説明

再狭窄の治療

【課題】血管再狭窄の予防または治療法の提供。
【解決手段】ビスホスホネート(BP)、ピロリン酸塩(PP)、BPもしくはPPの複合体、BPもしくはPPのポリマー、またはそれらの薬学的に許容し得る塩もしくはエステルを用いた、静脈内投与(i.v.)、筋肉内投与(i.m.)、又は皮下投与(s.c.)による、血管再狭窄の予防または治療。ビスホスホネート、ピロリン酸塩、ビスホスホネートのポリマー鎖及びピロリン酸塩のポリマー鎖からなる群から選択され、かつ不活性ポリマー粒子に埋め込まれている活性成分を含む製剤を包含する、血管再狭窄の予防又は治療用ステント。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の属する技術分野]
本発明は、再狭窄(この分野において、ときには「促進性動脈硬化症(accelerated arteriosclerosis)」および「後血管形成狭窄(post-angioplasty narrowing)」とよばれる)を予防、阻害または減ずることができる化合物に関する。
【0002】
[先行技術]
以下の参考文献は、本発明の背景を理解するために適切である。
1. Waller, B.F., Orr, C.M, VanTassel J., et al. Clin-Cardiol. 20(2):153-60,(1997).
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3. Moorman, D.L., Kruyer, W.B., Jackson, W.G., Aviat-Space-Environ-Med. 67(10):990-6,(1996).
4. Laurent S, Vanhoutte P, CaveroI, et al., Fundam. Clin. Pharmacol., 10(3):243-57,(1996).
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15. Kramsche, D.M., and Chan, C.T., Circ. Res., 42:562-572,(1978).
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19. M. Donbrow in: Microencapsulationand Nanoparticles in Medicine and Pharmacy, CRC Press, Boca Raton, FL,p.347.
前記参考文献は、前記リストのナンバーを示す(括弧で示されている)ことによって、以下の本文中で知ることができるであろう。
【0003】
[発明の背景]
過去10年以上で、閉塞した動脈硬化の血管の血管再生を達成する機械的手段は、非常に改善されてきた。経皮的管腔透過性冠状動脈血管再生(percutaneous transluminal coronary angioplasty)(PTCA)法は、バルーン膨張、切除じゅく種切開(excisional atherectomy)、口径内ステント、腐敗切除(rotablation)およびレーザー切除を含むが、これらに限定されない。しかしながら、血管再生は、成功したバルーン血管再生後に冠状動脈の重要部分において、および大動脈冠状(aortacoronary)伏在静脈バイパス移植および他の冠状動脈移植において、再狭窄をつづいて生じさせる血栓形成および新生血管内膜の過形成を誘導する。さらには、動脈内膜の過形成は、多くの表面大腿部の血管形成、頸動脈血管内膜切除(carotid endarterectomies)および大腿端部静脈バイパス(femoro-distal vein bypasses)において再狭窄を生じさせる。血管内ステントの採用は再狭窄の発生率減少に寄与してきたが、今なおこの問題は重大である(1〜9)。現在までの、ヒトおよび動物モデルにおける該発生率、タイミング、機構および薬理学的な介入に関する広範な研究にもかかわらず、冠状動脈の再狭窄を一貫して予防する治療法は存在しない(10〜12)。再狭窄の減少または予防のための組成物および方法は、現在なお非常に望まれている。
【0004】
ビスホスホネート(bisphosphonate)(BP)(以前はジホスホネートとよばれた)は、2つのC−P結合により特徴付けられる化合物である。その2つの結合が同じ炭素原子に位置する(P−C−P)と、それらはジェミナルビスホスホネートとよばれる。該BPは、骨の形成および吸収の制御に関連する内生無機ピロリン酸塩のアナログである。用語ビスホスホネートは、一般に、ジェミナルおよび非ジェミナルビスホスホネートに使用する。該BPおよびピロリン酸塩は、ときに、ともにポリマー鎖を形成し得る。BPは、それらの骨のミネラルへの親和性から骨に作用し、骨吸収および異所性の石灰化の強力な阻害剤である。BPまたはピロリン酸塩は、臨床で主に(a)増加された骨の破壊、とくにパジェット病、腫瘍骨疾患(tumor bone disease)および骨粗しょう症の患者における抗骨溶解薬(antiosteolytic agent);(b)診断目的の骨格マーカー(99mTcに結合される);(c)異所性の石灰化および骨化の患者における石灰化の阻害剤、ならびに(d)練り歯磨きに添加される抗歯石薬として使用されてきた(13)
【0005】
[発明の要旨]
本発明によると、BPまたはピロリン酸塩(本明細書中ではまとめて:「活性成分」)は、血管の治療または予防のために使用される。本明細書において使用される用語ビスホスホネート(BP)は、ジェミナルおよび非ジェミナルビスホスホネートを意味する。用語「活性成分」は、その範囲内に、BPまたはピロリン酸塩のポリマー鎖、とくに40以下のBPモノマーからなるような鎖をも包含する。好ましい活性成分は以下の式(I):
【0006】
【化4】

【0007】
式中、RはOまたはCR12基;
1はH、OHまたはハロゲン基;および
2はハロゲン;アミノが1級、2級または3級であるヘテロアリールもしくは複素環のC1〜C10アルキルアミノまたはC3〜C8シクロアルキルアミノにより任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のC1〜C10アルキルまたはC2〜C10アルケニル;Yが水素、C3〜C8シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである−NHY、;またはR2はZが塩素置換フェニルまたはピリジニルである−SZ;で表わされる化合物である。
【0008】
したがって、本発明は、血管再狭窄(vascular restenosis)の予防または治療のための医薬を製造するための、該活性成分、該活性成分の複合体またはその薬学的に許容し得る塩もしくはエステルの用途を提供する。
【0009】
本発明はまた、該活性成分、その複合体またはその薬学的に許容し得る塩もしくはエステルの有効量を、必要とする個体(individual)に投与することからなる再狭窄の治療法を提供する。
【0010】
さらに本発明は、任意に薬学的に許容し得る担体または希釈薬とともに、活性成分として、有効量の該活性成分、その薬学的に許容し得る遊離酸、複合体または塩を含有する、再狭窄の予防または治療のための医薬的な組成物を提供する。とくに好ましい担体は、リポソーム製剤である。
【0011】
用語「有効量」は、所望の治療結果、すなわち血管再狭窄の予防または減少、を達成する際に効果的な活性成分の量を意味することを意図する。有効量は、治療を受ける個体の体重および性;医療手段のタイプ、たとえば、抑制すべき血管再狭窄がバルーン血管形成、すなわちステントを採用したのちのバルーン形成、のあとかどうかなど;活性成分の投与方式(すなわち、活性成分が全身に、または部位に直接的に投与されるかどうか);使用される担体のタイプ(たとえば、担体が活性成分を速やかに放出する担体であるか、または時間をかけて放出するかどうか);治療体制(たとえば、活性成分が毎日1回、1日数回または数日毎に1回投与されるかどうか);糖尿病、喫煙、抗コレステロール血症、腎臓病などのように再狭窄の発現率に影響する臨床的な要因;危険な血管再生前(preangioplasty)の狭窄、全体の閉塞(total occlusion)、左頭部下垂冠状動脈部、伏在静脈移植病巣、多管もしくは多病巣PTCAがあるかどうかという解剖学的要因;組成物の剤形を含む多数の要因などに依存する。さらには、手順の変化は、PTCAに続くより大きな未解決の狭窄、危険な切開、血管内膜の裂傷、バルーンの適当な大きさおよび血栓の存在のような投薬にも関係するかもしれない。それぞれの場合における有効量を決定する際には、ルーチン型の実験により、技術者(artisan)は、実質的な困難を有さないであろう。
【0012】
本発明は、血管再狭窄および主に、しかし限定はされないが、血管形成後の冠動脈の再狭窄の予防、減少または治療に適用することができる。血管移植狭窄に起因する(たとえば、バイパス手術につづく)再狭窄と同様に、血管再狭窄は、バルーン血管形成、血管内ステント注入または他の経皮的な血管形成法(冠動脈、頸動脈および血管形成にかかわる他の血管の血管形成を含む)を含む様々な血管形成手順に起因する(16)。さらに、本発明はまた、末梢の動脈および静脈における血管再狭窄の予防、減少または治療への使用に適用することができる。
【0013】
本発明の典型的な適用は、ステントでの再狭窄(in-stentrestenosis)の予防および治療である。血管壁を支えるために、血管形成手段に、フレームワーク(framework)内の血管内にステントを配置することは、広く許容し得る医療手段である。しかしながら、血管内のステントの存在にもかかわらず、再狭窄は非常に頻繁に生じる。本発明によると、このような再狭窄を予防または阻害するために、前記活性成分は全身または部位に直接的に投与されてもよい。潜在的に、該活性成分は、実際に該活性成分の部位への直接的な投与を与えるステントに取り込ませる方法で処方してもよい。活性成分はその方法で、たとえばステントのコーティングに活性成分を含ませることにより、処方されてもよい。コーティングの例は、たとえばポリウレタンまたはゲルでつくられるポリマーコーティングである。
【0014】
本発明により、使用される活性成分は、当業者に既知のあらゆる従来技術により、医薬的な組成物中に処方されてよい(実施例参照、アルホンソ(Alfonso)ら、1995(17))。組成物は、ステントなどのような医療装置のコーティングとして(前記参照)、カプセル、錠剤、エアロゾル、液剤、懸濁剤などの様々な剤形で製造されてよい。くわえて、本発明の医薬的な組成物は、担体を用いる局所投与に適した剤形で、または全身に作用させるために、皮膚をとおして活性成分を体内に浸透させる送達形態で処方してもよい。それぞれの場合における好ましい投与様式は、患者の状態、患者が受ける他の治療の処置などにより、通常、最も生理的に適合性があるものである所望の送達様式に依存する。本発明の好ましい実施態様によると、該活性成分は粒子状の形態で処方される。これは、粒子、たとえばポリマー粒子、脂質小胞またはリポソームの中に、活性成分を包みこむことまたは含浸させることにより達成されてもよい。さらに、このような粒子は重合された活性成分の粒子であってよい(以下参照)。とくに好ましくは、該活性成分のリポソーム製剤である。このリポソームは、当分野で知られるいかなる方法によって製造されてもよい(リポソーム製造法に関しては、ミョンキョネン(Moenkkoenen)ら、1994年(14)およびミョンキョネン(18)参照)。リポソームは正に荷電、中性または負に荷電してもよく(一般に、負に荷電したリポソームが好ましい)、単層または多重ラメラであってよい。ときには、遊離活性成分(すなわち非被包性)およびリポソームに包み込まれた該活性成分の組み合わせからなる組成物を、使用してもよい。
【0015】
本発明の好ましい実施態様により、活性成分は、細胞内代謝を受けることができる化合物の群から選択されるのが好ましい。この群に対する1つの好ましい活性成分は、以下の式(II):
【0016】
【化5】

【0017】
を有する化合物クロドロネート(13)である。
【0018】
クロドロネートは、腫瘍関連骨溶解(tumor associated osteolysis)の治療の弊害に起因する高カルシウム血症の治療に使用するため(13)、およびマクロファージの阻害剤として、以前に記載された(14、18)
【0019】
このグループの他の好ましい活性成分は、それぞれ以下の式(III)および(IV):
【0020】
【化6】

【0021】
を有するエチドロネート(Etidronate)およびチルドロネート(Tiludronate)である。
【0022】
本発明によると、クロドロネートと同様の活性を有する追加のBPも好ましい。このようなBPは、クロドロネートの生物活性に似たそれらの能力に基いて選択してもよい。これは、たとえば:食細胞、たとえばマクロファージおよび線維芽細胞の食作用活性を阻害する際のインビトロ(in vitro)活性;マクロファージからのIL−1および/またはIL−6および/またはTNF−αの分泌の阻害;インビボ(in vivo)活性、たとえば、試験されるBPの、たとえば、以下の実施例1記載のラットもしくはウサギの頸動脈カテーテル傷害モデル、または狭窄のブタモデルのような、実験動物モデルにおける狭窄を予防または減じる能力;などを含む。
【0023】
本発明による活性成分の他の好ましい群は、以下の一般式(V)を有するアミノ−BPおよび他の窒素含有BPであり、
【0024】
【化7】

【0025】
式中、XはC1〜C10アルキルアミノもしくはC3〜C8シクロアルキルアミノ、ここでアミノは1級、2級または3級でよく;またはXは、Yが水素、C3〜C8シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであるNHYをあらわす。
【0026】
この群に属するBPは、代謝されないと信じられており、比較的低濃度でインターロイキンIL−1の分泌を誘導すること、および比較的高濃度でマクロファージにおいてアポトーシスを引き起こすことが示されている(18)。この群に属する好ましいBPは、たとえば、以下の式(VI)および(VII)をそれぞれ有するパミドロネートおよびアレンドロネートである。
【0027】
【化8】

【0028】
本発明による好ましいBPはジェミナルBPであるが、非ジェミナルBP、ホスホネートとして一般によばれるBPのモノホスホネートもまた、本発明による活性成分として使用してよい。
【0029】
ほかの好ましい活性成分は式(VIII):
【0030】
【化9】

【0031】
を有するピロリン酸塩である。
【0032】
好ましくは、ピロリン酸塩は、リポソームまたはポリマー粒子製剤にて処方および投与する。
【0033】
本発明の組成物は、カルシウム、マグネシウムのような金属陽イオンまたは有機塩基と錯体を形成した遊離酸形態、または塩もしくはエステルの形態のいずれで該活性成分を含んでもよく、それらは40モノマー以下のポリマーを生ずるために重合されてよい。塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウムもしくはカルシウム塩または他の適当な塩基性陽イオン(たとえば有機アミノ化合物)と形成される塩でよい。塩またはポリマーは、約0.01〜10μmの範囲内、好ましくは約0.1〜5μmの範囲内の直径を有する微紛化された微粒子であってよい。遊離酸形態または塩形態である本発明の組成物における活性成分は、結晶水を有してもまたは有しなくてもよい(水和性および無水性)。
【0034】
好ましい態様により、活性成分は、当分野で知られるあらゆる方法によって製造されるリポソーム内に包まれる。本発明によると、適当なリポソームは、無毒性リポソーム、たとえば以下に記載したような、たとえばホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロールおよびコレステロールから製造されるものが好ましい。多くの場合において、リポソームに包まれた活性成分の使用は、細胞によりエンドサイトーシスを介して活性成分の取り込みを促進する結果となる(14、18)(このような取り込みは治療効果においてある役割を果たすかもしれない)。以下の実施例にて使用されるリポソームの直径は、0.15から300nmの間であった。しかしながら、これは限定するものではなく単なる例であり、他のサイズ範囲のリポソームも使用してよい。
【0035】
さらに、活性成分は、たとえば、当業者に既知のあらゆるマイクロカプセル、ナノカプセル、ナノ粒子、ナノスフェア、ミクロスフェア、微粒子などのような、不活性のポリマー粒子に包まれてもよく、または埋め込まれてもよい(19)。このような粒子からの活性成分の放出は制御された放出であり、ある場合においては、該活性成分の効果および取り込みを延長および促進する結果となる。
【0036】
本発明の組成物に使用される薬学的な担体または希釈剤は、当分野で知られる従来のいずれの固体または液体の担体であってもよい。固体の担体は、たとえば、ラクトース、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天などであってよい。担体が液体の担体であるとき、担体は、たとえば、落花生油、リン脂質、水などであってよい。固体の担体が経口投与に使用される場合、組成物は錠剤の剤形、ハードカプセルの剤形(たとえばゼラチンカプセル)、散剤の剤形またはペレット剤の剤形でよい。液体の担体が使用される場合、製剤は、シロップ剤、乳剤、リポソーム、軟セラチンカプセル、またはリポソーム製剤、水性もしくは非水性の液体懸濁剤もしくは液剤のような無菌の注射可能な液剤の剤形でよい(17)
【0037】
注射に使用される本発明の組成物は、適当な添加剤を含有する乳剤、液剤、懸濁剤、コロイド状の液剤などでよい。
【0038】
本発明の組成物は、作用に適当なまたは所望の部位に、活性化合物を効果的に輸送するあらゆる経路により、投与されてよい。本発明の好ましい実施態様により、投与様式は、静脈内(i.v.)および動脈内(i.a.)である(とくに、オンライン(on-line)投与に適する)。投与の他の様式は、筋肉内(i.m.)または皮下(s.c.)を含む。このような投与は、ボーラス注射または注入でよい。組成物は、動脈の病的部位に、たとえば当分野で知られる適当な分泌/滲出バルーン(oozing/sweaing balloon)により、局所的に投与してもよい。投与の他の様式は、脈管周囲性(perivascular)送達、バルーンもしくはステントに関する送達システムのコーティング、または当分野で知られる心血管の薬物送達システムのあらゆる他の手段であってよい。本発明によると、投与の前記経路のいかなる組み合わせも、使用してよい。
【0039】
また、使用される活性成分の服用量は、使用した活性成分の特異的な活性、投与様式(たとえば、全身投与または局所的な送達)、活性成分の形態(たとえば、活性成分が薬物のかたちであるか、ポリマーのかたちであるか、活性成分がリポソームのような微粒子に包まれているかなど)、およびそれ自体が知られている他の因子に依存する。
【0040】
本発明の好ましい実施態様によると、活性成分での個体の治療は、狭窄が生じる前にそれを予防する目的であってよい。予防のために、活性成分は、処置上の投与の前、間または後の組み合わせだけでなく、血管再生法の前、該手法の間または該手法の後にも個体に投与されてよい。
【0041】
本発明の他の実施態様によると、活性成分は、再狭窄を減じるまたは治療する目的で、再狭窄に苦しむ個体に投与される。このような場合、活性成分は、再狭窄が明らかになった後に、さまざまな期間で、単独または他の種類の治療と組み合わせて個体に投与されてもよい。
【0042】
さらに、活性成分は、該手法が状態のさらなる進行を阻害しはじめた直後のみならず、促進性動脈硬化症を生じさせるあらゆる状態の前に投与されてもよい。
【0043】
[実施例]
ここで本発明を、添付の図面を参照しながら非限定的な実施例で論証する。
【0044】
実施例1
材料および方法
クロドロネートのリポソーム
クロドロネートの保存溶液を、0.11Mの濃度、pH=7で脱イオン水に該薬物を溶解することにより製造した。
【0045】
リポソーム製剤
ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)38.9mg、ジステアロイル−ホスファチジルコリン(DSPC)118.5mgおよびコレステロール38.7mgを正確に量り、丸底バイアルにて、クロロホルム:メタノール(9:1)20mlに溶解させた。該バイアルを穏かに温めた。ついで、該溶媒をロータベイパー(rotavapor)にて蒸発させた。ついで、水和ジイソプロピルエーテル(hydrated diisopropylether)20mlを添加し、内容物が溶解するまでウォーターバスに置いた。ついで、前記のように製造されたクロドロネート溶液8mlを添加し、該溶液を55℃にて45分間超音波処理した。ついで、ロータベイパー(55℃、100rpm)にて有機相を蒸発させた。同様に、ほかの薬物含有リポソームを製造することができる。
【0046】
製造したリポソームの精製
セファデックスゲルは、2.6grのセファデックスG−50を水40mlに溶解させることにより製造し、一晩安定させた。カラムを緩衝液(50mM Mes+50mM HEPES+75mM NaCl、pH7.2)100mlですすいだ。該リポソームをカラムにかけ、該カラムに該緩衝液を流した。該リポソームは、その色により、カラムにとどまるバンドとして観察される。それぞれのチューブにカラムから約20滴を集めた。
【0047】
動物
動物を購入し、エルサレム(Jerusalem)のヘブル(Hebrew)大学の実験動物の世話および使用の基準にしたがって、エルサレムのヘブル大学医学部の動物舎に収容した。体重350〜420gのサブラ株(Sabra strain)の雄ラットを使用した。動物は、標準の実験用の餌および任意になま水を与えられた。すべてのインビボ実験は、i.p.で投与された80mg/kgケタミンおよび5mg/kgキシラジン(xylazine)で成し遂げられる一般的な麻酔のもとでなされた。
【0048】
ラット頸動脈のカテーテル障害モデル
末梢左総および外頸動脈を、首中央切開により露出させた。左総頸動脈は、外頸動脈から導入された2Fバルーンカテーテルの管腔通過により、内皮をはぎ取られた。該カテーテルは、わずかな抵抗を発生させるために生理食塩水により充分に膨張させたバルーンとともに3回通させた。ついで該カテーテルを取り除き、外頸動脈を結紮して、傷を外科的なステープルでとじた。
【0049】
7匹のラットをコントロール群として、6匹のラットを処置群として(任意に選択)供した。動脈の損傷1日前に、リポソームクロドロネートを「処置群」に静脈注射し(ラット当たりクロドロネート6mg)、6日目に繰り返した。コントロール群においては、「空の」リポソーム(クロドロネートなし)を用いた以外は同様の注射を投与した。
【0050】
すべての動物を、ペントバルビタールの服用過多による傷害後14日で犠牲にした。動脈は、100mmHgでpH7.4の4%ホルムアルデヒド溶液150mlで潅流−固定した。右の動脈を切開し、潅流システムに連結した18Gカテーテルを左心室に挿入した。該動脈部分を切開し、切断し、緩やかにポリマーから分離して、少なくとも48時間、同じ固定液で後固定(postfixed)した。動脈部分をパラフィンに埋め込み、600μm離れて8〜10の位置で切断し、6μmの部分を取り付け、ヒスタロッグ試験(histalogic examination)のためにバーヘフ弾性染色法で染色した。
【0051】
形態測定分析
スライドは、実験群のタイプを知らない調査員により、微視的に検査された。それぞれのスライドにおける6から8部分を、コンピュータ化された形態測定分析により評価し、さらに、平均した部分のデータ(avarager section data)を、群間の比較のために全スライドの典型として使用した。残りの管腔、内部の弾性膜(elastic lamina)により区切られた該領域(元の管腔)、および外側の弾性膜により囲まれた領域(全動脈領域)を、直接測定した。新内膜が厚くなる程度を、新内膜の領域と元の管腔との割合(狭窄%)、および中膜(media)の領域に対する新内膜の領域の割合(N/M)として表わした。中膜領域(medial area)、すなわち、SMC生存能力の間接指標は、全動脈領域と元の管腔領域との間の差として決定した。
【0052】
結果
外科的手法および処置は、動物の死亡または明らかな病的状態を生じさせなかった。
【0053】
図1にみられるように、リポソームに包み込まれたクロドロネートによる処置ののち、平均の新内膜の形成および平均中膜に対する新内膜の比(N/M)の程度は、著しく減じられた。クロドロネート処置ラットにおいて、N/M比は、コントロール群における1.42±0.26と比較し、0.28±0.23であった(平均±SD、p<0.01)。同様に図2においてみられるように、狭窄%の著しい阻害が処置群において達成された:処置およびコントロール群それぞれ9.8±7.76対41.53±7.9(平均±SD、p<0.01)。図3にみられるように、明らかな系統だった副作用や体成長(somatic growth)における任意の作用はなかった。
【0054】
結論:クロドロネート含有リポソームでのラットの処置は、頸動脈のバルーンによる傷害(balloon-injury)に続く新内膜形成としてみられる再狭窄を著しく減少させた。
【0055】
実施例2
材料および手法
リポソームのクロドロネート注射の抗再狭窄効果を、バルーンにより傷つけられたラットおよびアテローム硬化症のウサギの頸動脈モデルにおいて研究した。ラットをクロドロネート含有リポソーム、空のリポソーム(コントロール)、および溶液中のクロドロネート(追加のコントロール)により処置した。注射されたクロドロネートの用量は1.5および15mg/kgであり、手順の1日前(−1)および/または損傷ののち6日後(+6)に投与した。ウサギは、(30日間のアテローム硬化症食(atherosclerotic diet)に続き)バルーン血管形成の1日前に、リポソームのクロドロネート(10mg/kg)により処置した。管腔、新内膜、中膜および血管領域ならびに体積は、ラットおよびウサギのモデルそれぞれにおいて、組織部分のデジタル面積計(digital planimetry)により、処置およびコントロール動物群において、傷害後14および30日に測定された。
【0056】
結果
つぎの表1に結果を示す。
【0057】
【表1】

【0058】
見られるように、著しい新内膜形成を示す空のリポソームと溶液中の遊離したクロドロネートでの処置に著しい差はみられなかった(表参照)。平均新内膜形成の範囲、平均の中膜に対する新内膜(N/M)の比、およびクロドロネートを含むリポソーム(clodronate-laden liposomes)での処置に続く狭窄%が、著しく減じられた。中膜領域は、休止細胞において有害な影響を示さない様々な処置によって影響されなかった。さらには、明らかな全身の副作用や、骨および体成長における作用はなかった。意味深いことに、1×15mg/kg(−1)および2×15mg/kg(−1および+6)注射は、より強力な処置であり、それらのあいだに著しい差はない。有害作用のない同様の成果が、ウサギの研究において観察された。リポソームのクロドロネートは、新内膜形成および狭窄%の減少に関し、著しい効果があった。
【0059】
シリカ粒子の注射もまた、内膜形成を減じた(表1)。この効果は、マクロファージにおけるシリカの既知の阻害効果に起因すると考えられる。
【0060】
これらの結果は、ラットおよびウサギの両モデルにおいて、クロドロネート含有リポソームによる処置がバルーンによる傷害ののちの新内膜形成を著しく減じることを示す。明らかな全身性および局所的副作用や体成長における作用はなかった。BPは骨に影響することが知られるが、クロドロネートのリポソーム製剤での処置後、骨や骨中のカルシウムおよびリンのレベルにおける作用は観察されなかった。
【0061】
図1〜3は、実験用ラットの頸動脈カテーテル傷害モデルに関し、同種のラットにおけるクロドロネートを含有しないコントロールリポソームの効果と比較して、再狭窄の減少に対するリポソームに包まれたクロドロネートの効果を示す結果の棒グラフである。これらの図において:
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、コントロールリポソームで治療したラットと比較して、クロドロネート含有リポソームで治療したラットにおける媒体率(media ratio)に対する平均管腔初期形成および平均新生血管内膜の程度を示す図である。
【図2】図2は、コントロールリポソームで治療したラットにおける狭窄の%と比較して、クロドロネート含有リポソームで治療したラットにおける狭窄の%を示す図である。
【図3】図3は、コントロールリポソームのみで治療したラットと比較し、クロドロネート含有リポソームで治療したラットにおいて、平滑筋細胞の生存能力の間接的な指標となり、全動脈領域と元の管腔領域とのあいだの差として測定された中側領域の範囲を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスホスホネート、ピロリン酸塩、ビスホスホネートのポリマー鎖及びピロリン酸塩のポリマー鎖からなる群より選択され、かつ0.01〜10μmのサイズを有する不活性ポリマー粒子に埋め込まれている活性成分を含む、血管再狭窄の予防又は治療剤。
【請求項2】
静脈内投与(i.v.)、筋肉内投与(i.m.)、又は皮下投与(s.c.)用である、請求項1に記載の血管再狭窄の予防又は治療剤。
【請求項3】
活性成分が、以下の一般式を有する、請求項1に記載の血管再狭窄の予防又は治療剤。
【化1】


(式中、R1はH、OH又はハロゲン基;及びR2はハロゲン;アミノが1級、2級又は3級であってもよいヘテロアリール若しくは複素環のC1〜C10アルキルアミノ又はC3〜C8シクロアルキルアミノにより任意に置換される直鎖若しくは分岐鎖のC1〜C10アルキル又はC2〜C10アルケニル;Yが水素、C3〜C8シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールである−NHY;又はR2はZがクロロ置換されたフェニル又はピリジニルである−SZ;である)
【請求項4】
活性成分がクロドロネート、エチドロネート、チルドロネート、パミドロネート及びアレンドロネートからなる群から選択される、請求項1又は2記載の血管再狭窄の予防又は治療剤。
【請求項5】
再狭窄が動脈再狭窄である、請求項1〜3のいずれかに記載の血管再狭窄の予防又は治療剤。
【請求項6】
非経口投与用である、請求項1〜5のいずれかに記載の血管再狭窄の予防又は治療剤。
【請求項7】
ビスホスホネート、ピロリン酸塩、ビスホスホネートのポリマー鎖及びピロリン酸塩のポリマー鎖からなる群から選択され、かつ不活性ポリマー粒子に埋め込まれている活性成分を含む製剤を包含する、血管再狭窄の予防又は治療用ステント。
【請求項8】
ビスホスホネート、ピロリン酸塩、ビスホスホネートのポリマー鎖及びピロリン酸塩のポリマー鎖からなる群から選択され、かつ0.01〜10μmのサイズを有する不活性ポリマー粒子に、薬学的に許容される担体又は希釈剤と共に埋め込まれている活性成分を含む、血管再狭窄の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項9】
静脈内投与(i.v.)、筋肉内投与(i.m.)、又は皮下投与(s.c.)用である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
活性成分が、以下の一般式を有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【化2】


(式中、R1はH、OH又はハロゲン基;及びR2はハロゲン;アミノが1級、2級又は3級であってもよいヘテロアリール若しくは複素環のC1〜C10アルキルアミノ又はC3〜C8シクロアルキルアミノにより任意に置換される直鎖若しくは分岐鎖のC1〜C10アルキル又はC2〜C10アルケニル;Yが水素、C3〜C8シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールである−NHY;又はR2はZがクロロ置換されたフェニル又はピリジニルである−SZ;である)
【請求項11】
活性成分がクロドロネート、エチドロネート、チルドロネート、パミドロネート又はアレンドロネートである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
再狭窄が冠状動脈再狭窄である、請求項8〜11のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
活性成分が、0.1〜5μmのサイズを有する不活性ポリマー粒子に埋め込まれている、請求項1〜6のいずれかに記載の血管再狭窄の予防又は治療剤。
【請求項14】
活性成分が、0.1〜5μmのサイズを有する不活性ポリマー粒子に埋め込まれている、請求項8〜12のいずれかに記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−37871(P2011−37871A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223610(P2010−223610)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【分割の表示】特願2000−559812(P2000−559812)の分割
【原出願日】平成11年7月14日(1999.7.14)
【出願人】(598025706)イッスム・リサーチ・デベロプメント・カムパニー・オブ・ザ・ヘブリュー・ユニバシティー・オブ・エルサレム リミテッド (1)
【出願人】(500254804)ハダシット メディカル リサーチ サービシーズ アンド ディベロップメント リミテッド (1)
【Fターム(参考)】