説明

円形状を有する両面型切削インサート及びこれを使用する切削工具

本発明の切削インサートは円形の上面と、前記上面と同一形状の下面と、前記上面と前記下面とを連結する円筒状側面と、前記上面と前記側面との間及び前記下面と前記側面との間に形成される切削刃とを備える。前記切削インサートの側面は前記側面の円周方向に前記上面及び下面に対して実質的に垂直な複数の回転防止面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円形状を有する両面型切削インサート及びこれを使用する切削工具に関するものである。さらに詳細には、本発明は切削工具に、より安定的に装着され得る切削インサート及びこれを使用する切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミリングカッターに使用される切削インサートはミリングカッター本体に形成される複数のポケットに装着され、切削インサートはその中央に形成されたネジ孔に挿入されるクランプネジによりそれぞれのポケットに固定される。このような切削インサートは切削工程時に被加工物からの反力により回転トルクを受ける。切削インサートの形状が多角形(三角形、四角形等)の場合には、そのような回転トルクを受けても切削インサートの側面がポケット内に形成された装着壁と整合されるので、切削インサートの回転は発生しない。しかし、切削インサートの形状が円形である場合には、切削インサートの側面とポケットの装着壁が互いに整合されても切削インサートがポケットで回転して離脱してしまうことがある。
【0003】
このような問題を解決するために、従来の切削インサート10は、図1aに示す通り、切削インサート10の下側面または下面に複数の陥没部12を形成し、図1bに示す通り、切削インサート10が安着するミリングカッターのポケット20には切削インサート10の陥没部12に整合される突出部14を形成することによって、切削工程時に切削インサートの回転を防止するようにした。しかし、このような切削インサート10は単面型としてのみ用いられて経済的でないのみならず、切削インサート10の側面中でポケットの突出部14と整合される部分が陥没部12が形成される下側面に過ぎないので、切削インサート10とポケット20との間に広い装着面積を確保することができず、切削インサートが安定的に装着され得ない。
【0004】
一方、切削工程時に回転を防止しながらも両面型として使用可能な切削インサート30は米国特許第6,607,335号に開示されている(図2a及び図2b参照)。切削インサート30はその側面の円周方向に上下対称的に形成された接触表面32、32’を備え、上側または下側の接触表面32、32’のいずれか1つが工具本体40と整合されることによって切削インサートの回転を防止する。しかし、専ら1つの接触表面32、32’のみが工具本体と整合されるので、同様に切削インサート30と工具本体40との間に広い装着面積が確保され得ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題を解決するためのもので、切削インサートとポケットとの間の広い装着面積を確保することができる円形状の両面型切削インサートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による切削インサートは、円形の上面と、前記上面と同一形状の下面と、前記上面と前記下面とを連結する円筒状側面とを備え、前記切削インサートの側面は前記側面の円周方向に前記上面及び下面に対して実質的に垂直な複数の回転防止面を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、切削インサートとポケットとの間の広い装着面積を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来の切削インサートの斜視図である。
【図2】図1の切削インサートが安着するポケットの斜視図である。
【図3】従来の円形状を有する両面型切削インサートの斜視図である。
【図4】図3の切削インサートが工具本体に安着していることを示す斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態による切削インサートの斜視図である。
【図6】図5の切削インサートがミリングカッターに安着していることを示す。
【図7】図6に示すミリングカッターに形成されるポケットの斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態による切削インサートの斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態による切削インサートの斜視図である。
【図10】本発明の第4実施形態による切削インサートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では本発明を望ましい実施形態を挙げて詳細に説明する。
【0010】
図5は本発明の第1実施形態による切削インサート100の斜視図であり、図6は切削インサート100がミリングカッター200に装着された状態を示し、図7はミリングカッター100に形成されたポケット220の拡大図である。
【0011】
第1実施形態による切削インサート100は、図5に示す通り、円形の上面120と、上面120と同一形状の下面140と、上面120と下面140とを連結する円筒状側面160と、上面120と側面160との間及び下面140と側面160との間に形成される切削刃とを備える。切削インサート100の側面160は側面160の円周方向に上面120及び下面140に対して実質的に垂直な複数の回転防止面162を有する。回転防止面162は切削インサート側面の内側方向に陥没した表面である。
【0012】
また、切削インサート100が装着されるミリングカッター200は、図7に示す通り、切削インサート100が交換可能に固定される1つ以上のポケット220を有する。ポケット220は切削インサート100の上面または下面が安着するポケット底面222と、切削インサートの側面160が安着するポケット側面224とを備え、ポケット側面224には切削インサート100の回転防止面162と整合されて切削インサートの回転を防止する突出面226が形成される。
【0013】
回転防止面162が側面160の円周方向に上面120及び下面140に対して実質的に垂直に形成されるので、回転防止面162は切削インサートの側面160上で広い面積に形成され得、従って、切削インサート100をポケット220に、より安定的に装着できる。
【0014】
ポケット側面224は互いに90度に離隔されている2つの突出面226を備えることが望ましい。互いに90度に離隔されている突出面226は鋭角に離隔されている場合より切削インサートの回転をより安定的に防止できる。従って、切削工程時に切削インサートに加えられる回転トルクによる力がそれぞれのポケットの各突出面226に過度に集中され得ない。また、切削インサートは切削インサートの側面160にその円周方向に等角度に離隔されている4つまたは8つの回転防止面162を備える。突出面226が互いに90度に離隔されている場合には、回転防止面162は回転防止面162の数が4つであるか8つであるかに関係なく突出面226と有効に整合され得る。
【0015】
また、突出面226はその上下の厚さH2が回転防止面162の上下の厚さH1より小さく形成されることが望ましい。上面切削刃が摩耗して切削を行うことができなくなれば、切削インサートを反転してポケットに安着するようにしなければならない。突出面226の上下の厚さH2が回転防止面162の上下の厚さH1より小さく形成される場合、突出面226及び回転防止面162の厚さにそれぞれ公差が発生しても、回転防止面162がポケットの突出面226と有効に整合され得るので、切削インサートの製造に要される費用と労力を減らすことができる。この場合、突出面226の上下の厚さH2は回転防止面162の上下の厚さH1より0.1mm以上小さく形成されることが望ましい。また、回転防止面162の上下方向に延長される両側縁163、164は切削インサート側面160の円周上にまたはその内側に存在することが望ましい。
【0016】
図8は本発明の第2実施形態による切削インサート500の斜視図である。本発明の第1実施形態と共通される構成要素に対しては同一な図面符号で指示される。ただし、第2実施形態での回転防止面162は第1実施形態とは異なり平面で形成される。平面で形成される回転防止面162は、平面で形成される回転防止面162の寸法が当初の設計通り正確に形成されなくても切削インサートの回転防止の機能を行うことができるので、切削インサートを製造するのに要される費用と労力を大幅に減らせるようになる。
【0017】
以上、本発明を望ましい実施形態を挙げて説明したが、このような本発明の実施形態は例示的なものに過ぎず、本技術分野の通常の知識を有する者であれば本発明の範囲を逸脱しなくてもこれから多様な変形実施が可能であるという点を理解するはずである。
【0018】
例えば、図6は切削インサート100がミリングカッター200にネジで固定される実施形態を示しているが、ウェッジにより切削インサートを固定する実施形態を考慮することができる。また、図5は切削刃が正確に円形である実施形態を示しているが、図9に示す通り、切削刃が波形状を有する実施形態を考慮することができる。また、図8は回転防止面162が単一平面として形成されていることを示しているが、図10に示す通り、回転防止面が互いに角度をなして形成される2つの傾斜面で形成される実施形態を考慮することができる。また、これまでは切削インサート100がミリングカッター200に固定される実施形態を説明したが、切削インサートが旋盤に固定される実施形態も考慮することができる。このような実施形態は本技術分野の通常の知識を有する者に自明なものとして考慮される。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によれば、切削インサートとポケットとの間の広い装着面積を確保することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のポケットを有する工具本体と、
前記ポケットに交換可能に固定され、円形の上面と、前記上面と同一形状の下面と、前記上面と前記下面とを連結する円筒状側面と、前記上面と前記側面との間及び前記下面と前記側面との間に形成される切削刃とを備える1つ以上の切削インサートと、を備え、
前記切削インサートの側面は前記側面の円周方向に前記上面及び下面に対して実質的に垂直な複数の回転防止面を有し、
前記工具本体のポケットは前記切削インサートの上面または下面が安着するポケット底面と、前記切削インサートの側面が安着するポケット側面とを備え、
前記ポケット側面には前記切削インサートの回転防止面と整合されて前記切削インサートの回転を防止する突出面が形成される、
切削工具。
【請求項2】
前記回転防止面は前記切削インサート側面の内側方向に陥没した表面である、請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記回転防止面は平面である、請求項1に記載の切削工具。
【請求項4】
前記回転防止面は互いに角度をなして形成される2つの傾斜面を備える、請求項1に記載の切削工具。
【請求項5】
前記突出面の上下の厚さは前記回転防止面の上下の厚さより小さい、請求項1に記載の切削工具。
【請求項6】
前記突出面の上下の厚さは前記回転防止面の上下の厚さより0.1mm以上小さい、請求項5に記載の切削工具。
【請求項7】
前記ポケット側面は90度に離隔されている2つの突出面を備える、請求項1に記載の切削工具。
【請求項8】
前記切削インサートは前記切削インサート側面の円周方向に等角度に離隔されている4つの回転防止面を備える、請求項7に記載の切削工具。
【請求項9】
前記切削インサートは前記切削インサート側面の円周方向に等角度に離隔されている8つの回転防止面を備える、請求項7に記載の切削工具。
【請求項10】
前記切削刃は波形状を有する、請求項1に記載の切削工具。
【請求項11】
円形の上面と、
前記上面と同一形状の下面と、
前記上面と前記下面とを連結する円筒状側面と、
前記上面と前記側面との間及び前記下面と前記側面との間に形成される切削刃と、を備え、
前記切削インサートの側面は前記側面の円周方向に前記上面及び下面に対して実質的に垂直な複数の回転防止面を有する、
切削インサート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−525268(P2012−525268A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508388(P2012−508388)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002353
【国際公開番号】WO2010/134700
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(508151781)デグテック エルティーディー (30)
【Fターム(参考)】