説明

円錐ころ軸受用保持器および円錐ころ軸受

【課題】内輪の外周円錐軌道面の大径側に位置する鍔部の円錐ころ案内面の焼付きを抑制できる円錐ころ軸受用保持器および円錐ころ軸受を提供すること。
【解決手段】 保持器5に、小径環状部20と、大径環状部21と、これら二つの環状部20,21を連結する複数の柱部23と、小径環状部20から径方向の内方側に延在する径方向延在部24と、柱部23の径方向の内方側に位置する一方、小径環状部20側から大径環状部21側に行くにしたがって小径環状部20の中心軸から離れるように傾斜する傾斜筒状部26と、径方向延在部24と傾斜筒状部26とを連結する連結部25とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円錐ころ軸受用保持器および円錐ころ軸受に関する。また、本発明は、例えば、ディファレンシャルギヤ装置、トランスファー装置またはトランスアクスル装置等の車両用ピニオン軸支持装置のピニオン軸等を支持するのに使用すれば好適な円錐ころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円錐ころ軸受としては、特開2010−71321号公報(特許文献1)に記載されているものがある。この円錐ころ軸受は、外輪と、内輪と、複数の円錐ころと、保持器とを備え、上記保持器は、複数の円錐ころを保持している一方、上記内輪は、外周円錐軌道面と、小鍔部と、大鍔部とを有する。
【0003】
上記保持器は、環状部と、複数の外径側柱部と、複数の内径側柱部とを備える。上記各外径側柱部は、環状部の径方向の外方側の端部から環状部の軸方向の一方側に延在している一方、上記各内径側柱部は、環状部の径方向の内方側の端部から環状部の軸方向の一方側に延在している。
【0004】
上記複数の外径側柱部は、環状部の周方向に互いに間隔をおいて位置し、上記複数の内径側柱部は、環状部の周方向に互いに間隔をおいて位置している。上記各内径側柱部は、小鍔部の外周面に沿った部分と、この部分につながると共に、小鍔部の軸方向の大鍔部側の端面に対向する対向部分と、この部分につながると共に、内輪の外周円錐軌道面に沿って延在している部分とを有している。
【0005】
この保持器は、内径側柱部の対向部分を、小鍔部の軸方向の大鍔部側の端面に係止するようにして、保持器が、円錐ころ軸受から離脱することを防止している。
【0006】
また、この保持器は、保持器の大径側を開放することによって、保持器の小径側から円錐ころ軸受に流入した潤滑油を速やかに大径側から排出するようにしている。
【0007】
しかしながら、上記円錐ころ軸受は、保持器の大径側が開放されているから、微量潤滑を行った場合、焼付きが頻繁に生じる内輪の大鍔部のころ案内面が潤滑されにくくなって、上記ころ案内面に焼付きが生じやすいという問題がある。
【0008】
また、上記円錐ころ軸受は、潤滑剤を各内径側柱部の外周円錐軌道面に沿って延在している部分の内面に沿わすように内輪の大鍔部側に流動させることができて、大鍔部のころ案内面の焼付きを抑制することができるが、円錐ころ案内面の焼付きの抑制の更なる向上が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−71321号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の課題は、内輪の外周円錐軌道面の大径側に位置する鍔部の円錐ころ案内面の焼付きを抑制できる円錐ころ軸受用保持器および円錐ころ軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明の円錐ころ軸受用保持器は、
小径環状部と、
この小径環状部よりも大径の大径環状部と、
上記小径環状部と、上記大径環状部との間を連結すると共に、互いに周方向に間隔をおいて位置する複数の柱部と、
上記小径環状部から径方向の内方側に延在する径方向延在部と、
上記柱部の上記径方向の内方側に位置する一方、上記小径環状部側から上記大径環状部側に行くにしたがって上記小径環状部の中心軸から離れるように傾斜する中空の傾斜筒状部と、
上記径方向延在部と、上記傾斜筒状部の上記小径環状部側の端部とを連結する連結部と
を備えることを特徴としている。
【0012】
尚、上記径方向延在部は、径方向の延在成分を有していれば良く、正確に径方向に延在していなくても良く、例えば、径方向に対して傾斜する方向等に延在していても良い。また、径方向延在部は、直線状に延在していても、曲線状に延在していても良い。
【0013】
本発明によれば、保持器が、柱部の径方向の内方側に、小径環状部の軸方向に上記小径環状部から上記大径環状部側に行くにしたがって上記小径環状部の中心軸から離れるように延在する傾斜筒状部を有している。したがって、傾斜筒状部の貫通穴に、その貫通穴の小径環状部側の開口から入った潤滑剤を、保持器の回転に基づく遠心力によって貫通穴の内部を伝わせて、貫通穴の大径環状部側の開口まで確実に到達させることができて、その開口から内輪の大鍔部の円錐ころ案内面に効率的に飛散させることができる。すなわち、上記貫通穴の小径環状部側の開口から入った潤滑剤を、上記貫通穴の大径環状部側の開口に確実に到達させることができるから、円錐ころ案内面に到達する潤滑剤の量を多くできて、円錐ころ案内面の焼付き抑制の効果を大きくすることができる。
【0014】
もし仮に、小径環状部の軸方向に小径環状部から大径環状部側に行くにしたがって小径環状部の中心軸から離れるように延在する部分が、単なる柱部であったとすると、柱部の内面に到達した潤滑剤のうちの一部分は、柱部の大径環状部側の端部に到達する前に内輪の外周円錐軌道面にこぼれ落ちて、柱部の大径環状部側の端部に到達する潤滑剤の量が、少なくなって、円錐ころ案内面の潤滑性能が、低くなるのである。
【0015】
また、本発明によれば、保持器が大径環状部を有して、ポケットが大径側で開放されていないから、ポケットの大径環状部に溜まった潤滑剤を、円錐ころの大径端面を介して円錐ころ案内面に到達させることができる。
【0016】
したがって、微量潤滑を行ったとしても、より多くの潤滑剤で大鍔部の円錐ころ案内面を潤滑できて、円錐ころ案内面の潤滑性を向上できて、円錐ころ案内面の焼付きを抑制できる。
【0017】
また、一実施形態では、
上記傾斜筒状部は、
上記連結部につながると共に、上記小径環状部側から上記大径環状部側に行くにしたがって上記小径環状部の中心軸から離れるように傾斜する傾斜延在部と、
上記傾斜延在部とは別体であると共に、上記傾斜延在部の延在方向と略平行な方向に延在する中空の筒状部と、
上記傾斜延在部と、上記筒状部とを接合する接合部と
を有する。
【0018】
上記実施形態によれば、傾斜筒状部を、傾斜延在部と、傾斜延在部とは別体の筒状部とを互いに平行に位置させて、接合部で接合して形成するようになっているから、傾斜筒状部を、接合を用いずに、高度なプレス成形技術等を用いて一体形成する場合と比較して、製造コストを大きく抑制できると共に、簡易に製造することができる。
【0019】
また、一実施形態では、
上記連結部は、
上記径方向延在部から上記傾斜筒状部側に延在する本体部と、
上記本体部の上記傾斜筒状部側の端面と、上記傾斜筒状部の上記小径環状部側の端面とを接合する接合部と
を有する。
【0020】
上記実施形態によれば、連結部の本体部の上記傾斜筒状部側の端面と、予め用意した筒状部材(パイプ)であるところの傾斜筒状部の上記小径環状部側の端面とを接合するだけで、連結部と、傾斜筒状部とを一体化できるから、接合労力が小さくて、簡易に保持器を製造することができる。
【0021】
また、一実施形態では、
上記傾斜筒状部の径方向の内方側の端部は、上記径方向の内方側に開口すると共に、上記小径環状部の軸方向に延在する軸方向延在溝を有している。
【0022】
上記実施形態によれば、上記傾斜筒状部の径方向の内方側の端部が、小径環状部の軸方向に延在する軸方向延在溝を有しているから、傾斜筒状部を、内輪の外周円錐軌道面に間隔をおいて対向するように配置することによって、潤滑剤を、軸方向延在溝内を流動させて、内輪の大鍔部側に供給し易くなる。したがって、大鍔部の円錐ころ案内面の焼付きを更に抑制できる。
【0023】
また、本発明の円錐ころ軸受は、
内周円錐軌道面を有する外輪と、
外周円錐軌道面と、その外周円錐軌道面の大径側に位置する鍔部とを有する内輪と、
上記外輪の内周円錐軌道面と、上記内輪の外周円錐軌道面との間に配置された複数の円錐ころと、
上記複数の円錐ころを保持する本発明の円錐ころ軸受用保持器と
を備えることを特徴としている。
【0024】
本発明によれば、内輪の大鍔部(内輪における外周円錐軌道面の大径側の鍔部)の円錐ころ案内面の焼付きを抑制できる。
【0025】
また、一実施形態では、
上記円錐ころ軸受用保持器の上記傾斜筒状部は、平面状、円筒面状または円錐面状の底面を有し、
上記内輪の外周円錐軌道面と、上記底面との間には、上記円錐ころ軸受用保持器が上記内輪に対して静止しているときに、潤滑剤の表面張力により上記潤滑剤を上記底面に保持できる隙間が存在している。
【0026】
上記実施形態によれば、内輪の外周円錐軌道面と、傾斜筒状部の底面との間に、保持器が内輪に対して静止しているときに、潤滑剤の表面張力により上記潤滑剤を上記底面に保持できる隙間が存在しているから、潤滑剤を、傾斜筒状部の底面を伝わせて内輪の大鍔部の円錐ころ案内面に到達させることができる。したがって、上記大鍔部の円錐ころ案内面の潤滑性を更に向上できて、上記円錐ころ案内面の焼付きを更に抑制できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、内輪の外周円錐軌道面の大径側に位置する鍔部(大鍔部)の円錐ころ案内面の焼付きを抑制できる円錐ころ軸受用保持器および円錐ころ軸受を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態の円錐ころ軸受の軸方向の模式断面図であり、傾斜筒状部の貫通穴の中心軸を通過する円錐ころ軸受の軸方向の模式断面図である。
【図2】第2実施形態の円錐ころ軸受の保持器の傾斜筒状部を形成する前における、連結部の一部および傾斜筒状部の一部を示す図である。
【図3】第2実施形態の傾斜筒状部の径方向の内方側の底面を、径方向の内方側から見たときの図である。
【図4】第3実施形態の円錐ころ軸受の保持器の傾斜筒状部における、内輪の大鍔部側の端部の模式断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態の円錐ころ軸受の軸方向の模式断面図であり、傾斜筒状部の貫通穴の中心軸を通過する円錐ころ軸受の軸方向の模式断面図である。
【図6】第4実施形態の傾斜筒状部と、連結部との接合部付近を示す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態の円錐ころ軸受の軸方向の模式断面図である。
【0031】
この円錐ころ軸受は、ディファレンシャルギヤ装置、トランスアクスル装置、または、トランスファー装置等の車両用ピニオン軸支持装置のピニオン軸59を、車両用ピニオン軸支持装置のハウジング60に対して回転自在に支持している。
【0032】
この円錐ころ軸受は、外輪1、内輪2、転動体としての複数の円錐ころ3、円錐ころ軸受用保持器(以下、単に保持器という)5を備える。上記外輪1、内輪2および円錐ころ3は、軸受鋼等の鋼材からなっている。
【0033】
上記外輪1は、ハウジング60の内周面に締まり嵌めにより内嵌されて固定されている。外輪1は、内周円錐軌道面11を有している。一方、上記内輪2は、ピニオン軸59の外周面に締まり嵌めにより外嵌されて固定されている。上記内輪2は、外周円錐軌道面12と、その外周円錐軌道面12の小径側に位置する小鍔部13と、外周円錐軌道面12の大径側に位置する大鍔部14とを有する。潤滑剤の一例としての車両用ピニオン軸支持装置内のギヤオイルが、図1に矢印aで示す方向に、外輪1と内輪2の間における内輪2の外周円錐軌道面12の小径側の開口から内輪2の外周円錐軌道面12の大径側の開口に流動するようになっている。
【0034】
また、上記複数の円錐ころ3は、外輪1の内周円錐軌道面11と、内輪2の外周円錐軌道面12との間に、保持器5によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。
【0035】
後述するように、上記保持器5は、二つの金属部材をレーザ溶接等で接合して形成されている。上記保持器5を構成する各金属部材は、SUJ2等の塑性加工できる軸受鋼、塑性加工できる軸受鋼に浸炭窒化処理等の硬化処理を施した鋼材、普通鋼SPCC等の塑性加工できる金属、S55Cなどの炭素鋼、SCM415などのクロムモリブデン鋼、N22CB,N35CB(日新製綱規格)等の金属材質からなっている。
【0036】
上記保持器5は、小径環状部20と、大径環状部21と、複数の柱部23と、径方向延在部24と、複数の連結部25と、複数の傾斜筒状部26とを備える。
【0037】
上記小径環状部20は、軸方向において大径環状部21よりも内輪2の外周円錐軌道面12の小径側に位置している。上記小径環状部20の内径は、大径環状部21の内径よりも小さくなっている。上記各柱部23は、小径環状部20と、大径環状部21とを連結している。また、上記複数の柱部23は、小径環状部20の周方向に互いに間隔をおいて配置されている。上記小径環状部20、大径環状部21、および、周方向に隣接する二つの柱部23で囲まれた部分で、円錐ころ3を収容するポケットを構成している。上記柱部23を含む軸方向の断面において、上記小径環状部20、柱部23および大径環状部21は、略一直線上に延在している。
【0038】
上記径方向延在部24は、環状であり、小径環状部20から径方向の内方側に延在している。上記各連結部25は、径方向延在部24の径方向の内方側の端部から大鍔部14側に延在している。上記複数の連結部25は、環状の径方向延在部24の周方向に互いに間隔をおいて位置している。
【0039】
上記傾斜筒状部26は、連結部25の大鍔部14側の端部につながっている。上記傾斜筒状部26は、柱部23の径方向の内方側に位置している。上記傾斜筒状部26は、小径環状部20側から大径環状部21側に行くにしたがって小径環状部20の中心軸から離れるように傾斜している。
【0040】
上記傾斜筒状部26は、傾斜延在部50と、筒状部(パイプ部)51と、接合部(図示せず)とを有する。傾斜延在部50は、連結部25につながって、連結部25を延長してなる部分からなり、筒状部51は、パイプからなる。上記傾斜延在部50および筒状部51の夫々は、小径環状部20側から大径環状部21側に行くにしたがって小径環状部20の中心軸から離れるように傾斜している。上記傾斜延在部50および筒状部51の夫々は、内輪2の外周円錐軌道面12に略平行かつ外周円錐軌道面12に沿うように延在している。上記筒状部51の貫通穴55は、筒状部51の中心軸上に一直線上に延在しており、上記貫通穴55の中心軸は、図1の断面図において、略外周円錐軌道面12に略平行になっている。
【0041】
上記傾斜筒状部26は、傾斜延在部50と、筒状部51とをレーザ溶接して、形成されている。詳しくは、上記傾斜延在部50の径方向の内方側の部分に、筒状部51を接触させた後、治具で、傾斜延在部50に対して筒状部51が相対移動しないようにして、レーザ溶接で、筒状部51と、傾斜延在部50とを接合している。上記接合部は、レーザ溶接によって形成されると共に、傾斜延在部50と、筒状部51とを溶融接着している部分からなっている。
【0042】
上記連結部25の数と、傾斜筒状部26の数と、柱部23の数とは、全て同一である。上記連結部25および傾斜筒状部26は、柱部23に径方向に重なっている。上記連結部25および傾斜筒状部26は、柱部23に径方向に間隔をおいて位置している。上記傾斜筒状部26は、内輪2の外周円錐軌道面12に略平行かつ外周円錐軌道面12に沿うように延在している。
【0043】
図1に示すように、上記傾斜筒状部26の筒状部51の軸方向の大鍔部14側の端面の全面は、図1の断面において、外周円錐軌道面12に平行な方向において、大鍔部14の円錐ころ3を案内する円錐ころ案内面30に重なっている。上記貫通穴55の大鍔部14側の開口は、傾斜筒状部26の軸方向の大鍔部14側の端面に存在している。上記貫通穴55の大鍔部14側の開口は、円錐ころ案内面30に、傾斜筒状部26の延在方向に対向している。
【0044】
上記断面において、傾斜筒状部26の筒状部51の大鍔部14側の端面と、円錐ころ案内面30との外周円錐軌道面12に平行な方向の距離は、0.7〜1.0mmに設定されている。上記傾斜筒状部26の筒状部51の大鍔部14側の端面と、円錐ころ案内面30との上記平行な方向の距離を、このように設定することにより、貫通穴55の大鍔部14側の開口に到達したギヤオイルを、円錐ころ案内面30の方へ効果的に飛散させて、円錐ころ案内面30の焼付きの抑制効果を大きくしている。
【0045】
上記構成において、この円錐ころ軸受が取付られている車両用ピニオン軸支持装置が停止している状態では、円錐ころ軸受の内外輪1,2の間の環状領域の鉛直方向内方側の一部の領域は、車両用ピニオン軸支持装置の鉛直方向内方に溜まっているギヤオイル内に位置するようになっている。また、上記複数の傾斜筒状部26のうちの一部の傾斜筒状部26が、上記ギヤオイル内に位置するようになっている。
【0046】
この状態で、車両用ピニオン軸支持装置が始動すると、内輪2の始めの半回転程度の回転で、全ての傾斜筒状部26が、ギヤオイルに接触して、全ての傾斜筒状部26の貫通穴55内にギヤオイルが収容される。
【0047】
そして、内輪2および保持器5の回転に起因する遠心力のポンプ効果によって、貫通穴55内に位置するギヤオイルが、貫通穴55内を大鍔部14側に移動して、貫通穴55の大鍔部14側の開口から飛散して、大鍔部14の円錐ころ案内面30に到達するようになっている。同様に、上記内輪2の回転による遠心力によって、内輪2の外周面から径方向の外方側に飛散したギヤオイルであって、貫通穴55内に入り込んだギヤオイルが、貫通穴55の開口を介して、円錐ころ案内面30に到達するようになっている。
【0048】
上記第1実施形態の保持器5によれば、保持器5が、柱部23の径方向の内方側に、小径環状部20の軸方向に小径環状部20から大径環状部21側に行くにしたがって小径環状部20の中心軸から離れるように延在する傾斜筒状部26を有している。したがって、傾斜筒状部の26貫通穴55に、その貫通穴55の小径環状部20側の開口から入った潤滑剤を、保持器5の回転に基づく遠心力によって貫通穴55の内部を伝わせて、貫通穴55の大径環状部21側の開口まで確実に到達させることができて、その開口から内輪2の大鍔部14の円錐ころ案内面30に効率的に飛散させることができる。すなわち、上記貫通穴55の小径環状部20側の開口から入ったギヤオイルを、上記貫通穴55の大径環状部21側の開口に確実に到達させることができるから、円錐ころ案内面30に到達するギヤオイルの量を多くできて、円錐ころ案内面30の焼付き抑制の効果を大きくすることができる。
【0049】
もし仮に、小径環状部の軸方向に小径環状部から大径環状部側に行くにしたがって小径環状部の中心軸から離れるように延在する部分が、単なる柱部であったとすると、柱部の内面に到達した潤滑剤のうちの一部分は、柱部の大径環状部側の端部に到達する前に内輪の外周円錐軌道面にこぼれ落ちて、柱部の大径環状部側の端部に到達する潤滑剤の量が、少なくなって、円錐ころ案内面の潤滑性能が、低くなるのである。
【0050】
また、上記第1実施形態の保持器5によれば、保持器5が大径環状部21を有して、ポケットが大径側に開放されていないから、ポケットの大径環状部21に溜まったギヤオイルを、円錐ころ3の大径端面を介して円錐ころ案内面30に到達させることができる。
【0051】
したがって、微量潤滑を行ったとしても、より多くのギヤオイルで大鍔部14の円錐ころ案内面30を潤滑できて、円錐ころ案内面30の潤滑性を向上できて、円錐ころ案内面30の焼付きを抑制できる。
【0052】
また、上記第1実施形態の保持器5によれば、傾斜筒状部26を、傾斜延在部50と、傾斜延在部50とは別体の筒状部51とを互いに平行に位置させて、レーザ溶接の溶け込み部で構成される接合部で接合して形成するようになっているから、傾斜筒状部を、接合を用いなくて、高度なプレス成形技術等を用いて一体成形する場合と比較して、製造コストを大きく抑制できると共に、簡易に製造することができる。
【0053】
尚、上記第1実施形態の保持器5では、内輪2がその外周円錐軌道面12の小径側に小鍔部13を有していたが、この発明では、内輪は、その外周円錐軌道面の小径側に小鍔部を有していなくても良い。
【0054】
また、上記第1実施形態の保持器5では、傾斜筒状部26が、柱部23と同一数存在したが、この発明では、傾斜筒状部は、柱部と同一数存在しなくても良い。例えば、柱部が、2N(Nは、自然数)個存在している場合に、傾斜筒状部が、N個存在し、傾斜筒状部は、周方向に一つとばしにN個存在する柱部に、径方向に重なるように存在していても良い。要は、傾斜筒状部は、柱部の数以下であれば如何なる数存在しても良い。尚、傾斜筒状部は、周方向に等間隔に配置される方が好ましいが、これに限らない。
【0055】
また、上記第1実施形態の保持器5では、傾斜延在部50と、筒状部51とをレーザ溶接で接合したが、この発明では、傾斜延在部と、筒状部とを、溶接や、スポット溶接によって接合しても良い。また、この発明では、傾斜延在部と、筒状部とを接着剤で接合しても良い。このようにして、接合部を、溶接による溶け込み部や接着剤等で構成しても良い。
【0056】
また、上記第1実施形態の保持器5では、筒状部51の軸方向の大鍔部14側の端面の全面が、円錐ころ案内面30に、内輪2の外周円錐軌道面12の延在方向に対向していたが、この発明では、筒状部の貫通穴の開口が、円錐ころ案内面に、内輪の外周円錐軌道面の延在方向に対向していさえすれば、筒状部の軸方向の大鍔部側の端面の全面が、円錐ころ案内面に内輪の外周円錐軌道面の延在方向に対向していなくても良い。
【0057】
また、この発明の保持器では、径方向延在部と、連結部とは、接合部を有さずに一体形成されたものであっても良く、接合部で接合されて一体化されていても良い。ここで、接合部で一体化する場合、連結部を、環状の取付部と、取付部から取付部の周方向に互いに間隔をおいて延在する複数の柱部とで構成して、環状の径方向延在部と、連結部の取付部とを、溶接や、リベット接合や、接着剤や、インローかしめ接合等で接合すると、製造コストを低減できて好ましい。また、この場合、径方向延在部を有する既存の保持器を使用すると、簡単に保持器を製造することができる。
【0058】
また、本発明では、上記径方向延在部は、正確に小径環状部の径方向に延在していても良く、径方向に傾斜した方向に延在していても良い。また、径方向延在部は、断面形状が直線形状であって良く、曲線形状であっても良く、直線と曲線が接続された形状であっても良い。また、本発明では、連結部は、軸方向の断面形状が、直線形状であっても良く、曲線形状であっても良く、直線と曲線が接続された形状であっても良い。
【0059】
また、上記第1実施形態の円錐ころ軸受では、内輪2が回転輪であって、外輪1が固定輪であったが、この発明では、内輪が固定輪であって、外輪が回転輪であっても良い。尚、遠心力の利用という観点から、内輪が回転輪である方が好ましいのは、言うまでもない。
【0060】
また、上記第1実施形態の円錐ころ軸受は、潤滑剤がギヤオイルであったが、この発明では、潤滑剤が、トラクションオイルであっても良い。また、この発明では、潤滑剤は、例えば、鉱油、ポリ−α−オレフィン油、ジエステル油、ポリオールエステル油、アルキルジフェニルエーテル油、シリコーン油、パラフィン油、ふっ素油等であっても良い。
【0061】
また、上記第1実施形態の円錐ころ軸受は、車両用ピニオン軸支持装置のピニオン軸上に配置されたが、この発明の円錐ころ軸受は、潤滑剤としての洗浄液が周囲に飛散しているような環境において回転軸上に設置されていても良い。
【0062】
また、上記第1実施形態の円錐ころ軸受は、潤滑剤が、内外輪の一方の開口から他方の開口に流動する環境で使用されたが、この発明の円錐ころ軸受は、内外輪の少なくとも一方の開口がシール部材でシールされていても良い。このような場合であっても、内輪の外周円錐軌道面の大径側の大鍔部の円錐ころ案内面の焼付きを抑制することができるからである。
【0063】
図2は、第2実施形態の円錐ころ軸受の保持器の傾斜筒状部を形成する前における、連結部125の一部および傾斜筒状部126の一部を示す図である。
【0064】
第2実施形態では、傾斜筒状部を接合により形成するのではなくて、曲げ加工により形成している。
【0065】
第2実施形態の円錐ころ軸受では、第1実施形態の円錐ころ軸受の構成部と同一構成部には同一参照番号を付して説明を省略することにする。また、第2実施形態の円錐ころ軸受では、第1実施形態の円錐ころ軸受と共通の作用効果および変形例については説明を省略することにし、第1実施形態の円錐ころ軸受と異なる構成、作用効果および変形例についてのみ説明を行うことにする。
【0066】
図2に示すように、傾斜筒状部126を形成する前においては、傾斜筒状部126を構成する部分は、平板からなっている。傾斜筒状部126は、この平板を、点線130,131,132で示す折り目(実際には、存在しない)で塑性変形して折り曲げて、図2に135で示す平板の縁と、図2に136で示す平板の縁とを隙間ない状態で接触させて、断面矩形状の貫通穴を有する傾斜筒状部126を形成するようになっている。
【0067】
尚、第2実施形態では、傾斜筒状部が形成された後、上記縁135,136は、連結部125よりも径方向の内方側に位置するようになっている。このようにして、潤滑剤が、連結部125によって邪魔されずに、傾斜筒状部126の貫通穴に円滑に流入できるようにしている。
【0068】
図3は、第2実施形態の傾斜筒状部126の径方向の内方側の底面240を、径方向の内方側から見たときの図である。
【0069】
図3に示すように、上記傾斜筒状部126の底面240は、複数の軸方向延在溝241(以下、単に溝という)を有する。上記各溝241は、小径環状部(図示せず)の軸方向に延在している。上記各溝241は、径方向の内方側に開口している。
【0070】
上記複数の溝241は、上記底面240の幅方向に互いに間隔をおいて位置している。上記各溝241の内輪の大鍔部側の端は、軸方向に開口している。また、上記各溝241の内面の大鍔部側の端部の仮想延長面は、大鍔部の円錐ころ案内面に重なっている。このようにして、内輪および保持器の遠心力によって、各溝241をつたって移動した潤滑剤が、その開口から円錐ころ案内面に効率的に飛散するようにしている。
【0071】
上記内輪の外周円錐軌道面と、傾斜筒状部126の底面240との間には、保持器が内輪に対して静止しているときに、潤滑剤の表面張力により潤滑剤を傾斜筒状部126の底面240に保持できる隙間が存在している。また、上記内輪の外周円錐軌道面と、傾斜筒状部126の底面240との間には、保持器が内輪に対して静止しているときに、潤滑剤の表面張力により潤滑剤を各溝241内に保持できる隙間が存在している。また、軸方向の断面において、傾斜筒状部126の大鍔部側の端面と、円錐ころ案内面との、内輪の外周円錐軌道面に平行な方向の距離が、0.7〜1.0mmになっている。
【0072】
上記第2実施形態の円錐ころ軸受によれば、傾斜筒状部26の径方向の内方側の底面240が、軸方向に延在する溝241を有しているから、潤滑剤を、溝241を介して内輪の大鍔部側に供給し易くなる。したがって、大鍔部の円錐ころ案内面の焼付きを更に抑制できる。
【0073】
また、上記第2実施形態の円錐ころ軸受によれば、傾斜筒状部26の底面240と、内輪の外周円錐軌道面との間の隙間を、保持器が内輪に対して静止しているときに、潤滑剤の表面張力により潤滑剤を溝241に保持できるように形成しているから、長期の船中輸送等で貧潤滑状態になったとしても、溝241内の潤滑剤が溝241外に流れ出にくくなる。したがって、駆動初期に溝241内の潤滑剤を確実に大鍔部の円錐ころ案内面に供給できるから、円錐ころ案内面の焼付きを更に確実に抑制できる。
【0074】
また、上記第2実施形態の円錐ころ軸受によれば、軸方向の断面において、傾斜筒状部126の大鍔部側の端面と、円錐ころ案内面との、内輪の外周円錐軌道面に平行な方向の距離が、0.7〜1.0mmであるから、溝241の開口から飛散したギヤオイルを、効率的に円錐ころ案内面に到達させることができる。
【0075】
尚、上記第2実施形態の円錐ころ軸受では、溝241が、傾斜筒状部26の底面240に形成されていたが、この発明では、軸方向延在溝は、連結部の軸方向の一端から他端に延在していても良い。要は、軸方向延在溝は、傾斜筒状部の底面の少なくとも一部を含んでいれば、如何なる部分に形成されていても良い。尚、傾斜筒状部の内面と、内輪の外周円錐軌道面の径方向距離は、0.5〜1.5mmが好ましい。保持器と内輪を接触させないために部品精度のばらつきを考慮して最低0.5mm程度の距離が必要であり、界面潤滑膜を維持するためには最大でも1.5mm以下である必要があるからである。
【0076】
また、上記第2実施形態の保持器では、各傾斜筒状部126の底面240が、軸方向に延在する複数の溝241を有していたが、この発明では、各傾斜筒状部の底面が、一つのみの軸方向延在溝を有していても良い。また、この発明では、軸方向延在溝は、角溝であっても良いし、円弧溝であっても良く、軸方向延在溝は、軸方向延在溝の延在方向に垂直な断面において、例えば、円弧や、楕円や、三角形や、矩形等の四角形や、五角形以上の多角形等の形状を有していても良い。
【0077】
尚、この発明では、潤滑剤は、保持器が内輪に対して静止しているときに、内輪の外周円錐軌道面と、傾斜筒状部の底面との隙間に基づいて、表面張力によって傾斜筒状部の底面の軸方向延在溝に保持されることができる粘度を有する潤滑剤であると好ましい。したがって、内輪の外周円錐軌道面と、傾斜筒状部の底面との隙間が大きくなれば、使用可能な潤滑剤の粘度も大きくなると好ましいことは言うまでもない。
【0078】
また、上記第2実施形態の円錐ころ軸受では、傾斜筒状部126の底面240が、溝241を有していた。しかしながら、この発明では、傾斜筒状部に溝が一切存在しなくても良い。この場合でも、内輪の外周円錐軌道面と、傾斜筒状部の底面との間の隙間が、保持器が内輪に対して静止しているときに、潤滑剤の表面張力により潤滑剤を傾斜筒状部の底面に保持できる隙間であれば、傾斜筒状部の底面と、内輪の外周円錐軌道面との間に、潤滑剤の界面膜(例えば、潤滑剤が潤滑油である場合、界面油膜)を生成できて、潤滑剤を、傾斜筒状部の底面を伝わせて内輪の大鍔部の円錐ころ案内面に到達させることができて、円錐ころ案内面の潤滑性を向上できるからである。
【0079】
また、上記第2実施形態の円錐ころ軸受では、傾斜筒状部126の底面240が、連結部125よりも径方向の内方に位置していたが、この発明では、図2において、折り曲げを、径方向の外方側に行うようにして、傾斜筒状部の底面と、連結部とが繋がる構成であっても良い。
【0080】
また、上記第2実施形態の円錐ころ軸受では、傾斜筒状部126の底面240が、平面状の形状を有していたが、この発明では、傾斜筒状部の底面は、内輪の周方向に内輪の外周円錐軌道面に沿って延在する円筒面状または円錐面状の形状を有していても良い。傾斜筒状部の底面のこのように形成すると、傾斜筒状部の底面と、内輪の外周円錐軌道面との間に、潤滑剤の界面膜を形成し易いようにすることができる。
【0081】
また、上記第2実施形態の円錐ころ軸受では、平板を、点線130,131,132で示す折り目(実際には、存在しない)で折り曲げて、塑性変形して、断面矩形状の貫通穴を有する傾斜筒状部を形成したが、この発明では、平板を、丸めるように塑性変形して、断面円形状や、断面楕円形状の貫通穴を有する傾斜筒状部を形成しても良い。
【0082】
図4は、第3実施形態の円錐ころ軸受の保持器の傾斜筒状部326における内輪の大鍔部側の端部の模式断面図であり、傾斜筒状部326の貫通穴355の中心軸と、保持器の径方向とを含む傾斜筒状部326の模式断面図である。
【0083】
図4に示すように、第3実施形態では、傾斜筒状部326の貫通穴355の大鍔部側の開口が、径方向の内方側に開口している点が、傾斜筒状部の貫通穴の大鍔部側の開口が、傾斜筒状部の延在方向に開口している第1,2実施形態と異なる。
【0084】
図4に示すように、傾斜筒状部326の貫通穴355は、図示しない内輪の外周円錐軌道面に略平行に延在する軌道面平行延在部381と、その部分につながると共に、径方向の内方側に延在する内方延在部382とを有する。
【0085】
第3実施形態では、図4の断面において、内方延在部382の大鍔部側の縁350は、内輪の軸線に近づくにつれて大鍔部の円錐ころ案内面に近づくように傾斜している。したがって、潤滑剤を、図4に矢印Aで示すように縁350に沿うようにして、円錐ころ案内面に円滑に導くことができる。
【0086】
図5は、本発明の第4実施形態の円錐ころ軸受の軸方向の模式断面図であり、傾斜筒状部の貫通穴の中心軸を通過する円錐ころ軸受の軸方向の模式断面図である。尚、図5において、参照番号421は、大径環状部を示し、423は、柱部を示している。
【0087】
第4実施形態の円錐ころ軸受では、第1実施形態の円錐ころ軸受の構成部と同一構成部には同一参照番号を付して説明を省略することにする。また、第4実施形態の円錐ころ軸受では、第1実施形態の円錐ころ軸受と共通の作用効果および変形例については説明を省略することにし、第4実施形態の円錐ころ軸受と異なる構成、作用効果および変形例についてのみ説明を行うことにする。
【0088】
第4実施形態では、保持器405の連結部425は、本体部480と、接合部481とを有し、本体部480は、径方向延在部424から傾斜筒状部426側に延在している。また、上記連結部481は、レーザ溶接による溶け込み部からなり、本体部480の傾斜筒状部側426の端面490と、円筒状のパイプからなる傾斜筒状部426における小径環状部420側の端面491とを接合している。
【0089】
図6は、第4実施形態の傾斜筒状部426と、連結部425との接合部付近を示す模式斜視図である。
【0090】
図5および図6に示すように、連結部425の本体部480は、傾斜筒状部426の小径環状部420側の端面491の径方向の外方側の部分に接合されている。このようにして、内輪2の外周円錐軌道面12付近にある潤滑剤が、傾斜筒状部426の貫通穴455内に円滑に流入できるようにしている。
【0091】
上記第4実施形態の保持器405によれば、連結425部の本体部480の傾斜筒状部426側の端面490と、予め用意した筒状部材(パイプ)であるところの傾斜筒状426部の小径環状部420側の端面491とを接合するだけで、連結部425と、傾斜筒状部426とを一体化できる。したがって第1実施形態と比較して、接合労力が小さくて、簡易に保持器を製造することができる。
【0092】
尚、第4実施形態においても、接合は、溶接や、スポット溶接や、レーザ溶接や、接着剤や、インローかしめ接合等の既存の接合手段で、連結部の接合部と、傾斜筒状部とを接合できることは勿論である。
【符号の説明】
【0093】
1 外輪
2 内輪
3 円錐ころ
5,405 保持器
11 内周円錐軌道面
12 外周円錐軌道面
14 大鍔部
20,420 小径環状部
21,421 大径環状部
23,423 柱部
24 径方向延在部
25,125,425 連結部
26,126,326,426 傾斜筒状部
30 円錐ころ案内面
41 軸方向延在溝
50 傾斜延在部
51 筒状部
241 軸方向延在溝
480 連結部の本体部
481 連結部の接合部
490 連結部の本体部の傾斜筒状部側の端面
491 傾斜筒状部の小径環状部側の端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小径環状部と、
この小径環状部よりも大径の大径環状部と、
上記小径環状部と、上記大径環状部との間を連結すると共に、互いに周方向に間隔をおいて位置する複数の柱部と、
上記小径環状部から径方向の内方側に延在する径方向延在部と、
上記柱部の上記径方向の内方側に位置する一方、上記小径環状部側から上記大径環状部側に行くにしたがって上記小径環状部の中心軸から離れるように傾斜する中空の傾斜筒状部と、
上記径方向延在部と、上記傾斜筒状部の上記小径環状部側の端部とを連結する連結部と
を備えることを特徴とする円錐ころ軸受用保持器。
【請求項2】
請求項1に記載の円錐ころ軸受用保持器において、
上記傾斜筒状部は、
上記連結部につながると共に、上記小径環状部側から上記大径環状部側に行くにしたがって上記小径環状部の中心軸から離れるように傾斜する傾斜延在部と、
上記傾斜延在部とは別体であると共に、上記傾斜延在部の延在方向と略平行な方向に延在する中空の筒状部と、
上記傾斜延在部と、上記筒状部とを接合する接合部と
を有することを特徴とする円錐ころ軸受用保持器。
【請求項3】
請求項1に記載の円錐ころ軸受用保持器において、
上記連結部は、
上記径方向延在部から上記傾斜筒状部側に延在する本体部と、
上記本体部の上記傾斜筒状部側の端面と、上記傾斜筒状部の上記小径環状部側の端面とを接合する接合部と
を有することを特徴とする円錐ころ軸受用保持器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の円錐ころ軸受用保持器において、
上記傾斜筒状部の上記径方向の内方側の端部は、上記径方向の内方側に開口すると共に、上記小径環状部の軸方向に延在する軸方向延在溝を有していることを特徴とする円錐ころ軸受用保持器。
【請求項5】
内周円錐軌道面を有する外輪と、
外周円錐軌道面と、その外周円錐軌道面の大径側に位置する鍔部とを有する内輪と、
上記外輪の内周円錐軌道面と、上記内輪の外周円錐軌道面との間に配置された複数の円錐ころと、
上記複数の円錐ころを保持する請求項1乃至4のいずれか一つに記載の円錐ころ軸受用保持器と
を備えることを特徴とする円錐ころ軸受。
【請求項6】
請求項5に記載の円錐ころ軸受において、
上記円錐ころ軸受用保持器の上記傾斜筒状部は、平面状、円筒面状または円錐面状の底面を有し、
上記内輪の外周円錐軌道面と、上記底面との間には、上記円錐ころ軸受用保持器が上記内輪に対して静止しているときに、潤滑剤の表面張力により上記潤滑剤を上記底面に保持できる隙間が存在していることを特徴とする円錐ころ軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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