説明

円筒外周面を有する物品の整列搬出装置

【課題】直径と高さが等しい物品をも一定の姿勢に確実に整列させ搬出することにある。
【解決手段】斜め上方に移動するベルト搬送面15上にコルク(物品)Kの投入スペース(投入部)Tを設け、ベルト搬送面15上における投入スペースTの下方位置に、投入スペースTに投入されたコルクKのうちベルト搬送面15上を転がり落ちるコルクKを受け止めることによって一定の姿勢に整えられたコルクKを得る整列レール20を設けてなり、整列レール20は、ベルト搬送面15の移動方向に直交する幅方向(矢印B方向)に対して斜めに延在すべく設けた構成になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒外周面を有する物品(円柱状や円筒状等の物品)の整列搬出装置に係り、特に、直径と高さが等しい物品(正円柱や正円筒等の物品)に対しても一定の姿勢に整列しながら搬出することが可能な円筒外周面を有する物品の整列搬出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数の物品を一定の姿勢に整列させながら順次次工程の例えば加工機械などに搬出することが可能な整列搬出装置としては、例えば、振動パーツフィーダが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記振動パーツフィーダにおいては、物品(ワーク)の持つ非対称の形状特性を利用して、一定の姿勢の物品のみを選別する方式を採用しているので、対称形状にある物品を一定の姿勢に整列させるのは困難である。例えば、対称形状にある直径と高さが等しい円柱状のコルク(物品)を整列させようとしても、一定の方向性をもって整列させることができず、縦、横のコルクが混在してしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、直径と高さが等しいような円柱状の物品であっても、一定の姿勢に確実に整列させて搬出することのできる円筒外周面を有する物品の整列搬出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、円筒外周面を有する物品を一定の姿勢に整列させながら搬出することが可能な円筒外周面を有する物品の整列搬出装置であって、斜め上方に移動するベルト搬送面上に上記物品の投入部を設け、上記ベルト搬送面上における上記投入部の下方位置に、当該投入部に投入された上記物品のうち上記ベルト搬送面上を転がり落ちる物品を受け止めることによって一定の姿勢に整えられた物品を得る整列レールを設けてなり、上記整列レールは、上記ベルト搬送面の移動方向に直交する幅方向に対して斜めに延在すべく設けられていることを特徴としている。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記ベルト搬送面上には、上記投入部の上方位置に、ベルト搬送面と共に斜め上方に移動してきた上記物品の姿勢を変換する姿勢変換手段が設けられていることを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、上記ベルト搬送面上には、上記整列レールの上位部分に対して上方に間隔をおいた位置に、当該整列レールに円筒外周面を沿わせながら回転し当該整列レールに沿って斜め上方に移動する物品を当該整列レールに沿う一列状に規制する規制部材が設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、上記整列レールと上記規制部材との間の搬送路を通り上記ベルト搬送面の外に搬出される物品を一定の姿勢を維持しながら一列状に案内する外部搬出案内手段が設けられていることを特徴としている。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の発明において、上記整列レールと規制部材との間の搬送路の入口には、当該整列レールに円筒外周面を沿わせながら回転し当該整列レールに沿って斜め上方に移動する一定の姿勢状態にある物品の通過を許容し、上記一定の姿勢以外の他の姿勢状態の物品の通過を阻止するゲートが設けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、上記ベルト搬送面の水平方向に対する傾斜角度と、上記整列レールの上記幅方向に対する傾斜角度の少なくとも一方が調節可能に構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜6に記載の発明によれば、ベルト搬送面上の投入部に円筒外周面を有する物品を投入すると、投入された物品のうち、あるものはベルト搬送面上を斜め下方に転がり落ち、あるものはベルト搬送面との摩擦によって当該ベルト搬送面と共に斜め上方に移動することになる。転がり落ちるのは、物品の軸線がベルト搬送面の最大傾斜線方向と略直交する方向を向いているときであり、このように転がり落ちることにより、姿勢に応じた物品の選別が行われる。つまり、ベルト搬送面上において、ある一定の姿勢になった物品だけが、当該ベルト搬送面を転がり落ちることで、他の姿勢のものと選別される。
【0012】
そして、ベルト搬送面を転がり落ちた物品は、整列レールによって受け止められると共に、当該整列レールに円筒外周面を沿わせた状態で、ベルト搬送面の移動に伴って回転をし続けることになる。その際、整列レールがベルト搬送面の移動方向に直交する幅方向に対して斜めに延在すべく設けられているので、物品の軸線も幅方向に対して傾いた状態になる。このため、物品は、ベルト搬送面の移動方向に対して斜めに傾いた方向(整列レールに直交する方向)に進行しようとする。即ち、物品は幅方向の一方に変位する力をベルト搬送面から受けることになるが、この力の方向の前方に整列レールが斜めに延在しているので、当該物品は整列レールに沿って斜め上方に移動することになる。従って、物品を整列レールに沿って一定の姿勢に整列することができると共に、当該物品を整列レールに沿って斜め上方に移動し、ベルト搬送面から搬出することができる。
【0013】
一方、ベルト搬送面上を当該ベルト搬送面と共に上方に移動した物品については、姿勢を変えるための何らかの手段を設けるか、ベルト搬送面からいったん取り出して、再び投入部に投入する等によって、最終的に整列レールまで転がり落ちるようにすることができる。
【0014】
以上の結果、ベルト搬送面上の投入部に物品を投入するだけで、当該物品を一定の姿勢に整えながら整列レールに沿って斜め上方に移動させ、ベルト搬送面から外に搬出することができる。この場合、各物品は、その軸線の向きによって、ベルト搬送面上を転がり落ちるか否かが決まるので、直径と高さが如何なる関係にある物品であっても、一定の姿勢に確実に整列させることができる。即ち、直径と高さが等しい円柱状や円筒状等の物品であっても、確実に一定の姿勢で整列させることができる。しかも、基本的にはベルト搬送面と整列レールとを備えた極めて簡単な構造のものであるので、従来の整列搬出装置に比べてコストの低減を図ることができると共に、故障率の低減等も図ることができる。
【0015】
また、ベルト搬送面の移動速度が遅い場合でも、上述した物品の整列効果を十分に発揮することができる。このため、外周面等に傷が付くのを嫌う物品、例えば円柱状に焼き固められた核燃料ペレットに対しても、外周面等の傷を防止しながら一定の姿勢に確実に整列させることができ、これによって核燃料ペレットの被覆管への挿入の自動化等を図ることができる。更に、例えば、円柱状のゴミ固形燃料(RDF(Refuse Derived Fuel))の場合には、粉体の発生を抑えながら、一定の姿勢に整列させて、燃料格納容器等に密に収納することができる。またその際、粉体の発生を抑えることができることから、作業環境の悪化を防止することができると共に、火災の発生等を防止することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、ベルト搬送面上における投入部の上方位置に、ベルト搬送面と共に上方に移動してきた物品の姿勢を変換する姿勢変換手段を設けているので、その姿勢の変換によって物品を整列レールまで転がり落ちるようにすることが可能となる。従って、ベルト搬送面上の投入部に投入したすべての物品を一定の姿勢に整列させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、整列レールの上位部分に対して間隔をおいた位置に物品を一列に整列させる規制部材を設けているので、例えば物品が投入部に多数投入されるなどによって、一定の姿勢となった物品が整列レールに沿って複数列並列に並ぶようなことがあったとしても、最終的には当該物品を整列レールに沿う一列状に整列させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、整列レールと規制部材との間の搬送路を通りベルト搬送面の外に搬出される物品を外部搬出案内手段によって一列状態を維持しながら、所定の方向に搬出することができる。この場合、外部搬出案内手段が物品を推進する機能を有していなくても、整列レールに沿う位置の物品に作用する推進力によって、外部搬出案内手段内の物品を押圧移動することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、整列レールと規制部材との間の搬送路の入口にゲートを設けているので、整列レールに沿う一定の姿勢の物品のみを、搬送路内に送ることができる。即ち、例えば物品を投入部に投入した際などに、一定の姿勢にない不正規姿勢の物品が上記入口の直前位置に入り込むようなことが起こり得るが、このような不正規姿勢の物品が搬送路内に入るのをゲートによって確実に防止することができる。なお、上記不正規姿勢の物品は、ベルト搬送面と共に即座に上方に移動することになるので、整列レールに沿う後続の一定の姿勢にある物品が搬送路に入る際の障害になることがほとんどない。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、ベルト搬送面の水平方向に対する傾斜角度と整列レールの幅方向に対する傾斜角度の少なくとも一方が調節可能になっているので、物品の種類・形状・サイズやその他の条件(例えば、物品とベルト搬送面との間の摩擦力や、物品と整列レールとの間の摩擦力などに影響を及ぼす因子などの条件)に応じて、物品を整列させるのに最適な状態を作り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1はこの実施の形態の円筒外周面を有する物品の整列搬出装置を示す概略構成図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のIb−Ib矢視断面図である。また、図2はここで整列の対象とする物品としてのコルクKを示す斜視図である。このコルクKは、直径と高さの等しい円柱体(正円柱)によって形成されている。
【0022】
この実施の形態で示す円筒外周面を有する物品の整列搬出装置は、基本的に、ベルト搬送面15を有するベルト搬送機構10と、整列レール20及び規制レール(規制部材)21を有するフレーム50と、姿勢変換手段としての払い落としローラ(払落手段)30と、溝状シュート(外部搬出案内手段)25を備えた構成になっている。
【0023】
ベルト搬送機構10は、図1(a)、(b)に示すように、互いに間隔をおいて平行に設置された2つのローラ11、12と、これらのローラ11、12に巻回されたベルト13とを備えており、上側に位置するベルト13の上面がベルト搬送面15となっている。ベルト搬送面15は、水平方向に対して一定の角度αで傾斜している。また、ベルト搬送面15が斜め上方(図1の矢印A方向)に移動するように、一方のローラ11によってベルト13が回転駆動されるようになっている。この場合、一方のローラ11が高位置に設置され、他方のローラ12が低位置に設置されることで、ベルト搬送面15が上記角度αに設定されている。なお、各ローラ11、12は、その回転軸が水平方向を向いており、ベルト搬送面15の最大傾斜線の方向と、当該ベルト搬送面15の移動方向(矢印A方向)とが一致している。なお、ベルト搬送面15の移動方向に直交する方向を幅方向(図1(a)の矢印B方向)と定義する。この場合、幅方向は水平方向に一致している。
【0024】
フレーム50は、ベルト搬送面15上の左右両側縁部に沿って延在すべく配置された左右サイド壁51、52と、ベルト搬送面15上の上端部に幅方向(矢印B方向)に沿って延在すべく配置され左右サイド壁51、52に連結された上側壁53と、ベルト搬送面15上における左右サイド壁51、52の中間に位置し左右サイド壁51、52と平行に延在すべく配置された中間壁54とを有し、上記整列レール20は中間壁54の下側にあって左右サイド壁51、52に連結されており、上記規制レール21は、整列レール20の上側にあって中間壁54の下端部と右サイド壁52に連結されている。なお、フレーム50は、ベルト13の移動に支障が生じないように設置されている。
【0025】
また、中間壁54は、上側壁53からベルト搬送面15の移動方向(矢印A方向)に沿って整列レール20の近傍位置まで延在すべく設けられており、この中間壁54の下端と整列レール20の間が後述する搬送路22の入口ともなっている。規制レール21は、上記入口の幅と同一の一定の幅を確保するようにして整列レール20に平行に配置されている。
【0026】
そして、中間壁54と、左サイド壁51と、整列レール20と、払い落としローラ30とで囲まれたベルト搬送面15上のスペースが、図示しないホッパ等から次々にコルクKが投入される投入スペース(投入部)Tとなっている。
【0027】
上記整列レール20は、ベルト搬送面15上における投入スペースTの下方位置に配されており、投入スペースTに投入された後に自身の回転でベルト搬送面15上を転がり落ちるコルクKを受け止める機能を果たすようになっている。ここでは、整列レール20は、右サイド壁52側が上となるように、幅方向(矢印B方向)に対して角度θで傾斜している。
【0028】
上記規制レール21は、整列レール20の上位部分に対して平行に配置されており、整列レール21に円筒外周面を接しながら回転し整列レール20に沿って斜め上方に移動する一定の姿勢のコルクKを一列状に規制しながら当該整列レール20に沿って斜め上方に案内するようになっている。ここでは、規制レール21と整列レール20との間が、ベルト搬送面15上において、一列状に整列されたコルクKを搬送する搬送路22となっている。
【0029】
この搬送路22は、中間壁54の下端からベルト搬送面15の右側の側縁まで延在している。
上記溝状シュート25は、搬送路22の右側の端部に連結されており、当該搬送路22からベルト搬送面15の外に搬出されるコルクKを上記一定の姿勢を維持しながら案内するようになっている。なお、溝状シュート25は、その下流端がコルクKを一定の姿勢に保持しながら搬送する物品搬送手段(図示略)に接続されるようになっている。
【0030】
また、搬送路22の入口には、図3に示すように、姿勢の違いによってコルクKの通過を規制するゲート24が設けられている。このゲート24は、例えば板体の下縁に円弧状の切欠24aを形成したもので構成されており、(a)のように、整列レール20に円筒外周面を接しながら回転し当該整列レール20に沿って斜め上方に移動する一定の姿勢に整えられたコルクK(図中円形斜線部)の通過を許容し、(b)のように、上記一定の姿勢以外の他の姿勢のコルクK、例えば端面がベルト搬送面15上に載置された姿勢のコルクK(図中矩形斜線部)の通過を阻止するようになっている。
【0031】
上記払い落としローラ30は、図1に示すように、ベルト搬送面15上の投入スペースTの上方位置に設けられている。この払い落としローラ30は、ベルト搬送面15と共に上方に移動してきたコルクKを投入スペースTの下方(矢印Aと反対方向の矢印C方向)に払い落とすと共に、これによりコルクKの姿勢を変換すべく、モータ31の出力軸32によって回転駆動されるようになっている。即ち、払い落としローラ30は、出力軸32によって回転駆動される一方の円板33aと、この円板33aに対向する他方の円板33bと、これらの円板33a、33bの間に渡された2本のバー34とを備えた構成になっている。各バー34は、各円板33a、33bの互いに対向する面の周縁部であって、周方向に180度離れた部分を連結するように設けられている。そして、払い落としローラ30は、1回転する間に2本のバー34がベルト搬送面15上におけるコルクKの進行経路を下方(矢印C方向)に旋回移動することで、ベルト搬送面15と共に上ってきたすべてのコルクKを下方に払い落とすようになっている。なお、バー34の本数は、回転バランスを崩さない限り何本であってもよい。
【0032】
また、図4は、ベルト搬送面15が水平状態にある場合(a)と、当該ベルト搬送面15が水平方向に対して傾斜した状態にある場合(b)のコルクKの安定性について考察した図である。
【0033】
(a)のように水平なベルト搬送面15上にコルクKが載置されている場合は、縦(コルクKの一方の端面がベルト搬送面15に当接している姿勢状態)、横(コルクKの円筒外周面がベルト搬送面15に当接している姿勢状態)のいずれの姿勢の場合でも、コルクKは静的に安定である。
【0034】
しかし、(b)のように、上方(矢印A方向)に移動する傾斜したベルト搬送面15上にコルクKが載っている場合は、横の状態でかつ軸線が最大傾斜線に対して直交する方向(即ち、上述した幅方向)を向いたコルクKについては下方に自然に転がり落ちることから動的に最も安定であり、軸線を他の方向に向けた横状態のコルクKや縦状態のコルクKについてはベルト搬送面15上を不安定に転がり落ちるか、ベルト搬送面15との摩擦力によって当該ベルト搬送面15と共に上方に移動することになることから動的に不安定である。
【0035】
本装置は、コルクKのような円柱体の動特性を利用し、最も安定的に回転運動するもののみを抽出する技術を採用している。
【0036】
次に、上記のように構成された円筒外周面を有する物品の整列搬出装置の作用、効果を説明する。
まず、ベルト搬送面15の投入スペースTにコルクKを投入すると、投入されたコルクKのうち、あるものはベルト搬送面15上を斜め下方に転がり落ち、あるものはベルト搬送面15と共に斜め上方に移動することになる。
【0037】
この場合、軸線がベルト搬送面15の幅方向(矢印B方向)に一致する方向に向くコルクKほど、下方に転がり落ちやすくなる。即ち、ベルト搬送面15上において、ある一定の姿勢になったコルクKだけが、ベルト搬送面15を転がり落ちることで、他の姿勢のものと選別されることになる。
【0038】
そして、下方に転がり落ちたコルクKは、整列レール20で受け止められ、当該整列レール20に円筒外周面を接しながら回転し続けることになる。その際、整列レール20が幅方向(矢印B方向)に対して斜めに延在しているので、コルクKの軸線も幅方向に対して傾いた状態になる。このため、コルクKは、ベルト搬送面15の移動方向(矢印A方向)に対して斜めに傾いた方向(整列レール20に直交する方向)に進行しようとする。即ち、コルクKは幅方向(矢印B方向)の一方(右側)に変位する力をベルト搬送面15から受けることになるが、この力の方向には整列レール20が斜めに延在しているので、当該コルクKは整列レール20に沿って斜め上方の右方向に移動することになる。従って、コルクKを整列レール20に沿って一定の姿勢に整列することができると共に、当該コルクKを整列レール20に沿って斜め上方に移動し、ベルト搬送面15の外に搬出することができる。
【0039】
一方、ベルト搬送面15と共に上方に移動したコルクKについては、払い落としローラ30によって投入スペースTの下方に向けて払い落とされると共に、その際に軸線の方向が変化し、そのまま下方に転がり落ちるものが生じることになる。この場合、下方に転がり落ちる方向が動的に安定な方向であることから、多数のコルクKが整列レール20まで転がり落ちることになる。
【0040】
以上の結果、ベルト搬送面15上の投入スペースTにコルクKを投入するだけで、当該コルクKを一定の姿勢に整えながら整列レール20に沿って斜め上方に移動し、ベルト搬送面15上から搬出することができる。この場合、各コルクKは、その軸線の向きによって、ベルト搬送面15上を転がり落ちるか否かが決まるので、直径と高さが如何なる関係にあるコルクKであっても、一定の姿勢に確実に整列させることができる。即ち、本実施の形態のように、直径と高さが等しいコルクKであっても、確実に一定の姿勢に整列させることができる。しかも、基本的に、ベルト搬送面15を有するベルト搬送機構10と、整列レール20及び規制レール21を有するフレーム50と、払い落としローラ30と、溝状シュート25とを備えた極めて簡単な構造のもので構成することができるので、従来の整列搬出装置に比べてコストの低減を図ることができると共に、故障率の低減等を図ることができる。
【0041】
また、ベルト搬送面15上における投入スペースTの上方位置に払い落としローラ30を設けているので、当該投入スペースTに投入したすべてのコルクKを効率よく一定の姿勢に整列させることができる。
【0042】
また更に、整列レール20の上位部分に対して上方に間隔をおいた位置に規制レール21を設けているので、例えばコルクKが多量に投入されるなどによって、一定の姿勢となったコルクKが整列レール20に沿って複数列並列に並ぶようなことがあったとしても、最終的には整列レール20に沿って一列に整列したコルクKのみを抽出することができる。
【0043】
しかも、一列に整列したコルクKについては、ベルト搬送面15の側縁から溝状シュート25によって外に搬出することができる。この場合、溝状シュート25はコルクKを搬出すべく推進させる機能を有していないが、整列レール20に沿う位置のコルクKに作用する推進力によって、溝状シュート25内のコルクKを押圧移動することができる。
【0044】
なお、溝状シュート25は、下流側をほぼ垂直下方に延在させることで、中のコルクKを上下方向に縦に並べた姿勢で搬出することができる。従って、溝状シュート25から上述の物品搬送手段に縦姿勢のコルクKを単品ずつ搬出し、その一定の姿勢のコルクKを当該物品搬送手段を介して後段の加工機械等に供給することができる。この場合、溝状シュート25は、少なくとも垂直に延在する部分についてはダクト状のもので構成することが好ましい。
【0045】
また、搬送路22の入口にゲート24を設けているので、整列レール20に円筒外周面を接した一定の姿勢のコルクKのみを、搬送路22に送ることができる。即ち、投入スペースTへのコルクKの投入や、払い落とし等の際に、一定の姿勢にない不正規姿勢のコルクKが上記入口の直前位置に入り込むことがあっても、このような不正規姿勢のコルクKが搬送路22内に入るのを防止することができる。また、このような不正規姿勢のコルクKは、ベルト搬送面15によって即座に上方に移動することになる。このため、不正規姿勢のコルクKは、後続の一定の姿勢のコルクKが搬送路22に入る際の障害となることがほとんどない。
【0046】
次に、ベルト搬送面15の移動により、コルクKが整列レール20に沿って移動する現象について理論的に考察する。ここでは、図1(b)に示すように、円柱状のコルクKが整列レール20まで転がり落ち、円筒外周面を整列レール20に接しながら、ベルト搬送面15の移動に応じて回転するときの力のバランスを考えてみる。
【0047】
図5は、安定な動特性を持つ円柱状のコルクKに働く力の関係を示す図、図6(a)はベルト搬送面15の最大傾斜線に沿う断面における力のバランスを示す図、(b)はベルト搬送面15上における整列レール20に沿う方向の力のバランスを示す図である。
【0048】
なお図中、αはベルト搬送面15の水平方向に対する傾斜角度、θはベルト搬送面15の移動方向に直交する方向(ベルト搬送面15の幅方向(図1の矢印B方向)であって水平方向に一致する)に対する整列レール20の傾斜角度、wはコルクKの荷重、FはコルクKを整列レール20に沿って移動させるべく作用する推進力(前進力)である。
【0049】
コルクKの荷重wのベルト搬送面15に垂直な方向の力Pは、図6(a)から
P=wcosα … (1)
となり、コルクKの荷重wのベルト搬送面15に沿う傾斜方向の力pは、
p=wsinα … (2)
となる。
【0050】
また、移動するベルト搬送面15に発生するコルクKの荷重wによる摩擦力fは、コルクKとベルト搬送面15との間の摩擦係数をμとすると、
f=μwcosα … (3)
となる。従って、ベルト搬送面15の移動によって発生する摩擦力fの整列レール20に沿う方向の分力f’は、
f’=μwcosαsinθ … (4)
となる。
【0051】
一方、整列レール20に対しては、ベルト搬送面15の傾斜方向の下方を向く力pによってコルクKが推進される際に発生する摩擦力rとして、
r=μ’(pcosθ−fcosθ)
=μ’(wsinαcosθ−μwcosαfcosθ) … (5)
が作用する。ただし、μ’はコルクKと整列レール20との間の摩擦係数である。
【0052】
ここで、力pによる整列レール20に沿った下方向成分psinθは、コルクKの前進を妨げる力として発生する。従って、コルクKが整列レール20に沿って推進される力Fは、
F=f’−r−psinθ
=μwcosαsinθ
−μ’(wsinαcosθ−μwcosαfcosθ)
−wsinαsinθ … (6)
となる。
【0053】
次に、コルクKの回転とベルト搬送面15の移動の関係について図7を参照しながら考察してみる。ベルト搬送面15の移動(ローラ11の回転数N、ローラ11の径D)とコルクKの回転(回転数n、コルク径d)の間には、
ベルト搬送面15の移動距離=コルクの回転による転がり距離
つまり、
πndcosθ=πND … (7)
の関係がある。整理すると、
n=ND/dcosθ … (8)
となる。
【0054】
(8)式から、整列レール20の傾斜角度θが大きくなると、コルクKの回転数nは無限大に大きくなることが必要になってくる。物理的にはこのようなことは起こり得ず、現象としては、コルクKが整列レール20から離れて、ベルト搬送面15と共に上方に移動することになる。
【0055】
図8は、(6)式による計算結果を図にしたものである。計算に当たっては、コルクKの荷重w=1gm、μ=0.8、μ’=0.5に設定した。
この結果からわかるように、コルクKの推進力Fについては、ベルト搬送面15の傾斜角度αが小さいほど大きくなり、整列レール20の傾斜角度θがある程度大きいほど大きくなるが、整列の効率は実験的に求めたところ、αが約20°、θが10〜15°程度であるのが良いことがわかった。また、好ましい実例として、コルクKの投入数は60個/分程度、払い落としローラ30の回転速度は300〜500rpm程度であるのがよい。
【0056】
なお、上記実施の形態においては、ベルト搬送面15及び整列レール20の傾斜角度を一定に保持すべく構成した例を示したが、ベルト搬送面15の水平方向に対する傾斜角度αと、整列レール20の幅方向(矢印B方向)に対する傾斜角度θとについて、少なくとも一方が調節可能となるように構成してもよい。この場合には、コルクKの種類・形状・サイズ・重さやその他の条件(コルクKとベルト搬送面15との間の摩擦力や、コルクKと整列レール20との間の摩擦力などに影響を及ぼす因子などの条件)に応じて、コルクKを整列レール20に沿って効率よく一定の姿勢に整列させると共に、当該整列レール20の部分から効率よく搬出させるのに最適な条件を容易に選定することができるようになる。
【0057】
また、コルクKに代えて、例えば外周面等に傷が付くのを嫌う円柱状に焼き固められた核燃料ペレットを整列することもできる。この場合には、ベルト搬送面15の移動速度や払い落としローラ30の回転速度を下げることによって、核燃料ペレットに傷が付くのを確実に防止しながら、一定の姿勢に確実に整列させることができ、これによって核燃料ペレットの被覆管への挿入の自動化等を図ることができる。
【0058】
更に、コルクKに代えて、例えば円柱状のゴミ固形燃料(RDF)も整列することができる。この場合には、粉体の発生を抑えながら、ゴミ固形燃料を一定の姿勢に整列して、燃料格納容器等に密に収納することができる。また、粉体の発生を抑えることができるので、作業環境の悪化を防止することができると共に、火災の発生等を防止することができる利点がある。
【0059】
このように、整列すべき物品としては、直径と高さが等しいコルクK以外の他の寸法関係にある物品や、他の材質の物品であってもよい。
【0060】
また、姿勢変換手段として、払い落としローラ(払落手段)30を設けた例を示したが、それ以外の構造の姿勢変換手段を設けてもよい。また、ベルト搬送面15を上方に上り詰めたコルクKの物品をそのまま投入ホッパに戻し、当該投入ホッパから再び投入スペースTに投入するように構成してもよい。
【0061】
更に、ベルト搬送面15をその移動方向においてより長いもので構成し、上述した投入スペースT、整列レール20、払い落としローラ(払落手段)30等をその長手方向に複数設けるように構成してもよい。この場合には、各投入スペースTに投入したコルクK等の部品を各整列レール20等を介して一定の姿勢に整列させることができるので、コンパクトな装置であるにもかかわらず、大量の物品を整列処理することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施の形態として示した円筒外周面を有する物品の整列搬出装置の概略構成図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のIb−Ib矢視断面図である。
【図2】同整列搬出装置において整列する物品としてのコルクを示す斜視図である。
【図3】同整列搬出装置におけるゲートの構成及び作用を示す図であり、(a)はゲートを通過し得る姿勢でコルクが移動したときの説明図であり、(b)はゲートを通過し得ない姿勢でコルクが移動したときの説明図である。
【図4】同整列搬出装置においてコルクの安定性を比較するために示した図であり、(a)は水平に設置されたベルト搬送面上にコルクを載置した場合の説明図であり、(b)は、斜め上方に移動するように傾斜すべく設置されたベルト搬送面上にコルクを載置した場合の説明図である。
【図5】同整列搬出装置において安定な動特性を持つ円柱状のコルクに働く力の関係を示す説明図である。
【図6】同整列搬出装置においてコルクに関する力のバランスを示す図であり、(a)はベルト搬送面の最大傾斜線に沿った断面内での力のバランスを示す説明図、(b)はベルト搬送面に沿った面内での整列レールに沿う方向に関する力のバランスを示す説明図である。
【図7】同整列搬出装置においてコルクの転がり距離とベルト搬送面の移動距離との関係について示す説明図である。
【図8】同整列搬出装置においてベルト搬送面の傾斜角度、整列レールの傾斜角度及びコルクに作用する整列レールに沿う方向の推進力の関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0063】
15 ベルト搬送面
20 整列レール
21 規制レール(規制部材)
22 搬送路
24 ゲート
25 溝状シュート(外部搬出案内手段)
30 払い落としローラ(姿勢変換手段)
A 移動方向
B 幅方向
K コルク(物品)
T 投入スペース(投入部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒外周面を有する物品を一定の姿勢に整列させながら搬出することが可能な円筒外周面を有する物品の整列搬出装置であって、
斜め上方に移動するベルト搬送面上に上記物品の投入部を設け、
上記ベルト搬送面上における上記投入部の下方位置に、当該投入部に投入された上記物品のうち上記ベルト搬送面上を転がり落ちる物品を受け止めることによって一定の姿勢に整えられた物品を得る整列レールを設けてなり、
上記整列レールは、上記ベルト搬送面の移動方向に直交する幅方向に対して斜めに延在すべく設けられていることを特徴とする円筒外周面を有する物品の整列搬出装置。
【請求項2】
上記ベルト搬送面上には、上記投入部の上方位置に、ベルト搬送面と共に斜め上方に移動してきた上記物品の姿勢を変換する姿勢変換手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の円筒外周面を有する物品の整列搬出装置。
【請求項3】
上記ベルト搬送面上には、上記整列レールの上位部分に対して上方に間隔をおいた位置に、当該整列レールに円筒外周面を沿わせながら回転し当該整列レールに沿って斜め上方に移動する物品を当該整列レールに沿う一列状に規制する規制部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒外周面を有する物品の整列搬出装置。
【請求項4】
上記整列レールと上記規制部材との間の搬送路を通り上記ベルト搬送面の外に搬出される物品を一定の姿勢を維持しながら一列状に案内する外部搬出案内手段が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の円筒外周面を有する物品の整列搬出装置。
【請求項5】
上記整列レールと規制部材との間の搬送路の入口には、当該整列レールに円筒外周面を沿わせながら回転し当該整列レールに沿って斜め上方に移動する一定の姿勢状態にある物品の通過を許容し、上記一定の姿勢以外の他の姿勢状態の物品の通過を阻止するゲートが設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の円筒外周面を有する物品の整列搬出装置。
【請求項6】
上記ベルト搬送面の水平方向に対する傾斜角度と、上記整列レールの上記幅方向に対する傾斜角度の少なくとも一方が調節可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の円筒外周面を有する物品の整列搬出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−143357(P2006−143357A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332946(P2004−332946)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】