説明

円筒形アルカリ電池

【課題】円筒形アルカリ電池を直列に使用するとき、電池を極性が反対となるように挿入しても、電気機器の損傷および破損を回避する構造。
【解決手段】陽極活物質10、陰極活物質20、分離膜30、電解液および集電棒40が密閉されるように円筒形に取り囲む電池外装缶100の一側に設けられた正極端子板200と、他側に絶縁されて接続され、中心部の一側には前記集電棒が連結されている負極端子板の内側で前記陽極活物質、前記陰極活物質および前記電解液を密閉させるために設けられたガスケット400とを含んでなり、前記負極端子板には、ガス漏出の際に排出を案内するガス排出口320が設けられ、前記ガスケットには、ガス漏出の際に排出を案内するガスケットベント420が設けられ、前記電池外装缶には、前記負極端子板と絶縁されて接続される部位に前記負極端子板より高い高さに突設された絞押部120が備えられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形アルカリ電池に関し、さらに詳しくは、電気機器にアルカリ電池を直列に使用するとき、間違って電池を極性が反対となるように挿入しても、電気機器が損傷および破損しないようにする円筒形アルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は従来の円筒形アルカリ電池の内部構造を示す一部切開断面図である。
【0003】
図1に示すように、従来の円筒形アルカリ電池は、円筒形の電池外装缶100の内部に、二酸化マンガン、グラファイトおよびバインダーを主成分とする陽極活物質10と、亜鉛合金粉末およびゲル化材を主成分とする陰極活物質20と、分離膜30と、水酸化カリウムを主成分とする電解液と、集電棒40とが密閉されている構造を取り、薄く射出されたガスケットベント420を備えたナイロン材質のガスケット400が電解液を密封する。
【0004】
前記電池は、内圧が発生すると、ガスケット400の薄く射出されたガスケットベント420の破断によってガスが排出されて電池の破裂を防止する。また、ガスケットベント420を介して排出されたガスは、さらに補助底板600に設けられたガス排出口を介して排出される。
前記電池の集電棒40は、負極端子板300の中心部の一側に連結され、前記ガスケット400に挿入されている。
前記電池外装缶100の一側と他側には、正極端子板200と負極端子板300が設けられる。
前述したように、電池は完全に密封されており、電池外装缶100は正極端子板200および負極端子板300を除いては外装ラベル500で包まれる。
このような従来の円筒形アルカリ電池は、図2に示すように、多数のアルカリ電池を電気機器に直列に使用するときに、間違って一部の電池をその極性と反対の方向に挿入して電池が逆接触すると、負極端子板300同士が互いに接触することにより電池の内部からガスが発生し、ガスケットベント420の破断によりガスケット400が破裂し、補助底板600のガス排出口620と負極端子板300のガス排出口320を介してガスが排出されることにより、電池の破裂を防止する。
ところが、これと同時に、挿入し間違えた電池は、他の電池との間に電流が流れて逆充電になり、充電に伴って電池の内圧が上昇すると、ガスの排出および電池内電解液の漏出が生ずることにより電気機器が損傷または破損してしまうという問題点があった。
かかる問題点を解決するために、図3に示すように、電池外装缶100と負極端子板300とが絶縁されて接続される部位としての絞押部120に絶縁材質のリング600を取り付けることにより、 間違って一部の電池が極性と反対の方向に挿入されても、負極端子板300同士が互いに接触しないようにする電池が開示された。ところが、前記絶縁リング700は電池の製造にあたり原価が上昇して経済性が良くないという問題点がある。さらに、生産、移送および使用中に絶縁リング700が抜けたり切れたりするなどの破損が生ずると、依然として逆挿入された電池によって逆充電されて電解液が漏れるおそれがあるという問題点もある。
円筒形アルカリ電池に使われている電解液は、高濃度の製品を使用しているため、電解液の漏れによる電気機器の損傷を防止し、特に使用上の不注意により内圧が発生した条件でも、電池内部の陰極ゲルおよび電解液が漏れるときに、ゲル化材入りの亜鉛粉末からなる陰極ゲル、電解液およびガスなどが排出口を介して排出されずに詰まる場合に電池が破裂してしまうという問題点があるため、より安全な集電体の構造がさらに一層要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上述したような従来の諸般問題点を解決するためのもので、その目的は、多数の電池を電気機器に直列に使用するときに間違って一部の電池を極性と反対
の方向に挿入しても、電池外装缶と負極端子板とが互いに絶縁されて接続される部位である絞押部を前記負極端子板より高い高さに形成させることにより、負極端子板が互いに接触しなくなって逆挿入による逆充電にならない、円筒形アルカリ電池を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、逆挿入による逆充電にならないため、電池の内部に内圧が発生しないのでガスケットベントが破断せず、これによりガスだけでなく、陰極活物質に含まれた陰極ゲルおよび電解液も外部に漏れない、円筒形アルカリ電池を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、使用上の不注意により内圧が上昇するとき、排出口を介して陰極ゲル、電解液およびガスなどが詰まることなく排出されるようにする、円筒形アルカリ電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明によれば、陽極活物質、陰極活物質、分離膜、電解液および集電棒が密閉されるように円筒形に取り囲む電池外装缶と、前記円筒形の電池外装缶の一側に設けられた正極端子板と、前記円筒形の電池外装缶の他側に絶縁されて接続され、中心部の一側には前記集電棒が連結されている負極端子板と、前記電池外装缶の前記負極端子板の内側で前記陽極活物質、前記陰極活物質および前記電解液を密閉させるために設けられたガスケットとを含んでなり、前記負極端子板には、ガス漏出の際に排出を案内するガス排出口が設けられ、前記ガスケットには、ガス漏出の際に排出を案内するガスケットベントが設けられ、前記電池外装缶には、前記負極端子板と絶縁されて接続される部位に前記負極端子板より高い高さに突設された絞押部が備えられることを特徴とする、円筒形アルカリ電池を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多数の電池を電気機器に直列に使用するときに一部の電池を間違って極性と反対の方向に挿入しても、電池外装缶と負極端子板とが絶縁されて接続される部位である絞押部を前記負極端子板より高い高さに形成させることにより、負極端子板が互いに接触しなくなって逆挿入による逆充電にならない効果がある。
【0010】
また、本発明によれば、逆挿入による逆充電にならないため、電池の内部に内圧が発生しないのでガスケットベントが破断せず、これによりガスだけでなく、陰極活物質に含まれた陰極ゲルおよび電解液も外部に漏れない効果がある。
また、本発明によれば、使用上の不注意により内圧が上昇するときに、排出口を介して陰極ゲル、電解液およびガスなどが詰まることなく排出されるようにする効果がある。
【0011】
また、本発明によれば、陰極ゲルおよび電解液の排出を妨げる可能性のある補助底板を必要としないため、電池を生産するコストが削減されて生産性に優れる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電気機器に一部の電池が逆挿入されたことを示す構成図である。
【図2】従来の円筒形アルカリ電池の一例を示す一部切開断面図である。
【図3】従来の円筒形アルカリ電池の他の例を示す一部切開断面図である。
【図4】本発明の一部切開断面図である。
【図5】本発明の負極端子板を示す平面図である。
【図6】電気機器に本発明の一部の電池が逆挿入されたことを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明に係る円筒形アルカリ電池の好適な実施例を詳細に説明する。
本発明を説明するにあたり、関連した公知の機能または構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を無駄に乱すおそれがあると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。そして、後述する用語は本発明における機能を考慮して定義された用語であって、これは使用者、運用者の意図または判例などによって異なり、これにより、各用語の意味は本明細書全般にわたっての内容に基づいて解釈されるべきであろう。
図4は本発明の内部構造を示す一部切開断面図である。
図4に示すように、本発明に係る円筒形アルカリ電池の外観は、電池外装缶100、正極端子板200、および負極端子板300から構成される。
前記電池外装缶100は、陽極活物質10、陰極活物質20、分離膜30、電解液、および集電棒40が密閉されるように円筒形に取り囲んでいる。
前記円筒形の電池外装缶100の一側には正極端子板200が設けられ、前記円筒形の電池外装缶100の他側には前記集電棒40と絶縁されて接続される負極端子板300が設けられる。
前記負極端子板300には、電池内圧の上昇によるガス漏出の際に排出を案内するガス排出口320が設けられている。
従来の円筒形アルカリ電池は、使用上の不注意により内圧が上昇することが頻繁であり、これにより電池が破裂してしまう問題点を防止するために補助底板600を必要としたが、これに対し、本発明は、補助底板を必要としないため、従来の負極端子板の中心部を基準として対向して設けられた2つのガス排出口とは異なり、図5に示すように、上下左右に4つのガス排出口320が設けられてガスの円滑な排出が可能である。
前記電池外装缶100の前記負極端子板300の内側には、前記陽極活物質、陰極活物質および電解液を密閉させるためにナイロン材質で薄く射出されたガスケット400が設けられ、前記ガスケット400には、電池の内圧が上昇する場合にガスの排出と共に陰極ゲルおよび電解液の排出を案内するガスケットベント420がガスケット400より薄く設けられている。
電池を逆挿入すると、電池が逆充電されることにより内圧が発生し、これによりガスケットベント420が破断して発生ガスの排出を案内する。
前記ガスケットベント420は、ガス排出の際に共に陰極ゲルと電解液が漏れる場合にガスケットベント420が詰まって円滑な排出が行われない問題点を解消するために、正しい破断が行われるように、破断誘導溝422を介して従来のアルカリ電池のガスケットベントとは異なり上部側に設けてある。破断誘導溝422の傾斜面が上部方向に形成されることにより、ガスケットベント420が破断する際に破断欠片によって排出口が詰まらなくなる。
前記電池外装缶100には、前記負極端子板300と絶縁されて接続される部位に、絞押部120が前記負極端子板300より高い高さに突設される。
前記絞押部120は、前記電池外装缶100と前記ガスケット400の端部が互いに接触するように密着し、前記密着した端部が前記負極端子板300の中心方向に丸みを持つように曲げられ、前記負極端子板300の端部が外側に露出しないように包んだ形状を有する。
図6に示すように、電気機器に多数の電池を直列に使用するときに一部の電池を間違って極性と反対の方向に挿入しても、電池外装缶100と負極端子板300とが絶縁されて接続される部位である絞押部120を前記負極端子板300より高い高さに形成させることにより、負極端子板300が互いに接触しなくなって逆挿入による逆充電にならなくなる。
また、逆挿入による逆充電にならないため、電池の内部に内圧が発生しないのでガスケットベント420が破断することがなく、これにより電解液も外部に漏れず、使用中の電気機器の損傷が防止できる。
もし使用上の不注意により電池の内圧が上昇すると、破断誘導溝422が上部に設けられたガスケットベント420を介して、ガスと共に陰極ゲルおよび電解液などが排出される場合でもこれらが詰まることなく円滑に排出でき、陰極ゲルおよび電解液の排出を妨げる可能性のある補助底板を必要としないため、負極端子板300のガス排出口320を介して陰極ゲル、電解液およびガスが円滑に排出できて電池の破裂を防止する。また、既存の2つの負極端子板300のガス排出口320を4つにすることにより、陰極ゲル、電解液およびガスの円滑な排出を助ける。
以上、本発明の限定された実施例を図面によって説明したが、本明細書および請求の範囲に使用された用語または単語は、通常的かつ辞典的な意味で限定されて解釈されてはならず、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。よって、本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は、本発明の一実施例に過ぎないものであり、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替することが可能な各種の均等物と変形例があり得ることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0014】
10 陽極活物質
20 陰極活物質
30 分離膜
40 集電棒
100 電池外装缶
120 絞押部
200 正極端子板
300 負極端子板
320 ガス排出口
400 ガスケット
420 ガスケットベント
422 破断誘導溝
500 外装ラベル
600 補助底板
620 ガス排出口
700 絶縁リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極活物質、陰極活物質、分離膜、電解液および集電棒が密閉されるように円筒形に取り囲む電池外装缶と、
前記円筒形の電池外装缶の一側に設けられた正極端子板と、
前記円筒形の電池外装缶の他側に絶縁されて接続され、中心部の一側には前記集電棒が連結されている負極端子板と、
前記電池外装缶の前記負極端子板の内側で前記陽極活物質、前記陰極活物質および前記電解液を密閉させるために設けられたガスケットとを含んでなり、
前記負極端子板には、ガス漏出の際に排出を案内するガス排出口が設けられ、
前記ガスケットには、ガス漏出の際に排出を案内するガスケットベントが設けられ、
前記電池外装缶には、前記負極端子板と絶縁されて接続される部位に前記負極端子板より高い高さに突設された絞押部が備えられることを特徴とする、円筒形アルカリ電池、
【請求項2】
前記絞押部は、前記電池外装缶と前記ガスケットの端部が互いに接触しないように密着し、前記密着した端部が前記負極端子板の中心方向に丸みを持つように曲げられ、前記負極端子板の端部が外側に露出しないように包んだ形状であることを特徴とする、請求項1に記載の円筒形アルカリ電池。
【請求項3】
前記ガスケットベントは、ガス漏出の際に前記陰極活物質に含まれた陰極ゲルと電解液が共に漏れる場合に詰まることなく円滑に排出されるように、破断誘導溝が上部に設けられたことを特徴とする、請求項1に記載の円筒形アルカリ電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−234784(P2012−234784A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114081(P2011−114081)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(502023309)ロケット エレクトリック カンパニー リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】ROCKET ELECTRIC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】758, Ilgok−dong, Buk−ku, Gwangju, Korea
【Fターム(参考)】