2を貫通孔22の中心に移動しながら徐々に引き上げると、図3(c)に示すように、フィラメント5の放射状の広がりは貫通孔22の直径より大きく広がり、フィラメント5の先端部が貫通孔22の周囲全体の内面樹脂層21に押し付けられて回転する。この内面樹脂層21に先端部が押し付けられて回転するフィラメント5は靭性や弾力性に富んでいるから内面樹脂層21に倣って屈曲するとともに先端が折れることなしに内面樹脂層21に安定して接触し、フィラメント5に含まれている研磨砥粒により内面樹脂層21を研磨して除去する。この内面樹脂層21を研磨して除去するとき、フィラメント5は耐摩耗性を有するポリアミド樹脂で形成されているからほとんど磨耗しないで内面樹脂層21を除去することができる。
【0024】
この内面樹脂層21の除去範囲があらかじめ定めた範囲になるように回転軸2の引上げ量を調節して内面樹脂層21を所定の除去範囲まで除去したら、回転軸2の回転を停止し、回転軸2をガス導管20内に押し込む。回転軸2をガス導管20内に押し込むとハウジング4が下降し、ハウジング4の底が貫通孔22と反対側の管内面に突き当たる。回転軸2をさらに押し込むと、図4の断面図に示すように、研磨ブラシ3がハウジング4内に押し込まれ、放射状に広がってある程度湾曲したフィラメント5がハウジング4の係止部11の内周面で押えられる。この湾曲したフィラメント5を係止部11で押えるとき、フィラメント5のフィラメント保持部6から先端までの長さL1のほぼ70%の位置で押えられるから、フィラメント5の放射状に広がった先端部の外周を貫通孔22の直径より小さくすることができる。この状態で回転軸2を引き上げると、フィラメント5とハウジング4の係止部11との間の摩擦力により、フィラメント5の放射状に広がった先端部の外周を貫通孔22の直径より小さくした状態で研磨ブラシ3とハウジング4を一体にして貫通孔22から容易に引き抜くことができる。
【0025】
内面研磨治具1を貫通孔22から引き抜いた後、使用済みの研磨ブラシ3をハウジング4から取り出し、未使用の研磨ブラシ3と交換して、次の貫通孔22の処理を行う。
【0026】
前記説明では、内面研磨治具1でガス導管20に穿孔した貫通孔22の周囲の内面樹脂層21を除去する場合について説明したが、各種容器の貫通孔やフランジ等の周囲内面面に付着した異物の除去の研磨にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の内面研磨治具の構成を示す断面図である。
【図2】研磨ブラシの構成を示す断面図である。
【図3】内面研磨治具の使用方法を示す工程図である。
【図4】内面研磨治具を貫通孔から引き抜くときの状態を示す断面図である。
【図5】ガス導管の一部を取替えるときのガス遮断状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1;内面研磨治具、2;回転軸、3;研磨ブラシ、4;ハウジング、
5;フィラメント、6;フィラメント保持部、7;軸連結部、
8;フィラメント固定溝、9,10;ナット、11;係止部、20;ガス導管、
21;内面樹脂層、22;貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の先端に取付けられた研磨ブラシ及びハウジングを有し、
前記研磨ブラシは、多数のフィラメントとフィラメント保持部を有し、前記フィラメントは合成樹脂に研磨砥粒を含ませて形成され、前記フィラメント保持部は底面の中心部に設けられ前記回転軸を通す貫通孔を有する軸連結部と、該軸連結部の外周部に設けられたフィラメント固定溝を有し、前記軸連結部の貫通孔に前記回転軸の先端部を前記フィラメント固定溝側から挿入して固定し、前記フィラメント固定溝に前記フィラメントの先端部を挿入して接着剤で固定して前記多数のフィラメントを前記回転軸に沿って平行に配置し、
前記ハウジングは前記フィラメント保持部の外周と嵌合する内径を有する円筒状に形成され、一方の端部に前記フィラメント保持部の外周端を係止する係止部を有し、前記回転軸を前記係止部と反対側から挿入して前記フィラメントを係止部から突出させて前記フィラメントの一部と前記フィラメント保持部との外周部を覆う、
ことを特徴とする内面研磨治具。
【請求項2】
前記研磨ブラシのフィラメントはポリアミド樹脂に研磨砥粒を含ませて押し出し加工により形成された請求項1記載の内面研磨治具。
【請求項3】
前記ハウジングの全長は、前記研磨ブラシの前記フィラメント保持部に固定した前記フィラメントのフィラメント保持部から先端までの長さのほぼ70%にフィラメント保持部の長さを加えた長さに形成されている請求項1又は2記載の内面研磨治具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−15049(P2007−15049A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198276(P2005−198276)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000231132)JFE工建株式会社 (54)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】