説明

円筒形穴のための雌ネジ付き挿入体及び斯かる挿入体の取付け装置

本発明は、円筒形本体(10)を具備する、部品Aの平滑な円筒形穴(30)のための雌ネジ付き挿入体において、円筒形本体(10)が、切頭円錐形状の内側穴(11)と、円筒形本体(10)内に延在し且つ切頭円錐形内側穴(11)と連通する少なくとも一つの長手スロット(12、12’)とを具備し、雌ネジ付き挿入体が円筒形本体(10)の切頭円錐形内側穴(11)と相補的な切頭円錐形状のコア(20)も具備し、コア(20)が雌ネジ付き内側開口(21)を具備し、円筒形本体(10)及びコア(20)は、雌ネジ付き挿入体が、所定位置に保持され、且つ円筒形穴(30)の内側に雌ネジ部を装備させるべく円筒形穴(30)においてロックされるようになっていることを特徴とする、雌ネジ付き挿入体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円筒形穴のための雌ネジ付き挿入体に関する。本発明は、斯かる雌ネジ付き挿入体のための取付け装置にも関する。本発明は、概してネジ・ナット型の機械的連結の分野に適し、特に、雌ネジ付き挿入体による機械的連結の雌ネジ部の生成に関する。
【背景技術】
【0002】
ネジによる取付けシステムのナットの機能を確保すべく、雌ネジ付き挿入体を使用することによって、付属のネジを収容することが意図されている円筒形穴の一部における機械加工を単純化することが知られている。このため、円筒形穴は単純なドリル作業に限定されることができる。斯かる雌ネジ付き挿入体は、特に、盲穴において、又は全体サイズ、材料若しくはシーリングの問題が存在することによって部品の一方の側のみを介するアクセスが可能である場合において、機械的なネジ・ナット連結を生成するのに限定的な態様において使用される。
【0003】
平滑な穴において内側に雌ネジ機能を確保すべく、様々な種類の雌ネジ付き挿入体が知られている。例えば、ギザギザ形状にされた(knurled)外面と、取付けネジのネジ山に対応する雌ネジ付き内面とを備えた円筒形挿入体を使用することが知られている。しかしながら、穴における挿入体の挿入後、挿入体を破損し又は穴を損傷することなく該挿入体を取り外すことは概して不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述された欠点を解決することと、円筒形穴又は雌ネジ付き挿入体を損傷することなく取り付け且つ取り替えることが簡単な円筒形穴のための雌ネジ付き挿入体を提供することとである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のために、本発明は、第1態様によれば、円筒形本体を具備する、部品の円滑な円筒形穴のための雌ネジ付き挿入体に関する。本発明によれば、円筒形本体は、切頭円錐形状の内側穴と、円筒形本体内に延在し且つ前記切頭円錐形内側穴と連通する少なくとも一つの長手スロットとを具備し、前記雌ネジ付き挿入体は円筒形本体の切頭円錐形内側穴と相補的な切頭円錐形状を有するコアも具備し、該コアは雌ネジ付き内側開口を具備し、前記円筒形本体及びコアは、前記雌ネジ付き挿入体が、所定位置に保持され、且つ前記円筒形穴の内側に雌ネジ部を装備させるべく前記円筒形穴においてロックされるようになっている。
【0006】
したがって、スロット付きの円筒形本体の相補的な穴内に挿入される切頭円錐形状のコアのおかげで、切頭円錐形内側穴におけるコアの変位によって、スロット付きの円筒形本体のその直径における制御された変形を得ることができ、このため、円筒形穴において所定の位置に雌ネジ付き挿入体が保持される。円筒形本体の切頭円錐形内側穴において切頭円錐形状のコアの位置を修正することによって、円筒形穴における雌ネジ付き挿入体の繋留力(anchoring force)が、雌ネジ付き挿入体へのネジの螺入の間、許容可能な最大の軸線方向の力が調整されうるような態様においても調整されることができる。さらに、円筒形本体の切頭円錐形内側穴において切頭円錐形状のコアを定置することによる繋留は、雌ネジ付き挿入体を破損し又は円筒形穴を損傷することなく雌ネジ付き挿入体の取替が容易に実現されうるように可逆的である。
【0007】
切頭円錐形状のコア及び切頭円錐形内側穴の半角の値と、前記部品内において装備されるべき円筒形穴と円筒形本体との間の摩擦係数とが、前記雌ネジ付き挿入体をロックすることを保証すべく選択される。一つの実施形態では、切頭円錐形状のコアの半角値が2.5°〜5°の間である。
【0008】
好ましくは、切頭円錐形状の前記コアの大きな基部の直径は、前記円筒形本体の切頭円錐形内側穴の大きな基部の直径よりも実質的に大きく又は前記円筒形本体の切頭円錐形内側穴の大きな基部の直径と等しい。円筒形本体の切頭円錐形内側穴における切頭円錐形状のコアの変位の間、円筒形本体の変形は特に直径方向の拡大による円筒形本体の変形によって得られる。所要の場合に雌ネジ付き挿入体の大きな拡大を確実なものとすべく、円筒形本体は、好ましくは、円筒形本体の長さの一部に亘って延在し且つ切頭円錐形内側穴と連通するいくつかのスロットを具備する。
【0009】
本発明の有利な実施形態によれば、前記円筒形本体は、該円筒形本体の外壁から突出し且つ円筒形本体の前記切頭円錐形内側穴の大きな基部とは反対側の雌ネジ付き挿入体の近位面の平面内に延在するカラーを具備する。突出するカラーは、装備されるべき円筒形穴が連通する部分の面とカラーが接触することによって円筒形穴における挿入体の長手方向の定置を確実なものとする。
【0010】
一つの実施形態によれば、前記円筒形本体の外壁の表面は、構造化され、好ましくはギザギザ形状にされ又は条線を有する(striated)。本発明の別の実施形態によれば、前記円錐形本体は前記切頭円錐形内側穴の大きな基部とは反対側の該切頭円錐形内側穴の端部において雌ネジ付き内壁部分も具備する。
【0011】
本発明は、第2態様によれば、円筒形穴のための雌ネジ付き挿入体の取付け及び取外し装置にも関する。この取付け及び取外し装置は、本発明の第1態様に係る少なくとも一つの雌ネジ付き挿入体であって、円筒形本体が切頭円錐形内側穴の大きな基部とは反対側の切頭円錐形内側穴の端部において雌ネジ付き内壁部分も含む、少なくとも一つの雌ネジ付き挿入体と、雌ネジ付き挿入体の取付け及び取外し工具とを具備する。この取付け及び取外し工具は、
ネジ山付き端部と内側雌ネジ部とを具備する円筒形本体であって、前記端部のネジ山が前記雌ネジ付き挿入体の円筒形本体の雌ネジ付き内壁部分の雌ネジ部に適合される、円筒形本体と、
工具の円筒形本体の前記内側穴の直径よりも実質的に小さい直径のネジであって、一方の端部において、前記雌ネジ付き挿入体のコアの雌ネジ付き内側開口と相補的なネジ山を具備するネジと
を具備する。
【0012】
したがって、工具のネジ山付き端部によって、ネジがコアの雌ネジ付き内側開口に螺入されるときに雌ネジ付き挿入体の円筒形本体が、定められた位置において、固定されて保持されることができ、このため、円筒形本体におけるコアの長手方向の変位と、装備されるべき穴における円筒形本体の拡大とが可能となる。好ましくは、取付け及び取外し工具は、該工具の円筒体本体上において摺動すべく取り付けられた定置リングも具備し、前記円筒形本体及び定置リングは、所定の長手方向の横断面において該円筒形本体上に該定置リングを保持するようになっている相補的な摺動手段を具備する。このため、この定置リングによって、雌ネジ付き挿入体が取付け及び取外し工具によって定置される深さが、装備されるべき円筒形穴において画成されることが可能となる。したがって、挿入体は、円筒形穴において正確且つ再現可能な態様で、与えられた深さにおいて定置されることができる。
【0013】
本発明は、前記雌ネジ付き挿入体の取付け及び取外し装置で部品の円筒形穴において雌ネジ付き挿入体を取り付けるための方法において、
前記円筒形本体の雌ネジ付き内壁部分に前記端部を螺入するステップと、
前記円筒形本体内に設置されたコアの雌ネジ付き開口内に前記ネジを挿入し且つ部分的に螺入するステップと、
前記雌ネジ付き挿入体が前記部品内に挿入されるであろう深さを調整するステップと、
所要の繋留力を得るまで前記雌ネジ付き挿入体に前記ネジを螺入するステップと、
前記ネジ及び本体を取り外すステップと
を含む、方法にも関する。雌ネジ付き挿入体が前記部品の円筒形穴において挿入されるであろう深さは、前記装置の円筒形本体上において定置リングを移動させることによって調整され、該定置リングは、前記雌ネジ付き挿入体が挿入されると前記部品の前面と接触する。
【0014】
本発明は、前記雌ネジ付き挿入体の取付け及び取外し装置で部品の円筒形穴内における雌ネジ付き挿入体を取り外すための方法において、
前記円筒形本体の雌ネジ付き内壁部分に前記端部を螺入するステップと、
定置リングを、前記部品の前面と接触するように前記装置の円筒形本体に沿って移動させるステップと、
コアの雌ネジ付き内側穴内にネジを挿入するステップと、
ネジの頭部と装置の円筒形本体との間に隙間を残すまでネジをねじ込むステップと、
ネジに対して軽い衝撃を与えるステップと、
装置で雌ネジ付き挿入体を取り外すステップと
を含む、方法にも関する。
【0015】
以下の記述を読むと、本発明の他の特徴及び利点が明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】図1Aは、本発明の第1実施形態に係る雌ネジ付き挿入体の斜視図である。
【図1B】図1Bは、図1Aの雌ネジ付き挿入体の分解斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態に係る、円筒形穴における雌ネジ付き挿入体の取付けを示す長手方向の断面図である。
【図3】図3は、本発明の第2実施形態に係る雌ネジ付き挿入体の斜視図である。
【図4】図4は、本発明の第3実施形態に係る雌ネジ付き挿入体の斜視図である。
【図5】図5は、本発明の第4実施形態に係る雌ネジ付き挿入体の斜視図である。
【図6】図6は、図5の雌ネジ付き挿入体のための取付け及び取外し工具の長手方向の断面図である。
【図7A】図7Aは、図6の工具を用いた雌ネジ付き挿入体の取付けを概略的に示す。
【図7B】図7Bは、図6の工具を用いた雌ネジ付き挿入体の取付けを概略的に示す。
【図7C】図7Cは、図6の工具を用いた雌ネジ付き挿入体の取付けを概略的に示す。
【図7D】図7Dは、図6の工具を用いた雌ネジ付き挿入体の取付けを概略的に示す。
【図7E】図7Eは、図6の工具を用いた雌ネジ付き挿入体の取付けを概略的に示す。
【図8A】図8Aは、図6の工具を用いた挿入体の取外しを示す。
【図8B】図8Bは、図6の工具を用いた挿入体の取外しを示す。
【図8C】図8Cは、図6の工具を用いた挿入体の取外しを示す。
【図8D】図8Dは、図6の工具を用いた挿入体の取外しを示す。
【図8E】図8Eは、図6の工具を用いた挿入体の取外しを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面が、限定されるものではない例として与えられる。最初に、本発明に係る雌ネジ付き挿入体の第1実施形態の説明が図1A及び図1Bを参照してなされる。この雌ネジ付き挿入体は、装備されるべき円筒形穴に適合された形状を有する円筒形本体10を具備する。実際には、円筒形本体10の直径は、装備されるべき円筒形穴の直径よりも幾らか小さいように定められる。さらに、雌ネジ付き挿入体の円筒形本体10の長さは、装備されるべき円筒形穴の直径とほぼ等しい。
【0018】
図1Bにおいて明確に示されるように、前記円筒形本体10は切頭円錐形上の内側穴11を含む。限定されるものではない例として、内側穴11の切頭円錐形状を画成する円錐の半角は2.5°にほぼ等しい。円錐の半角の値は、2.5°よりも大きくてもよいが、好ましくは5°よりも小さい。円筒形本体10は、少なくとも一つの長手スロット、ここでは、円筒形本体10の長さ部分において延在し且つ切頭円錐形内側穴11と連通する単一のスロット12も具備する。
【0019】
好ましくは、この長手スロット12の幅は、スロット付きの円筒形本体10の製造上の制約によってできるだけ小さく定められる。このため、この長手スロット12は、中心に長手方向の軸線Xを有する円筒形本体10の母線に沿って延在する。
【0020】
雌ネジ付き挿入体は、円筒形本体12の切頭円錐形内側穴11と相補的な切頭円錐形状のコア20も具備する。このため、切頭円錐形状のコア20は、2.5°〜5°の間の円筒形本体10の切頭円錐形内側穴11の半角と同じ半角、ここでは2.5°にほぼ等しい半角を有する円錐台形状を有する。切頭円錐形状のコア20の長さは長手方向において円筒形本体10の長さとほぼ等しい。さらに、切頭円錐形状のコア20の大きな基部20aの直径は円筒形本体10の切頭円錐形内側穴11の大きな基部11aの直径よりも実質的に大きく又は大きな基部11aの直径とほぼ等しい。このため、切頭円錐形状のコア20は、円筒形本体10の切頭円錐形内側穴11内に挿入されて、その大きな基部20aによって切頭円錐形内側穴11の大きな基部11aと接触する。
【0021】
さらに、切頭円錐形状のコア20は、雌ネジ付き内側開口21を含む。この雌ネジ付き内側開口21は、円筒形状であり、且つ、切頭円錐形状のコア20が円筒形本体10内に挿入されるときに切頭円錐形状のコア20の長手方向すなわち長手方向の軸線Xの方向において延在する。好ましくは、この実施形態において示されるように、雌ネジ付き内側開口21は切頭円錐形状のコア20と両側で連通する。さらに、円筒形本体10の切頭円錐形内側穴11の小さな基部11bの直径は切頭円錐形状のコア20の雌ネジ付き内側開口21の直径よりも僅かに大きい。
【0022】
円筒形穴における斯かる雌ネジ付き挿入体の取付けの説明が、以下、図2を参照してなされる。図2において示された実施形態では、円筒形穴30が部品A内にこのように備えられる。
【0023】
雌ネジ付き挿入体の組立が以下のように行われる。切頭円錐形状のコア20がスロット付きの円筒形本体10内に設置され、二つの要素は相補的な切頭円錐形状によって完全に幾何学的に適合される。雌ネジ付き挿入体の取付けは、部品Aの穴30内に前記挿入体を単純に定置することによってなされ、部品Aの穴30の直径は円筒形本体10の直径よりも極僅かに大きい。このことに関して、円筒形穴30が連通しているか否かについて留意されたい。図2において示される実施形態では、円筒形穴30は盲穴である。
【0024】
切頭円錐形状20の挿入体は、切頭円錐形状のコア20の小さな基部20aが、装備されるべき円筒形穴30の長手方向の中心軸線Xにも相当する雌ネジ付き挿入体の長手方向の中心軸線Xに沿って切頭円錐形内側穴11の小さな基部11bの方向に移動せしめられるような態様において、前記切頭円錐形内側穴11の大きな基部11aを通って切頭円錐形内側穴11内に挿入される。さらに、取付け方向に関して、雌ネジ付き挿入体は、切頭円錐形状のコア20の大きな基部20aが、このように定置された雌ネジ付き挿入体の終端部を具備するような態様において、円筒形穴30内に挿入される。切頭円錐形状のコア20の雌ネジ付き内側開口21のおかげで、取付けネジ40によってこの切頭円錐形状のコア20に引張力が及ぼされることができ、ネジ40のネジ山41は、取付けネジ40の回転の間、雌ネジ付き内側開口21の雌ネジ部に適合される。このため、円筒形本体10が円筒形穴30において所定の位置に保持された状態で、切頭円錐形状のコア20に取付けネジ40によって及ぼされる引張力は、スロット付きの円筒形本体10の切頭円錐形内側穴11における切頭円錐形状のコア20の平行移動をもたらす。
【0025】
一旦切頭円錐形状のコア20と切頭円錐形内側穴11との間において接触がなされると、切頭円錐形状のコア20に及ぼされる矢印Fの方向の引張力によって、切頭円錐形状のコア20と円筒形本体10との間に接触圧力の増加がもたらされ、このことは該円筒形本体10の変形を引き起こす。この変形は、長手スロット12の存在によって、円筒形本体10の直径の拡大によって反映される。円筒形本体10のこの直径方向の拡大は、円筒形本体10の初期の直径と、装備されるべき円筒形穴30の直径との間に存在する小さな隙間を満たすであろう。このため、この隙間の除去は、円筒形穴30において雌ネジ付き挿入体をロックすることを引き起こす。円筒形穴30と円筒形本体10との間の直径の差が小さければ小さいほど、スロット付きの円筒形本体10のより大きな変形が制限されうることに留意されたい。
【0026】
さらに、一旦円筒本体10が部品Aの円筒形穴30と接触すると、円筒形穴30における雌ネジ付き挿入体の正確な繋留を確実なものとすべく追加のロック力が必要とされうる。これに関して、取付けネジ40によって及ぼされる引張力と、雌ネジ付き挿入体が一旦定置されると受けうる最大の軸線方向の力との間に直接的な関係が存在することに留意されたい。このため、取付けネジ40に及ぼされる締め付けトルクが、雌ネジ付き挿入体によって支持される傾向がある最大の軸線方向の力を調整すべく例えばトルクレンチによって測定されることができる。取付けネジ40によって及ぼされる引張力と、切頭円錐形状のコア20と円筒形本体10との間の接触圧力との間には直接的な関係が存在することに留意されたい。
【0027】
このため、雌ネジ付き挿入体が支持することができる最大の軸線方向の引張力は、切頭円錐形状のコア20及び切頭円錐形内側穴11の半角の値と、(部品A及び円筒形本体10について使用される材料に依存する)部品A内において装備されるべき円筒穴30と円筒形本体10との間の摩擦係数とに応じて変化しうる。2.5°〜5°の間の切頭円錐形状のコアの半値について、雌ネジ付き挿入体を生成し、且つ、装備されるべき円筒形穴30における雌ネジ付き挿入体のロックを保証すべく全ての材料すなわち金属又は非金属を使用することができる。
【0028】
雌ネジ付き挿入体が円筒形穴30内に一旦ロックされると、取付けネジ40は、その後の使用のために、雌ネジ付き挿入体を所定の位置に残すように取り外されることができる。このため、この雌ネジ付き挿入体によって、装備されるべき平滑な円筒形穴が内側に雌ネジ部を備えることが可能となる。
【0029】
以下、本発明の第2実施形態に係る雌ネジ付き挿入体が、図3を参照して記述される。この雌ネジ付き挿入体は、図1A及び図1Bを参照して前述されたものと全ての観点から同一であり、共通の要素は同一の参照番号を有する。しかしながら、この雌ネジ付き挿入体は、円筒形本体10上において、円筒形本体10の外壁10’から突出するカラー(collar)13も具備する。
【0030】
ここでは、このカラー13は、円筒形本体10と同心の、すなわち同一の長手方向の中心軸線Xを有する環状形状を有する。このカラー13は、円筒形本体10の切頭円錐形内側穴11の大きな基部11aとは反対側の雌ネジ付き挿入体の近位面の平面内において突出して延在する。このため、このカラー13は、円筒形本体10の切頭円錐形内側穴11の小さな基部11bが延在する平面内に延在する。したがって、カラー13は円筒形穴における挿入体の取付けについて当接定置(positioning in abutment)を可能とする。
【0031】
実際には、円筒形穴は部品の前面と連通し、雌ネジ付き挿入体のカラー13は、円筒形本体10が、装備されるべき円筒形穴内に挿入されると、この部品の前面と当接する。このため、このカラー13は、引張力が取付けネジによって切頭円錐形状のコア20に及ぼされる間、雌ネジ付き挿入体が円筒形穴30内に完全に定置され且つ円筒形本体が所定の位置に保持されることを可能とする。当然のことながら、カラー13は、環状形状とは異なる形状を有してもよく、例えば円筒形本体10の外壁10’から突出するフランジを形成する一つ以上の別体部分に限定されうる。
【0032】
図4は、図3を参照して前述された実施形態とほぼ同一の第3実施形態を示す。この第3実施形態では、円筒形本体10はいくつかの長手スロット12、12’を具備する。好ましくは、円筒形本体がいくつかの長手スロット12を具備するとき、これらは、装備されるべき円筒形穴における円筒形本体の直径の拡大中に円筒形本体10の均質な変形を得るべく円筒形本体の外壁10’上に均等な角度で分配される。円筒形本体10におけるいくつかの長手スロット12、12’の存在によって、円筒形穴における円筒形本体の拡大能力を増大させることもできる。
【0033】
以下、本発明に係る雌ネジ付き挿入体の第4実施形態が、図5を参照して記述される。本発明のこの第4実施形態は、図1A及び図2Bを参照して前述された実施形態とほぼ同一であり、共通の要素は同一の参照番号を有する。ここでは、円筒形穴における雌ネジ付き挿入体の繋留を改善すべく、特に円筒形穴を具備する部品が柔らかい材料から作られるとき、円筒形本体10は、構造化された表面を有する外壁10’、例えばギザギザ形状にされた又は条線のある(striated)外壁10’を具備する。平滑な表面とは異なり、円筒形本体10の外壁10’の表面の構造化によって、繋留が改善され、このため、装備されるべき円筒穴において雌ネジ付き挿入体を所定の位置に保持することが可能となる。
【0034】
さらに、この第4実施形態では、円筒形本体10は、切頭円錐形内側穴11の大きな基部11aとは反対側の切頭円錐形内側穴の端部において、雌ネジ付き内壁部分14を具備する。したがって、円筒形本体10は、雌ネジ付き内壁部分14を具備し、雌ネジ付き内壁部分14は円筒形内側穴の一部を画成し且つ小さな基部11bにおいて切頭円錐形内側穴11に結合される。
【0035】
以下に記述されるように、前記雌ネジ付き内壁14によって、装備されるべき円筒形穴における所定の位置に円筒形本体10を保持すべく斯かる挿入体のための取付け及び取外し工具の使用が可能となることは有利である。この実施形態では、切頭円錐形状のコア20は、このとき、円筒形本体10の長さよりも幾らか短い長さを有するので、円筒形本体10の雌ネジ付き内壁14を越えて延在する切頭円錐形内側穴11の部分において収容されることができる。
【0036】
以下、図5において示されたような雌ネジ付き挿入体のための取付け及び取外し工具が、図6を参照して記述される。この取付け及び取外し工具50は円筒形本体51を具備し、円筒形本体51は少なくとも一つのネジ山付き端部52を具備する。
【0037】
図6において明確に見られうるように、この端部52のネジ山は円筒形本体10の雌ネジ付き内壁部分14の雌ネジ部の寸法に適合される。このため、取付け及び取外し工具50の円筒形本体51が、雌ネジ付き挿入体の円筒形本体10の雌ネジ付き内壁部分14に螺入されうることに留意されたい。当然のことながら、円筒形本体51及びそのネジ山付き端部52は、装備されるべき円筒穴の直径よりも小さな公称直径を有しなければならない。また、取付け及び取外し工具50の円筒形本体51は、内側穴53と、取付け及び取外し工具50の円筒形本体51の内側穴53の直径よりも実質的に小さな直径のネジ55とを具備する。このネジ55は、一方の端部55aにおいて、雌ネジ付き挿入体の切頭円錐形状のコア20の雌ネジ付き内側開口21と相補的なネジ山を具備する。このネジ55は、工具の円筒形本体51を通過するのに十分な長さを有し、且つ、切頭円錐形状のコア20の雌ネジ付き内側開口21内に挿入されるべきネジ山付き端部52を越えて突出する。
【0038】
さらに、この実施形態では、少しも限定的ではない態様において、定置リング60が、工具50の円筒形本体51上において摺動するように取り付けられる。概して、円筒形本体51及び定置リング60は相補的な摺動手段を具備し、相補的な摺動手段は、円筒形本体51上における定置リング60の相対的な摺動と、取付け及び取外し工具50の円筒形本体51の所定の横断面において、この定置リング60を円筒形本体51上に維持することとを可能とするのに適する。
【0039】
この実施形態では、円筒形本体51上の外側ネジ山と、定置リング60の対応する内側雌ネジ部とによって相補的な摺動手段が確保される。このため、円筒形本体51回りの定置リング60の回転によって、取付け及び取外し工具50の円筒形本体51に沿ったこの定置リング60の長手方向の変位がもたらされる。定置リング60と円筒形本体51との間の相補的なネジ部の存在によって、前記定置リング60が、円筒形本体51の所定の横断面における平行移動において維持されることが自動的に可能となる。
【0040】
以下、前述された取付け及び取外し工具50による図5の雌ネジ付き挿入体の取付けが、図7A〜図7Eを参照して記述される。ネジ山付き端部52が、雌ネジ付き挿入体の円筒形本体10の雌ネジ付き内壁部分14に螺入することによって取り付けられ、工具のネジ55が、雌ネジ付き挿入体の円筒形本体10の切頭円錐形内側穴11内に設置された切頭円錐形状のコア20の雌ネジ付き内側開口21内に挿入され且つ部分的に螺入される。
【0041】
図7Aにおいて示されるように、その後、工具の円筒形本体51上において定置リング60を移動させることによって、雌ネジ付き挿入体が部品Aの円筒形穴30内に挿入されるであろう深さに対応する寸法Cが調整される。このため、この寸法Cの調整は、工具50の円筒形本体51上において定置リング60をねじ込み又は螺出することによってなされる。
【0042】
図7Bにおいて示されるように、その後、組立体が円筒形穴30内に挿入され、挿入動作は、円筒形穴30が連通する部品Aの前面と当接する定置リング60によって制限される。
【0043】
図7Cにおいて示されるように、その後、工具のネジ55が、雌ネジ付き挿入体に螺入されるので、前述されたように、矢印Fに従って切頭円錐形状のコア20に引張力を及ぼして円筒形穴30の内壁に対する雌ネジ付き挿入体の円筒形本体10の変形をもたらすことができる。このため、ネジ55は、所要の繋留力に応じたトルクに従って締め付けられる。
【0044】
図7Dにおいて示されるように、その後、工具が、ネジ55を緩めることによって取り外されて、円筒形本体10の雌ネジ付き内壁部分14内にそのネジ山付き端部52において取り付けられた本体51が螺出される。
【0045】
図7Eにおいて示されるように、その後、雌ネジ付き挿入体が部品Aの円筒形穴30において定置される。
【0046】
以下、斯かる挿入体を、図8Aにおいて示されるような円筒形穴30におけるその位置から取り外すことが、図8A〜図8Eを参照して記述される。最初に、図8Bにおいて示されるように、取付け及び取外し工具50が、円筒形本体10の雌ネジ付き内壁部分14にネジ山付き端部52を螺入させることによって取り付けられる。その後、定置リング60が、部品Aの前面と接触すべく工具の円筒形本体51に沿って移動せしめられる。その後、ネジ55が切頭円錐形状のコア20の雌ネジ付き内側穴21内に挿入される。このネジ55は、ネジ55の頭部55bと、取付け及び取外し工具50の円筒形本体51との間に隙間Jが残されるまでねじ込まれる。
【0047】
図8Cにおいて示されるように、矢印Gの方向においてネジ55の頭部55bに対して軽い衝撃を与えることによって、切頭円錐形状のコア20が、前記切頭円錐形内側穴11の大きな基部11aの方向において、雌ネジ付き挿入体の円筒形本体10の切頭円錐形内側穴11内に平行移動される。このため、ネジ55に及ぼされた力の方向(矢印G)における切頭円錐形状のコア20の後退によって、この切頭円錐形状の挿入体20によって円筒形本体10に及ぼされた圧力が取り除かれる。その後、取付け及び取外し工具が、ネジ55のネジ山付き端部55aに取り付けられた雌ネジ付き挿入体と共に取り外されることができる。
【0048】
工具の円筒形本体51内に挿入されたネジ55上に取り付けられた雌ネジ付き挿入体のこの取り外しは、図8Dにおいて示されるように部品Aの前面に対して定置リング60をねじ込むことによっても実現されることができる。実際、部品Aの前面に対して当接した状態で保持されるこの定置リング60のねじ込みは、取付け及び取外し工具50の円筒形本体51全体の(矢印Hに従った)相対移動を引き起こす。
【0049】
このため、図8Eにおいて示されるように、部品Aの円筒形穴30から雌ネジ付き挿入体を取り外すことが実現される。したがって、円筒形穴30を損傷することなく、雌ネジ付き挿入体を定置し且つ取り外すことができる。このため、雌ネジ付き挿入体の取替えを取付け及び取外し工具によって容易に実現することができる。
【0050】
当然のことながら、本発明は、上述された実施形態の例に限定されるものではない。特に、様々な実施形態に関連して記述された様々な特徴を変更可能な態様において組み合わせることができる。
【0051】
したがって、特に、図4において示されたいくつかのスロットを備えた雌ネジ付き挿入体はカラーを有しなくてもよい。また、取付け及び取外し工具と使用可能な図5の雌ネジ付き挿入体は、平滑な表面を備えた外壁を有することができる。しかしながら、雌ネジ付き挿入体が円筒形穴において定められた深さに定置されることを可能とする取付け及び取外し工具を使用するときには、装備されるべき円筒形穴を備えた部品の前面と当接することが意図されているカラーが前記雌ネジ付き挿入体に装備されないことに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形本体(10)を具備する、部品Aの平滑な円筒形穴(30)のための雌ネジ付き挿入体において、
前記円筒形本体(10)が、切頭円錐形状の内側穴(11)と、該円筒形本体(10)内に延在し且つ前記切頭円錐形内側穴(11)と連通する少なくとも一つの長手スロット(12、12’)とを具備し、
当該雌ネジ付き挿入体が前記円筒形本体(10)の切頭円錐形内側穴(11)と相補的な切頭円錐形状のコア(20)も具備し、該コア(20)が雌ネジ付き内側開口(21)を具備し、前記円筒形本体(10)及びコア(20)は、当該雌ネジ付き挿入体が、所定位置に保持され、且つ前記円筒形穴(30)の内側に雌ネジ部を装備させるべく該円筒形穴(30)においてロックされるようになっていることを特徴とする、雌ネジ付き挿入体。
【請求項2】
前記切頭円錐形状のコア(20)及び前記切頭円錐形内側穴(11)の半角の値と、部品A内において装備されるべき前記円筒形穴(30)と前記円筒形本体(10)との間の摩擦係数とが、前記雌ネジ付き挿入体をロックすることを保証すべく選択されることを特徴とする、請求項1に記載の雌ネジ付き挿入体。
【請求項3】
前記切頭円錐形状のコア(20)の半角値が2.5°〜5°の間であることを特徴とする、請求項2に記載の雌ネジ付き挿入体。
【請求項4】
前記円筒形本体(10)が、該円筒形本体(10)の切頭円錐形内側穴(11)の大きな基部(11a)の反対側において、当該雌ネジ付き挿入体上に延在する該円筒形本体(10)の外壁(10’)から突出するカラー(13)を具備することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の雌ネジ付き挿入体。
【請求項5】
前記円筒形本体(10)が、該円筒形本体(10)の長さの一部に亘って延在し且つ前記切頭円錐形内側穴(11)と連通するいくつかのスロット(12、12’)を具備することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の雌ネジ付き挿入体。
【請求項6】
前記円筒形本体(10)の外壁(10’)の表面が、構造化され、好ましくはギザギザ形状にされ又は条線を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の雌ネジ付き挿入体。
【請求項7】
前記円錐形本体(10)が前記切頭円錐形内側穴(11)の大きな基部(11a)とは反対側の該切頭円錐形内側穴(11)の端部において雌ネジ付き内壁部分(14)も含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の雌ネジ付き挿入体。
【請求項8】
請求項7に記載の少なくとも一つの雌ネジ付き挿入体と、雌ネジ付き挿入体の取付け及び取外し工具(50)とを具備する、円筒形穴のための雌ネジ付き挿入体の取付け及び取外し装置であって、前記取付け及び取外し工具(50)が、
ネジ山付き端部(52)と内側穴(53)とを具備する円筒形本体(51)であって、前記端部(52)のネジ山が前記雌ネジ付き挿入体の円筒形本体(10)の雌ネジ付き内壁部分(14)の雌ネジ部に適合される、円筒形本体(51)と、
前記工具(50)の円筒形本体(51)の内側穴(53)の直径よりも実質的に小さい直径のネジ(55)であって、一方の端部(55a)において、前記雌ネジ付き挿入体のコア(20)の雌ネジ付き内側開口(21)と相補的なネジ山を具備するネジ(55)と
を具備する、円筒形穴のための雌ネジ付き挿入体の取付け及び取外し装置。
【請求項9】
前記取付け及び取外し工具(50)が、該工具(50)の円筒体本体(51)上において摺動すべく取り付けられた定置リング(60)も具備し、前記円筒形本体(51)及び定置リング(60)が、該円筒形本体(51)上における該定置リング(60)の相対的な摺動を可能とし且つ所定の横断面において該円筒形本体(51)上に該定置リング(60)を維持するようになっている相補的な摺動手段を具備することを特徴とする、請求項8に記載の取付け及び取外し装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の雌ネジ付き挿入体の取付け及び取外し装置で部品Aの円筒形穴において雌ネジ付き挿入体を取り付けるための方法において、
前記円筒形本体(10)の雌ネジ付き内壁部分(14)に前記端部(52)を螺入するステップと、
前記円筒形本体(10)内に設置された前記コア(20)の雌ネジ付き開口(21)内に前記ネジ(55)を挿入し且つ部分的に螺入するステップと、
前記雌ネジ付き挿入体が部品A内に挿入されるであろう深さを調整するステップと、
所要の繋留力を得るまで前記雌ネジ付き挿入体に前記ネジ(55)を螺入するステップと、
前記ネジ(55)及び本体(51)を取り外すステップと
を含む、方法。
【請求項11】
前記雌ネジ付き挿入体が部品Aの円筒形穴(30)において挿入されるであろう深さが、前記装置の円筒形本体(51)上において定置リング(60)を移動させることによって調整され、該定置リングが、前記雌ネジ付き挿入体が挿入されると前記部品Aの前面と接触することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項8又は9に記載の雌ネジ付き挿入体の取付け及び取外し装置で部品Aの円筒形穴内における雌ネジ付き挿入体を取り外すための方法において、
前記円筒形本体(10)の雌ネジ付き内壁部分(14)に前記端部(52)を螺入するステップと、
定置リング(60)を、部品Aの前面と接触するように前記装置の円筒形本体(10)に沿って移動させるステップと、
前記コア(20)の雌ネジ付き内側穴(21)内にネジ(55)を挿入するステップと、
前記ネジ(55)の頭部(55b)と前記装置(50)の円筒形本体(51)との間に隙間を残すまで前記ネジ(55)をねじ込むステップと、
前記ネジ(55)に対して軽い衝撃を与えるステップと、
前記装置で前記雌ネジ付き挿入体を取り外すステップと
を含む、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【公表番号】特表2012−532296(P2012−532296A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518808(P2012−518808)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004074
【国際公開番号】WO2011/003571
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(509347273)エアバス オペラシオン ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ (33)
【Fターム(参考)】