説明

再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物

【課題】引張り強度及び耐摩耗性の低下を可及的に小さくするようにした再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物、特にタイヤトレッド用に好適な再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】再生ゴムを除くジエン系ゴム100重量部に対し、再生ゴムの配合量α[重量部]を10〜50重量部、カーボンブラックの配合量β[重量部]を式(1):β=β−3α/8により定め、オイル成分の配合量γ[重量部]を式(2):γ=γ−α/2により定めることを特徴とする。ただし、式(1)及び(2)において、βは85〜110の数値範囲[重量部]、γは式(3):0.82×(β+3α/8)−22≦γ≦0.82×(β+3α/8)−7により定められる数値範囲[重量部]を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物に関し、さらに詳しくは、引張り強度及び耐摩耗性の低下を可及的に小さくした再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物、特にタイヤトレッド用に好適な再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の保全や環境保護が主要な課題としてクローズアップされるに従って、空気入りタイヤにおいてもリサイクル率の向上が求められている。このため使用済みのタイヤやチューブから回収された再生ゴムを新しい原料ゴム中に配合することが検討されている。再生ゴムとは、JIS K6313に規定があり、使用済みの自動車用タイヤ、チューブ及びその他のゴム製品を再生したものであって、使用済みのゴム製品を粉砕し再生脱硫して得られたゴムである。しかしながら、再生ゴムを配合したゴム組成物は、物性の低下が避けられず、特にトレッド用に使用する場合に、必要な引張り強度及び耐摩耗性が悪化するという問題があった。
【0003】
この対策として、特許文献1は、再生脱硫工程の前後の有機溶剤抽出量で特定される再生ゴムを使用することにより耐摩耗性を改善することを提案している。しかし、このゴム組成物は、再生ゴムの配合量が少量に限られており、多くすると物性低下が顕著になり、耐摩耗性や引張り強度が悪化する問題があった。
【特許文献1】特開2002−338743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、引張り強度及び耐摩耗性の低下を可及的に小さくするようにした再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物を提供することにあり、特にタイヤトレッド用に好適な再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明の再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物は、再生ゴムを除くジエン系ゴム100重量部に対し、再生ゴムを10〜50重量部、カーボンブラックを下記式(1)で定められる配合量β[重量部]、オイル成分を下記式(2)で定められる配合量γ[重量部]を配合したことを特徴とする。
β=β−3α/8 (1)
γ=γ−α/2 (2)
(ただし、式(1)及び(2)において、αは再生ゴムの配合量[重量部]、βは85〜110の数値[重量部]、γは下記式(3)で定められる数値[重量部]を表す。
0.82×(β+3α/8)−22≦γ≦0.82×(β+3α/8)−7 (3))
【0006】
前記再生ゴムを除くジエン系ゴム100重量部に対し、硫黄は、下記式(4)で定められる配合量ξ[重量部]を配合するとよい。
ξ=ξ×(200+α)/200 (4)
(ただし、式(4)において、αは再生ゴムの配合量[重量部]、ξは1.8〜2.0の数値[重量部]を表す。)
【0007】
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が80〜100m/gのカーボンブラックを50〜85重量%と窒素吸着比表面積が110〜130m/gのカーボンブラックを15〜50重量%からなるとよい。
【0008】
この再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのトレッド部を構成するのに好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物は、再生ゴムを除くジエン系ゴム100重量部に対し、再生ゴムを10〜50重量部配合すると共に、カーボンブラックを前記式(1)の関係を満たすβ[重量部]、また、オイル成分を前記式(2)の関係を満たすγ[重量部]をそれぞれ配合するようにしたので、カーボンブラック及びオイル成分の配合量を適正化することにより、ゴム組成物の引張り強度及び耐摩耗性の低下を極力小さくするように抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物において、再生ゴムを除くジエン系ゴムは、特に制限されるものではなく、タイヤ用ゴム組成物に通常用いられる天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム等が挙げられる。好ましくは天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴムがよい。これらジエン系ゴムは、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0011】
本発明で使用する再生ゴムは、JIS K6313に規定された自動車用タイヤ、チューブ及びその他のゴム製品の使用済みのゴムなどを再生したもの並びにこれと同等の性状を有するものとする。再生ゴムの種類は、チューブ再生ゴム、タイヤ再生ゴム、その他の再生ゴムから選ばれるいずれでもよく、複数の種類を組合わせることもできる。なかでも、タイヤ再生ゴムが好ましい。
【0012】
再生ゴムは、脱硫処理が施された低分子量ゴムなどの有機成分とカーボンブラックなどの無機成分からなる。しかし、再生ゴムに含まれるゴム成分は、低分子量のため引張り強度や耐摩耗性などの特性が、ジエン系ゴムに比べ劣っている。このため、本発明では、再生ゴムを除くジエン系ゴム100重量部に対する再生ゴムの配合量をα[重量部]とするとき、(α/2)[重量部]をオイル成分に相当するものとして見積もり、(3α/8)[重量部]をカーボンブラックに相当するものとして見積もることを特徴とする。これにより、再生ゴムを配合した場合でも、カーボンブラック及びオイル成分の配合量を適正化し、ゴム組成物の引張り強度及び耐摩耗性の低下を極力小さくすることができる。なお、上記の係数1/2及び3/8は、それぞれ経験的に求められた数値である。
【0013】
本発明において、再生ゴムの配合量αは、再生ゴムを除くジエン系ゴム100重量部に対し10〜50重量部であり、好ましくは20〜50重量部にするとよい。再生ゴムの配合量が10重量部未満の場合には、リサイクル率の観点から好ましくない。また、再生ゴムの配合量が50重量部を超えると引張り強度及び耐摩耗性の悪化が許容できない。
【0014】
再生ゴムを除くジエン系ゴム100重量部に対するカーボンブラックの配合量をβ[重量部]とするとき、カーボンブラックの配合量βは、再生ゴムの配合量αとの関係で下記式(1)により定められる。
β=β−3α/8 (1)
【0015】
上記式(1)において、αは再生ゴムの配合量[重量部]、βはカーボンブラックの配合量[重量部]を表す。βは再生ゴムを配合しないときのカーボンブラックの標準的な配合量[重量部]を意味するものであり、その数値範囲は85〜110[重量部]にし、好ましくは90〜100[重量部]にするとよい。カーボンブラックの配合量が(85−3α/8)重量部未満であると、ウェット制動性能が不足する。また、カーボンブラックの配合量が(110−3α/8)重量部を超えると、発熱性の悪化が許容できない。
【0016】
なお、シリカ、クレー、炭酸カルシウムなどの補強充填剤を、カーボンブラックと共に使用するときは、これら補強充填剤及びカーボンブラックの合計配合量をβとして取り扱うものとする。
【0017】
カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が好ましくは80〜130m/gのものを使用するとよい。窒素吸着比表面積が80m/g未満の場合には、耐摩耗性が不足する。また、窒素吸着比表面積が130m/gを超えると、発熱が大きくなり、またコストの面で好ましくない。カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2に準拠して求められるものとする。
【0018】
また、カーボンブラックは、少なくとも2種類のカーボンブラックを共に使用することが好ましく、窒素吸着比表面積が80〜100m/gのカーボンブラックが50〜85重量%と窒素吸着比表面積が110〜130m/gのカーボンブラックが15〜50重量%になるようにするとよい。後段の実施例において示すように、再生ゴムを配合したゴム組成物では、窒素吸着比表面積が異なる2種類のカーボンブラックを特定の割合で併用することにより、再生ゴムを配合しない場合とは異なり引張り強度を極大にすることができる。
【0019】
本発明において、窒素吸着比表面積が80〜100m/gのカーボンブラックを好ましくは50〜85重量%にし、より好ましくは50〜70重量%にするとよく、窒素吸着比表面積が110〜130m/gのカーボンブラックを好ましくは15〜50重量%にし、より好ましくは30〜50重量%にするとよい。再生ゴム入りゴム組成物に配合する2種類のカーボンブラックの窒素吸着比表面積及び配合割合が上記の範囲から外れると引張り強度を極大にすることができない。
【0020】
本発明のゴム組成物において、再生ゴムを除くジエン系ゴム100重量部に対するオイル成分の配合量をγ[重量部]とするとき、オイル成分の配合量γは、再生ゴムの配合量α及びカーボンブラックの配合量βとの関係で下記式(2)により定められる。
γ=γ−α/2 (2)
【0021】
上記式(2)において、αは再生ゴムの配合量[重量部]、γはオイル成分の配合量[重量部]を表し、γは再生ゴムを配合しないときのオイル成分の標準的な配合量[重量部]を意味するものであり、再生ゴムの配合量α及びカーボンブラックの配合量βと下記式(3)の関係を満たす数値範囲をとる。
0.82×(β+3α/8)−22≦γ≦0.82×(β+3α/8)−7 (3)
【0022】
オイル成分の配合量γが、上記式(2)及び(3)に規定される数値範囲より小さいと、ゴム組成物の硬度が高くなり過ぎ、乗り心地性が悪化する。また、オイル成分γの配合量が、上記式(2)及び(3)に規定される数値範囲より大きいと、引張り強度及び耐摩耗性が悪化する。
【0023】
本発明において、オイル成分とは、ゴム組成物に添加する鉱物油系軟化剤、植物油系軟化剤などのオイルと、油展SBRなどの油展ゴムに含まれるオイル成分との合計をいう。
【0024】
再生ゴム入りゴム組成物において、上述したように、再生ゴムは低分子量であるためゴム成分としてより、オイル成分として機能する。しかし、再生ゴムは、加硫工程では、硫黄と結合する性質があるため、再生ゴムによる消費を見積もって硫黄の配合量を調整することが好ましい。したがって、再生ゴムを除くジエン系ゴム100重量部に対する硫黄の配合量をξ[重量部]とするとき、硫黄の配合量ξは、再生ゴムの配合量αとの関係で下記式(4)により定められる。
ξ=ξ×(200+α)/200 (4)
【0025】
上記式(4)において、αは再生ゴムの配合量[重量部]、ξは再生ゴムを配合しないときの硫黄の標準的な配合量[重量部]を意味するものであり、その数値範囲は1.8〜2.0[重量部]である。硫黄の配合量ξが(1.8×(200+α)/200)重量部未満の場合には、引張り強度及び耐摩耗性が低下すると共に、発熱性が悪化する。また、硫黄の配合量ξが(2.0×(200+α)/200)重量部を超えると、引張り破断伸びの低下が大きくなり好ましくない。
【0026】
再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物には、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0027】
再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0028】
本発明の再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物は、再生ゴムを配合したことに伴う引張り強度及び耐摩耗性の低下を抑制するものであり、例えば、再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物から再生ゴムだけを除いたゴム組成物に対する引張り強度及び耐摩耗性の低下を、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下に小さくする。更に、再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物は、再生ゴムだけを除いたゴム組成物に対してウェット制動性能を向上することができる。
【0029】
上述した再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物は、タイヤトレッドに適用することが好ましく、このゴム組成物からなるトレッド部を有する空気入りタイヤは、優れた耐久性及び耐摩耗性を維持することができる。
【0030】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
表1,2に示す配合からなる16種類のゴム組成物(実施例1〜9、比較例1〜7)を、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く配合成分を秤量し、1.7Lのバンバリーミキサーで4分間混練し、温度160℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを1.7Lのバンバリーミキサーに供し、硫黄及び加硫促進剤を加え混合し、再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物を調製した。
【0032】
得られた16種類のゴム組成物(実施例1〜9、比較例1〜7)を、それぞれ所定形状の金型中で、150℃、30分間加硫して試験片を作製し、下記に示す方法により、各種ゴム物性の試験を行った。
【0033】
引張り強度
得られた試験片の引張り強度として、JIS K6251に準拠して引張り破断応力を測定した。得られた結果は、表1では比較例1を100とし、表2では実施例4を100とする指数として示した。この値が大きいほど引張り強度が大きく優れている。
【0034】
発熱性(60℃でのtanδ)
得られた試験片をJIS K6394に準拠して、上島製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、伸長変形歪み率が10±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件におけるtanδを測定した。得られた結果は、表1では比較例1を100とし、表2では実施例4を100とする指数として示した。この値が小さいほどがtanδが小さく発熱性が小さく燃費性能が優れている。
【0035】
耐摩耗性
得られた試験片をJIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を使用して、温度20℃、荷重39N、スリップ率30%、時間15分の条件で摩耗量を測定した。得られた結果は、表1では比較例1の逆数を100とし、表2では実施例4の逆数を100とし表1,2に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性に優れることを意味する。
【0036】
ウェット制動性
得られた3種類の再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物(実施例1、比較例1,2)により構成したトレッド部を備えた、タイヤサイズ195/65R15の空気入りタイヤを製作した。各タイヤをリム(15×6.5JJ)に装着し、JATMAイヤーブックに記載の正規空気圧を充填し、国産2.0リットルクラスの車両に装着して、撒水したアスファルト路面において、初速100km/hで走行し、制動したときの制動距離を測定した。得られた結果は、比較例1の逆数を100とし表1に示した。この値が大きいほど制動距離が短くウェット制動性が優れている。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
なお、表1,2において使用した原材料の種類を下記に示す。
SBR:スチレン−ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1712(SBR100重量部に対し37.5重量部の油展オイルを含む)
再生ゴム:村岡ゴム社製タイヤリク 紫線
カーボンブラック−1:東海カーボン社製シーストKH(N339、窒素吸着比表面積93m/g)
カーボンブラック−2:キャボットジャパン社製N234(窒素吸着比表面積123m/g)
オイル:アロマオイル、富士興産社製アロマオイル
酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
ステアリン酸:日本油脂社製ビーズステアリン酸
老化防止剤:フレキシス社製SANTOFLEX 6PPD
ワックス:大内新興化学工業社製サンノック
硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生ゴムを除くジエン系ゴム100重量部に対し、再生ゴムを10〜50重量部、カーボンブラックを下記式(1)で定められる配合量β[重量部]、オイル成分を下記式(2)で定められる配合量γ[重量部]を配合した再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物。
β=β−3α/8 (1)
γ=γ−α/2 (2)
(ただし、式(1)及び(2)において、αは再生ゴムの配合量[重量部]、βは85〜110の数値[重量部]、γは下記式(3)で定められる数値[重量部]を表す。
0.82×(β+3α/8)−22≦γ≦0.82×(β+3α/8)−7 (3))
【請求項2】
前記再生ゴムを除くジエン系ゴム100重量部に対し、硫黄を下記式(4)で定められる配合量ξ[重量部]を配合した請求項1に記載の再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物。
ξ=ξ×(200+α)/200 (4)
(ただし、式(4)において、αは再生ゴムの配合量[重量部]、ξは1.8〜2.0の数値[重量部]を表す。)
【請求項3】
前記カーボンブラックが、窒素吸着比表面積が80〜100m/gのカーボンブラックを50〜85重量%と窒素吸着比表面積が110〜130m/gのカーボンブラックを15〜50重量%からなる請求項1又は2に記載の再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載の再生ゴム入りタイヤ用ゴム組成物によりトレッド部を構成した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2009−209240(P2009−209240A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52360(P2008−52360)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】