説明

円二色性スペクトルの測定方法及び測定装置

【課題】 従来のCDスペクトル測定方法とは光学配置を全く変えることにより、上記した従来の問題点を解決し、小さな光源で短時間にCDスペクトルを測定することを可能にする円二色性スペクトルの測定方法及び測定装置を提供すること。
【解決手段】 本発明に係る円二色性スペクトル測定方法は、白色光源から出射した白色光を、単色光に分光せずにサンプルに照射し、サンプルから出力された光を分光し、分光した光の光強度を電荷結合素子を用いたセンサを有する検出器で検出し、検出器による検出結果に基づいてサンプルの円二色性スペクトルを測定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円二色性スペクトルの測定方法の改良に関する。また、本発明は、前記方法を利用した円二色性スペクトル測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円二色性(CD)は、測定試料が左右円偏光に対して異なった吸収を示す現象をいい、発光団を持つ光学活性な物質(無機・有機化合物・生体分子等)のキラリティを測定するためにCDスペクトルを測定することが行われている。
【0003】
従来から行われているCDスペクトルの測定方法では、光源から出射された光を分光器で単色光に変換した後、偏光子にその単色光を透過させて直線偏光とし、その直線偏光にフォトエラスティックモジュレータ(PEM)等の偏光変調器を用いて円偏光を与えた後、サンプルに照射している。サンプルに照射された光は、サンプルの光学特性に応じて所定の光成分が吸収されて出力されるので、サンプルから出力された光を検出器で受光し、受光した光強度に応じた電気信号に基づいてCDスペクトルが算出される。
図8は、上記した従来のCDスペクトル測定方法を用いたCDスペクトル測定装置の概略ブロック図であり、符号30は光源、符号31は分光器、符号32は偏光子、符号33はフォトエラスティックモジュレータ(PEM)、符号34はサンプルセル、そして符号35は検出器を示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のCDスペクトル測定方法は、単色光に分光した光をサンプルに照射するが、光源から出射した光を単色光に分光するということは、その単色光以外の波長の光を全て捨てることになるため光量が著しく減り、これに伴い光強度が著しく低下する。このため、従来のCDスペクトル測定方法では、最終的にCDスペクトルを算出可能な強度の光強度を得るために450W以上の高出力光源を必要とするという問題がある。このような高出力光源を用いると当然のことながら、大規模な冷却システムが必要となり測定装置全体が大規模なものになる。
また、上記した従来のCDスペクトル測定装置では、波長を走査して、具体的には、ダブルプリズムモノクロメーターをモータで駆動させる等して単色光を作り出しているためフルスペクトルを取るのに数分の時間を要するという問題もあり、これだけ測定時間が長いとリアルタイム測定が困難である。
本発明は、従来のCDスペクトル測定方法とは光学配置を全く変えることにより、上記した従来の問題点を解決し、小さな光源で短時間にCDスペクトルを測定することを可能にする円二色性スペクトルの測定方法及び測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために本発明に係る円二色性スペクトルの測定方法は、白色光源から出射した白色光を、単色光に分光せずにサンプルに照射し、サンプルから出力された光を分光し、分光した光の光強度を、電荷結合素子を用いたセンサを有する検出器で検出し、検出器による検出結果に基づいてサンプルの円二色性スペクトルを測定することを特徴とする。
また、本発明に係る円二色性スペクトル測定装置は、白色光を出射する白色光源と、サンプルを設けたサンプルセルと、サンプルセルから出射した光を分光する分光器と、分光器で分光された光の光強度を検出する電荷結合素子を用いたセンサを有する検出器とを白色光源から出射される白色光の光路上に順に配置し、前記白色光源から出射した白色光を、単色光に分光せずに前記サンプルセルのサンプルに照射し、前記サンプルセルから出力された光を前記分光器で分光し、分光した光の光強度を前記電荷結合素子を用いたセンサを有する検出器で検出し、検出器による検出結果に基づいてサンプルの円二色性スペクトルを測定するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る円二色性スペクトル測定方法は、白色光源から出射した白色光を、単色光に分光せずにサンプルに照射し、サンプルから出力された光を分光し、分光した光の光強度を電荷結合素子を用いたセンサを有する検出器で検出し、検出器による検出結果に基づいてサンプルの円二色性スペクトルを測定する。このように、光源として白色光源を使用し、単色光に分光せずに測定を行うことにより、光のロスがなくなるので、従来の円二色性スペクトル測定方法に比べて、極めて小さな出力を光源、例えば、150Wの光源を用いて円二色性スペクトルを測定することが可能になる。このように光源を小さくすることにより、測定装置全体を小型化することが可能になる。
また、単色光へ分光しないため分光に必要な時間が短縮され、かつ、電荷結合素子を用いたセンサを有する検出器を用いることにより、従来数分必要であったフルスペクトルの取得にかかる時間を数秒まで短縮することが可能になる。
さらに、サンプルを設ける面を全反射界面とし、エバネッセント光を用いてCD測定を行うことにより、液体、固体(粉末を含む)及び気体(昇華分子を含む)の相の違いによる測定制限を受けることなく、どのようなサンプルでも測定することが可能になり、かつ、少量のサンプルで測定することが可能になる。
本発明に係る円二色性スペクトル測定装置は、白色光を出射する白色光源と、サンプルを設けたサンプルセルと、サンプルセルから出射した光を分光する分光器と、分光器で分光された光の光強度を検出する電荷結合素子を用いたセンサを有する検出器とを白色光源から出射される白色光の光路上に順に配置し、前記白色光源から出射した白色光を、単色光に分光せずに前記サンプルセルのサンプルに照射し、前記サンプルセルから出力された光を前記分光器で分光し、分光した光の光強度を前記電荷結合素子を用いたセンサを有する検出器で検出し、検出器による検出結果に基づいてサンプルの円二色性スペクトルを測定するように構成されているので、本発明に係る円二色性スペクトル測定方法と同様の効果を奏し、特に、光源の小型化により、装置全体を小型化することが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、添付図面に示した幾つかの実施例を参照して本発明に係る円二色性スペクトル測定方法及び測定装置の実施の形態について説明していく。
【0008】
図1は、本発明に係る円二色性スペクトル測定方法を実施するための円二色性スペクトル測定装置の第一の実施例の概略構成図を示している。
この円二色性スペクトル測定装置は、白色光がプリズム内で1回だけ全反射する一回反射式の測定装置である。
図中符号1は、150W程度の小さな出力の白色光源を示している。白色光源1から出射した白色光は、光ファイバ2によってポーラライザー3に導かれる。白色光はポーラライザー3を透過することによって45度の角度の直線偏光にされ、その後、フォトエラスティックモジュレータ(PEM)等の適当な変調器4により左右の円偏光が作られる。ここで、PEM4の変調周波数は50kHzである。
PEM4を通過した白色光は、半球プリズムから成るサンプルセル5に入射する。サンプルセル5の全反射界面にはサンプル6が設けられており、サンプルセル5に入射した光は、サンプルセル5の全反射界面で全反射した後、サンプルセル5から出射する。
サンプルセル5から出射した白色光は、小型回折格子から成る分光器7及びマイクロチャンネルプレート(MCP)8を介して電荷結合素子を用いたセンサを有するCCD等から成る検出器9で受光され、同検出器9において、受光した光強度に応じた電気信号に基づいてCDスペクトル値が算出される。
尚、ここでMCP8は、不図示の制御装置によって、その高速ゲート動作がPEM4の変調周波数に同期させられる。これにより、MCP8は、PEM4の変調周波数に同期した電子シャッターとして機能する。
上記したように、光源として白色光源を利用し、白色無偏光を円偏光に変換し、サンプル6で反射させた後に、白色光を小型回折格子で分光することにより、最初に大規模な分光器ダブルプリズムモノクロメーターで単色光に分光する従来の測定方法に比べて、光の損失が著しく少なくなるため、150W程度の小さな出力の光源を利用することが可能になり、その結果、測定装置全体を大幅に小型化することが可能になる。
また、検出器9に電子結合素子を用いたセンサを有するCCDを利用することにより、波長走査を電気的に行うことが可能になるため、1フルスペクトルあたりの走査速度が非常に速くなり、実質的にリアルタイムでのCDスペクトルの測定が可能になる。
さらに、サンプルセル5に半球プリズムを用いて、サンプルセル5に入射した白色光がサンプル6の下にあるプリズムの全反射界面で全反射するように構成することにより、全反射時に生じるエバネッセント光による光吸収を用いてサンプルのCDスペクトルを測定することができるようになるため、測定すべきサンプルが相(気体、液体、固体)の制限を受けることがなく、かつ、微量なサンプルで高感度な測定が可能になる。
また、検出器9で検出する光強度の波長ごとのブロックスペクトルを足し合わせることにより、PEM4が作り出す円偏光の偏光度の波長依存性を軽減することができる。
【0009】
図2は、本発明に係る円二色性スペクトル測定方法を実施するための円二色性スペクトル測定装置の第二の実施例の概略構成図を示している。
この円二色性スペクトル測定装置は、図1の測定装置と同様、白色光がサンプル上で1回だけ全反射する一回反射式の測定装置である。
図中符号11は、150W程度の小さな出力の白色光源を示している。白色光源11から出射した白色光は、光ファイバ12によってサンプルセル13に導かれる。この実施例では、サンプルセル13は半球プリズムから成り、サンプルセル13の全反射界面にはサンプル14が設けられている。サンプルセル13に入射した白色光は、サンプル14の下にあるプリズムの全反射界面で全反射した後、サンプルセル13から出射する。
サンプルセル13から出射した白色光は、フォトエラスティックモジュレータ(PEM)等の適当な変調器15に入り、そこで、左右の円偏光を与える操作が行われる。ここで、PEM15の変調周波数は50kHzである。
PEM15から出た光は、アナライザー16によって、45度の角度の直線偏光にされ、その後、分光器17及びマイクロチャンネルプレート(MCP)18を介して電荷結合素子を用いたセンサを有するCCD等から成る検出器19で受光される。
尚、ここでMCP18は、不図示の制御装置によって、その高速ゲート動作がPEM15の変調周波数に同期させられる。これにより、MCP18は、PEM15の変調周波数に同期した電子シャッターとして機能する。
【0010】
次に、図3及び図4を用いて本発明に係る円二色性スペクトル測定方法を実施するための円二色性スペクトル測定装置の第三及び第四の実施例を説明する。
図3及び図4に示す円二色性スペクトル測定装置は、白色光が6サンプル下の5導波路内で複数回全反射する多重反射式の測定装置である。
図3は、本発明に係る円二色性スペクトル測定方法を実施するための円二色性スペクトル測定装置の第三の実施例の概略構成図である。
この測定装置は、サンプルセルを、半球プリズムから断面台形型のスラブ型光導波路に変更した以外は、図1に示した実施例と同一の構成であるので、同一の構成要素については、図1に示した符号と同一の符号を付す。
白色光源1から出射した白色光は、光ファイバ2によってポーラライザー3に導かれ、ポーラライザー3で直線偏光にされた後にPEM4によって円偏光が作られる。
PEM4によって円偏光化された白色光は、スラブ型導波路から成るサンプルセル5’の入射面5aからサンプルセル5’内に入射する。
サンプルセル5’の全反射界面を構成する上面5bにはサンプル6が設けられており、サンプルセル5’内に入射した白色光は、サンプルセル5’内で全反射を繰り返す過程でサンプル6の下にある全反射界面で複数回全反射し、その後、サンプルセル5’の出射面5cから出射する。
サンプルセル5’から出射した白色光は、分光器7及びマイクロチャンネルプレート(MCP)8を介して電荷結合素子を用いたセンサを有するCCD等から成る検出器9で受光され、同検出器9において、受光した光強度に応じた電気信号に基づいてCDスペクトル値が算出される。
尚、ここでMCP8は、不図示の制御装置によって、その高速ゲート動作がPEM4の変調周波数に同期させられる。これにより、MCP8は、PEM4の変調周波数に同期した電子シャッターとして機能する。
上記したように、サンプルセルに半球プリズムではなく、スラブ型導波路を用い、白色光をサンプル6の下にある導波路の全反射界面で複数回全反射させることにより、半球プリズムより感度の高いCDスペクトル測定が可能になる。
【0011】
図4は、本発明に係る円二色性スペクトル測定方法を実施するための円二色性スペクトル測定装置の第四の実施例の概略構成図である。
この測定装置は、サンプルセルを、半球プリズムから断面台形型のスラブ型光導波路に変更した以外は、図2に示した実施例と同一の構成であるので、同一の構成要素については、図2に示した符号と同一の符号を付す。
白色光源11から出射した白色光は、光ファイバ12によってスラブ型導波路から成るサンプルセル13’に導かれ、サンプルセル13’の入射面13aからサンプルセル13’内に入射する。
サンプルセル13’の全反射界面を構成する上面13bにはサンプル14が設けられており、サンプルセル13’内に入射した白色光は、サンプルセル13’内で全反射を繰り返す過程でサンプル14の下にある全反射界面で複数回全反射し、その後、サンプルセル13’の出射面13cから出射する。
サンプルセル13’から出射した白色光は、フォトエラスティックモジュレータ(PEM)等の適当な変調器15に入り、そこで、左右の円偏光を与える操作が行われる。ここで、PEM15の変調周波数は50kHzである。
PEM15から出た光は、アナライザー16によって、45度の角度の直線偏光にされ、その後、分光器17及びマイクロチャンネルプレート(MCP)18を介して電荷結合素子を用いたセンサを有するCCD等から成る検出器19で受光される。
尚、ここでMCP18は、不図示の制御装置によって、その高速ゲート動作がPEM15の変調周波数に同期させられる。これにより、MCP18は、PEM15の変調周波数に同期した電子シャッターとして機能する。
【0012】
次に、図5及び図6を用いて本発明に係る円二色性スペクトル測定方法を実施するための円二色性スペクトル測定装置の第五及び第六の実施例を説明する。
図5及び図6に示す円二色性スペクトル測定装置は、光源から出射された白色光がサンプルを透過する透過式の測定装置である。
図5は、本発明に係る円二色性スペクトル測定方法を実施するための円二色性スペクトル測定装置の第五の実施例の概略構成図である。
この測定装置は、サンプルセルをプリズムから透過式セルに変更した以外は、図1に示した実施例と同一の構成要素を用いるので、同一の構成要素については、図1に示した符号と同一の符号を付す。
白色光源1から出射した白色光は、光ファイバ2によってポーラライザー3に導かれ、ポーラライザー3で直線偏光にされた後にPEM4によって円偏光が作られる。
PEM4によって円偏光化された白色光は、透過式セルから成るサンプルセル5’’に入射する。
サンプルセル5’’は、その内部に白色光が透過できるようにサンプル6を保持しており、サンプルセル5’’内に入射した白色光はサンプル6を透過してサンプルセル5’’から出射する。
サンプルセル5’’から出射した白色光は、分光器7及びマイクロチャンネルプレート(MCP)8を介して電荷結合素子を用いたセンサを有するCCD等から成る検出器9で受光され、同検出器9において、受光した光強度に応じた電気信号に基づいてCDスペクトル値が算出される。
尚、ここでMCP8は、不図示の制御装置によって、その高速ゲート動作がPEM4の変調周波数に同期させられる。これにより、MCP8は、PEM4の変調周波数に同期した電子シャッターとして機能する。
【0013】
図6は、本発明に係る円二色性スペクトル測定方法を実施するための円二色性スペクトル測定装置の第六の実施例の概略構成図である。
この測定装置は、サンプルセルをプリズムから透過式セルに変更した以外は、図2に示した実施例と同一の構成要素を用いるので、同一の構成要素については、図2に示した符号と同一の符号を付す。
白色光源11から出射した白色光は、光ファイバ12によって透過式セルから成るサンプルセル13’’に導かれ、サンプルセル13’’内に入射する。
サンプルセル13’’は、その内部に白色光が透過できるようにサンプ14を保持しており、サンプルセル13’’内に入射した白色光はサンプル14を透過してサンプルセル13’’から出射する。
サンプルセル13’’から出射した白色光は、フォトエラスティックモジュレータ(PEM)等の適当な変調器15に入り、そこで、左右の円偏光を与える操作が行われる。ここで、PEM15の変調周波数は50kHzである。
PEM15から出た光は、アナライザー16によって、45度の角度の直線偏光にされ、その後、分光器17及びマイクロチャンネルプレート(MCP)18を介して電荷結合素子を用いたセンサを有するCCD等から成る検出器19で受光される。
尚、ここでMCP18は、不図示の制御装置によって、その高速ゲート動作がPEM15の変調周波数に同期させられる。これにより、MCP18は、PEM15の変調周波数に同期した電子シャッターとして機能する。
【0014】
図7は、図5に示した本発明に係る測定装置と、図8に示した従来の測定方法とで、キラルな結晶構造を有するNi(HO)・SeOの単結晶と、α―Ni(HO)・SOの単結晶とのCDスペクトルを測定した結果を示すグラフである。
測定に際して、本発明に係る測定装置では、検出器9として、分光計器社(日本国)製のポリクロメータMK−300及びAndor社(米国)のICCD検出器を設けたシステム・インスツルメンツ株式会社製の分光計SIS−50を使用し、光源として150Wの白色光源を用い、PEMの電圧は、390nmで1/4波長板として機能するよう設定した。
また、従来の測定方法では、検出器35として、浜松フォトニクス社(日本国)製の光電子増倍管R-376を使用して、光源として450Wの光源を使用した。
従来の測定方法では、図7(b)の測定結果が得られるのに5分の時間を要したが、本発明に係る測定装置では、図7(a)の測定結果が得られるのに2分半の時間しかかからなかった。
尚、本願の測定結果(図7(a))は、CDスペクトルを右円偏光と左円偏光で測定した光強度の差をとったカウントで表しているのに対して、従来の測定結果(図7(b))は、CDスペクトルを旋光角(mdeg)で表しているが、図7(a)で得られたCDスペクトルを旋光角に変換すると同じオーダーの値を示すことが確認できており、測定結果の比較には影響はない。
この実験結果から、本発明に係る測定方法及び装置によれば、従来の測定方法に比べて極めて小規模な光源を用いてCDスペクトルを測定することが可能であり、かつ、測定時間も少なくとも半減することが可能であることが確認できた。
尚、発明者等は、図5に示した本発明に係る測定装置をセットアップした後、光軸等の微調整を行わずにCDスペクトルの測定を行って2分半で図7(a)に示す結果を得たが、その後、光軸等の微調整を行うことにより、同様の結果を7秒というさらに短い時間で得ることができた。
【0015】
以上説明した実施例では、サンプルセルとして、半球プリズム、光導波路及び透過式セルを用いた例を挙げているが、サンプルセルの形態は本実施例に限定されることなく、例えば、シリンドリカルプリズムや多角形プリズムを用いることができることは勿論である。
また、上記した実施例では、マイクロチャンネルプレートを用いて検出器で受光する周波数をPEMの変調周波数に同期させているが、これは本実施例に限定されることなく、例えばチョッパーや外部トリガーを利用する方法により検出器で受光する周波数をPEMの変調周波数に同期させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る円二色性スペクトル測定方法を実施するための円二色性スペクトル測定装置の第一の実施例の概略構成図である。
【図2】本発明に係る円二色性スペクトル測定方法を実施するための円二色性スペクトル測定装置の第二の実施例の概略構成図である。
【図3】本発明に係る円二色性スペクトル測定方法を実施するための円二色性スペクトル測定装置の第三の実施例の概略構成図である。
【図4】本発明に係る円二色性スペクトル測定方法を実施するための円二色性スペクトル測定装置の第四の実施例の概略構成図である。
【図5】本発明に係る円二色性スペクトル測定方法を実施するための円二色性スペクトル測定装置の第五の実施例の概略構成図である。
【図6】本発明に係る円二色性スペクトル測定方法を実施するための円二色性スペクトル測定装置の第六の実施例の概略構成図である。
【図7】(a)は本発明に係る測定装置を用いたCDスペクトルの測定結果を、(b)は従来の測定方法を用いたCDスペクトルの測定結果を各々示している。
【図8】従来のCDスペクトル測定方法を用いたCDスペクトル測定装置の概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0017】
1 白色光源
2 光ファイバ
3 ポーラライザー
4 PEM
5;5’;5’’ サンプルセル
6 サンプル
7 分光器
8 MCP
9 検出器(CCD)

11 白色光源
12 光ファイバ
13;13’;13’’ サンプルセル
14 サンプル
15 PEM
16 アナライザー
17 分光器
18 MCP
19 検出器(CCD)

30 光源
31 分光器
32 偏光子
33 PEM
34 サンプルセル
35 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光源から出射した白色光を、単色光に分光せずにサンプルに照射し、
サンプルから出力された光を分光し、
分光した光の光強度を電荷結合素子を用いたセンサを有する検出器で検出し、
検出器による検出結果に基づいてサンプルの円二色性スペクトルを測定する
ことを特徴とする円二色性スペクトル測定方法。
【請求項2】
光源から出射した白色光を偏光子に透過させて直線偏光を作り出し、
その直線偏光に偏光変調器を用いて円偏光を与えた後にサンプルに照射する
ことを特徴とする請求項1に記載の円二色性スペクトル測定方法。
【請求項3】
サンプルから出力された光に偏光変調器を用いて円偏光を与える操作を行った後に、偏光子を透過させて直線偏光を作り出し、該直線偏光を分光器で分光する
ことを特徴とする請求項1に記載の円二色性スペクトル測定方法。
【請求項4】
サンプルを設ける面を全反射界面とし、エバネッセント光を用いて吸収測定を行い右円偏光と左円偏光との差から円二色性スペクトルを測定する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の円二色性スペクトル測定方法。
【請求項5】
前記サンプルを、光導波路、シリンドリカルプリズム、半球プリズム又は多角形プリズムの反射面に設け、
白色光を光導波路、シリンドリカルプリズム、半球プリズム又は多角形プリズムに入射し、光導波路、シリンドリカルプリズム、半球プリズム又は多角形プリズム内の反射面において反射した後に、光導波路、シリンドリカルプリズム、半球プリズム又は多角形プリズムから出射した光に基づいて円二色性スペクトルを測定する
ことを特徴とする請求項4に記載の円二色性スペクトル測定方法。
【請求項6】
偏光変調器の変調周波数に基づいて、電荷結合素子を用いたセンサを有する検出器への光の入射タイミングを調整する
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の円二色性スペクトル測定方法。
【請求項7】
マイクロチャンネルプレートを用いて、電荷結合素子を用いたセンサを有する検出器への光の入射タイミングを調整する
ことを特徴とする請求項6に記載の円二色性スペクトル測定方法。
【請求項8】
電荷結合素子を用いたセンサで検出する光強度の波長ごとのブロックスペクトルを足し合わせることにより、変調器が作り出す円偏光の偏光度の波長依存性を軽減する
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の円二色性スペクトル測定方法。
【請求項9】
白色光を出射する白色光源と、
サンプルを設けたサンプルセルと、
サンプルセルから出射した光を分光する分光器と、
分光器で分光された光の光強度を検出する電荷結合素子を用いたセンサを有する検出器と
を白色光源から出射される白色光の光路上に順に配置し、
前記白色光源から出射した白色光を、単色光に分光せずに前記サンプルセルのサンプルに照射し、
前記サンプルセルから出力された光を前記分光器で分光し、
分光した光の光強度を、前記電荷結合素子を用いたセンサを有する検出器で検出し、
検出器による検出結果に基づいてサンプルの円二色性スペクトルを測定する
ように構成した
ことを特徴とする円二色性スペクトル測定装置。
【請求項10】
前記白色光源と前記サンプルセルとの間に、
偏光子及び偏光変調器を順に設けた
ことを特徴とする請求項9に記載の円二色性スペクトル測定装置。
【請求項11】
前記サンプルセルと前記分光器との間に、
偏光子及び偏光変調器を順に設けた
ことを特徴とする請求項9に記載の円二色性スペクトル測定装置。
【請求項12】
前記サンプルセルが全反射界面を有し、
前記全反射界面にサンプルが設けられている
ことを特徴とする請求項9〜11の何れか一項に記載の円二色性スペクトル測定装置。
【請求項13】
前記サンプルセルが、光導波路、シリンドリカルプリズム、半球プリズム、又は多角形プリズムの何れかから成る
ことを特徴とする請求項12に記載の円二色性スペクトル測定装置。
【請求項14】
前記電荷結合素子を用いたセンサを有する検出器が、マイクロチャンネルプレートを備え、
前記マイクロチャンネルプレートにより電荷結合素子を用いたセンサを有する検出器への光の入射タイミングを調整する
ことを特徴とする請求項9〜13に記載の円二色性スペクトル測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−250765(P2009−250765A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98471(P2008−98471)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(392017303)システム・インスツルメンツ株式会社 (15)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】