説明

円筒形構造物の側壁の回転更新施工法に使用する足場装置

【課題】 貯槽等の円筒形構造物の側壁を回転させて取替え更新施工する際に、外周の足場を側壁に固着することなく、側壁を回転可能にするとともに、外周足場が外側へ広がらないように安定支持し、側壁との当接部が摩擦することがない、安全性に優れ作業性が良い足場装置を提供するものである。【解決手段】 円筒形構造物の所定エリアに吊上げ搬送用の重機を設置し、上方の側壁を回転させ、上記重機を使用して側板片を吊上げ搬送して取替える円筒形構造物の側壁の回転更新施工法において、円筒形構造物1の側壁外周から隔離して外周足場5を設け、側壁3と外周足場5との間の適所に渡す壁当り材6の先端部に側壁3の回動を案内する回転部材8を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円筒形構造物の周囲の作業場所が狭く火気取扱いなどの安全面も厳しく制限されている場合に、作業性良く安全に円筒形構造物の側壁の回転更新施工を行う際に使用する足場装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒形の鋼製の側壁を有する大型の貯槽等の円筒形構造物は、建設後長い年月を経過し老朽化すると、安全のために補修する必要が生じている。また、円筒形構造物の用途変更や立地条件等の変更によって、側壁の部分又は全体を更新する必要が生じている。
【0003】
従来一般の貯槽等の円筒形構造物を補修する場合は、図5に示すように、円筒形構造物の側壁の外周全体に隔離して固定足場25を仮設し、その固定足場25の上で作業者が側壁3をガス切断等で切断してブロック化し、そのブロック化した側板片をクレーン等の重機24で吊り上げて降下し、高所より順次下部に向かって補修作業を行っている。 このように重機24を使って高所より下部に向かって補修する方法は、円筒形構造物の周囲にわたって重機24が移動する広い作業場所が必要であった。殊に、周囲に危険物を貯蔵する円筒形構造物、稼動設備などがある場所では、重機24を使用する作業場所が制限され、火気の飛散対策などの大規模で厳重な安全対策も要求されている。 また、固定足場25は壁つなぎ材26によって側壁3へ固着しているため、周壁の補修の際に、その都度補修箇所の固定足場25を撤去などする必要が生じた。
【0004】
作業性と安全性を配慮した技術には、本出願人による特願2006−149774号の「貯槽側板の更新施工法」の発明がある。この発明は、図4に示すように、屋根2と側壁3を備えた円筒形構造物1の通路22の限られた作業エリア23に、クレーンなどの重機24を設置し、側回転ローラー4,4・・・を使用して側壁3を水平に回転させながら、側板片3Nの更新作業を行うリボルバー工法に関するものである。
【0005】
【特許文献1】特願2006−149774号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来一般の円筒形構造物の補修方法は、図5に示すように、円筒形構造物1の全周囲にわたってクレーン等大形の重機24が移動する広い作業場所が必要であり、周囲が防液堤に囲われて狭い場合や周囲に危険物を貯蔵する円筒形構造物、稼動設備などがある場所では、作業場所が制限されていた。 また、補修箇所に位置する固定足場25を順次取外し撤去しながら、側板片を搬入出するなどの作業も煩雑で大変であった。 さらに、重機24の移動と吊上げ降下に伴う地盤の養生や火気の飛散対策などの大規模で厳重な安全対策も要求されていた。
【0007】
本出願人による特願2006−149774号の「貯槽側板の更新施工法」の発明は、図4に示すように、所定エリアに吊上げ搬送用の重機24を設置し、側壁3の下方全周に設置した側回転ローラー4,4・・・によって貯槽を回転させながら順次側板片3Aの搬入、搬出を行うため、安全性に優れ作業性が良い施工法である。 しかしながら、外周に足場を設けて安全に作業効率良く更新施工を行う場合、側壁3を回転させながら施工するため、壁つなぎ材などによって外周足場を側壁3に固着することはできなかった。 また、外周足場を側壁3に固着することができないため、この外周足場を外側に広がらないように安定支持する必要が生じた。
【0008】
この発明の目的は、上述のような技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、貯槽等の円筒形構造物の側壁を回転させて取替え更新施工する際に、外周の足場を側壁に固着することなく、側壁を回転可能にするとともに、外周足場が外側へ広がらないように安定支持し、側壁との当接部が摩擦することがない、安全性に優れ作業性が良い足場装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明に係る円筒形構造物の側壁の回転更新施工法に使用する足場装置は、円筒形構造物の所定エリアに吊上げ搬送用の重機を設置し、上方の側壁を回転させ、上記重機を使用して側板片を吊上げ搬送して取替える円筒形構造物の側壁の回転更新施工法において、円筒形構造物の側壁外周から隔離して外周足場を設け、側壁と外周足場との間の適所に渡す壁当り材の先端部に側壁の回動を案内する回転部材を設けたものである。
【0010】
請求項2の発明に係る円筒形構造物の側壁の回転更新施工法に使用する足場装置は、円筒形構造物の所定エリアに吊上げ搬送用の重機を設置し、上方の側壁を回転させ、上記重機を使用して側板片を吊上げ搬送して取替える円筒形構造物の側壁の回転更新施工法において、円筒形構造物の側壁外周から隔離して外周足場を設け、側壁と外周足場との間の適所に渡す壁当り材の先端部に側壁の回動を案内する回転部材を設けるとともに、外周足場の外周方向への動きを拘束する周長固定部材を設けたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明に係る円筒形構造物の側壁の回転更新施工法に使用する足場装置は、円筒形構造物の所定エリアに吊上げ搬送用の重機を設置し、上方の側壁を回転させ、上記重機を使用して側板片を吊上げ搬送して取替える円筒形構造物の側壁の回転施工法において、円筒形構造物の側壁外周から隔離して外周足場を設け、側壁と外周足場との間の適所に渡す壁当り材の先端部に側壁の回動を案内する回転部材を設けたので、外周足場は側壁に固着されることなく自立状態となり、足場と側壁間を渡す壁当り材の先端当接部には摩擦抵抗を生じない回転部材を取付けているため、側壁を円滑に回転させることができる。
【0012】
請求項2の発明に係る円筒形構造物の側壁の回転更新施工法に使用する足場装置は、円筒形構造物の所定エリアに吊上げ搬送用の重機を設置し、上方の側壁を回転させ、上記重機を使用して側板片を吊上げ搬送して取替える円筒形構造物の側壁の回転施工法において、円筒形構造物の側壁外周から隔離して外周足場を設け、側壁と外周足場との間の適所に渡す壁当り材の先端部に側壁の回動を案内する回転部材を設けるとともに、外周足場の外周方向への動きを拘束する周長固定部材を設けたので、外周足場は側壁に固着しないで壁当り材の先端当接部に摩擦抵抗を生じない回転部材を取付けているため側壁の回動をスムーズにするとともに、外周足場は周長固定部材で連結しているため外側へ広がることなく安定し固定支持能力が更に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明に係る円筒形構造物の側壁の回転更新施工法に使用する足場装置の実施形態を、図1乃至図3に基づいて説明する。 図1は、円筒形構造物の外周に足場を設けて、側壁を回転更新施工法によって交換している状況を示す全体説明図、図2は図1の平面説明図である。図3は、足場装置の部分を示す側面説明図である。
【0014】
貯槽等の円筒形構造物の上部側壁を回転させて更新する工法、つまりリボルバー工法で更新施工する場合、側回転ローラー4を使用して側壁3を水平に回転させ、所定箇所で重機24を用いて側板片3Nの搬入、搬出をして、順次回転移動させて側壁3の取替え更新を行うものである。(図4に示して前記詳述)
【0015】
図1の全体説明図に示すように、円筒形構造物1の側壁3から外側に隔離して外周足場5を設け、安全性と作業性を向上させて、円筒形構造物1の上部側壁3を回転させて更新施工する。 外周足場5の所定箇所に設けた開口作業部9にて、重機24を使用して側板片3Nの搬入、搬出を行う。 次いで、側回転ローラー4を使用して側壁3を水平に回転させて順次移動させ、上記操作を繰り返して、側壁3の取替え更新を行うものである。
【0016】
図1に示すように、外周足場5から側壁3へ渡して所定間隔を保持する壁当り材6を設ける。 この壁当り材6が当接する先端部には、コロ、ローラーなどの回転接触する回転部材8を取り付ける。 壁当り材6及び先端の回転部材8は、円周方向及び垂直方向の適所に隔離して設ける。 また、外周足場5の外側から棒材、管材、ワイヤロープなどの連続した周長固定部材7で、連結部7A,7A間を連結して内側に押え付け、外周足場5の広がりを拘束する。 この周長固定部材7は、上下に隔離し円周方向に複数本、巻きつけるように連結する。
【0017】
図2の全体平面図に示すように、円形の側壁3の外側に環状の外周足場5設ける。 9は側板片の搬入、搬出を行う所定箇所に設けた開口作業部である。 外周足場5の適所、対称位置に、側壁3との間を渡すように壁当り材6を設ける。 この壁当り材6の外側位置の連結部7A,7A・・・間に周長固定部材7を連結し、壁当り材6の内側先端の側壁3に当接する位置に回転部材8を取り付ける。
【0018】
図3に示すように、外周足場5は、側壁3から外側に環状に設ける枠組足場5Aと、その内側の適所に着脱自在に設けるブラケット足場5Bとからなる。 壁当り材6は、枠組足場5Aを貫通し水平に渡して設け、その外側位置7Aに周長固定部材7を連結する。 回転部材8は、壁当り材6の内側先端の側壁3に当接する位置に、水平円周方向に回転するように取り付ける。 ブラケット足場5Bは、側壁3に接触しないように枠組足場5Aの内側適所に着脱自在に取り付ける。
【0019】
上記のように、回転する側壁3へ外周足場5を固着することなく、当接する壁当り材6の先端に回転接触する回転部材8を取り付けているので、側壁3は円滑に回転するため足場上での作業性が良く安全性を確保する。
【0020】
また、外周足場5は外側から周長固定部材7で押し付けて広がりを拘束しているため、側壁3に対して動くことなく間隔を保持し安定化する。
【0021】
上述のように、外周足場5は周長固定部材7で連結しているため、外側へ広がることなく安定化し、この外周足場5は側壁3に固着していないで、壁当り材6の先端当接部に回転部材8を取付けているため、摩擦抵抗を生ずることなく円滑に側壁3を回転させることができ、安全作業で作業性良く側壁3を取替え更新施工することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
この発明に係る円筒形構造物の回転更新施工法に用いる足場装置は、周囲が狭く限られた場所や周囲に危険物などがある貯槽等、円筒形の種々の構築物などの限られた修復作業において、壁当り材と回転部材及び周長固定部材を備えた作業性のよい足場装置として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明に係る足場装置を使用して円筒形構造物の側壁の回転更新施工を行う状況を示す全体側面説明図である。
【図2】図1の平面説明図である。
【図3】足場装置の部分を示す側面説明図である。
【図4】円筒形構造物の側壁の回転更新施工法、つまりリボルバー工法で円筒形構造物の側壁を取替えている状況を示す全体説明図である。
【図5】従来の円筒形構造物の側壁更新の状況を示す全体側面説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1円筒形構造物 2屋根 3側壁 3N側板片 4側回転ローラー 5外周足場 5A組枠足場 5Bブラケット足場 6壁当り材 7周長固定部材 7A連結部 8回転部材 9開口作業部 21防液堤 22通路 23作業エリア 24重機 25固定足場 26壁つなぎ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形構造物の所定エリアに吊上げ搬送用の重機を設置し、上方の側壁を回転させ、上記重機を使用して側板片を吊上げ搬送して取替える円筒形構造物の側壁の回転更新施工法において、円筒形構造物の側壁外周から隔離して外周足場を設け、側壁と外周足場との間の適所に渡す壁当り材の先端部に側壁の回動を案内する回転部材を設けたことを特徴とする円筒形構造物の側壁の回転更新施工法に使用する足場装置。
【請求項2】
円筒形構造物の所定エリアに吊上げ搬送用の重機を設置し、上方の側壁を回転させ、上記重機を使用して側板片を吊上げ搬送して取替える円筒形構造物の側壁の回転更新施工法において、円筒形構造物の側壁外周から隔離して外周足場を設け、側壁と外周足場との間の適所に渡す壁当り材の先端部に側壁の回動を案内する回転部材を設けるとともに、外周足場の外周方向への動きを拘束する周長固定部材を設けたことを特徴とする円筒形構造物の側壁の回転更新施工法に使用する足場装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−184819(P2008−184819A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19539(P2007−19539)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000147729)株式会社石井鐵工所 (67)
【Fターム(参考)】