説明

円二色性スペクトルの測定方法及び測定装置

【課題】動的変化の早い化学反応、凝集体のプロセスや生体高分子のコンフォメーション変化等のダイナミクス測定が可能な第三世代の円二色性スペクトル測定装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る測定方法は、方位角45度の偏光子、光学軸を0度とした第一偏光変調器、光学軸を0度とした波長板及び方位角−45度の偏光子とで光チョッパシステムを構成し、前記光チョッパシステムを用いて光源からの光をサンプルに入射する前に直線偏光し、さらに、第二偏光変調器を設けて、前記直線偏光された光を円偏光のみの変調光に偏光すると共に、第一偏光変調器に付加する駆動電圧の電圧信号波形の極性を反転させることができるようにすることで、前記光チョッパシステムにおいて、光源からの光に左右円偏光それぞれに同期したチョッパをかけて、光源からの光を矩形波状の波形の光強度を持つ直線偏光に偏光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円二色性スペクトルの測定方法の改良に関する。また、本発明は、前記方法を利用した円二色性スペクトル測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発色団を持つ光学活性な物質(無機・有機化合物・生体分子等)のキラリティを測定する代表的な手段として、円複屈折(Circular Birefringence, CB)分光法及び円二色性(Circular Dichroism, CD)分光法を用いたCD・CB分光計は提案されている。
しかし、これら従来のCD・CB分光計は、測定すべき試料の状態が光学的異方性を持たない溶液状態でなければ測定を行うことができない。
生体関連物質であれば生体内により近い状態、即ち、非溶液状態の測定からのみ得られる物理化学的知見は少なくない。
物質は非溶液状態では光学的異方性を持つことが多く、このような非溶液状態の試料を測定できる装置として、同期検波法を用いた一次元分光計から成る第一世代の測定装置が提案されている。
しかし、この同期検波法に基づく第一世代の測定装置における、光学的異方性試料のキラリティ測定は、煩雑な解析法が必要で、特別な場合を除いて直接、純粋な偏光現象を得ることが出来ない。
そこで、発明者等は、偏光分光解析に威力を発揮するStokes-Mueller matrix解析を用い、偏光解析が不要な第二世代の円二色性スペクトル測定装置を開発し、これを提案した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2009/123307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この第二世代の測定装置は同期検波法に基づく第一世代の汎用一次元分光計と異なり、高速電子シャッター(マルチチャンネルプレート)を使用し、偏光変調器(PEM)で偏光変調された特定の変調領域(入射光の5%程度)を抽出する。これにより得られるスペクトルは特別な解析なしに、求めるべき偏光現象の真のスペクトルを得ることが可能である。
しかし、この第二世代の測定装置は、最小感度が30μODであり、S/N比(信号雑音比)のさらなる改善が必要である。
また偏光変調周波数と偏光現象間に遅延度(=変調器駆動電圧)依存性の遅れが存在するため、高速変調(50kHz)された偏光を正確に抽出するトリガー機構の制御が複雑であった。
また、前記第二世代の測定装置ではマイクロチャンネルプレート(MCP)を使って光変調器の円偏光成分のみを間引きして検出しているので、変調された光の5%程度しかシグナル解析に用いていない。結果として第二世代の測定装置では分解能(Δε■ は10-2〜10-3オーダーであり、S/N比および分解能向上は市販・汎用性を目指すためには不可欠である。
本発明は、上記した従来の問題点を解決し、かつ、動的変化の早い(<数秒)化学反応、凝集体のプロセスや生体高分子のコンフォメーション変化等のダイナミクス測定が可能な第三世代の円二色性スペクトル測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために本発明に係る円二色性スペクトルの測定方法は、光源から出射した光を、サンプルに照射し、サンプルから出力された光の右円偏光と左円偏光との差からサンプルの円二色性スペクトルを測定する測定方法において、方位角45度の偏光子、光学軸を0度とした第一偏光変調器、光学軸を0度とした波長板及び方位角−45度の偏光子とで光チョッパシステムを構成し、前記光チョッパシステムを用いて光源からの光をサンプルに入射する前に直線偏光し、さらに、第二偏光変調器を設けて、前記直線偏光された光を円偏光のみの変調光に偏光すると共に、第一偏光変調器に付加する駆動電圧の電圧信号波形の極性を反転させることができるようにすることで、前記光チョッパシステムにおいて、光源からの光に左右円偏光それぞれに同期したチョッパをかけて、光源からの光を矩形波状の波形の光強度を持つ直線偏光に偏光するようにしたことを特徴とする。
また、本発明に係る円二色性スペクトルの測定装置は、光源と、サンプルを設けたサンプルセルと、サンプルから出射した光を受光する検出器とを備え、前記検出器においてサンプルセルから出射された光の右円偏光と左円偏光との差からサンプルの円二色性スペクトルを測定する円二色性スペクトル測定装置において、光源とサンプルセルとの間に、方位角45度の偏光子、光学軸を0度とした第一偏光変調器、光学軸を0度とした波長板及び方位角−45度の偏光子とで構成した光チョッパシステムを配置し、前記光チョッパシステムとサンプルセルとの間、又は、サンプルセルと検出器との間に、直線偏光された光を円偏光のみの変調光に偏光する第二偏光変調器を設け、第一偏光変調器に付加する駆動電圧の電圧信号波形の極性を反転させることができるようにすることで、前記光チョッパシステムにおいて、光源からの光に左右円偏光それぞれに同期したチョッパをかけて、光源からの光を矩形波状の波形の光強度を持つ直線偏光に偏光するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る円二色性スペクトルの測定方法は、光源から出射した光を、サンプルに照射し、サンプルから出力された光の右円偏光と左円偏光との差からサンプルの円二色性スペクトルを測定する測定方法において、方位角45度の偏光子、光学軸を0度とした第一偏光変調器、光学軸を0度とした波長板及び方位角−45度の偏光子とで光チョッパシステムを構成し、前記光チョッパシステムを用いて光源からの光をサンプルに入射する前に直線偏光し、さらに、第二偏光変調器を設けて、前記直線偏光された光を円偏光のみの変調光に偏光すると共に、第一偏光変調器に付加する駆動電圧の電圧信号波形の極性を反転させることができるようにすることで、前記光チョッパシステムにおいて、光源からの光に左右円偏光それぞれに同期したチョッパをかけて、光源からの光を矩形波状の波形の光強度を持つ直線偏光に偏光するので、ほぼ全ての変調領域の光を使用することができ、単位時間当たりの光量を増すことでS/N比および分解能向上を達成することができる。
光チョッパシステムにおいて、光源からの光に左右円偏光それぞれに同期したチョッパをかけて、光源からの光を矩形波状の波形の光強度を持つ直線偏光に偏光するので、変調一周期内に左右円偏光の割合を増加させることができる。これにより、偏光変調器に同期した高速電子シャッターを使用した第二世代の測定装置と比較して、約20倍の高速化が可能になる。
また、第一及び第二偏光変調器を、同一の発振回路に基づいて動作する駆動電圧回路で駆動することにより、前記第一及び第二偏光変調器の動作がシンクロナイズし、時間遅れを最小限に抑えることが可能になる。
本発明に係る円二色性スペクトルの測定装置は、上記した本発明に係る円二色性スペクトルの測定方法と同一の効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る円二色性スペクトルの測定方法を適用した円二色性スペクトル測定装置の一実施例の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】マイクロチャンネルプレート(MCP)を用いる第二世代の測定装置の偏光変調器に付加する駆動電圧波形と、パルスジェネレータからマイクロチャンネルプレートに付加するトリガーパルスゲート幅を示している。
【図3】本発明に係る測定方法及び測定装置における第二偏光変調器に付加する駆動電圧波形と、光チョッパシステムによる光強度制御によって得られる光強度を示している。
【図4】本発明に係る測定方法及び測定装置に用いられる光チョッパシステムにより得られるオシロ波形を示す図である。
【図5】本発明に係る円二色性スペクトル測定装置の第二実施例の概略図である。
【図6】本発明に係る円二色性スペクトル測定装置の第三実施例の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面に示した実施例を参照して本発明に係る円二色性スペクトル測定方法及び測定装置の実施の形態について説明していく。
【0009】
本発明に係る円二色性スペクトルの測定方法は、偏光変調器(PEM)を備えた光チョッパシステムを用いて、光源から出た光から、所定の周波数で変調された1:1のデューティ比を持つ矩形波に近い矩形波状の波形の光強度を持つ直線偏光を作り出す。そして、光チョッパシステムによってチョッピングされた直線偏光から、第二の偏光変調器(PEM)を用いて、目的とする円偏光のみの変調光を作り出す。
【0010】
図1は、本発明に係る円二色性スペクトルの測定方法を適用した円二色性スペクトル測定装置の一実施例の構成を示す概略ブロック図である。
図中、符号1は白色光源を、符号2はレンズを、符号3は光ファイバを、符号4は光チョッパシステムを示している。
光チョッパシステム4は、方位角45度の偏光子5、光学軸を0度とした第一偏光変調器6、光学軸を0度とした波長板7及び方位角−45度の偏光子8から成る。
前記波長板7は広帯域対応波長板である必要があり、この実施例では遅延度可変のハビネソレイユ補償板が用いられ、ステッピングモータ9で第一偏光変調器6の中心波長と連動した位相差になるように制御される。
光チョッパシステム4の後ろには、さらに第二偏光変調器10が設けられている。
図中、符号11は、第一及び第二偏光変調器6及び10の駆動装置である。駆動装置11は、水晶振動子を用いた一つの発振回路11a、前記発振回路11aに基づいて動作する第一偏光変調器用駆動電圧回路11b及び第二偏光変調器用駆動電圧回路11cを備えている。
第一偏光変調器用駆動電圧回路11b(正弦波電圧回路)には、第一偏光変調器6に付加する駆動電圧の電圧信号波形の極性を反転させる極性反転回路(NOTゲート)が設けられ、この極性反転回路により、左右円偏光それぞれに同期したチョッパをかけることが可能になる。
また、第二偏光変調器用駆動電圧回路(矩形波電圧回路)11cの増幅部はトランジスタスイッチングとして動作するよう構成され、このスイッチング動作により、通常正弦波である第二偏光変調器10の駆動電圧波形を矩形波に変え、一周期内の左右円偏光の割合を増加させる。
光源1から出た光は、光チョッパシステム4によって矩形波状の波形の光強度を持つ直線偏光に偏光され、その後、第二変調偏光器10によって円偏光のみの変調光に偏光される。第二変調偏光器10から出た変調光は、サンプル12を透過した後、レンズ13及び光ファイバ14を介して検出器15に送られ、同検出器15において受光した光強度に応じた電気信号に基づいてCDスペクトル値が算出される。
【0011】
図2はマイクロチャンネルプレート(MCP)を用いる第二世代の測定装置の偏光変調器に付加する駆動電圧波形と、パルスジェネレータからマイクロチャンネルプレートに付加するトリガーパルスゲート幅を示している。
図3は本発明に係る測定方法における第二偏光変調器に付加する駆動電圧波形と、光チョッパシステムによる光強度制御によって得られる光強度を示している。
図2に示すように、偏光変調器の駆動電圧波形が正弦波である第二世代の測定装置では、マイクロチャンネルプレート(MCP)を使って光変調器の円偏光成分のみを間引きしているため、変調周期のおよそ5%しか光を利用できなかった。第二世代の測定装置では、駆動電圧と偏光現象との間に遅れがあり、また、時間軸に対する偏光変調器からの出射光強度のゆらぎが存在するため、僅かな遅れによる時間軸のずれがS/N比に大きく影響する。発明者等は、第二世代の測定装置では、トリガー制御のパルス幅を拡張することでS/N比が劇的に改善することを確認し、また、純度の高い偏光現象を捉えるためにはトリガー制御に数百ナノ秒の精度と1〜0.5μsecの最適パルス幅が必須であることを確認した。しかし、この第二世代の測定装置では、パルス幅1μsec以上の拡張は偏光純度を保てないため、結果としてS/N比の改善には積算回数を増やすしかなく、高速化は困難である。
これに対して、本実施例に係る測定方法及び測定装置では、第一偏光変調器用駆動電圧回路11b(正弦波電圧回路)に、第一偏光変調器6に付加する駆動電圧の電圧信号波形の極性を反転させる極性反転回路(NOTゲート)を設け、この極性反転回路により、光チョッパシステム4で左右円偏光それぞれに同期したチョッパをかけることができるようにして、光源1から出た光を、光チョッパシステム4によって矩形波状の波形の光強度を持つ直線偏光に偏光すると共に、第二偏光変調器用駆動電圧回路(矩形波電圧回路)11cの増幅部をトランジスタスイッチングとして動作するよう構成し、このスイッチング動作により、通常正弦波である第二偏光変調器10の駆動電圧波形を矩形波に変え、一周期内の左右円偏光の割合を増加させているので、図3に示すように、ほぼ全ての変調領域にわたって光を使用することが可能になり、さらに左右円偏光それぞれに同期したチョッパをかけることができる。ほぼ全ての変調領域にわたって光を使用することが可能になるため、第二世代の測定装置では数秒かかっていたフルスペクトル測定時間をミリ秒オーダーまで高速化することが可能になる。また、左右円偏光それぞれに同期したチョッパをかけることができるため、左右円偏光の吸収の差を求めて円二色性スペクトルを得ることが可能になる。
さらに、本実施例に係る測定方法及び測定装置では、光チョッパシステムの第一偏光変調器6と、光チョッパシステムの後ろに配置された第二偏光変調器10とを共通の発振回路11aを備えた駆動装置11で駆動しているため、二つの偏光変調器6及び10の動作がシンクロナイズし、時間遅れが最小限に抑えられている。
さらにまた、本実施例に係る測定方法及び測定装置では、光源として白色光源を使用し、白色光源から出射した白色光を、単色光に分光せずにサンプルに照射するので、光のロスが少なく、極めて小さな出力の光源、例えば、150Wの光源を用いて円二色性スペクトルを測定することが可能になる。このように光源を小さくすることにより、測定装置全体を小型化することが可能になる。また、単色光へ分光しないため分光に必要な時間を短縮することが可能になる。
【0012】
図4は、上記した測定装置に用いられる光チョッパシステムにより得られるオシロ波形を示す図である。
光チョッパシステムは、オシロスコープを用いて、二つの偏光子を正確にクロスニコル配置に設定し、二つの偏光子の方位角をそれぞれ45度及び−45度に調整した後、光学軸を0度に設定した偏光変調器と波長板とを二つの偏光子の間に挿入して作成した。また波長板は632.8nmでλ/4になるように設定した。
図4に示すように、上記したように構成することにより光チョッパシステムで1周期(20μsec)の矩形波を得ることができることが確認できる。各構成要素(偏光子、偏光変調器及び波長板)をさらに調整することで立ち上がり時間の短い矩形波を得ることが可能になる。
【0013】
図5は、本発明に係る円二色性スペクトル測定装置の第二実施例の概略図である。
図中、符号20は光源を、符号21は光ファイバを、符号23は光チョッパシステムを各々示している。光チョッパシステム23は、方位角45度の偏光子24、光学軸を0度とした第一偏光変調器25、光学軸を0度とした波長板26及び方位角−45度の偏光子27から成る。符号28は波長板26用のステッピングモータを示している。
光チョッパシステム23の後ろには、さらに第二偏光変調器29が配置されており、これら第一偏光変調器25と第二偏光変調器29とは、駆動装置30によって駆動される。
駆動装置30は、水晶振動子を用いた一つの発振回路30a、前記発振回路30aに基づいて動作する第一偏光変調器用駆動電圧回路30b及び第二偏光変調器用駆動電圧回路30cを備えている。
第一偏光変調器用駆動電圧回路30b(正弦波電圧回路)には、第一偏光変調器25に付加する駆動電圧の電圧信号波形の極性を反転させる極性反転回路(NOTゲート)が設けられ、この極性反転回路により、左右円偏光それぞれに同期したチョッパをかけることが可能になる。
また、第二偏光変調器用駆動電圧回路(矩形波電圧回路)30cの増幅部はトランジスタスイッチングとして動作するよう構成され、このスイッチング動作により、通常正弦波である第二偏光変調器29の駆動電圧波形を矩形波に変え、一周期内の左右円偏光の割合を増加させる。
光源20から出た光は、光チョッパシステム23によって矩形波状の波形の光強度を持つ直線偏光に偏光され、その後、第二変調偏光器29によって円偏光のみの変調光に偏光される。
第二偏光変調器29から出射した変調光は、プリズム31に入射する。プリズム31の全反射界面にはサンプル32が設けられており、プリズム31に入射した光は、プリズム31の全反射界面で全反射した後、プリズム31から出射し、CCD等から成る検出器33で受光される。検出器33は、プリズム31に入射した光が、サンプル32の下にある全反射界面で全反射した時に生じるエバネッセント光による光吸収を用いてサンプルのCDスペクトルを測定する。
【0014】
図6は、本発明に係る円二色性スペクトル測定装置の第三実施例の概略図である。
図中、符号40は光源を、符号41は光ファイバを、符号43は光チョッパシステムを各々示している。光チョッパシステム43は、方位角45度の偏光子44、光学軸を0度とした第一偏光変調器45、光学軸を0度とした波長板46及び方位角−45度の偏光子47から成る。符号48は波長板46用のステッピングモータを示している。
光源40から出た光は、光チョッパシステム43によって矩形波状の波形の光強度を持つ直線偏光に偏光された後、スラブ型導波路から成るサンプルセル49に入射する。
サンプルセル49の全反射界面を構成する上面にはサンプル50が設けられており、サンプルセル49内に入射した光は、サンプルセル49内で全反射を繰り返す過程でサンプル50の下にある全反射界面で複数回全反射し、その後、サンプルセル49から出射する。
サンプルセル49から出射した光は、第一偏光変調器45と共通の発振回路を有する駆動回路51によって駆動される第二偏光変調器52において円偏光のみの変調光に偏光された後、方位角45度の偏光子53を介してCCD等から成る検出器54で受光される。
前記駆動装置51は、水晶振動子を用いた一つの発振回路51a、前記発振回路51aに基づいて動作する第一偏光変調器用駆動電圧回路51b及び第二偏光変調器用駆動電圧回路51cを備えている。
第一偏光変調器用駆動電圧回路51b(正弦波電圧回路)には、第一偏光変調器45に付加する駆動電圧の電圧信号波形の極性を反転させる極性反転回路(NOTゲート)が設けられ、この極性反転回路により、左右円偏光それぞれに同期したチョッパをかけることが可能になる。
また、第二偏光変調器用駆動電圧回路(矩形波電圧回路)51cの増幅部はトランジスタスイッチングとして動作するよう構成され、このスイッチング動作により、通常正弦波である第二偏光変調器52の駆動電圧波形を矩形波に変え、一周期内の左右円偏光の割合を増加させる。
検出器54は、サンプルセル49に入射した光が、サンプル50の下にある全反射界面で全反射した時に生じるエバネッセント光による光吸収を用いてサンプルのCDスペクトルを測定する。
【0015】
上記した実施例では、第一偏光変調器を正弦波形を持つ駆動電圧で駆動し、第二偏光変調器を矩形波形を持つ駆動電圧で駆動しているが、第一偏光変調器の駆動電圧波形は本実施例に限定されることなく、矩形波形を持つ駆動電圧で駆動してもよい。
また、上記した実施例では、光源に白色光源を用いているが、これは本実施例に限定されることなく、赤外光源、単色光源、真空紫外領域光源又は紫外(UV)光源を用いてもよい。
【符号の説明】
【0016】
1 光源
2 レンズ
3 光ファイバ
4 光チョッパシステム
5 偏光子(45度)
6 第一偏光変調器(0度)
7 波長板(0度)
8 偏光子(−45度)
9 ステッピングモータ
10 第二偏光変調器
11 駆動装置
11a 発振回路
11b 第一偏光変調器用駆動電圧回路
11c 第二偏光変調器用駆動電圧回路
12 サンプル
13 レンズ
14 光ファイバ
15 検出器

20 光源
21 光ファイバ
23 光チョッパシステム
24 偏光子
25 第一偏光変調器
26 波長板
27 偏光子
28 ステッピングモータ
29 第二偏光変調器
30 駆動装置
30a 発振回路
30b 第一偏光変調器用駆動電圧回路
30c 第二偏光変調器用駆動電圧回路
31 プリズム
32 サンプル
33 検出器

40 光源
41 光ファイバ
43 光チョッパシステム
44 偏光子
45 第一偏光変調器
46 波長板
47 偏光子
48 ステッピングモータ
49 サンプルセル
50 サンプル
51 駆動装置
51a 発振回路
51b 第一偏光変調器用駆動電圧回路
51c 第二偏光変調器用駆動電圧回路
52 第二偏光変調器
53 偏光子
54 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射した光を、サンプルに照射し、サンプルから出力された光の右円偏光と左円偏光との差からサンプルの円二色性スペクトルを測定する測定方法において、
方位角45度の偏光子、光学軸を0度とした第一偏光変調器、光学軸を0度とした波長板及び方位角−45度の偏光子とで光チョッパシステムを構成し、
前記光チョッパシステムを用いて光源からの光をサンプルに入射する前に直線偏光し、
さらに、第二偏光変調器を設けて、前記直線偏光された光を円偏光のみの変調光に偏光すると共に、
第一偏光変調器に付加する駆動電圧の電圧信号波形の極性を反転させることができるようにすることで、前記光チョッパシステムにおいて、光源からの光に左右円偏光それぞれに同期したチョッパをかけて、光源からの光を矩形波状の波形の光強度を持つ直線偏光に偏光するようにした
ことを特徴とする本発明に係る円二色性スペクトルの測定方法。
【請求項2】
前記第二偏光変調器の駆動電圧波形を矩形波とする
ことを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記第一及び第二偏光変調器を共通の発振回路を備えた駆動装置で駆動する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の円二色性スペクトル測定方法。
【請求項4】
前記光チョッパシステムを用いて光源から出射した光を、矩形波状の波形の光強度を持つ直線偏光に偏光した後、前記第二偏光変調器により前記直線偏光された光を円偏光のみに変調してからサンプルに照射する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の円二色性スペクトル測定方法。
【請求項5】
前記光チョッパシステムを用いて光源から出射した光を、矩形波状の波形の光強度を持つ直線偏光に偏光してからサンプルに照射し、
サンプルから出射した光を、前記第二偏光変調器により円偏光のみに変調する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の円二色性スペクトル測定方法。
【請求項6】
光源と、
サンプルを設けたサンプルセルと、
サンプルから出射した光を受光する検出器と
を備え、
前記検出器においてサンプルセルから出射された光の右円偏光と左円偏光との差からサンプルの円二色性スペクトルを測定する
円二色性スペクトル測定装置において、
光源とサンプルセルとの間に、方位角45度の偏光子、光学軸を0度とした第一偏光変調器、光学軸を0度とした波長板及び方位角−45度の偏光子とで構成した光チョッパシステムを配置し、
前記光チョッパシステムとサンプルセルとの間、又は、サンプルセルと検出器との間に、直線偏光された光を円偏光のみの変調光に偏光する第二偏光変調器を設け、
第一偏光変調器に付加する駆動電圧の電圧信号波形の極性を反転させることができるようにすることで、
前記光チョッパシステムにおいて、光源からの光に左右円偏光それぞれに同期したチョッパをかけて、光源からの光を矩形波状の波形の光強度を持つ直線偏光に偏光するようにした
ことを特徴とする円二色性スペクトル測定装置。
【請求項7】
前記第一及び第二偏光変調器を駆動する駆動装置を備え、
該駆動装置が、水晶振動子を用いた一つの発振回路、前記発振回路に基づいて動作する第一偏光変調器用駆動電圧回路及び第二偏光変調器用駆動電圧回路を備えている
ことを特徴とする請求項6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記駆動装置の第二偏光変調器用駆動電圧回路における増幅部がトランジスタスイッチングとして動作するよう構成され、このスイッチング動作により、第二偏光変調器の駆動電圧波形を矩形波に変える
ことを特徴とする請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記駆動装置の第一偏光変調器用駆動電圧回路が、第一偏光変調器の駆動電圧の電圧信号波形の極性を反転させる極性反転回路(NOTゲート)を有し、この極性反転回路により、左右円偏光それぞれに同期したチョッパをかける
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−50394(P2013−50394A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188685(P2011−188685)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(599055382)学校法人東邦大学 (18)
【Fターム(参考)】